JP2019172800A - 炭素材料前駆体組成物、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法 - Google Patents

炭素材料前駆体組成物、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体を含有し、炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能な炭素材料前駆体組成物を提供すること。【解決手段】アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、多官能性アミノ基を有する化合物とを含有することを特徴とする炭素材料前駆体組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素材料前駆体組成物、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法に関する。
従来から、炭素繊維等の炭素材料の製造方法として、ポリアクリロニトリルからなる炭素材料前駆体に不活性雰囲気下、加熱処理を施す方法が知られている(例えば、特開2016−113276号公報(特許文献1))。この方法に用いられるポリアクリロニトリルは安価な汎用溶媒に溶解しにくいため、重合や紡糸の際に、ジメチルスルホキシドやN,N−ジメチルアセトアミド等の高価な有機溶媒を使用する必要があり、環境負荷の問題や炭素材料の製造コストが高くなるという問題があった。
一方、ポリアクリルアミドは水溶性のポリマーであり、重合や紡糸の際に、安価で環境負荷の小さい水を溶媒として使用することができるため、炭素材料の製造コストの削減が期待される。
特開2016−113276号公報
炭素材料は成形加工が困難であることから、所望の形状(例えば、繊維、フィルム)の炭素材料を得るためには、炭素材料前駆体を所望の形状に成形した後、炭化処理を施す必要があった。しかしながら、所望の形状に成形したポリアクリルアミドからなる炭素材料前駆体に炭化処理を施すと、得られる炭素材料において、炭化処理前の所望の形状が必ずしも保持されていないという問題があった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体を含有し、炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能な炭素材料前駆体組成物、その製造方法、及びそれを用いた炭素材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体に、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分及び多官能性アミノ基を有する化合物を添加することによって、炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能な炭素材料前駆体組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の炭素材料前駆体組成物は、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、多官能性アミノ基を有する化合物とを含有することを特徴とするものである。
本発明の炭素材料前駆体組成物においては、前記アクリルアミド系共重合体中のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基とが共有結合を形成していることが好ましく、また、前記添加成分がリン酸、ホウ酸、硫酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の炭素材料前駆体組成物の製造方法は、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分の存在下、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と多官能性アミノ基を有する化合物とを300℃以下の温度で加熱して反応させることによって前記共有結合が形成された炭素材料前駆体組成物を得ることを特徴とするものである。
また、本発明の炭素材料の製造方法は、前記本発明の炭素材料前駆体組成物に不活性雰囲気下、500〜3000℃の温度で加熱処理を施して炭化処理を行うことを特徴とするものである。
なお、本発明の炭素材料前駆体組成物が炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体に炭化処理を施した場合、昇温過程(特に、200〜250℃の温度域)においてアクリルアミド系共重合体が軟化するため、炭化処理前の形状を保持した炭素材料を得ることは困難である。
一方、本発明の炭素材料前駆体組成物は、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を含有するアクリルアミド系共重合体(以下、「カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体」という)からなる炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、多官能性アミノ基を有する化合物(以下、「多官能性アミノ基含有化合物」という)とを含有するものである。この炭素材料前駆体組成物においては、前記添加成分の触媒作用により、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基がイオン結合を形成し、更に脱水反応して共有結合が形成され、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造が導入される。例えば、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体とエチレンジアミンは、酸触媒の存在下で下記反応式:
のように脱水反応して共有結合を形成し、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造が導入される。このような架橋構造を備えるアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体に炭化処理を施した場合、このアクリルアミド系共重合体が昇温過程で軟化しにくいため、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることが可能となると推察される。
本発明によれば、アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体を含有し、炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能な炭素材料前駆体組成物を得ることができる。また、このような本発明の炭素材料前駆体組成物に炭化処理を施すことによって、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることが可能となる。
