JP2019167505A - 成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】形状精度の高い成形体を提供する。【解決手段】エラストマーを100質量部、及び繊維状物質を0.01質量部以上30質量部以下含む組成物の成形体である。かかる成形体は、成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得た散乱像において、散乱ベクトル(q)の大きさが0.3nm-1以上0.5nm-1以下の範囲内にて、散乱強度(I)の値が最大となる位置(PImax)を決定し、散乱像の散乱中心から位置(PImax)に向かう方向を方位角0°として、方位角0°、90°における散乱ベクトル(q)の大きさ0.4nm-1に対応する散乱強度I0、I90をそれぞれ求めた場合に、I0及びI90が、I0/I90≦2.0を満たすものである。【選択図】なし

Description

本発明は、成形体に関するものであり、特に、エラストマー及び繊維状物質を含み、繊維状物質の配向の異方性が低い成形体に関するものである。
従来、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する)等の繊維状物質及び樹脂を含む組成物を成形して成形体を形成するに当たり、成形体の機械特性等の特定の性状を高めるために、成形体中においてCNTを配向させることが試みられてきた。例えば、特許文献1では、成形体の機械特性を高める目的で、熱可塑性樹脂及び単層CNTを含む組成物を用いて成形体を製造するに当たり、単層CNTを成形体の長手方向に対して平行に配向させることが開示されている。
また、従来、熱可塑性樹脂及び任意のフィラー(例えば、CNT等)を含む組成物を用いてチューブ状の成形体を形成するにあたり、熱可塑性樹脂を構成する高分子化合物が、チューブ状の成形体の軸方向に配向することを抑制して、軸方向への引張伸び性を高める技術が提案されてきた(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術によれば、高分子化合物のチューブ軸方向における配向性を低くすることにより、チューブの破断伸び特性を高めて、さらに、組成物中にCNTをフィラーとして配合することにより、チューブの耐破壊性を高めている。
特開2005−161599号公報 国際公開第2017/082310号
ここで、成形体の用途によっては、成形体の諸属性の中でも、形状精度が高いことが特に重要となる場合がある。しかし、上記特許文献1に開示された方途に従って得られた成形体は、単層CNTの配向方向における形状精度は高いものの、配向方向に対して交差する方向では、形状精度を十分に高めることができなかった。また、上記特許文献2に開示された方途に従って得られたチューブ状の成形体では、高分子化合物が特定方向に配合することは抑制されるものの、形状精度への寄与が高いフィラーが配向することは制御されておらず、押出し成形に際してフィラーが配向することに起因して、形状精度を十分に高めることができない虞があった。
そこで、本発明は、形状精度の高い成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、エラストマー及び繊維状物質を含む組成物を用いて形成した成形体が、所定の方法に従って小角X線散乱測定した場合の散乱像に基づいて得られる所定のパラメータが所定の条件を満足する場合に、成形体の形状精度が充分に高くなることを新たに見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の成形体は、エラストマーを100質量部、及び繊維状物質を0.01質量部以上30質量部以下含む組成物の成形体であって、前記成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得た散乱像において、散乱ベクトル(q)の大きさが0.3nm-1以上0.5nm-1以下の範囲内にて、散乱強度(I)の値が最大となる位置(PImax)を決定し、前記散乱像の散乱中心から前記位置(PImax)に向かう方向を方位角0°として、方位角0°における散乱ベクトル(q)の大きさ0.4nm-1に対応する散乱強度I0、方位角90°における散乱ベクトル(q)の大きさ0.4nm-1に対応する散乱強度I90、をそれぞれ求めた場合に、I0及びI90が、I0/I90≦2.0を満たす、ことを特徴とする。所定の方法に従って小角X線散乱測定した場合の散乱像に基づいて得られるI0/I90の値が2以下であれば、形状精度が充分に高い。
ここで、「繊維状」とは、アスペクト比(長さ/直径)が、10超であることを意味する。なお、繊維状物質のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状物質100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
ここで、本発明の成形体では、前記繊維状物質が繊維状炭素ナノ構造体を含むことが好ましく、更に、かかる繊維状炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含むことがより好ましい。繊維状物質が繊維状炭素ナノ構造体を含んでいれば、成形体の機械強度を高めることができる。さらに、繊維状炭素ナノ構造体が単層カーボンナノチューブを含んでいれば、成形体の機械強度を一層高めることができる。
また、本発明の成形体では、前記エラストマーが、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及び共役ジエン系ゴムより選択される少なくとも一種を含んでいても良い。得られる成形体の用途に応じて所望の属性を付与することができるからである。
