JP2019178252A - 高発熱量軽油基材の製造方法 - Google Patents
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従って、特許文献1に記載の軽油組成物においては、ナフテン環を有する化合物の含有量が低いため、軽油組成物の密度が低く、それに伴い発熱量も低いという問題がある。
[1] 90容量%留出温度が320〜360℃であり、芳香族炭化水素を37〜65質量%含む原料油を、水素分圧10〜18MPaで水素化処理を行う工程を含むことを特徴とする、硫黄分の含有量が15質量ppm以下であり、10容量%留出温度が240〜300℃であり、90容量%留出温度が310〜360℃であり、発熱量が36,000〜37,300J/mLである軽油基材の製造方法。
[2] 前記原料油は、熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS−LHCGO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基材を含む[1]に記載の軽油基材の製造方法。
本実施形態の軽油基材の製造方法で用いる原料油は、90容量%留出温度が320〜360℃であり、芳香族炭化水素を37〜65質量%含む原料油である。
なお、90容量%留出温度、後述する50容量%留出温度、及び10容量%留出温度とは、それぞれJIS K2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法蒸留試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
なお、芳香族炭化水素の含有量とは、IP 548「Determination of aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method with refractive index detection」に準拠して測定される値を意味する。
硫黄分の含有量は低ければ低いほど好ましいため、硫黄分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常0.5質量ppm以上である。
なお、硫黄分の含有量とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
窒素分の含有量は低ければ低いほど好ましいため、窒素分の含有量の下限値は特に限定されないが、通常100質量ppm以上である。
なお、窒素分の含有量とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
なお、15℃における密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準拠して測定される値を意味する。
以下、各基材について図1を参照して説明を行う。
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、熱分解軽質軽油(以下、「LCGO」ともいう)が例として挙げられる。LCGOとは、図1に示すように減圧蒸留残渣を熱分解して得られる軽油のうちの軽質留分であり、10容量%留出温度が180〜260℃、90容量%留出温度が310〜380℃である留分である。
LCGOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られる軽油基材の総発熱量の向上に寄与する。
原料油の総容積に対するLCGOの含有量は、10〜90容量%が好ましく、20〜80容量%がより好ましく、30〜70容量%がさらに好ましい。
LCGOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。LCGOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、接触分解軽油(以下、「LCO」ともいう)が例として挙げられる。LCOとは、図1に示すように流動接触分解装置から留出される留分であり、例えば、10容量%留出温度が185〜250℃、90容量%留出温度が270〜370℃である留分である。
LCOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られる軽油基材の総発熱量の向上に寄与する。
原料油の総容積に対するLCOの含有量は、10〜65容量%が好ましく、20〜65容量%がより好ましく、22〜63容量%がさらに好ましい。
LCOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。LCOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
本実施形態の原料油に含まれる基材としては、熱分解重質軽油(HCGO)を水素化処理して得られた軽質軽油(以下、「DS−LHCGO」ともいう)が例として挙げられる。DS−LHCGOとは、図1に示すように減圧蒸留残渣を熱分解し得られる軽油のうちLCGOよりも重質留分であるHCGOを水素化処理して得られた軽質軽油である。
DS−LHCGOは、芳香族含有量が多い留分であるため、得られる軽油基材の総発熱量の向上に寄与する。
DS−LHCGOは、10容量%留出温度が200〜260℃である。また、DS−LHCGOは、90容量%留出温度が300〜350℃である。
原料油の総容積に対するDS−LHCGOの含有量は、3〜10容量%が好ましく、4〜10容量%がより好ましく、5〜10容量%がさらに好ましい。
DS−LHCGOの含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。DS−LHCGOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
原料油の総容積に対するLCGOとLGOの合計含有量は、30〜100容量%が好ましく、40〜98容量%がより好ましく、50〜95容量%がさらに好ましく、60〜95容量%が特に好ましい。
LCGOとLCOの合計含有量が前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。LCGOとLCOの含有量が前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
