以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(冷却装置の構成)
図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による冷却装置100の構成について説明する。
図1に示す冷却装置100は、冷却負荷Lを冷却するための装置である。たとえば、冷却装置100は、物品(図示せず)を保管する冷蔵倉庫(図示せず)を所定温度に維持するための装置である。冷却装置100は、二元式の冷凍装置であり、一般的に、一元冷却装置よりも低い冷却温度(超低温)を得ることが可能である。
冷却装置100は、高温側回路101と、低温側回路102とを備えている。高温側回路101および低温側回路102は、それぞれ、独立して冷媒を循環させるように構成されている。高温側回路101および低温側回路102は、互いに異なる冷媒を循環させるように構成されている。高温側回路101および低温側回路102には、それぞれ、高温特性の良好な冷媒および低温特性の良好な冷媒が用いられる。なお、冷媒は、回路内(高温側回路101および低温側回路102内)において黒塗りの矢印で示される方向に移動する。
ここで、第1実施形態では、冷却装置100は、高温側回路101と低温側回路102とに跨るように設けられ、高温側回路101と低温側回路102との間で熱エネルギーを交換する熱交換器として、メインカスケード熱交換器3、および、サブカスケード熱交換器としての過冷却器4を備えている。
メインカスケード熱交換器3および過冷却器4は、高温側回路101において、冷媒に熱エネルギーを付与する機能を有しており、低温側回路102において、冷媒から熱エネルギーを奪う機能を有している。詳細には、メインカスケード熱交換器3は、高温側回路101において、蒸発器として機能するとともに、低温側回路102において、凝縮器として機能するように構成されている。過冷却器4は、高温側回路101において、蒸発器として機能するとともに、低温側回路102において、液体冷媒を冷却(過冷却)する機能を有している。
すなわち、冷却装置100は、高温側回路101の蒸発潜熱を利用して、メインカスケード熱交換器3および過冷却器4により、低温側冷媒を凝縮および冷却するように構成されている。また、過冷却器4は、メインカスケード熱交換器3に対して補助的に液体冷媒の冷却を行い、メインカスケード熱交換器3による液体冷媒の冷却時の負担を軽減する役割を有している。
メインカスケード熱交換器3および過冷却器4は、高温側回路101において並列に配置されている。なお、過冷却器4も、高温側回路101と低温側回路102との間で熱エネルギーを交換する熱交換器として機能する。メインカスケード熱交換器3および過冷却器4の詳細については後述する。
(高温側回路の構成)
冷却装置100の高温側回路101は、2段圧縮型の回路を有している。冷却装置100の高温側回路101は、圧縮機10と、凝縮器11と、メイン膨張弁12と、サブ膨張弁13と、メインカスケード熱交換器3と、過冷却器4と、冷媒配管1とを備えている。なお、圧縮機10は、特許請求の範囲の「高温側圧縮機」の一例である。また、凝縮器11は、特許請求の範囲の「高温側凝縮器」の一例である。
高温側回路101は、圧縮機10、凝縮器11、メイン膨張弁12、サブ膨張弁13、メインカスケード熱交換器3および過冷却器4を、冷媒配管1により接続して形成されている。
高温側回路101は、圧縮機10の冷媒吐出側を高温側回路101の基点(最上流の構成)とした場合に、圧縮機10、凝縮器11、膨張弁(メイン膨張弁12およびサブ膨張弁13)および熱交換器(メインカスケード熱交換器3および過冷却器4)が上流側から順に配置されるとともに、各構成が冷媒配管1により環状に接続されるように構成されている。
冷却装置100の高温側回路101は、さらに、圧縮機10の出口側(吐出側)と入口側(吸入側)とを接続する戻し回路14と、アキュムレータ15と、圧力センサ16と、補助圧縮機17と、逆止弁18とを備えている。なお、補助圧縮機17は、特許請求の範囲の「圧縮機」の一例である。
圧縮機10は、吸入された気体冷媒を圧縮して高圧側(凝縮器11側)に吐出するように構成されている。たとえば、圧縮機10には、回転数の変更により冷媒吐出量が制御可能なインバータ制御式圧縮機が用いられる。圧縮機10により圧縮された冷媒は、冷媒配管1を流通して圧縮機10の下流側に配置される凝縮器11に流入される。
戻し回路14は、圧縮機10から吐出された冷媒の一部を圧縮機10の入口側に還流させるように構成されている。具体的には、戻し回路14には、直列に配置される流量調整弁14aおよび逆止弁14bを含んでいる。流量調整弁14aは、図示しない制御部により、開度が制御されて、冷媒の戻り量を調整するように構成されている。逆止弁14bは、戻し回路14内で、圧縮機10の入口側(吸入側)およびメインカスケード熱交換器3および過冷却器4の出口側(下流側)から圧縮機10の出口側(吐出側)方向への冷媒の逆流を防止するように構成されている。
