JP2019176839A - ヒドロキシアルカン酸の製造方法 - Google Patents

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雅行 杉本
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Abstract

【課題】ヒドロキシアルカン酸をより純度が高く、使用に好ましくない成分を極力含まないように精製する方法を提供すること。【解決手段】ヒドロキシアルカン酸生産菌からヒドロキシアルカン酸を発酵生成した発酵液を得る発酵工程と、発酵液の溶媒としての水分を留去して、ヒドロキシアルカン酸に対するエステル化剤としてのアルコール溶媒に置換し、エステル化触媒を添加したのち、加熱してヒドロキシアルカン酸エステルを生成したエステル含有液を得るエステル化工程と、エステル含有液を蒸留して、エステル含有液からヒドロキシアルカン酸エステルを分離して蒸留液を得る蒸留工程と、蒸留液に固体酸触媒を接触させてヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解してヒドロキシアルカン酸を得る加水分解工程と、を行う。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒドロキシアルカン酸の製造方法に関する。
3−ヒドロキシ酪酸(3HB)を含むヒドロキシアルカン酸やその塩は生体親和性が高く、糖質に代わる画期的なエネルギー源として期待されている。また、3HBは単なるエネルギー源という役割だけでなく、様々な遺伝子の発現やタンパク質の活性に影響するシグナル伝達物質としての作用があることがわかってきた。3HBは、例えば、遺伝子発現調節作用によって、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害することによって認知機能や、長期持続記憶を改善することが知られ、アルツハイマーの予防に有効性が確認されている。例えば、ココナツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸の摂取および体内での代謝により生成される3HBが、脳や体内において糖質をうまく利用できないアルツハイマー病、糖尿病の患者の症状を改善させる効果を持つことが知られている。また、3HBは体内において糖質よりも速やかにエネルギーに変換されること、細胞への脂肪や糖の吸収を抑制する効果を有することから、アスリート向けのエネルギー物質、ダイエット・健康食品分野への応用が期待できる。更にはこれらヒドロキシアルカン酸は嫌気的条件でも容易に生分解を受ける数少ないポリマーの原料としても期待されている(非特許文献1)。
このようなヒドロキシアルカン酸の一例として、3HBは近年各種微生物にポリ3ヒドロキシ酪酸(以下PHBと称する)を生産させたのち、得られたPHBを微生物により分解することによって得られることが見出されている(非特許文献2、特許文献1,2)。微生物により得られた3HBは、中和により塩を除去した後に晶析で精製することができる(特許文献3)。また、ヒドロキシアルカン酸を蒸留精製しようとすると容易に分子内脱水を生じ、クロトン酸(アルケン酸としても同義)またはその誘導体が生成されることも知られており、このような物質は、医薬品、健康食品等の分野での使用では、人体への悪影響が懸念されることや、ポリマー原料としての使用を想定する場合にも、重合反応の阻害剤として働くことが考えられるため、クロトン酸またはその誘導体の生成を抑制することが求められている(特許文献4)。クロトン酸またはその誘導体の生成は酸や塩基の存在下で更に促進されることも知られている。また、本発明者らは、3HBエステルを簡便に合成する方法を提案している(特許文献5)。
特開2010−168595号公報 特開2013−081403号公報 特開2018−000073号公報 特開2016−193849号公報 特開2018−000032号公報
H. Yagi et al.,Polymer Degradation and Stability,110,p.278(2014) Yutaka Tokiwa et al.,J Biotechnol.,132,p.264-72(2007)
しかしながらこのような方法で3HBを生成したとしても、発酵液中に含まれる複雑な不純物を十分に除去することができず、ポリマー原料として使用した場合、着色が生じることや高分子化を阻害されるという問題が生じる。また、着色を除去するために追加の晶析操作を行うことも考えられるが、作業工数が増加することに加え、収率低下が懸念されること、晶析の際に有機溶媒を使用することから、化粧品等の原料として用いるには、不適切となる等の問題があった。更に、いずれの技術分野における使用を想定しても、クロトン酸またはその誘導体の生成を抑制すべきとの要請もある。
したがって、本発明は上記実状に鑑み、ヒドロキシアルカン酸をより純度が高く、使用に好ましくない成分を極力含まないように精製する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明のヒドロキシアルカン酸の製造方法の特徴構成は、
