JP2019167078A - 負圧式倍力装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】反力部材のかじれの発生を抑制することが可能な負圧式倍力装置を提供すること。【解決手段】負圧式倍力装置100は、バルブボディ130の本体部131の内部にて入力軸141と出力軸147との間に介装された、入力軸141に対して基端の側が連結されたプランジャ142、プランジャ142の先端の側に当接するように配設された先端部材143、及び、先端部材143のプランジャ142とは反対側の先端面143aが当接する反力部材としてのリアクションディスク146と、を備えている。先端部材143における先端面143aの側の外周部には、先端部材143の線膨張係数よりも大きく、且つ、バルブボディ130の本体部131の線膨張係数以下となる線膨張係数の樹脂リング144が配設される。【選択図】図2
Description
本発明は、負圧式倍力装置に関する。
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された倍力装置が知られている。この従来の倍力装置は、ブレーキペダルに連動する入力軸がブレーキペダルの作動によって軸方向に移動すると弁プランジャが軸方向に移動し、弁プランジャの先端部がリアクションディスクに押圧されるようになっている。これにより、ブレーキペダルに対する操作に対して反力を発生させるようになっている。
しかしながら、上記従来の倍力装置(負圧式倍力装置)においては、バルブボディを形成する材質と弁プランジャ(プランジャ)を形成する材質とが異なる。この場合、一般にバルブボディの線膨張係数とプランジャの線膨張係数とは異なる。このため、バルブボディの線膨張係数がプランジャの線膨張係数よりも大きい場合、例えば、バルブボディの材質が樹脂であり、プランジャの材質が金属である場合、バルブボディの内周面とプランジャの外周面との間に設けられる隙間の大きさが低温時と高温時とで変化する。
ところで、プランジャがリアクションディスク(反力部材)を押圧することによって反力部材の一部がプランジャの側に向けて張り出した場合、特に高温時においては隙間が大きくなる。このため、反力部材の張り出した部分が隙間に入り込みやすく、その結果、プランジャによる押圧が解除された際に反力部材にかじれ(噛み込み)が生じる可能性がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、反力部材のかじれの発生を抑制することが可能な負圧式倍力装置を提供することにある。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る負圧式倍力装置の発明は、中空状のブースタシェルと、ブースタシェルの内部を負圧源に連通する定圧室、及び、負圧源又は大気との連通が可能な変圧室に気密的に区画して移動可能な可動隔壁と、ブースタシェルの変圧室と連通するように一端が接続されるとともに他端が大気に開放された筒部に対して相対移動可能に挿入されて可動隔壁とともに一体に移動する筒状のバルブボディと、バルブボディに収容されて、変圧室への負圧又は大気圧の流入を切り替える弁機構と、バルブボディの内部にて相対移動可能に設けられて操作力を入力する入力部材と、バルブボディの推進力を出力する出力部材と、バルブボディの内部にて入力部材と出力部材との間に介装された、入力部材に対して基端の側が連結されたプランジャ、プランジャの先端の側に当接するように配設された先端部材、及び、先端部材のプランジャとは反対側の先端面が当接する反力部材と、を備えた負圧式倍力装置であって、先端部材における先端面の側の外周部に、先端部材の線膨張係数よりも大きく、且つ、バルブボディの線膨張係数以下である線膨張係数の膨出部材が配設される。
これによれば、特に高温時において、膨出部材は、バルブボディに向けて先端面を有する先端部材よりも大きく膨張することができ、バルブボディの内周面との間の隙間を低温時と同等に維持することができる。これにより、負圧式倍力装置の作動時において、先端部材の先端面が反力部材を押圧することによって反力部材の一部が先端部材(プランジャ)に向けて張り出した場合であっても、隙間が大きくなることが抑制されているため、反力部材の張り出した部分は隙間に入りにくくなる。従って、先端部材(プランジャ)による押圧が解除された際に反力部材にかじれ(噛み込み)が生じることを抑制することができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態及び変形例の相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。又、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