凝縮器11は、冷媒を凝縮するように構成されている。たとえば、凝縮器11は、内部を流通する過熱状態の気体冷媒を送風機(図示せず)により送風される空気を用いて冷却する空気熱交換器により構成されている。凝縮器11により凝縮された冷媒は、冷媒配管1を流通して凝縮器11の下流側に配置されるメイン膨張弁12およびサブ膨張弁13に流入される。
メイン膨張弁12およびサブ膨張弁13は、それぞれ、メインカスケード熱交換器3および過冷却器4の入口側(上流側)に直列に配置されている。メイン膨張弁12およびメインカスケード熱交換器3と、サブ膨張弁13および過冷却器4とは、並列に配置されている。
詳細には、冷媒配管1は、凝縮器11の下流側に設けられる分岐点T1において、下流側に向けて分岐する第1配管1aおよび第2配管1bを含んでいる。第1配管1aには、メイン膨張弁12およびメインカスケード熱交換器3が上流側から順に設けられている。第2配管1bには、サブ膨張弁13、過冷却器4、補助圧縮機17および逆止弁18が上流側から順に設けられている。第1配管1aおよび第2配管1bは、メインカスケード熱交換器3および過冷却器4の下流側で、かつ、圧縮機10の上流側に設けられる合流点T2において合流するように構成されている。
メイン膨張弁12は、原則、全開にならない範囲で、高温側回路101のメインカスケード熱交換器3に流入する冷媒量を調整するように構成されている。すなわち、メイン膨張弁12は、第1配管1aに流入する冷媒量を調整するように構成されている。
サブ膨張弁13は、原則、全開にならない範囲で、高温側回路101の過冷却器4に流入する冷媒量を調整するように構成されている。すなわち、サブ膨張弁13は、第2配管1bに流入する冷媒量を調整するように構成されている。なお、サブ膨張弁13は、補助圧縮機17が駆動されることにより、サブ膨張弁13とサブ膨張弁13の下流側の補助圧縮機17との間の冷媒配管1A内を減圧するように、比較的小さな開度に調整される。メイン膨張弁12およびサブ膨張弁13により膨張された冷媒は、気液二相状態(湿り蒸気)になる。
メインカスケード熱交換器3および過冷却器4は、上記の通り、高温側回路101において、共に、蒸発器として機能するように構成されている。メインカスケード熱交換器3および過冷却器4により蒸発された冷媒は、冷媒配管1を流通して、アキュムレータ15を介してメインカスケード熱交換器3および過冷却器4の下流側に配置される圧縮機10に流入される。
アキュムレータ15は、圧縮機10に液体冷媒が流入して、圧縮機10で液圧縮が発生するのを防止するために、圧縮機10の上流側において、液体冷媒を気体冷媒から分離するように構成されている。なお、アキュムレータ15には、戻し回路14により還流された冷媒も流入するように構成されている。
圧力センサ16は、アキュムレータ15と圧縮機10との間で、かつ、圧縮機10の入口近傍の冷媒配管1に設けられている。圧力センサ16は、冷媒配管1内の冷媒圧力を検出するように構成されている。冷却装置100は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、メイン膨張弁12の開度を調整するように構成されている。すなわち、冷却装置100は、高温側回路101の冷媒圧力に基づいて、メイン膨張弁12の開度を制御するように構成されている。
補助圧縮機17は、メインカスケード熱交換器3と並列に配置されるとともに、過冷却器4の下流側に配置されている。また、補助圧縮機17は、圧縮機10の上流側に設けられる合流点T2よりも上流側に配置されている。補助圧縮機17は、圧縮機10とは独立して設けられている。すなわち、補助圧縮機17は、圧縮機10とは別構成である。
冷却装置100は、低温側回路102の後述する温度センサ22の検出結果や冷却負荷Lの温度などに基づいて、過冷却器4が配置されるサブ膨張弁13および補助圧縮機17の間に配置される冷媒配管1A(冷媒配管1の一部を構成する冷媒配管)内の圧力が変更されるように、サブ膨張弁13および補助圧縮機17の少なくとも一方を制御するように構成されている。
具体例として、冷却装置100は、低温側回路102の温度センサ22の検出結果や冷却負荷Lの温度などに基づいて、冷却負荷Lに送る液体冷媒の温度を下げる必要があると判断した場合(所定の設定温度よりも液体冷媒の温度が高い場合)には、補助圧縮機17のロータの回転速度(ピストン式圧縮機の場合には、ピスントンの往復移動速度)を増大させて、冷媒配管1A内を減圧するように構成されている。その結果、冷却装置100は、高温側回路101においてメインカスケード熱交換器3に流入する冷媒よりも一層低温になった冷媒を用いて、過冷却器4において低温側回路102の冷媒と熱交換を行うように構成されている。