実施例1で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例1で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、比較例2で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、及び比較例3で得られた炭素材料前駆体からなるフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。 実施例1〜3で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例3で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、及び比較例4で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。 実施例4〜5で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例3で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、及び比較例4で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。 実施例6で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例5で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、及び比較例6で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。 実施例1、7、8で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例3で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、及び比較例7で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。 実施例1で得られた炭素材料前駆体組成物からなるフィルム、比較例3で得られた炭素材料前駆体からなるフィルム、及び比較例4で得られた比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムの熱重量分析結果を示すグラフである。 炭化試験で使用した治具を示す概略図である。 実施例1の炭素材料前駆体組成物から得られた炭素材料のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例1の炭素材料前駆体組成物から得られた炭素材料のFT−IRスペクトルを示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明の炭素材料前駆体組成物について説明する。本発明の炭素材料前駆体組成物は、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体(カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体)からなる炭素材料前駆体と、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、多官能性アミノ基を有する化合物(多官能性アミノ基含有化合物)とを含有するものである。このような本発明の炭素材料前駆体組成物に炭化処理を施すことによって、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることができる。
(炭素材料前駆体)
本発明に用いられる炭素材料前駆体は、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を含有するアクリルアミド系共重合体からなるものである。このカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体は、全モノマー単位100モル%に対して、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上の割合で含有するものである。アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。また、このようなカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性が向上し、また、炭素材料前駆体の炭化収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の下限としては、60モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、80モル%以上が特に好ましい。一方、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限は、全モノマー単位100モル%に対して99.5モル%以下である。アクリルアミド系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、相対的にカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量が少なくなるため、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造に導入されず、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることが困難となる。また、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造が十分に導入され、炭化処理前の所望の形状が十分に保持された炭素材料が得られ、さらには、炭素材料前駆体の炭化収率が向上するという観点から、アクリルアミド系モノマー単位の含有量の上限としては、99モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下が更に好ましく、90モル%以下が特に好ましい。
また、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体は、全モノマー単位100モル%に対して、カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上の割合で含有するものである。カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量が前記下限未満になると、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造に導入されず、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることが困難となる。また、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造が十分に導入され、炭化処理前の所望の形状が十分に保持された炭素材料が得られるという観点から、カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量の下限としては、1モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、5モル%以上が更に好ましく、10モル%以上が特に好ましい。一方、カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量の上限は、全モノマー単位100モル%に対して50モル%以下である。カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量が前記上限を超えると、相対的にアクリルアミド系モノマー単位の含有量少なくなるため、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体が後述する水性溶媒又は水系混合溶媒に溶解しにくくなる。また、このようなカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性が向上するという観点から、カルボキシル基を有するビニル系モノマー単位の含有量の上限としては、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%以下が特に好ましい。
