JP2019171913A - ステアリングシステムおよびこれを備えた車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構造で、運転者に違和感を与えることなく、車両の走行の安定性と安全性の向上を図ることができるステアリングシステムおよびこれを備えた車両を提供する。【解決手段】このステアリングシステムは、パワーステアリング用モータ11aの駆動により車両の車輪を操舵させる第1のステアリング装置11と、タイヤハウジング内に設けられた操舵用アクチュエータの駆動により左右の車輪を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、車両情報を検出する車両情報検出部110とを備える。第2のステアリング装置150の制御部150bは、ECU130から自動の操舵指令が与えられたとき、第1のステアリング装置11のパワーステアリング用モータ11aによりハンドル軸の回転を固定すると共に、左右の車輪のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように操舵用アクチュエータを制御する。【選択図】図9

Description

この発明は、ステアリングシステムおよびこれを備えた車両に関し、車両の走行の安定性と安全性の向上を図る技術に関する。
(1).特許文献1
運転者がステアリングホイールを把持して操舵している場合には、パワーステアリングのモータを利用して操舵トルクを目標操舵トルクに追従させることで、滑らかな操舵を実現すると共に、ステアリングホイールを手放しした時には、適切な速度でステアリングを中立点に戻すことができ、操舵時と手放し時の良好な操舵フィーリングを両立できる操舵制御装置としている。運転者が高周波操舵、例えば、急なチャンジ操舵を行った場合においても、操舵トルクを最適に修正し、より滑らかな操舵を実現することができる。
(2).特許文献2
ドライバの意思を車両の挙動に反映するだけでなく、車両姿勢の安定感または乗り心地が一層向上するように車両の挙動を制御するために、前輪が操舵される車両の挙動を制御する車両用挙動制御装置である。この装置は、ステアリングホイールの回転を前輪に伝達する操舵装置であって、ステアリングホイール側機構と、またこれと機械的に分離されているステアリングホイールで前輪を操舵する車輪側機構と、を備える操舵装置と、ステアリングホイール側機構に設けられ、ステアリングホイールの回転操舵角を検出する第1舵角センサと、車輪側機構に設けられ、前輪の操舵に対応する操舵角を検出する第2舵角センサと、を備える。この車両用挙動制御装置では、第1舵角センサの出力と第2舵角センサの出力とから操舵速度を算出し、車両において生じた操舵が、ドライバが意思をもって行ったステアリング操作に対応する操舵であるか、あるいは外乱による前輪の操舵に対応する操舵であるかを、上記第1及び第2舵角センサの出力に基づいて判断して、この判断結果に基づいて操舵速度を決定する。
(3).特許文献3
1つのホイール内において、モータを2個使って、車輪の角度を自由に変更し、トー角とキャンバー角を調整する。
(4).特許文献4
転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持し、転舵軸上に減速機を設け、トー角を調整する。
特許第6058214号公報 特許第6270251号公報 独国特許出願公開第102012206337号明細書 特開2014−061744号公報
特許文献1では、通常のステアバイワイヤ用のモータを使って、操舵トルクを調整し、手放し時には中立点に戻す制御をしているが、この制御に用いているモータは、ハンドルに機械的につながっているため、制御時にモータが動くことで、運転者が把持しているハンドルが急に動き違和感を覚える場合がある。また、電源の異常などのトラブルが発生した場合、車両のコントロールができなくなるおそれがある。
特許文献2は、ステアバイワイヤによる制御であり、電源の異常などのトラブルが発生した場合、車両のコントロールができなくなるおそれがある。
特許文献3では、トー角とキャンバー角の両方を制御するためにモータを2個使っているため、モータ個数の増大によるコスト増が生じるだけでなく、制御が複雑になる。
特許文献4では、転舵軸に対しハブベアリングを片持ち支持しているため、剛性が低下し、過大な走行横力の発生によってステアリングジオメトリが変化してしまう可能性がある。また、転舵軸上に減速機を設けた場合、モータを含めてサイズが大きくなる。サイズが大きくなると既存の車体に対して大幅な改造を加えないと搭載することが困難となる。また、減速比の大きい減速機を設けた場合、応答性が悪化する。
車両の車輪のトー角およびキャンバー角の両方を自由に変更するためには、複雑な構成が必要であり、構成部品が多くなる。操舵機能を備えた機構を車輪内の限られたスペース内に収容するためには、小型化が必要である。
この発明の目的は、簡単な構造で、運転者に違和感を与えることなく、車両の走行の安定性と安全性の向上を図ることができるステアリングシステムおよびこれを備えた車両を提供することである。
この発明のステアリングシステムは、車両100が備えるステアリングシステムであって、
操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従いパワーステアリング用モータ11aの駆動により前記車両の車輪9,9を操舵させる第1のステアリング装置11と、
前記車両100のタイヤハウジング105内に設けられた操舵用アクチュエータ5の駆動により左右の車輪9,9を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
車速および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部110と、を備え、
前記第2のステアリング装置150は、前記車両情報に基づいて、前記左右の車輪9,9の前記操舵用アクチュエータ5を左右個別に制御する制御部150bを備え、この制御部150bは、車両ECU130から自動の操舵指令が与えられたとき、前記第1のステアリング装置11の前記パワーステアリング用モータ11aによりハンドル軸32の回転を固定すると共に、前記左右の車輪9,9のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように前記操舵用アクチュエータ5を制御する。
車両の走行時または停止時からの発進時において、車両ECU130は、例えば、カメラまたはセンサなどの情報から、車両前方の異常を感知し危険回避などが必要と判断した場合に、前記「自動の操舵指令」を出力し制御部150bに与える。
この構成によると、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置200,200Aが出力する操舵量の指令に従い車輪を操舵させる。操舵指令装置200,200Aとして、例えば、運転者のハンドルまたは自動の操舵指令装置等を適用し得る。このような操舵指令装置等による車両100の向きの調整が、従来の車両と同様に行える。