ヒドロキシアルカン酸生産菌からヒドロキシアルカン酸を発酵生成した発酵液を得る発酵工程と、
前記発酵液の溶媒としての水分を留去して、ヒドロキシアルカン酸に対するエステル化剤としてのアルコール溶媒に置換し、エステル化触媒の存在下で、加熱してヒドロキシアルカン酸エステルを生成したエステル含有液を得るエステル化工程と、
前記エステル含有液を蒸留して、前記エステル含有液からヒドロキシアルカン酸エステルを分離して蒸留液を得る蒸留工程と、
前記蒸留液と固体酸触媒とを接触させてヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解してヒドロキシアルカン酸を得る加水分解工程とを行う点にある。
すなわち、発酵工程により得たヒドロキシアルカン酸を出発原料とするから、合成されるヒドロキシアルカン酸は、生産性が高く、光学活性もきわめて高い(100%に近い)ものとして得られるため、医薬品健康食品等の用途においてきわめて有用であると考えられる。
エステル化工程において、ヒドロキシアルカン酸を発酵生成した発酵液は、有機溶媒等により抽出するのではなく、水分をエステル化剤としてのアルコールに置換する。そのため、ヒドロキシアルカン酸を抽出するための有機溶媒等を用いることなく、エステル化剤としてのアルコール溶媒とヒドロキシアルカン酸とを反応させることができるアルコール溶液を得ることができる。このアルコール溶液を触媒の存在下で加熱還流すると、ヒドロキシアルカン酸はエステル化剤としてのアルコール溶媒とエステル化(脱水縮合)反応するのでヒドロキシアルカン酸エステルが含まれるエステル含有液が得られる。また、この反応において、ヒドロキシアルカン酸の光学純度は低下しないので、得られるヒドロキシアルカン酸エステルは極めて光学活性の高いものとなる。
尚、エステル化触媒としては、硫酸、塩酸、無機酸、固体酸触媒等の酸触媒、固体の酸触媒が汎用的に用いられ、好ましいが、このほか、リパーゼ等の酵素固定触媒を用いることもでき、この場合、室温付近の比較的低温で反応を行える利点がある。
こうして得られたヒドロキシアルカン酸エステルは蒸留工程により蒸留精製されるから、発酵工程で副生するさまざまな不純物を効率よく除去して純度の高いヒドロキシアルカン酸エステルを得ることができる。すなわち、エステル化工程を行っても、発酵液に含まれる低分子量の着色成分、菌体そのものや菌体由来のタンパク質等の高分子量の夾雑物等がエステル含有液にある程度混入している。しかし、ヒドロキシアルカン酸を蒸留する場合に、特に低沸点のクロトン酸またはその誘導体等が、共沸して蒸留物に混入する虞が高いのに対して、ヒドロキシアルカン酸エステルを蒸留する場合には、エステル含有液中の主成分がヒドロキシアルカン酸エステル以外に類似の化合物を含有しにくいことからも、沸点の違いによる分離精製は容易に行えると考えられる。
また、エステル化工程、蒸留工程においては、あらかじめ、発酵液から菌体や夾雑物等の不溶性成分や高分子量成分を濾過等により分離した後行うことができ、このような工程により、エステル化工程、蒸留工程の効率を向上することができる。
蒸留工程で精製されたヒドロキシアルカン酸エステルは、化合物としての純度が高くかつ光学活性も高いものとなっている。このヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解工程により加水分解すると、加水分解による光学活性の低下は起きにくいので、ヒドロキシアルカン酸が得られ、得られるヒドロキシアルカン酸についても、純度が高くかつ光学純度も高いものとなると期待できる。
本発明者らによると、加水分解を酸触媒や、アルカリ触媒により行うと、ヒドロキシアルカン酸の加水分解のみならず、脱水反応や溶液の着色が同時に進行し、クロトン酸またはその誘導体が生成することが確認されている。そこで、鋭意検討の結果、加水分解を行う触媒として固体酸触媒を用いると、クロトン酸またはその誘導体を生成することなく良好に加水分解が行えることを実験的に明らかにした。この知見に基づき、本発明のヒドロキシアルカン酸の製造方法に従って固体酸触媒を用いて加水分解工程を行うと、クロトン酸またはその誘導体をほとんど含まないヒドロキシアルカン酸を効率よく精製することができる。
その結果得られたヒドロキシアルカン酸は、特に、樹脂材料として用いる場合にも重合阻害剤としてのクロトン酸またはその誘導体を含まず、着色もせず、高品質な樹脂製品の原料として有用に用いられるようになった。また、医療、日用品用途で用いられる場合にも、着色なく、残留有機溶媒や、クロトン酸またはその誘導体による悪影響の虞もなく、きわめて人体に安全な材料として用いられるようになる。