逆止弁18は、補助圧縮機17の下流側に直列に配置されている。また、逆止弁18は、圧縮機10の上流側に設けられる合流点T2よりも上流側に配置されている。逆止弁18は、冷却装置100が停止した際に、冷媒が、逆止弁18の下流側から上流側(補助圧縮機17側)に逆流するのを防止する機能を有している。
(低温側回路の構成)
冷却装置100の低温側回路102は、圧縮機20と、メインカスケード熱交換器3と、過冷却器4と、冷媒配管2とを備えている。なお、圧縮機20は、特許請求の範囲の「低温側圧縮機」の一例である。
低温側回路102は、圧縮機20、メインカスケード熱交換器3、過冷却器4、膨張弁L1および冷却負荷Lを、冷媒配管2により接続して形成されている。
低温側回路102は、圧縮機20の冷媒吐出側を低温側回路102の基点(最上流の構成)とした場合に、圧縮機20、メインカスケード熱交換器3、過冷却器4、膨張弁L1および冷却負荷Lが上流側から順に配置されるとともに、各構成が冷媒配管2により環状に接続されるように構成されている。
冷却負荷Lには、入口近傍(上流側)に膨張弁L1が設けられている。冷却負荷Lおよび膨張弁L1は、2つのサービスバルブ23を介して、圧縮機20の上流側で、過冷却器4の下流側に接続されている。
低温側回路102は、さらに、受液器21と、温度センサ22とを備えている。
圧縮機20は、高温側回路101の圧縮機10と同様の構成であるため説明を省略する。圧縮機20により圧縮された冷媒は、冷媒配管2を流通して圧縮機20の下流側に配置されるメインカスケード熱交換器3に流入される。
メインカスケード熱交換器3は、上記の通り、低温側回路102において、凝縮器として機能するように構成されている。すなわち、メインカスケード熱交換器3は、圧縮機20側(上流側)から流入する気体冷媒(過熱蒸気または飽和蒸気)を、液体冷媒(飽和液または過冷却液)にするように構成されている。メインカスケード熱交換器3は、概して、気液二相状態の冷媒を流出させないように構成されている。ここで、高温側回路101では、冷却装置100は、メイン膨張弁12にサブ膨張弁13よりも多くの冷媒を流入させるように制御を行う。このため、メインカスケード熱交換器3は、過冷却器4と比較して、大きな冷媒の冷却負荷に対する冷却能力を発揮可能なように構成されている。メインカスケード熱交換器3により凝縮された冷媒は、冷媒配管2を流通して、受液器21を介してメインカスケード熱交換器3の下流側に配置される過冷却器4に流入される。
受液器21は、メインカスケード熱交換器3の下流側で、過冷却器4の上流側に配置されている。受液器21は、冷媒配管2に接続されている。受液器21は、冷却負荷Lの負荷変動によるメインカスケード熱交換器3内の冷媒量の変動を吸収するように構成されている。また、受液器21は、メインカスケード熱交換器3により冷媒を凝縮しきれなかった場合に、メインカスケード熱交換器3から冷媒配管2に流出する気液二相状態の冷媒を過冷却器4の手前(上流側)で回収する機能を有している。
過冷却器4は、低温側回路102において、メインカスケード熱交換器3の下流側に配置されている。過冷却器4は、メインカスケード熱交換器3により凝縮および冷却された液体冷媒を冷却するように構成されている。
温度センサ22は、過冷却器4と膨張弁L1との間で、かつ、過冷却器4の出口近傍の冷媒配管2に設けられている。温度センサ22は、冷媒配管2内の冷媒温度を検出するように構成されている。
(p−h線図)
次に、冷却装置100の圧力と比エンタルピとの関係を示すp−h線図(モリエル線図)について説明する。
〈高温側回路のp−h線図〉
図2を参照して、高温側回路101における冷媒のp−h線図について説明する。なお、図2に示す点A1、点A2、点A3、点A41、点A42、点A51、点A52および点A6は、それぞれ、図1に示す高温側回路101の冷媒配管2の位置A1、位置A2、位置A3、位置A41、位置A42、位置A51、位置A52および位置A6における冷媒の比エンタルピおよび圧力を示している。
点A1は、圧縮機10による圧縮前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A1の状態では、気体冷媒である。点A1の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力を、ha1およびpa1とする。そして、点A1の状態の冷媒が圧縮機10により圧縮されると、点A2の状態に至る。
点A2は、圧縮機10による圧縮後で、凝縮器11による凝縮前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A2の状態では、気体冷媒である。点A2の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力を、それぞれ、ha2およびpa2とする。比エンタルピha2は、比エンタルピha1よりも大きい。圧力pa2は、圧力pa1よりも大きい。そして、点A2の状態の冷媒が凝縮器11により凝縮されると、点A3の状態に至る。
