JP5106340B2 - シリカ容器及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで従来、比較的安価な粉体原料等を用いたシリカガラスの製造方法が考えられてきた。
しかし、これら従来のゾル−ゲル法では、作製されたシリカガラスの寸法精度や耐久性に問題があるばかりではなく、コストの面でもそれほど安価ではなかった。
しかし、これら従来のスリップキャスト法では、乾燥工程や焼結工程での成形体の収縮が大きく、寸法精度の高い肉厚のシリカガラス成形体を作ることは出来なかった。
(1)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さく、球状である第二の原料粉、及び、結晶質シリカからなり、前記第一の原料粉及び前記第二の原料粉よりもシリカ純度が高い第三の原料粉を準備する工程と、
(2)前記第二の原料粉を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して混合スラリーとし、該混合スラリーを乾燥させることにより、バインダーコーティングされた顆粒体を作製する工程と、
(3)前記第一の原料粉と前記第二の原料粉から作製した顆粒体とを混合して混合粉体を作製する工程と、
(4)前記混合粉体を、回転対称性を有する外型枠の内壁に導入し、前記外型枠を回転させながら、前記混合粉体を前記外型枠に応じた所定形状とする工程と、
(5)前記所定形状とした混合粉体を、前記外型枠と内型枠とで挟み、該混合粉体を加圧することにより基体を成形する加圧成形工程と、
(6)前記基体を酸素含有雰囲気下で焼成することにより該基体を不透明シリカ層からなるものとし、該焼成した基体を少なくとも徐冷点から歪点までの温度域を徐冷して歪除去する工程と、
(7)前記基体の内側から前記第三の原料粉を散布して供給しながら前記基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記基体の内表面上に、透明シリカガラス層を形成する工程と
を有し、前記(5)の工程終了後に前記(6)の工程及び前記(7)の工程を順不同で行うことを特徴とするシリカ容器の製造方法を提供する(請求項1)。
このように、第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすれば、より安価なシリカ原料から製造し、低コストのシリカ容器とすることができる。
またこのような、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したシリカ粉を原料としても、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、容器に収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法の場合、原料とする第一の原料粉のシリカ純度を99.9〜99.999wt.%と比較的低純度のものとしても、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。
このように、第一の原料粉の粒径を0.05〜5mmとしたり、第二の原料粉の粒径を0.1〜10μmとしたりすれば、低コストで、高寸法精度、高耐久性等の長所を有するシリカ容器の製造をより確実に行うことができる。
このように、混合粉体の加圧成形を、加圧圧力0.1〜1MPa、温度50〜300℃の範囲で行えば、本発明に係るシリカ容器の製造をより確実に行うことができる。
このように、混合粉体を作製する際の第一の原料粉と第二の原料粉との混合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満であるようにすれば、シリカ容器の製造コストを十分に低減しながらも、寸法精度や耐久性を十分に確保することができる。
このように、第一の原料粉と、第二の原料粉から作製した顆粒体との混合粉体を、アルミニウム元素を含有するものとすれば、不純物金属元素の容器内表面への拡散を防止する効果を付与することができる。
このように、透明シリカガラス層を形成する工程の際の熱処理雰囲気に少なくとも水蒸気を含有させ、透明シリカガラス層にOH基を50〜1000wt.ppmの濃度で含有させることによっても、不純物金属元素の容器内表面への拡散を防止する効果を付与することができる。