本実施形態の負圧式倍力装置100は、図1に示すように、車両のブレーキ装置10を構成するものである。車両のブレーキ装置10は、シリンダ機構20を備えている。シリンダ機構20は、マスタシリンダ21と、マスタピストン22,23と、マスタリザーバ24と、を備えている。マスタピストン22,23は、マスタシリンダ21内に摺動可能に配設されている。マスタピストン22,23は、マスタシリンダ21内を第一マスタ室21aと第二マスタ室21bとに区画している。マスタリザーバ24は、第一マスタ室21a及び第二マスタ室21bに連通する管路を有するリザーバタンクである。マスタリザーバ24と各マスタ室21a,21bとは、マスタピストン22,23の移動により連通又は遮断される。
又、シリンダ機構20は、ホイールシリンダ25、ホイールシリンダ26、ホイールシリンダ27及びホイールシリンダ28を備えている。ホイールシリンダ25は、車両の左後輪RLに配置されている。ホイールシリンダ26は、車両の右後輪RRに配置されている。ホイールシリンダ27は、車両の左前輪FLに配置されている。ホイールシリンダ28は、車両の右前輪FRに配置されている。マスタシリンダ21と各ホイールシリンダ25〜28は、アクチュエータ30を介して接続されている。これにより、各ホイールシリンダ25〜28は、左後輪RL、右後輪RR,左前輪FL及び右前輪FRに制動力を付与する。尚、詳細な説明を省略するが、アクチュエータ30は、図示省略の管路、電動ポンプ、電磁弁及び逆止弁等から構成されている。
車両のブレーキ装置10においては、運転者がブレーキペダル11を踏み込むと、マスタシリンダ21に気密的に連結された負圧式倍力装置100により踏力が倍力され、マスタシリンダ21内のマスタピストン22,23が押圧される。これにより、第一マスタ室21a及び第二マスタ室21bに同圧のマスタシリンダ圧が発生する。マスタシリンダ圧は、アクチュエータ30を介してホイールシリンダ25〜28に伝達される。
負圧式倍力装置100は、図2に示すように、中空状のブースタシェル110を備えており、ブースタシェル110に対して、可動隔壁120及びバルブボディ130が一体に前後方向に移動可能に組み付けられている。そして、ブースタシェル110の内部は、可動隔壁120により、前方にて負圧源(例えば、図示省略のエンジンの吸気マニホールド)に連通する定圧室R1と、後方にて負圧源又は大気との連通が可能な変圧室R2と、に区画されている。
ブースタシェル110は、例えば、鉄、アルミ又は樹脂(強化プラスチック)等から形成されるフロントシェル部材111及びリアシェル部材112から構成される。フロントシェル部材111には、定圧室R1を負圧源に連通させるための負圧導入口111aが形成されている。リアシェル部材112には、バルブボディ130を軸線Jの方向に沿って前後方向に相対移動可能に挿通する筒部112aが設けられている。筒部112aは、一端が変圧室R2と連通するように接続されており、他端が大気に開放されている。負圧導入口111aには、逆止弁113が設けられている。逆止弁113は、定圧室R1の側から負圧源の側への空気の連通を許可し、負圧源の側から定圧室R1の側への空気の連通を遮断するように構成されている。
又、ブースタシェル110は、径方向の二箇所にて、フロントシェル部材111及びリアシェル部材112を気密的に貫通するタイロッドボルト114を有している。尚、図2においては、一方のタイロッドボルト114のみを示す。二本のタイロッドボルト114は、フロントシェル部材111の側にてマスタシリンダ21を支持するようになっている。このため、フロントシェル部材111の内面111bとタイロッドボルト114の拡径部114aとの間には、リテーナ115が配置されている。又、ブースタシェル110は、リアシェル部材112を気密的に貫通するリアボルト116を有している。リアボルト116は、車両の車体(例えば、カウル等)に固定されるようになっている。
