JP2019179684A - 絶縁電線、コイル及び電気機器 - Google Patents

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Takeshi Saito
豪 斎藤
昭頼 橘
Akira Tachibana
昭頼 橘
恵一 冨澤
Keiichi Tomizawa
恵一 冨澤
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Abstract

【課題】PDIV特性及び可撓性に優れた絶縁電線、及びこの絶縁電線を使用したコイル及び電気機器を提供する。【解決手段】導体の外周に絶縁体層(A)を有する絶縁電線であって、前記絶縁体層(A)が、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有し、前記重合体のガラス転移温度が140〜300℃であり、前記絶縁体層(A)の膜厚が30μm以上300μm以下である絶縁電線、これを用いたコイル、及び電気機器。【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線、コイル及び電気機器に関する。
電気・電子機器(以下、単に電気機器ともいう)の巻線用電線(マグネットワイヤ)として、所謂エナメル線からなる絶縁電線(絶縁ワイヤ)や、エナメル樹脂からなる層と、エナメル樹脂とは別種の樹脂からなる被覆層とを含む多層構造の絶縁体層を有する絶縁電線等が用いられている。
特許文献1は、融点が110〜145℃の範囲である、特定のノルボルネン系開環重合体水素化物を含有する電線被覆材とこれを用いた電線を開示している。
特許文献2は、ガラス転移温度が240℃以上である、特定のノルボルネン系架橋重合体を開示しており、その用途として電気絶縁用を挙げている。
特開2008−159359号公報 国際公開公報第2015/046028号
ハイブリッド自動車(HV)及び電気自動車(EV)等の自動車用モータ用の絶縁電線には、小型化、高占積率化のために絶縁皮膜のさらなる薄膜化が求められている。また、モータの小型化のためにコイルエンドに複雑な曲げ加工を施すため、上記自動車用モータ用の絶縁電線には、曲げ加工を可能にする可撓性の向上が求められている。
特に、近年、自動車用モータ等の小型化及び高性能化が急速に進展しており、これらに用いられる絶縁電線には、絶縁性や部分放電開始電圧(PDIV)等の電気特性を維持しつつも、上述の複雑な曲げ加工を可能にする高度の可撓性、例えば曲げ径が4mm以下でも加工できる可撓性が求められるようになってきた。しかし、従来の絶縁電線は、上述の優れた電気特性と高度の可撓性を満たすものではなく、改善の余地があった。
本発明は、PDIV特性及び可撓性に優れた絶縁電線を提供することを課題とする。また、この絶縁電線を使用したコイル及び電気・電子機器を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った。その結果、本発明者らは、絶縁電線において導体の外周に配置される絶縁体層を、ジシクロペンタジエン等の特定の環状オレフィンのメタセシス開環重合体であって、特定のガラス転移温度を有する重合体で形成し、特定の膜厚とすることで、PDIV特性及び可撓性をさらに改善できることを見出した。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって達成された。
〔1〕
導体の外周に絶縁体層(A)を有する絶縁電線であって、
前記絶縁体層(A)が、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有し、
前記重合体のガラス転移温度が140℃以上300℃以下であり、
前記絶縁体層(A)の膜厚が30μm以上300μm以下である、
絶縁電線。
〔2〕
前記絶縁体層(A)の外周に、絶縁体層(B)を有し、
前記絶縁体層(B)が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの組み合わせからなる群より選択される樹脂を含有する、〔1〕に記載の絶縁電線。
〔3〕
前記絶縁体層(B)の膜厚が10μm以上150μm以下である、〔2〕に記載の絶縁電線。
〔4〕
〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いてなるコイル。
〔5〕
〔4〕に記載のコイルを用いてなる電気機器。
本発明は、部分放電開始電圧及び可撓性に優れた絶縁電線を提供できる。本発明の絶縁電線は、自動車用モータ用の絶縁電線等として、好適に使用することができる。
また、本発明は、上述の絶縁電線を用いたコイル及び電気機器を提供できる。
図1は本発明の絶縁電線の一実施態様を示した断面図である。 図2は本発明の絶縁電線の別の実施態様を示した断面図である。
〈〈絶縁電線〉〉
本発明の絶縁電線は、導体の外周に、絶縁体層(A)を有する。前記絶縁体層(A)は、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有し、前記重合体のガラス転移温度は140〜300℃である。絶縁体層(A)の膜厚は30μm以上300μm以下である。
本発明において、導体の外周に、絶縁体層(A)を有するとは、導体の外周に直接又は間接的に絶縁体層(A)を有することを意味する。直接的に絶縁体層(A)を有するとは、導体と絶縁体層(A)との間に他の層(例えば、接着剤層、エナメル層)を設けることなく、外周面に接した状態で絶縁体層(A)を有することを意味する。また、間接的に絶縁体層(A)を有するとは、導体と絶縁体層(A)との間に設けた他の層を介して導体の上に絶縁体層(A)を有することを意味する。
本発明の絶縁電線は、少なくとも1層の絶縁体層(A)を有していればよく、それ以外の構成は、通常の絶縁電線の構成と同様とすることができる。