さらにまた、本発明の成形体では、前記エラストマーが架橋物であることが好ましい。前記エラストマーが架橋物であれば、得られる成形体に耐久性等の所望の属性を付与することができるからである。
本発明によれば、形状精度の高い成形体を提供することができる。
図1は、成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得ることができる散乱像の一例を概略的に示す図である。 配向度パラメータI0/I90の値の算出方法を説明するための概略図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ここで、本発明に係る成形体は、高い形状精度が必要とされる用途(例えば、Oリング、パッキン、ガスケット、Dリング、Xリング、角リング、異形品、及び精密電子機器のゴム成形品等)に好適に用いることができる。
(成形体)
本発明の成形体は、エラストマー及び繊維状物質を含む組成物を所望の形状に成形して得ることができる。本発明の成形体は、エラストマーを100質量部、及び繊維状物質を0.01質量部以上30質量部以下含む組成物の成形体であって、成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得た散乱強度分布に基づく配向度パラメータI0/I90が2以下であることを特徴とする。かかる成形体は、形状精度に優れる。これは、配向度パラメータI0/I90の値が2以下の値であるような成形体は、繊維状物質の配向異方性に起因する収縮率差が小さいことに起因すると推察される。概して、配向配置された繊維状物質を含む成形体(即ち、繊維状物質の配向異方性を有する成形体)では、繊維状物質が配向している方向(配向方向)では成形体が収縮しにくく、配向方向に対して交差する方向では配向方向と比較して成形体が収縮し易い傾向がある。成形体の配向度パラメータI0/I90の値が2以下である場合には、繊維状物質の配向異方性が充分に低く、配向方向とそれ以外の方向における成形体の収縮率の差が充分に小さくなるため、成形体の形状精度を高めることができる。また、成形体の少なくとも一つの表面の方向において収縮率差が小さければ、成形体の強度のムラが小さくなり、さらに、疲労特性が高まりうる。
ここで、図1〜図2を参照して、小角X線散乱測定により得られた散乱像を用いた配向度パラメータI0/I90の算出方法について説明する。図1は、成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得ることができる散乱像の一例を概略的に示す図である。被測定表面に対して該表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定した場合には、被測定表面方向における物質の配向性を解析することができる。本発明者の検討により、散乱像内における散乱ベクトル(q)が0.3nm-1以上0.5nm-1以下の範囲内の散乱強度分布が、被測定表面方向における繊維状物質の配向性の解析に有利に使用可能であることが明らかとなった。
図1に示す概略的な散乱像を参照すると、散乱ベクトル(q)の大きさが0.3nm-1以上0.5nm-1以下である範囲に、2箇所の明色表示領域を含んでいる。なお、図1では明瞭のために、二重線(白抜き)を用いて散乱ベクトル(q)の大きさが0.3nm-1以上0.5nm-1以下である範囲を明示する。よって、かかる二重線内の白抜き領域は「高輝度領域」に相当するものではない。図1に示す散乱像を呈する成形体は、直線上に存在する2箇所の明色表示領域を含むため、繊維状物質が一つの方向に沿って配向してなる、配向異方性を有する成形体であると判断することができる。なお、本発明の成形体は、繊維状物質の配向異方性が低い、或いは、繊維状物質が実質的に無配向であることを特徴とするものであるが、本説明では、上記配向度パラメータI0/I90の算出方法の理解を容易とする観点から、図1のような、配向異方性を有する成形体を測定した際に得られうる散乱像の概略図を参照している。なお、配向異方性を全く有さない成形体を測定対象とした場合には、全領域における散乱強度が同じ値となるため、図1に示すような明色表示領域は測定ノイズを除いて一切検出されない。図1の概略図に示された上下2箇所の明色表示領域において、散乱強度(I)が位置(PImax)にて最大となるものとする。そこで、散乱像上における散乱中心Pcから位置(PImax)に向かう方向を方位角0°とし、さらにかかる方位角0°の方向に対して垂直な方向を方位角90°とする。そして、上記した散乱強度I0及びI90を算出するにあたり、図2に示すように、方位角0°及び90°のそれぞれの場合について、各方向を中心として20°の積分区間(IT0,IT90)をそれぞれ設定する。そして、設定した各積分区間(IT0,IT90)について、散乱ベクトル(q)の大きさが0.4nm-1のときの散乱強度Iの積分値(I0,I90)をそれぞれ求める。このようにして求められた散乱強度(I0,I90)の値から、配向度パラメータI0/I90を算出することができる。
成形体に含まれる繊維状物質の配向異方性が高い場合には、繊維状物質の配向方向における散乱強度の値(即ち、I0)が、配向方向に対して直交する方向の散乱強度の値(即ち、I90)よりも、顕著に高くなる。このため、I0/I90を算出した場合に、2.0を超える値となる。なお、配向異方性を全く有さない成形体を測定対象とした場合には、I0=I90となり、I0/I90=1となると想定される。従って、I0/I90の下限値は、1でありうる。