第2のステアリング装置150の制御部150bは、タイヤハウジング105内に設けられた操舵用アクチュエータ5を駆動することで、左右の車輪9,9を個別に操舵させる。この制御部150bは、車両ECU130から自動の操舵指令が与えられたか否かを判定する。制御部150bは、この条件を充足するとき、パワーステアリング用モータ11aによりハンドル軸32の回転を固定すると共に、左右の車輪9,9のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように前記操舵用アクチュエータ5を制御する。
したがって、車両前方に障害物等がある場合、運転者のハンドル操作なしに前記操舵角を調整し自動で障害物等を回避することができる。このとき制御部150bは、パワーステアリング用モータ11aによりハンドル軸32の回転を固定しハンドル200の動きを固定する。通常、ステアリング操作に使用しているパワーステアリング用モータ11aは、ハンドル200を固定するブレーキの役割を与える。これにより、ハンドル200が不意に動き運転者が違和感を覚えることを未然に防止することができる。また、例えば、走行車線から追越車線等へのレーンチェンジを行うときハンドル200の動きを固定することで、運動者のハンドル操作により第1のステアリング装置11が不所望に駆動して前記操舵角の調整がずれることを防止し得る。よって、構造を複雑化することなく車両100の走行の安定性と安全性の向上を図ることができる。また運転者に違和感を与えることもない。
前記第2のステアリング装置150の前記制御部150bは、前記操舵角から前記車両100が直進状態か否かを判定する判定手段33と、この判定手段33により前記車両100が直進状態と判定されたとき、前記車速に応じて前記操舵用アクチュエータ5を制御することで前記左右の車輪9,9のトー角を制御する車速対応トー角制御手段34と、を有するものであってもよい。
この構成によると、判定手段33は操舵角から車両100が直進状態か否かを判定する。前記直進状態であるとの判定で、制御部150bにおける車速対応トー角制御手段34は、車両100の速度に応じて操舵用アクチュエータ5を制御することで前記左右の車輪9,9のトー角を制御する。例えば、高速直進時には、左右の車輪9,9を車速に応じた角度にトーイン状態にすることによって、直進安定性を向上させることができる。低速直進時には、車輪9,9を直進状態にすることで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることができる。前記車輪9,9を直進状態にするとは、車両100の平面視において、車両前後方向に対してなす車輪角度の絶対値を定められた角度より小さくすることを意味する。前記定められた角度は、設計等によって任意に定める角度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角度を求めて定められる。
前記第2のステアリング装置150は、
前記各車輪を支持するハブベアリング15を有するハブユニット本体2と、
懸架装置12の足回りフレーム部品6に設けられ、前記ハブユニット本体2を上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在に支持するユニット支持部材3と、
前記ハブユニット本体2を前記転舵軸心A回りに回転駆動させる前記操舵用アクチュエータ5と、を備えるものであってもよい。
この構成によると、車輪9を支持するハブベアリング15を含むハブユニット本体2を、操舵用アクチュエータ5の駆動により、前記転舵軸心A回りに一定の範囲で自由に回転させることができる。このため、車輪毎に独立して操舵が行え、また車両100の走行状況に応じて、車輪9のトー角を任意に変更することができる。
また、旋回走行時に、走行速度に応じて左右輪9,9の舵角差を変えることができる。例えば高速域の旋回走行においてはパラレルジオメトリとし、低速域の旋回走行においてはアッカーマンジオメトリとする等、走行中にステアリングジオメトリを変化させることができる。このように走行中に車輪角度を任意に変更することができるため、車両100の運動性能を向上させ、安定・安全に走行することが可能となる。さらに、左右の操舵輪の操舵角度を適切に変えることで、旋回走行における車両100の旋回半径を小さくし、小回り性能を向上させることもできる。
前記制御部150bは、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助操舵制御部151と、この補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記操舵用アクチュエータ5を駆動制御するアクチュエータ駆動制御部31R,31Lとを有するものであってもよい。
この構成によると、補助操舵制御部151は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。したがって、運転者のハンドル操作等による操舵に付加して車輪角度を任意に変更することができる。
前記第2のステアリング装置150は、左右の前輪9,9および左右の後輪9,9のいずれか一方または両方を操舵させるものであってもよい。この機構部150aを左右の前輪9,9に適用した場合、運転者のハンドル操作等で車輪9の方向がハブユニット全体と共に操舵されるが、この操舵に付加する形で僅かな角度の補助操舵を車輪毎に独立して行うことができる。
前記機構部150aを左右の後輪9,9に適用した場合は、ハブユニット全体は操舵しないが、補助操舵機能により、前輪と同様に僅かな角度の操舵を車輪毎に独立して行える。
この発明の車両は、この発明の上記の構成のステアリングシステムを備えている。そのため、この発明のステアリングシステムにつき前述した各効果が得られる。
この発明のステアリングシステムは、車両が備えるステアリングシステムであって、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従いパワーステアリング用モータの駆動により前記車両の車輪を操舵させる第1のステアリング装置と、前記車両のタイヤハウジング内に設けられた操舵用アクチュエータの駆動により左右の車輪を個別に操舵させる第2のステアリング装置と、車速および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、前記第2のステアリング装置は、前記車両情報に基づいて、前記左右の車輪の前記操舵用アクチュエータを左右個別に制御する制御部を備え、この制御部は、車両ECUから自動の操舵指令が与えられたとき、前記第1のステアリング装置の前記パワーステアリング用モータによりハンドル軸の回転を固定すると共に、前記左右の車輪のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように前記操舵用アクチュエータを制御する。このため、簡単な構造で、運転者に違和感を与えることなく、車両の走行の安定性と安全性の向上を図ることができる。
この発明の車両は、前記第2のステアリング装置が、左右の前輪および左右の後輪のいずれか一方または両方を操舵させるステアリングシステムを備えているため、簡単な構造で、運転者に違和感を与えることなく、車両の走行の安定性と安全性の向上を図ることができる。