可動隔壁120は、ブースタシェル110内にてバルブボディ130の軸線Jの方向に沿って前後方向に移動可能に設けられている。可動隔壁120は、環状のプレート部材121と、プレート部材121に支持される環状のダイアフラム122と、から構成されている。プレート部材121は、金属製(例えば、鉄)又は樹脂製であり、ダイアフラム122に対して前方側(フロントシェル部材111の側)にて、バルブボディ130の後述するフランジ部131aに対向するように配置される。
ダイアフラム122は、環状の弾性部材(例えば、環状のゴム材料)から形成されて伸縮変形可能となっており、外周縁がブースタシェル110(フロントシェル部材111及びリアシェル部材112)に気密的に固定され、且つ、内周縁がプレート部材121とともにバルブボディ130に気密的に固定される。具体的に、ダイアフラム122は、図2に示すように、外周ビード部122a、内周ビード部122b及びシート部122cを備えている。外周ビード部122aは、ダイアフラム122の外周縁に環状に設けられており、フロントシェル部材111とリアシェル部材112との連結部分にて気密的に挟持される。内周ビード部122bは、ダイアフラム122の内周縁に環状に設けられており、プレート部材121とともにバルブボディ130の外周面131bに気密的に固定される。シート部122cは、外周ビード部122aと内周ビード部122bとを互いに接続する。
筒状のバルブボディ130は、樹脂材料(例えば、PBT、PET)から形成されている。ここで、PBT,PETの線膨張係数は、6.0〜9.0×10−5程度である。バルブボディ130は、図2に示すように、ブースタシェル110(より具体的には、リアシェル部材112)の筒部112aに対して相対移動可能に挿入されており、可動隔壁120と一体にフロントシェル部材111に向けて前進及びリアシェル部材112に向けて後進する。バルブボディ130は、円筒状に形成された本体部131を備えている。本体部131は、前方側(一端側)の開口端部に径方向にて外方に向けて延設されたフランジ部131aを有している。本体部131は、フランジ部131aとフロントシェル部材111との間に設けられたリターンスプリングSと係合しており、リターンスプリングSによって後方に向けて付勢されている。
本体部131は、中央部分にてブースタシェル110のリアシェル部材112の筒部112aに軸線Jの方向に沿って前後方向に相対移動可能に組み付けられている。又、本体部131(即ち、バルブボディ130)のブースタシェル110(より具体的には、リアシェル部材112の筒部112a)の外に突出する部位は、蛇腹状のブーツ160によって被覆保護されている。
本体部131の内部には、一対の負圧連通路132が設けられている。尚、図2においては一方の負圧連通路132のみを示す。負圧連通路132は、前方端にてブースタシェル110の定圧室R1に連通するとともに、後方端にて本体部131の内部に連通するようになっている。又、本体部131の内部には、入力軸141とプランジャ142とが同軸になるように組み付けられるとともに、弁機構150とフィルタ部材149とが同軸になるように組み付けられている。更に、本体部131の内部には、プランジャ142の前方に、弾性部材(例えば、ゴム材料であってEPDM)からなるリアクションディスク146及び出力軸147が同軸となるように組み付けられている。ここで、EPDMの線膨張係数は、22〜23×10−5程度である。
入力部材としての入力軸141は、バルブボディ130(本体部131)の内部にて軸線Jの方向に沿って前後方向に相対移動可能に設けられて操作力を入力するものであり、球状先端部にてプランジャ142の基端の側が関節状に連結される。入力軸141は、後端に設けられた螺子部によりヨーク(図示省略)を介してブレーキペダル11に連結され、ブレーキペダル11に作用する踏力を操作力として前方に向けて受けるように構成されている。又、入力軸141は、弁機構150に係合しているスプリングによって後方に向けて付勢されている。
プランジャ142は、金属材料(例えば、鉄、アルミ等)から棒状に形成されている。プランジャ142の先端の側には、先端部材143が設けられている。これにより、プランジャ142は、先端部材143を介して反力部材としてのリアクションディスク146における後面の中央部分を押圧する。