このように、第三の原料粉にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有させる工程を有すれば、1300〜1600℃のような高温下でシリカ容器を使用する際に、透明シリカガラス層が再結晶化してクリストバライト層を形成して、収容する内容物への不純物汚染をより低減させることができるとともに、シリカガラス表面のエッチングや溶解を抑制することができる。
このように、透明シリカガラス層の厚さを0.1mm以上として形成すれば、収容する内容物への汚染を十分に防止できる。また、透明シリカガラス層の厚さを5mm以下として形成すれば、製造に必要な投入エネルギーが大きくなりすぎることもなく、十分に低コストにシリカ容器を製造することができる。
このような有機バインダーを用いれば、低コストながらも高寸法精度、高耐久性を有する基体を構成することができる。その結果、シリカ容器の製造をより確実に低コストながらも高寸法精度、高耐久性を持たせて行うことができる。
このように、本発明のシリカ容器の製造方法によって製造されたシリカ容器は、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして好適に使用することができる。その結果、シリコン単結晶製造のための総投入エネルギーや総コストを低減することができる。
このように、第三の原料粉を、上記のような不純物量のものとすれば、シリカ容器から収容した内容物への不純物拡散が効果的に防止されるものであり、特には太陽電池用シリコン単結晶引き上げルツボとして好適に使用することができる。
このように、上記のいずれかのシリカ容器の製造方法によって製造されたシリカ容器であれば、少ないエネルギー消費量で、高生産性かつ低コストで製造されたシリカ容器であり、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有し、高寸法精度、高耐久性を有するシリカ容器とすることができる。
このように、不透明シリカ層からなる基体のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計濃度が10〜100wt.ppmとすれば、シリカ容器の耐熱変形性をさらに向上させることができる。
また、本発明に従うシリカ容器であれば、低コスト、低エネルギー消費量で得られるシリカ容器でありながらも、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止できる能力を有するのみならず、高温で長時間使用しても熱変形しにくく、内容物による容器内表面のエッチングや溶解の少ない、高寸法精度、高耐久性を有するシリカ容器とすることができる。
図1に、本発明に係るシリカ容器の製造方法の一例を示す。
まず、図1の(1)に示すように、シリカ容器を製造するにあたって原料となるシリカ粉を準備する。なお、それぞれの原料粉は、少なくとも該原料粉を使用する工程の前に準備すれば良い。
ここで準備する原料粉は以下の通りである。
(a)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉11、
(b)非晶質シリカからなり、平均粒径が第一の原料粉の平均粒径よりも小さく、球状である第二の原料粉12、
(c)結晶質シリカからなり、第一の原料粉及び第二の原料粉よりもシリカ純度が高い第三の原料粉13。
なお、本明細書中では、シリカ純度(SiO2純度)とは材料中のシリカ(SiO2)分の割合を意味する。ただし、金属元素は不純物とするが、OH基やO2ガスは不純物としては考えない。
以下では、第一、第二、第三のそれぞれの原料粉の準備について一つずつ説明する。
第一の原料粉11は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなる基体の骨材となるものであり、基体の主な構成材料となるものである。
この第一の原料粉は例えば以下のようにしてシリカ塊を粉砕、整粒することにより作製することができるが、これに限定されない。
次いで、この天然シリカ粉を傾斜角度を有するシリカガラス製チューブから成るロータリーキルンの中に投入し、キルン内部を塩化水素(HCl)又は、塩素(Cl2)ガス含有雰囲気とし、800〜1100℃にて1〜10時間程度加熱することにより高純度化処理を行う。ただし高純度を必要としない製品用途では、この高純度化処理を行わずに次処理へ進んでもよい。