この発明の第1の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。 同ステアリングシステムにおける第2のステアリング装置の機構部およびその周辺の構成を示す縦断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部等の構成を示す水平断面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の外観を示す斜視図である。 同第2のステアリング装置の機構部の分解正面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の正面図である。 同第2のステアリング装置の機構部の平面図である。 図6のVIII - VIII線断面図である。 同ステアリングシステムの概念構成を示すブロック図である。 車速と操舵角度との関係を示す図である。 車速とトー角との関係を示す図である。 トー角制御を示すフローチャートである。 レーンチェンジ制御を示すフローチャートである。 同第2のステアリング装置の補助操舵制御部の構成を示すブロック図である。 実横加速度/規範横加速度およびタイヤ角度と摩擦係数の関係例を示すグラフである。 この発明の第2の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。 この発明の第3の実施形態に係るステアリングシステムの概念構成を概略示す図である。
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態を図1ないし図15と共に説明する。
図1は、この実施形態に係るステアリングシステム101を搭載した自動車等の車両100の概念構成を概略示す図である。車両100は、前輪となる左右の車輪9,9と、後輪となる左右の車輪9,9とを有する4輪車両であり、駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
このステアリングシステム101は、車両100の操舵を行うためのシステムであり、第1のステアリング装置11と、第2のステアリング装置150と、車両情報検出部110とを備える。
第1のステアリング装置11は、ハンドル200等の操舵指令装置に対する運転者の操作により車両100の操舵輪となる左右の車輪9,9を操舵させる装置であり、この実施形態では前輪操舵形式とされている。
第2のステアリング装置150は、車両100の状態に応じた制御によって補助的な操舵を行う装置であり、機構部150aと、制御部150bとを有する。機構部150aは、補助操舵の対象となる車輪9,9毎に設けられる機構である。この機構部150aは、車両100のタイヤハウジング105内に設けられて操舵用アクチュエータ5(図2)の駆動により車輪9を個別に操舵させる。制御部150bは、車両情報検出部110により検出された車両100の状態を表す車両情報に基づいて制御する。
換言すれば、ステアリングシステム101は、
車両100の前輪となる左右の車輪9,9が機械的に連動し、前記操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車両100の前輪となる左右の車輪9,9を、これら左右の車輪9,9が設置される懸架装置12の左右の足回りフレーム部品であるナックル6,6の角度変更によって操舵する第1のステアリング装置11と、
左右の車輪9,9に対してそれぞれ設けられた補助操舵用のアクチュエータ(操舵用アクチュエータ5(図2))を駆動することで前記足回りフレーム部品であるナックル6,6に対する車輪9,9の角度を変えて左右の車輪9,9を個別に操舵させる第2のステアリング装置150と、
後述する車両情報検出部110と、を備える。
車両情報検出部110は、車両100の状態を検出する手段であり、各種のセンサ類の群を称している。車両情報検出部110の検出した車両情報は、メインの車両ECU130を介して第2のステアリング装置150の制御部150bに転送される。
車両ECU130は、車両100の全体の協調制御または統括制御を行う制御装置であり、VCUとも称される。なお車両ECU130を単に「ECU130」と言う場合がある。
<第1のステアリング装置11の構成>
第1のステアリング装置11は、運転者によるハンドル200に対する入力に応じて、車両100の前輪となる左右の車輪9,9を連動して操舵させる電動パワーステアリングシステムであり、ハンドル軸であるステアリングシャフト32、パワーステアリング用モータ11a、ハンドル200に入力される操舵トルクおよび操舵方向を検出するトルクセンサ11b、ラックアンドピニオン(図示せず)、タイロッド14等を備える。
運転者がハンドル200に対して回転入力を行うと、トルクセンサ11bで検出される操舵トルク等に基づいて、パワーステアリング用モータ11aの回転力をステアリングシャフト32に伝達することで操舵力が補助される。ステアリングシャフト32が回転すると、ラックアンドピニオンによってステアリングシャフト32と連結されているタイロッド14が車幅方向に移動することで、車輪9の向きが変わり、左右の車輪9,9を連動して操舵することが可能である。
<第2のステアリング装置150の概略構成>
図1および図9に示すように、第2のステアリング装置150は、左右の車輪9,9を独立して操舵可能である。この第2のステアリング装置150の機構部150aとして右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備える。これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、タイヤハウジング105内に設けられた操舵用アクチュエータ5(図2)により車輪9,9の操舵を行う。
<第2のステアリング装置150の機構部150aの具体的構成例>
第2のステアリング装置150の機構部150aは、前述のように右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lを備えるが、これら右輪ハブユニット1Rおよび左輪ハブユニット1Lは、いずれも図2に示す操舵機能付ハブユニット1として構成されている。
同図2に示すように、このハブユニット1は、ハブユニット本体2と、ユニット支持部材3と、回転許容支持部品4と、操舵用アクチュエータ5とを備える。足回りフレーム部品であるナックル6に一体にユニット支持部材3が設けられている。
図5に示すように、このユニット支持部材3のインボード側に、操舵用アクチュエータ5のアクチュエータ本体7が設けられ、ユニット支持部材3のアウトボード側に、ハブユニット本体2が設けられる。ハブユニット1(図2)を車両に搭載した状態で、車両の車幅方向外側をアウトボード側といい、車両の車幅方向中央側をインボード側という。
図3および図4に示すように、ハブユニット本体2とアクチュエータ本体7とはジョイント部8により連結されている。通常、このジョイント部8は、防水、防塵のために図示外のブーツが取り付けられている。
図2に示すように、ハブユニット本体2は、上下方向に延びる転舵軸心A回りに回転自在なように、上下二箇所で回転許容支持部品4,4を介してユニット支持部材3に支持されている。転舵軸心Aは、車輪9の回転軸心Oとは異なる軸心であり、主な操舵を行うキングピン軸とも異なっている。通常の車両は、車両走行の直進安定性の向上を目的としてキングピン角度が10〜20度で設定されているが、この実施形態のハブユニット1は、前記キングピン角度とは別の角度(軸)の転舵軸を有する。車輪9は、ホイール9aとタイヤ9bとを備える。
