JP2019179605A - リチウム硫黄固体電池の製造方法 - Google Patents

リチウム硫黄固体電池の製造方法 Download PDF

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聖志 金村
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淳吾 若杉
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Hidetoshi Abe
英俊 阿部
昌明 久保田
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昌明 久保田
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Abstract

【課題】新規のリチウム硫黄固体電池の製造方法の提供。【解決手段】硫黄正極11と、リチウム負極12と、固体電解質13と、を備え、固体電解質13が、硫黄正極11とリチウム負極12との間に配置された、リチウム硫黄固体電池1の製造方法であって、硫黄正極11は、空隙部を多数有する導電性シートを有し、空隙部は、導電性シートの外部に対して開口し、硫黄正極11は、前記空隙部に硫黄を含有しており、導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、硫黄正極11を作製する工程を有する、リチウム硫黄固体電池1の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム硫黄固体電池の製造方法に関する。
近年、電子機器や通信機器等のポータブル化やコードレス化が急速に進展している。これら電子機器や通信機器の電源として、エネルギー密度が高く、負荷特性に優れた二次電池が要望されており、高電圧、高エネルギー密度で、サイクル特性にも優れるリチウム二次電池の利用が拡大している。
一方、電気自動車の普及や、自然エネルギーの利用の推進には、さらに大きなエネルギー密度の電池が必要とされる。そこで、LiCoO等のリチウム複合酸化物を正極の構成材料とするリチウムイオン二次電池に替わる、新たなリチウム二次電池の開発が望まれている。
硫黄は、1672mAh/gと極めて高い理論容量密度を有しており、硫黄を正極の構成材料とするリチウム硫黄電池は、電池の中でも、理論的に最も高エネルギー密度を達成できる可能性を有している。そこで、リチウム硫黄電池の研究開発が盛んに行われるようになってきている。
リチウム硫黄電池の電解質として、有機電解液を用いた場合には、充放電の際などに硫黄分子や反応中間体(例えば、多硫化リチウム等)等が有機電解液中に溶解して拡散することで、自己放電や負極の劣化が惹き起こされ、電池性能が低下するという問題点がある。
そこで、このような問題点を解決するために、電解液に塩酸や硝酸等の酸を添加して電解液を改質する方法(特許文献1参照)、正極の構成材料として、ケッチェンブラックに硫黄ナノ粒子を内包した複合体を用いる方法(特許文献2参照)等が提案されている。
特開2013−114920号公報 特開2012−204332号公報
しかし、特許文献1及び2で開示されている方法では、電解質自体が液状であるため、硫黄分子や反応中間体が電解液に溶解することを完全には抑制できず、十分な効果を得られないという問題点があった。
このような電解液を用いた場合の問題点を解決する方法として、固体電解質を用いる方法がある。しかし、固体電解質を備えたリチウム硫黄固体電池は、まだ技術的に十分に検討されておらず、大きな改善の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、新規のリチウム硫黄固体電池の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].硫黄正極と、リチウム負極と、固体電解質と、を備え、前記固体電解質が、前記硫黄正極と前記リチウム負極との間に配置された、リチウム硫黄固体電池の製造方法であって、前記硫黄正極は、空隙部を多数有する導電性シートを有し、前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口し、前記硫黄正極は、前記空隙部に硫黄を含有しており、前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、前記硫黄正極を作製する工程を有する、リチウム硫黄固体電池の製造方法。
[2].前記硫黄正極を作製する工程において、前記導電性シートに硫黄を含浸させ、そのときの硫黄の温度を120〜160℃とする、[1]に記載のリチウム硫黄固体電池の製造方法。
[3].前記硫黄正極を作製する工程において、前記導電性シートに前記硫黄溶液を含浸させ、そのときの前記硫黄溶液の温度を、前記硫黄溶液中の溶媒の沸点以下とする、[1]に記載のリチウム硫黄固体電池の製造方法。
本発明によれば、新規のリチウム硫黄固体電池の製造方法が提供される。
本実施形態で製造されるリチウム硫黄固体電池の要部の一例を模式的に示す断面図である。 本実施形態で製造される他のリチウム硫黄固体電池の要部の一例を模式的に示す断面図である。 実施例1で得られた硫黄正極について、走査型電子顕微鏡を用いて取得した撮像データである。 実施例1で用いたカーボンクロスについて、走査型電子顕微鏡を用いて取得した撮像データである。 実施例1で得られた電池セルについて、定電流充放電試験を行ったときに得られた放電曲線である。 参考例1で得られた電池セルについて、定電流充放電試験を行ったときに得られた放電曲線である。
<<リチウム硫黄固体電池の製造方法>>
本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄固体電池の製造方法は、硫黄正極と、リチウム負極と、固体電解質と、を備え、前記固体電解質が、前記硫黄正極と前記リチウム負極との間に配置された、リチウム硫黄固体電池の製造方法であって、前記硫黄正極は、空隙部を多数有する導電性シートを有し、前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口し、前記硫黄正極は、前記空隙部に硫黄を含有しており、前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、前記硫黄正極を作製する工程を有する。
前記製造方法で製造されたリチウム硫黄固体電池は、新規なものであり、その前記硫黄正極においては、通常使用される導電助剤及びバインダーが不要である。したがって、前記リチウム硫黄固体電池のエネルギー密度は高い。
前記リチウム硫黄固体電池の好ましい作動温度は、110〜160℃である。すなわち、前記リチウム硫黄固体電池の作動時には、硫黄が溶融していることが好ましい。前記リチウム硫黄固体電池は、このように作動させることで、硫黄の利用効率が高く、優れた電池特性を有する。
まず、はじめに、図面を参照しながら、前記リチウム硫黄固体電池の構造について説明する。
なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
図1は、本実施形態で製造されるリチウム硫黄固体電池の要部の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示すリチウム硫黄固体電池1は、硫黄正極11と、リチウム負極12と、固体電解質13と、を備えて構成されている。
リチウム硫黄固体電池1において、固体電解質13は、硫黄正極11とリチウム負極12との間に配置されている。すなわち、リチウム硫黄固体電池1においては、硫黄正極11、固体電解質13及びリチウム負極12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されている。
