JP2019172515A - 合成シリカガラス粉 - Google Patents

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和平 林
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Abstract

【課題】溶融して得られるシリカガラス層に容易に気泡を発生させることが可能な合成シリカガラス粉を提供する。【解決手段】合成シリカガラス粉Aを含む合成ガラスシリカ粉であって、合成シリカガラス粉Aの粒子径が106μm以下であり、合成シリカガラス粉の全量を100重量%としたとき、合成シリカガラス粉Aの含有量が20重量%以上である。【選択図】なし

Description

半導体や太陽電池に用いられるシリコンウェハを単結晶引上げ法(チョクラルスキー法(CZ法))により製造する際に、溶融シリコンの容器として使用される石英ガラス製ルツボの原料となる合成シリカガラス粉に関する。
近年のシリコンウェハの大口径化に伴い、シリコン単結晶引上げ用の石英ルツボは二層構造が採用されている。その外層には高温強度にすぐれる天然石英粉を原料としたシリカ層、シリコン融液に接する内層には、不純物が少ない高純度な合成シリカガラス粉を原料とするシリカ層が用いられている。二層構造ルツボの典型的製法は、回転するカーボン型枠(回転モールド)内部に天然石英粉と合成シリカガラス粉を層状に堆積させ、アーク溶融することによるものである。
この二層構造ルツボにおいて、従来、内層は気泡が無いことが求められてきた(たとえば特許文献1〜3)。内面の透明ガラス層が実質的に無気泡であると、二層構造ルツボ内の層剥離が生じることがなく、シリコン単結晶引き上げ時の有転位化率を低減することができるという利点を有している。
一方、最近はシリコン単結晶引上げの際、単結晶品質に悪影響を及ぼすルツボ内のシリコン融液の湯面振動防止のため、ルツボの湯面付近の内層部分に体積で0.01〜0.2%の気泡を含有させる技術(例えば特許文献4)や、シリコン融液の温度ムラをなくすため、外部輻射熱を分散させる目的で、ルツボの内層と外層との中間に体積気泡含有率で0.1%以上の気泡含有層を設ける技術が開発されている(例えば特許文献5)。具体的には、回転モールド内表面に堆積した石英粉をモールド空間側から加熱溶融し、該加熱溶融の際にモールド側から石英粉堆積層内の空気を吸引して気泡を除去する真空引きとリークを断続的に行うことにより気泡を発生させる方法が記載されている。また、特許文献6には、ルツボ内に気泡を部分的に作る方法として、合成シリカガラス粉の中に一定個数以上のシリカ白色粒子(以下、白粒と呼ぶ)を含ませる方法が記載されている。
特開平1−148783号公報 特開2001−002430号公報 特開平11−116388号公報 特開2004−250304号公報 特開2009−084113号公報 特開2014−15380号公報
しかしながら、本発明者らの検討によると、特許文献4には、気泡発生の手段が記載されておらず、また、特許文献5に記載の方法では、真空引きとリークを断続的に行う等、プロセスが煩雑になることが判明した。さらに、特許文献6に記載の方法では、白粒製造のための制御が複雑であり、改善の余地があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶融して得られるシリカガラス層に容易に気泡を発生させることが可能な合成シリカガラス粉を提供することに存する。
上記の課題に対し、本発明者らは、各種のシリカガラス粉を合成して検討したところ、ある一定の値以下の粒子径の合成シリカガラス粉を所定量含む合成シリカガラス粉を用いた場合、溶融後のシリカガラス層に気泡を発生させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
(1)合成シリカガラス粉Aを含む合成ガラスシリカ粉であって、合成シリカガラス粉Aの粒子径が106μm以下であり、合成シリカガラス粉の全量を100重量%としたとき、合成シリカガラス粉Aの含有量が20重量%以上である、合成シリカガラス粉。
(2)合成シリカガラス粉全量に対して、粒子径が1000μmより大きい合成シリカガラス粉の割合が3重量%以下である、(1)に記載の合成シリカガラス粉。
(3)合成シリカガラス粉体Aの粒子径が45μmより大きい、(1)又は(2)に記載の合成シリカガラス粉。