図1に示すように、この実施形態のハブユニット1(図2)は、第1のステアリング装置11による前輪となる左右の車輪9,9の操舵に付加して左右輪個別に微小な角度(約±5deg)を操舵させる機構として、懸架装置12のナックル6に一体に設けられる。第1のステアリング装置11は、ラックアンドピニオン式とされるが、どのタイプのステアリング装置でも構わない。懸架装置12は、例えば、ショックアブソーバーをナックル6に直接固定するストラット式サスペンション機構を適用しているが、マルチリンク式サスペンション機構、その他のサスペンション機構を適用してもよい。
<ハブユニット本体2について>
図2に示すように、ハブユニット本体2は、車輪9の支持用のハブベアリング15と、アウターリング16と、後述の操舵力受け部であるアーム部17(図4)とを備える。
図8に示すように、ハブベアリング15は、内輪18と、外輪19と、これら内外輪18,19間に介在したボール等の転動体20とを有し、車体側の部材と車輪9(図2)とを繋ぐ役目をしている。
このハブベアリング15は、図示の例では、外輪19が固定輪、内輪18が回転輪となり、転動体20が複列とされたアンギュラ玉軸受とされている。内輪18は、ハブフランジ18aaを有しアウトボード側の軌道面を構成するハブ輪部18aと、インボード側の軌道面を構成する内輪部18bとを有する。図2に示すように、ハブフランジ18aaに、車輪9のホイール9aがブレーキロータ21aと重なり状態でボルト固定されている。内輪18は、回転軸心O回りに回転する。
図8に示すように、アウターリング16は、外輪19の外周面に嵌合された円環部16aと、この円環部16aの外周から上下に突出して設けられたトラニオン軸状の取付軸部16b,16bとを有する。各取付軸部16bは、転舵軸心Aに同軸に設けられる。
図3に示すように、ブレーキ21は、ブレーキロータ21aと、ブレーキキャリパ21bとを有する。ブレーキキャリパ21bは、外輪19に一体にアーム状に突出して形成された上下二箇所のブレーキキャリパ取付部22(図6)に取付けられる。
<回転許容支持部品およびユニット支持部材について>
図8に示すように、各回転許容支持部品4は転がり軸受から成る。この例では、転がり軸受として、テーパころ軸受が適用されている。転がり軸受は、取付軸部16bの外周に嵌合された内輪4aと、ユニット支持部材3に嵌合された外輪4bと、内外輪4a,4b間に介在する複数の転動体4cとを有する。
ユニット支持部材3は、ユニット支持部材本体3Aと、ユニット支持部材結合体3Bとを有する。ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端に、略リング形状のユニット支持部材結合体3Bが着脱自在に固定されている。ユニット支持部材結合体3Bのインボード側側面のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3aがそれぞれ形成されている。
図7および図8に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端のうち上下の部分には、部分的な凹球面状の嵌合孔形成部3Aaがそれぞれ形成されている。図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aのアウトボード側端にユニット支持部材結合体3Bが固定され、各上下の部分につき、嵌合孔形成部3a,3Aa(図7)が互いに組み合わされることにより、全周に連なる嵌合孔が形成される。この嵌合孔に外輪4b(図8)が嵌合されている。なお図4において、ユニット支持部材3を一点鎖線で表す。
図8に示すように、アウターリング16における各取付軸部16bには、雌ねじ部が径方向に延びるように形成され、この雌ねじ部に螺合するボルト23が設けられている。内輪4aの端面に円板状の押圧部材24を介在させ、前記雌ねじ部に螺合するボルト23により、内輪4aの端面に押圧力を付与することで、各回転許容支持部品4にそれぞれ予圧を与えている。これにより各回転許容支持部品4の剛性を高め得る。車両の重量がこのハブユニットに作用した場合でも初期予圧が抜けないように設定される。なお、回転許容支持部品4の転がり軸受は、テーパころ軸受に限るものではなく、最大負荷等の使用条件によってはアンギュラ玉軸受を用いることも可能である。その場合も、上記と同様に予圧を与えることができる。
図3に示すように、アーム部17は、ハブベアリング15の外輪19に操舵力を与える作用点となる部位であり、円環部16aの外周の一部または外輪19の外周の一部に一体に突出する。このアーム部17は、ジョイント部8を介して、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aに回転自在に連結されている。これにより、操舵用アクチュエータ5の直動出力部25aが進退することで、ハブユニット本体2が転舵軸心A(図2)回りに回転、つまり操舵させられる。
<操舵用アクチュエータ5について>
図4に示すように、操舵用アクチュエータ5は、ハブユニット本体2を転舵軸心A(図2)回りに回転駆動させるアクチュエータ本体7を有する。
図3に示すように、アクチュエータ本体7は、モータ26と、モータ26の回転を減速する減速機27と、この減速機27の正逆の回転出力を直動出力部25aの往復直線動作に変換する直動機構25とを備える。モータ26は、例えば永久磁石型同期モータとされるが、直流モータであっても、誘導モータであってもよい。
減速機27は、ベルト伝達機構等の巻き掛け式伝達機構またはギヤ列等を用いることができ、図3の例ではベルト伝達機構が用いられている。減速機27は、ドライブプーリ27aと、ドリブンプーリ27bと、ベルト27cとを有する。モータ26のモータ軸にドライブプーリ27aが結合され、直動機構25にドリブンプーリ27bが設けられている。このドリブンプーリ27bは、前記モータ軸に平行に配置されている。モータ26の駆動力は、ドライブプーリ27aからベルト27cを介してドリブンプーリ27bに伝達される。前記各ドライブプーリ27aとドリブンプーリ27bとベルト27cとで、巻き掛け式の減速機27が構成される。
直動機構25は、滑りねじまたはボールねじ等の送りねじ機構、またはラック・ピニオン機構等を用いることができ、この例では台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構が用いられている。直動機構25は、前記台形ねじの滑りねじを用いた送りねじ機構を備えるため、タイヤ9bからの逆入力の防止効果を高め得る。モータ26、減速機27および直動機構25を備えたアクチュエータ本体7は、準組立品として組み立てられてケース6bにボルト等により着脱自在に取り付けられる。なおモータ26の駆動力を、減速機を介さず直接直動機構25へ伝達する機構も可能である。
ケース6bは、ユニット支持部材3の一部として、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ケース6bは、有底筒状に形成され、モータ26を支持するモータ収容部と、直動機構25を支持する直動機構収容部が設けられている。前記モータ収容部には、モータ26をケース内所定位置に支持する嵌合孔が形成されている。前記直動機構収容部には、直動機構25をケース内所定位置に支持する嵌合孔、および、直動出力部25aの進退を許す貫通孔等が形成されている。