硫黄正極11は、空隙部を多数有する導電性シートを有している。導電性シートの前記空隙部は、少なくとも硫黄正極11の作製前の段階(前記空隙部に硫黄を含有していない段階)では、前記導電性シートの外部に対して開口している。そして、硫黄正極11は、前記空隙部に硫黄を含有している。
硫黄正極11は、前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させて得られたものである。導電性シートが前記空隙部を有していることにより、このような方法で、硫黄正極11が作製可能となっている。
リチウム硫黄固体電池1においては、例えば、硫黄正極11及びリチウム負極12に、さらに、それぞれ外部回路との接続用の端子が設けられる。
また、リチウム硫黄固体電池1においては、さらに必要に応じて、上述の硫黄正極11、固体電解質13及びリチウム負極12の積層構造全体が、容器中に収納される。
また、リチウム硫黄固体電池1は、さらに必要に応じて、硫黄正極11中の溶融状態にある硫黄が、リチウム硫黄固体電池1の外部に漏出することを抑制する機構(漏出抑制機構)を備えていてもよい。例えば、前記容器が、このような漏出抑制機構を兼ねてもよい。
次に、前記リチウム硫黄固体電池の各層の構成について、詳細に説明する。
<硫黄正極>
[導電性シート]
導電性シートは、正極集電体として機能し得る。
導電性シートは空隙部を多数有しており、硫黄正極中においては、この空隙部に硫黄を含有している。
前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口している。そのため、溶融した硫黄又は硫黄溶液を導電性シートに含浸させることにより、導電性シートの空隙部に硫黄を含有する硫黄正極を作製できる。
導電性シート中の空隙部は、上記の条件を満たす限り、その形状は特に限定されない。
例えば、空隙部は、1個又は2個以上の他の空隙部と連結しいてもよいし、他の空隙部と連結することなく、独立していてもよい。
また、連結している空隙部、及び連結していない空隙部は、いずれも、導電性シートの一方の表面から反対側の他方の表面まで貫通していてもよいし、貫通することなく、導電性シートの内部で行き止まりとなっていてもよい。
また、連結している空隙部、及び連結していない空隙部は、いずれも、導電性シートの一方の表面から導電性シートの内部を経由して、再び同じ表面に到達していてもよい。
導電性シートの形態としては、例えば、多孔質体、又は、繊維状の材料が集合し、層を構成している繊維質のもの(本明細書においては、「繊維集合体」と称することがある)等が挙げられる。前記繊維集合体は、例えば、繊維状の材料が互いに絡み合って構成されていてもよいし、繊維状の材料が規則的又は不規則的に積み重なって構成されていてもよい。
導電性シートの構成材料は、導電性を有していればよいが、硫黄との反応性を有しないものが好ましい。
導電性シートの構成材料として、より具体的には、例えば、炭素、金属(単体金属、合金)等が挙げられる。
なかでも、導電性シートの好ましい構成材料としては、正極集電体の構成材料が挙げられ、より具体的には、例えば、炭素、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等が挙げられる。
導電性シートの構成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
好ましい導電性シートとしては、例えば、カーボンフェルト、カーボンクロス等が挙げられる。
導電性シートの厚さは、特に限定されず、適用する電池の目的に応じて適宜設定すればよい。通常、導電性シートの厚さは、50〜30000μmであることが好ましく、100〜3000μmであることがより好ましい。
なお、導電性シートの表面における凹凸度が高い場合など、導電性シートの厚さが導電性シートの部位によって明確に変動している場合には、最大の厚さを導電性シートの厚さとする(導電性シートの最も厚い部位の厚さを導電性シートの厚さとする)。これは、導電性シートに限らず、すべての層(後述する硫黄正極、リチウム負極及び固体電解質)の厚さについても、同様である。
[硫黄、硫黄溶液]
前記硫黄溶液は、溶媒に硫黄を溶解させることで、得られる。
前記硫黄溶液の溶媒は、硫黄を溶解可能であり、かつ、導電性シートを変質させないものであれば、特に限定されない。
前記溶媒は、無機溶媒及び有機溶媒のいずれであってもよい。
前記無機溶媒としては、例えば、二硫化炭素等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン等が挙げられる。
前記硫黄溶液中の溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
前記硫黄溶液の硫黄の濃度は、導電性シートの空隙部に硫黄溶液を含浸可能であれば、特に限定されない。
硫黄溶液の硫黄の濃度は、例えば、溶媒の種類に応じて、適宜調節できる。
硫黄溶液の硫黄の濃度は、例えば、0.1〜35質量%であることが好ましい。前記濃度が前記下限値以上であることで、硫黄の含有量が多い硫黄正極をより容易に得られる。前記濃度が前記上限値以下であることで、導電性シートへの含浸時における硫黄溶液の取り扱い性が、より良好となる。
硫黄正極の作製時において、溶融した硫黄を導電性シートに含浸させる方法としては、例えば、導電性シートの表面上に固体の硫黄を載置し、この状態の硫黄を加熱して溶融させる方法(本明細書においては、「含浸方法A」と略記することがある);加熱によって溶融させた状態の硫黄を、導電性シートの表面に供給する方法(本明細書においては、「含浸方法B」と略記することがある)等が挙げられる。
含浸方法Aにおいては、例えば、導電性シート上の硫黄を、この導電性シートとともに加熱してもよい。
含浸方法Bにおいては、例えば、溶融させた状態の硫黄を加熱しながら、導電性シートの表面に供給してもよい。また、導電性シートを硫黄と同等の温度で加熱しながら、硫黄を供給してもよい。
なかでも、含浸方法Aにおいては、導電性シート上の硫黄を加熱するだけで、溶融した硫黄が重力により、自然に導電性シートに含浸されていくため、極めて簡便に含浸させることができる。
したがって、溶融した硫黄を導電性シートに含浸させる方法は、含浸方法Aであることが好ましい。
溶融した硫黄を導電性シートに含浸させるときの、硫黄の温度は、120〜160℃であることが好ましく、135〜160℃であることがより好ましく、150〜160℃であることが特に好ましい。前記温度がこのような範囲であることで、硫黄の溶融粘度が十分に低下し、導電性シートの空隙部に硫黄を容易に導入できるとともに、空隙部内における硫黄の含有状態が、より良好となる。その結果、硫黄正極において、通常使用される導電助剤及びバインダーが不要となり、リチウム硫黄固体電池のエネルギー密度が、より高くなる。
硫黄正極の作製時において、硫黄溶液を導電性シートに含浸させる方法としては、例えば、硫黄溶液を導電性シートの表面に供給する方法;硫黄溶液中に導電性シートを浸漬する方法等が挙げられる。
導電性シートに硫黄溶液を含浸させるときの、硫黄溶液の温度は、硫黄溶液中の溶媒の種類に応じて、適宜調節することが好ましい。例えば、前記硫黄溶液の温度は、硫黄溶液中の溶媒の沸点以下であることが好ましい。前記温度が前記上限値以下であることで、導電性シートの空隙部に硫黄溶液を容易に導入できるとともに、空隙部内における硫黄の含有状態が、より良好となる。その結果、硫黄正極において、通常使用される導電助剤及びバインダーが不要となり、リチウム硫黄固体電池のエネルギー密度が、より高くなる。
導電性シートに硫黄溶液を含浸させるときの、硫黄溶液の温度の下限値は、硫黄溶液が固化しない限り特に限定されない。例えば、硫黄溶液の調製が容易であり、硫黄溶液の取り扱い性が良好である点では、前記温度は15℃以上であることが好ましい。
導電性シートに前記硫黄溶液を含浸させた場合には、硫黄溶液を乾燥させる(硫黄溶液中の溶媒を除去する)ことが必要となる。
