JP2019167606A - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性に優れ、かつ強度が優れた無方向性電磁鋼板を提供する。【解決手段】P含有量(質量%)を[P]、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上の総計を[X1]としたときに式2で表されるパラメータR:0.0001以上、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子が10μm2あたりに5個以上であり、{100}結晶方位強度が2.4以上であり、厚さが0.15mm〜0.30mmであり、平均結晶粒径が25μm以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、無方向性電磁鋼板に関する。
無方向性電磁鋼板は、例えばモータの鉄心に使用され、無方向性電磁鋼板には、その板面に平行なすべての方向(以下、「板面内の全方向」ということがある)において優れた磁気特性、例えば低鉄損及び高磁束密度が要求される。HEVターボチャージャー用モータに使われる無方向性電磁鋼板は、10万rpm近くの超高速回転において良好な性能が求められている。この回転数では、遠心力に耐えられる強度を有し、高周波鉄損に優れ、かつ磁束密度の高い材料が求められている。
特開平3−126845号公報 特開2006−124809号公報 特開昭61−231120号公報 特開2004−197217号公報 特開平5−140648号公報 特開2008−132534号公報 特開2004−323972号公報 特開昭62−240714号公報 特開2011−157603号公報 特開2008−127659号公報
本発明は、磁気特性に優れ、かつ強度が優れた無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。この結果、化学組成、厚さ及び平均結晶粒径を適切なものとすることが重要であることが明らかになった。このような無方向性電磁鋼板の製造には、熱延鋼帯等の冷間圧延に供する鋼帯を得る際に、溶鋼の鋳造又は急速凝固における柱状晶率及び平均結晶粒径を制御し、冷間圧延の圧下率を制御し、仕上げ焼鈍時の通板張力及び冷却速度を制御することが重要であることも明らかになった。
本発明者らは、このような知見に基づいて更に鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
(1)
質量%で、
C:0.0030%以下、
Si:2.00%〜4.00%、
Al:0.01%〜3.00%、
Mn:0.10%〜2.00%、
P:0.005%〜0.200%、
S:0.0030%以下、
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計で0.005%〜0.200%、
Si含有量(質量%)を[Si]、Al含有量(質量%)を[Al]、Mn含有量(質量%)を[Mn]としたときに式1で表されるパラメータQ:2.00以上、
P含有量(質量%)を[P]、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上の総計を[X1]としたときに式2で表されるパラメータR:0.0001以上、
Sn:0.00%〜0.40%、
Cu:0.0%〜1.0%、
Cr:0.0%〜10.0%、
Ni:0.0%〜1.0%かつ
残部:Fe及び不純物、
で表される化学組成を有し、
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子が10μm2あたりに5個以上であり、
{100}結晶方位強度が2.4以上であり、
厚さが0.15mm〜0.30mmであり、
平均結晶粒径が25μm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
Q=[Si]+2[Al]−[Mn] (式1)
R=[P]×[X1] (式2)
(2)
前記化学組成において、
Sn:0.02%〜0.40%、若しくは
Cu:0.1%〜1.0%、
又はこれらの両方が満たされることを特徴とする(1)に記載の無方向性電磁鋼板。
(3)
前記化学組成において、
Cr:0.2%〜10.0%
が満たされることを特徴とする(1)又は(2)に記載の無方向性電磁鋼板。
(4)
前記化学組成において、
Ni:0.1%〜1.0%
が満たされることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の無方向性電磁鋼板。
本発明によれば、化学組成、厚さ及び平均結晶粒径が適切であるため、磁気特性に優れ、かつ強度が優れた無方向性電磁鋼板を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
先ず、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板及びその製造に用いる溶鋼の化学組成について説明する。詳細は後述するが、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、溶鋼の鋳造及び熱間圧延又は溶鋼の急速凝固、冷間圧延、並びに仕上げ焼鈍等を経て製造される。従って、無方向性電磁鋼板及び溶鋼の化学組成は、無方向性電磁鋼板の特性のみならず、これらの処理を考慮したものである。以下の説明において、無方向性電磁鋼板又は溶鋼に含まれる各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、C:0.0030%以下、Si:2.00%〜4.00%、Al:0.10%〜3.00%、Mn:0.10%〜2.00%、P:0.005%〜0.200%、S:0.0030%以下、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計で0.005%〜0.200%、Si含有量(質量%)を[Si]、Al含有量(質量%)を[Al]、Mn含有量(質量%)を[Mn]としたときに式1で表されるパラメータQ:2.00以上、P含有量(質量%)を[P]、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上の総計を[X1]としたときに式2で表されるパラメータR:0.0001以上、Sn:0.00%〜0.40%、Cu:0.0%〜1.0%、Cr:0.0%〜10.0%、Ni:0.0%〜1.0%、かつ残部:Fe及び不純物で表される化学組成を有している。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