先端部材143は、プランジャ142によって押圧されることにより、プランジャ142とは反対側の先端面143aが反力部材としてのリアクションディスク146に当接する。先端部材143は、図1及び図2に示すように、金属材料(例えば、鉄、アルミ等)から円柱状に形成されており、プランジャ142との当接部分には円筒状の脚部が設けられている。尚、脚部は、先端部材143がリアクションディスク146を押圧する際のストロークの大きさを調整するものである。先端部材143の先端面143aの側の外周部には、樹脂リング144を支持するための支持段部143bが形成されている。
膨出部材としての樹脂リング144は、先端部材143の線膨張係数よりも大きく且つバルブボディ130の本体部131の線膨張係数以下となる線膨張係数を有する樹脂材料から円環状に形成されている。ここで、本実施形態においては、樹脂リング144は、バルブボディ130の本体部131の線膨張係数(例えば、6.0〜9.0×10−5程度)と同一の線膨張係数を有する樹脂材料(例えば、本体部131を形成するPBT、PET)から円環状に形成される。
先端部材143の周方向に沿って連続となる環状の樹脂リング144は、図2及び図3に示すように、先端部材143の支持段部143bに組み付けられている。図3に示すように、樹脂リング144の外径の大きさは、想定される負圧式倍力装置100の使用温度域において、高温時に膨張した際に先端部材143の外径とほぼ同一となるように、先端部材143の外径の大きさに比べて若干小さくなるように設定されている。又、図3に示すように、樹脂リング144の軸線Jに沿った方向における幅の大きさは、高温時に膨張した際に先端部材143の先端からリアクションディスク146の側に突出しないように、支持段部143bの軸線Jに沿ったにおける幅の大きさに比べて若干小さくなるように設定されている。即ち、樹脂リング144は、温度変化が生じた場合において、バルブボディ130の本体部131の内周面との隙間が一定となるように外径が設定され、且つ、先端部材143の先端からリアクションディスク146に向けて突出しないように幅が設定される。
又、プランジャ142は、中央部分に形成された環状の溝部においてキー部材145に係合する。尚、キー部材145は、バルブボディ130の本体部131に対するプランジャ142の前後方向への移動を規制する機能と、ブースタシェル110に対するバルブボディ130の後方への移動限界位置(バルブボディ130の後方復帰位置)を規定する機能を有する部材である。更に、プランジャ142は、後端部に、弁機構150における環状の大気弁座が設けられている。
リアクションディスク146は、出力軸147の後方円筒部147aに収容されて、出力軸147の後方円筒部147aとともにバルブボディ130の本体部131に組み付けられている。リアクションディスク146は、後方円筒部147aに収容された状態で先端部材143によって押圧されると、後面の中央部分が前方に向けて膨出変形するとともに、先端部材143によって押圧されない周縁部分が後方に向けて即ち先端部材143に向けて張り出すように変形するようなっている。
出力部材としての出力軸147は、バルブボディ130の推進力を出力するものであり、図示を省略するが、先端部においてマスタシリンダ21のマスタピストン22,23を押動するようになっている。又、出力軸147は、制動作動時において、マスタシリンダ21のマスタピストン22,23から受ける反力をリアクションディスク146に伝達するようになっている。ここで、プランジャ142、先端部材143、樹脂リング144及びリアクションディスク146は、バルブボディ130の本体部131の内部にて、入力軸141と出力軸147との間に介装される。
弁機構150は、バルブボディ130の内部に配設されて、変圧室R2への負圧又は大気圧の流入を切り替える。弁機構150は、バルブボディ130の本体部131における負圧連通路132の後端部に一体に形成された負圧弁座と、プランジャ142の後端部に一体に形成された大気弁座と、を備えている。又、弁機構150は、大気弁座に対して同軸となるように配置された筒状の弁体151を備えている。弁体151は、環状の取付部と、取付部に一体に形成されて軸線Jの方向に沿って移動可能な筒状の可動部と、を有している。弁体151の取付部は、バルブボディ130の本体部131内に気密的に組み付けられており、円環部材148によって本体部131に保持されている。
