JP4590119B2 - 負圧ブースタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,自動車のブレーキマスタシリンダの倍力作動のために用いられる負圧ブースタに関し,特に,ブースタシェルに,その内部を負圧源に連なる前側の負圧室と後側の作動室とに区画するブースタピストンを収容し,このブースタピストンに連設される弁筒に,この弁筒に設けられたガイド孔に前後方向摺動自在に嵌合する弁ピストンと,この弁ピストンに前端部を連結する入力杆と,弁ピストン及び弁筒間で入力杆の前後動に応じて作動室を負圧室と大気とに連通切換えする制御弁と,弁筒に,それを直径方向に貫通すると共に弁ピストンの頸部を跨いで取り付けられ,ブースタシェルに形成された第1ストッパに当接して弁筒の後退限を規定し,また前記頸部の前端に連なる第2ストッパを受け止めて弁筒に対する弁ピストンの後退限を規定する,一対の脚片からなる二股状のキー部材とを備える負圧ブースタの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
かゝる負圧ブースタは,例えば実開昭63−37464号公報に開示されているように,既に知られている。
【0003】
上記公報に開示された負圧ブースタでは,キー部材の抜け止めのために,弁筒に,キー部材の両脚片の先端間に進入する突出部を形成すると共に,この突出部に係合する突起を両脚片の先端に形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように,キー部材の抜け止めのために,弁筒に,キー部材の両脚片の先端間に進入する突出部を特別に形成するものでは,弁筒の構造が複雑化して,その成形が困難となる。
【0005】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,弁筒の構造を複雑にすることなく,二股状のキー部材を弁筒の定位置に確実に保持し得るようにした,前記負圧ブースタを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,ブースタシェルに,その内部を負圧源に連なる前側の負圧室と後側の作動室とに区画するブースタピストンを収容し,このブースタピストンに連設される弁筒に,この弁筒に設けられたガイド孔に前後方向摺動自在に嵌合する弁ピストンと,この弁ピストンに前端部を連結する入力杆と,弁ピストン及び弁筒間で入力杆の前後動に応じて作動室を負圧室と大気とに連通切換えする制御弁と,該弁筒に,それを直径方向に貫通すると共に弁ピストンの頸部を跨いで取り付けられ,ブースタシェルに形成された第1ストッパに当接して弁筒の後退限を規定し,また前記頸部の前端に連なる第2ストッパを受け止めて弁筒に対する弁ピストンの後退限を規定する,一対の脚片からなる二股状のキー部材とを備える負圧ブースタにおいて,前記作動室と前記制御弁との間を連通するポートを,弁筒を直径線に沿って横切って前記作動室に開口する横孔と,前記ガイド孔の内周に形成されて前記横孔を前記制御弁に連通する複数の軸方向溝とで構成し,この横孔にキー部材の前記一対の脚片を挿入し,これら一対の脚片の互いに反対方向を向く外側面の長手方向中間部に,弁筒の前記軸方向溝の内周面に対向する位置決め凸部をそれぞれ形成して,これら位置決め凸部の頂面間距離を弁筒の前記横孔の横幅よりも大きく設定し,頂面間距離を狭めながら前記横孔に挿入した前記脚片の位置決め凸部の両端面を,弁筒の前記軸方向溝の内周面との対向位置で前記脚片の復元力をもって弁筒の前記軸方向溝の内周面に嵌合したことを第1の特徴する。
【0007】
尚,前記第1ストッパは,本発明の後述する実施例における係止環9に対応し,前記第2ストッパはストッパ面19aに対応し,前記ポートは第2ポート29に対応する。
【0008】