例えば、絶縁体層(A)以外の被覆層を有してもよい。より具体的には、絶縁体層(A)の外周に後述する絶縁体層(B)を有していてもよく、また、絶縁体層(A)の外層に絶縁体層(B)以外の絶縁体層を有していてもよい。さらに、絶縁体層(A)の内側に被覆層を有してもよく、特許第4177295号公報に示されるように、導体の外周に、導体との高い密着性や皮膜の耐熱性を高く維持することが可能な熱硬化性樹脂層(いわゆるエナメル層)を設け、その外周に絶縁体層(A)を有していてもよい。
本発明において、絶縁体層(A)、絶縁体層(B)、熱硬化性樹脂層、さらには絶縁体層(B)以外の絶縁体層は、いずれも、単層であっても複層であってもよい。なお、本発明において、含有される樹脂及び添加物が同じ層を隣接して積層した場合、これらの層を合わせて1つの層とする。一方、同じ樹脂で構成されていても添加物の種類又は含有量が異なる層を積層した場合、隣接しているか否かに関わらず、それぞれの層を1つの層とする。
本発明の絶縁電線の寸法は、用途、使用場面等によって異なり一義的に規定できないが、断面が円形である場合、外径として、0.33〜3.45mmが好ましく、0.43〜3.15mmがより好ましい。断面が矩形である場合、幅(長辺)として1.03〜5.45mmが好ましく、1.43〜4.45mmがより好ましい。
厚さ(短辺)として、0.43〜3.45mmが好ましく、0.53〜2.95mmがより好ましい。
本発明の絶縁電線は、断面矩形の導体上に、絶縁体層(A)を有する、断面矩形の絶縁電線であることが好ましい。
図1に断面図を示した本発明の絶縁電線の一実施態様は、断面が矩形の導体1と、導体1の外周面を直接被覆する絶縁体層(A)2とを有する絶縁電線10である。
図2に断面図を示した本発明の絶縁電線の別の実施態様(絶縁電線20)は、絶縁体層(A)2の外周に絶縁体層(B)3を直接設けた以外は図1に示す絶縁電線と同様である。
〈導体〉
導体としては、導電性を有するものであればよく、通常用いられる導体を特に制限されることなく用いることができる。このような導体としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等からなる導体が挙げられる。導体としては、銅又は銅合金が好ましい。
導体の断面形状は用途等に応じて、円形(丸)、矩形(平角)、あるいは六角形などから選択することができる。
導体のサイズは用途に応じて決めるものであるため特に限定されない。断面円形の導体の場合は直径で0.3〜3.0mmが好ましく、0.4〜2.7mmがより好ましい。断面矩形の導体の場合は、幅(長辺)1.0〜5.0mmが好ましく1.4〜4.0mmがより好ましく、厚さ(短辺)0.4〜3.0mmが好ましく、0.5〜2.5mmがより好ましい。ただし、本発明の効果が得られる導体サイズの範囲はこの限りではない。
また、断面矩形(平角形状)の導体の場合、これも用途に応じて異なるが、断面正方形よりも、断面長方形が一般的である。
〈絶縁体層(A)〉
− 環状オレフィンのメタセシス開環重合体 −
絶縁体層(A)は、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有する。この重合体は、上記メタセシス重合触媒存在下で通常の方法及び条件で上記環状オレフィンを重合(メタセシス開環重合反応)して得られる重合体であって、特定のガラス転移温度を有するものであればよい。この環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、後述する方法、すなわち、環状オレフィンとメタセシス重合触媒とを含む重合性組成物を通常の方法及び条件で重合して得ることができる。よって、環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、上記重合触媒存在下で通常の方法及び条件で上記環状オレフィンを重合して得られる重合体を含んでいればよく、環状オレフィンの付加重合体等を含有していてもよい。
上記重合体は、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィン中の、二重結合を有する環が、メタセシス重合触媒下で、開環して得られる成分(開環環状オレフィン成分)を有する。
上記重合体が有する開環環状オレフィン成分は、上記群から選択される環状オレフィンに由来するものであり、開環重合していること以外(例えば、置換基の有無)は、後述する環状オレフィンと同じである。
環状オレフィンのメタセシス開環重合体の詳細について、説明する。
環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、少なくとも以下の環状オレフィンを開環重合させて得られる開環環状オレフィン成分を有する。メタセシス開環重合体は、下記の環状オレフィンを含有していればよく、この環状オレフィンを2種以上含有する場合、各環状オレフィンの含有量比は、用途等に応じて適宜に設定される。
(環状オレフィン)
シクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、及びトリシクロペンタジエンは、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルキリデン基、炭素数6〜10のアリール基、極性基(水酸基、エステル基、エーテル基、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等)等が挙げられる。
重合体中の、上記開環環状オレフィン成分の含有量は、特に限定されないが、重合体100質量%において、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
メタセシス開環重合体は、上記開環環状オレフィン成分に加えて、上記環状オレフィンと共重合可能なその他の単量体成分を含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、及びシクロドデセン等の単環の環状オレフィン、鎖状若しくは分岐状のα−オレフィンが挙げられる。