硫黄溶液の乾燥は、公知の方法で行えばよく、例えば、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよい。
乾燥温度(溶媒の除去温度)は、硫黄溶液中の溶媒の種類に応じて、適宜調節することが好ましい。例えば、硫黄溶液の乾燥温度は、硫黄溶液中の溶媒の沸点以上であることが好ましい。
硫黄正極が、導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させて得られたものである場合、導電性シートの空隙部内においては、硫黄が特有の含有状態となる。すなわち、硫黄は、導電性シートの空隙部内において、塊状となり、前記空隙部の表面に対して、隙間の発生が抑制された状態で、接触して保持される。換言すると、導電性シートの空隙部内において、塊状の硫黄は、前記空隙部の表面との接触面積が大きくなっている。これは、溶融した硫黄又は硫黄溶液が、導電性シートへの含浸によって、導電性シートの空隙部内に充填されることによる効果である。例えば、溶解していない硫黄を含む硫黄分散液を、導電性シートへ含浸させた場合には、最終的に、溶解していない硫黄がそのまま粒子状等の形状で、導電性シートの空隙部内に保持される。このような硫黄正極では、硫黄と、前記空隙部の表面と、の接触面積は、小さくなってしまう。
前記硫黄正極において、このように硫黄が特有の含有状態となることで、通常使用される導電助剤及びバインダーが不要となり、エネルギー密度が高くなる。
さらに、前記硫黄正極においては、このように、硫黄が特有の含有状態となることで、そうでない場合よりも、硫黄の含有量の増量が可能である。これは、導電性シートの空隙部内の硫黄の含有量が増大するためである。このように、硫黄の含有量が増大した状態となった場合、前記リチウム硫黄固体電池は、硫黄の利用量が多くなり、この点でも、優れた電池特性を有する。
前記硫黄正極としては、例えば、硫黄の含有量が、好ましくは6mg/cm以上、より好ましくは10mg/cm以上、さらに好ましくは15mg/cm以上、特に好ましくは20mg/cm以上であるものが挙げられる。本明細書において、「硫黄正極の硫黄の含有量(mg/cm)」とは、特に断りのない限り、硫黄正極をその真上から見下ろして平面視したときの、硫黄正極の表面積1cmあたりの、硫黄正極の硫黄の含有量(mg)を意味する。
前記硫黄正極の硫黄の含有量の上限値は、特に限定されない。硫黄正極の硫黄の含有量は、例えば、硫黄正極の作製がより容易である点では、300mg/cm以下であることが好ましい。
前記硫黄正極においては、硫黄の含有量を、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内となるように、適宜調節できる。例えば、硫黄正極の硫黄の含有量は、6〜300mg/cmであることが好ましく、10〜300mg/cmであることがより好ましく、15〜300mg/cmであることがさらに好ましく、20〜300mg/cmであることが特に好ましい。ただし、これらは、硫黄正極の硫黄の含有量の一例である。
上述のとおり、導電性シートの空隙部内での硫黄が特有の含有状態であることにより、前記硫黄正極においては、導電助剤、バインダー等の、通常の正極で使用される成分が、不要である。このように、導電性シート中で、硫黄以外の成分が不要である(含有されない)ことによっても、硫黄正極における硫黄の含有量の増量が可能である。
[イオン液体]
硫黄正極は、導電性シートの空隙部に、さらに、イオン液体を含有していることが好ましい。イオン液体は、高温安定性に優れるとともに、リチウムイオンを容易に移動させることが可能である。したがって、硫黄正極がイオン液体を含有していることにより、硫黄正極と固体電解質との接触面積が小さいものの、イオン液体が硫黄正極と固体電解質との間でリチウムイオンを移動させる。したがって、このような硫黄正極を用いた固体電池は、固体電解質を用いているにも関わらず、硫黄正極界面での界面抵抗値が小さくなり、より優れた電池特性を有する。
前記イオン液体は、例えば、公知のものから適宜選択できる。
イオン液体としては、例えば、170℃未満の温度で液状のイオン性化合物、溶媒和イオン液体等が挙げられる。
(170℃未満の温度で液状のイオン性化合物)
前記イオン性化合物を構成するカチオン部は、有機カチオン及び無機カチオンのいずれでもよいが、有機カチオンであることが好ましい。
前記イオン性化合物を構成するアニオン部も、有機アニオン及び無機アニオンのいずれでもよい。
前記カチオン部のうち、有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン(imidazolium cation)、ピリジニウムカチオン(pyridinium cation)、ピロリジニウムカチオン(pyrrolidinium cation)、ホスホニウムカチオン(phosphonium cation)、アンモニウムカチオン(ammonium cation)、スルホニウムカチオン(sulfonium cation)等が挙げられる。
ただし、前記有機カチオンは、これらに限定されない。
前記アニオン部のうち、有機アニオンとしては、例えば、メチルサルフェートアニオン(CHSO )、エチルサルフェートアニオン(CSO )等のアルキルサルフェートアニオン(alkylsulfate anion);
トシレートアニオン(CHSO );
メタンスルホネートアニオン(CHSO )、エタンスルホネートアニオン(CSO )、ブタンスルホネートアニオン(CSO )等のアルカンスルホネートアニオン(alkanesulfonate anion);
トリフルオロメタンスルホネートアニオン(CFSO )、ペンタフルオロエタンスルホネートアニオン(CSO )、ヘプタフルオロプロパンスルホネートアニオン(CSO )、ノナフルオロブタンスルホネートアニオン(CSO )等のパーフルオロアルカンスルホネートアニオン(perfluoroalkanesulfonate anion);
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CFSO)N)、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン((CSO)N)、ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルイミドアニオン((CFSO)(CSO)N)、N,N−ヘキサフルオロ−1,3−ジスルホニルイミドアニオン(SOCFCFCFSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミドアニオン(perfluoroalkanesulfonylimide anion);
アセテートアニオン(CHCOO);
ハイドロジェンサルフェートアニオン(HSO );等が挙げられる。
ただし、前記有機アニオンは、これらに限定されない。
前記アニオン部のうち、無機アニオンとしては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(N(SOF) );ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF );テトラフルオロボレートアニオン(BF );塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)等のハライドアニオン(halide anion);テトラクロロアルミネートアニオン(AlCl )、チオシアネートアニオン(SCN)等が挙げられる。
ただし、前記無機アニオンは、これらに限定されない。
前記イオン性化合物としては、例えば、上記のいずれかのカチオン部と、上記のいずれかのアニオン部と、の組み合わせで構成されたものが挙げられる。