Q=[Si]+2[Al]−[Mn] (式1)
R=[P]×[X1] (式2)
(C:0.0030%以下)
Cは、鉄損を高めたり、磁気時効を引き起こしたりする。従って、C含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、C含有量が0.0030%超で顕著である。このため、C含有量は0.0030%以下とする。C含有量の低減は、板面内の全方向における磁気特性の均一な向上にも寄与する。
(Si:2.00%〜4.00%)
Siは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減したり、降伏比を増大させて、鉄心への打ち抜き加工性を向上したりする。Si含有量が2.00%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Si含有量は2.00%以上とする。一方、Si含有量が4.00%超では、磁束密度が低下したり、硬度の過度な上昇により打ち抜き加工性が低下したり、冷間圧延が困難になったりする。従って、Si含有量は4.00%以下とする。
(Al:0.10%〜3.00%)
Alは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減する。Alは、飽和磁束密度に対する磁束密度B50の相対的な大きさの向上にも寄与する。ここで、磁束密度B50とは、5000A/mの磁場における磁束密度である。Al含有量が0.10%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Al含有量は0.10%以上とする。一方、Al含有量が3.00%超では、磁束密度が低下したり、降伏比を低下させて、打ち抜き加工性を低下させたりする。従って、Al含有量は3.00%以下とする。
(Mn:0.10%〜2.00%)
Mnは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減する。Mnが含まれると、一次再結晶で得られる集合組織が、板面に平行な面が{100}面の結晶(以下、「{100}結晶」ということがある)が発達したものになりやすい。{100}結晶は、板面内の全方向における磁気特性の均一な向上に好適な結晶である。また、Mn含有量が高いほど、MnSの析出温度が高くなり、析出してくるMnSが大きなものとなる。このため、Mn含有量が高いほど、仕上げ焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害する粒径が100nm程度の微細なMnSが析出しにくい。Mn含有量が0.10%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Mn含有量は0.10%以上とする。一方、Mn含有量が2.00%超では、仕上げ焼鈍において結晶粒が十分に成長せず、鉄損が増大する。従って、Mn含有量は2.00%以下とする。
(P:0.005%〜0.200%)
Pは、後述するリン親和元素と反応してリン化物又は酸リン化物として析出し、強度を高める上で必要な元素である。P含有量が0.005%未満では、リン化物又は酸リン化物が不足して、強度を高める効果が得られない。また、P含有量が0.200%を超えると、加工性が低下するため、P含有量は0.005%〜0.200%とする。
(S:0.0030%以下)
Sは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される。Sは、微細なMnSの析出により、仕上げ焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害する。従って、S含有量は低ければ低いほどよい。このような鉄損の増加は、S含有量が0.0030%超で顕著である。このため、S含有量は0.0030%以下とする。
(Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計で0.005%〜0.200%)
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdは、溶鋼の鋳造又は急速凝固時に溶鋼中のSと反応して硫化物若しくは酸硫化物又はこれらの両方の析出物を生成する。しかし、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdとPが多いと、硫化物若しくは酸硫化物を生成した後に、リン化物又は酸リン化物を生成する。以下、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdを総称して「リン親和元素」ということがある。リン親和元素の析出物の粒径は通常1μm〜2μm程度であるが、凝固時の冷却速度を上げるとリン化物若しくは酸リン化物は1μm以下の微細析出物となる。このため、これら微細析出物が材料強度を飛躍的に上昇させる。しかも、この析出物は再度鉄が溶融する温度まで安定なため、熱安定性が非常に高い。リン親和元素の含有量が総計で0.005%未満では、これらの作用効果を安定して得ることができない。従って、リン親和元素の含有量は総計で0.005%以上とする。一方、リン親和元素の含有量が総計で0.200%超では、強度が上がるが、脆くなり、高速回転する素材には不向きとなる。従って、リン親和元素の含有量は総計で0.200%以下とする。