重合体中の、上記その他の単量体の含有量は、特に限定されないが、重合体100質量%において、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、140℃以上300℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する。この重合体が上記範囲のTgを有することにより、絶縁体層(A)を特定の膜厚とした場合に優れた電気特性を維持しつつも可撓性を高めることができる。そのため、本発明の絶縁電線は、上述の小型化及び高性能化が進展した自動車用モータ等に使用される絶縁電線に要求される電気特性及び高度の可撓性を付与することができる。
本発明において、電気特性及び可撓性をさらに高い水準で両立できる点で、重合体のTgは、240℃未満が好ましく、145℃以上240℃未満がより好ましく、150℃以上230℃以下がさらに好ましい。
重合体のTgの測定方法は、電線から絶縁体層(A)を剥離し、PerkinElmer社製、動的粘弾性測定装置DMA8000を用いて試験片のガラス転移温度を測定する。
重合体のTgは、環状オレフィンの種類(置換基の有無、さらには置換基の種類を含む。)若しくは含有量、メタセシス重合触媒の種類若しくは含有量、重合条件(とりわけ加熱温度)、絶縁電線の製造において付与される総熱量等に応じて、適宜に設定できる。また、環状オレフィンのメタセシス開環重合体の架橋の程度等によっても、調整できる。例えば、重合性組成物に対する加熱温度が高くなると、得られる重合体のTgは上昇する傾向がある。
本発明においては、環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、水素化物と非水素化物とを包含する。ただし、水素化物としては、重合体中の炭素−炭素二重結合に対して水素化された炭素−炭素二重結合の割合(水素化率)が、95%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、0%であることがさらに好ましい。本発明においては、メタセシス開環重合体は、メタセシス重合反応後に水素化反応を実施しないこと、すなわち非水素化物であることが特に好ましい。
水素化率は、H−NMRから公知の方法により算出することができる。
− 重合体の原料 −
以下に、環状オレフィンのメタセシス開環重合体を形成する原料について、説明する。原料を用いてメタセシス重合反応させる方法は、絶縁電線の製造方法において、説明する。
重合体は、環状オレフィンを公知のメタセシス重合触媒の存在下で常法により重合して得ることができ、通常、環状オレフィン及びメタセシス重合触媒を含有する重合性組成物を用いて調製する。
(環状オレフィン)
上記の環状オレフィンを使用することができる。
重合性組成物中の、上記環状オレフィンの含有量は、特に限定されないが、重合性組成物の固形分100質量%において、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。重合性組成物の固形分100質量%とは、溶剤を除いた全成分の合計量とする。
上記のその他の単量体を用いる場合は、重合性組成物中の、上記その他の単量体の含有量は、特に限定されないが、重合性組成物の固形分100質量%において、0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましい。
− メタセシス重合触媒 −
メタセシス重合触媒としては、国際公開公報2015/046028号及び特許第6199096号に記載のものを使用することができる。
メタセシス重合触媒(メタセシス開環重合触媒ともいう。)としては、ルテニウム重合触媒がより好ましく、以下の一般式(1)又は(2)で表されるルテニウム重合触媒(A)(以下、ルテニウム重合触媒(A)と略記することがある。)が好ましい。
Figure 2019179684
上記一般式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。本発明の効果がより一層顕著になることから、R及びRは互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していても良いインデニリデン基を形成していることがより好ましく、フェニルインデニリデン基を形成していることが特に好ましい。
前記ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、アリールオキシ基、炭素数1〜8のアルキルチオ基、炭素数1〜20のカルボニルオキシ基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数1〜20のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜20のアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、炭素数1〜20のホスホン酸基、アリールホスホン酸基、炭素数1〜20のアンモニウム基、及びアリールアンモニウム基等を挙げることができる。これらの、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、及びアリール基等を挙げることができる。
及びXは、それぞれ独立して、任意のアニオン性配位子を示す。アニオン性配位子とは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、ハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。