尚、前記ヒドロキシアルカン酸としては、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸等が挙げられるが、特に3ヒドロキシ酪酸(3HB)である場合、あるいは、前記ヒドロキシアルカン酸生産菌が3HB生産性のハロモナス菌である場合、3HBは、工業的用途においても利用価値が高まりつつある物質であるとともに、医薬、農薬、食品添加物等としての応用も期待できる。また、たとえば、3−ヒドロキシプロピオン酸は、組み換え大腸菌を用いて発酵生成することができることが知られており(たとえば特開2013−202029等参照)、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸は、シュードモナス・プチダを用いて発酵生成することができることが知られており(たとえば、Katinka Ruth et al., Biomacromolecules,8,1,p.279-286(2007) 等参照)、いずれのヒドロキシアルカン酸も、ポリマー原料や化成品中間体としての利用が期待できる。
また、特に、前記発酵工程が、前記ハロモナス菌を好気発酵する好気発酵工程と、好気発酵工程によりポリヒドロキシ酪酸(PHB)を蓄積した前記ハロモナス菌を嫌気発酵する嫌気発酵工程とを含むものであれば、生物発酵によるヒドロキシアルカン酸の生産がきわめて効率的に行える。
また、前記エステル化剤としてのアルコール溶媒が、炭素数が1〜4のアルコールから選ばれる少なくとも一種以上のアルコールであってもよい。
このような炭素数が1〜4のアルコール溶媒は、水と相性が良い溶媒であり、かつ3HBを高濃度に溶解することができるので、アルコール置換工程においてアルコール溶液を作成する際に、操作性がよく、かつ、3HBエステルの溶解度も高く、3HBエステルをさらに精製するような場合に効率が良い。炭素数が1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノールt−ブタノール等の一価のアルコールの他、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール等のジアルコールや、セロソルブ(2−エトキシエタノール)等が挙げられる。また、このようなアルコール溶媒であると、たとえばエタノールやブタノールを用いた場合,安全性の高い溶剤として用いることができる3HBエチル(EHB)や3HBブチルが得られる。なお、アルコール溶媒としては、水と混和可能であることが望ましいが、水存在下でも反応工程にて十分な反応性が確保されるものであればこれらに限らず用いることができる。
また、前記加水分解工程後のヒドロキシアルカン酸に含まれるヒドロキシアルカン酸の分解に由来する不純物含有量が10ppm以下となるようにヒドロキシアルカン酸を精製することが好ましく、さらには、前記加水分解工程後のヒドロキシアルカン酸の光学純度がR体99%ee以上となるようにヒドロキシアルカン酸を精製することが好ましい。
このように精製すると、医薬、健康食品等用途において安全性が高く、ポリマーの原料としての用途において反応性の優れたヒドロキシアルカン酸を提供することができるため、きわめて有用である。
また、前記固体酸触媒が酸性イオン交換樹脂であることが好ましく、強酸性イオン交換樹脂であることが更に好ましい。このような場合、効率よく加水分解工程を行うことができ、収率および光学活性が高くなるようヒドロキシアルカン酸を製造することができる。
したがって、生物発酵由来で効率よく生産されるヒドロキシアルカン酸を高効率で簡易に光学活性が高く純度の高いものとして精製することができた。
以下に、本発明のヒドロキシアルカン酸の製造方法を説明する。尚、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
本発明の実施形態にかかるヒドロキシアルカン酸の製造方法は、ヒドロキシアルカン酸生産菌からヒドロキシアルカン酸を発酵生成した発酵液を得る発酵工程と、前記発酵液の溶媒としての水分を留去して、ヒドロキシアルカン酸に対するエステル化剤としてのアルコール溶媒に置換し、エステル化触媒の存在下で、加熱してヒドロキシアルカン酸エステルを生成したエステル含有液を得るエステル化工程と、前記エステル含有液を蒸留して、前記エステル含有液からヒドロキシアルカン酸エステルを分離して蒸留液を得る蒸留工程と、前記蒸留液と固体酸触媒とを接触させてヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解してヒドロキシアルカン酸を得る加水分解工程と、を行う。
〔発酵工程〕
発酵工程は、たとえば、3HB生産菌から3HBを発酵生成した発酵液を得るものである。具体的には、糖質を含む培養液を収容した発酵容器に3HB生産性のハロモナス菌を添加して、まず撹拌通気しつつ好気発酵工程を行う。これにより、ハロモナス菌により糖質を資化させ、PHBを生産させることができ、ハロモナス菌体内にPHBを蓄積する。次に、糖類がほぼ完全に消費されたころに、発酵容器内への通気を停止して嫌気発酵工程を行う。これにより、ハロモナス菌は体内に蓄積したPHBを分解消費して発酵液中に3HBを放出する。その結果、3HB及び菌体を含有する発酵液が得られる。
〔エステル化工程〕