この第1の特徴によれば,キー部材の両脚片の位置決め凸部と弁筒の内周面との当接により,キー部材を弁筒の定位置に保持することができ,したがって弁筒の構造を特別複雑化しないで済み,その成形を容易に行うことができる。しかも,キー部材を弁筒の定位置にガタを無く保持することができて,振動騒音の発生を防ぐことができる。
【0009】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記脚片の前記外側面に,前記位置決め凸部の両端に連なる凹部を形成し,それら凹部によって位置決め凸部の両端面を円弧に形成したことを第2の特徴する。
【0010】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記位置決め凸部の弁筒内周面との嵌合位置を超えてキー部材が弁筒に押入されると,前記頸部の外周面に当接して両脚片間を開くカム面を両脚片の相対向する内側面に形成したことを第3の特徴する。
【0011】
この第3の特徴によれば,もし,キー部材が上記嵌合位置を越えて弁筒に押し込まれようとすると,カム面が頸部の外周面により押し広げられ,それに伴い両脚片が位置決め凸部を軸方向溝の内周面に強く押圧することになり,その結果,キー部材の前記定位置からの行き過ぎを確実に防ぐことができる。
【0012】
【実施例の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明に係るシングル型負圧ブースタを入力杆の休止状態で示す縦断面図,図2は図1の2部拡大図(図3の2−2線断面図),図3は図2の3−3線断面図,図4は図3の4−4線断面図,図5は図3の5−5線断面で示す,倍力作用説明図,図6は図5に対応した倍力解除過程説明図である。
【0014】
先ず,図1及び図2において,負圧ブースタBのブースタシェル1は,対向端を相互に結合する前後一対のシェル半体1a,1bとから構成される。その前部シェル半体1aの前壁には,複数の取り付けボルト6を介してブレーキマスタシリンダMのシリンダボディMaが取り付けられ,後部シェル半体1bは,複数本の支持ボルト7を介して自動車の車室前壁Fに固着される。
【0015】
ブースタシェル1の内部は,それに前後往復動可能に収容されるブースタピストン4と,その後面に重ねて結着されると共に両シェル半体1a,1b間に挟止されるダイヤフラム5とにより,前側の負圧室2と後側の作動室3とに区画される。負圧室2は,負圧導入管14を介して負圧源V(例えば内燃機関の吸気マニホールド内部)と接続される。
【0016】
ブースタピストン4は鋼板により環状に成形されており,このブースタピストン4及びダイヤフラム5の中心部に合成樹脂製の弁筒10が一体的に結合される。この弁筒10は,後部シェル半体1bの中心部に後方へ突設された支持筒部12にシールリップ付き軸受部材13を介して摺動自在に支承される。支持筒部12には,シールリップ付き軸受部材13の前端面を押さえる環状の押さえ板8が嵌合されると,この押さえ板8を固定する係止環9が係止される。
【0017】
弁筒10内には,弁ピストン18,この弁ピストン18に連結する入力杆20,及びこの入力杆20の前後動に応じて作動室3を負圧室2と大気とに連通切換えする制御弁38とが配設される。
【0018】
弁ピストン18は,弁筒10に設けられたガイド孔11に摺動自在に嵌合されるもので,その前端には頸部19を介して反力ピストン17が,また後端にはフランジ状の大気導入弁座31がそれぞれ形成される。その大気導入弁座31を囲繞するように同心配置される環状の負圧導入弁座30が弁筒10に形成される。
【0019】
弁ピストン18には,大気導入弁座31の後端面に開口する連結孔18aが設けられ,この連結孔18aに入力杆20の球状前端部20aが嵌合されると共に,その抜け止めのために弁ピストン18の一部がかしめられる。こうして入力杆20は弁ピストン18に首振り可能に連結される。
【0020】
