JP2019182723A - バクテリア産生セルロースカーボンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分な比表面積を持ち、機械的強度の高いバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を提供する。【解決手段】バクテリア産生のセルロースを熱処理することでカーボン化するバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法であって、バクテリアを用いてセルロースのナノファイバーを分散させたバクテリア産生セルロースを生成するセルロース生成工程S1と、バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程S2と、超臨界流体を含有するバクテリア産生セルロースから超臨界流体を気化させて乾燥体を得る乾燥工程S3と、乾燥体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させる炭化工程S4とを含む。【選択図】図1
Description
本発明は、バクテリア産生セルロースカーボンの製造方法に関する。
カーボンナノファイバーは、一般的に5〜100nmの外径で、ファイバー長は外径の10倍以上の繊維状である。その特異な形状により、高導電率、高比表面積といった特徴を有する。
従来、カーボンナノファイバーの製造方法は、例えば電極放電法、気相成長法、及びレーザー法などが知られている(例えば、非特許文献1,2)。
S. Iijima et al."Single-shell carbon nanotubes of 1-nm diameter", Nature, Vol. 363, 17 JUNE 1993.
J. Kong et al."Chemical vapor deposition of methane for single-walled carbon nanotubes", Chemical Physics Letters 292, 567-574, 1998.
しかしながら、従来の製造方法では大量生産が困難である。よって、コスト面に改善する余地が存在する。また、通常、バクテリア産生セルロースは、多量の水を含有しており、従来の製造方法(乾燥工程)では、水の蒸発に伴い、バクテリア産生セルロースのセルロース繊維が水の表面張力によって凝集するため、十分な比表面積を得ることができないという課題がある。
本発明は、この課題に鑑みてなされたものであり、十分な比表面積を持ち、機械的強度の高いバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、バクテリア産生のセルロースを熱処理することでカーボン化するバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法であって、バクテリアを用いてセルロースのナノファイバーを分散させたバクテリア産生セルロースを生成するセルロース生成工程と、前記バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程と、前記超臨界流体を含有する前記バクテリア産生セルロースから前記超臨界流体を気化させて乾燥体を得る乾燥工程と、前記乾燥体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させる炭化工程とを含むことを要旨とする。
本発明によれば、十分な比表面積を持ち、機械的強度の高いバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。以降の説明において、バクテリア産生セルロースカーボンは、カーボン材料と称することもある。
図1は、本発明の第1実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。以降の説明において、バクテリア産生セルロースカーボンは、カーボン材料と称することもある。
本実施形態のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法は、セルロース生成工程(ステップS1)、含浸工程(ステップS2)、乾燥工程(ステップS3)、及び炭化工程(ステップS4)を含む。
セルロース生成工程は、バクテリアを用いてセルロースのナノファイバーを分散させたバクテリア産生セルロースを生成する(ステップS1)。ここで生成されたバクテリア産生セルロースはゲル状である。ゲル状とは、分散媒が分散質であるナノ構造体の三次元ネットワーク構造により流動性を失い固体状になったものを意味する。また、ナノファイバーは、直径が1nmから1μmであり、長さが直径の10倍以上の繊維状物質と定義する。
ゲルの分散媒は、水(H2O)などの水系、又は、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
