JP2019177425A - 硬質被覆層が優れた耐酸化性、耐溶着性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が優れた耐酸化性、耐溶着性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱合金等の切削に用いても、優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供。【解決手段】工具基体の表面に表面から順に、第1層、第2層を含む硬質被覆層を設け、第2層は、1.0〜25.0μmの平均層厚のα型のAl2O3層、第1層は、平均層厚1.0〜20.0μmの(Ti1−xAlx)(CyN1−y)(0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005)、NaCl型の面心立方構造の結晶粒を含み、{112}面の法線の傾斜角のうち工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲の傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計た傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である、表面被覆工具。【選択図】図1

Description

本発明は、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な負荷が作用する耐熱合金の高速断続切削加工において、硬質被覆層が優れた耐酸化性、耐溶着性を備えることにより、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金、炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットあるいは立方晶窒化ホウ素(以下、cBNで示す)基超高圧焼結体で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速断続切削条件で用いた場合に異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、(a)工具基体に平均層厚1〜20μmの(Ti1−xAl)(C1−y)(0.60≦x≦0.95、0≦y≦0.005)である硬質被覆層を有し、(b)前記硬質被覆層内のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の結晶方位を縦断面方向から解析した場合、前記工具基体の表面の法線方向に対して前記結晶粒の{100}面の法線がなす傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上であり、(c)前記法線方向に沿って、前記結晶粒内に周期的な組成変化が存在し、前記xの極大値の平均と極小値の平均の差Δxが0.03〜0.25、周期が3〜100nmである、被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、(a)工具基体に平均層厚1〜20μmの(Ti1−xAl)(C1−y)(0.60≦x≦0.95、0≦y≦0.005)である硬質被覆層を有し、(b)前記硬質被覆層内のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の結晶方位を縦断面方向から解析した場合、前記工具基体表面の法線方向に対する{110}面の法線がなす傾斜角のうち0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上のであり、前記結晶粒の平均粒子幅Wが0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aが2〜10である柱状組織を有し、(c)前記工具基体表面の法線方向に沿って、前記結晶粒内に周期的な組成変化が存在し、周期が4〜150nmであり、前記xの極大値の平均と極小値の平均の差Δxが0.03〜0.25である、被覆工具が記載されている。
さらに、例えば、特許文献3には、(a)工具基体に平均層厚1〜20μmの(Ti1−xAl)(C1−y)(0.60≦x≦0.95、0≦y≦0.005)である硬質被覆層を有し、(b)前記硬質被覆層内のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の結晶方位を縦断面方向から解析した場合、前記工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の{111}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する度数を集計し傾斜角度数分布を求めたとき、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の45%以上の割合を示し、(c)前記結晶粒の平均粒子幅Wが0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aが2〜10である柱状組織を有し、
(d)周期的な組成変化が該結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在し、前記xの極大値の平均と極小値の平均の差Δxが0.03〜0.25である、被覆工具が記載されている。
加えて、例えば、特許文献4には、3〜25μmの厚みの摩耗保護コーティングが、0.70≦x<1、0≦y<0.25、及び0.75≦z<1.15の化学量論係数を有し、1.5〜17μmの範囲内の厚みの少なくとも1つのTi1-xAlxyz層を有し、前記Ti1-xAlxyz層が150nm以下の厚みの複数の層を備える層状構造を有し、前記複数の層が、同じ結晶構造で、Ti及びAlの化学量論的割合が交互に異なる、Ti1-xAlxyz層の周期的に交番する領域で形成され、前記Ti1-xAlxyz層が、90vol%以上の面心立方結晶構造を有する、被覆工具が記載されている。
そして、例えば、特許文献5には、Ti1−xAlN層および/またはTi1−xAlC層および/またはTi1−xAlCN層(xは、0.65〜0.95)の上にAl層が外層として配置されている被覆工具が記載されている。
特開2015−193071号公報 特開2016−30319号公報 特開2016−64485号公報 特表2017−508632号公報 特表2011−516722号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にある。そして、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性の向上が求められるとともに、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性が求められている。