第一の原料粉の粒径は、上記のように、0.05〜5mmとすることが好ましく、0.1〜1mmとすることがより好ましい。
第一の原料粉のシリカ純度は、99.9wt.%以上とすることが好ましく、99.99wt.%以上とすることがさらに好ましい。また、本発明のシリカ容器の製造方法であれば、第一の原料粉のシリカ純度は99.999%以下と比較的低純度のものとしても、製造されるシリカ容器は、収容する内容物への不純物汚染を十分に防止することができる。そのため、従来よりも低コストでシリカ容器を製造することができることになる。
第二の原料粉12は、本発明に係るシリカ容器のうち、不透明シリカ層からなる基体を第一の原料粉11とともに構成する材料となるものである。この第二の原料粉12に必要な条件は非晶質シリカからなり球状であること(球状非晶質シリカ粉)と、平均粒径が第一の原料粉の平均粒径よりも小さいことである。
本発明のシリカ容器の製造方法において、基体を構成するために好ましい第二の原料粉12の粒径は0.1〜10μm、さらに好ましくは0.2〜5μmである。第二の原料粉12としての球状非晶質シリカ粉の作製方法は特に限定されないが、大きく分けて湿式法のゾル−ゲル法(アルコキシド法)と乾式法の溶融法(溶射法、燃焼法)があり、各種の公知の方法(例えば、「高純度シリカの応用技術」(株式会社シーエムシー、1991年3月1日発行、PP.306−310)に概要が記載されている)によって作製することができる。
このアルミニウムの含有方法は特に限定されず、アルミニウムを含む溶液に原料粉を浸漬して含浸させ、次いで一定速度で引き上げて乾燥するなどの方法を用いることができる。
また、このアルミニウムのドープは、後述する、第一の原料粉と第二の原料粉(の顆粒体)とを混合粉体とした後に行ってもよい。ドープ濃度は30〜3000wt.ppmが好ましい。
第三の原料粉13として、透明シリカガラス層用の高純度のシリカ粉を準備する。
第三の原料粉の材質としては、高純度化処理された天然石英粉、天然水晶粉、又は合成クリストバライト粉、合成シリカガラス粉が考えられる。透明シリカガラス層の気泡量を少なくする目的であれば結晶質シリカ粉が好ましい。また、より高純度な透明シリカガラス層とする目的であれば、合成シリカガラス粉が好ましい。粒径は10〜500μm、好ましくは50〜200μmである。
第三の原料粉としては、純度はシリカ(SiO2)成分が99.9999wt.%以上であることが好ましい。また、好ましくはアルカリ金属元素リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)の各々が10wt.ppb以下、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)の各々が1wt.ppb以下である。
次に、図1の(2)に示すように、上記した工程1において準備した第二の原料粉12をバインダーコーティングされた顆粒体とする。第二の原料粉をバインダーコーティングされた顆粒体とするには、例えば以下のような手順により行うことができる。
また、有機バインダーはその他ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル系バインダー、グリセリン等を適宜複数種類混合してもよい。
次に、図1の(3)に示すように、第一の原料粉11と、第二の原料粉12から作製した顆粒体22とを均一に混合して混合粉体31を作製する。
第一の原料粉と第二の原料粉の顆粒体の混合手法としては、比較的量が少ない場合には、V型ミキサー等を用いることもできるが、これに限定されない。
すなわち、製造コストを低減させる目的からは、なるべく第一の原料粉を多い割合とすることが好ましいからである。混合粉体中の第二の原料粉の混合比率を5wt.%以上とすれば、成形、焼成後のシリカ容器基体の空隙が多くなりすぎることもなく、かさ密度を十分に高くすることができる。その結果、シリカ容器の寸法精度や耐熱性を確保できる。