本発明の一つの側面としては、原料油の総容積に対して、LCGOの含有量が30〜45容量%で、かつLCOの含有量が45〜65容量%が好ましい。
LCGO及びLCOの含有量がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなり、水素化処理によりナフテン環を有する化合物が多く生成し、得られる軽油基材の発熱量が向上する。LCGO及びLCOの含有量がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、原料油中の芳香族炭化水素の含有量が高くなりすぎず、水素化処理反応におけるコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。
本実施形態の原料油は、前記LCGO、LCO、及びDS−LHCGO以外のその他の基材を含有してもよい。
その他の基材としては、常圧蒸留によって得られる直留軽油、間接脱硫装置から得られる軽油留分、直接脱硫装置から得られる軽油留分等が例として挙げられる。
原料油の総容積に対するその他の基材の含有量は、0〜70容量%が好ましく、2〜60容量%がより好ましく、5〜50容量%がさらに好ましい。
本発明に係る軽油基材の製造方法における水素化処理は、水素分圧10〜18MPaで行う。以下、水素化処理の条件の詳細を説明する。
水素化処理触媒を構成する担体を構成する混合物としては、アルミナを含有する多孔質無機酸化物が使用できる。
水素化処理触媒を構成する活性成分としては、周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素、周期表第8〜10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素が例として挙げられる。
周期表第6族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、モリブデン、タングステンが好ましい。モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。第6族金属の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して8〜20質量%が好ましい。
周期表第8〜10族から選ばれる少なくとも1種の金属元素としては、コバルト、ニッケルが好ましい。コバルト化合物としては、炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が好ましく、ニッケル化合物としては、炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が好ましい。第9族と第10族の金属元素の担持量は、酸化物換算で水素化処理触媒の総質量に対して2〜6質量%が好ましい。
上述した活性成分のなかでは、モリブデンとニッケルとを組み合わせたモリブデンニッケル系触媒が好ましい。
また、上述の水素化処理触媒を、水素雰囲気下で、300〜400℃で、1〜36時間、水素還元処理して使用することが好ましい。
水素化処理における水素分圧は、10〜18MPaであり、11〜16MPaが好ましく、13〜15MPaがより好ましい。水素分圧が前記範囲の下限値以上であると、本実施形態のようなオレフィン、芳香族炭化水素の含有量の多い原料油を水素化処理してもコークの発生が抑制され、水素化処理触媒の寿命が長くなる。水素分圧が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理設備にコストがかかりすぎないため経済的に有利である。
水素/油比が前記範囲の下限値以上であると、充分に水素化処理反応が進行する。水素/油比が前記範囲の上限値以下であると、過剰に水素を消費することもなく、処理コストを削減できる。また、反応器内の発熱に応じてクエンチ水素を加えても良い。
液空間速度が前記範囲の下限値以上であると、水素化処理の効率が向上する。液空間速度が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理触媒と原料油との接触時間が充分となり、水素化処理触媒の活性が充分に発揮される。
触媒層の温度が前記範囲の下限値以上であると、水素化触媒の触媒活性が向上する。触媒層の温度が前記範囲の上限値以下であると、水素化処理油の着色や、水素化処理触媒の寿命の低下が起こりにくくなる。
本発明に係る軽油基材は、硫黄分の含有量が15質量ppm以下であり、10容量%留出温度が240〜300℃であり、90容量%留出温度が310〜360℃であり、発熱量が36,000〜37,300J/mLである軽油基材である。
T10が前記範囲の下限値以上であると、軽油として適切な引火点および動粘度を保つことができるとともに、容量あたりの炭化水素の含有量が多くなり、軽油基材の発熱量が向上する。T10が前記範囲の上限値以下であると、ワックス析出温度が制限され、低温流動性を保つ面で好ましい。
軽油基材のT90は、310〜360℃であり、320〜360℃が好ましく、330〜360℃がより好ましい。
T90が前記範囲の下限値以上であると、軽油として適切な引火点および動粘度を保つことができるとともに、容量あたりの炭化水素の含有量が多くなり、軽油基材の発熱量が向上する。T90が前記範囲の上限値以下であると、燃料噴霧時の霧化不良に伴う燃焼室汚染、ノズルへのカーボン付着などを抑えることができるため好ましい。
セタン指数が前記範囲内であると、軽油基材をディーゼルエンジンに使用した場合に、ディーゼルエンジンの低温時始動性が向上するほか、エンジンからのCO等の排出量を抑制することができる。
なお、セタン指数とは、ASTM D613−84に準拠して測定される値を意味する。
くもり点が前記範囲内であると、軽油基材をディーゼルエンジンに使用した場合に、ディーゼルエンジンの低温始動性、及び低温運転性が向上する。
なお、くもり点とは、JIS K2269「原油および石油製品の流動点並びに石油製品の曇り点試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
流動点が前記範囲内であると、軽油基材をディーゼルエンジンに使用した場合に、低温運転時におけるフィルター閉塞を防止することができる。
なお流動点とは、JIS K2269「原油および石油製品の流動点並びに石油製品の曇り点試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