前記アクリルアミド系モノマーとしては、例えば、アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド等のアルキルアクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド等のジアルキルアクリルアミド;ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルアクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシアルキルアクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド等のアルキルメタクリルアミド;N,N−ジメチルメタクリルアミド等のジアルキルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド等のジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド等のヒドロキシアルキルメタクリルアミド;ジアセトンメタクリルアミドが挙げられる。このようなアクリルアミド系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのアクリルアミド系モノマーの中でも、水溶性に優れているという観点から、アクリルアミドが好ましい。
前記カルボキシル基を有するビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその塩;カルボキシスチレン等のビニル基を有する芳香族カルボン酸;カルボキシメチルアクリレート、カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシアルキルアクリレート;カルボキシメチルメタクリレート、カルボキシエチルメタクリレート等のカルボキシアルキルメタクリレート;アクリロイルアミノ酢酸等のアクリロイルアミノカルボン酸;メタクリロイルアミノ酢酸等のメタクリロイルアミノカルボン酸;アクリルアミドプロピオン酸等のアクリルアミドカルボン酸が挙げられる。これらのカルボキシル基を有するビニル系モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのカルボキシル基を有するビニル系モノマーの中でも、コスト、水性溶媒又は水系混合溶媒に対する可溶性、共重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
また、本発明に用いられるカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体においては、本発明の効果を損なわない範囲において、アクリルアミド系モノマー単位及びカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位のほかに、他の重合性モノマー単位が含まれていてもよい。このような他の重合性モノマー単位の含有量としては、全モノマー単位100モル%に対して、49.5モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下が更に好ましく、20モル%以下が特に好ましい。前記他の重合性モノマーとしては、例えば、シアン化ビニル系モノマー、不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、ビニル系モノマー、オレフィン系モノマーが挙げられる。前記シアン化ビニル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ヒドロキシエチルアクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、クロロメタクリロニトリル、メトキシアクリロニトリル、メトキシメタクリロニトリル等が挙げられる。前記不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、イタコン酸無水物等が挙げられ、前記不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられ、前記ビニル系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、ビニルアルコール等が挙げられ、前記オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。これらの他の重合性モノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
また、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体は、水性溶媒(水、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)等、及びこれらの混合溶媒)及び水系混合溶媒(前記水性溶媒と有機溶媒(テトラヒドロフラン、アルコール、アセトニトリル等)との混合溶媒)のうちの少なくとも一方に可溶なものであることが好ましい。これにより、炭素材料前駆体組成物を製造する際に、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた湿式混合が可能となり、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを均一かつ低コストで安全に混合することが可能となる。また、得られた炭素材料前駆体組成物を成形する際には、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた乾式成形(乾式紡糸)、乾湿式成形(乾湿式紡糸)、湿式成形(湿式紡糸)、又はエレクトロスピニングが可能となり、低コストで安全に炭素材料を製造することが可能となる。なお、前記水系混合溶媒中の有機溶媒の含有量としては、前記水性溶媒に不溶又は難溶なカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体が有機溶媒を混合することによって溶解する量であれば特に制限はない。また、このようなカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の中でも、より低コストで安全に炭素材料前駆体組成物や炭素材料を製造することが可能となるという観点から、前記水性溶媒に可溶なカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体が好ましく、水に可溶な(水溶性の)カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体がより好ましい。
このようなカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体を製造する方法としては、溶液重合、懸濁重合、沈殿重合、分散重合、乳化重合(例えば、逆相乳化重合)等の公知の重合方法を採用することができる。溶液重合を採用する場合、溶媒としては、原料のモノマー及び得られるカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体が溶解するものであれば特に制限はないが、低コストで安全に製造できるという観点から、前記水性溶媒(水、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)等、及びこれらの混合溶媒等)又は前記水系混合溶媒(前記水性溶媒と有機溶媒(テトラヒドロフラン、アルコール、アセトニトリル等)との混合溶媒)を使用することが好ましく、前記水性溶媒を使用することがより好ましく、水を使用することが特に好ましい。また、重合開始剤としては、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の前記水性溶媒及び前記水系混合溶媒のうちの少なくとも一方(好ましくは前記水性溶媒、より好ましくは水)に可溶なラジカル重合開始剤が挙げられる。