なお、本発明の成形体の形状は、シート状、棒状、筒状、及びその他の任意の形状であり得る。上記のようにして配向度パラメータを算出するための小角X線散乱測定にあたり、測定試料の厚みは、X線が透過可能な程度の厚みである必要がある。よって、厚みの厚い成形体については、元の成形体に含まれていた少なくとも一つの表面を残しつつ、用いる小角X線散乱測定装置に応じた適切な厚みに切り出した試料を用いて測定を行う必要がある。
また、上記測定を行う成形体の「少なくとも一つの表面」は、例えば、成形体がシート状成形体の場合には、少なくとも一つの主面でありうる。なお、主面とは、成形体における主要な表面及び裏面の双方を意味し、かかる表面及び裏面はシート厚み分の距離を隔てて対向してなる。また、成形体がその他の形状である場合には、上記測定を行う成形体の「少なくとも一つの表面」は、成形体の成形表面であり得る。「成形表面」とは、任意の形状に成形するための成形工程において、金型等の成形具に接していた表面を意味する。成形体が成形後に切断されてなる形状である場合には、切断面は「成形表面」に該当しない。成形体の表面が「成形表面」に相当するか否かは、表面を、顕微鏡等を用いて拡大観察することにより判定することができる。
以下、成形体の形成に用い得るエラストマー及び繊維状物質を含む組成物、及びかかる組成物を用いた成形体の製造方法について詳述する。
<エラストマー>
エラストマーとしては、特に限定されることなく、成形体の形成に用いられる既知のエラストマーを用いることができる。具体的には、エラストマーとしては、例えば、天然ゴム;アクリルゴム;ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びイソプレンゴム等の共役ジエン系ゴム;ニトリルゴム(NBR、アクリロニトリルブタジエンゴム);水素化ニトリルゴム(H−NBR、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム);フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム(FEPM)等のフッ素ゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;シリコーンゴム;並びにエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、エラストマーとしては、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、アクリルゴム、及び共役ジエン系ゴムが好ましく、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、及びフッ素ゴムがより好ましい。得られる成形体の用途に応じて所望の属性を付与することができるからである。
<繊維状物質>
繊維状物質は成形体中において、成形体の強度及び形状保持性能等を高めるように機能する所謂補強材(フィラー)としての機能を担うものである。繊維状物質としては、セルロースナノファイバー、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、及びそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、繊維状物質としては、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。カーボンナノチューブなどの繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、成形体の機械強度等の物性を向上させることができるからである。
ここで、繊維状物質として好適に使用し得る、カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)のみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、成形体の機械強度等の物性を更に向上させることができるからである。
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、成形体中にて良好に分散配置させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、成形体の物性を更に向上させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、600m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることが更に好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記下限値以上であれば、成形体の物性を更に向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が上記上限値以下であれば、成形体中にて良好に分散配置させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。中でも、CNTの開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、成形体の物性を更に向上させることができる。
ここで、一般に、吸着とは、ガス分子が気相から固体表面に取り去られる現象であり、その原因から、物理吸着と化学吸着に分類される。そして、t−プロットの取得に用いられる窒素ガス吸着法では、物理吸着を利用する。なお、通常、吸着温度が一定であれば、繊維状炭素ナノ構造体に吸着する窒素ガス分子の数は、圧力が大きいほど多くなる。また、横軸に相対圧(吸着平衡状態の圧力Pと飽和蒸気圧P0の比)、縦軸に窒素ガス吸着量をプロットしたものを「等温線」といい、圧力を増加させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「吸着等温線」、圧力を減少させながら窒素ガス吸着量を測定した場合を「脱着等温線」という。