図4に示すように、ユニット支持部材本体3Aは、前記ケース6b、ショックアブソーバの取り付け部となるショックアブソーバ取り付け部6c、および第1のステアリング装置11(図3)の結合部となるステアリング装置結合部6dを有する。これらショックアブソーバ取り付け部6cおよびステアリング装置結合部6dも、ユニット支持部材本体3Aに一体に形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における上部に、ショックアブソーバ取り付け部6cが突出するように形成されている。ユニット支持部材本体3Aの外表面部における側面部には、ステアリング装置結合部6dが突出するように形成されている。
<車両情報検出部110の構成>
図9に示すように、車両情報検出部110は、車両情報を検出しECU130へ出力する。車両情報検出部110は、車速検出部111、操舵角検出部112、車高検出部113、実ヨーレート検出部114、実横加速度検出部115、アクセルペダルセンサ116、ブレーキペダルセンサ117、前方車両検出部118および後方車両検出部119を備える。
車速検出部111は、例えば車両が備えるトランスミッションの内部に取り付けたスピードセンサ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいて、この車両の速度(車速)を検出し、ECU130へ車速情報(単に「車速」とも言う)を出力する。
操舵角検出部112は、例えば第1のステアリング装置11が備えるモータ部に取り付けられたレゾルバ等のセンサ(図示せず)の出力に基づいて操舵角を検出し、ECU130へ操舵角情報(単に「操舵角」とも言う)を出力する。
車高検出部113は、車両100(図1)のシャーシと地面との距離をレーザ変位計により測定する方法、あるいは車両100の懸架装置12(図1)における図示外のアッパーアームまたはロアアームの角度を角度センサにより検出する方法等により、第2のステアリング装置150により操舵される各車輪9(図1)の車高を検出する。そして、車高検出部113は、検出した車高を車高情報としてECU130へ出力する。
実ヨーレート検出部114は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実ヨーレートを検出し、ECU130へ実ヨーレート情報を出力する。
実横加速度検出部115は、例えば車両100(図1)に取り付けられたジャイロセンサ等のセンサの出力に基づいて、実横加速度を検出し、ECU130へ実横加速度情報を出力する。アクセルペダルセンサ116は、運転者によるアクセルペダル210への入力を検出し、検出した値をアクセル指令値としてECU130へ出力する。ブレーキペダルセンサ117は、運転者によるブレーキペダル220への入力を検出し、検出した値をブレーキ指令値としてECU130へ出力する。
前方車両検出部118は、この車両100(図1)の進行方向の前方における障害物、他の車両等の有無を検出する、例えば、カメラまたはミリ波のレーダ等のセンサ類である。後方車両検出部119は、この車両100(図1)の後方の車両等の有無を検出する、例えば、カメラまたはミリ波のレーダ等のセンサ類である。前方車両検出部118および後方車両検出部119は、それぞれ車両走行時に他の車両等の有無を常時に検出し、車両等検出情報をECU130へ出力する。ECU130は、操舵角指令信号を含む車両情報を第2のステアリング装置150の制御部150bに出力する。
<第2のステアリング装置150の制御部150b>
第2のステアリング装置150の制御部150bは、ECU130から、車速情報、操舵角情報、車高情報、実ヨーレート情報、実横加速度情報、アクセル指令値、ブレーキ指令値および各車両等検出情報を含む車両情報を取得し、取得した車両情報に基づいて、補助操舵制御部151が右輪用のアクチュエータ駆動制御部31R、左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lを制御することで、右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lが備えるモータ26を駆動し、左右の車輪を独立して操舵可能である。
制御部150bにおいて、前記車両情報である操舵角情報等の各情報と前記モータ26を駆動する指令値との関係は、例えばマップまたは演算式等を用いて制御規則として定められており、その制御規則を用いて制御を行う。
制御部150bは、例えば専用のECUとして設けられるが、メインのECU130の一部として設けてもよい。
ECU130は操舵指令自動生成手段130aを有し、この操舵指令自動生成手段130aは、定められた条件(1),(2)および(3)を全て充足すると、自動の操舵指令を制御部150bに出力する。
条件(1):車両走行時または車両停止時からの発進時である。
条件(2):前方車両検出部118により前方に障害物等が有ると認識して一定時間経過後衝突する判定を満たす。
条件(3):後方車両検出部119により車両後方に後続車が無い、または後方車両の車速および相対距離を検出し後方車両との間に十分な距離があると判定する。
操舵指令自動生成手段130aは、例えば、車速検出部111からECU130に出力された車速が定められた車速以上のとき、またはアクセルペダルセンサ116からECU130にアクセル指令値が出力されたとき、条件(1)を充足する。前記定められた車速は、設計等によって任意に定める車速であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な車速を求めて定められる。
制御部150bは、操舵指令自動生成手段130aから自動の操舵指令が与えられたとき、第1のステアリング装置11のパワーステアリング用モータ11aによりステアリングシャフト32(図1)の回転を固定すると共に、左右の車輪のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように操舵用アクチュエータ5(図2)を制御する。このとき、運転者は、ハンドル200から手を離しているか、またはハンドル200に手を添えているだけでハンドル操作をしていないものとする。したがって、制御部150bは、例えば、複数の車線(レーン)がある高速道路などの高速走行中に前方に障害物等が有ると、運転者のハンドル操作なしに自動で車線変更(レーンチェンジ)することで、この車両100(図1)が障害物等に衝突することを回避し得る。低速走行時または車両停止時からの発進時においても、制御部150bは、車両前方に障害物等が有ると、運転者のハンドル操作なしに操舵することで、この車両100(図1)が障害物等に衝突することを回避し得る。
この自動の操舵指令が与えられたときの制御部150bの制御中、制御部150bは、図10に示すように、車速に応じて、制御対象の車輪の操舵角度を操舵機能付ハブユニット1(図2)で制御することで、運転者の違和感無く安定して車両を車線変更し得る。