(添加成分)
本発明に用いられる添加成分は、酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基との脱水反応において触媒として作用するものである。前記酸としては、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸、硝酸、炭酸等の無機酸、シュウ酸、クエン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられる。また、このような酸の塩としては、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられ、アンモニウム塩、アミン塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。特に、これらの添加成分のうち、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基との反応において高い触媒活性が得られるという観点から、リン酸、ホウ酸、硫酸及びそれらの塩が好ましく、リン酸、ホウ酸、硫酸、及びそれらのアンモニウム塩がより好ましい。また、得られる炭素材料前駆体の炭化収率が更に向上するという観点から、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、硫酸、及びこれらのアンモニウム塩が好ましく、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、及びこれらのアンモニウム塩がより好ましく、リン酸、ポリリン酸、リン酸のアンモニウム塩、ポリリン酸のアンモニウム塩が特に好ましい。
前記添加成分は、前記水性溶媒及び前記水系混合溶媒のうちの少なくとも一方(好ましくは前記水性溶媒、より好ましくは水)に可溶な成分であることが好ましい。これにより、炭素材料前駆体組成物を製造する際に、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた湿式混合が可能となり、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを均一かつ低コストで安全に混合することが可能となる。また、得られた炭素材料前駆体組成物を成形する際には、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた乾式成形(乾式紡糸)、乾湿式成形(乾湿式紡糸)、湿式成形(湿式紡糸)、又はエレクトロスピニングが可能となり、低コストで安全に炭素材料を製造することが可能となる。
(多官能性アミノ基含有化合物)
本発明に用いられる多官能性アミノ基含有化合物は、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体とイオン結合を形成し、更に脱水反応して共有結合し、架橋構造を形成するものである。このような多官能性アミノ基含有化合物としては、例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン等の芳香族ジアミン;ジアミノヘキサン、ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン;ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ジアミンが挙げられる。このような多官能性アミノ基含有化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの多官能性アミノ基含有化合物の中でも、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体との反応性の観点から、フェニレンジアミン、ジアミノヘキサン、ジアミノオクタンが好ましい。
前記多官能性アミノ基含有化合物は、前記水性溶媒及び前記水系混合溶媒のうちの少なくとも一方(好ましくは前記水性溶媒、より好ましくは水)に可溶な成分であることが好ましい。これにより、炭素材料前駆体組成物を製造する際に、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた湿式混合が可能となり、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを均一かつ低コストで安全に混合することが可能となる。また、得られた炭素材料前駆体組成物を成形する際には、前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒を用いた乾式成形(乾式紡糸)、乾湿式成形(乾湿式紡糸)、湿式成形(湿式紡糸)、又はエレクトロスピニングが可能となり、低コストで安全に炭素材料を製造することが可能となる。
〔炭素材料前駆体組成物〕
本発明の炭素材料前駆体組成物は、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを含有するものである。また、このような本発明の炭素材料前駆体組成物においては、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基とが共有結合を形成していることが好ましい。これにより、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体中に架橋構造が導入されるため、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の軟化が抑制され、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を得ることができる。
このような本発明の炭素材料前駆体組成物において、前記多官能性アミノ基含有化合物の含有量としては、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体中の架橋構造の含有量が増加し、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の軟化がより十分に抑制され、炭化処理前の所望の形状が十分に保持された炭素材料が得られるという観点から、前記炭素材料前駆体の含有量に対して、0.01〜40等量が好ましく、0.1〜20等量がより好ましく、0.1〜10等量が更に好ましく、0.2〜5等量が特に好ましく、0.5〜2等量が最も好ましい。また、前記添加成分の含有量としては、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基との脱水反応において十分な触媒活性が得られ、また、炭素材料前駆体組成物の炭化収率が向上するという観点から、前記炭素材料前駆体100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましく、0.1〜20質量部が更に好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。