(4)合成シリカガラス粉の全量を100重量%としたとき、合成シリカガラス粉Aの含有量が35重量%以上である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の合成シリカガラス粉。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の合成ガラスシリカ粉を原料として用いた、シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ。
本発明によれば、石英ルツボに容易に気泡を発生させることが可能な合成シリカガラス粉を提供することができる。また、気泡を有するシリコン単結晶引き上げ用石英ルツボを提供することができる。
合成シリカガラス粉を製造するための1つのフローを説明する図である。 合成シリカガラス粉を製造するための1つのフローを説明する図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
[1.合成シリカガラス粉]
合成シリカガラス粉とは非晶質の二酸化ケイ素粒子である。本発明の合成シリカガラス粉は、ある一定の値以下の粒子径の合成シリカガラス粉の群である合成シリカガラス粉Aを所定量含む。これにより、石英ルツボを作製する際にルツボ内のシリカガラス層に気泡を発生させることができる。ルツボ内のシリカガラス層に気泡を発生させることで、シリコン融液の湯面振動防止することができる。また、外部輻射熱を分散させてシリコン融液の温度ムラをなくすことができる。
ここで、気泡が発生する原理は次のように考えられる。粒子径がある一定の値よりも小さくなるとかさ密度が低下し、粒子間の空隙が増加する。この現象は粒子の充填性が、粒子の自重や外力と粒子間や粒子容器壁面間の付着力との関係によって決まることに起因する。粒子の自重が支配する粒子径の範囲では嵩密度の減少は起こらない。しかし、粒子径が小さくなり付着力が支配する領域では粒子径の減少とともに充填性が悪くなりかさ密度が減少する。よって、粒子径がある一定の値以下の合成シリカガラス粉の群を含む合成シリカガラス粉は、粒子間に空隙が生じやすいため、溶融時にその空隙が気泡となって現れる。また、粒子径がある一定の値以下の合成シリカガラス粉を使用しているため、空隙の大きさも小さく、生じる気泡の大きさも小さくなる。
本発明においては、気泡の大きさは直径0.5mm以下であるものが適切である。気泡の大きさが直径0.5mmを超えると、シリコン融液の湯面振動防止効果及び外部輻射熱分散効果が低減する虞がある。
従って、本発明は粒子径がある一定の値以下の合成シリカガラス粉の群を所定量含む合成シリカガラス粉を用いることにより、粒子間に生じる空隙を制御して、適切な大きさの気泡を発生させるものである。
以下、本発明の合成シリカガラス粉について詳しく説明する。
まず、合成シリカガラス粉に含まれる合成シリカガラス粉Aについて説明する。
合成シリカガラス粉Aの粒子径は106μm以下である。これにより、かさ密度を低下させることができ、粒子間に空隙を生じさせ易くなるため、気泡が生じやすい。合成シリカガラス粉Aの粒子径の下限は特に限定されないが、45μmより大きいことが好ましい。
ここで「粒子径」とは、JIS標準ふるい表(JIS Z8801−J1982)における公称目開きによって特定されるものである。よって、合成シリカガラス粉において、例えば「粒子径が106μm以下」とは、該JIS標準ふるい表における公称目開きが106μmのふるい上で10分間ふるった際に篩を通過する合成シリカガラス粉の群であり、「45μmより大きい」とは、該JIS標準ふるい表における公称目開きが45μmのふるい上で10分間ふるった際に篩を通過しない合成シリカガラス粉の群を意味する。その他の粒子径についても同様である。
次に、合成シリカガラス粉Aの含有量について説明する。
合成シリカガラス粉全量を100重量%としたとき、合成シリカガラス粉Aの含有量の下限は20重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、35質量%以上であることが特に好ましい。これにより、かさ密度を大きくさせることができ、粒子間に空隙を生じさせ易くなるため、気泡が生じやすい。なお、合成シリカガラス粉Aの含有量の上限は特に限定されない。
次に、合成シリカガラス粉全体(単に「合成シリカガラス粉」ということがある。)について説明する。
(1)粒子径
所定の粒子径、配合量を満たす上記合成シリカガラス粉Aが含まれていれば、合成シリカガラス粉の各粒子径は特に限定されないが、合成シリカガラス粉全量を100重量%としたときの1000μmより大きい粒子の割合は3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは、0重量%である。一方、合成シリカガラス粉全体を100重量%としたときの粒子径45μm以下の合成シリカガラス粉の割合は3重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることがより好ましく、1重量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは0重量%である。上述の通り、上記範囲内であれば、取扱い性に優れ、また、太陽電池製造用ルツボ(シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ)の製造時に溶融しやすくなる傾向がある。