及びLは、ヘテロ原子含有カルベン化合物又はヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性の電子供与性化合物を表すが、触媒活性向上の観点からヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましい。ヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ヒ素原子、セレン原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、以下の一般式(3)又は(4)で示される化合物が好ましく、触媒活性向上の観点から、以下の一般式(3)で示される化合物が特に好ましい。
Figure 2019179684
上記一般式(3)及び(4)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20個の有機基を表す。ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例は、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。また、R、R、R及びRは任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。なお、本発明の効果がより一層顕著になることから、R及びRは水素原子であることが好ましく、また、R及びRは、置換基を有していてもよいアリール基であることが好ましく、置換基として炭素数1〜10のアルキル基を有するフェニル基であることがより好ましく、メシチル基であることが特に好ましい。
上記一般式(1)及び(2)において、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物以外の中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ化合物であり、酸素、水、カルボニル類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族類、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類等が挙げられる。
また、本発明で用いるルテニウム重合触媒(A)としては、上記一般式(1)又は(2)で表される化合物のなかでも、本発明の作用効果がより顕著になるという点より、Lがシッフ塩基(Schiffbase;窒素原子に炭化水素基が結合してなるイミン)配位子であることが好ましく、以下の一般式(5)又は(6)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2019179684
上記一般式(5)及び(6)中、R及びRは、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、さらに、R、R、X、X、又はLと互いに結合して、多座キレート化配位子を形成してもよい。また、R、R、X、X、及びLは、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。なお、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
さらに、本発明で用いるルテニウム重合触媒(A)としては、上記一般式(5)又は(6)で表される化合物のなかでも、本発明の効果がより一層顕著になるという点より、以下の一般式(7)で表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2019179684
上記一般式(7)中、Zは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、NR14、PR14又はAsR14であり、R14は、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基であるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、Zとしては酸素原子が好ましい。なお、R、R、X及びLは、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様であり、任意の組み合わせで互いに結合して多座キレート化配位子を形成しても良いが、X及びLが多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R及びRは互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していても良いインデニリデン基を形成していることがより好ましく、フェニルインデニリデン基を形成していることが特に好ましい。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。
上記一般式(7)中、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又はヘテロアリール基で、これらの基は、置換基を有していてもよく、また、互いに結合して環を形成していてもよい。置換基の例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はアリール基を挙げることができ、環を形成する場合の環は、芳香環、脂環及びヘテロ環のいずれであってもよいが、芳香環を形成することが好ましく、炭素数6〜20の芳香環を形成することがより好ましく、炭素数6〜10の芳香環を形成することが特に好ましい。
上記一般式(7)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基であり、これらの基は、置換基を有していてもよく、互いに結合して環を形成していても良い。また、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子又は珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。なお、R11、R12及びR13は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが特に好ましい。