そして、t−プロットは、窒素ガス吸着法により測定された吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得られる。即ち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する試料では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、t−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、上に凸な形状を示すt−プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt−プロットの形状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0を満たす範囲にあることが更に好ましい。t−プロットの屈曲点の位置が上記範囲内にあると、繊維状炭素ナノ構造体の特性が更に向上するため、成形体の物性を更に向上させることができる。
ここで、「屈曲点の位置」とは、t−プロットにおける、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が、0.05以上であることが好ましく、0.06以上であることがより好ましく、0.08以上であることが更に好ましく、0.30以下であることが好ましい。S2/S1が0.05以上0.30以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の特性を更に向上させることができるので、成形体の物性を更に向上させることができる。
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、および、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル社製)を用いて行うことができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、2nm以上であることが好ましく、2.5nm以上であることが更に好ましく、60nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記範囲内であれば、成形体の物性を更に向上させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましく、3σ/Avが0.50超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが特に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、成形体の物性を更に向上させることができる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、上述した性状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
<<繊維状物質の含有量>>
繊維状物質の含有量は、エラストマー100質量部に対して、0.01質量部以上30質量部以下であることが好ましい。繊維状物質の含有量は、所望の機械的強度及び成形体の用途等に応じて適宜調節することができる。より好ましくは、繊維状物質の含有量は、エラストマー100質量部に対して1質量部以上であり得る。繊維状物質の含有量が上記下限値以上であれば、繊維状物質の低配向異方性に起因する成形体の形状精度向上効果を一層良好に発揮することができる。
<その他>
なお、本発明の成形体を形成するために用いることができる組成物は、任意で、繊維状物質以外のフィラー、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤等の既知の添加剤を更に含有していても良い。
<<添加剤>>
フィラーとしては、特に限定されることなく、シリカ粒子等の粒子状無機材料及びカーボンブラック等の粒子状炭素材料を用いることができる。
また、架橋剤としては、特に限定されることなく、上述したようなエラストマーを架橋可能な既知の架橋剤を用いることができる。より具体的には、架橋剤としては、例えば、硫黄及びその誘導体を用いることができる。
また、架橋助剤としては、特に限定されることなく、例えば亜鉛華及びステアリン酸などを用いることができる。
これらの添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、添加剤の配合量は、所望の効果の発現が阻害されない限り、任意の量とすることができる。
<組成物の調製>
なお、組成物は、例えば、上述したエラストマーと、繊維状物質と、任意成分である添加剤とを、所望の配合比で混合または混練することにより調製することができる。
具体的には、組成物は、特に限定されることなく、任意の方法に従って調製することができる。一例としては、エラストマーと繊維状物質との混合物(マスターバッチ)を得た後、得られた混合物(マスターバッチ)と任意成分である添加剤とを混練することにより、組成物を調製することができる。