得られた発酵液は、精密ろ過膜(MF膜)によりろ過する。すると簡便に菌体を除去することができ、主に3HBを含有する発酵液とすることができる。ここで、菌体をろ過するのにMF膜を用いたが、3HBと菌体とを分離可能な手段であれば、種々公知のろ過膜を採用してろ過工程を行うことができる。この工程においては、不溶物に加え、タンパク質成分等、比較的高分子の溶解成分まで除去することもできるが、本実施例においては、後述の各工程を行う関係上、必要以上に精度の高い濾過を行う必要がなく、MF膜を用いた簡便な濾過操作を行うことで十分な夾雑物除去効果を達成することができた。
続いて、発酵液のpHをpH1〜6に調整して、発酵液中の3HBを遊離酸の形態として、アルコール溶液中に移行させやすくする。具体的には、上記工程で得られた発酵液は、3HBを4.8質量%含有するものであった。pH調整は、この発酵液2000gを12規定の塩酸を用いて行い、pH=3.0に調整した。これにより発酵液中で塩として存在する3HBについても遊離酸の形態に変換することができる。
得られた発酵液は、溶媒としての水分を留去して、3HBに対するエステル化剤としてのアルコール溶媒に置換する。具体的には、pH調整した発酵液をエバポレーターを用いて水を留去し、濃縮したところ、188.6gの濃縮液が得られた。この時点での濃縮液の水分率はカールフィッシャー水分計で0.4%であった。続いてこの濃縮液に、3HBに対するエステル化剤としてのエタノール254.8gを加え濃縮液に含まれる3HBをアルコール中に移行させ、エステル含有液とした。尚、濃縮液の主成分は不純物を含んでいるために結晶化しなかった3HBであると考えられる。
得られたエステル含有液は、アルコールに不溶の種々夾雑物を含有しているので、ろ過して除去する。3HBについては、アルコール溶媒に高濃度に溶解可能であるので、アルコール溶媒中に移行しているため、夾雑物としては、発酵液由来の発酵生成物として高分子量のたんぱく質や、無機塩等が含まれる。この工程を行うと、褐色透明のアルコール溶液が得られた。ろ過には、MF膜等の簡便な分離膜を用いることができるものとなった。
得られたアルコール溶液に、エステル化反応用触媒としての濃硫酸9.6gを加えて還流条件で2時間エステル化を行う反応工程を行った。反応中、生成した水分は、二相分離器を用いて系内から留去した。
〔蒸留工程〕
得られた反応液を蒸留により分留したところ、収率は78%で(R)3−ヒドロキシ酪酸エチル(EHB)の蒸留液が得られた。得られたEHBの純度をガスクロマトグラフにて測定すると、99%を超えていた。
〔加水分解工程〕
加水分解工程では、蒸留液に固体酸触媒を接触させてヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解する。加水分解は蒸留液中に水と固体酸触媒としての酸性イオン交換樹脂を投入して加熱還流する、酸性イオン交換樹脂のカラム中に蒸留液を流下させる等の方法で行うことができる。また、酸性イオン交換樹脂としては、強酸性イオン交換樹脂、弱酸性イオン交換樹脂のいずれであっても用いることができるが、特に強酸性イオン交換樹脂が好ましい。
<実施例1>
蒸留工程で精製されたEHB150g、蒸留水150g、強酸性イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製SK1Bを塩酸にて再生処理したものを使用)15gを400mL三口フラスコに入れて、バス温104℃で窒素フロー条件下で加熱した。加水分解により生じるエタノールはフラスコ内から追い出しながら反応を6時間行った。反応後、系内にEHB及びエタノールは残留しておらず、99%以上の収率で3HBを得た。得られた3HBは、ほぼ無色透明であり、クロトン酸またはその誘導体は検出されなかった(検出限界の10ppm未満であった)。また、得られた3HBはR体であり、光学純度は、99%ee以上であることが確認できた。
<比較例1>
蒸留工程で精製されたEHB20gを100mLナス型フラスコに入れ、アイスバスで氷冷しながら12NのNaOH水溶液を2分間で分割添加し、加水分解を行った。得られた水溶液からはクロトン酸が約50ppm検出された。また、水溶液は褐色に着色していた。そのため、化粧品等の原料として用いるには、外観上好ましくないばかりか、クロトン酸が残留するため、人体等に対する悪影響が懸念され、品質管理上好ましくないことがわかった。
<比較例2>
蒸留工程で精製されたEHB20gを100mLナス型フラスコに入れ、アイスバスで氷冷しながら12NのHSO水溶液を2分間で分割添加し、加水分解を行った。得られた水溶液からはクロトン酸またはその誘導体は検出されなかったが、水溶液は褐色に着色していた。そのため、化粧品等の原料として用いるには、外観上好ましくないばかりか、中和の後、有機溶媒を用いて晶析を行うなど追加の精製工程を必要とし、精製工程が煩雑になるとともに、精製後のヒドロキシアルカン酸に微量の有機溶媒が残留する虞があり、品質管理上好ましくないことがわかった。
<比較例3>