点A3は、凝縮器11による凝縮後で、膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)による膨張前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A3の状態では、液体冷媒である。すなわち、冷媒は、凝縮器11による凝縮により、飽和蒸気線および飽和液線を順に跨いで気体冷媒から液体冷媒に変化する。点A3の状態での冷媒の比エンタルピを、ha3とする。比エンタルピha3は、比エンタルピha1よりも小さい。点A3の状態での冷媒の圧力は、pa2である。そして、点A3の状態の冷媒がメイン膨張弁12により膨張されると、点A41の状態に至る。また、点A3の状態の冷媒がサブ膨張弁13により膨張されると、点A42の状態に至る。
点A41は、メイン膨張弁12による膨張後で、メインカスケード熱交換器3による蒸発前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A41の状態では、気液二相状態の冷媒である。すなわち、冷媒は、メイン膨張弁12による膨張により、飽和液線を跨いで液体冷媒から気液二相状態の冷媒に変化する。点A41の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力は、それぞれ、ha3およびpa1である。そして、点A41の状態の冷媒がメインカスケード熱交換器3により蒸発されると、点A51の状態に至る。
点A42は、サブ膨張弁13による膨張後で、過冷却器4による蒸発前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A42の状態では、気液二相状態の冷媒である。点A42の状態での冷媒の比エンタルピは、ha3である。点A42の状態での冷媒の圧力を、pa42とする。ここで、サブ膨張弁13の下流側には、サブ膨張弁13に直列に接続される補助圧縮機17が設けられている。したがって、サブ膨張弁13と補助圧縮機17との間の冷媒配管1A内の圧力(圧力pa42)は、圧力pa1よりも小さくなる。
すなわち、過冷却器4に流入する冷媒の圧力がメインカスケード熱交換器3に流入する冷媒の圧力よりも小さく(pa42<pa1)、かつ、過冷却器4に流入する冷媒の比エンタルピがメインカスケード熱交換器3に流入する冷媒の比エンタルピと等しい(ha3=ha3)。このため、冷却装置100は、過冷却器4に流入する冷媒の温度を、メインカスケード熱交換器3に流入する冷媒の温度よりも小さくすることが可能である。したがって、補助圧縮機17を設けることにより、冷却装置100は、低温側回路102の冷媒の過冷却を効果的に行うことができる。そして、点A42の状態の冷媒が過冷却器4により蒸発されると、点A52の状態に至る。
点A51は、メインカスケード熱交換器3による蒸発後で、補助圧縮機17および逆止弁18を通過した冷媒と合流する前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A51の状態では、気体冷媒である。点A51の状態での冷媒の圧力は、pa1である。点A51の状態での冷媒の比エンタルピを、ha51とする。比エンタルピha51は、比エンタルピha3よりも大きい。
点A52は、過冷却器4による蒸発後で、補助圧縮機17による圧縮前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A52の状態では、気体冷媒である。点A52の状態での冷媒の圧力は、pa42である。点A52の状態での冷媒の比エンタルピを、ha52とする。比エンタルピha52は、比エンタルピha3よりも大きい。そして、点A52の状態の冷媒が補助圧縮機17により圧縮されると、点A6の状態に至る。
点A6は、補助圧縮機17による圧縮後で、メインカスケード熱交換器3を通過した冷媒と合流する前(逆止弁18を通過する前)の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A6の状態では、気体冷媒である。点A6の状態での冷媒の圧力は、pa1である。点A6の状態での冷媒の比エンタルピを、ha6とする。比エンタルピha6は、比エンタルピha52よりも大きい。そして、点A6の状態の冷媒が逆止弁18を通過し、合流点T2において、メインカスケード熱交換器3を通過した点A51の冷媒と合流すると、点A1の状態に戻る。
〈低温側回路のp−h線図〉
図2を参照して、低温側回路102における冷却装置100のp−h線図について説明する。なお、図2に示す点B1、点B2、点B21、点B3および点B4は、それぞれ、図1に示す低温側回路102の冷媒配管2の位置B1、位置B2、位置B21、位置B3および位置B4における冷媒の比エンタルピおよび圧力を示している。