(2)かさ密度
合成シリカガラス粉のかさ密度は、好ましくは0.8g/cm以上、より好ましくは1.0g/cm以上であり、好ましくは1.5g/cm以下、より好ましくは1.4g/cm以下の範囲である。かさ密度の測定は、例えばJIS−K−6720による測定法で行われる。
(3)比表面積
合成シリカガラス粉の比表面積は、好ましくは0.003m/g以上、より好ましくは、0.01m/g以上、好ましくは0.5m/g以下、より好ましくは0.1m/g以下の範囲である。比表面積の測定は、例えば窒素吸着法のようなガス吸着法で行われる。
合成シリカガラス粉の比表面積が、0.5m/gを超えて大きい場合、原料のドライゲル由来の多孔質ゲルの性質が残っていて、ルツボ化の際に粗大な気泡を生成する原因となり、一方0.003m/g未満になると、通常、合成シリカガラス粉の粒径が1000μmを超えるので好ましくない。比表面積を上記範囲とすることにより、気泡生成を制御したルツボの製造が可能となる。
(4)不純物含有量
合成シリカガラス粉の不純物含有量としては、金属元素の総含有量が1重量ppm以下であることが好ましい。不純物含有量の測定は、例えばICP−MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)により行われる。
合成シリカガラス粉の不純物含有量が上記範囲の上限値以下の場合では、合成シリカガラス粉を原料として用いてシリコン単結晶引き上げ用石英ルツボを作成した場合に、シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボからシリコン融液及びシリコン単結晶への金属元素の溶出を抑えて汚染を防ぐことができる。
なお、上記不純物含有量は一般に少ないほど好ましいが、その下限値は通常10重量ppb程度である。10重量ppb未満まで不純物を減らすことはあまり現実的ではなく、また1重量ppbレベルの分析は非常に困難である。
(5)シラノール基の含有量
さらに、合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量は、シラノール基の濃度として好ましくは5重量ppm以上、より好ましくは20重量ppm以上であり、好ましくは200重量ppm以下、より好ましくは100重量ppm以下である。シラノール基の濃度は、例えば赤外線分光光度法(赤外分光法)で測定可能であり、粒子重量に対するヒドロキシル基(OH基)の重量割合として示される。
合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量を上記範囲の下限以上とすることによりシラノール基の脱水縮合で生成する水(水蒸気)に基づく気泡の発生を適切な量に制御しつつ、合成シリカガラス粉製造時の焼成時間も過度に長くならないようにできる。合成シリカガラス粉の粒子中のシラノール基(Si−OH)の含有量を上記範囲の上限以下とすることにより、気泡の過度な生成を防止し、併せて高温時におけるルツボの変形などの耐久性悪化を予防することができる。
[2.合成シリカガラス粉の製造方法]
本発明の合成シリカガラス粉は、好ましくはアルコキシシランを原料とするゾルゲル法で製造される。ゾルゲル法は、例えば文献(作花済夫「ゾルゲル法の科学」)で公知であるが、具体的な製造例として、特開平5−246708号公報や特開平8−91822号公報に記載された方法が挙げられる。
基本的には、以下の反応式(a)による、反応(A)を利用して、アルコキシシランの加水分解反応を行う。
原料のアルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランが好ましい。また原料は予め蒸留精製したものを用いることが好ましく、これにより高い純度のSiOを製造することができる。
(RO)Si + 2HO → SiO + 4ROH (a)
上記反応式(a)中、Rはアルキル基を表し、その炭素数としては1〜4が好ましく、特に反応(A)の進行が速く、かつ生じたシリカ中へのアルコキシ基の残留が少ないメチル基が好ましい。