また、上記一般式(7)中、R、R、X、Lは、上記一般式(1)及び(2)と同様であり、任意の組み合わせで互いに結合して多座キレート化配位子を形成しても良いが、X及びLが多座キレート化配位子を形成せず、かつ、R及びRは互いに結合して環を形成していることが好ましく、置換基を有していても良いインデニリデン基を形成していることがより好ましく、フェニルインデニリデン基を形成していることが特に好ましい。なお、上記一般式(7)で表される化合物の具体例及びその製造方法としては、例えば、国際公開第03/062253号(特開2010−77128)に記載のもの等が挙げられる。
本発明においては、上記一般式(7)で表される化合物の具体例として、以下の一般式(8)で表される化合物が好ましく挙げられる。
Figure 2019179684
上記一般式(8)中、Mesは、メシチル基である。また、R11及びR13は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であって、少なくとも一方はメチル基であり、R12は、水素原子である。R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基であるが、R15及びR16が、水素原子であることが好ましい。なお、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の有機基の具体例としては、上記一般式(1)及び(2)の場合と同様である。なお、上記一般式(8)で表される化合物の具体例及びその製造方法も、例えば、国際公開第03/062253号(特開2010−77128)に記載のもの等が挙げられる。
重合性組成物中の、メタセシス触媒の含有量は、触媒作用が得られる量であれば特に限定されないが、重合性組成物に含まれる全単量体(特定の環状オレフィンと他の単量体とを含む)1モルに対して、0.01〜50ミリモルが好ましく、0.1〜20ミリモルがより好ましい。
重合性組成物は、上記環状オレフィンとメタセシス重合触媒を含有していればよく、必要に応じてさらに、活性剤、重合遅延剤、充填剤、ラジカル発生剤、改質剤、老化防止剤、着色剤、光安定剤、難燃剤等を含有してもよい。これらは、国際公開公報第2015/046028号に記載のものを使用することができる。さらに溶剤を含有することもできる。
絶縁体層(A)の膜厚は、30μm以上300μm以下であり、電気特性及び可撓性の点で、30μm以上200μm以下が好ましい。
〈絶縁体層(B)〉
本発明の絶縁電線は、絶縁体層(A)の外周に、さらに絶縁体層(B)を有していてもよい。このような絶縁電線は、PDIV特性及び可撓性に加えて、耐傷性や耐ATF(Automatic Transmission Fluid)性などの長期特性、耐薬品性に優れる。
絶縁体層(B)を形成する樹脂(絶縁体層に含有される樹脂)は、上記長期特性若しくは耐薬品性を満たすものであれば特に制限されず、公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を挙げることができ、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、変性ポリエーテルエーテルケトン(変性PEEK)、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂(熱可塑性ポリイミド及び熱硬化性ポリイミドを含む。)、ポリエステル系樹脂及びこれらの組み合わせからなる群より選択される樹脂を含むことが好ましい。
この絶縁体層(B)は、これら樹脂に加えて、公知の添加剤を含有していてもよい。
絶縁体層(B)中の上記樹脂の含有量は、特に制限されないが、例えば、50〜100質量%とすることができる。
絶縁体層(B)の膜厚は、10μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましい。
本発明の絶縁電線は、部分放電開始電圧が高く、可撓性に優れる。その理由はまだ定かではないが以下のように考えられる。
本発明の絶縁電線の絶縁体層(A)に用いる環状オレフィンのメタセシス開環重合体は、メタセシス開環重合によって低密度でも140〜300℃と高いTgを示す。この重合体を用いて特定の膜厚の絶縁体層(A)とすることにより、同様の膜厚の他の高分子を用いた絶縁体層と比較して比誘電率を相対的に低くすることができ、部分放電開始電圧を高めつつ、優れた可撓性を、絶縁電線に付与できると考えられる。
本発明の絶縁電線は、上記特性に加えて、さらに耐ATF性にも優れる。その理由は以下のように考えられる。
絶縁体層(B)のような樹脂がATFオイルに含まれるパラフィン系などの基油や添加剤に対する耐薬品性に優れているためである。特にPEEK、PPSなどの押出樹脂は耐ATF性の観点から好ましい。
本発明の絶縁電線は、ハイブリッド自動車(HV)及び電気自動車(EV)等の自動車用モータに加えて、小型化又は高性能化された電気機器、さらにこれらに用いられるコイルにも好適に使用することができる。
また、耐ATF性を付与した絶縁電線は、トランスミッションと一体的に配置され、モータケース内に貯留されているATFを用いて発熱部位を直接冷却する構成を有するモータのコイルに使用される絶縁電線として好適に使用することができる。
〈〈絶縁電線の製造方法〉〉
本発明の絶縁電線の製造方法について説明する。
本発明の絶縁電線は、絶縁体層(A)の形成方法以外は、通常の絶縁電線の製造方法と同様に製造することができる。
絶縁体層(A)の形成方法について説明する。
〈絶縁体層(A)の形成方法〉