前記特許文献1〜5に記載された被覆工具は、合金鋼等の高速断続切削加工に供した場合に、優れた耐チッピング性、耐摩耗性を有するが、熱伝導度が低く高温強度が高く加工硬化を起こしやすい材質であって高難削材である耐熱合金の切削においては、十分な工具寿命を与えない場合があった。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、耐熱合金のような刃先が高温になる高難削材の切削に用いたとしても、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することである。
本発明者らは、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物(以下、「TiAlCN」あるいは「(Ti1−xAl)(C1−y)」で示すことがある)を含む硬質被覆層を形成した被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の改善をはかるべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
すなわち、硬質被覆層を構成するTiAlCN層の面配向をとして、{112}面の配向性を高めると、摩耗に対する耐性、靱性および切削時に発生する高熱に対する耐摩耗性が、バランスよく発揮され、さらに、上部層としてα型のAlを設け、特に、このAlを{0001}面の法線方向に配向させることにより、耐酸化性に加えてより高い耐摩耗性が発揮され、高難削材である耐熱合金の切削に用いても耐摩耗性と耐欠損性が向上するという驚くべき事項を発見した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、該表面から順に、第1層、第2層を含む硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
(a)前記第2層は、1.0〜25.0μmの平均層厚であるα型の結晶構造を有するAl層からなり、
(b)前記第1層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含み、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の組成を組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のAlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xavg、および前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のCのCとNの合量に占める平均含有割合yavg(但し、xavg、yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005を満足し、
(c)前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の結晶粒を少なくとも含み、
(d)前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて、前記結晶粒の結晶方位を前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の縦断面方向から解析して、前記工具基体の表面の法線方向に対して前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である、
ことを特徴とする表面被覆工具。
(2)前記第2層を構成するα型の結晶構造を有するAl結晶粒の結晶方位を電子線後方散乱回折装置を用いて、前記第2層の縦断面方向から解析したとき、工具基体の表面の法線方向に対する当該結晶粒の結晶面である{0001}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である、
ことを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆工具。
(3)前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層を縦断面方向から観察したとき、前記結晶粒の平均粒子幅Wが0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aが2.0〜10.0である柱状組織を有し、また、前記結晶粒おけるTiとAlの周期的な組成変化が前記結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿って存在し、Alの前記含有割合の極大値の平均と極小値の平均の差は0.03〜0.25であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆工具。
(4)前記結晶粒におけるTiとAlの周期的な組成変化が前記結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿って存在し、その方位における周期が3〜100nmであり、その方位に直交する面内でAlの前記含有割合の変化量は0.01以下であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の表面被覆工具。
(5)前記工具基体と前記硬質被覆層との間にTiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒化酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の表面被覆工具。
本発明の被覆工具は、第1層において{112}面の配向性を高めることにより、{摩耗に対する耐性と靱性および切削時に発生する高熱対する耐摩耗性が、バランスよく発揮され、さらに、第1層の上部に第2層としてα型のAlを設け、特に、このAlを{0001}面の法線方向に配向させることにより、耐酸化性に加えてより高い耐摩耗性が発揮され、高難削材である耐熱合金の切削に用いても耐摩耗性と耐欠損性が向上するという、優れた効果を発揮する。
本発明被覆工具の硬質被覆層の断面を模式的に表した膜構成模式図であり、寸法は実際の組織の大きさに則したものではない。 本発明被覆工具の第1層を構成するTiAlCN層について測定した、工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対してNaCl型の面心立方構造の結晶粒の{112}面の法線がなす傾斜角度数分布の一例として、後述する本発明被覆工具4について示したグラフである。 本発明被覆工具の第2層を構成するα型のAl層について測定した、工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対して結晶粒の{0001}面の法線がなす傾斜角度数分布の一例として、後述する本発明被覆工具4について示したグラフである。 本発明の被覆工具の硬質被覆層を構成するTiAlCN層について、TiとAlの周期的な組成変化が存在するNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒において、前記組成変化が前記結晶粒の<001>で表される等価な結晶方位のうちの一つの法に沿って存在し、その方位に直交する面内の組成変化は小さいことを模式的に示した図である。