(パラメータQ:2.00以上)
式1で表されるパラメータQが2.00未満では、フェライト−オーステナイト変態(α−γ変態)が生じ得るため、溶鋼の鋳造又は急速凝固に際し、一旦生成した柱状晶がα−γ変態により壊されたり、平均結晶粒径が小さくなったりする。また、仕上げ焼鈍時にα−γ変態が生じることもある。このため、パラメータQが2.00未満では、所望の磁気特性が得られない。従って、パラメータQは2.00以上とする。また、パラメータQが2.00以上であればα−γ変態は生じないため、上限値は設定しない。
(パラメータR:0.0001以上)
リン親和元素は主に硫化物として析出されるが、リン親和元素を多く含むと、硫化物以外にリン化物又は酸リン化物もしくはその両方を析出させることができる。式2で表されるパラメータRが0.0001未満では、リン親和元素のリン化物又は酸リン化物が生成しづらく、強度が不足してしまう。したがって、式2で表されるパラメータRは0.0001以上とする。また、パラメータRが0.0001以上であればリン親和元素のリン化物又は酸リン化物は生成可能なため、上限値は設定しない。
Sn、Cu、Ni、及びCrは、必須元素ではなく、無方向性電磁鋼板に所定量を限度に適宜含有されていてもよい任意元素である。
(Sn:0.00%〜0.40%、Cu:0.0%〜1.0%、Ni:0.0%〜1.0%)
Sn、Cu、及びNiは、磁気特性の向上に好適な結晶を一次再結晶で発達させる。このため、Sn、Cu、若しくはNi、又はこれらの2種以上が含まれると、板面内の全方向における磁気特性の均一な向上に好適な{100}結晶が発達した集合組織が一次再結晶で得られやすい。Snは、仕上げ焼鈍時の鋼板の表面の酸化及び窒化を抑制したり、結晶粒の大きさのばらつきを抑制したりする。従って、Sn、Cu、若しくはNi、又はこれらの2種以上が含有されていてもよい。これらの作用効果を十分に得るために、好ましくは、Sn:0.02%以上、Cu:0.1%以上若しくはNi:0.0%〜1.0%又はこれらの2種以上とする。一方、Snが0.40%超では、上記作用効果が飽和して徒にコストが高くなったり、仕上げ焼鈍において結晶粒の成長が抑制されたりする。従って、Sn含有量は0.40%以下とする。Cu及びNi含有量が1.0%超では、鋼板が脆化し、熱間圧延及び冷間圧延が困難になったり、仕上げ焼鈍の焼鈍ラインの通板が困難になったりする。従って、Cu及びNi含有量は1.0%以下とする。
(Cr:0.0%〜10.0%)
Crは、高周波鉄損を低減する。高周波鉄損の低減は回転機の高速回転化に寄与し、高速回転化は回転機の小型化及び高効率化に寄与する。Crは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、高周波鉄損等の鉄損を低減する。Crは、応力感受性を低下させ、鉄心を形成する際に導入される圧縮応力に伴う磁気特性の低下及び高速回転時に作用する圧縮応力に伴う磁気特性の低下の軽減にも寄与する。従って、Crが含有されていてもよい。これらの作用効果を十分に得るために、好ましくは、Cr:0.2%以上とする。一方、Cr含有量が10.0%超では、磁束密度が低下したり、コストが高くなったりする。従って、Cr含有量は10.0%以下とする。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の集合組織について説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、{100}結晶方位強度が2.4以上である。{100}結晶方位強度が2.4未満では、磁束密度の低下及び鉄損の増加が生じたり、板面に平行な方向間での磁気特性のばらつきが生じたりする。なお、{100}強度は高ければ高いほど良いため、上限は特に定めない。{100}結晶方位強度は、X線回折法又は電子線後方散乱回折(electron backscatter diffraction:EBSD)法により測定することができる。X線及び電子線の試料からの反射角等が結晶方位毎に異なるため、ランダム方位試料を基準にしてこの反射強度等で結晶方位強度を求めることができる。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板におけるリン化物及び酸リン化物の析出物について説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、リン化物又は酸リン化もしくはその両方の析出物のうち、径が1μm未満となる粒子が10μm2あたり5個以上存在する。リン化物又は酸リン化物の1μm未満の粒子は、1000℃程度の温度であっても安定して存在するため、熱安定性に非常に優れ、10万rpmという高速回転においても高強度を維持できる。リン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子が10μm2あたり5個未満だと、十分な強度が得られない。多い分には高強度により寄与するため、上限は特に定めないが、効果が飽和することから150個未満が望ましい。また、リン化物又は酸リン化物もしくはその両方が1μm以上となると多くの数を析出させることが技術的に困難となり、高強度化しづらくなる。そのため、粒子径を1μm未満にする必要がある。