そして、エラストマーと繊維状物質との混合物(マスターバッチ)の調製は、エラストマー中に繊維状物質を分散させることが可能な任意の混合方法を用いて行うことができる。具体的には、上記マスターバッチは、特に限定されることなく、有機溶媒にエラストマーを溶解させてなるエラストマー溶液または分散媒にエラストマーを分散させてなるエラストマー分散液に対し、繊維状物質を添加し、更に高速乳化分散装置や湿式ジェットミルなどを用いて繊維状物質を分散処理してスラリーを調製した後、得られたスラリーとしての分散処理液から有機溶媒または分散媒を除去することにより調製することができる。なお、溶媒または分散媒の除去には、例えば凝固法、キャスト法または乾燥法を用いることができる。或いは、マスターバッチの調製に際して、溶媒を用いることなく、エラストマーと繊維状物質とを、後述するような既知の混練方法により直接混練することも勿論可能である。
さらに、上記のようにして得られたマスターバッチに対して、任意で添加剤を添加して混練りする際には、例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などを用いることができる。混練条件は、繊維状物質を適度に分散させることができるように適宜調節することができる。
<成形体の架橋>
さらに、上記のようにして得られた混練物(組成物)を所望形状に成形し、架橋物とすることが好ましい。成形体を架橋物とすることで、得られる成形体に耐久性等の所望の属性を付与することができる。成形及び架橋の際の条件は、目的とする成形体の形状及び用いた添加剤の種類及び配合量等に応じて適宜決定することができる。例えば、成形及び架橋時の温度は140℃〜250℃、圧力は1MPa〜20MPa、時間は1分間〜180分間とすることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、成形体中の繊維状物質の配向度パラメータ、成形体の収縮率は、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
<配向度パラメータ>
実施例、比較例において作製したシート状の成形体の架橋物(加硫物)について、シートの列理方向を上下、反列理方向を左右とし、X線源方向とシート面とのなす角が垂直となるように成形体試料をセットし、下記条件で小角X線散乱(SAXS)測定を行った。
<<小角X線散乱測定条件>>
装置:Nano Viewer(リガク社製)
X線源:CuKα1、45kV、60mA
成形体試料から検出器までの距離:700mm
q範囲:0.064nm-1〜4nm-1
検出器:イメージングプレート(IP)上に散乱X線を照射し、IPリーダーDS3Cを用いて電子データに変換した。
<<小角X線散乱測定により得られたデータのデータ処理>>
上記に従って小角X線散乱測定して得た散乱像から、散乱ベクトル(q)の大きさが0.4nm-1付近(q=0.3〜0.5nm-1の範囲)における全方位角方向(0°〜360°)の散乱強度分布を求めた。その分布において最大強度となる方位角を0°と定義した。そして、同じ散乱像上で、上記方位角0°に対する方位角90°の方向を定めた。
次いで、上記のようにして定めた0°及び90°の方向のそれぞれについて、各方向(0°,90°)を中心として方位角20°の範囲を積分範囲(IT0,IT90)とした。換言すれば、積分範囲(IT0)は、方位角350°〜10°の範囲であり、積分範囲(IT90)は、方位角80°〜100°の範囲である。そして、各積分範囲について、散乱ベクトル(q)に対する散乱強度(I)のプロット(即ち、散乱曲線)をそれぞれ作成した。
上記に従って得られた各散乱曲線から、散乱ベクトル(q)の大きさが0.4nm-1の場合の散乱強度(I0,I90)をそれぞれ得て、配向度パラメータI0/I90の値を算出した。
なお、上記のデータ処理には汎用2次元データ処理ソフトウェア2DP(リガク社製)を用いた。
<収縮率>
実施例、比較例にて得られたシート状の架橋物である成形体(150mm×150mm×2mm)を23℃で24時間静置した後に、収縮率測定用試料として用いた。収縮率の測定にあたり、上記成形体の製造時の混練工程にて、ロールからシートを取り出した際のゴム混練物(組成物)の圧延方向を「列理方向」とし、圧延方向に対して垂直な方向を「反列理方向」とした。
試料の列理方向の長さ(L1:mm)及び反列理方向の長さ(L2:mm)を測定し、以下の式からそれぞれの収縮率及び収縮率の差を算出した。
列理方向の収縮率S1(%)=(150−L1)/150×100
反列理方向の収縮率S2(%)=(150−L2)/150×100
収縮率の差(%)=S1−S2
なお、上記に従って算出し得るシート状の成形体の列理方向及び反列理方向の収縮率の差は、下記の実施例及び比較例に従って得られたシート状の成形体の主面方向内で想定されうる最も大きな収縮率差に相当する。そして、かかる収縮率差が小さい成形体は、形状精度に優れ、精密成型が可能である。
(実施例1)
<単層カーボンナノチューブを含む繊維状炭素ナノ構造体の調製>
国際公開第2006/011655号の記載に従い、スーパーグロース法により繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブ(SGCNT)を調製した。なお、SGCNTの調製時には、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行い、アセチレンを主成分とする原料ガスを用いた。