本発明の合成シリカガラス粉の製造フロー図の一例を図1、2に示す。本発明の合成シリカガラス粉は、図1に示すように、アルコキシシランの加水分解を行う加水分解工程(ステップ1)、ウェットゲルの粉砕を行う粉砕工程(ステップ2)、粉砕ウェットゲルの乾燥を行う乾燥工程(ステップ3)、ドライゲルの焼成を行う焼成工程(ステップ4)を経て製造される。
または、本発明の合成シリカガラス粉は、図2に示すように、アルコキシシランの加水分解を行う加水分解工程(ステップ11)、ウェットゲルの粉砕を行う粉砕工程(ステップ12)、粉砕後ウェットゲルの乾燥を行う乾燥工程(ステップ13)、ドライゲルの焼成を行う焼成工程(ステップ14)の後に、さらに焼成後の合成シリカガラス粉に分級を行う分級工程(ステップ15)を行ってもよい。
以下、各処理について詳細に説明する。なお、以下の説明では、アルコキシシランとして、テトラアルコキシシランを用いた場合について説明する。
<加水分解反応(反応(A))>
加水分解反応は、原料であるテトラアルコキシシランに上述の反応(A)による加水分解反応を行うものであって、公知の方法に従ってテトラアルコキシシランと水を反応させることにより行なうことができる。ここで、テトラアルコキシランの加水分解物を「ウェットゲル」という。
この際、必要に応じて副生するアルコールと相溶性のあるアルコール類やエーテル類、ケトン類等の有機溶媒を混合してもよい。例えばアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等が、エーテル類としてはジエチルエーテル等が、ケトン類としてはアセトン等が挙げられる。
但し、加水分解反応の進行につれてケイ素と結合していたアルコキシ基が、アルコールとして遊離するためゲル化する(ウェットゲルが生成する)前に反応液が均一な状態となる場合、即ち、加水分解速度が大きいアルコキシ基(例えばメトキシ基)を含むような原料の場合、アルコール等の添加を行わなくても実際上支障なく製造が可能である。
この反応では触媒は必須ではないが、場合により塩酸、酢酸、フッ酸、硫酸のような酸や、アンモニア水のようなアルカリ等を触媒として使用してもよい。加水分解に使用する水は、目的物である合成シリカガラス粉をより高純度に得るためには超純水等を用いるのが好ましい。水の使用量は、加水分解反応が進行する量であれば特に制限されないが、実際上は理論量(テトラアルコキシシランの2倍モル)よりも過剰に加えることが一般的である。
また、ゲル化に要する時間および粗粉砕に要する時間等を適正な範囲とするために、テトラアルコキシラン:水のモル比を1:2〜1:10、好ましくは1:3〜1:8、より好ましくは1:4〜1:7の範囲とするのが実用的である。極端に水が多いとゲル化に長時間を要するばかりでなく、ゲル化した後もウェットゲルが粉砕工程に適する硬さになるまでに時間が掛かったり、場合によっては過剰の水を蒸発させなければならないことがあり、更には後述する乾燥工程に時間を要する等の不都合が生じることがある。また水が少なすぎると加水分解が十分進まず、従ってゲル化も十分行われないことになる。加水分解反応は、テトラアルコキシランと水との均一溶液が形成されたら、ほぼ完全に進行しているので、その後は溶液がゲル化し一体化するまで静置すればよい。
加水分解反応及びゲル化の条件は使用する原料によって異なるが、通常20〜100℃の温度、常圧〜0.2MPaの圧力の条件で20分〜10時間程度である。加水分解物のゲル化は、常温でも数時間で進行し、かつ加熱により促進できるので、温度条件を調節することによってゲル化時間を調整することができる。
なお、粉砕処理において取り扱いやすくするために、加水分解反応後に、ウェットゲルを数cmのサイズまで粗粉砕する、粗粉砕処理を行ってもよい。粗粉砕の方法は問わないが、例えば加水分解反応後の加水分解容器内のウェットゲルを減圧下におくことでゲルにクラックを入れ、さらにウェットゲルが入っている加水分解容器を回転又は揺動することにより、ゲルを粉砕することで行うことができる。
<粉砕>
上記のテトラアルコキシランの加水分解で得られたウェットゲルは、副生アルコールや未反応の水を含んでいる。最終製品の粒度を調整するためには、この段階でウェットゲルを粉砕することが好ましい。ここで、ウェットゲルを粉砕したものを「粉砕ウェットゲル」という。
粉砕に際しては、ウェットゲルは脆いため微粉が発生しやすいので、本発明の好ましい粒子径の範囲である1〜1000μmの粒子径の合成シリカガラス粉を収率良く得るためには、粉砕機内の滞留時間を短くし、かつワンパスの連続式粉砕機を用いることが好ましい。滞留時間としては、1分以内が好ましく、また粉砕機の種類としては、例えば、ハンマー、ブレード、ピンなどを高速回転させ、衝撃並びに剪断によって粉砕するタイプの高速回転ミル(ハンマーミル、パルベライザー等)が好ましく用いられる。中でも粉砕機内部に粉砕物の分級のためのスクリーン(多孔板)を内蔵したスクリーンミルが好適である。多孔板の孔直径は、0.5〜5mm、さらに好ましくは0.8〜3mmである。