カチオン部がイミダゾリウムカチオンであるイオン液体としては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、メチルイミダゾリウムクロライド、メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェート等が挙げられる。
カチオン部がピリジニウムカチオンであるイオン液体としては、例えば、1−ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
カチオン部がピロリジニウムカチオンであるイオン液体としては、例えば、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
カチオン部がホスホニウムカチオンであるイオン液体としては、例えば、テトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルドデシルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
カチオン部がアンモニウムカチオンであるイオン液体としては、例えば、メチルトリブチルアンモニウムメチルサルフェート、ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルへキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
(溶媒和イオン液体)
前記溶媒和イオン液体で好ましいものとしては、例えば、グライム−リチウム塩錯体からなるもの等が挙げられる。
前記グライム−リチウム塩錯体におけるリチウム塩としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiN(SOF)、本明細書においては、「LiFSI」と略記することがある)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SOCF、本明細書においては、「LiTFSI」と略記することがある)等が挙げられる。
前記グライム−リチウム塩錯体におけるグライムとしては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(CH(OCHCHOCH、トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(CH(OCHCHOCH、テトラグライム)等が挙げられる。
前記グライム−リチウム塩錯体としては、例えば、グライム1分子とリチウム塩1分子とで構成された錯体等が挙げられるが、グライム−リチウム塩錯体はこれに限定されない。
前記グライム−リチウム塩錯体は、例えば、リチウム塩とグライムとを、リチウム塩(モル):グライム(モル)のモル比が、好ましくは10:90〜90:10となるように、混合することで作製できる。
好ましいグライム−リチウム塩錯体としては、例えば、トリグライム−LiFSI錯体、テトラグライム−LiFSI錯体、トリグライム−LiTFSI錯体、テトラグライム−LiTFSI錯体等が挙げられる。
硫黄正極が含有するイオン液体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
硫黄正極が含有するイオン液体は、上記の中でも、グライム−リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体であることが好ましい。
イオン液体を用いる場合、硫黄正極において、硫黄及びイオン液体の合計含有量に対する、イオン液体の含有量の割合([硫黄正極のイオン液体の含有量(質量部)]/[硫黄正極の硫黄及びイオン液体の合計含有量(質量部)]×100)は、特に限定されないが、5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましい。前記含有量の割合が前記下限値以上であることで、硫黄正極の導電性がより向上する。前記含有量の割合が前記上限値以下であることで、電池の充放電特性がより向上する。
[その他の成分]
硫黄正極は、導電性シートの空隙部の内外によらず、導電性シート、硫黄及びイオン液体のいずれにも該当しない、その他の成分を含有していてもよい。
前記その他の成分は、硫黄正極の機能を阻害しないものであれば、特に限定されない。
硫黄正極が含有する前記その他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、導電助剤、バインダー等の、通常の正極で使用される成分を、硫黄正極は含有していてもよい。硫黄正極は、導電助剤を含有する場合、硫黄及び導電助剤の複合体として含有していてもよい。硫黄及び導電助剤の複合体とは、例えば、硫黄と、炭素含有材料(例えば、ケッチェンブラック等)と、を混合し、焼成することで得られるものである。
前記導電助剤としては、例えば、黒鉛(グラファイト);ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ;グラフェン;フラーレン等が挙げられる。
前記バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(PAALi)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)等が挙げられる。
ただし、硫黄正極においては、前記その他の成分の含有量が多いほど、その分だけ、硫黄の含有量が少なくなってしまう。
このような観点から、硫黄正極において、導電性シート以外の成分の総含有量に対する、前記その他の成分の含有量の割合([硫黄正極におけるその他の成分の含有量(質量部)]/[硫黄正極における導電性シート以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましく、0質量%であること、すなわち、硫黄正極が前記その他の成分を含有しないことが最も好ましい。
換言すると、硫黄正極において、導電性シート以外の成分の総含有量に対する、硫黄及びイオン液体の合計含有量の割合([硫黄正極における硫黄及びイオン液体の合計含有量(質量部)]/[硫黄正極における導電性シート以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく99質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
このような条件を満たすリチウム硫黄固体電池は、より優れた電池特性を有する。
硫黄正極の厚さは、特に限定されず、適用する電池の目的に応じて適宜設定すればよい。通常、硫黄正極の厚さは、100〜30000μmであることが好ましく、200〜3000μmであることがより好ましい。
<リチウム負極>
前記リチウム硫黄固体電池におけるリチウム負極は、公知のものであってよい。
リチウム負極の厚さは、特に限定されず、適用する電池の目的に応じて適宜設定すればよい。通常、リチウム負極の厚さは、10〜2000μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがより好ましい。
<固体電解質>
前記リチウム硫黄固体電池における固体電解質の構成材料は、特に限定されず、結晶性材料、アモルファス材料及びガラス材料のいずれであってもよい。
固体電解質の構成材料として、より具体的には、例えば、硫化物を含まず、かつ酸化物を含むもの(本明細書においては「酸化物系材料」と称することがある)、少なくとも硫化物を含むもの(本明細書においては「硫化物系材料」と称することがある)等、公知のものが挙げられる。
前記酸化物系材料としては、例えば、LiLaZr12(LLZ)、Li2.9PO3.30.46(LIPON)、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、50LiSiO・50LiBO、Li3.6Si0.60.4、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO等が挙げられる。