具体的には、図9および図10に示すように、制御部150bは、車速が前記定められた車速以上で車速VCkm/h未満のとき、制御対象の車輪の操舵角度を同制御中最大のDdegに制御する。制御部150bは、車速がVCkm/hから車速の上昇に合わせ徐々に操舵角度を減少させ、車速VKkm/h以上で同制御中最小のCdegに制御する。Ddeg、Cdeg、VCkm/h、VKkm/hは、車両情報によって異なる値である。
制御部150bにおける補助操舵制御部151は、判定手段33と車速対応トー角制御手段34とを有する。判定手段33は、ECU130から取得した操舵角から車両100(図1)が直進状態か否かを判定する。車速対応トー角制御手段34は、判定手段33により車両100(図1)が直進状態と判定されたとき、車速に応じて各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lを制御し、各モータ26を駆動制御することで左右の車輪のトー角を制御する。
具体的には、判定手段33は、ハンドル200と連結される第1のステアリング装置11により操舵される車輪角度(操舵角)θTを、操舵角検出部112からECU130を介して得る。判定手段33は、この車輪角度θTの絶対値が定められた角度Aより小さいか(|θT|<Adegであるか)否かを判定する。車速対応トー角制御手段34は、判定手段33により|θT|<Adegと判定された場合、図11に示すように車速によってトー角を調整する。前記Aは、微小な角度(10deg以下)としているが、車両情報によって数値は異なる。図11におけるトーイン角度Xdegは、高速走行時で且つ車速VLkm/h以下のときの設定角度であり、例えば、零度である。なお、トーイン角度Xdegは僅かにトーイン状態となる角度であってもよい。
図9および図11に示すように、車速対応トー角制御手段34は、高速走行時で且つ車速がVLkm/hより大きくVHkm/h未満のとき、車速が上昇するに従って左右の車輪のトー角を大きく制御する(換言すれば、車速に応じた角度にトーイン状態にする)ことによって直進安定性を向上させることができる。
また車速対応トー角制御手段34は、車速が定められた速度以下のとき、左右の車輪のトー角を設定された前記トーイン角度Xdegに制御する(換言すれば、左右の車輪を直進状態にする)ことで、走行抵抗を低減させ燃費を向上させることが可能となる。左右の車輪を直進状態にするとは、車両の平面視において、車両前後方向に対してなす車輪角度の絶対値を定められた角度より小さくすることを意味する。前記定められた角度は、設計等によって任意に定める角度であって、例えば、試験およびシミュレーションのいずれか一方または両方等により適切な角度を求めて定められる。
図12はトー角制御、図13はレーンチェンジ制御を示すフローチャートである。図9,図10,図11も適宜参照しつつ説明する。
<トーイン制御>
本処理開始後、車速検出部111からECU130を介して得られた車速からこの車両が高速走行中であると制御部150bが判断すると、判定手段33は、車輪角度θTの絶対値が定められた角度より小さいか(|θT|<Adegであるか)否かを判定する(ステップS1)。車輪角度θTの絶対値が定められた角度以上であるとの判定(ステップS1:No)で、ステップS1に戻る。
車輪角度θTの絶対値が定められた角度より小さい、つまり車両が直進状態であるとの判定(ステップS1:Yes)で、車速対応トー角制御手段34は、車速VがVLkm/h以下(ステップS2:Yes)では、トー角をX+0deg(直進状態)とし(ステップS3)、車速がVLkm/hから車速の上昇に合わせ(ステップS4:Yes)徐々にトー角を増加させ(ステップS5)、車速がVHkm/h以上(ステップS6:Yes)では最大のトー角(X+Bdeg)で一定とする(ステップS7)。Xdeg、Bdeg、VLkm/h、VHkm/hは、車両情報によって異なる値である。
トー角をある角度Bdeg超えて与えると、走行抵抗が増加しすぎて、車輪にすべりが生じる等安定して走行することができなくなる。車速VLkm/h以下では、走行抵抗を小さくするために、トー角は約0degが好ましい。
車速に応じてトー角を算出した後、制御部150bは各操舵用アクチュエータの駆動条件(モータ26に流す電流等)を算出し(ステップS8)、各操舵用アクチュエータを駆動する(ステップS9)。その後ステップS10以下のレーンチェンジ制御に移行する。
<レーンチェンジ制御>
操舵指令自動生成手段130aは、前方車両検出部118によりこの車両が走る走行車線上の障害物等を感知して一定時間経過後衝突する判定を満たすと(ステップS10:Yes)、ステップS11に移行する。このステップS11において、操舵指令自動生成手段130aは、後方車両検出部119により追越車線上の側方および後方車両との間に十分な距離があるか否かを判定する。
後方車両との間に十分な距離があるとの判定で(ステップS11:Yes)、追越車線にレーンチェンジを開始する(ステップS12)。このとき制御部150bは、パワーステアリング用モータ11aによりステアリングシャフト32(図1)の回転を固定しハンドル200の動きを固定することで、ハンドル200が不意に動き運転者が違和感を覚えることを未然に防止し得る。制御部150bは、各操舵用アクチュエータの駆動量すなわちモータ26に流す電流等を算出し(ステップS13)、各操舵用アクチュエータを駆動する(ステップS14)。追越車線へのレーンチェンジが完了後(ステップS15)、先ほど作動させた側または両輪の操舵機能付ハブベアリングを駆動前の状態に戻して車両を直進状態にする。制御部150bは、カメラ等の検出情報等から、この車両100が前記追越車線等に移動したことを認識する手段を有し、この手段により車両100の追越車線等への移動を認識したとき、レーンチェンジが完了したと判定し、制御部150bは、自動調整した車輪9の操舵角を調整前の操舵角に戻すように操舵用アクチュエータ5を制御すると共に、パワーステアリング用モータ11aによるハンドル200の固定を解除する。その後本処理を終了する。
補助操舵制御部151は、前記トー角制御およびレーンチェンジ制御に加えて以下の図14に示すように左右の車輪を独立して操舵する制御を行う。この図14に示す制御と図12および図13等に示す制御とを、運転者の操作または車両状況等に応じて切替えてもよいし、並行して実行してもよい。
図14に示すように、補助操舵制御部151は、規範横加速度計算部152、右輪タイヤ角度計算部153、左輪タイヤ角度計算部154、右輪路面摩擦係数計算部155、目標ヨーレート計算部156、左輪路面摩擦係数計算部157、目標ヨーレート補正部158、目標左右輪タイヤ角度計算部159、右輪指令値計算部160、および左輪指令値計算部161を備える。
右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、所定の周期で、ECU130から操舵角情報および車高情報を取得する。右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154は、取得した操舵角情報および車高情報に基づいて、第2のステアリング装置150(図9)が操舵を行うタイヤの現在の角度を算出し、算出したタイヤ角度情報を規範横加速度計算部152に出力する。
規範横加速度計算部152は、ECU130から取得した車速情報および前記タイヤ角度情報に基づいて、規範横加速度の計算を行う。規範横加速度計算部152は、算出した規範横加速度を規範横加速度情報として右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に出力する。