また、第二の原料粉の混合比率が高いほど、成形、焼成後のシリカ容器基体の空隙が少なくなり、かさ密度がシリカガラスの値の2.2g/cm3に近づき、シリカ容器の寸法精度や耐熱性をより確保できるし、混合比率が50wt.%未満であれば、製造コストを十分に低く抑えることができる。
次に、図1の(4)に示すように、混合粉体31を成形するための回転対称性を有する外型枠に導入する。
この工程の様子を模式的に図3(a)に示す。
まず、図3(a)に示すように、混合粉体31を回転する外型枠101の内壁部へ徐々に投入し、回転による遠心力を利用しつつ、混合粉体31を外型枠101の内壁の形状に応じた所定の形状とする。またこのとき、内側成形用枠102等を利用して混合粉体31の内側形状を整えてもよい。
また、この混合粉体31の外型枠101への供給方法は特に限定されないが、例えば、攪拌用スクリュー104と計量フィーダ105を備えるホッパー103を用いることができる。この場合、ホッパー103に充填された混合粉体31を、攪拌用スクリュー104で攪拌し、計量フィーダ105で供給量を調節しながら供給する。
次に、図1の(5)に示すように、所定形状とした混合粉体31を、外型枠と内型枠とで挟み、混合粉体31を加圧することにより基体を成形する。
この工程の様子を模式的に図3(b)、(c)に示す。
まず、図3(b)に示すように、上記工程4で所定形状とした混合粉体31に、内型枠となるプランジャ111を挿入し、外型枠101の回転を停止する。その後、プランジャ111を加圧し、0.1〜1MPaの所定の圧力に調整しつつ混合粉体31の温度が50〜300℃の所定の温度に達するまで昇温し、ある程度圧密して、バインダーが溶着するまで保持する。
次いで、図3(c)に示すように、プランジャ111を引き抜き室温まで放冷し、混合粉体31を加圧成形した基体51を得る。
この工程では、まず、基体51を酸素含有雰囲気下で焼成することにより基体51を不透明シリカ層からなるものとする。
図5を参照しながら説明する。
基体51を外型枠101から取り出し、高純度アルミナボードを保温材とし、二珪化モリブデンをヒーター306とする電気抵抗加熱炉301内に設置する。なお、電気抵抗加熱炉301は、その他、雰囲気ガスを供給するガス供給口302、雰囲気ガスを排出するガス排出口303、ガス供給口302、ガス排出口303を通過するガスをそれぞれ制御する開閉バルブ304、305等を具備している。
なお、後述の工程7(透明シリカガラス層形成)を工程6(基体焼成、歪除去)よりも先に行う場合には、図5の基体51には既に透明シリカガラス層56が形成されていることになる。
例えば、焼成完了後、1150℃程度の温度(シリカガラスの除冷点付近)まで降温し、次いで950℃程度(シリカガラスの歪点以下)まで5℃/時間〜20℃/時間で徐々に降温を行い、シリカ容器基体51の残留歪を除去し、室温まで放冷させる。
この工程では、基体51の内側から第三の原料粉13を散布して供給しながら基体13の内側に配置した加熱源により溶融することで、基体51の内表面上に、透明シリカガラス層を形成する。基本的な形成方法は、例えば特公平4−22861及び特公平7−29871に示される内容に従う。図4を参照しながら説明する。
シリカ基体の内表面上への透明シリカガラス層を形成する装置は回転軸対称性を有する回転可能な外型枠201、回転モーター(図示せず)、及び透明シリカガラス層56形成用の第三の原料粉13が入ったホッパー203、ホッパー203内で第三の原料粉13を攪拌する攪拌用スクリュー204、計量フィーダ205、及び放電溶融(アーク溶融)の熱源となるカーボン電極212、電線、高圧電源ユニット211から成る。
なお、この工程で用いる外型枠201は、工程5の外型枠101と同一でも構わない。
なお、透明シリカガラス層56の厚さは0.1〜5mmとして形成することが好ましい。透明シリカガラス層の厚さは0.1mm以上であれば、収容する内容物への汚染を十分に防止できる。また、透明シリカガラス層の厚さが5mm以下であれば、製造に必要な投入エネルギーが大きくなりすぎることもなく、十分に低コストにシリカ容器を製造することができる。
この場合、透明シリカガラス層56が高温で焼成されることになるので、工程6を工程7よりも先に行うことが好ましいことが多い。
例えば、フッ化水素酸水溶液(HF)1〜10%程度にて、5〜30分間の表面エッチングを行い、次いで純水で洗浄し、クリーンエア中で乾燥させてシリカ容器を得る。