弁体151の可動部は、負圧弁座に対して着座又は離座することにより、負圧弁座とともに定圧室R1と変圧室R2との間を連通又は遮断する負圧弁を構成する負圧制御弁部を有する。又、弁体151の可動部は、大気弁座に対して着座又は離座することにより、大気弁座とともに変圧室R2と大気との間を連通又は遮断する大気弁を構成する大気制御弁部を有する。
又、負圧式倍力装置100は、リアシェル部材112の筒部112aの内周面112bとバルブボディ130の本体部131の外周面131bとの間に介装された周状のシール部材170を備えている。シール部材170は、筒部112aにおいて、変圧室R2と大気との連通を遮断する。
このように構成された負圧式倍力装置100においては、運転者がブレーキペダル11を踏み込み操作すると、入力軸141及びプランジャ142が、バルブボディ130の本体部131に対して図2に示す位置(原位置であり復帰非作動位置)から前方に移動する。このとき、プランジャ142は、先端部材143を介して、リアクションディスク146を押圧する。これにより、リアクションディスク146は、先端部材143を介してプランジャ142に反力を付与し、その結果、運転者はブレーキペダル11の踏み込み操作に対して適切な大きさの反力を知覚する。
又、プランジャ142が前方に移動することにより、負圧制御弁部が負圧弁座に着座するとともに大気弁座が大気制御弁部から離座し、変圧室R2は大気に連通する。従って、変圧室R2には、フィルタ部材149、弁体151の内部、大気弁座との隙間、本体部131に設けられた連通路等を通して、大気が流入する。その結果、定圧室R1の圧力が大きくなるように定圧室R1と変圧室R2との間に圧力差が発生し、入力軸141の前方への作動に伴って可動隔壁120が前方に(フロントシェル部材111、即ち、本体部131のフランジ部131aに向けて)移動する。
この場合、可動隔壁120は、バルブボディ130の本体部131に設けられたフランジ部131aと係合することにより、バルブボディ130の本体部131とともに前方に(フロントシェル部材111に向けて)移動する。これにより、出力軸147は前方に(フロントシェル部材111に向けて)移動してマスタシリンダ21のマスタピストン22,23を押圧し、マスタシリンダ圧がアクチュエータ30を介してホイールシリンダ25〜28に伝達される。
一方、運転者によってブレーキペダル11に対する踏み込み操作が解除されると、入力軸141、プランジャ142及び先端部材143が、バルブボディ130の本体部131に対して図2に示す復帰非作動位置(原位置)に戻る。入力軸141、プランジャ142及び先端部材143が復帰非作動位置(原位置)に戻ると、大気制御弁部が大気弁座に着座し、負圧制御弁部が負圧弁座から離座する。この場合、変圧室R2と大気との連通が遮断され、且つ、定圧室R1と変圧室R2とが連通することにより、変圧室R2は負圧源に連通する。
そして、この場合には、バルブボディ130の本体部131に設けられた連通路、負圧制御弁部と負圧弁座との隙間、負圧連通路132等を通して、変圧室R2から定圧室R1に空気が吸引される。その結果、変圧室R2の圧力と定圧室R1の圧力とは等しくなるので、リターンスプリングSの付勢力によって可動隔壁120及びバルブボディ130が後方に移動し、プランジャ142及び先端部材143とともに出力軸147が後方に移動する。これにより、出力軸147によるマスタシリンダ21のマスタピストン22,23の押圧が解除され、マスタシリンダ圧が減少する。
ところで、本実施形態において、先端部材143には、バルブボディ130の本体部131と同一の線膨張係数を有する樹脂材料から形成された樹脂リング144が装着されている。これにより、例えば、車両のエンジンルーム内の温度が上昇し、負圧式倍力装置100の温度が上昇した場合、バルブボディ130(本体部131)と樹脂リング144とは同一の線膨張係数によって膨張する。これにより、図4に示すように、温度上昇に伴って本体部131の内径が一点鎖線により示す状態から大きくなる(膨張する)場合であっても、樹脂リング144は本体部131の膨張に合わせて外径が大きくなる(膨張する)。