図15は路面摩擦係数を算出するためのマップを表す図であり、このマップは、図14に示す右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157に記憶されている。
右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、ECU130から取得する実横加速度情報および規範横加速度計算部152から入力される規範横加速度情報に基づいて、路面摩擦係数の計算を行う。具体的には、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、規範横加速度計算部152から規範横加速度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154からタイヤ角度情報を取得する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、前記マップ(図15)に基づいて、実横加速度/規範横加速度とタイヤ角度とから、路面摩擦係数を算出する。右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157は、算出した右輪の路面摩擦係数である右輪路面摩擦係数情報と、左輪の路面摩擦係数である左輪路面摩擦係数情報とを、目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート計算部156は、ECU130から所定の周期で取得する車速情報および操舵角情報に基づいて、目標ヨーレートを計算し、算出した目標ヨーレートを目標ヨーレート情報として目標ヨーレート補正部158に出力する。
目標ヨーレート補正部158は、右輪路面摩擦係数計算部155および左輪路面摩擦係数計算部157から、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報が入力されると、目標ヨーレート計算部156から目標ヨーレート情報を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報で表される路面摩擦係数に応じて目標ヨーレートの補正を行う。目標ヨーレート補正部158は、補正後の目標ヨーレートを補正後ヨーレート情報として目標左右輪タイヤ角度計算部159へ出力する。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、前記補正後ヨーレート情報が入力されると、ECU130から実ヨーレート情報、アクセル指令値およびブレーキ指令値を取得し、右輪路面摩擦係数情報および左輪路面摩擦係数情報を取得し、左右輪のタイヤ角度の目標値である目標左右輪タイヤ角度を計算する。具体的には、目標左右輪タイヤ角度計算部159は、下記式(1)に基づいて、左右それぞれのタイヤの目標の角度を算出する。
Figure 2019171913
式(1)において、θは実ヨーレート情報で表される実際の車両のヨーレート量、Xはアクセル指令値、Xはブレーキ指令値、μは右輪路面摩擦係数、μは左輪路面摩擦係数、θtR1は右輪の目標タイヤ角度、θtL1は左輪の目標タイヤ角度である。
目標左右輪タイヤ角度計算部159は、計算した左右輪それぞれの目標タイヤ角度を目標タイヤ角度情報として、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161へ出力する。
右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161は、前記各目標タイヤ角度情報が入力されると、右輪タイヤ角度計算部153および左輪タイヤ角度計算部154から、現在のタイヤ角度を表すタイヤ角度情報を取得し、目標タイヤ角度情報で表される目標タイヤ角度と、現在のタイヤ角度とを比較する。目標タイヤ角度と現在のタイヤ角度とを比較した結果、偏差がある場合には、右輪ハブユニット1R(図9)および左輪ハブユニット1L(図9)のそれぞれを操舵させる量を表す右輪操舵量情報および左輪操舵量情報を生成する。右輪指令値計算部160は、生成した右輪操舵量情報(電流指令信号)を右輪用のアクチュエータ駆動制御部31Rへ出力し、左輪指令値計算部161は、生成した左輪操舵量情報(電流指令信号)を左輪用のアクチュエータ駆動制御部31Lへ出力する。
各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lはインバータを備える。各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、前記右輪操舵量情報および前記左輪操舵量情報に基づいて、各操舵用アクチュエータのモータ26(図9)への電流を制御する。
具体的には、図9および図14に示すように各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、右輪指令値計算部160および左輪指令値計算部161から右輪操舵量情報および左輪操舵量情報が入力されると、現在の右輪ハブユニット1R、および左輪ハブユニット1Lの操舵角を表す各モータ26の位置情報を取得し、右輪操舵量情報および左輪操舵量情報に基づいてモータ26の目標位置を決定し、各モータ26へ流す電流の制御を行う。
すなわち、図4に示すように、各アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、補助操舵制御部151から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して操舵用アクチュエータ5を駆動制御する。アクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、モータ26のコイルに供給する電力を制御する。このアクチュエータ駆動制御部31R,31Lは、例えば、図示外のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を構成し、前記スイッチ素子のON−OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。これにより、運転者のハンドル操作による操舵に付加して、車輪を微小に角度変化することができる。直線走行時にも、車速に応じてトー角の量を調整し得る。
<作用効果>
以上説明したステアリングシステム101によれば、第1のステアリング装置11は、操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従い車輪9,9を操舵させる。操舵指令装置として、例えば、運転者のハンドル200または自動の操舵指令装置等を適用し得る。このような操舵指令装置等による車両100の向きの調整が、従来の車両と同様に行える。
制御部150bは、操舵指令自動生成手段130aから自動の操舵指令が与えられたとき、第1のステアリング装置11のパワーステアリング用モータ11aによりステアリングシャフト32の回転を固定すると共に、対象とする車輪9の操舵角を調整するように操舵用アクチュエータ5を制御する。