また、前記酸化物系材料としては、例えば、LiLaZr12(LLZ)等の複合酸化物に、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ビスマス等の元素が添加(ドープ)されたものも挙げられる。ここで、添加される元素は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
前記硫化物系材料としては、例えば、Li10GeP12(LGPS)、Li3.25Ge0.250.75、30LiS・26B・44LiI、63LiS・36SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSiO、70LiS・30P(LISPS)、50LiS・50GeS、Li11、Li3.250.95等が挙げられる。
固体電解質の構成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
固体電解質の構成材料は、大気中における安定性が高く、緻密性が高い固体電解質を作製できる点から、前記酸化物系材料であることが好ましい。
固体電解質の厚さは、特に限定されず、適用する電池の目的に応じて適宜設定すればよい。通常、固体電解質の厚さは、10〜1200μmであることが好ましい。固体電解質の厚さが前記下限値以上であることで、その製造及び取り扱い性がより良好となる。固体電解質の厚さが前記上限値以下であることで、リチウム硫黄固体電池の抵抗値がより低減される。
固体電解質は、例えば、その目的とする種類に応じて、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物等の原料を選択し、この原料を焼成することで製造できる。原料の使用量は、固体電解質における各金属の原子数比等を考慮して、適宜設定すればよい。
前記リチウム硫黄固体電池は、上述のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、これまでに説明したものにおいて、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
<他の層>
例えば、前記リチウム硫黄固体電池は、硫黄正極、固体電解質及びリチウム負極のいずれにも該当しない、1種又は2種以上の他の層を、1種ごとに1層又は2層以上備えていてもよい。
前記他の層は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層としては、例えば、後述する金のスパッタ層、リチウムイオン伝導層等が挙げられる。
[金のスパッタ層]
前記リチウム硫黄固体電池は、前記固体電解質と前記リチウム負極との間に配置された、金のスパッタ層を備えていてもよい。
例えば、リチウム負極と固体電解質との間に、金のスパッタ層が配置され、これら3層がこの順で、互いに直接接触しているリチウム硫黄固体電池においては、金のスパッタ層が配置されていない場合よりも、リチウム負極界面での界面抵抗値が低減される。
金のスパッタ層の厚さは、50nm以上であることが好ましく、100〜200nmであることがより好ましい。
[リチウムイオン伝導層]
前記リチウム硫黄固体電池は、前記固体電解質と前記リチウム負極との間に配置されたリチウムイオン伝導層を備えていてもよい。
前記リチウムイオン伝導層は、イオン液体を含有し、かつ、前記リチウム負極と前記固体電解質との間でリチウムイオンを伝導させる層である。
リチウムイオン伝導層は、より具体的には、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)から他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)にまで到達する空隙部を多数有している。したがって、リチウムイオン伝導層を介して、リチウム負極と固体電解質との間においては、液状物や微細な物質の移動が可能となっている。
さらに、リチウムイオン伝導層は、この空隙部等に、イオン液体を保持している。このイオン液体中には、リチウムイオンが溶解可能である。したがって、リチウムイオン伝導層を介して、リチウム負極と固体電解質との間(リチウムイオン伝導層中のその厚さの方向)においては、リチウムイオンが容易に伝導可能となっている。
リチウムイオン伝導層のうち、前記空隙部を有し、イオン液体を保持するとともに、リチウムイオン伝導層の形状を維持している部位を、本明細書においては、「本体部」と称する。すなわち、リチウムイオン伝導層は、前記本体部と、前記本体部によって保持されているイオン液体と、を含む。
前記リチウム硫黄固体電池においては、リチウムイオン伝導層が存在することにより、リチウムイオン伝導層中のイオン液体によって、リチウムイオン伝導層中、換言するとリチウム負極と固体電解質との間、において、金属リチウムの析出が抑制される。ここで、「リチウムイオン伝導層中で金属リチウムの析出が抑制される」とは、「リチウムイオン伝導層中で金属リチウムが全く析出しないか、又はリチウムイオン伝導層中で金属リチウムが析出したとしても、その析出量が微量であること」を意味する。したがって、リチウムイオン伝導層は、リチウム負極と固体電解質との間で、円滑にリチウムイオンを伝導させる。さらに、このように金属リチウムの析出が抑制されることで、固体電解質中においても、金属リチウムの析出が抑制される。すなわち、リチウム硫黄固体電池においては、リチウムイオン伝導層から、固体電解質を介して、硫黄正極までの間で、金属リチウムが連続的に析出することが抑制される。その結果、リチウム硫黄固体電池においては、例えば、充放電を行ったときに、短絡(ショート)と固体電解質の割れの発生を抑制できる。
(本体部)
リチウムイオン伝導層の本体部としては、例えば、多孔質体、又は、繊維状の材料が集合し、層を構成している繊維質のもの(本明細書においては、「繊維集合体」と称することがある)等が挙げられる。
前記本体部は、リチウム硫黄固体電池の作動時の温度条件下において、リチウム負極と反応せず、溶解せず、変質しないものが好ましい。ここで、「本体部の変質」とは、本体部の成分の組成が変化することを意味する。リチウム硫黄固体電池の作動時の温度は、上述のとおり、例えば、110〜160℃である。したがって、リチウムイオン伝導層の本体部は、このような温度条件下において安定なものが好ましい。
このような本体部のうち、前記多孔質体又は繊維集合体の構成材料としては、例えば、合成樹脂、ガラス、紙類等が挙げられ、合成樹脂又はガラスであることが好ましい。
なかでも、前記本体部の構成材料は、ポリイミド又はガラスであることがより好ましい。すなわち、リチウムイオン伝導層は、その構成材料として、ポリイミド又はガラスを含むことがより好ましい。
リチウムイオン伝導層の本体部の構成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
(イオン液体)
リチウムイオン伝導層が含有するイオン液体としては、上述の硫黄正極が含有するイオン液体と同様のもの(例えば、170℃未満の温度で液状のイオン性化合物、溶媒和イオン液体等)が挙げられる。
リチウムイオン伝導層が含有するイオン液体は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
リチウムイオン伝導層が含有するイオン液体は、上述の硫黄正極が含有するイオン液体と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
リチウムイオン伝導層が含有するイオン液体は、グライム−リチウム塩錯体からなる溶媒和イオン液体であることが好ましい。リチウムイオン伝導層がこのようなイオン液体を含有することで、固体電解質中での金属リチウムの析出抑制効果がより高くなる。
リチウムイオン伝導層のイオン液体の含有量は、特に限定されない。