次に、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より詳細に説明する。
1.第1層を構成する複合窒化物層または複合炭窒化物層(TiAlCN層)の平均層厚:
本発明の表面被覆切削工具が有する第1層は、組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表されるTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含む。この複合窒化物層または複合炭窒化物層は、硬さが高く、優れた耐摩耗性を有するが、特に平均層厚が1.0〜20.0μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1.0μm未満では、平均層厚が薄いため長期の使用にわたって耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20.0μmを超えると、TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなるためである。
2.第1層を構成するTiAlCN層の組成:
本発明の表面被覆切削工具が有する第1層を構成するTiAlCN層は、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xavgおよびCのCとNの合量に占める平均含有割合yavg(但し、xavg、yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合xavgが0.60未満であると、TiAlCN層は硬さに劣るため、耐熱合金等の高速断続切削に供した場合には、耐摩耗性が十分でなく、一方、Alの平均含有割合xavgが0.95を超えると、相対的にTiの含有割合が減少するため、脆化を招き、耐チッピング性が低下するためである。また、Cの平均含有割合yavgは、0≦yavg≦0.005の範囲の微量であるとき、TiAlCN層と工具基体もしくは下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてTiAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、C成分の平均含有割合yavgが0≦yavg≦0.005の範囲を逸脱すると、TiAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に損なわれるため好ましくない。
3.TiAlCN層におけるNaCl型の面心立方構造の結晶粒
TiAlCN層においてNaCl型の面心立方構造の結晶粒が含まれていなければ本発明の前記目的を達成することはできない。この目的を達成するためには、縦断面(工具基体表面に垂直な断面)において、NaCl型の面心立方構造の結晶粒の占める面積割合が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは、全ての結晶粒(面積割合が100%の結晶粒)がNaCl型の面心立方構造であるとよい。
4.第1層を構成するTiAlCN層におけるNaCl型面心立方構造を有する結晶粒の{112}面の傾斜角度分布:
本発明では、第1層を構成するTiAlCN層について、電子線後方散乱回折装置を用いて結晶粒の結晶方位を、縦断面方向(工具基体表面の法線方向)から解析し、工具基体表面の法線方向に対する前記結晶粒の{112}面の法線がなす傾斜角を測定して、その傾斜角の内、前記法線方向に対して0〜45度の範囲にある傾斜角を0.25度のピッチごとに区分して各区分に存在する度数を集計し傾斜角度分布を求めたとき、0〜10度の範囲の傾斜角度分布に最高ピークが存在するとともに、前記0〜10度の範囲に存在する度数の合計が前記傾斜角度分布における度数分布の35%以上の割合を示す。
ここで、図2に本発明被覆工具について測定した傾斜角度数分布の一例を示す。すなわち、図2からわかるように、傾斜角度数分布は、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布における度数全体の35%以上の割合となる。
つまり、本発明の被覆工具は、TiAlCN層において{112}面の法線方向への配向性を相対的に高くし、傾斜角度数分布において0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在し、かつ、0〜10度の範囲内に存在する度数の合計を、傾斜角度数分布における度数全体の35%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上としていることによって、摩耗に対する耐性の向上、靱性および切削時に発生する高熱に対する耐摩耗性の向上が、バランスよく発揮され高難削材である耐熱合金の切削に用いても耐摩耗性と耐欠損性が向上する。
5.第2層の存在:
第2層は、平均層厚1.0〜25.0μmであるα型の結晶構造を有するAl層からなる。この第2層を設けることにより、耐酸化性と高い耐摩耗性が与えられる。平均層厚が1.0μm未満では、この効果が十分に奏されず、一方、25.0μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
また、第2層は、Al結晶粒について、電子線後方散乱回折装置を用いて、前記第2層の縦断面方向から解析し、工具基体の表面の法線方向に対する前記結晶粒の結晶面である{0001}面の法線(C軸方向)がなす傾斜角を測定して、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上であることが望ましい。
このような最高ピークと度数割合を有することにより、第2層は耐熱性に加えて高い耐摩耗性を発揮する。
6.第1層のNaCl型の面心立方構造の結晶粒において、縦断面方向から観察したときの柱状晶の平均粒子幅W、平均アスペクト比A、並びに、<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿ったTiとAlの周期的な組成変化およびAlの含有割合の極大値の平均と極小値の平均の差:
本発明では、NaCl型の立方晶構造を有する結晶粒において、縦断面方向から観察したときの柱状晶の平均粒径幅Wが0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aが2.0〜10.0を満足することが望ましい。このようにすると、NaCl型の立方晶構造を有する結晶粒は所定形状の柱状晶となり優れた耐摩耗性を示す。この数値範囲とした理由は、平均粒子幅Wについては、0.1μm未満であると耐摩耗性が低下することがあり、2.0μmを超えると靱性が低下することがあるためであり、平均アスペクト比Aについては、2未満であるとNaCl型の立方晶構造を有する結晶粒内に後述する組成の周期的な分布を形成し難くなることがあり、10を超えるとクラックの進展を抑制し難くなることがあるためである。
また、<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿ってTiとAlの周期的な組成変化が存在し、Al含有量の割合の極大値と極小値の平均の差は0.03〜0.25であることが好ましい。すなわち、結晶粒内にTiとAlの周期的な組成変化が存在するとき、結晶粒内に歪みが生じて硬さが向上する。そして、Alの含有割合(x)の極大値と極小値の平均の差が0.03未満であると、前記歪みが小さく十分な硬さの向上がなく、0.25を超えると前記歪が大きくなりすぎて、格子欠陥が大きくなり硬さが低下してしまう。
7.第1層のNaCl型の面心立方構造の結晶粒において、<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿ったTiとAlの周期的な組成変化の周期と当該方位に直交する面内でのAlの含有割合の変化:
前述のとおり、TiとAlの周期的な含有割合の変化が、<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿って存在し、この変化の周期が3〜100nmであることが望ましい。周期が3nm未満であると靱性が低下することがあり、100nmを超えると硬さの向上が期待できないことがある。また、この周期的変化が存在する方位に直行する面(すなわち、この方位を法線方向とする面)方向のAl含有量の変化量(最大値と最小値との差)は、0.01以下であることが望ましい。この周期とAl含有量の変化であれば、十分な硬度や耐欠損性の向上がより一層さなれる。
なお、この周期的な組成変化を示す模式図を図4として示す。
Al含有割合の周期的な変化の有無と周期的な変化の極大値と極小値の差、周期幅、
および、周期的な変化のある方向と直交する面の含有量の変化は、透過型電子顕微鏡(倍率200000倍)を用いた複合窒化物層または複合炭窒化物層の微小領域の観察にてその存在を確認する。
例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いて、工具基体表面に垂直な断面(縦断面)における400nm×400nmの領域について面分析を行い、NaCl型の面心立方構造の立方晶の結晶粒において縞状に色の濃淡の変化が見られたとき、前記立方晶の結晶粒内に、TiAlCNにおけるTiとAlの周期的な組成変化が存在する。そして、当該結晶粒について、電子線解析を行うことにより周期的な組成変化がNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在することを確認し、その方位に沿った、前記面分析の結果に基づいて濃淡から10周期分程度の組成変化が測定範囲に入る様に倍率を設定した上で、工具基体表面の法線方向に沿ってEDSによる線分析を5周期分の範囲で行い、Alの含有割合xの周期的な変化の極大値と極小値のそれぞれの平均値の差を求め、さらに該5周期の極大値間の平均間隔をTiとAlの周期的な組成変化の周期として求める。そして、その方位に直交する方位に対してもEDSによる面分析を行う。
8.下部層:
本発明のTiAlCNを含む硬質被覆層は、それだけでも十分な効果を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有する下部層を設けた場合には、この層が奏する効果と相俟って、一層すぐれた特性が発揮される。ただし、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20.0μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
9.上部層
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有する上部層を設けると、一層優れた特性が発揮されて好ましい。ここで、合計平均層厚が0.1μm未満であると、上部層を設けた効果が十分に発揮されず、一方、20μmを超えると、チッピングが発生しやすくなる。
10.成膜方法(条件)
(1)第1層
本発明の第1層は、工具基体またはTiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層の少なくとも一層以上である下部層の上に、TiAlCN層形成用の反応ガスを所定条件で供給して、成膜することによって得られる。また、TiAlCN層の傾斜角の制御方法として、例えば、TiAlCN層形成の下地層として、平均層厚が1.5〜3.5μmのTiCN層を形成する。
例えば、ガス組成を表す%は容量%として、
(ア)下地層(TiCN層)
反応ガス:CHCN:0.4〜0.8%、TiCl:2.0〜3.5%、N:20.0〜30.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:7.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
(イ)TiAlCN層
ガス群A:NH:0.8〜1.6%、H:35〜40%
ガス群B:AlCl:0.5〜0.7%、Al(CH:0.00〜0.08%、TiCl:0.1〜0.3%、N:0.0〜12.0%、H:残り
(ガス群Aとガス群Bの%は、ガス群Aとガス群Bガスの合計に対するものである)
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:700〜900℃
ここで、ガス群Aとガス群Bとは、熱CVD装置の反応容器内の空間で被成膜物の直前までガスを分離して供給し、被成膜物の直前でガス群Aとガス群Bが混合し、反応させるようにする。これは、互いに反応活性の高いガス種を成膜領域にわたって均一に成膜するために有効であり、詳細な技術内容は、例えば特開2015−131984号公報に開示されている。
(2)第2層
本発明の第2層は、初期核生成ステップと、その後の成長ステップの2ステップに分けた形成条件で成膜を行う。
例えば、ガス組成を表す%は容量%として、
(ア)初期核生成ステップ
反応ガス:AlCl:1.0〜3.0%、CO:1.0〜5.0%、HCl:0.3〜1.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:5.0〜15.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