絶縁体層(A)の形成方法は、導体の外周に、環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含む層を形成できる方法であれば、特に限定されない。上記環状オレフィンとメタセシス重合触媒とを含む重合性組成物を調製し、導体の外周に、この重合性組成物を塗布し、環状オレフィンを重合硬化させて環状オレフィンのメタセシス開環重合体を形成する方法が好ましい。
重合性組成物を調製する方法としては、上記環状オレフィンとメタセシス重合触媒とを含む重合性組成物とできれば、特に限定されない。例えば、国際公開公報第2015/046028号に記載の配合物の調製方法を参照して行うことができる。
重合性組成物は、用いるメタセシス重合触媒が活性剤(共触媒)を必要とするものであるか否かにより、国際公開公報第2015/046028号の[0081]〜[0083]に記載のプレ配合物(i)と(ii)を用いる方法、A液、B液、C液を用いる方法に従って、調製を行うのが好ましい。
得られた重合性組成物を、導体の外周に塗布する方法としては、特に限定されず、通常のワニスと同様の方法により塗布することができる。例えば、塗布用ダイスを用いて塗布してもよく、導体を、重合性組成物をためた浴に通過又は浸漬させて塗布してもよい。ダイスを用いる場合には、例えば、導体形状の相似形としたワニス塗布用ダイスや、導体断面形状が矩形である場合、井桁状に形成された「ユニバーサルダイス」と呼ばれるダイスを用いることができる。
重合性組成物は混合後、次第に増粘してくるので、可使時間内に、導体の外周に塗布することが好ましい。環状ポリオレフィンのメタセシス触媒存在下での重合、架橋反応が完全には終了していない状態で導体の外周に塗布することで、可撓性を付与できると考えられる。
重合性組成物を導体外周に塗布した後に、重合硬化させる方法としては、加熱することが好ましい。加熱温度は、250〜750℃が好ましく、300〜650℃がより好ましい。加熱時間は特に限定されないが、5〜90秒が好ましい。加熱温度及び加熱時間により、メタセシス開環重合体の重合の程度、架橋の程度を調整することができる。
重合硬化は、通常のワニスと同様の方法にて、加熱炉を用いて行うことが好ましい。重合硬化を加熱炉を用いて行う場合、具体的な焼付け条件はその使用される炉の形状等に左右されるが、およそ5mの自然対流式の竪型炉であれば、炉内温度250〜750℃にて通過時間を5〜90秒に設定することにより、達成することができる。
重合性組成物の焼付けは、1回でもよく、数回繰り返してもよい。数回繰り返す場合は、同一の焼付け条件でもよく、異なる焼付け条件でもよい。
重合硬化は、国際公開公報第2015/046028号の[0089]の記載のように、一次硬化及び二次硬化により行ってもよい。この場合は、上記加熱は、一次加熱をメタセシス重合触媒の失活温度未満の温度で行い、二次加熱をメタセシス重合触媒の失活温度以上の温度で行うことが好ましい。
以上の方法により、導体の外周上に、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、及びトリシクロペンタジエンからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有する絶縁体層(A)が形成される。
絶縁電線が絶縁体層(B)を有する場合、上述のように通常の方法(例えば、押出成形又は樹脂組成物の塗布加熱)により、絶縁体層(B)を形成する上述の樹脂を用いて絶縁体層(A)の外周に絶縁体層(B)を形成する。
〈〈コイル及び電気機器〉〉
本発明のコイルは、上述の、本発明の絶縁電線を用いたものである。
本発明のコイルは、各種電気機器に適した形態を有していればよく、本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したもの、本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続してなるもの等が挙げられる。例えば、特開2018−014191に開示のコイルと同様のものとすることができる。
本発明の絶縁電線をコイル加工して形成したコイルとしては、特に限定されず、長尺の絶縁電線を螺旋状に巻き回したものが挙げられる。このようなコイルにおいて、絶縁電線の巻き方、巻数(2巻以上)及びピッチ等は特に限定されず、用途等に応じて、適宜に選択される。電線が巻回される芯(コアともいう。)については、材質(鉄芯、磁性体芯又は空気芯等)やサイズは、用途等に応じて、適宜に選択される。
本発明の絶縁電線を曲げ加工した後に所定の部分を電気的に接続したコイルとして、回転電機等のステータに用いられるコイルが挙げられる。
本発明の電気機器は、上述の、本発明のコイルを用いたものである。
本発明の電気機器としては、特に限定されない。例えば、特開2018−014191に開示の電気機器と同様のものとすることができる。電気機器の好ましい一態様として、上記ステータを備えた回転電機(特にHV及びEVの駆動モータ)が挙げられる。この回転電機は、上記ステータを備えていること以外は、従来の回転電機と同様の構成とすることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、これは本発明を制限するものではない。
下記実施例及び比較例において、「部」は特に断らない限り、「質量部」を意味する。
以下の様にして、実施例1〜3及び比較例1〜4の絶縁電線として、図1に示す構成の絶縁電線を製造した。また、以下の様にして実施例4〜23及び比較例5〜8の絶縁電線として、図2に示す構成の絶縁電線を製造した。
実施例1〜3、22〜27(絶縁体層(A)のみを有する、図1に示す絶縁電線の製造)、比較例10、11
実施例1の絶縁電線は、以下の様にして製造した。
メタセシス重合触媒として、下記式で示すルテニウム触媒(VC843、分子量843、Strem Chemicals社製)0.6部、及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT、老化防止剤)15部をシクロペンタノン82部に溶解させ、次いで、3,4−ジメチルピリジン2.2部、及びフェニルトリクロロシラン0.1部を混合することで、触媒液を得た。