得られたSGCNTは、主として単層CNTからなり、ラマン分光光度計での測定において、単層CNTに特長的な100〜300cm-1の低波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、BET比表面積計(日本ベル社製、BELSORP(登録商標)−max)を用いて測定したSGCNTのBET比表面積は1050m/g(未開口)であった。更に、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した100本のSGCNTの直径および長さを測定し、SGCNTの平均直径(Av)、直径の標準偏差(σ)および平均長さを求めたところ、平均直径(Av)は3.3nmであり、標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)は1.9nmであり、それらの比(3σ/Av)は0.58であり、平均長さは500μmであった。更に、日本ベル社製の「BELSORP(登録商標)−mini」を用いてSGCNTのt−プロットを測定したところ、t−プロットは、上に凸な形状で屈曲していた。そして、S2/S1は0.09であり、屈曲点の位置tは0.6nmであった。
<ゴム混練物(組成物)の調製>
[混合物(マスターバッチ)の調製]
有機溶媒としてのメチルエチルケトン1900gにエラストマーとしてのアクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、Nipol1024)100g(部)を加え、24時間撹拌してアクリロニトリルブタジエンゴムを溶解させた。
次に、得られたアクリロニトリルブタジエンゴム溶液に対し、SGCNTを8g加え、撹拌機(PRIMIX社製、ラボ・リューション(登録商標))を用いて15分間撹拌した。更に、湿式ジェットミル(吉田機械興業社製、L−ES007)を用いて、SGCNTを加えた溶液を90MPaで分散処理した(スラリー調製工程)。その後、得られた分散処理液(スラリー)を4000gのイソプロピルアルコールへ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、得られた黒色固体を60℃で12時間減圧乾燥し、アクリロニトリルブタジエンゴムとSGCNTとの混合物(マスターバッチ)を得た。
[混練]
その後、50℃のオープンロールを用いて、上記で得られた混合物(マスターバッチ;アクリロニトリルブタジエンゴム100g及びSGCNT8gを含有)108gと、架橋助剤としての亜鉛華(亜鉛華1号)5g、ステアリン酸(日油社製、商品名「ビーズステアリン酸つばき」)1g、架橋剤である325メッシュ硫黄1.5g、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD:大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTT」、架橋促進剤)0.5g、及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS:大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM」、架橋促進剤)0.5gを混練し、ロール間隔を2mmに調整した後、ゴム混練物をロールに巻き付け、左右切り返しを各3回実施後、シート出しを行うことでゴム混練物(組成物)を得た。
<シート状の架橋物(成形体)の作製>
得られた組成物を金型に投入し、温度160℃、圧力10MPaで10分間架橋させてシート状の架橋物である成形体(長さ:150mm、幅:150mm、厚さ:2mm)を得た。
そして、得られた成形体について、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例2)
<ゴム混練物(組成物)の調製>
ゴム混練物(組成物)を調製する際に、繊維状炭素ナノ構造体として多層カーボンナノチューブ(クムホ社製、商品名「K−nanos 100P」)30gを用いた。
[混合物(マスターバッチ)の調製]
20℃、ロール間隔を0.5mmに調整したオープンロールを用いて、アクリロニトリルゴム(日本ゼオン社製、Nipol1024)100gと多層カーボンナノチューブ(クムホ社製、商品名「K−nanos 100P」)30gとを混練して、混合物(マスターバッチ)を得た。
[混練]
その後、50℃のオープンロールを用いて、上記で得られた混合物(マスターバッチ;アクリロニトリルブタジエンゴム100g及び多層カーボンナノチューブ30gを含有)との混合物(マスターバッチ)130gと、架橋助剤としての亜鉛華(亜鉛華1号)5g、ステアリン酸(日油社製、商品名「ビーズステアリン酸つばき」)1g、架橋剤である325メッシュ硫黄1.5g、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD:大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーTT」、架橋促進剤)0.5g、及びジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS:大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM」、架橋促進剤)0.5gとを混練し、ロール間隔を2mmに調整した後、ゴム混練物をロールに巻き付け、左右切り返しを各3回実施後、シート出しを行うことでゴム混練物(組成物)を得た。
<シート状の架橋物(成形体)の作製>
得られたエラストマー組成物を金型に投入し、温度160℃、圧力10MPaで10分間架橋させてシート状の架橋物である成形体(長さ:150mm、幅:150mm、厚さ:2mm)を得た。
そして、得られた成形体について、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例3)