したがって、走行時または車両停止時からの発進時に車両前方に障害物等がある場合、運転者のハンドル操作なしに前記操舵角を調整し自動で障害物等を回避することができる。このとき制御部150bは、パワーステアリング用モータ11aによりハンドル軸の回転を固定しハンドル200の動きを固定する。通常ステアリング操作に使用しているパワーステアリング用モータ11aは、ハンドル200を固定するブレーキの役割を与える。これにより、ハンドル200が不意に動き運転者が違和感を覚えることを未然に防止することができる。よって、構造を複雑化することなく車両100の走行の安定性と安全性の向上を図ることができる。また運転者に違和感を与えることもない。
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
[第2の実施形態]
図16に示すように、この第2の実施形態に係るステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11と第2のステアリング装置150とが互いに異なる車輪9を操舵する点で、第1の実施形態とは異なる。すなわち、このステアリングシステム101は、第1のステアリング装置11が車両100の左右の前輪9,9の操舵を行い、第2のステアリング装置150が車両100の左右の後輪9,9の操舵を行う。第2のステアリング装置150の機構部150bは、後輪のタイヤハウジング105内に設置されている。
[第3の実施形態]
図17に示すように、この第3の実施形態に係るステアリングシステム101は、二つの第2のステアリング装置150、150を備えている点で、第1の実施形態とは異なる。
一方の第2のステアリング装置150は、第1のステアリング装置11と同じ車輪9,9の操舵を行い、他方の第2のステアリング装置150は、第2のステアリング装置150とは異なる車輪9,9の操舵を行う。すなわち、一方の第2のステアリング装置150は、第1の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行い、他方の第2のステアリング装置150は、第2の実施形態に係る第2のステアリング装置150と同様の動作を行う。
このステアリングシステム101によれば、複数(この例では二つ)の第2のステアリング装置150、150を備えていることにより、より複雑に4輪を独立して操舵することが可能となり、車両100の走行安定性の向上および燃費の低減を図ることが可能となる。
なお、前記各実施形態は、操舵指令装置がハンドル200である場合につき説明したが、ハンドル200以外の手動の操舵指令装置、例えばジョイスティックであってもよく、また例えば図9に示すような自動の操舵指令装置200Aであってもよい。この自動の操舵指令装置200Aは、車両周辺状況検出手段230から車両周辺状況等を認識し、操舵指令を自動生成する装置である。車両周辺状況検出手段230は、例えば、カメラまたはミリ波のレーダ等のセンサ類である。
自動の操舵指令装置200Aは、例えば道路上の白線および障害物を認識し、操舵指令を生成して出力する。自動の操舵指令装置200Aは、車両の自動運転を行う装置の一部であっても、手動運転による操舵の支援を行う装置であってもよい。このような自動で操舵指令を生成する操舵指令装置200Aを備えた車両においても、第2のステアリング装置150を備えることで、トー角制御等の第1のステアリング装置11では行えない動作が行え、また車両の走行方向の主な操舵を第1のステアリング装置11で行い、その補正を第2のステアリング装置150で行うようにすることもでき、操舵量指令に対して車両の向きの補正を可能とし、車両の走行安定性を維持することが可能となる。
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
2…ハブユニット本体、3…ユニット支持部材、5…操舵用アクチュエータ、6…ナックル(足回りフレーム部品)、9…車輪、11…第1のステアリング装置、11a…パワーステアリング用モータ、12…懸架装置、15…ハブベアリング、31R,31L…アクチュエータ駆動制御部、32…ステアリングシャフト(ハンドル軸)、33…判定手段、34…車速対応トー角制御手段、100…車両、101…ステアリングシステム、105…タイヤハウジング、110…車両情報検出部、130…ECU(車両ECU)、150…第2のステアリング装置、150b…制御部、151…補助操舵制御部、200…ハンドル(操舵指令装置)、200A…自動の操舵指令装置

Claims (6)

  1. 車両が備えるステアリングシステムであって、
    操舵指令装置が出力する操舵量の指令に従いパワーステアリング用モータの駆動により前記車両の車輪を操舵させる第1のステアリング装置と、
    前記車両のタイヤハウジング内に設けられた操舵用アクチュエータの駆動により左右の車輪を個別に操舵させる第2のステアリング装置と、
    車速および操舵角を含む車両情報を検出する車両情報検出部と、を備え、
    前記第2のステアリング装置は、前記車両情報に基づいて、前記左右の車輪の前記操舵用アクチュエータを左右個別に制御する制御部を備え、この制御部は、車両ECUから自動の操舵指令が与えられたとき、前記第1のステアリング装置の前記パワーステアリング用モータによりハンドル軸の回転を固定すると共に、前記左右の車輪のうちいずれか一方または両方の操舵角を調整するように前記操舵用アクチュエータを制御するステアリングシステム。
  2. 請求項1に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置の前記制御部は、前記操舵角から前記車両が直進状態か否かを判定する判定手段と、この判定手段により前記車両が直進状態と判定されたとき、前記車速に応じて前記操舵用アクチュエータを制御することで前記左右の車輪のトー角を制御する車速対応トー角制御手段と、を有するステアリングシステム。
  3. 請求項1または請求項2に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置は、
    前記各車輪を支持するハブベアリングを有するハブユニット本体と、
    懸架装置の足回りフレーム部品に設けられ、前記ハブユニット本体を上下方向に延びる転舵軸心回りに回転自在に支持するユニット支持部材と、
    前記ハブユニット本体を前記転舵軸心回りに回転駆動させる前記操舵用アクチュエータと、を備えるステアリングシステム。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記制御部は、与えられた操舵角指令信号に応じた電流指令信号を出力する補助操舵制御部と、この補助操舵制御部から入力された電流指令信号に応じた電流を出力して前記転動用アクチュエータを駆動制御するアクチュエータ駆動制御部とを有するステアリングシステム。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のステアリングシステムにおいて、前記第2のステアリング装置は、左右の前輪および左右の後輪のいずれか一方または両方を操舵させるステアリングシステム。
  6. 請求項5に記載のステアリングシステムを備えた車両。
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