また弁筒10には,前記負圧導入弁座30及び大気導入弁座31と協働する共通一個の弁体34が取り付けられる。この弁体34は全体がゴム等の弾性材で成形されたもので,環状の取り付けビード部34bと,この取り付けビード部34bから前方に延びる伸縮筒部34cと,この伸縮筒部34cの前端から半径方向外方に張り出したフランジ状の弁部34aとからなっており,その弁部34aには,その内周側から環状の補強板44が挿入され,モールド結合される。また弁部34aの外周には,後方へ屈曲した環状のシールリップ37が一体に形成される。
【0021】
取り付けビード部34bは,負圧導入弁座30と共に弁筒10の内周側に一体に形成された環状隆起部10aの後端に当接する前後一対の弁ホルダ35A,35B間に挟持され,その際,後部の弁ホルダ35Bは,Oリング43を介して弁筒10の内周面に嵌合される。また弁部34aは大気導入弁座31及び負圧導入弁座30に着座可能に対向して配置される。
【0022】
弁部34aの補強板44と入力杆20との間には,弁部34aを両弁座30,31との着座方向へ付勢する弁ばね36が縮設される。而して,上記負圧導入弁座30,大気導入弁座31,弁体34及び弁ばね36によって制御弁38が構成される。
【0023】
後部の弁ホルダ35Bと入力杆20との間には入力戻しばね41が縮設され,これによって前後の弁ホルダ35A,35Bが弁筒10の環状隆起部10a後端に当接,保持されると共に,入力杆20が後退方向へ付勢される。
【0024】
弁筒10内周の環状隆起部10aには,負圧導入弁座30を囲繞する前部環状室45Aが形成され,該室45Aに弁部34aの前面が臨む。前部環状室45Aの半径方向外側の内周面は負圧導入弁座30よりも後方へ延びており,その内周面に弁部34a外周のシールリップ37が摺動可能に密接する。したがって,前部環状室45Aは,弁部34aが負圧導入弁座30に着座したとき閉じられるようになっている。
【0025】
さらに環状隆起部10aに内側には,シールリップ37付き弁部34aによって,弁部34aの背面が臨む後部環状室45Bが画成される。
【0026】
弁筒10には第1及び第2ポート28,29が設けられる。第1ポート28は,横断面が弁筒10の外周面に沿った円弧状をなして一対設けられ,それらの軸方向一端は負圧室2に,他端は前部環状室45Aにそれぞれ開口する。
【0027】
第2ポート29は,前記ガイド孔11の前端の底部側で弁筒10を直径線に沿い横切って作動室3に開口する,弁筒10の軸方向に偏平な横孔29aと,ガイド孔11の内周に形成されて上記横孔29aを制御弁38の負圧導入弁座30及び大気導入弁座31間に連通する複数の軸方向溝29bとで構成される。この第2ポート29は,また,環状隆起部10aの根元に形成された,弁筒10の軸線と平行な連通孔47を介して後部環状室45Bとも連通する。
【0028】
前記後部シェル半体1bの支持筒部12の後端と入力杆20とに,弁筒10を被覆する伸縮可能のブーツ40の両端が取り付けられ,このブーツ40の後端部に,前記弁体34の内側に連通する大気導入口39が設けられる。この大気導入口39に流入する空気を濾過するフィルタ42が入力杆20の外周面と弁筒10の内周面との間に介裝される。このフィルタ42は,入力杆20及び弁筒10の相対移動を阻害しないよう,柔軟性を有する。
【0029】
さらにまた弁筒10には,ブースタピストン4及び弁ピストン18の後退限を規定するキー部材50が一定距離の範囲で軸方向移動可能に取り付けられる。
【0030】
図2〜図4に示すように,キー部材50は厚肉の鋼板製で,一対の脚片50a,50aの基端部を連結部50bを介して相互に一体に連結してなる二股状のもので,その両脚片50a,50aの互いに反対方向を向く外側面の長手方向中間部には,頂面が平坦な位置決め凸部51,51と,各位置決め凸部51の両端に連なる凹部52,52とが形成され,それら凹部52,52によって位置決め凸部51の両端面は円弧に形成される。また両脚片50a,50aの相対向する内側面には,その長手方向中間部で,両脚片50a,50aの間隔を急激に狭める円弧状のカム面53,53が形成される。