上記の析出物の観察は、例えば鋼板の断面を化学研磨若しくは電解研磨を行い走査型電子顕微鏡(SEM)で行うことが出来る。本発明においては、100〜3000nmの粒子を観察し、かつEDSで成分同定を行う。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径について説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径は25μm以下である。平均結晶粒径が25μm超では、鉄損W3/10000が高く、十分な強度が得られない。ここで、鉄損W3/10000とは、0.3Tの磁束密度、10000Hzの周波数における鉄損である。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の厚さについて説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の厚さは、例えば0.15mm以上0.30mm以下である。厚さが0.30mm超であると、優れた高周波鉄損を得ることができない。従って、厚さは0.30mm以下とする。厚さが0.15mm未満であると、安定性が低い無方向性電磁鋼板の表面における磁気特性が、安定性が高い内部における磁気特性よりも支配的になる。また、厚さが0.15mm未満であると、仕上げ焼鈍の焼鈍ラインの通板が困難になったり、一定の大きさの鉄心に必要とされる無方向性電磁鋼板の数が増加して、工数の増加に伴う生産性の低下及び製造コストの上昇が引き起こされたりする。従って、厚さは0.15mm以上とする。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板の磁気特性及び機械特性について説明する。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、例えば、リング磁気測定での磁束密度B50:1.61T以上、かつ、鉄損W3/10000:無方向性電磁鋼板の厚さをt(mm)と表したときに150×[0.10+0.90×{0.1×(t/0.20)+0.9×(t/0.20)2}]W/kg以下で表される磁気特性を呈することができる。
リング磁気測定では、無方向性電磁鋼板から採取したリング状の試料、例えば外径が5インチ(12.70cm)、内径が4インチ(10.16cm)のリング状の試料を励磁し、磁束を試料の全周に流す。リング磁気測定により得られる磁気特性は、板面内の全方向の構造を反映したものとなる。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上降伏強度(YP)が500MPa以上の機械特性を得ることができる。
ここで、機械特性はJISに記載の方法で試験を行うことができる。用いる試験片は、鋼板の圧延方向に試験片の平行部を合わせたJIS5号試験片である。
次に、実施形態に係る無方向性電磁鋼板の第1の製造方法について説明する。この第1の製造方法では、溶鋼の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼鈍等を行う。
溶鋼の鋳造及び熱間圧延では、上記化学組成を有する溶鋼の鋳造を行ってスラブ等の鋼塊を作製し、この熱間圧延を行って、スラブ等の鋼塊における柱状晶を出発鋳造組織とした熱延結晶組織の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得る。
柱状晶は、無方向性電磁鋼板の磁気特性、特に板面内の全方向における磁気特性の均一な向上に望ましい{100}<0vw>集合組織を有する。{100}<0vw>集合組織とは、板面に平行な面が{100}面で圧延方向が<0vw>方位の結晶が発達した集合組織である(v及びwは任意の実数である(v及びwがともに0である場合を除く)。柱状晶の割合が80%未満では、仕上げ焼鈍によって{100}結晶が発達した集合組織を得ることができない。従って、柱状晶の割合は80%以上とする。柱状晶の割合は顕微鏡観察で特定することができる。第1の製造方法において、柱状晶の割合を80%以上とするためには、例えば、凝固時の鋳片の一方の表面と他方の表面との間の温度差を40℃以上とする。この温度差は、鋳型の冷却構造、材質、モールドテーパー、モールドフラックス等により制御することができる。このような柱状晶の割合が80%以上となる条件で溶鋼を鋳造した場合、リン親和元素が1μm以下のリン化物若しくは酸リン化物を生成し、強度を上げることが出来る。
熱延鋼帯の平均結晶粒径が小さいほど、結晶粒の数が多く、結晶粒界の面積が広い。仕上げ焼鈍の再結晶では、結晶粒内及び結晶粒界から結晶が成長するところ、結晶粒内から成長する結晶は磁気特性に望ましい{100}結晶であるのに対し、結晶粒界から成長する結晶は{111}<112>結晶等の磁気特性に望ましくない結晶である。従って、熱延鋼帯の平均結晶粒径が大きいほど、仕上げ焼鈍にて磁気特性に望ましい{100}結晶が発達しやすく、特に熱延鋼帯の平均結晶粒径が0.1mm以上の場合に、優れた磁気特性が得やすい。従って、熱延鋼帯の平均結晶粒径は0.1mm以上とする。熱延鋼帯の平均結晶粒径は、熱間圧延の開始温度及び巻取温度等により調整することができる。開始温度を900℃以下、かつ巻取温度を650℃以下とした場合、熱延鋼帯に含まれる結晶粒は未再結晶で圧延方向に延伸した結晶粒となるため、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯が得られる。
リン親和元素は、製鋼工程における鋳造前の最後の鍋の底に投入しておき、当該鍋にリン親和元素以外の元素を含んだ溶鋼を注入し、溶鋼中にリン親和元素を溶解させることが好ましい。これにより、リン親和元素を溶鋼から飛散しにくくすることができ、また、リン親和元素とPとの反応を促進することができる。製鋼工程における鋳造前の最後の鍋は、例えば連続鋳造機のタンディッシュ直上の鍋である。リン親和元素のリン化物若しくは酸リン化物は凝固時の冷却速度を早くすると微細かつ多く出すことが出来る。そのためには例えばモールドと溶鋼の温度差を大きくする、鋳造速度を早くする、鋳造厚を薄くする等がある。
冷間圧延の圧下率を90%超とすると、仕上げ焼鈍の際に、磁気特性の向上を阻害する集合組織、例えば{111}<112>集合組織が発達しやすい。従って、冷間圧延の圧下率は90%以下とする。冷間圧延の圧下率を40%未満とすると、無方向性電磁鋼板の厚さの精度及び平坦度の確保が困難になることがある。従って、冷間圧延の圧下率は好ましくは40%以上とする。