バクテリアが産生するゲルは、nmオーダーのファイバーを基本構造としており、このゲルを用いてカーボン材料を作製することで、得られるカーボン材料は高比表面積を有するものとなる。具体的には、バクテリアが生産するゲル(以降、バクテリア産生ゲルと称する)を用いることで比表面積が300m2/g以上を有するカーボン材料の合成が可能である。
バクテリア産生ゲルは、ファイバーがコイル状や網目状に絡まった構造を有し、更にバクテリアの増殖に基づいてナノファイバーが分岐した構造を有しているため、作製できるカーボン材料は、弾性限界での歪みが50%以上という優れた伸縮性を実現する。
バクテリアは、公知のものが挙げられ、例えば、アセトバクター・キシリナム・サブスピーシーズ・シュクロファーメンタ、アセトバクター・キシリナムATCC23768、アセトバクター・キシリナムATCC23769、アセトバクター・パスツリアヌスATCC10245、アセトバクター・キシリナムATCC14851、アセトバクター・キシリナムATCC11142、アセトバクター・キシリナムATCC10821などの酢酸菌、並びにこれらをNTG(ニトロソグアニジン)などを用いる公知の方法によって変異処理することにより創製される各種変異株を培養することにより生産されたものであればよい。
次に含浸工程が実施される。含浸工程は、バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる(ステップS2)。具体的な含浸工程は、例えば、バクテリア産生ゲルを、二酸化炭素や、ハイドロフルオロエーテルなどが充填されている容器に収容し、容器内を高圧状態にすることで、超臨界流体を含浸させることで実施される。
超臨界流体は、公知のものが使用できる。例えば、二酸化炭素、水。メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、ハイドロフルオロエーテルのようなフッ素系液体であり、これらの液体を2種類以上混合してもよい。
超臨界状態にするための条件は、液体によって異なる。例えば、二酸化炭素は、31℃以上で且つ、7.38MPa以上の圧力を印加すればよい。また、ハイドロフルオロエーテルでは、191℃以上で且つ、2.55MPa以上の圧力を印加すればよい。
超臨界液体は、表面張力や粘度が小さい。また、拡散係数が大きいので、バクテリア産生ゲルに超臨界液体を含浸させることで、超臨界流体が容易に微細構造の隙間に侵入し、バクテリア産生ゲルが含有していた水などの流体を速やかにバクテリア産生ゲルの外に除去できる。
次に乾燥工程が実施される。乾燥工程は、超臨界流体を含有するバクテリア産生セルロースから超臨界流体を気化させて乾燥体(バクテリア産生キセロゲル)を得る(ステップS3)。具体的な乾燥工程は、含浸工程で得られた超臨界流体を含有するバクテリア産生ゲルが収容された容器内の圧力を下げて、超臨界流体を気化させることで実施される。
超臨界流体を気化させるための条件は、流体によって異なる。分散媒が気化する条件であれば特に制限されない。例えば、二酸化炭素では、常圧の場合は常温でよい。ハイドロフルオロエーテルでは、常圧の場合は50℃〜200℃が好適である。また、容器内を真空引きすることで、沸点が低下し、より低温で超臨界流体を気化させることが可能である。
次に炭化工程が実施される。炭化工程は、乾燥工程で得た乾燥体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させる(ステップS4)。具体的な炭化工程は、例えば、不活性ガス雰囲気中で500℃〜2000℃、より好ましくは900℃〜1800℃で乾燥体を焼成して炭化する。セルロースが燃焼しないガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスがある。なお、カーボン材料に対し賦活効果を有し、高活性化が期待できる二酸化炭素又は一酸化炭素ガスがより好ましい。
以上述べたように本実施形態に係るカーボン材料の製造方法は、バクテリア産生のセルロースを熱処理することでカーボン化するバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法であって、バクテリアを用いてセルロースのナノファイバーを分散させたバクテリア産生セルロースを生成させるセルロース生成工程(ステップS1)と、バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程(ステップS2)と、超臨界流体を含有するバクテリア産生セルロースから超臨界流体を乾燥させて乾燥体を得る乾燥工程(ステップS3)と、乾燥体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させる炭化工程(ステップS4)とを含む。
これにより、バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させた後に、超臨界流体を気化させて乾燥させ、カーボン化するので、乾燥工程における分散媒の蒸発に伴う表面張力による凝集が抑制される。その結果、セルロースのナノファイバーが連続的に連なった共連続体である三次元ネットワーク構造を有し、高比表面積、多孔質、及び高強度のナノファイバーカーボンを容易に量産することができる。