ただし、リチウムイオン伝導層の前記本体部中の空隙部の合計体積に対する、リチウムイオン伝導層に保持されているイオン液体の合計体積の割合([リチウムイオン伝導層に保持されているイオン液体の合計体積]/[リチウムイオン伝導層の本体部中の空隙部の合計体積]×100)は、常温下において、80〜120体積%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、固体電解質中での金属リチウムの析出抑制効果がより高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、イオン液体の過剰使用が抑制される。
前記割合が100体積%より大きくなり得るのは、リチウムイオン伝導層中、前記本体部の空隙部以外にも、イオン液体が存在し得るからである。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
リチウムイオン伝導層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。リチウムイオン伝導層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、リチウムイオン伝導層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
リチウムイオン伝導層の厚さは、特に限定されない。
複数層からなるリチウムイオン伝導層の厚さとは、リチウムイオン伝導層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
ただし、固体電解質中での金属リチウムの析出抑制効果がより高くなる点では、リチウムイオン伝導層の厚さは、10μm以上であることが好ましい。リチウムイオン伝導層の厚さが、前記下限値以上であることで、リチウムイオン伝導層中で金属リチウムが析出しなくなるか、又は、リチウムイオン伝導層中で微量の金属リチウムが析出したとしても、その影響が固体電解質中に及ぶことがない。結果として、リチウム硫黄固体電池においては、リチウムイオン伝導層から固体電解質を介して、硫黄正極までの間で、金属リチウムが連続的に析出することが抑制される。
一方、リチウムイオン伝導層の厚さが過剰にならない(より適正となる)点では、リチウムイオン伝導層の厚さは、100μm以下であることが好ましい。
通常、リチウムイオン伝導層が薄くなるほど、リチウムイオン伝導層での抵抗値が減少し、リチウム硫黄固体電池のエネルギー密度が高くなる。
図2は、本実施形態で製造される他のリチウム硫黄固体電池の要部の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示すリチウム硫黄固体電池2は、硫黄正極11と、リチウム負極12と、固体電解質13と、他の層14と、を備えて構成されている。リチウム硫黄固体電池2においては、硫黄正極11、固体電解質13、他の層14及びリチウム負極12がこの順に、これらの厚さ方向において積層されている。
図2中、符号14aは他の層14の第1面を示し、符号14bは他の層14の第2面を示し、符号T14は他の層14の厚さを示している。
リチウム硫黄固体電池2は、固体電解質13とリチウム負極12との間に、他の層14を備えている点以外は、図1に示すリチウム硫黄固体電池1と同じである。
前記リチウム硫黄固体電池は、例えば、硫黄正極の断面を観察することで、他のリチウム硫黄固体電池との区別が可能である。
硫黄正極として、例えば、導電性シートの空隙部に、硫黄、導電助剤、バインダー、及び必要に応じてイオン液体を含有しているものの断面においては、導電助剤が観測される。導電助剤としては、通常、上述のとおり炭素系材料が使用されるため、導電助剤を含有する硫黄正極の断面においては、広い領域で黒色の成分が観測される。これに対して、本実施形態で製造されるリチウム硫黄固体電池の硫黄正極の断面においては、通常、導電助剤が観測されない。
また、上述のような硫黄、導電助剤、バインダー等を含有する硫黄正極は、これら成分を含有する分散液(先に説明した「溶解していない硫黄を含む硫黄分散液」と同じである)である正極材を用いて作製する。その場合には、先の説明のとおり、硫黄正極の断面においては、溶解していない硫黄がそのまま粒子状等の形状で、導電性シートの空隙部内に保持されているのが観測される。これに対して、本実施形態で製造されるリチウム硫黄固体電池の硫黄正極の断面においては、先の説明のとおり、塊状の硫黄が、導電性シート空隙部の表面に対して、隙間の発生が抑制された状態で、接触して保持されているのが観測される。
本実施形態で製造されるリチウム硫黄固体電池は、上記のとおり優れた電池特性を有し、しかも安全性が高い。前記リチウム硫黄固体電池は、このような特長を生かして、例えば、家庭用電源;非常用電源;飛行機、電気自動車等の電源等として用いるのに好適である。
本実施形態のリチウム硫黄固体電池の製造方法は、例えば、前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、前記硫黄正極を作製する工程以外に、前記硫黄正極、固体電解質及びリチウム負極をこの順に、これらの厚さ方向において積層する工程を有する。
例えば、本実施形態のリチウム硫黄固体電池の製造方法は、硫黄正極を作製する工程として、上述の特定の工程を行う点以外は、公知のリチウム硫黄固体電池の製造方法と同じである。
<硫黄正極を作製する工程>
前記硫黄正極を作製する工程においては、上述のとおり、前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、前記硫黄正極を作製する。
本工程において、導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させる方法は、先に説明したとおりである。
硫黄正極として、導電性シートの空隙部にイオン液体を含有するものを作製する場合には、例えば、上述の方法により、導電性シートの空隙部に硫黄を含有する硫黄正極(硫黄を含有する導電性シート)を作製した後、この硫黄正極中の導電性シートの空隙部に、さらにイオン液体を含浸させればよい。
硫黄正極として、導電性シートの空隙部に、硫黄及びイオン液体のいずれにも該当しない、その他の成分を含有するものを作製する場合には、その他の成分の種類に応じて適したタイミングで、その他の成分を導電性シートの空隙部にさらに含浸させればよい。
前記硫黄正極を作製する工程を行った後は、例えば、必要に応じて、導電性シートを冷却したり、得られたものを目的とする大きさ又は形状に加工するなど、任意の工程を適したタイミングで行うことにより、硫黄正極が得られる。
<他の層を作製する工程>
前記他の層を備えたリチウム硫黄固体電池の製造方法は、上述の製造方法において、他の層を、その種類に応じて適したタイミング及び方法で作製する工程を、さらに有する。
[金のスパッタ層を作製する工程]
金のスパッタ層は、目的とする箇所(通常は、前記固体電解質の負極側となる表面)に、公知の方法により、金をスパッタリングすることで、作製できる。
すなわち、本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄固体電池の製造方法は、前記硫黄正極を作製する工程と、前記固体電解質の負極側となる表面に、スパッタリングにより、金のスパッタ層を作製する工程と、前記硫黄正極、固体電解質及びリチウム負極をこの順に、これらの厚さ方向において積層する工程と、を有する。
前記金のスパッタ層を作製する工程は、公知の方法で行うことができる。
[リチウムイオン伝導層を作製する工程]
リチウムイオン伝導層は、例えば、前記本体部の構成材料と、イオン液体と、必要に応じて溶媒と、を含有する第1原料組成物を調製し、リチウムイオン伝導層の形成対象面に、前記第1原料組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで形成できる。この方法は、本体部とリチウムイオン伝導層の形成を同時に行う方法である。溶媒を用いない場合には、塗工した第1原料組成物の乾燥は不要である。