図6(a)は、工程5で基体51を形成した直後である。右側の拡大図に示すように、第一の原料粉11の骨材としての構造、第二の原料粉12の球状非晶質シリカ粉の構造がそのまま残っている。また、原料粉一つ一つの間には微小空隙が存在している。
図6(b)は、工程6で基体51を焼成、歪除去した直後である。右側の拡大図に示すように、第一の原料粉11を元にした粒状の構造が残留しており、ところどころ気泡が見られる。このように気泡が存在するため、基体51は全体としては不透明であり、部分的には半透明な部分を有する。
(実施例1)
図1に示した本発明のシリカ容器の製造方法に従い、シリカ容器を以下のように製造した。
天然珪石を100kg準備し、大気雰囲気下で、1000℃、10時間の条件で加熱後、純水の入った水槽へ投入し、急冷却した。これを乾燥後、クラッシャーを用いて粉砕し、粒径0.1〜1mm、シリカ(SiO2)純度99.999wt.%、総重量80kgのシリカ粉(天然珪石粉)とした。
溶融法によって球状非晶質シリカ粉(第二の原料粉)を合成した。この球状非晶質シリカ粉は、粒径0.3〜2μm、平均粒径0.6μm、平均比表面積5m2/g、重量20kgであった。
第二の原料粉20kgに対して、パラフィン系バインダー(融点55℃)200g、ステアリン酸系バインダー(融点100℃)200g、純水5kgを混合し、混合スラリーを作製した。この混合スラリーを、スプレードライヤーにより乾燥させ、バインダーコーティングされた顆粒体22を作製した。このバインダーコーティングされた球状非晶質シリカガラスの顆粒体の、顆粒径は10〜100μmであり、平均は50μmであった。
混合比は第一の原料粉80wt.%に対して第二の原料粉の顆粒体20wt.%とした(すなわち、重量混合比(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}=20wt%)。
次に、図3(b)、(c)に示すように、外型枠101内部にステンレススチール製内型枠(プランジャ)111を挿入し、約3t加重により混合粉体31に0.1MPa(1kgf/cm2)の圧力で加圧しつつ、プランジャ111を加熱することにより100℃に昇温して1時間保持した。
プランジャ111を引抜き、混合粉体31の成形体を形成し、これを基体51とした。基体51の寸法は外径300mm、高さ300mm、厚さ10mmであった。
二珪化モリブデンヒータ306を具備する、炉内寸法1m×1m×1mの高純度アルミナボードの耐熱材からなる電気抵抗加熱炉301内に基体51を設置した。そして、室温から1000℃まで200℃/時間の昇温速度で約5時間かけて昇温、1350℃まで20℃/時間の昇温速度で昇温した後、1350℃にて3時間保持した。
次いで1350℃から1150℃まで100℃/時間の降温速度で降温、1150℃から900℃まで10℃/時間の降温速度で降温し、除冷を行い、歪除去を行った。
次いで放冷して室温に戻した。
外型枠201に入っている基体51の内部にカーボン電極212を挿入し、透明シリカガラス層形成用原料供給口、蓋213を設定した。その後、外型枠201を回転しながら、第三の原料粉を徐々に投入しつつカーボン電極212で放電加熱(電気アーク加熱)した。
透明シリカガラス層56を厚さ約3mm形成した。
実施例1と同様に、ただし、第三の原料粉13としてバリウムをドープさせたものを準備し、透明シリカガラス層の形成のために用いてシリカ容器71の製造を行った。
具体的には、第三の原料粉13の準備を以下のようにして行った。
まず、実施例1の場合と同様に、粒径50〜300μm、シリカ純度99.9999wt.%以上の高純度処理した天然石英粉を10kg準備した。
また、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)100gをエチルアルコールC2H5OH50wt.%を含む水溶液5Lを入れ、溶解させてバリウム含有溶液を作製した。
その後、円筒型シリカガラス製容器の中に上記高純度処理した天然石英粉を入れ、次いでバリウム含有溶液を入れ、撹拌し、クリーンオーブン内で100℃にて乾燥し、バリウムを含有する天然石英粉を作製し、第三の原料粉13とした。
このようにして準備したバリウムがドープされた第三の原料粉13を用いて以後は実施例1と同様にシリカ容器71の製造を行った。