また、粉砕操作の際の金属成分の混入を低減・予防するために、例えば合成樹脂製等の網状物にウェットゲルを押し付け、網の目を通過させるような形式の網式粉砕機を用いることができる。この形式の粉砕機を用いる場合も、網目サイズや滞留時間を上記と同様に選定すればよい。
<乾燥>
次に、粉砕後のウェットゲルを乾燥して、ゲル中に含まれるアルコールと水を除去する。粉砕ウェットゲルの乾燥は通常バッチ方式で行われる。ここで、ウェットゲルを乾燥させたものを、「ドライゲル」という。
乾燥後のゲル(ドライゲル)は必要に応じて、純水等による洗浄を行うことにより、加水分解に用いた溶媒及び触媒、並びに加水分解により生じたアルコキシ基に由来する有機性の成分を取り除くことができる。
なお、焼成処理の際にゲルを取り扱いやすくするために、また焼成処理後の分級による最終的な粒度分布範囲の調整を好適に行うことを目的として、必要に応じて乾燥処理後にドライゲルを予備的に分級してもよい。
<焼成>
乾燥後のドライゲルは、一般に多孔質であるので、ルツボのようなガラス層形成の原料として不適当である。そのため、得られたドライゲルを加熱焼成し、緻密化させて無孔性の合成シリカガラス粉とするのが好ましい。
焼成の方法は特に限定されないが、合成シリカガラス粉としての純度を高く保つためには、石英製のルツボに粉体を充填し、必要に応じて空気や不活性ガス雰囲気下で加熱することが好ましい。焼成温度は、通常1000〜1300℃で、焼成時間は一般に10〜100時間程度である。
<分級>
上述の乾燥・焼成工程を経て得られた合成シリカガラス粉は、合成シリカガラス粉中に粒子径が106μm以下である合成シリカガラス粉Aを20重量%以上含むものであれば、そのまま使用できるが、そうでない場合分級を行う必要がある。分級は、合成シリカガラス粉の所望の粒子径の上限と下限に対応する孔径を有するスクリーンを用いて行うことができる。
本発明の合成シリカガラス粉は、この分級する孔径の調整もしくは、各孔径で分級されたシリカガラス粉の混合比を調整することにより得られる。具体的には振動篩い機にて、孔径106μmの網を含む複数の孔径の網を使用し、網を通過したシリカガラス粉を回収する。その後、回収したそれぞれのシリカガラス粉を所定量ずつ混合することにより得られる。なお、好ましくは合成シリカガラス粉全体の粒子径が1000μm以下となるように分級する。
[3.シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ]
本発明の合成シリカガラス粉は、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボに適用可能である。本発明の合成シリカガラス粉を用いて、ルツボの製造の際にシリカガラス粉を溶融させることで、シリカガラス層に気泡を有するシリコン単結晶引上げ用石英ルツボを得ることができる。
シリコン単結晶引上げ用石英ルツボとは、例えばチョクラルスキー法によるシリコンの単結晶引き上げに用いられるものであって、多結晶シリコンを入れて加熱溶融させた溶融シリコンの容器として使用されるものである。
本発明の合成シリカガラス粉は、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボの全体(全部分)に使用してもよいが、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボの特定の部位において気泡を発生させるために、従来の原料シリカガラス粉と共に用いて、本発明の合成シリカガラス粉を特定の部位に充填してからシリカガラス粉を溶融させるようにしてもよい。本発明の合成シリカガラス粉がシリコン単結晶引上げ用石英ルツボにおいて使用される部位は特に限定されるものではなく、溶融シリコンと接するルツボの内面の内層に用いてもよく、ヒーターにより加熱されるルツボの外面の外層に用いてもよく、内層と外層の間の中間層に用いてもよく、また各層における特定の位置に用いてもよい。
シリコン単結晶引上げ用石英ルツボ製造の際には、本発明の合成シリカガラス粉を部分的に用いることにより、所望の部位に気泡を形成させることができる。これにより、シリコン単結晶引上げ用石英ルツボに気泡の存在部位に応じた機能を付与することができ、より優れた品質のシリコン単結晶を製造可能な石英ルツボを製造することができる。