また、本実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法によれば、天然由来のバクテリア産生セルロースを大量に生産できる。したがって、ナノファイバーカーボンのコストを大幅に引き下げる効果も得られる。また、繊維状カーボンを簡便に得られるという効果も奏する。
上記のようにバクテリア産生ゲルを用いて作製したカーボン材料は、電極、空隙、生体組織、機器接続部等との密着性を高めることが可能である。更に、高導電性、耐腐食性、高比表面積を有しているため、電池、キャパシター、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、医療用機器、美容器具、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣類、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、及びタッチパネル等に好適である。
以上述べた製造方法の効果を確認する目的で、本実施形態の製造方法で作製したカーボン材料(実験例1)と、本実施形態の製造方法の含浸工程と乾燥工程を実施しない製造方法、つまり、多量の水分を含有するバクテリア産生セルロースを通常乾燥で作製したカーボン材料(実験例2)とを比較する実験を行った。
(実験例1)
実験例1のカーボン材料は、以下のようにして合成した。以下に示す気孔率は、カーボン材料を水銀圧入法により求めた細孔径分布から、細孔を円筒形とモデル化して算出した。
実験例1のカーボン材料は、以下のようにして合成した。以下に示す気孔率は、カーボン材料を水銀圧入法により求めた細孔径分布から、細孔を円筒形とモデル化して算出した。
まず、酢酸菌であるアセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)産生のバクテリアセルロースゲルを用い、超臨界乾燥装置(エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社製)により、ハイドロフルオロエーテルを200℃、2.6MPaで12時間処理することでバクテリア産生キセロゲル(乾燥体)を得た。超臨界乾燥装置で乾燥させた後は、窒素雰囲気中で600℃、2時間の焼成により、バクテリア産生キセロゲルを炭化させ、これによりカーボン材料を作製した。
得られたカーボン材料は、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行って評価した。得られたカーボン材料は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。
なお、PDFカードNoは、国際回析センター(International Centre for Diffraction Data, ICDD)が収集したデータベースであるPDF(Powder Diffraction File)のカード番号である。
得られたカーボン材料のSEM観察画像を図2(a)に示す。また、測定して得られた評価値を表1(実験例1(超臨界乾燥))に示す。
(実験例2)
実験例1で使用したバクテリア産生ゲルを、恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。つまり、実験2の製造方法は、本実施形態に係るバクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程(ステップS2)を省き、多量の水分を含有するバクテリア産生セルロースを通常乾燥させてカーボン材料を作製する方法である。
実験例1で使用したバクテリア産生ゲルを、恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。つまり、実験2の製造方法は、本実施形態に係るバクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程(ステップS2)を省き、多量の水分を含有するバクテリア産生セルロースを通常乾燥させてカーボン材料を作製する方法である。
得られたカーボン材料は、実験例1と同様に、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行って評価した。得られたカーボン材料は、XRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。
得られたカーボン材料のSEM観察画像を図2(b)に示す。また、測定して得られた評価値を表1(実験例2(通常乾燥))に示す。
図2は、実験例1,2で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。図2(a)は、実験例1で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。図2(b)は、実験例2で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。どちらも倍率は1万倍である。