実施例2と同様に、ただし、以下のように製造条件を変更してシリカ容器71の製造を行った。
すなわち、第一の原料粉11を天然珪石粉(結晶質)とシリカガラス粉の混合粉(平均粒径0.5〜2mm、平均シリカ純度99.999wt.%)とした。また、第二の原料粉12を準備する際に、アルミニウムをドープさせた。また、第一の原料粉と第二の原料粉の混合比を第一の原料粉70wt.%に対して第二の原料粉の顆粒体30wt.%とした。また、基体51の焼成を温度1350℃、1時間で行った。また、第三の原料粉13をバリウムをドープしたものとし、透明シリカガラス層を形成する際に基体内部に水素(H2)ガス10%と水蒸気を含んだ窒素(N2)ガスを一定流量で供給しつつカーボン電極で放電加熱して、OH基とバリウム(Ba)を含有する厚さ3mmの透明シリカガラス層を形成してシリカ容器71の製造を行った。
実施例3と同様に、ただし、第一の原料粉11として粒径2〜4mm、シリカ純度99.98wt.%のシリカガラススクラップ粉を、第三の原料粉13として、高純度処理した天然石英粉の代わりに合成クリストバライト粉を用いてシリカ容器71の製造を行った。また、基体51の焼成を1250℃、1時間とした。
概ね従来法に従ってシリカ容器(シリカルツボ)を作製した。
実施例1とは以下のように異なる。
まず、第一の原料粉に相当するものとしてシリカ純度99.9999wt.%以上の高純度である天然石英粉(粒径50〜300μm)を用いた。また、ルツボ基体(不透明シリカ層)を作製する際に第二の原料粉に相当するものを用いず、上記第一の原料粉に相当する高純度処理した天然石英粉のみを用いた。また、ルツボ基体の焼成を独立して行わず、第三の原料粉から透明シリカガラス層を形成する際の温度、雰囲気条件で内面からのカーボン電極放電加熱により基体を焼結させるものとした。
比較例1と同様に、ただし、原料粉を低純度のシリカガラススクラップ粉(粒径50〜300μm)を用いると共に、不純物拡散防止を目的として第三の原料粉にアルミニウムをドープさせ、シリカ容器を作製した。
各実施例及び比較例において製造したシリカ容器の物性、特性評価を以下のようにして行った。
シリカ容器の基体及び透明シリカガラス層における気泡含有量の測定について、各々任意の位置3箇所から寸法10mm×10mm×厚さ1.2mmサンプルを切り出す。次いで該サンプルについて両面平行鏡面研磨を行い、寸法を10mm×10mm×厚さ1mmとする。これを実体顕微鏡により観察し、視野をスキャンさせつつ気泡の数量をカウントする。該サンプルにおける気泡数量を10倍することにより単位体積(cm3)当たりの気泡数を求めた。この時サンプル中の気泡含有量に従って、観察しやすいようにサンプル厚さを調整した。
透明シリカガラス層と、不透明シリカ層からなる基体の不純物金属元素濃度を以下のように測定した。
不純物金属元素濃度が比較的低い(高純度である)場合は、プラズマ発光分析法(ICP−AES、Inductively Coupled Plasma − Atomic Emission Spectroscopy)又はプラズマ質量分析法(ICP−MS、Inductively Coupled Plasma − Mass Spectroscopy)で行い、不純物金属元素濃度が比較的高い(低純度である)場合は、原子吸光光度法(AAS、Atomic Absorption Spectroscopy)で行った。
水槽と精密重量計を使用して、アルキメデス法により測定した。
シリカ容器の中に純度99.99999wt.%の金属ポリシリコンを投入し、昇温を行いシリコン融液とし、次いでシリコン単結晶の引上げを10回繰り返して行い(マルチ引上げ)、単結晶育成の成功率(%)として評価した。引上げ条件は、CZ装置内を103Paアルゴン(Ar)ガス100%雰囲気で、引上げ速度0.5mm/分、シリコン単結晶寸法、直径100mm、長さ100mmとした。単結晶育成10回繰り返しの成功率の評価分類は以下の通りとした。
80%以上 ◎(特に良好)
60以上〜80%未満 ○(良好)
40以上〜60%未満 △(やや不良)
40%未満 ×(不良)