また、このような本発明の炭素材料前駆体組成物を含有する水性溶液又は水系混合溶液は、前記炭素材料前駆体の濃度が高濃度(例えば、20質量%以上)であっても粘度が低く、成形加工性に優れている。具体的には、前記炭素材料前駆体の濃度が30質量%である前記水性溶液又は前記水系混合溶液の粘度が、室温、10s−1のせん断速度下において、20Pa・s以下であることが好ましい。これにより、例えば、前記水性溶液又は前記水系混合溶液を用いて溶液キャスト法によりフィルムを形成した場合に、厚みムラが少なく(10%以下)、表面外観に優れたフィルムを得ることができる。一方、前記水性溶液又は前記水系混合溶液の粘度が20Pa・sを超えると、得られるフィルムの表面外観が悪化する傾向にあり、100Pa・sを超えると、得られるフィルムの厚みムラが大きくなる(10%超)傾向にあり、200Pa・sを超えると、キャスト時のハンドリング性が低く、フィルムが得られなかったり、フィルムが得られた場合でも、フィルムに気泡が含まれたり、厚みムラが更に大きく(20%超)なったりする傾向にある。
本発明の炭素材料前駆体組成物の製造方法としては、溶融状態の前記炭素材料前駆体に前記添加成分及び前記多官能性アミノ基含有化合物を直接混合(溶融混合)し、得られた炭素材料前駆体組成物を所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形する方法、前記炭素材料前駆体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とをドライブレンド(乾式混合)し、得られた炭素材料前駆体組成物を所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形する方法、前記添加成分及び前記多官能性アミノ基含有化合物を含有する水性溶液又は水系混合溶液に所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形した前記炭素材料前駆体を浸漬したり、通過させたりして所望の形状の炭素材料前駆体組成物を得る方法、前記炭素材料前駆体が不溶な溶媒(例えば、アルコール、アセトン、塩素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族系溶媒)と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを含有する溶液に所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形した前記炭素材料前駆体を浸漬したり、通過させたりして所望の形状の炭素材料前駆体組成物を得る方法等を採用することも可能であるが、使用する前記炭素材料前駆体、前記添加成分及び前記多官能性アミノ基含有化合物が前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に可溶である場合には、前記炭素材料前駆体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを均一に混合することができるという観点から、前記炭素材料前駆体と前記添加成分と前記多官能性アミノ基含有化合物とを前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒中で混合(湿式混合)し、得られた溶液を用いて炭素材料前駆体組成物を所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形した後、前記溶媒を除去する方法が好ましい。また、前記湿式混合においては、より低コストで安全に炭素材料前駆体組成物を製造できるという観点から、溶媒として前記水性溶媒を使用することが好ましく、水を使用することがより好ましい。さらに、前記溶媒を除去する方法としては特に制限はなく、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の公知の乾燥方法を採用することができるが、設備が簡便であるという観点から、熱風乾燥が好ましい。
また、本発明の炭素材料前駆体組成物の製造方法においては、所望の形状の炭素材料前駆体組成物に300℃以下(好ましくは250℃以下)の温度で加熱処理を施し、前記添加成分の存在下、前記炭素材料前駆体と前記多官能性アミノ基を有する化合物とを脱水反応させることが好ましい。これにより、前記カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基含有化合物の多官能性アミノ基との間のイオン結合形成及び/又は共有結合形成が促進され、カルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造が十分に導入される。その結果、このアクリルアミド系共重合体の軟化がより十分に抑制され、炭化処理前の所望の形状が十分に保持された炭素材料を得ることができる。なお、前記加熱温度の下限としては、加熱による効果が十分に得られるという観点から、室温(25℃)以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、加熱時間としては1分間〜5時間が好ましく、1分間〜2時間がより好ましい。
〔炭素材料の製造方法〕
次に、本発明の炭素材料の製造方法について説明する。本発明の炭素材料の製造方法においては、前記本発明の炭素材料前駆体組成物に不活性雰囲気下(窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中)、500〜3000℃(好ましくは500〜2500℃、より好ましくは1000〜2000℃)の温度で加熱処理を施して炭化処理を行う。これにより、炭化処理前の所望の形状が十分に保持された炭素材料を得ることができる。また、炭化処理における加熱時間としては1分間〜10時間が好ましい。
また、本発明の炭素材料の製造方法においては、炭化処理の前に、前記本発明の炭素材料前駆体組成物に酸化性雰囲気下(例えば、空気中)で加熱処理(耐炎化処理)を施してもよい。これにより、炭素材料前駆体組成物中の前記添加成分が作用してカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体の構造が耐熱性の高い構造に変換されるため、炭素材料前駆体の炭化収率が向上する。また、この耐炎化処理によってカルボキシル基含有アクリルアミド系共重合体に架橋構造を導入することもできる。このような耐炎化処理における加熱温度としては500℃以下が好ましく、150〜400℃がより好ましく、200〜350℃が更に好ましい。また、耐炎化処理における加熱時間としては特に制限はなく、例えば、1時間を超える加熱も可能であるが、製造コストの低減という観点から、1〜60分間が好ましい。
さらに、本発明の炭素材料の製造方法においては、炭化処理の前(耐炎化処理を行う場合にはその前)に、使用する炭素材料前駆体組成物を予め所望の形状(例えば、フィルム状、シート状、繊維状、塊状)に成形加工することが好ましい。このとき、炭素材料前駆体組成物をそのまま加圧成形したり、溶融状態の炭素材料前駆体組成物を用いて溶融成形(例えば、溶融キャスト成形、溶融押出成形、射出成形、溶融紡糸)してもよいが、本発明の炭素材料前駆体組成物が前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に可溶である場合には、成形加工性が向上するという観点から、炭素材料前駆体組成物を前記水性溶媒又は前記水系混合溶媒に溶解し、得られた水性溶液又は水系混合溶液を用いて成形することが好ましい。このような成形方法としては、溶液キャスト成形、湿式成形(湿式紡糸)、乾湿式成形(乾湿式紡糸)、乾式成形(乾式紡糸)、エレクトロスピニングを行うことが好ましい。これにより、所望の形状の炭素材料前駆体組成物を低コストで安全に製造することができる。また、より低コストで安全に炭素材料を製造することができるという観点から、溶媒として前記水性溶媒を使用することがより好ましく、水を使用することが特に好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用したアクリルアミド系共重合体及び比較例で使用したアクリルアミド系単独重合体は以下の方法により合成した。