成膜時間:30分(イ)成長ステップ
反応ガス:AlCl:1.5〜5.0%、CO:2.0〜8.0%、HCl:3.0〜5.0%、HS:0.5〜1.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:5.0〜15.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明被覆工具の具体例として、工具基体としてWC基超高圧焼結体を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、TiCN基サーメット、cBN基超高圧焼結体を用いた場合であっても同様であるし、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格SDKN1504AETNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
次に、これら工具基体A〜Cの表面に、CVD装置を用いて、下地層(TiCN層)とTiAlCN層をCVDにより形成し、表6に示される本発明被覆工具1〜10を得た。
成膜条件は、表2、3に記載したとおりであるが、概ね、次のとおりである。
(1)第1層
(ア)下地層(TiCN層)
反応ガス:CHCN:0.4〜0.8%、TiCl:2.0〜3.5%、N:20.0〜30.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:7.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
(イ)TiAlCN層
ガス群A:NH:0.8〜1.6%、H:35〜40%
ガス群B:AlCl:0.5〜0.7%、Al(CH:0.00〜0.08%、TiCl:0.1〜0.3%、N:0.0〜10.0%、H:残り
(ガス群Aとガス群Bの%は、ガス群Aとガス群Bガスの合計に対するものである)
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:700〜900℃
ガス群Aとガス群Bとは、熱CVD装置の反応容器内の空間で被成膜物の直前までガスを分離して供給し、被成膜物の直前でガス群Aとガス群Bが混合し、反応させるようにしており、前述の特開2015−131984号公報に記載されているものを使用した 。
(2)第2層
本発明の第2層は、初期核生成ステップと、その後の成長ステップの2ステップに分けた形成条件で成膜を行う。
(ア)初期核生成ステップ
反応ガス:AlCl:1.0〜3.0%、CO:1.0〜5.0%、HCl:0.3〜1.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:5.0〜15.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
成膜時間:30分
(イ)成長ステップ
反応ガス:AlCl:1.5〜5.0%、CO:2.0〜8.0%、HCl:3.0〜5.0%、HS:0.5〜1.0%、H:残り
反応雰囲気圧力:5.0〜15.0kPa
反応雰囲気温度:800〜900℃
なお、本発明被覆工具は1〜10は、表4に記載された成膜条件により、表5に示された下部層のみ、または、下部層および上部層を形成した。
また、比較の目的で、工具基体A〜Cの表面に、表2、3に示される条件によりCVDを行うことにより、表6に示されるTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成して比較被覆工具1〜10を製造した。
なお、比較被覆工具1〜10については、表4に示される形成条件により、表5に示された下部層のみ、または、下部層および/または上部層を形成した。
前記本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の第1層であるTiAlCN層について、前述した方法を用いて、平均Al含有割合xと平均C含有割合yを算出し、基体表面の法線に対して{112}面の法線がなすそれぞれの傾斜角度数分布において、傾斜角度数の最高ピークが0〜10度に存在するかを確認すると共に、傾斜角が0〜10度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。また、第2層であるAlについても、前述した方法を用いて、基体表面の法線に対して{0001}面の法線がなすそれぞれの傾斜角度数分布において、傾斜角度数の最高ピークが0〜10度に存在するかを確認すると共に、傾斜角が0〜10度の範囲内に存在する度数の割合を求めた。さらに、TiとAlの組成変化の<001>で表される等価の方向に沿った周期の有無とAl含有割合の極大値の平均と極小値の平均の差、その周期幅、さらには、その方位に直交する面内のAl含有割合の変化についても測定した。
なお、平均層厚は、各構成層の縦断面を走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて観察し、観察視野内の5点の層厚を測定して平均して求めた。
これらの結果を表6にまとめた。なお、表6には記載していないが、発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10のいずれも、NaCl型面心立方構造の面積率は60%以上であることを確認している。
Figure 2019177425
Figure 2019177425
Figure 2019177425
Figure 2019177425
Figure 2019177425
Figure 2019177425
続いて、前記本発明被覆工具1〜10および比較被覆工具1〜10について、いずれもカッタ径125mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、耐熱合金、Ni−19Cr−19Fe−3Mo−0.9Ti−0.5Al−5.1(Nb+Ta)合金の時効硬化処理材の湿式高速高送り正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験:乾式高速正面フライス、センターカット切削加工
被削材:JIS・ 耐熱鋼 幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度:127min−1
切削速度:50m/min
切り込み:0.5mm
一刃送り量:0.15mm/刃
切削時間:8分 表7に、切削試験の結果を示す。なお、比較被覆工具1〜10については、チッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
Figure 2019177425
表7に示される結果から、本発明被覆工具1〜10は、
(a)第2層は、1.0〜25.0μmの平均層厚であるα型の結晶構造を有するAl層からなり、