図2(a)に示すように、本実施形態に係る製造方法で得られたカーボン材料は、直径30nmのナノファイバーが連続に連なった共連続体であることが確認できる。一方、水分を含有するバクテリア産生セルロースを通常乾燥させて得たカーボン材料は、気孔がなく、密に凝集したカーボン材料であることが確認できる。
表1に示すように、本実施形態に係る製造方法で製造されたカーボン材料は、通常乾燥を行う従来の乾燥工程よりも、分散媒の蒸発に伴う水の表面張力による凝集を抑制することが可能である。その結果、高比表面積で且つ伸縮性を有する優れた性能を持つカーボン材料を提供できることが確認できた。
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。図3に示す製造方法は、シート状のカーボン材料を製造する方法であり、第1実施形態の製造方法に対して、第1粉砕工程(ステップS5)、第2粉砕工程(ステップS6)、混合工程(ステップS7)、塗布工程(ステップS8)、及び乾燥工程(ステップS9)とを含む。
図3は、本発明の第2実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法を示すフローチャートである。図3に示す製造方法は、シート状のカーボン材料を製造する方法であり、第1実施形態の製造方法に対して、第1粉砕工程(ステップS5)、第2粉砕工程(ステップS6)、混合工程(ステップS7)、塗布工程(ステップS8)、及び乾燥工程(ステップS9)とを含む。
第1粉砕工程は、上記の炭化工程(ステップS4)で炭化させた乾燥体を粉砕する(ステップS5)。第1粉砕工程は、例えば、ミキサー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高速回転せん断型撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、アトライターなどを使用して、バクテリア産生ゲル及びカーボン材料を粉末またはスラリー状にする。この場合、バクテリア産生ゲル及びカーボン材料は、二次粒子径が100nm〜5mmが好ましく、1μm〜1mmがより好ましい。これは、二次粒子径が100nm以下になるまで粉砕した場合、ナノファイバーによる共連続な構造が壊れ、十二分な結着力及び導電パスを得ることが困難となり、電気的な抵抗が増大するためである。また、二次粒子径が5mm以上の場合、結着剤として機能するバクテリア産生ゲルが十二分に分散せず、シート形状に維持することが困難となる。
また、カーボン材料は、気孔率が高く、密度が低いため、カーボン材料を単独で粉砕した場合、粉砕時または粉砕後にバクテリア産生炭化セルロースの粉末が舞い、取扱いが困難である。そのため、カーボン材料に溶媒を含浸させてから粉砕することが好ましい。ここで用いる溶媒は、特に限定されないが、例えば、水(H2O)などの水系または、カルボン酸、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、n−ブタノール、イソブタノール、n−ブチルアミン、ドデカン、不飽和脂肪酸、エチレングリコール、ヘプタン、ヘキサデカン、イソアミルアルコール、オクタノール、イソプロパノール、アセトン、グリセリンなどの有機系であり、これらから2種類以上を混合してもよい。
第2粉砕工程は、セルロース生成工程で生成したバクテリア産生セルロースカーボンを粉砕する(ステップS6)。なお、バクテリア産生ゲル及びカーボン材料を同時に粉砕することも可能でその際は、混合工程を省略することができ、好適である。
混合工程は、第1粉砕工程と第2粉砕工程のそれぞれで粉砕した材料を混合する(ステップS7)。混合物は、スラリー状である。
塗布工程は、スラリー状の混合物を任意の形状に形成する(ステップS8)。
乾燥工程は、塗布工程で任意の形状に形成(塗布)した混合物から液体を除去する(ステップS9)。スラリー状の混合物(混合スラリー)を乾燥する際に、恒温槽、真空乾燥機、赤外線乾燥機、熱風乾燥機、吸引乾燥機を用いても良く、更に、アスピレーター等を用いて吸引濾過を行うことで、迅速に乾燥することができる。
以上述べた本実施形態の製造方法で得られた混合スラリーを乾燥させ、シート状にした後、所望の形状に加工しても良い。例えば、得られたシート状カーボン材料を打ち抜き刃、レーザーカッターなどにより所望の形状に切り抜けばよい。
混合スラリーを任意の形状に形成した後、乾燥させることで、シート状カーボン材料を所望の形状に加工することができる。塗布することで、切り抜き加工で生じる切れ端などの材料コストを軽減することができ、ユーザーの好みによる任意形状のカーボン材料を得ることができる。また、カーボン材料の強度を高めることもできる。
更に、本実施形態の製造方法で得られた混合スラリーを所望の型に流し込むことで、所定の形状に成形することができる。例えば、ろ紙を円錐形にし、アスピレーターを用いて混合スラリーを吸引濾過することで、コーン形状のカーボン材料を得ることができる。