従って、負圧式倍力装置100の温度が上昇した場合であっても、本体部131の内周面と樹脂リング144の外周面との間の隙間は、ほぼ一定に保たれる。これにより、負圧式倍力装置100の温度が上昇してリアクションディスク146が軟化し、且つ、先端部材143の先端面143aが樹脂リング144とともにリアクションディスク146を押圧した場合であっても、軟化したリアクションディスク146の一部が隙間に向けて入り込むことを抑制することができる。従って、特に、高温時において、リアクションディスク146に、所謂、かじれが生じことを抑制することができる。
又、樹脂リング144は温度上昇に伴って等方的に膨張するため、図4に示すように、軸線Jの方向に沿った方向にも膨張して幅が大きくなる。ここで、先端部材143に設けられた支持段部143bの軸線Jに沿った方向の段差幅の大きさは、樹脂リング144の軸線Jに沿った方向の幅の大きさに対して大きく設定されている(図3を参照)。従って、負圧式倍力装置100の温度が上昇した場合であっても、図4に示すように、樹脂リング144は軸線Jの方向に沿った方向において先端部材143の先端面143aから突出しない。これにより、先端部材143の先端面143aが樹脂リング144とともにリアクションディスク146を押圧する際の押圧面積は温度上昇に拘わらず一定に保たれるため、図5に示すように、リアクションディスク146が発生する反力特性は常に一定となる。
以上の説明からも理解できるように、中空状のブースタシェル110(フロントシェル部材111及びリアシェル部材112)と、ブースタシェル110の内部を負圧源(例えば、エンジンの吸気マニホールド)に連通する定圧室R1、及び、負圧源又は大気との連通が可能な変圧室R2に気密的に区画して移動可能な可動隔壁120と、ブースタシェル110の変圧室R2と連通するように一端が接続されるとともに他端が大気に開放された筒部112aに対して相対移動可能に挿入されて可動隔壁120とともに一体に移動する筒状のバルブボディ130と、バルブボディ130の本体部131に収容されて、変圧室R2への負圧又は大気圧の流入を切り替える弁機構150と、バルブボディ130の本体部131の内部にて相対移動可能に設けられて操作力を入力する入力部材としての入力軸141と、バルブボディ130の推進力を出力する出力部材としての出力軸147と、バルブボディ130の本体部131の内部にて入力軸141と出力軸147との間に介装された、入力軸141に対して基端の側が連結されたプランジャ142、プランジャ142の先端の側に当接するように配設された先端部材143、及び、先端部材143のプランジャ142とは反対側の先端面143aが当接する反力部材としてのリアクションディスク146と、を備えた負圧式倍力装置であって、先端部材143における先端面143aの側の外周部に、先端部材143の線膨張係数よりも大きく、且つ、バルブボディ130の本体部131の線膨張係数以下である線膨張係数の膨出部材としての樹脂リング144が配設される。
これによれば、特に高温時において、樹脂リング144は、バルブボディ130に向けて先端面143aを有する先端部材143よりも大きく膨張することができ、バルブボディ130の本体部131の内周面との間の隙間を低温時と同等に維持することができる。これにより、負圧式倍力装置100の作動時において、先端部材143の先端面143aがリアクションディスク146を押圧することによってリアクションディスク146の一部が先端部材143(プランジャ142)に向けて張り出した場合であっても、隙間が大きくなることが抑制されている。従って、リアクションディスク146の張り出した部分は隙間に入りにくくなり、先端部材143(プランジャ142)による押圧が解除された際にリアクションディスク146にかじれ(噛み込み)が生じることを抑制することができる。
この場合、樹脂リング144は、先端部材143の外周部に設けられた支持段部143bに固定される。
これによれば、樹脂リング144を支持段部143bに固定することができ、負圧式倍力装置100の作動時において樹脂リング144の脱落を防止することができる。又、温度変化が生じた場合、特に、高温時において、先端面143aから膨張した樹脂リング144がリアクションディスク146に向けて突出することを抑制することができる。これにより、リアクションディスク146に対して先端部材143の先端面143aが確実に当接(押圧)することができて、リアクションディスク146による反力特性を適切に維持することができる。
又、これらの場合、樹脂リング144は、先端部材143の周方向に沿って連続に配設される。