仕上げ焼鈍により、一次再結晶及び結晶粒の成長を生じさせ、平均結晶粒径を25μm以下とする。この仕上げ焼鈍により、板面内の全方向における磁気特性の均一な向上に好適な{100}結晶が発達した集合組織が得られる。仕上げ焼鈍では、例えば、保持温度を800℃以上900℃以下とし、保持時間を10秒間以上60秒間以下とする。
仕上げ焼鈍の通板張力を3MPa超とすると、異方性を有する弾性歪が無方向性電磁鋼板内に残存しやすくなる。異方性を有する弾性歪は集合組織を変形させるため、{100}結晶が発達した集合組織が得られていても、これが変形し、板面内における磁気特性の均一性が低下してしまう。従って、仕上げ焼鈍の通板張力は3MPa以下とする。仕上げ焼鈍の950℃〜700℃における冷却速度を1℃/秒超とした場合も、異方性を有する弾性歪が無方向性電磁鋼板内に残存しやすくなる。従って、仕上げ焼鈍の950℃〜700℃における冷却速度は1℃/秒以下が好ましい。
このようにして、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造することができる。仕上げ焼鈍の後に、塗布及び焼き付けにより絶縁被膜を形成してもよい。
次に、実施形態に係る無方向性電磁鋼板の第2の製造方法について説明する。この第2の製造方法では、溶鋼の急速凝固、冷間圧延、仕上げ焼鈍等を行う。
溶鋼の急速凝固では、上記化学組成を有する溶鋼を、移動更新する冷却体の表面で急速凝固させ、柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得る。
第2の製造方法において、柱状晶の割合を80%以上とするためには、例えば、溶鋼の移動更新する冷却体の表面に注入する温度を凝固温度よりも25℃以上高める。特に溶鋼の温度を凝固温度よりも40℃以上高めた場合には、柱状晶の割合をほぼ100%にすることができる。このような柱状晶の割合が80%以上となる条件で溶鋼を凝固させた場合、リン親和元素が1μm以下のリン化物若しくは酸リン化物を生成し、強度を上げることが出来る。
第2の製造方法においても、鋼帯の平均結晶粒径は0.1mm以上とする。鋼帯の平均結晶粒径は、急速凝固時において冷却体の表面に注入する際の溶鋼の温度や冷却体の表面での冷却速度等により調整することができる。
急速凝固に際し、リン親和元素は、製鋼工程における鋳造前の最後の鍋の底に投入しておき、当該鍋にリン親和元素以外の元素を含んだ溶鋼を注入し、溶鋼中にリン親和元素を溶解させることが好ましい。これにより、リン親和元素を溶鋼から飛散しにくくすることができ、また、リン親和元素とPとの反応を促進することができる。製鋼工程における鋳造前の最後の鍋は、例えば急速凝固させる鋳造機のタンディッシュ直上の鍋である。リン親和元素のリン化物若しくは酸リン化物は凝固時の冷却速度を早くすると微細かつ多く出すことが出来る。そのためには例えばモールドと溶鋼の温度差を大きくする、鋳造速度を早くする、鋳造厚を薄くする等がある。
冷間圧延及び仕上げ焼鈍は第1の製造方法と同様の条件で行えばよい。
このようにして、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を製造することができる。仕上げ焼鈍の後に、塗布及び焼き付けにより絶縁被膜を形成してもよい。
このような本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、優れた磁気特性及び機械特性を呈し、HEVターボチャージャー用モータ等に用いられる。また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、回転機の高効率化及び小型化にも寄与することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、実施例を示しながら具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る無方向性電磁鋼板が下記の例に限定されるものではない。
(第1の試験)
第1の試験では、表1に示す化学組成を有する溶鋼を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。表1中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。なお、冷間圧延は冷延温度50℃、冷延圧下率80%で行い、仕上げ焼鈍は、昇温速度20℃/秒で鋼帯を加熱し、900℃に到達後、15秒均熱後に空冷した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果を併せて表1に示す。
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性及び機械特性を測定した。この測定には、外径が5インチ、内径が4インチのリング試験片を用いた。つまり、リング磁気測定を行った。この結果を表1に示す。鉄損W3/10000は、式3で表される評価基準W0(W/kg)以下であれば、優れた値であることを示す。つまり、厚さが0.20mmの場合は150(W/kg)以下で優れていると評価した。また、磁束密度B50は、1.61T以上で優れていると評価した。
W0=150×[0.1+0.9×{0.1×(t/0.20)+0.9×(t/0.20)2}] (式3)
ここで、機械特性はJISに記載の方法で試験をした。用いた試験片は、鋼板の圧延方向に試験片の平行部を合わせたJIS5号試験片である。ターボチャージャーの回転に耐えうるために、YP≧500MPaを良好である基準とした。