【0031】
このキー部材50は,弁筒10の前記横孔29aに嵌合しながら,両端部を弁筒10の外周面から所定長さ突出させる長さを有する。また両脚片50a,50aの位置決め凸部51,51の頂面間距離Aは,前記横孔29aの横幅Bより大きく設定されていて,位置決め凸部51,51の両端面は前記軸方向溝29bの内周面に嵌合するようになっている。位置決め凸部51,51の両端面が軸方向溝29bの内周面に嵌合したとき,両脚片50a,50aは,弁ピストン18及び反力ピストン17間の頸部19を跨ぐと共に,カム面53,53を頸部19の外周面に当接させるようになっている。
【0032】
而して,ブースタピストン4の後退時,弁筒10の外周面から突出したキー部材50の両端部が前記係止環9(本発明の第1ストッパに対応)の前面に当接することにより,ブースタピストン4の後退限が規定され,またキー部材50が頸部19の前端に連なるストッパ面19a(本発明の第2ストッパに対応)を受け止めることにより,弁筒10に対する弁ピストン18の後退限が規定される。
【0033】
弁筒10の横孔29aの軸方向幅は,キー部材50の板厚より大きく設定されていて,弁筒10とキー部材50とが僅かに相対移動ができるようになっており,また頸部19の軸方向長さはキー部材50の板厚より大きく設定されていて,弁ピストン18とキー部材50とが僅かに相対移動ができるようになっている。
【0034】
さらにまた弁筒10には,前方に突出する作動ピストン15と,この作動ピストン15の中心部を貫通する小径シリンダ孔16とが設けられ,この小径シリンダ孔16に前記反力ピストン17が摺動自在に嵌合される。作動ピストン15の外周にはカップ体21が摺動自在に嵌合され,このカップ体21には作動ピストン15及び反力ピストン17に対向する偏平な弾性ピストン22が充填される。その際,反力ピストン17及び弾性ピストン22間には,負圧ブースタBの非作動時に一定の間隙ができるようになっている。
【0035】
カップ体21の前面には出力杆25が突設され,この出力杆25は前記ブレーキマスタシリンダMのピストンMbに連接される。
【0036】
以上において,作動ピストン15,反力ピストン17,弾性ピストン22及びカップ体21は,出力杆25の出力の一部を入力杆20にフィードバックする反力機構24を構成する。
【0037】
カップ体21及び弁筒10の前端面にリテーナ26が当接するように配設され,このリテーナ26とブースタシェル1の前壁との間にブースタピストン4及び弁筒10を後退方向へ付勢するブースタ戻しばね27が縮設される。
【0038】
次にこの実施例の作用について説明する。
【0039】
負圧ブースタBの休止状態では,図2及び図4に示すように,弁筒10に取り付けられたキー部材50が後部シェル半体1bの係止環9の前面に当接することによりブースタピストン4を後退限に保持し,またこのキー部材50が頸部19の前端に連なるストッパ面19aを受け止めることにより弁ピストン18を後退限に保持する。このとき,大気導入弁座31は弁体34の弁部34aに密着しながら,この弁部34aを押圧して負圧導入弁座30から僅かに離座させている。これによって大気導入口39及び第2ポート29間の連通が遮断される一方,第1及び第2ポート28,29間が連通され,したがって負圧室2の負圧が両ポート28,29を通して作動室3に伝達し,両室2,3は同圧となっているため,ブースタピストン4及び弁筒10はブースタ戻しばね27の付勢力により後退位置に保持される。
【0040】
いま,車両を制動すべくブレーキペダルPを踏み込むことにより,入力戻しばね41のセット荷重に抗して入力杆20を弁ピストン18と共に前進させると,図5に示すように,弁ばね36の付勢力が伸縮筒部34cを伸ばしながら弁部34aを負圧導入弁座30に着座させると同時に,大気導入弁座31が弁体34から離れ,これにより第1及び第2ポート28,29間の連通が遮断されると共に,第2ポート29が弁体34の内側を通して大気導入口39と連通される。