エラストマーとして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、Zetpol2020)を用い、SGCNTを10g加えた以外は実施例1と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物である成形体を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例4)
エラストマーとして水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン社製、Zetpol2020)を用い、多層カーボンナノチューブを30g加えた以外は実施例2と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例5)
エラストマーとしてフッ化ビニリデン系ゴム(FKM、ケマーズ社製、Viton GBL600S)を用い、SGCNTを4g加えた以外は実施例1と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例6)
エラストマーとしてフッ化ビニリデン系ゴム(FKM、ケマーズ社製、Viton GBL600S)を用い、多層カーボンナノチューブを15g加えた以外は実施例2と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例7)
エラストマーとしてテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム(FEPM、旭硝子社製、Aflas100S)を用い、SGCNTを4g加えた以外は実施例1と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(実施例8)
混合物(マスターバッチ)の調製にあたり、撹拌機(PRIMIX社製、ラボ・リューション(登録商標))および湿式ジェットミル(吉田機械興業社製、L−ES007)を用いた分散処理を行わず、インライン式乳化分散機(ユーロテック社製、CD1000)を用い45分間分散処理を行った以外は、実施例7と同様にして混練物を調製し、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
(比較例1)
ゴム混練物(組成物)の作製にあたり、ロール間隔を0.67mmに調整した後、ゴム混練物をロールに2分間巻き付け、即シート出しを行うことでゴム混練物を得た以外は、実施例3と同様にして、シート状の架橋物を作製した。そして、上記に従って配向度パラメータ及び収縮率を算出した。結果を表1に示す。
表1中、
「NBR」は、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)を、
「HNBR」は、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム)を、
「FKM」は、フッ化ビニリデン系ゴムを
「FEPM」は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムを
「SWCNT」は、単層カーボンナノチューブを、
「MWCNT」は、多層カーボンナノチューブを、
それぞれ示す。
Figure 2019167505
表1より、エラストマーを100質量部、及び繊維状物質を0.01質量部以上30質量部以下含む組成物の成形体であって、配向度パラメータI0/I90が2.0以下である成形体は、列理方向及び反列理方向とで収縮率の差が小さく、形状精度に優れていたことが分かる。従って、かかる成形体は、表面方向において強度のムラが少なく、且つ、疲労特性が良好であり得ることが分かる。
また、配向度パラメータI0/I90が2.0超であり繊維状物質の配向異方性を有する比較例1の成形体では、列理方向では全く収縮が生じなかったが、反列理方向にて収縮が生じたため、収縮率の差が大きく、形状精度に劣っていたことが分かる。従って、かかる成形体は、表面方向において強度のムラが大きく、且つ、疲労特性に劣ると考えられる。
本発明によれば、形状精度の高い成形体を提供することができる。
Pc 散乱中心
Imax 散乱強度(I)が最大となる位置
IT0,IT90 積分区間

Claims (5)

  1. エラストマーを100質量部、及び繊維状物質を0.01質量部以上30質量部以下含む組成物の成形体であって、
    前記成形体の少なくとも一つの表面の法線方向からX線を照射して小角X線散乱測定して得た散乱像において、散乱ベクトル(q)の大きさが0.3nm-1以上0.5nm-1以下の範囲内にて、散乱強度(I)の値が最大となる位置(PImax)を決定し、前記散乱像の散乱中心から前記位置(PImax)に向かう方向を方位角0°として、方位角0°における散乱ベクトル(q)の大きさ0.4nm-1に対応する散乱強度I0、方位角90°における散乱ベクトル(q)の大きさ0.4nm-1に対応する散乱強度I90、をそれぞれ求めた場合に、I0及びI90が、I0/I90≦2.0を満たす、
    成形体。
  2. 前記繊維状物質が、繊維状炭素ナノ構造体を含む、請求項1に記載の成形体。
  3. 前記繊維状炭素ナノ構造体が、単層カーボンナノチューブを含む、請求項2に記載の成形体。
  4. 前記エラストマーが、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及び共役ジエン系ゴムより選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜3の何れかに記載の成形体。
  5. 前記エラストマーが架橋物である、請求項1〜4の何れかに記載の成形体。
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