一例として、モールド内面に従来の原料シリカガラス粉を充填する際に、ルツボ内表面のシリコン融液の湯面と接する部位に対応する位置に本発明の合成シリカガラス粉を充填して、シリカガラス粉を溶融させることができる。これにより、ルツボ内層のシリコン融液の湯面となる位置の内表面に気泡を含有することによって、従来の合成シリカガラス粉から製造されたルツボに比べて、シリコン融液の湯面振動の抑制が期待できる。
又は、従来の原料シリカガラス粉を含む複数のシリカガラス粉を積層して充填する際に、ルツボの中間層に本発明の合成シリカガラス粉を積層して、シリカガラス粉を溶融させることができる。これにより、ルツボ壁面内部の中間層に気泡を有することによって、従来の内面が透明ガラス層で外面が気泡含有層である二層構造のルツボに比べて、ルツボ加熱時の外部輻射熱を分散させ、シリコン融液の温度ムラの低減が期待できる。
なお、上述の通り、本発明に係る合成石英粉を原料として用いて、太陽電池製造用ルツボ(シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ)の製造が可能であるが、本発明に係る合成シリカガラス粉の用途はこれに限定されない。
以下、本発明について実施例を用いて説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。
上記した方法に倣って、実施例1〜3、比較例1、2に係る合成シリカガラス粉を製造した。なお、実施例1〜3、比較例1、2に係る合成シリカガラス粉は予め分級により、1000μmより大きい粒子径の合成シリカガラス粉が取り除かれている。
(粒子径の測定)
製造した合成シリカガラス粉の粒子径の測定は、425μm、300μm、212m、150μm、106μm、75μm、45μmの目開きの網を有する多段式篩振とう器にて10分間振とうし、各網の重量と網と粉の合計重量の差から粉の各網上の重量を算出した。表1に網の目開きから算出した合成シリカガラス粉の粒子径と含有量(重量%)との関係を示した(含有量は小数点第二位で四捨五入している。)。
(溶融ガラス中の気泡数の測定方法)
製造した合成シリカガラス粉を溶融してガラス層を形成したときの気泡の数を調べた。方法は次のとおりである。
まず、合成シリカ粉45gを容量50ccの黒鉛ルツボに秤取し、タッピングにより表面を平坦にした。そして、この黒鉛ルツボを真空加熱炉内で1780℃、1時間加熱した後、冷却し、円柱状のシリカ溶融ガラスインゴットを得た。得られたインゴット中の気泡をルーペを用いて観察し、無気泡状態で透明なガラス層中に形成された直径0.5mm以下の気泡の数をカウントした。なお、直径0.5mmを超える気泡は、実施例1〜3、比較例1、2には生じていないことを確認している。
Figure 2019172515

実施例1〜3の合成シリカガラスを用いると、気泡が発生した。また、気泡の大きさも適切であった。一方で、比較例1、2の合成シリカガラスでは、気泡は発生しなかった。

Claims (5)

  1. 合成シリカガラス粉Aを含む合成ガラスシリカ粉であって、
    前記合成シリカガラス粉Aの粒子径が106μm以下であり、
    前記合成シリカガラス粉の全量を100重量%としたとき、前記合成シリカガラス粉Aの含有量が20重量%以上である、
    合成シリカガラス粉。
  2. 前記合成シリカガラス粉全量に対して、粒子径が1000μmより大きい合成シリカガラス粉の割合が3重量%以下である、請求項1に記載の合成シリカガラス粉。
  3. 前記合成シリカガラス粉体Aの粒子径が45μmより大きい、請求項1又は2に記載の合成シリカガラス粉。
  4. 前記合成シリカガラス粉の全量を100重量%としたとき、前記合成シリカガラス粉Aの含有量が35重量%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成シリカガラス粉。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成ガラスシリカ粉を原料として用いた、シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボ。
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WO2009054529A1 (ja) * 2007-10-25 2009-04-30 Japan Super Quartz Corporation 石英ガラスルツボとその製造方法およびその用途
WO2014192163A1 (ja) * 2013-05-31 2014-12-04 株式会社Sumco シリコン単結晶引き上げ用シリカガラスルツボ及びその製造方法

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