点B1は、圧縮機20による圧縮前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点B1の状態では、気体冷媒である。点B1の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力を、hb1およびpb1とする。そして、点B1の状態の冷媒が圧縮機20により圧縮されると、点B2の状態に至る。
点B2は、圧縮機20による圧縮後で、メインカスケード熱交換器3による凝縮前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点B2の状態では、気体冷媒である。点B2の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力を、それぞれ、hb2およびpb2とする。比エンタルピhb2は、比エンタルピhb1よりも大きい。圧力pb2は、圧力pb1よりも大きい。そして、点B2の状態の冷媒がメインカスケード熱交換器3により凝縮されると、点B21の状態に至る。
点B21は、メインカスケード熱交換器3による凝縮後で、過冷却器4による冷却前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点B21の状態では、液体冷媒である。すなわち、冷媒は、メインカスケード熱交換器3による凝縮により、飽和蒸気線および飽和液線を順に跨いで気体冷媒から液体冷媒に変化する。点B21の状態での冷媒の比エンタルピを、hb21とする。比エンタルピhb21は、比エンタルピhb2よりも小さい。点B21の状態での冷媒の圧力は、pb2である。そして、点B21の状態の冷媒が過冷却器4により冷却されると、点B3の状態に至る。
点B3は、過冷却器4による冷却後で、膨張弁L1による膨張前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点B3の状態では、液体冷媒である。過冷却器4では、概して、液体冷媒の過冷却が行われる。すなわち、過冷却器4は、一般的な単一のカスケード熱交換器により冷却負荷を冷却する冷却装置とは異なり、メインカスケード熱交換器3に代わり、液体冷媒の過冷却を行う役割を有している。点B3の状態での冷媒の比エンタルピを、hb3とする。比エンタルピhb3は、比エンタルピhb21よりも小さい。点B3の状態での冷媒の圧力は、pb2である。そして、点B3の状態の冷媒が膨張弁L1により膨張されると、点B4の状態に至る。
点B4は、膨張弁L1による膨張後で、冷却負荷Lによる蒸発前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点B4の状態では、気液二相状態(湿り蒸気)の冷媒である。点B4の状態での冷媒の比エンタルピは、hb3である。点B4の状態での冷媒の圧力は、pb1である。そして、点B4の状態の冷媒が冷却負荷Lにより蒸発および加熱されると、点B1の状態に戻る。
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第1実施形態では、上記のように、高温側回路101において、メインカスケード熱交換器3が設けられる冷媒配管1(第1配管1a)と、サブカスケード熱交換器としての過冷却器4が設けられる冷媒配管1(第2配管1b)とに冷媒を分流させることができるので、単一のカスケード熱交換器を備える冷却装置と比較して、高温側回路101において、冷媒配管1が大型化するのを抑制することができる。その結果、冷媒配管1が大型化するのに伴い、高温側回路101の圧縮機10や凝縮器11などが大型化するのを抑制することができるので、装置全体が大型化するのを抑制することができる。また、複数のカスケード熱交換器(メインカスケード熱交換器3および過冷却器4)により、低温側回路102の冷媒を冷却することができるので、冷却負荷Lに対する冷却能力を向上させることができる。以上により、冷却装置100は、装置の大型化を抑制しながら、冷却負荷Lに対する冷却能力を向上させることができる。
また、サブカスケード熱交換器としての過冷却器4が設けられることにより、低温側回路102において、メインカスケード熱交換器3により、凝縮および冷却された液体冷媒を過冷却器4においてさらに冷却(過冷却)することができるので、メインカスケード熱交換器3のみが冷媒の凝縮および冷却(過冷却)を行う場合と比較して、冷却負荷Lに対する冷却能力を効果的に向上させることができる。すなわち、過冷却器4によりメインカスケード熱交換器3による液体冷媒の冷却時の負担を軽減することができる。