第1原料組成物の調製時において、各原料の添加及び混合時の温度並びに時間は、各原料が劣化しない限り特に限定されない。
例えば、混合時の温度は、15〜50℃であってもよいが、これは一例である。
各原料を混合する方法は、特に限定されず、撹拌棒、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
第1原料組成物は、公知の方法で、リチウムイオン伝導層の形成対象面に塗工できる。
塗工する第1原料組成物の温度は、リチウムイオン伝導層の形成対象面、本体部の構成材料、イオン液体及び溶媒等が劣化しない限り特に限定されない。例えば、このときの第1原料組成物の温度は、15〜50℃であってもよいが、これは一例である。
第1原料組成物を乾燥させる場合には、その乾燥は、公知の方法で常圧下又は減圧下で行うことができる。第1原料組成物の乾燥温度は、特に限定されず、例えば、20〜100℃であってもよいが、これは一例である。
リチウムイオン伝導層の形成対象面が、リチウム硫黄固体電池中でのリチウムイオン伝導層の配置面(例えば、固体電解質のリチウム負極側の表面、リチウム負極の固体電解質側の表面等)である場合には、形成したリチウムイオン伝導層は、他の箇所へ移動させる必要はなく、このままの配置とすればよい。
一方、リチウムイオン伝導層の形成対象面が、リチウム硫黄固体電池中でのリチウムイオン伝導層の配置面ではない場合には、形成したリチウムイオン伝導層は、この面から剥離させ、リチウム硫黄固体電池中での目的とする配置面に貼り合わせることで、移動させればよい。
また、リチウムイオン伝導層は、例えば、イオン液体を前記本体部中に含浸させるか、又は、イオン液体と、溶媒と、を含有する混合液を調製し、前記混合液を前記本体部中に含浸させ、必要に応じて含浸後の前記本体部を乾燥させることでも形成できる。この方法は、あらかじめ形成済みの本体部を用いる方法である。溶媒を用いない場合には、含浸後の前記本体部の乾燥は不要である。
この場合には、本体部は、リチウム硫黄固体電池中でのリチウムイオン伝導層の配置面には配置しておかずに、独立して取り扱い、リチウムイオン伝導層を形成した後、得られたリチウムイオン伝導層を、さらに、リチウム硫黄固体電池中での目的とする配置面に貼り合わせることが好ましい。
前記本体部は、例えば、前記本体部の構成材料を含有する第2原料組成物を調製し、この第2原料組成物を成形するなど、公知の方法により作製できる。
また、前記本体部は、市販品であってもよい。
前記イオン液体又は混合液を前記本体部中に含浸させる方法としては、例えば、前記イオン液体又は混合液を前記本体部に塗工する方法、前記本体部を前記イオン液体又は混合液中に浸漬する方法等が挙げられる。
前記イオン液体又は混合液は、公知の方法で、前記本体部に塗工できる。
前記本体部に含浸させる、前記イオン液体又は混合液の温度は、前記本体部、イオン液体及び溶媒等の各原料が劣化しない限り特に限定されない。例えば、含浸時の前記イオン液体又は混合液の温度は、15〜50℃であってもよいが、これは一例である。
混合液を含浸後の前記本体部の乾燥は、公知の方法で常圧下又は減圧下で行うことができる。このときの乾燥温度は、特に限定されず、例えば、20〜100℃であってもよいが、これは一例である。
すなわち、本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄固体電池の製造方法は、前記硫黄正極を作製する工程と、前記固体電解質の負極側となる表面に、リチウムイオン伝導層を作製する工程と、前記硫黄正極、固体電解質及びリチウム負極をこの順に、これらの厚さ方向において積層する工程と、を有する。
また、本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄固体電池の製造方法は、前記硫黄正極を作製する工程と、前記リチウム負極の固体電解質側の表面に、リチウムイオン伝導層を作製する工程と、前記硫黄正極、固体電解質及びリチウム負極をこの順に、これらの厚さ方向において積層する工程と、を有する。
また、本発明の一実施形態に係るリチウム硫黄固体電池の製造方法は、前記硫黄正極を作製する工程と、前記固体電解質の負極側となる表面及び前記リチウム負極の固体電解質側の表面のいずれでもない面に、リチウムイオン伝導層を作製する工程と、前記硫黄正極、固体電解質、リチウムイオン伝導層及びリチウム負極をこの順に、これらの厚さ方向において積層する工程と、を有する。本実施形態においては、上述のとおり、前記本体部を、リチウム硫黄固体電池中でのリチウムイオン伝導層の配置面には配置しない。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
[実施例1]
<リチウム硫黄固体電池の製造>
(硫黄正極の製造)
カーボンクロス(質量7mg、直径10mm、厚さ1000μmの円形状)の一方の面上に、粉末状の硫黄を載置し、この状態の硫黄をカーボンクロスとともに加熱した。このときの硫黄の温度は、最終的に120℃以上となるようにした。このとき硫黄は、その温度の上昇とともに徐々に導電性シートに含浸していき、加熱温度が120℃の段階では、カーボンクロス上で視認できなくなった。加熱温度は最終的に150℃以上とした。
次いで、この硫黄含浸済みカーボンクロスを冷却し、硫黄を固化させた。
この含浸及び冷却後のカーボンクロスにおいて、硫黄の含有量は、21.7mg/cmであった。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、上記得られた、含浸及び冷却後のカーボンクロスを、300倍の倍率で観察した。このとき取得した撮像データを図3に示す。また、このとき用いた、硫黄を含浸する前のカーボンクロスについても、同様にSEMを用いて観察した。このとき取得した撮像データを図4に示す。
図4に示すように、カーボンクロスの撮像データでは、カーボンクロスを構成している繊維が1本ずつ鮮明に観測でき、カーボンクロスの空隙部内に含有成分が存在しないことを明確に確認できた。
一方、図3に示すように、前記含浸及び冷却後のカーボンクロスの撮像データでは、カーボンクロスを構成している繊維が、SEM側の一部領域を除いて観測できなかった。このように、前記含浸及び冷却後のカーボンクロスにおいては、カーボンクロスの空隙部内に、硫黄がほぼ隙間なく充填されていた。すなわち、硫黄は、カーボンクロスの空隙部内において、塊状となり、この空隙部の表面に対して、隙間の発生が抑制された状態で、接触して保持されていた。
次いで、前記含浸及び冷却後のカーボンクロスに、さらにテトラグライム−LiTFSI錯体(150mg)を含浸させた。
以上により、硫黄正極を得た。
得られた硫黄正極において、硫黄及びイオン液体の合計含有量に対する、イオン液体の含有量の割合は、90質量%であった。
また、得られた硫黄正極の硫黄の含有量は、上述のとおり、21.7mg/cmであった。
(固体電解質の製造)
水酸化ランタン(純度99.99%、高純度化学研究所社製)(40.38g)、水酸化リチウム(純度98.0%、関東化学社製)(20.44g)及び酸化ジルコニウム(東ソー社製)(17.47g)を秤量し、これらをボールミルで2時間粉砕しながら混合した。得られた粉体(73.10g)を秤量し、焼成用セラミック容器に移し、電気炉を用いて900℃で15時間焼成した後、降温速度5℃/minで冷却して、最終的に室温まで冷却し、リチウム−ランタン−ジルコニウム複合酸化物を得た。
得られた複合酸化物(54.67g)、及び酸化アルミニウム(γ−アルミナ、純度99.99%、高純度化学研究所社製)(0.90g)を秤量し、これらをボールミルで2時間粉砕しながら混合した。両軸プレス機を用いて、得られた混合物を成形することにより、直径18mm、厚さ1.5mmの円板状ペレットを作製した。