表1に示すように、試料No.1〜No.12、No.14、No.15、No.17では、化学組成が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.13では、リン親和元素をほとんど含有しておらず、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損W3/10000が高かった。試料No.16では、リン親和元素の含有量が不足し、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損W3/10000が高かった。試料No.18では、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損W3/10000が高かった。試料No.19では、リン親和元素の含有量が不足し、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損W3/10000が高かった。
(第2の試験)
第2の試験では、表2に示す化学組成を有する溶鋼(パラメータR=0.0006)を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。なお、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。この時、製造条件を様々に変更し、{100}結晶方位強度I及びリン化物又は酸リン化物の1μm未満の粒子数が異なる無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果も併せて表2に示す。また、第1の試験と同様の手順により、鉄損W3/10000、磁束密度、及び上降伏強度(YP)も測定し、併せて表2に示す。
表2に示すように、試料No.21では、化学組成が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.22では、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数が少なすぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損3/10000が高かった。試料No.23では、{100}結晶方位強度Iが低すぎたため、磁束密度B50が低かった。
(第3の試験)
第3の試験では、表3に示す化学組成を有する溶鋼(パラメータR=0.0006)を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。表3中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。この時、凝固時の冷却速度を様々に変更し、{100}結晶方位強度I及びリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子数が異なる無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mgのリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果も併せて表3に示す。また、第1の試験と同様の手順により、鉄損W3/10000、磁束密度B50、そして500℃の時の上降伏強度(YP)も測定し、併せて表3に示す。なお、500℃の時の上降伏強度(YP)については、YP≧330MPaを良好である基準とした。
表3に示すように、試料No.31と32では、平均結晶粒径及びリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子数が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.33では、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数が少なすぎたため、500℃における上降伏強度(YP)が不足した。試料No.34では、リン化物又は酸リン化物の代替として炭化ニオブを用いて高強度化をしたが、500℃における上降伏強度(YP)が不足した。このことからリン親和元素のリン化物又は酸リン化物が耐熱性に優れていることがわかる。
(第4の試験)
第4の試験では、表4に示す化学組成を有する溶鋼を急冷凝固し、柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。表3中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。なお、冷間圧延は冷延温度50℃、冷延圧下率80%で行い、仕上げ焼鈍は、昇温速度20℃/秒で鋼帯を加熱し、900℃に到達後、15秒均熱後に空冷した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果を併せて表4に示す。また、第1の試験と同様の手順により、鉄損W3/10000、磁束密度B50、及び上降伏強度(YP)も測定し、併せて表4に示す。
表4に示すように、試料No.101〜No.112、No.114、No.115、No.117では、化学組成が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.113では、リン親和元素をほとんど含有しておらず、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損W3/10000が高かった。試料No.116では、リン親和元素の含有量が不足し、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損3/10000が高かった。試料No.118では、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損3/10000が高かった。試料No.119では、リン親和元素の含有量が不足し、パラメータRが低すぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損3/10000が高かった。