(合成例1)
アクリルアミド(AAm)5g(70mmol)とアクリル酸(AA)0.62g(8.6mmol)を水90gに溶解した後、真空ポンプを用いて減圧と窒素ガス導入とを繰り返して窒素置換を行なった。次いで、窒素気流下で過硫酸カリウム水溶液(過硫酸カリウム75mgを水1.1mlに溶解したもの)及びテトラメチルエチレンジアミン75μlを添加し、さらに窒素置換を行なった後、窒素気流下でマグネチックスターラーを用いて攪拌した。攪拌開始から30分経過後、粘度上昇により撹拌子が回転しなくなったが、そのまま12時間反応を継続した。その後、水150mlを添加し、メカニカルスターラーを用いて均一に攪拌して、アクリルアミド/アクリル酸共重合体(PAAm/AA(90mol%:10mol%))の水溶液(PAAm濃度:23g/L)を得た。
(合成例2)
アクリル酸(AA)の量を0.26g(3.6mmol)に変更した以外は合成例1と同様にして、アクリルアミド/アクリル酸共重合体(PAAm/AA(95mol%:5mol%))の水溶液(PAAm濃度:22g/L)を得た。なお、この合成においては、反応時の粘度上昇は見られず、マグネチックスターラーによる攪拌を12時間継続した。
(比較合成例1)
アクリルアミド(AAm)10g(140mmol)を水90gに溶解した後、真空ポンプを用いて減圧と窒素ガス導入とを繰り返して窒素置換を行なった。次いで、窒素気流下で過硫酸カリウム水溶液(過硫酸カリウム50mgを水1.1mlに溶解したもの)及びテトラメチルエチレンジアミン50μlを添加し、さらに窒素置換を行なった後、窒素気流下でマグネチックスターラーを用いて攪拌した。攪拌開始から30分経過後、粘度上昇により撹拌子が回転しなくなったが、そのまま12時間反応を継続した。その後、水350mlを添加し、メカニカルスターラーを用いて均一に攪拌して、アクリルアミド単独重合体(PAAm)の水溶液(PAAm濃度:22g/L)を得た。
(実施例1)
合成例1で得られたPAAm/AA(90mol%:10mol%)水溶液1.1gにリン酸0.9mg及びp−フェニレンジアミン(p−PDA)4.9mgを添加して溶解した。なお、一部のp−フェニレンジアミンは一部のリン酸によって中和され、中和されたp−フェニレンジアミンはPAAm/AAとの架橋反応に関与しないため、この中和反応によって消費されたp−フェニレンジアミンの量(リン酸を3価の酸として計算)を考慮すると、前述した量のp−フェニレンジアミンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するp−フェニレンジアミンの量は1等量となる。また、前記中和反応において消費されたリン酸も、PAAm/AAとp−フェニレンジアミンとの架橋反応における触媒として作用しないため、前記中和反応によって消費されたリン酸の量を考慮すると、前述した量のリン酸を添加することによって、PAAm/AAとp−フェニレンジアミンとの架橋反応における触媒として作用するリン酸の量は、PAAm/AA(90mol%:10mol%)100質量部に対して2質量部となる。このようにして得られた水溶液を直径40mmのテフロン(登録商標)製のシャーレに入れ、70℃の恒温槽中で1時間乾燥させ、さらに真空乾燥を施して、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。
(実施例2)
p−フェニレンジアミンの量を3.25mgに変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたp−フェニレンジアミンの量を考慮すると、前述した量のp−フェニレンジアミンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するp−フェニレンジアミンの量は0.5等量となる。
(実施例3)
p−フェニレンジアミンの量を6.75mgに変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたp−フェニレンジアミンの量を考慮すると、前述した量のp−フェニレンジアミンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するp−フェニレンジアミンの量は1.5等量となる。
(実施例4)
p−フェニレンジアミンの代わりにジアミノヘキサン(DAH)5.2mgを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とジアミノヘキサンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたジアミノヘキサンの量を考慮すると、前述した量のジアミノヘキサンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するジアミノヘキサンの量は1等量となる。
(実施例5)
ジアミノヘキサンの量を9mgに変更した以外は実施例4と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とジアミノヘキサンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたジアミノヘキサンの量を考慮すると、前述した量のジアミノヘキサンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するジアミノヘキサンの量は2等量となる。
(比較例1)
比較合成例1で得られたPAAm水溶液1.1gを直径40mmのテフロン(登録商標)製のシャーレに入れ、70℃の恒温槽中で1時間乾燥させ、さらに真空乾燥を施して、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm(炭素材料前駆体)からなるフィルムを得た。
(比較例2)
合成例1で得られたPAAm/AA(90mol%:10mol%)水溶液の代わりに比較合成例1で得られたPAAm水溶液1.4gを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm(炭素材料前駆体)とリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する比較用炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。
(比較例3)
比較合成例1で得られたPAAm水溶液の代わりに合成例1で得られたPAAm/AA(90mol%:10mol%)水溶液1.1gを用いた以外は比較例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)からなるフィルムを得た。
(比較例4)
p−フェニレンジアミンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とを含有する比較用炭素材料前駆体組成物からなるからなるフィルムを得た。
(実施例6)
合成例1で得られたPAAm/AA(90mol%:10mol%)水溶液の代わりに合成例2で得られたPAAm/AA(95mol%:5mol%)水溶液1.1gを用い、p−フェニレンジアミンの量を4.1mgに変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(95mol%:5mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたp−フェニレンジアミンの量を考慮すると、前述した量のp−フェニレンジアミンを添加することによって、PAAm/AAとの架橋反応に関与するp−フェニレンジアミンの量は1.5等量となる。