マザーパウダー(水酸化ランタン、水酸化リチウム、酸化ジルコニウム及び酸化アルミニウムの混合粉末)を敷いた焼成用セラミック容器に、上記で得られたペレット(0.5g)を移し、さらにマザーパウダーでペレットを覆い、電気炉を用いて焼成した。焼成条件は以下のとおりである。すなわち、昇温速度5℃/minで室温から1200℃まで昇温し、そのまま24時間、1200℃を維持し、ここから降温速度5℃/minで冷却して、最終的に室温まで冷却した。次いで、ペレットに付着したマザーパウダーを研磨により除去した。
以上により、固体電解質として、ペレット状の、アルミニウムがドープされたリチウム−ランタン−ジルコニウム複合酸化物(AlドープLLZ)成形体(Li6.25Al0.25LaZr12、直径15mm、厚さ1.0mm)を得た。
(金のスパッタ層の形成)
円形状のポリイミドテープ(厚さ0.09mm、直径18mm)に対して、同心となる直径10mmの円をくり抜いてリング状とし、マスキングテープとした。
次いで、上記で得られたAlドープLLZ成形体の負極側となる表面に、このマスキングテープを貼り付けた。
次いで、この負極側となる露出面(負極側となる表面のうち、マスキングテープでマスキングされていない領域)に対して、金をスパッタリングすることにより、金のスパッタ層を形成した。金のスパッタ層を形成後、マスキングテープをAlドープLLZ成形体から剥がした。
(リチウム硫黄固体電池の製造)
ステンレス鋼製電気化学試験用電池セル容器を用いて、この容器内に、上記で得られた硫黄正極を載置し、この硫黄正極上に、AlドープLLZ成形体を、その正極側となる表面を硫黄正極側に向けて、載置した。
次いで、このAlドープLLZ成形体に設けられた金のスパッタ層上に、負極としてリチウム箔(直径10mm、厚さ600μm)を載置して、密着させた。
次いで、この負極上に、負極集電体としてスレンレス鋼箔(直径15mm、厚さ500μm)を載置した。
次いで、この負極集電体上にステンレス鋼製ワッシャーを載置し、最後に上蓋を閉じた。
以上により、負極、金のスパッタ層、固体電解質及び硫黄正極がこの順に積層された構成を有する電池セル(リチウム硫黄固体電池)を得た。
<リチウム硫黄固体電池の評価>
上記で得られた電池セルについて、カットオフ電位1〜3.5V、電流値200μA/cm、温度120℃の条件で、定電流充放電試験を行った。このとき得られた放電曲線(測定結果)を図5に示す。
図5から、本実施例の電池セルは、良好な電池特性を有していることが確認された。
[参考例1]
<リチウム硫黄固体電池の製造>
(固体電解質の製造)
水酸化ランタン(純度99.99%、信越化学工業社製)(33.9g)及び酸化ジルコニウム(東ソー社製)(14.7g)を秤量し、これらをボールミルで1時間粉砕しながら混合した。得られた粉体(0.26g)を秤量し、金型ダイスに投入して、一軸プレス機を用いて、得られた混合物を成形することにより、直径13mm、厚さ1mmの円板状ペレットを作製した。
次いで、この円板状ペレットを焼成用セラミック容器に移し、電気炉を用いて1500℃で36時間焼成した後、自然放冷により、最終的に室温まで冷却し、ランタン−ジルコニウム複合酸化物の成形体を得た。
別途、水酸化リチウム(純度98.0%、関東化学社製)(2.8g)を水(30mL)に溶解させ、得られた水溶液(1mL)を秤量し、上記で得られたランタン−ジルコニウム複合酸化物の成形体が入っている焼成用セラミック容器に添加した。
次いで、この添加後の焼成用セラミック容器を、マイクロ波焼成炉に移し、マイクロ波を照射して炉内温度400℃で36時間焼成し、リチウム−ランタン−ジルコニウム複合酸化物(LLZ)成形体(直径12mm、厚さ0.51mm、質量0.2647g)を得た。
得られたLLZ成形体を用いて、負極側となる表面に金をスパッタリングした。
(正極材の製造)
硫黄(1.8g)及びアセチレンブラック(比表面積68m/g、DBP吸油量170cm/100g、デンカ社製)(0.2g)をメノウ乳鉢に秤り取り、粉砕しながら15分間混合した後、N−メチルピロリドンを少しずつ加えながら混合することにより、粘稠なスラリーとして正極材を調製した。
(硫黄正極の製造)
円形状のポリイミドテープ(厚さ0.09mm、直径12mm)に対して、同心となる直径8mmの円をくり抜いてリング状とし、マスキングテープとした。
次いで、金のスパッタ層を形成したLLZ成形体の正極側となる表面に、このマスキングテープを貼り付けた。
次いで、この正極側となる露出面(正極側となる表面のうち、マスキングテープでマスキングされていない領域)の中央部に、上記で得られた正極材を付着させた。そして、スライドガラスの端面でこの正極材を摺り切るように、スライドガラスを2、3度往復させることで、正極材を、前記露出面の全体に平らでかつ均等に行き渡るように広げて塗布した。
次いで、真空乾燥機を用いて、この塗布済みLLZ成形体を、80℃で一昼夜乾燥させて、N−メチルピロリドンをすべて除去することで、LLZ成形体上に硫黄正極(厚さ約0.09mm、直径8mm)を形成した。
次いで、LLZ成形体からマスキングテープを剥がし、硫黄正極、固体電解質、及び金のスパッタ層がこの順に積層された積層物(0.2673g)を得た。この積層物の質量から、形成した硫黄正極の質量は0.0026gであり、硫黄正極中の硫黄の質量は2.34mgであり、硫黄正極の硫黄の含有量は4.7mg/cmであった。
(リチウム硫黄固体電池の製造)
市販のステンレス鋼製電気化学試験用電池セル容器を用いて、この容器内に、集電体として銅箔(直径23mm、厚さ20μm)を載置し、この銅箔上に、負極としてリチウム箔(直径8mm、厚さ600μm)を載置した。
次いで、この負極に、上記で得られた積層物の金のスパッタ層を重ね合せた後、120℃で加熱することにより、リチウム箔を金のスパッタ層に密着させて、負極、金のスパッタ層、固体電解質及び硫黄正極をこの順に積層した。
次いで、硫黄正極上に、正極集電体としてスレンレス鋼箔(直径8mm、厚さ20μm)を載置し、最後に上蓋を閉じることで、電池セル(リチウム硫黄固体電池)を得た。
<リチウム硫黄固体電池の評価>
上記で得られた電池セルを、105℃で12時間保管した。
次いで、この保管後の電池セルについて、温度60℃の条件で、定電流充放電試験を行った。このとき得られた放電曲線(測定結果)を図6に示す。
図6から、参考例1の電池セルは、良好な電池特性を有していることが確認された。
ただし、実施例1の硫黄正極と、参考例1の硫黄正極と、を比較すると、実施例1の硫黄正極の方が、硫黄の含有量が多かった。そして、図5〜図6から明らかなように、実施例1の硫黄正極の方が、高い容量を示した。
本発明は、リチウム硫黄固体電池の分野全般で利用可能である。
1,2・・・リチウム硫黄固体電池、11・・・硫黄正極、12・・・リチウム負極、13・・・固体電解質、14・・・他の層

Claims (3)

  1. 硫黄正極と、リチウム負極と、固体電解質と、を備え、前記固体電解質が、前記硫黄正極と前記リチウム負極との間に配置された、リチウム硫黄固体電池の製造方法であって、
    前記硫黄正極は、空隙部を多数有する導電性シートを有し、前記空隙部は、前記導電性シートの外部に対して開口し、前記硫黄正極は、前記空隙部に硫黄を含有しており、
    前記導電性シートに、溶融した硫黄又は硫黄溶液を含浸させることにより、前記硫黄正極を作製する工程を有する、リチウム硫黄固体電池の製造方法。
  2. 前記硫黄正極を作製する工程において、前記導電性シートに硫黄を含浸させ、そのときの硫黄の温度を120〜160℃とする、請求項1に記載のリチウム硫黄固体電池の製造方法。
  3. 前記硫黄正極を作製する工程において、前記導電性シートに前記硫黄溶液を含浸させ、そのときの前記硫黄溶液の温度を、前記硫黄溶液中の溶媒の沸点以下とする、請求項1に記載のリチウム硫黄固体電池の製造方法。
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