これによれば、樹脂リング144を円環状(環状)とすることができ極めて容易に樹脂リング144を先端部材143に組み付ける(装着する)ことができ、負圧式倍力装置100の組み立て作業性を向上することができる。
又、これらの場合、バルブボディ130と樹脂リング144とは、線膨張係数が同一である。
これによれば、温度変化に対してバルブボディ130と樹脂リング144とは、同様に拡径する方向に膨張することができるため、より確実に隙間の大きさを維持することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、膨出部材として、先端部材143の周方向に沿って連続した環状(円環状)の樹脂リング144を設けるようにした。これに代えて、図6に示すように、膨出部材として、先端部材143の周方向に沿って不連続、例えば、先端部材143の周方向に沿って等間隔に離間した樹脂チップ180を複数設けることも可能である。この場合においても、樹脂チップ180は、上記実施形態における樹脂リング144と同様に、バルブボディ130(本体部131)と同様の線膨張係数を有することにより、特に高温時においてはバルブボディ130(本体部131)と同様に膨張して、リアクションディスク146のかじれを抑制することができる。尚、この場合、不連続に配置された樹脂チップ180同士の間隔は、軟化して変形容易となったリアクションディスク146がバルブボディ130の本体部131の内周面と先端部材143の外周面との間の隙間に張り込まない程度の大きさに設定される。これによっても、リアクションディスク146のかじれを抑制することができるとともに、必要な部材量を少なくすることができてコスト低減や軽量化を達成することができる。
又、上記実施形態においては、バルブボディ130の本体部131を形成する樹脂材料と樹脂リング144を形成する樹脂材料とを同一の材料とすることにより、先端部材143の線膨張係数よりも大きく且つ本体部131の線膨張係数以下となるようにした。これに代えて、先端部材143の線膨張係数よりも大きく且つバルブボディ130(本体部131)の線膨張係数以下となる線膨張係数であれば、本体部131を形成する樹脂材料と樹脂リング144を形成する樹脂材料とを異ならせることも可能である。
又、上記実施形態においては、先端部材143を、支持段部143bを軸線Jの方向に沿って平行となるように設けるようにした。これに代えて、図7に示すように、支持段部143bを軸線Jに対して角度を有して入力軸141側が縮径するようにテーパ状に設けて、樹脂リング144を脱落しないように支持するようにすることも可能である。この場合、樹脂リング144の内周面は、支持段部143bと係合するように軸線Jに対して角度を有するようにテーパ状に形成される。又、樹脂リング144を先端部材143の支持段部143bに固定するために、支持段部143bの外周面にねじ部を形成するとともに、樹脂リング144の内周面に支持段部143bのねじ部に螺合するねじ部を形成することも可能である。尚、これらの場合においても、樹脂リング144の外径及び幅は、先端部材143の外径よりも小さく且つ支持段部143bの幅よりも小さく設定される。
又、上記実施形態においては、樹脂リング144の軸線を含む平面における断面形状を矩形状とした。これに代えて、樹脂リング144の断面形状については、矩形状に限定されず、多角形状及び楕円状(円形状)とすることも可能である。
更に、上記実施形態においては、先端部材143のリアクションディスク146に対向する先端面143aを平面とした。この場合、所望の反力特性を得るために、図8に示すように先端面143aがリアクションディスク146に向けて突出した曲面を有することも可能である。このように、先端部材143の先端面143aを曲面とした場合には、先端部材143とリアクションディスク146との間の接触面積(押圧面積)が徐々に大きくなるため、図9に示すように、急峻に反力が立ち上がるジャンプ荷重とストロークの変化に応じて一様に反力が変化するサーボ域との間が曲線によって結ばれる反力特性を得ることができる。