Figure 2019179684
単量体としてジシクロペンタジエン94.7部とトリシクロペンタジエン5部と2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT、老化防止剤)0.3部を配合した溶液にこの触媒液3.5部を添加し、これらを混合してワニスとした。
このワニスを導体(裸銅線、幅3.0mm、厚さ1.5mm、角R=0.3mm)へコーティングし、炉内温度400℃に設定した炉長5mの焼付け炉内を通過時間15秒となる速度で通過させ、これを数回繰り返すことで、厚さ30μmの絶縁体層(A)を形成し、絶縁電線を得た。
塗布厚と焼付時の繰り返し数を変更したこと以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜350μmの絶縁体層(A)を形成して、実施例2、3、25〜27、比較例10、11の絶縁電線を得た。
実施例22は、塗布厚と焼付時の繰り返し数を増大させたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmの絶縁体層(A)を形成して、絶縁電線を得た。
実施例23は、単量体としてジシクロペンタジエン94.7部とトリシクロペンタジエン5部に替えて、トリシクロペンタジエン99.7部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ30μmの絶縁体層(A)を形成して、絶縁電線を得た。
実施例24は、単量体としてジシクロペンタジエン94.7部とトリシクロペンタジエン5部に替えて、テトラシクロドデセン99.7部としたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ30μmの絶縁体層(A)を形成して、絶縁電線を得た。
実施例4〜9(絶縁体層(A)に加えて絶縁体層(B)としてPEEK層(押出被覆)を有する、図2に示す絶縁電線の製造)
実施例4〜9は、押出機を用いて、実施例2で得られた絶縁体層(A)の外側にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)による絶縁体層(B)を形成した。この押出機のスクリューは30mmフルフライト、L/D=20であり、圧縮比を3とした。熱可塑性樹脂としてポリエーテルエーテルケトン(ソルベイスペシャリティポリマーズ社製、商品名:キータスパイアKT−820)をPEEK樹脂層の断面の外形の形状が導体の形状と相似形になる押出ダイを用いてPEEKの押出被覆を下記押出条件で行い、絶縁体層(A)の外側に絶縁体層(B)として厚さ5〜200μmのPEEK樹脂層を形成した。
このようにして、合計厚さ(総厚)が205〜400μmの、絶縁体層(A)と絶縁体層(B)を有する、絶縁電線を得た。
押出条件(温度)は、押出機のシリンダー部分における温度制御を材料投入側から順に3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを300℃、C2ゾーン及びC3ゾーンを380℃、押出機のシリンダーの後ろにあるヘッド部を390℃、ヘッドの先にあるダイを400℃に設定した。
実施例10〜13(絶縁体層(A)に加えて絶縁体層(B)としてPPS層(押出被覆)を有する、図2に示す絶縁電線の製造)
実施例10〜13は、実施例5〜8の熱可塑性樹脂をポリエーテルエーテルケトンからポリフェニレンサルファイド(ポリプラスチックス社製、商品名ジュラネックス0220A9)に替えた以外は実施例5〜8と同様にして、絶縁電線を得た。
実施例14〜17(絶縁体層(A)に加えて絶縁体層(B)としてPI層(エナメル層)を有する、図2に示す絶縁電線の製造)
実施例14〜17は、実施例2で得られた絶縁体層(A)の外側にポリイミド樹脂(PI)ワニスを焼付けて絶縁体層(B)を形成した。具体的には、導体の形状と相似形のダイスを使用して、ポリイミド樹脂ワニス(ユニチカ社製、商品名:Uイミド)を絶縁体層(A)へコーティングし、炉内温度550℃に設定した炉長5mの焼付け炉内を通過時間15秒となる速度で通過させ、これを数回繰り返すことで、厚さ10〜150μmの絶縁体層(B)を形成して、実施例14〜17の絶縁電線を得た。
実施例18〜21(絶縁体層(A)に加えて絶縁体層(B)としてPAI層(エナメル層)を有する、図2に示す絶縁電線の製造)
実施例18〜21は、実施例2で得られた絶縁体層(A)の外側にポリアミドイミド樹脂(PAI)ワニスを焼付けて絶縁体層(B)を形成した。具体的には、導体の形状と相似形のダイスを使用して、ポリアミドイミド樹脂ワニス(日立化成(株)製、商品名:HI406)を絶縁体層(A)へコーティングし、炉内温度550℃に設定した炉長5mの焼付け炉内を通過時間15秒となる速度で通過させ、これを数回繰り返すことで、厚さ10〜150μmの絶縁体層(B)を形成して、実施例18〜21の絶縁電線を得た。
比較例1〜8(絶縁体層(A)がなく、絶縁体層(B)を有する絶縁電線)
比較例1〜8は、実施例1と同様の導体上に表1に示す膜厚で絶縁体層(B)を形成した以外は、実施例4〜21と同様にして、絶縁電線を得た。
比較例9
比較例9は2−ノルボルネンを六塩化タングステン触媒で開環重合させた後、ニッケル触媒にて高圧水素雰囲気中で99.9%水素化し得た開環重合体水素化物を、実施例4〜9と同様の押出機を用いて、下記押出条件で、実施例1と同様の導体上に被覆して水素化物による絶縁体層(A)を形成した。
押出条件(温度)は、押出機のシリンダー部分における温度制御を材料投入側から順に3ゾーンC1、C2、C3に分け、C1ゾーンを120℃、C2ゾーンおよびC3ゾーンを180℃、押出機のシリンダーの後ろにあるヘッド部を200℃、ヘッドの先にあるダイを210℃に設定した。