また、高温側回路101において過冷却器4の下流側に補助圧縮機17が設けられることにより、過冷却器4を通過する冷媒を、メイン膨張弁12を介してメインカスケード熱交換器3を通過する冷媒よりもより低圧にして、より低温にすることができる。このため、高温側回路101の過冷却器4を通過する冷媒により、低温側回路102において過冷却器4を通過する冷媒(冷却負荷Lに送られる冷媒)を効果的に過冷却することができる。すなわち、低温側回路102の冷凍能力を向上させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、メインカスケード熱交換器3の上流側に直列に配置されるメイン膨張弁12と、過冷却器4の上流側に直列に配置されるサブ膨張弁13とを設け、メイン膨張弁12およびメインカスケード熱交換器3と、サブ膨張弁13および過冷却器4とは、並列に配置され、過冷却器4が配置されるサブ膨張弁13および補助圧縮機17の間の冷媒配管1A内の圧力が変更されるように、メイン膨張弁12の制御とは独立して、サブ膨張弁13および補助圧縮機17の少なくとも一方を制御するように構成されている。これにより、サブ膨張弁13および補助圧縮機17の少なくとも一方を制御することにより、過冷却器4に流入する冷媒の圧力(温度)を調整することができるので、低温側回路102において過冷却器4で冷媒を過冷却して、冷却負荷Lに対して必要な冷凍能力が発揮されるように適切に調整することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、圧縮機10と独立して設けられる補助圧縮機17を備える。これにより、補助圧縮機17および圧縮機10によって、過冷却器に流入する冷媒量と、メインカスケード熱交換器3に流入する冷媒量とを個別制御することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、高温側回路101は、補助圧縮機17の下流側に直列に配置される逆止弁18をさらに含む。これにより、逆止弁18によって、補助圧縮機17の停止時において、冷媒が補助圧縮機17の下流側から上流側に逆流するのを防止することができる。
[第2実施形態]
図3および図4を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、さらに、高温側回路101が内部熱交換器19を備える例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第2実施形態による冷却装置200は、図3に示すように、内部熱交換器19を含む高温側回路101を備えている。
内部熱交換器19は、凝縮器11および膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)の間に配置される冷媒配管1Bと、過冷却器4および補助圧縮機17の間に配置される冷媒配管1Aとに跨るように設けられている。
内部熱交換器19は、高温側回路101において、凝縮器11により凝縮された冷媒と、過冷却器4により蒸発された冷媒との間で熱交換を行うように構成されている。その結果、冷却装置200は、内部熱交換器19から膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)に過冷却された冷媒を送るように構成されている。
(p−h線図)
次に、図4を参照して、高温側回路101における冷却装置200のp−h線図について説明する。図4に示す点A1、点A2、点A3、点A51、点A52および点A6は、第1実施形態と同様の冷媒の状態を示す点であるため、説明を省略する。なお、第1実施形態と比較のため、第1実施形態における冷媒の状態を示す点A41および点A42を括弧書きにより図示している。
点A31、点A410、点420および点A53は、それぞれ、図3に示す高温側回路101の冷媒配管1の位置A31、位置A410、位置A420および位置A53における冷媒の比エンタルピおよび圧力を示している。
点A3の状態の液体冷媒が内部熱交換器19での熱交換により過冷却されて、点A31の状態に至る。点A31の状態での冷媒の比エンタルピを、ha31とする。比エンタルピha31は、比エンタルピha3よりも小さい。高温側回路101において、第2実施形態の冷却装置200は、第1実施形態の冷却装置100と比較して、より小さい比エンタルピの液体冷媒を膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)に送ることが可能であるため、成績係数(COP=Coefficient Of Performance)が向上する。点A31の状態での冷媒の圧力は、pa2である。そして、点A31の状態の冷媒がメイン膨張弁12により膨張されると、点A410の状態に至る。また、点A31の状態の冷媒がサブ膨張弁13により膨張されると、点A420の状態に至る。
点A410は、メイン膨張弁12による膨張後で、メインカスケード熱交換器3による蒸発前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A410の状態では、気液二相状態の冷媒である。点A410の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力は、それぞれ、ha31およびpa1である。そして、点A410の状態の冷媒がメインカスケード熱交換器3により蒸発されると、点A51の状態に至る。