なお、本実施形態の製造方法は、全ての工程を含まなくても良い。例えば、第1粉砕工程まで行い粉砕した状態のカーボン材料を用いても良い。用いるとは、その状態で流通させることである。同様に混合工程まで行い混合スラリーの状態で流通させても良い。
つまり、本実施形態の製造方法は、第1実施形態に係るバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法(図1)において、炭化工程で炭化させた乾燥体を粉砕する第1粉砕工程(ステップS5)を含む。これにより、粉砕した状態のカーボン材料を流通させることができる。
また、本実施形態の製造方法は、第1粉砕工程(ステップS5)を含むバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法において、セルロース生成工程(ステップS1)で生成させたバクテリア産生セルロースを粉砕する第2粉砕工程(ステップS6)と、第1粉砕工程と第2粉砕工程のそれぞれで粉砕した材料を混合する混合工程(ステップS7)を含む。これにより、混合スラリーの状態のカーボン材料を流通させることができる。
また、本実施形態の製造方法は、混合工程(ステップS7)で混合した混合物から液体を除去する乾燥工程(ステップS9)を含む。これにより、粉砕した状態で混合されたカーボン材料を流通させることができる。
以上述べた製造方法の効果を確認する目的で、本実施形態の製造方法で作製したシート状カーボン材料(実験例3)と、従来の製造方法で作製したシート状カーボン材料(実験例4)を比較する実験を行った。
(実験例3)
実験例1で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモエナジー(エスエムテー製)で12時間攪拌することで粉砕し、カーボン材料が分散したスラリーを作製した。そして、そのスラリーとバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間攪拌することで、粉砕と混合を行った。
実験例1で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモエナジー(エスエムテー製)で12時間攪拌することで粉砕し、カーボン材料が分散したスラリーを作製した。そして、そのスラリーとバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間攪拌することで、粉砕と混合を行った。
その後、アスピレータ(柴田科学株式会社製)を用いて吸引濾過し、ろ紙からカーボン材料を剥離した。そして、剥離したカーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。
得られたカーボン材料は、上記の実験例1,2と同様に、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行って評価した。得られたカーボン材料は、XRD測定より、カーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)及びセルロース(Cellulose,PDFカードNo.00−003−0226)の混合物であることを確認した。
得られたカーボン材料のSEM観察画像を図4(a)に示す。また、測定して得られた評価値を表2(実験例3(超臨界乾燥))に示す。
(実験例4)
実験例2(通常乾燥)で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモエナジー(エスエムテー製)で12時間攪拌することで粉砕し、カーボン材料が分散したスラリーを作製した。そして、そのスラリーとバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間攪拌することで、粉砕と混合を行った。
実験例2(通常乾燥)で作製したカーボン材料を水に含浸させた後に、ホモエナジー(エスエムテー製)で12時間攪拌することで粉砕し、カーボン材料が分散したスラリーを作製した。そして、そのスラリーとバクテリア産生ゲル(カーボン材料:バクテリア産生ゲルの重量比1:1)を12時間攪拌することで、粉砕と混合を行った。
その後、アスピレータ(柴田科学株式会社製)を用いて吸引濾過し、ろ紙からカーボン材料を剥離した。そして、剥離したカーボン材料を恒温槽に入れ、60℃で12時間乾燥処理を行った。
得られたカーボン材料は、上記の実験例3と同様に、XRD測定、SEM観察、気孔率測定、引張試験、BET比表面積測定を行って評価した。得られたカーボン材料は、XRD測定より、カーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)及びセルロース(Cellulose,PDFカードNo.00−003−0226)の混合物であることを確認した。
得られたカーボン材料のSEM観察画像を図4(b)に示す。また、測定して得られた評価値を表2(実験例4(通常乾燥))に示す。