製造したシリカ容器を高純度アルミナボードの耐熱材とし、二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、24時間加熱処理を行う。次いで、該容器の内表面部分の厚さ30μmをフッ化水素酸(HF)50%水溶液にて溶解エッチング処理を行い、このエッチング溶液のアルカリ金属元素濃度値を分析することにより、シリカ純度の低い容器基体から高純度透明シリカガラス層への不純物金属元素の拡散が多かったか、少なかったかを評価した。
内表面厚さ30μm部分におけるLi、Na、Kの合計濃度値による分類は以下の通りとした。
1wt.ppm未満 ○(良好)
1以上〜10wt.ppm未満 △(やや不良)
10wt.ppm以上 ×(不良)
製造したシリカ容器を、高純度アルミナボードを耐熱材とし二珪化モリブデンをヒーターとする電気炉内に設置し、大気雰囲気、1450℃、6時間加熱処理を行う。次いで該容器内表面部分の白色失透(クリストバライト結晶)部分を目視観察することにより再結晶化効果を評価した。再結晶化効果の評価分類は以下の通りとした。
全内表面積の80%以上が白色失透化 ○(良好)
全内表面積の50%以上〜80%未満が白色失透化 △(やや不良)
全内表面積の50%未満が白色失透化 ×(不良)
光学顕微鏡又は電子顕微鏡で各原料粉の形状観察及び面積測定を行い、形状を真円と仮定し、その面積値から直径を計算した。この手法を統計的に繰り返し行い、粒径の範囲の値とした。
シリコン単結晶10回連続引上げ後の、シリカ容器最上部の容器内側への倒れ込み量を評価した。耐熱変形性の評価分類は以下の通りとした。
内側への壁の倒れ込み量 1cm未満 ○(良好)
内側への壁の倒れ込み量 1〜5cm △(やや不良)
内側への壁の倒れ込み量 5cm以上 ×(不良)
また、透明シリカガラス層へのバリウムドープを行った実施例2、基体へのアルミニウムドープに加え、透明シリカガラス層へのバリウムやOH基のドープを行った実施例3、4は特に耐熱変形性、耐久性、不純物拡散防止効果が高かった。
比較例2のシリカ容器は、低コストで製造できたものの、耐熱変形性、耐久性が低く、また、不純物の拡散防止効果が薄かった。
22…バインダーコーティングされた顆粒体、
31…第一の原料粉と第二の原料粉の顆粒体の混合粉体、
51…基体、
56…透明シリカガラス層、
71…シリカ容器、
101…外型枠、 102…内側成形用枠、
103…ホッパー、 104…攪拌用スクリュー、 105…計量フィーダ、
111…内型枠(プランジャ)、
201…外型枠、
203…ホッパー、 204…攪拌用スクリュー、 205…計量フィーダ、
211…高電圧電源ユニット、 212…カーボン電極、 213…蓋、
301…電気抵抗加熱炉、 302…ガス供給口、 303…ガス排出口、
304、305…開閉バルブ、 306…ヒーター。
Claims (16)
- シリカを主な構成成分とし、回転対称性を有するシリカ容器の製造方法であって、少なくとも、
(1)骨材となるシリカ粒子である第一の原料粉、非晶質シリカからなり、平均粒径が前記第一の原料粉の平均粒径よりも小さく、球状である第二の原料粉、及び、結晶質シリカからなり、前記第一の原料粉及び前記第二の原料粉よりもシリカ純度が高い第三の原料粉を準備する工程と、
(2)前記第二の原料粉を、少なくとも有機質バインダー及び純水と混合して混合スラリーとし、該混合スラリーを乾燥させることにより、バインダーコーティングされた顆粒体を作製する工程と、
(3)前記第一の原料粉と前記第二の原料粉から作製した顆粒体とを混合して混合粉体を作製する工程と、
(4)前記混合粉体を、回転対称性を有する外型枠の内壁に導入し、前記外型枠を回転させながら、前記混合粉体を前記外型枠に応じた所定形状とする工程と、
(5)前記所定形状とした混合粉体を、前記外型枠と内型枠とで挟み、該混合粉体を加圧することにより基体を成形する加圧成形工程と、
(6)前記基体を酸素含有雰囲気下で焼成することにより該基体を不透明シリカ層からなるものとし、該焼成した基体を少なくとも徐冷点から歪点までの温度域を徐冷して歪除去する工程と、
(7)前記基体の内側から前記第三の原料粉を散布して供給しながら前記基体の内側に配置した加熱源により溶融することで、前記基体の内表面上に、透明シリカガラス層を形成する工程と