点A420は、サブ膨張弁13による膨張後で、過冷却器4による蒸発前の冷媒の状態を示している。冷媒は、点A420の状態では、気液二相状態の冷媒である。点A420の状態での冷媒の比エンタルピおよび圧力は、それぞれ、ha31およびpa42である。そして、点A420の状態の冷媒が過冷却器4により蒸発されると、点A52の状態に至る。
点A52の状態の気体冷媒が内部熱交換器19での熱交換により加熱されて、点A53の状態に至る。点A53の状態での冷媒の比エンタルピを、ha53とする。比エンタルピha53は、比エンタルピha52よりも大きい。そして、点A53の状態の冷媒が補助圧縮機17により圧縮されると、点A6の状態に至る。なお、低温側回路102のp−h線図は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第2実施形態では、上記のように、高温側回路101は、凝縮器11および膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)の間に配置される冷媒配管1Bと、過冷却器4および補助圧縮機17の間に配置される冷媒配管1Aとに跨るように設けられる内部熱交換器19を含む。これにより、内部熱交換器19により、高温側回路101においてメインカスケード熱交換器3および過冷却器4に流入する冷媒をより過冷却することができるので、高温側回路101において成績係数(COP)を向上させることができる。また、過冷却器4の下流に設けられる内部熱交換器19により、過冷却器4から流出した冷媒が気液二相状態であったとしても確実に気体冷媒にすることができるので、補助圧縮機17に液体冷媒が流入して、液圧縮が生じるのを防止することができる。
[第3実施形態]
図5を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、上記第1実施形態の構成に加えて、さらに、サブカスケード熱交換器としての相互ガスカスケード熱交換器19aを備える例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。
本発明の第3実施形態による冷却装置300は、図5に示すように、相互ガスカスケード熱交換器19aを備えている。
相互ガスカスケード熱交換器19aは、高温側回路101において凝縮器11および膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)の間に配置される冷媒配管1Bと、低温側回路102において冷却負荷Lおよび圧縮機20の間に配置される冷媒配管2Aとに跨るように設けられている。
相互ガスカスケード熱交換器19aは、高温側回路101において凝縮器11により凝縮された冷媒と、低温側回路102において冷却負荷Lにより蒸発された冷媒との間で熱交換を行うように構成されている。その結果、冷却装置300は、相互ガスカスケード熱交換器19aから膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)に過冷却された冷媒を送るように構成されている。なお、冷却装置300のp−h線図は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第3実施形態では、上記のように、高温側回路101において凝縮器11および膨張弁(メイン膨張弁12、サブ膨張弁13)の間に配置される冷媒配管1Bと、低温側回路102において冷却負荷Lおよび圧縮機20の間に配置される冷媒配管2Aとに跨るように設けられる相互ガスカスケード熱交換器19aをさらに備える。これにより、相互ガスカスケード熱交換器19aにより、高温側回路101においてメインカスケード熱交換器3および過冷却器4に流入する冷媒をより過冷却することができるので、高温側回路101において成績係数(COP)を向上させることができる。また、低温側回路102において冷却負荷Lから流出した冷媒が気液二相状態であったとしても確実に気体冷媒にすることができるので、圧縮機20に液体冷媒が流入して、液圧縮が生じるのを防止することができる。
[第4実施形態]
図6を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、過冷却器4の下流側に補助圧縮機17を設けた上記第1実施形態の構成とは異なり、過冷却器4の下流側に2段圧縮機190の1段目圧縮部191を設ける例について説明する。なお、図中において、上記第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を付して図示している。また、2段目圧縮部192は、特許請求の範囲の「高温側圧縮機」の一例である。また、1段目圧縮部191は、特許請求の範囲の「圧縮機」の一例である。
本発明の第4実施形態による冷却装置400は、図6に示すように、1段目圧縮部191および2段目圧縮部192を含む2段圧縮機190を備えている。