(比較例5)
比較合成例1で得られたPAAm水溶液の代わりに合成例2で得られたPAAm/AA(95mol%:5mol%)水溶液1.1gを用いた以外は比較例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(95mol%:5mol%)(炭素材料前駆体)からなるフィルムを得た。
(比較例6)
p−フェニレンジアミンを使用しなかった以外は実施例6と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(95mol%:5mol%)(炭素材料前駆体)とリン酸とを含有する比較用炭素材料前駆体組成物からなるからなるフィルムを得た。
(実施例7)
リン酸の代わりに硫酸9μlを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)と硫酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費された硫酸の量を考慮すると、前述した量の硫酸を添加することによって、PAAm/AAとp−フェニレンジアミンとの架橋反応における触媒として作用する硫酸の量は、PAAm/AA(90mol%:10mol%)100質量部に対して2質量部となる。
(実施例8)
リン酸の代わりにホウ酸0.9mgを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とホウ酸とp−フェニレンジアミンとを含有する炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを得た。なお、実施例1と同様に、中和反応によって消費されたホウ酸の量を考慮すると、前述した量のホウ酸を添加することによって、PAAm/AAとp−フェニレンジアミンとの架橋反応における触媒として作用するホウ酸の量は、PAAm/AA(90mol%:10mol%)100質量部に対して2質量部となる。
(比較例7)
リン酸を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、厚さ20〜30μm、質量約30mgのPAAm/AA(90mol%:10mol%)(炭素材料前駆体)とp−フェニレンジアミンとを含有する比較用炭素材料前駆体組成物からなるからなるフィルムを得た。
<炭化処理>
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られたフィルムを1.5cm×1.25cmの長方形に切断して直径2.5cmのルツボに入れ、直径5cmの石英製管状炉中、500ml/分の窒素気流下で室温から900℃まで4時間かけて昇温した後、900℃で1時間加熱して炭化処理を行なった。
得られた炭素材料の外観を目視により観察した。また、この炭素材料のうち、溶融したり、ルツボに張り付いたりすることなく、自立したフィルムとして生成した部分の面積の割合(フィルム形状保持率)を求めた。さらに、前記炭素材料の質量を測定し、初期質量(炭素材料前駆体の質量)に対する割合(炭化収率)を求めた。その結果を表1〜表3に示す。
表1〜3に示したように、PAAm又はPAAm/AAからなる炭素材料前駆体(比較例1、3、5)やPAAm/AAとp−フェニレンジアミンとからなる比較用炭素材料前駆体組成物(比較例7)に900℃での加熱処理(炭化処理)を施すと、PAAmやPAAm/AAが溶融し、炭化処理前のフィルム形状を保持できなかった。また、PAAmにリン酸とp−フェニレンジアミンとを添加した場合(比較例2)には、900℃での加熱処理(炭化処理)によりPAAmが部分的に溶融するものの、得られた炭素材料は、炭化処理前のフィルム形状の17%が保持されていた。さらに、PAAm/AAにリン酸を添加した場合(比較例4、6)にも、900℃での加熱処理(炭化処理)によりPAAm/AAが部分的に溶融するものの、得られた炭素材料は、炭化処理前のフィルム形状の29〜35%が保持されていた。
一方、表1〜3に示したように、PAAm/AAに、リン酸、硫酸及びホウ酸のうちのいずれかの酸とp−フェニレンジアミン及びジアミノヘキサンのうちのいずれかの多官能アミノ基含有化合物とを添加した場合(実施例1〜8)には、900℃での加熱処理(炭化処理)を施しても、炭化処理前のフィルム形状が保持されていた。これは、炭素材料前駆体組成物からなるフィルムを作製する際の加熱乾燥において、PAAm/AAのカルボキシル基とp−フェニレンジアミン又はジアミノヘキサンのアミノ基とが酸の触媒作用により脱水反応して共有結合が形成され、PAAm/AAに架橋構造が導入されたためと考えられる。
また、表1〜表3に示したように、PAAm/AAにリン酸とp−フェニレンジアミン又はジアミノヘキサンとを添加した場合(実施例1〜8)には、PAAm又はPAAm/AAのみの場合(比較例1、3、5)に比べて、炭化収率が高くなった。さらに、表3に示したように、PAAm/AAに、リン酸、硫酸及びホウ酸のうちのいずれかの酸とp−フェニレンジアミンとを添加した場合(実施例1、7〜8)には、p−フェニレンジアミンのみを添加した場合(比較例7)に比べて、炭化収率が高くなった。
以上の結果から、PAAm/AAからなる炭素材料前駆体に、リン酸、硫酸及びホウ酸のうちのいずれかの酸とp−フェニレンジアミン及びジアミノヘキサンのうちのいずれかの多官能アミノ基含有化合物とを添加することによって、高温での加熱処理(炭化処理)を施しても、炭化処理前の形状(炭素材料前駆体の形状)を保持しながら、高い炭化収率で炭素材料が得られることが確認された。
<粘弾性試験>
実施例1〜8及び比較例1〜7で得られたフィルムを2cm×0.5cmの長方形に切断し、粘弾性スペクトロメーターを用い、大気雰囲気下、ひずみ0.5%、周波数10Hzの条件で室温から370℃まで5℃/分で昇温しながら粘弾性測定を行なった。図1は、実施例1及び比較例1〜3で得られたフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフであり、図2は、実施例1〜3及び比較例3〜4で得られたフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフであり、図3は、実施例4〜5及び比較例3〜4で得られたフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフであり、図4は、実施例6及び比較例5〜6で得られたフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフであり、図5は、実施例1、7、8及び比較例3、7で得られたフィルムの貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。
図1〜図2に示したように、比較例1〜4で得られたフィルムは、200〜250℃の温度域で、貯蔵弾性率が低下し、軟化することがわかった。一方、実施例1〜3で得られたフィルムは、200〜250℃の温度域での貯蔵弾性率が比較例1〜4で得られたフィルムに比べて高くなった。これは、PAAm/AAとリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する本発明の炭素材料前駆体組成物(実施例1〜3)においては、PAAm/AAのカルボキシル基とp−フェニレンジアミンのアミノ基とがリン酸の触媒作用により脱水反応して共有結合が形成され、PAAm/AAに架橋構造(ジアミン架橋)が導入されたためと考えられる。また、本発明の炭素材料前駆体組成物(実施例1〜3)においては、PAAm/AAに架橋構造が導入されたため、表1に示したように、炭化処理を施しても、炭化処理前の形状が保持されたと考えられる。一方、PAAmのみからなる炭素材料前駆体(比較例1)やPAAmとリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する比較用炭素材料前駆体組成物(比較例2)においては、炭素材料前駆体であるPAAmにカルボキシル基が含まれておらず、また、PAAm/AAのみからなる炭素材料前駆体(比較例3)やPAAm/AAとリン酸とを含有する比較用炭素材料前駆体組成物(比較例4)においては、p−フェニレンジアミンが存在しないため、架橋構造が形成されず、貯蔵弾性率が低下し、軟化したと考えられる。