(b)第1層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含み、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の組成を組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のAlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xavg、および前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のCのCとNの合量に占める平均含有割合yavg(但し、xavg、yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005を満足し、
(c)NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の結晶粒を少なくとも含み、
(d){112}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である
ことを満足しているから、切削加工が難しい耐熱合金の高速連続切削加工において、チッピングの発生がなく、長期にわたって優れた切削性能を発揮する。
これに対して、本発明の規定を満足しない比較被覆工具1〜10は、切削加工が難しい耐熱合金の高速連続切削加工においてチッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
前述のように、本発明の被覆工具は、耐熱合金の高速断続切削加工であっても、高速断続切削加工の被覆工具として用いることができ、しかも、長期にわたって優れた耐摩耗性を発揮するから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化及び省エネ化、さらには低コスト化に十分に満足できる対応ができるものである。

Claims (5)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットまたは立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結体のいずれかで構成された工具基体の表面に、該表面から順に、第1層、第2層を含む硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
    (a)前記第2層は、1.0〜25.0μmの平均層厚であるα型の結晶構造を有するAl層からなり、
    (b)前記第1層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層を少なくとも含み、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の組成を組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)で表した場合、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のAlのTiとAlの合量に占める平均含有割合xavg、および前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のCのCとNの合量に占める平均含有割合yavg(但し、xavg、yavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005を満足し、
    (c)前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造を有する複合窒化物または複合炭窒化物の結晶粒を少なくとも含み、
    (d)前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層について、電子線後方散乱回折装置を用いて、前記結晶粒の結晶方位を前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層の縦断面方向から解析して、前記工具基体の表面の法線方向に対して前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である、
    ことを特徴とする表面被覆工具。
  2. 前記第2層を構成するα型の結晶構造を有するAl結晶粒の結晶方位を電子線後方散乱回折装置を用いて、前記第2層の縦断面方向から解析したとき、工具基体の表面の法線方向に対する当該結晶粒の結晶面である{0001}面の法線がなす傾斜角を測定し、該傾斜角のうち前記工具基体の表面の法線方向に対して0〜45度の範囲内にある傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分して、各区分内に存在する度数を集計して得られた傾斜角度数分布において、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、前記傾斜角度数分布における度数全体の35%以上である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の表面被覆工具。
  3. 前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層を縦断面方向から観察したとき、前記結晶粒の平均粒子幅Wが0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aが2.0〜10.0である柱状組織を有し、また、前記結晶粒おけるTiとAlの周期的な組成変化が前記結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿って存在し、Alの前記含有割合の極大値の平均と極小値の平均の差は0.03〜0.25であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆工具。
  4. 前記結晶粒におけるTiとAlの周期的な組成変化が前記結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位の一つの方位に沿って存在し、その方位における周期が3〜100nmであり、その方位に直交する面内でAlの前記含有割合の変化量は0.01以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆工具。
  5. 前記工具基体と前記硬質被覆層との間にTiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒化酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆工具。
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