発熱量が前記前記範囲の下限値以上であると、軽油基材をディーゼル燃料とした場合、燃費が向上する。
なお、発熱量とは、JIS K2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して測定される値を意味する。
本実施形態の軽油基材と混合される他の軽油基材としては、例えば、原油を精製して生産される灯油、フィッシャー・トロプシュ合成等により製造される合成軽油、水素化分解軽油等が例として挙げられる。また、植物油メチルエステル、エ−テル類等を他の軽油基材として配合してもよい。本実施形態で得られる軽油基材と他の軽油基材とを混合して、製品軽油を製造する場合、目的の品質の軽油となるように適宜配合割合を選定することができるが、他の軽油基材の配合割合は、40質量%以下、特には30質量%以下にすることが好ましい。
[15℃における密度]
JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」に準拠して測定した。
[硫黄分の含有量]
JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」に準拠して測定した。
[芳香族炭化水素の含有量]
IP 548「 Determination of aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method with refractive index detection」に準拠して測定した。
[10容量%留出温度、50容量%留出温度、90容量%留出温度]
JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法蒸留試験方法」に準拠して測定した。
[窒素分]
JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して測定した。
[セタン指数]
ASTM D613−84に準拠して測定した。
[くもり点及び流動点]
JIS K2269「原油および石油製品の流動点並びに石油製品の曇り点試験方法」に準拠して測定した。
[発熱量]
JIS K2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して測定した。発熱量を算出するために必要な水分量はJIS K2275に、灰分量はJIS K2272に準拠して測定した。なお、後述の実施例1〜8、及び比較例1〜2の軽油基材の水分、灰分は0質量%であった。
水素化処理触媒としては、モリブデンニッケル系触媒を使用した。
配合1の原料油を水素/油比:400Nm3/KL、水素分圧:14.2MPa、液空間速度(LHSV):0.54hr−1、反応温度:340℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状(15℃における密度、硫黄分の含有量、窒素分の含有量、芳香族炭化水素の含有量、T10、T50、T90、流動点、くもり点、セタン指数、発熱量)を表6に示す。
配合2の原料油を水素/油比:490Nm3/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.52hr−1、反応温度:339℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合3の原料油を水素/油比:410Nm3/KL、水素分圧:14.2MPa、液空間速度(LHSV):0.49hr−1、反応温度:337℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合4の原料油を水素/油比:630Nm3/KL、水素分圧:13.4MPa、液空間速度(LHSV):0.32hr−1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合5の原料油を水素/油比:520Nm3/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.39hr−1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合6の原料油を水素/油比:480Nm3/KL、水素分圧:14.0MPa、液空間速度(LHSV):0.42hr−1、反応温度:341℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合7の原料油を水素/油比:570Nm3/KL、水素分圧:13.5MPa、液空間速度(LHSV):0.37hr−1、反応温度:342℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合8の原料油を水素/油比:630Nm3/KL、水素分圧:13.8MPa、液空間速度(LHSV):0.31hr−1、反応温度:334℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合9の原料油を水素/油比:510Nm3/KL、水素分圧:13.9MPa、液空間速度(LHSV):0.40hr−1、反応温度:336℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
配合10の原料油を水素/油比:610Nm3/KL、水素分圧:12.8MPa、液空間速度(LHSV):0.33hr−1、反応温度:335℃で水素化処理し、その後分留することにより軽油基材を得た。得られた軽油基材の性状を表6に示す。
Claims (2)
- 90容量%留出温度が320〜360℃であり、芳香族炭化水素を37〜65質量%含む原料油を、水素分圧10〜18MPaで水素化処理を行う工程を含むことを特徴とする、
硫黄分の含有量が15質量ppm以下であり、10容量%留出温度が240〜300℃であり、90容量%留出温度が310〜360℃であり、発熱量が36,000〜37,300J/mLである軽油基材の製造方法。 - 前記原料油は、熱分解軽質軽油(LCGO)、接触分解軽油(LCO)、及び熱分解重質軽油を水素化処理して得られた軽質軽油(DS−LHCGO)からなる群から選ばれる少なくとも1種の基材を含む請求項1に記載の軽油基材の製造方法。
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