(第5の試験)
第5の試験では、表5に示す化学組成を有する溶鋼(パラメータR=0.0006)を急冷凝固し、柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。なお、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。この時、凝固時の冷却速度を変更し、{100}結晶方位強度I及びリン化物又は酸リン化物の1μm未満の粒子数が異なる無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果も併せて表5に示す。また、第1の試験と同様の手順により、鉄損W3/10000、磁束密度B50、及び上降伏強度(YP)も測定し、併せて表5に示す。
表5に示すように、試料No.121では、化学組成が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.122では、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数が少なすぎたため、上降伏強度(YP)が不足し、さらに鉄損3/10000が高かった。試料No.123では、{100}結晶方位強度Iが低すぎたため、磁束密度B50が低かった。
(第6の試験)
第6の試験では、表6に示す化学組成を有する溶鋼(パラメータR=0.0006)を急冷凝固し、柱状晶の割合が面積分率で80%以上、かつ、平均結晶粒径が0.1mm以上の鋼帯を得た。表6中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って厚さ0.20mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。この時、凝固時の冷却速度を変更し、{100}結晶方位強度I及びリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子数が異なる無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数、{100}結晶方位強度I、及び平均結晶粒径rを測定した。この結果も併せて表6に示す。また、第1の試験と同様の手順により、鉄損W3/10000、磁束密度B50、そして500℃の時の上降伏強度(YP)も測定し、併せて表6に示す。
表6に示すように、試料No.131と132では、平均結晶粒径及びリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子数が本発明の範囲内にあり、かつその他の条件が本発明の範囲内にあるため、磁気特性及び機械特性において良好な結果が得られた。
試料No.133では、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子の10μm2あたりの個数が少なすぎたため、500℃における上降伏強度(YP)が不足した。試料No.134では、リン化物又は酸リン化物の代替として炭化ニオブを用いて高強度化をしたが、500℃における上降伏強度(YP)が不足した。このことからリン親和元素のリン化物又は酸リン化物が耐熱性に優れていることがわかる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.0030%以下、
    Si:2.00%〜4.00%、
    Al:0.01%〜3.00%、
    Mn:0.10%〜2.00%、
    P:0.005%〜0.200%、
    S:0.0030%以下、
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計で0.005%〜0.200%、
    Si含有量(質量%)を[Si]、Al含有量(質量%)を[Al]、Mn含有量(質量%)を[Mn]としたときに式1で表されるパラメータQ:2.00以上、
    P含有量(質量%)を[P]、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上の総計を[X1]としたときに式2で表されるパラメータR:0.0001以上、
    Sn:0.00%〜0.40%、
    Cu:0.0%〜1.0%、
    Cr:0.0%〜10.0%、
    Ni:0.0%〜1.0%かつ
    残部:Fe及び不純物、
    で表される化学組成を有し、
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上のリン化物又は酸リン化物もしくはその両方の1μm未満の粒子が10μm2あたりに5個以上であり、
    {100}結晶方位強度が2.4以上であり、
    厚さが0.15mm〜0.30mmであり、
    平均結晶粒径が25μm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
    Q=[Si]+2[Al]−[Mn] (式1)
    R=[P]×[X1] (式2)
  2. 前記化学組成において、
    Sn:0.02%〜0.40%、若しくは
    Cu:0.1%〜1.0%、
    又はこれらの両方が満たされることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
  3. 前記化学組成において、
    Cr:0.2%〜10.0%
    が満たされることを特徴とする請求項1又は2に記載の無方向性電磁鋼板。
  4. 前記化学組成において、
    Ni:0.1%〜1.0%
    が満たされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板。
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