10…ブレーキ装置、11…ブレーキペダル、20…シリンダ機構、21…マスタシリンダ、21a…第一マスタ室、21b…第二マスタ室、22,23…マスタピストン、24…マスタリザーバ、25〜28…ホイールシリンダ、30…アクチュエータ、100…負圧式倍力装置、110…ブースタシェル、111…フロントシェル部材、111a…負圧導入口、111b…内面、112…リアシェル部材、112a…筒部、112b…内周面、112c…フランジ部、113…逆止弁、114…タイロッドボルト、114a…拡径部、115…リテーナ、116…リアボルト、120…可動隔壁、121…プレート部材、122…ダイアフラム、122a…外周ビード部、122b…内周ビード部、122c…シート部、130…バルブボディ、131…本体部、131a…フランジ部、131b…外周面、132…負圧連通路、141…入力軸、142…プランジャ、143…先端部材、143a…先端面、143b…支持段部、144…樹脂リング(膨出部材)、145…キー部材、146…リアクションディスク(反動部材)、147…出力軸、147a…後方円筒部、148…円環部材、149…フィルタ部材、150…弁機構、151…弁体、160…ブーツ、170…シール部材、180…樹脂チップ(膨出部材)、R1…定圧室、R2…変圧室、J…軸線、FL…左前輪、FR…右前輪、RL…左後輪、RR…右後輪、S…リターンスプリング
Claims (5)
- 中空状のブースタシェルと、
前記ブースタシェルの内部を負圧源に連通する定圧室、及び、前記負圧源又は大気との連通が可能な変圧室に気密的に区画して移動可能な可動隔壁と、
前記ブースタシェルの前記変圧室と連通するように一端が接続されるとともに他端が大気に開放された筒部に対して相対移動可能に挿入されて前記可動隔壁とともに一体に移動する筒状のバルブボディと、
前記バルブボディに収容されて、前記変圧室への負圧又は大気圧の流入を切り替える弁機構と、
前記バルブボディの前記内部にて相対移動可能に設けられて操作力を入力する入力部材と、
前記バルブボディの推進力を出力する出力部材と、
前記バルブボディの前記内部にて前記入力部材と前記出力部材との間に介装された、前記入力部材に対して基端の側が連結されたプランジャ、前記プランジャの先端の側に当接するように配設された先端部材、及び、前記先端部材の前記プランジャとは反対側の先端面が当接する反力部材と、を備えた負圧式倍力装置であって、
前記先端部材における前記先端面の側の外周部に、前記先端部材の線膨張係数よりも大きく、且つ、前記バルブボディの線膨張係数以下である線膨張係数の膨出部材が配設された、負圧式倍力装置。 - 前記膨出部材は、前記先端部材の前記外周部に設けられた支持段部に固定される、請求項1に記載の負圧式倍力装置。
- 前記膨出部材は、前記先端部材の周方向に沿って連続、又は、前記先端部材の前記周方向に沿って不連続に配設される、請求項1又は請求項2に記載の負圧式倍力装置。
- 前記バルブボディと前記膨出部材とは、前記線膨張係数が同一である、請求項1乃至請求項3のうちの何れか一項に記載の負圧式倍力装置。
- 前記先端部材の前記先端面は、前記反力部材に向けて突出した曲面を有する、請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の負圧式倍力装置。
Priority Applications (1)
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JP2018058722A JP2019167078A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 負圧式倍力装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Family Applications (1)
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JP2018058722A Pending JP2019167078A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 負圧式倍力装置 |
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JP (1) | JP2019167078A (ja) |
-
2018
- 2018-03-26 JP JP2018058722A patent/JP2019167078A/ja active Pending
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