図4は、実験例3と4で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。図4(a)は、実験例3で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。図4(b)は、実験例4で得られたカーボン材料のSEM観察画像である。どちらも倍率は1万倍である。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る製造方法で得られたカーボン材料は、直径30nmのナノファイバーが連続に連なった共連続体であることが確認できる。一方、水分を含有するバクテリア産生セルロースを通常乾燥させて得たカーボン材料は、気孔がなく、密に凝集したカーボン材料であることが確認できる。
表1に示すように、本実施形態に係る製造方法で製造されたカーボン材料は、通常乾燥を行う従来の乾燥工程よりも、分散媒の蒸発に伴う水の表面張力による凝集を抑制することが可能である。その結果、高比表面積で且つ高い気孔率を有する優れた性能を持つカーボン材料を提供できることが確認できた。
以上説明したように、本実施形態1,2によれば、バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程と、超臨界流体を含有するバクテリア産生セルロースから超臨界流体を気化させて乾燥体を得る乾燥工程と、乾燥体が燃焼しないガスの雰囲気中で加熱して炭化させる炭化工程とを含む。この製造方法によれば、バクテリア産生セルロースを熱処理することでカーボン化しているため優れた比表面積、機械的強度、及び気孔率のカーボン材料を作製することができる。また、簡便に繊維状カーボンが得られ、ナノファイバーカーボンのコストを大幅に引き下げることができる。
本実施形態に係る製造方法によって製造されたカーボン材料は、天然由来のセルロースを用いることも可能で極めて環境負荷が低い。このようなカーボン材料は、日常生活で容易に使い捨てることが可能であるため、小型デバイス、センサ端末、医療用機器、電池、美容器具、燃料電池、バイオ燃料電池、微生物電池、キャパシター、触媒、太陽電池、半導体製造プロセス、フィルター、耐熱材、耐炎材、断熱材、導電材、電磁波シールド材、電磁波ノイズ吸収材、発熱体、マイクロ波発熱体、コーンペーパー、衣服、カーペット、ミラー曇り防止、センサ、タッチパネル等を始めとし、種々のシチュエーションで有効利用することができる。
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
S1:セルロース生成工程
S2:含浸工程
S3:乾燥工程
S4:炭化工程
S5:第1粉砕工程
S6:第2粉砕工程
S7:混合工程
S8:塗布工程
S9:乾燥工程
S2:含浸工程
S3:乾燥工程
S4:炭化工程
S5:第1粉砕工程
S6:第2粉砕工程
S7:混合工程
S8:塗布工程
S9:乾燥工程
Claims (4)
- バクテリア産生のセルロースを熱処理することでカーボン化するバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法であって、
バクテリアを用いてセルロースのナノファイバーを分散させたバクテリア産生セルロースを生成させるセルロース生成工程と、
前記バクテリア産生セルロースに超臨界流体を含浸させる含浸工程と、
前記超臨界流体を含有する前記バクテリア産生セルロースから前記超臨界流体を気化させて乾燥体を得る乾燥工程と、
前記乾燥体を燃焼させない雰囲気中で加熱して炭化させる炭化工程と
を含むことを特徴とするバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法。 - 請求項1に記載のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法において、
前記炭化工程で炭化させた前記乾燥体を粉砕する第1粉砕工程
を含むことを特徴とするバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法。 - 請求項2に記載のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法において、
前記セルロース生成工程で生成させた前記バクテリア産生セルロースを粉砕する第2粉砕工程と、
前記第1粉砕工程と前記第2粉砕工程のそれぞれで粉砕した材料を混合する混合工程と
を含むことを特徴とするバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法。 - 請求項3に記載のバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法において、
前記混合工程で混合した混合物から液体を除去する乾燥工程
を含むことを特徴とするバクテリア産生セルロースカーボンの製造方法。
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