2段圧縮機190の1段目圧縮部191および2段目圧縮部192は、共通のモータ(図示せず)により駆動されるように構成されている。1段目圧縮部191は、2段目圧縮部192と一体的に設けられることによって2段目圧縮部192とともに2段圧縮機190を構成している。
1段目圧縮部191は、過冷却器4と、逆止弁18との間に配置されている。冷却装置400は、過冷却器4が配置されるサブ膨張弁13および1段目圧縮部191の間の冷媒配管1A内の圧力が変更されるように、サブ膨張弁13および1段目圧縮部191の少なくとも一方を制御するように構成されている。
逆止弁18の下流側には、中間熱交換器190aが設けられている。中間熱交換器190aは、高温側回路101において凝縮器11により凝縮された冷媒と、高温側回路101においてメインカスケード熱交換器3により蒸発された冷媒および高温側回路101において1段目圧縮部191で圧縮され、逆止弁18を通過した冷媒との間で熱交換を行うように構成されている。2段目圧縮部192は、中間熱交換器190aと、凝縮器11との間に配置されている。なお、冷却装置400のp−h線図は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
第4実施形態では、上記のように、2段目圧縮部192とともに2段圧縮機190を構成する1段目圧縮部191を備える。これにより、2段圧縮機190によって、凝縮器11に圧縮した冷媒を送る圧縮部(2段目圧縮部192)と、メインカスケード熱交換器3を通過する冷媒よりも過冷却器4を通過する冷媒を低圧にする圧縮部(1段目圧縮部191)とを1つの装置にまとめることができるので、部品点数を削減することができるとともに、高温側回路101の構成を簡素化することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第2および第3実施形態では、過冷却器の下流側に配置される本発明の圧縮機の一例として補助圧縮機を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、過冷却器の下流側に配置される本発明の圧縮機として、上記第4実施形態のように2段圧縮機の1段目圧縮部を用いてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、カスケード熱交換器から流出した冷媒と、補助圧縮機から流出した冷媒とを直接合流させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図7に示す冷却装置500のように、補助圧縮機の上流側にサブカスケード熱交換器としてのガスクーラ19bを設けてもよい。ガスクーラ19bを設けることにより、低温側回路102では、メインカスケード熱交換器3に冷媒が流入する前に、気体冷媒を冷却して気液二相状態の冷媒にすることができるので、メインカスケード熱交換器3による凝縮を効果的に行うことができる。
また、上記第1〜第4実施形態では、圧縮機の入口近傍に、圧力センサを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アキュムレータ(中間熱交換器)の出口近傍、アキュムレータの入口近傍、または、メインカスケード熱交換器の出口近傍などに、圧力センサを設けてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、高温側回路に、圧力センサを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、高温側回路に、圧力センサに代えて、温度センサを設けてもよい。
また、上記第4実施形態では、過冷却器を、ガスクーラの上流に直列に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガスクーラを、過冷却器の上流に直列に配置してもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、冷却装置が1つまたは2つのサブカスケード熱交換器を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却装置が3つ以上のサブカスケード熱交換器を備えていてもよい。
また、上記第1〜第4実施形態では、低温側回路が受液器を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、低温側回路が受液器を備えていなくてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、戻し回路により還流された冷媒を、アキュムレータの入口側に流入する配置にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、戻し回路により還流された冷媒を、圧縮機の入口側(吸入側)に流入する配置にしてもよい。