比較例12
炉内温度を500℃とし通過時間を30秒としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例12の絶縁電線を得た。
上記で得られた各電線について、以下の特性を評価した。
[絶縁体層(A)のTg測定]
実施例で製造した各絶縁電線の絶縁体層(A)からサンプリングした試験片を用いて、上記方法により、絶縁体層(A)に含まれる重合体のTgを測定した。
なお、比較例1〜8については、参考のため、絶縁体層(B)に含まれる樹脂のTgを同様にして測定した。
その結果を、表1に示す。
比較例9については、融点を測定した。
[電気特性(部分放電開始電圧(PDIV))試験]
製造した各絶縁電線の部分放電開始電圧の測定には、部分放電試験機「KPD 2050」(菊水電子工業社製、商品名)を用いた。
各絶縁電線を、2本の絶縁のフラット面同士を長さ150mmに亘って隙間が無いように密着させた試料を作製した。
この試料の2本の導体間に電極をつなぎ、温度は25℃にて、50Hzの交流電圧をかけながら連続的に昇圧していき、10pCの部分放電が発生した時点の電圧をピーク電圧(Vp)で読み取った。なお、「フラット面」とは、平角形状の多層絶縁電線の縦断面の長辺(図1及び2において左右方向に沿う辺)が軸線方向に連続して形成する面をいう。
ピーク電圧が、1200(Vp)以上であった場合を「◎」で表記し、900(Vp)以上1200(Vp)未満であった場合を「○」で表記し、600(Vp)以上900(Vp)未満であった場合を「△」、600(Vp)未満であった場合を「×」で表記した。
本試験においては、「△」及び「×」のものを不合格とした。
[曲げ(180度エッジワイズ曲げ)]
可撓性の評価として、下記条件にて曲げ試験を行った。
各実施例及び比較例で製造した絶縁電線の検体それぞれについて、導体のエッジ(短辺)面方向に180度に曲げ(エッジワイズ曲げ)た。曲げ半径(R)は2mm及び1.125mmとした。
この曲げを行ったのち、JIS C3003規定のピンホール試験を実施し、絶縁体層の割れ及びピンホールの発生を調査し、以下の基準で評価した。
曲げ半径Rを1.125mmに設定して180度エッジワイズ曲げを行ったときに絶縁層の割れが見られず、かつピンホールの発生もない場合を「◎」、
曲げ半径Rを1.125mmに設定して180度エッジワイズ曲げを行ったときに絶縁体層の割れが見られる又はピンホールの発生があるが、曲げ半径Rを2.0mmに設定して180度エッジワイズ曲げを行ったときに絶縁体層の割れが見られず、かつピンホールの発生もない場合を「○」、
曲げ半径Rを2.0mmに設定して180度エッジワイズ曲げを行ったときに一部の検体について、絶縁体層の割れ又はピンホール発生が確認できた場合を「△」、
曲げ半径Rを2.0mmに設定して180度エッジワイズ曲げを行ったときに全検体について、絶縁体層の割れ又はピンホール発生が確認できた場合を「×」とした。
評価は、「○」が合格レベル、「◎」が製品として優れたレベルである。
本試験においては、「△」及び「×」を不合格とした。
[耐ATF試験(参考試験)]
長さ約350mmの絶縁電線を曲げ半径Rを4mmに設定して180度エッジワイズ曲げ加工した試験片を、水分含有量0.2質量%に調製したATFオイルとともに、ステンレス鋼製耐熱容器に投入した。温度150℃で1000時間経過後に試験片を取り出した。試験片に付着したオイルを拭き取った。このATF浸漬試験前後の絶縁電線の電気特性(絶縁破壊電圧)をJIS C 3216−5 4に規定の「絶縁破壊」に従って、測定した。残率は下式で計算した。ATF浸漬試験後の絶縁破壊電圧の残率が、50%以上を「◎」、30%以上を「○」、30%未満を「×」と表記した。

式:残率(%)=(ATF浸漬試験後の絶縁破壊電圧(kV)/ATF浸漬試験前の絶縁破壊電圧(kV))×100

評価は、「○」が合格レベル、「◎」が製品として優れたレベルである。
Figure 2019179684
Figure 2019179684
従来の樹脂を使用した絶縁体層を有する比較例1〜8、水素化物の絶縁体層を有する比較例9、絶縁体層(A)の膜厚が30μm以上300μm以下の範囲にない比較例10、11、メタセシス開環重合体のガラス転移温度が140〜300℃の範囲にない比較例12は、いずれもPDIV特性又は曲げ試験に不合格であった。
メタセシス開環重合体を含有し、膜厚が30μm以上300μm以下である絶縁体層(A)を有する実施例1〜27は、いずれもPDIV特性及び曲げ試験に合格であった。
10、20 絶縁電線
1 導体
2 絶縁体層(A)
3 絶縁体層(B)

Claims (5)

  1. 導体の外周に絶縁体層(A)を有する絶縁電線であって、
    前記絶縁体層(A)が、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される環状オレフィンのメタセシス開環重合体を含有し、
    前記重合体のガラス転移温度が140℃以上300℃以下であり、
    前記絶縁体層(A)の膜厚が30μm以上300μm以下である、
    絶縁電線。
  2. 前記絶縁体層(A)の外周に、絶縁体層(B)を有し、
    前記絶縁体層(B)が、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの組み合わせからなる群より選択される樹脂を含有する、請求項1に記載の絶縁電線。
  3. 前記絶縁体層(B)の膜厚が10μm以上150μm以下である、請求項2に記載の絶縁電線。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線を用いてなるコイル。
  5. 請求項4に記載のコイルを用いてなる電気機器。
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