また、p−フェニレンジアミンの代わりにジアミノヘキサンを用いた場合も同様に、PAAm/AAとリン酸とジアミノヘキサンとを含有する本発明の炭素材料前駆体組成物からなるフィルム(実施例4〜5)は、PAAm/AAのカルボキシル基とジアミノヘキサンのアミノ基とがリン酸の触媒作用により脱水反応して共有結合が形成され、PAAm/AAに架橋構造(ジアミン架橋)が導入されたため、図3に示したように、200〜250℃の温度域での貯蔵弾性率が、多官能性アミノ基含有化合物が含まれていないフィルム(比較例3〜4)に比べて高くなり、また、表1に示したように、炭化処理を施しても、炭化処理前の形状が保持されたと考えられる。
さらに、PAAm/AA(90mol%:10mol%)の代わりにPAAm/AA(95mol%:5mol%)を用いた場合も同様に、PAAm/AAとリン酸とp−フェニレンジアミンとを含有する本発明の炭素材料前駆体組成物からなるフィルム(実施例6)は、図4に示したように、200〜250℃の温度域での貯蔵弾性率が、多官能性アミノ基含有化合物が含まれていないフィルム(比較例5〜6)に比べて高くなり、また、表2に示したように、炭化処理を施しても、炭化処理前の形状が保持されたと考えられる。
また、リン酸の代わりに硫酸やホウ酸を用いた場合も同様に、PAAm/AAと硫酸又はホウ酸とp−フェニレンジアミンとを含有する本発明の炭素材料前駆体組成物からなるフィルム(実施例7〜8)は、図5に示したように、200〜250℃の温度域での貯蔵弾性率が、酸が含まれていないフィルム(比較例3、7)に比べて高くなり、また、表3に示したように、炭化処理を施しても、炭化処理前の形状が保持された。これは、PAAm/AAと硫酸又はホウ酸とp−フェニレンジアミンとを含有する本発明の炭素材料前駆体組成物(実施例7〜8)においては、PAAm/AAのカルボキシル基とp−フェニレンジアミンのアミノ基とが硫酸又はホウ酸の触媒作用により脱水反応して共有結合が形成され、PAAm/AAに架橋構造(ジアミン架橋)が導入されたのに対して、PAAm/AAのみからなる炭素材料前駆体(比較例3)やPAAm/AAとp−フェニレンジアミンとを含有する比較用炭素材料前駆体組成物(比較例7)においては、触媒である酸が含まれていないため、PAAm/AAのカルボキシル基とp−フェニレンジアミンのアミノ基との脱水反応が進行せず、架橋構造が形成されなかったためと考えられる。
以上の結果から、PAAm/AAからなる炭素材料前駆体に酸と多官能性アミノ基含有化合物とを添加することによって、200℃〜250℃の温度域におけるPAAm/AAの軟化が抑制され、炭化処理を施しても、炭化処理前の形状が保持されることがわかった。
<熱重量分析>
実施例1及び比較例3〜4で得られたフィルムについて、500ml/分の窒素気流下、室温から1000℃まで10℃/分で昇温しながら熱重量分析を行なった。その結果を図6に示す。図6に示したように、実施例1及び比較例4で得られたフィルムは比較例3で得られたフィルムに比べて、400℃以上の温度域での重量減少が少なかった。この結果から、PAAm/AAにリン酸を添加した場合(比較例4)にはPAAm/AAのみの場合(比較例3)に比べて炭化収率が高くなるが、PAAm/AAにリン酸とp−フェニレンジアミンとを添加した場合(実施例1)にはPAAm/AAにリン酸を添加した場合(比較例4)と同等の炭化収率となり、炭化収率の向上はリン酸の添加によるものであり、p−フェニレンジアミンの添加によって炭化収率が減少することもないことがわかった。
<炭化試験>
実施例1及び比較例4で得られたフィルムを5mm×20mmの長方形に切断して、図7に示すようにアルミナ板1とアルミナブロック2(1cm角、0.7g)とによって挟持し、直径5cmの石英製管状炉中、500ml/分の窒素気流下で室温から900℃まで4時間かけて昇温した後、900℃で1時間加熱して炭化処理を行なった。
得られた炭素材料の外観を目視により観察したところ、実施例1で得られたフィルムは、僅かに収縮したものの、フィルム形状を保持したまま、炭化したことがわかった。一方、比較例4のフィルムは、一部溶融した状態で炭化したことがわかった。
また、実施例1のフィルムから得られた炭素材料について、X線回折パターン及びフーリエ変換赤外分光スペクトル(FI−IRスペクトル)を測定した。それらの結果を図8及び図9に示す。なお、図8及び図9には、ポリアクリルニトリル(PAN)に炭化処理(500ml/分の窒素気流下で室温から900℃まで4時間かけて昇温した後、900℃で1時間加熱)を施すことによって得られた炭化物のX線回折パターン及びFI−IRスペクトルも示した。
図8及び図9に示したように、実施例1のフィルムから得られた炭素材料は、PANの炭化物に類似するX線回折パターン及びFI−IRスペクトルを有しており、PANの炭化物に類似の炭素材料であることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、アクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体を含有し、炭化処理を施した場合でも炭化処理前の所望の形状を保持することが可能な炭素材料前駆体組成物を得ることが可能となる。
したがって、本発明の炭素材料の製造方法は、このような炭素材料前駆体組成物を使用する方法であることから、炭化処理前の所望の形状が保持された炭素材料を製造することが可能な方法として有用である。
1:アルミナ板
2:アルミナブロック
3:フィルム

Claims (5)

  1. アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と、
    酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分と、
    多官能性アミノ基を有する化合物と、
    を含有することを特徴とする炭素材料前駆体組成物。
  2. 前記アクリルアミド系共重合体中のカルボキシル基と前記多官能性アミノ基とが共有結合を形成していることを特徴とする請求項1に記載の炭素材料前駆体組成物。
  3. 前記添加成分がリン酸、ホウ酸、硫酸、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料前駆体組成物。
  4. 酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の添加成分の存在下、アクリルアミド系モノマー単位を50モル%以上含有し、共重合成分としてカルボキシル基を有するビニル系モノマー単位を0.5モル%以上含有するアクリルアミド系共重合体からなる炭素材料前駆体と多官能性アミノ基を有する化合物とを300℃以下の温度で加熱して反応させることによって請求項2に記載の炭素材料前駆体組成物を得ることを特徴とする炭素材料前駆体組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の炭素材料前駆体組成物に不活性雰囲気下、500〜3000℃の温度で加熱処理を施して炭化処理を行うことを特徴とする炭素材料の製造方法。
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