を有し、前記(5)の工程終了後に前記(6)の工程及び前記(7)の工程を順不同で行うことを特徴とするシリカ容器の製造方法。 - 前記第一の原料粉を、シリカ塊を粉砕、整粒することにより作製したものとすることを特徴とする請求項1に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記第一の原料粉のシリカ純度を99.9〜99.999wt.%とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記第一の原料粉の粒径を0.05〜5mmとすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記第二の原料粉の粒径を0.1〜10μmとすることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記混合粉体の加圧成形を、加圧圧力0.1〜1MPa、温度50〜300℃の範囲で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記混合粉体を作製する際の前記第一の原料粉と前記第二の原料粉との混合比を、(第二の原料粉)/{(第一の原料粉)+(第二の原料粉)}が5wt.%以上50wt.%未満であるようにすることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記混合粉体をアルミニウム元素を含有するものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記透明シリカガラス層を形成する工程の際の熱処理雰囲気に少なくとも水蒸気を含有させ、該透明シリカガラス層にOH基を50〜1000wt.ppmの濃度で含有させることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記第三の原料粉にカルシウム、ストロンチウム、バリウムの少なくとも一種を含有させる工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記透明シリカガラス層の厚さを0.1〜5mmとして形成することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記有機バインダーをパラフィン系バインダーまたはステアリン酸系バインダーとすることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記シリカ容器を、シリコン単結晶引上げ用ルツボとして使用するものとすることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 前記第三の原料粉として、不純物量が、リチウム、ナトリウム、カリウムについては各々10wt.ppb以下、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、金については各々1wt.ppb以下のものを用いることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれか一項に記載のシリカ容器の製造方法。
- 回転対称性を有するシリカ容器であって、少なくとも、
前記シリカ容器は、その内側部分に、実質的に気泡を含有せず、無色透明であり、かさ密度が2.20〜2.21g/cm3であり、厚さが0.1〜5mmである透明シリカガラス層を有し、前記透明シリカガラス層の外側に、気泡を含有し、白色不透明であり、かさ密度が1.90〜2.09g/cm3であり、シリカ純度が99.9〜99.999wt.%である不透明シリカ層からなる基体を有するものであり、
かつ、前記シリカ容器は、
前記透明シリカガラス層がOH基を50〜1000wt.ppmの濃度で含有するものであること、
前記透明シリカガラス層がバリウムを50〜5000wt.ppm含有するものであること、
及び、前記不透明シリカ層からなる基体がアルミニウムを30〜3000wt.ppm含有するものであること
のうち、少なくともいずれか一つを満たすものであることを特徴とするシリカ容器。 - 前記不透明シリカ層からなる基体のリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの合計濃度が10〜100wt.ppmであることを特徴とする請求項15に記載のシリカ容器。
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