強酸性イオン交換樹脂を強塩基性イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製SA10Aを水酸化ナトリウムにて再生したものを使用)に変えた以外は実施例1と同様の試験を行ったが、EHBの加水分解はほとんど進行していなかった。
実施例1および比較例1〜3によると、加水分解工程で用いられる加水分解触媒としては、酸性イオン交換樹脂が好適に用いられ、中でも強酸性イオン交換樹脂が特に好適に用いられることが分かった。
〔別実施の形態〕
尚、上記実施の形態では、エステル化剤としてのアルコール溶媒として、エタノールを用い、EHBの製造を行ったが、アルコール溶媒としては、他に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノールt−ブタノール等の一価のアルコールの他、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコール等のジアルコールや、セロソルブ(2−エトキシエタノール)等のC1〜C4のアルコールから選ばれる少なくとも一種以上のアルコールが好適に用いられるが、その他のアルコールを用いることもできる。
また、ヒドロキシアルカン酸としては、3HBに限らず、これ代えて他のヒドロキシアルカン酸を用いることができる。たとえば、3−ヒドロキシプロピオン酸は、組み換え大腸菌を用いて発酵生成することができることが知られており、ポリマー原料や化成品中間体としての利用が期待できる。また、たとえば、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸は、シュードモナス菌を用いて発酵生成することができることが知られており、ポリマー原料や化成品中間体としての利用が期待できる。
本発明によるヒドロキシアルカン酸は、特に、樹脂材料として用いる場合にも重合阻害剤としてのクロトン酸またはその誘導体を含まず、着色もせず、高品質な樹脂製品の原料として有用に用いられる。また、医療、日用品用途で用いられる場合にも、着色なく、残留有機溶媒や、クロトン酸またはその誘導体による悪影響の虞もなく、きわめて人体に安全な材料として用いられる。

Claims (9)

  1. ヒドロキシアルカン酸生産菌からヒドロキシアルカン酸を発酵生成した発酵液を得る発酵工程と、
    前記発酵液の溶媒としての水分を留去して、ヒドロキシアルカン酸に対するエステル化剤としてのアルコール溶媒に置換し、エステル化触媒を添加したのち、加熱してヒドロキシアルカン酸エステルを生成したエステル含有液を得るエステル化工程と、
    前記エステル含有液を蒸留して、前記エステル含有液からヒドロキシアルカン酸エステルを分離して蒸留液を得る蒸留工程と、
    前記蒸留液に固体酸触媒を接触させてヒドロキシアルカン酸エステルを加水分解してヒドロキシアルカン酸を得る加水分解工程と、
    を行うヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  2. 前記ヒドロキシアルカン酸が3ヒドロキシ酪酸(3HB)、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシペンタン酸、3−ヒドロキシヘキサン酸から選ばれる少なくとも一種以上である請求項1に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  3. 前記ヒドロキシアルカン酸生産菌が3HB生産性のハロモナス菌である請求項2に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  4. 前記発酵工程が、前記ハロモナス菌を好気発酵する好気発酵工程と、好気発酵工程によりポリヒドロキシ酪酸(PHB)を蓄積した前記ハロモナス菌を嫌気発酵する嫌気発酵工程とを含む請求項3に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  5. 前記エステル化剤としてのアルコール溶媒が、炭素数が1〜4のアルコールから選ばれる少なくとも一種以上のアルコールである請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  6. 前記加水分解工程後のヒドロキシアルカン酸に含まれるヒドロキシアルカン酸の分解物に由来する不純物含有量が10ppm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  7. 前記加水分解工程後のヒドロキシアルカン酸の光学純度がR体99%ee以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  8. 前記固体酸触媒が、酸性イオン交換樹脂である請求項1〜7のいずれか一項に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
  9. 前記酸性イオン交換樹脂が、強酸性イオン交換樹脂である請求項8に記載のヒドロキシアルカン酸の製造方法。
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