【0041】
その結果,大気導入口39から弁筒10内に流入した大気が大気導入弁座31を通過し,第2ポート29を経て作動室3に導入され,作動室3を負圧室2より高圧にするので,それらの気圧差に基づく前方推力を得てブースタピストン4は,弁筒10,作動ピストン15,弾性ピストン22,カップ体21及び出力杆25を伴いながらブースタ戻しばね27の力に抗して前進し,出力杆25によりブレーキマスタシリンダMのピストンMbを駆動するようになる。この駆動に伴い生ずる反力により弾性ピストン22が圧縮されて,その一部を小径シリンダ孔16に膨出させるが,その膨出部が反力ピストン17の前面に当接するまでは,上記反力は入力杆20に伝わらないので,出力杆25の出力は急速に立ち上がるジャンピング特性を示す。
【0042】
このような入力杆20の前進操作時には,弁筒10の前部環状室45Aに臨む弁部34aの前面には,第1ポート28から前部環状室45Aに伝達する負圧が作用するのに対して,弁筒10の後部環状室45Bに臨む弁部34aの背面には,第2ポート29から連通孔47を介して後部環状室45Bに伝達する大気圧が作用するので,弁部34aは,弁ばね36のセット荷重による他,前部及び後部環状室45A,45B間の気圧差によっても負圧導入弁座30との着座方向へ付勢されることになる。したがって,上記気圧差による付勢力分,弁ばね36のセット荷重を低減することが可能となり,それに伴い入力杆20を後退方向へ付勢する入力戻しばね41のセット荷重の低減も可能となり,その結果,比較的小さい初期操作入力によりジャンピング特性が得られるので,ブレーキマスタシリンダM及び各車輪ブレーキの無効ストロークを素早く排除して,各車輪ブレーキの応答性を高めることができる。
【0043】
またこの状態において,弁部34a外周のシールリップ37は,後方に屈曲して,弁筒10の内周面に密接しているので,前部及び後部環状室45A,45B間の気圧差により,上記内周面への密接力が高められ,両環状室45A,45B間の気密を確保することができる。
【0044】
弾性ピストン22が反力ピストン17に当接してからは,出力杆25の作動反力の一部が弾性ピストン22を介して入力杆20にフィードバックされることになるので,操縦者は出力杆25の出力の大きさを感受することができる。そして出力杆25の出力は,弾性ピストン22に当接する作動ピストン15及び反力ピストン17の受圧面積の比によって定まる倍力比をもって増加する。
【0045】
負圧室2及び作動室3間の気圧差が最大となる倍力限界点に達してからは,出力杆25の出力は,ブースタピストン4の上記気圧差による最大推力と,入力杆20への操作入力との和となる。
【0046】
車両の制動状態を解除すべく,ブレーキペダルPから踏力を解放すると,先ず入力杆20及び弁ピストン18が入力戻しばね41の力をもって後退する。これに伴い,弁ピストン18は,図6に示すように,大気導入弁座31を弁体34に着座させながら,その弁体34を負圧導入弁座30から大きく離間させるので,作動室3が第2ポート29及び第1ポート28を介して負圧室2と連通する。その結果,作動室3への大気の導入が阻止される一方,作動室3の空気が負圧室2を経て負圧限Vに吸入され,それらの気圧差が無くなるため,ブースタピストン4も,ブースタ戻しばね27の弾発力をもって後退し,マスタシリンダMの作動を解除していく。そして,ブースタピストン4及び入力杆20は,再び図1及び図2の休止状態に戻る。
【0047】
ところで,前記キー部材50の取り付けに当たっては,キー部材50を,その両脚片50a,50aの先端側から弁筒10の横孔29aに挿入する。その際,両脚片50a,50aの位置決め凸部51,51が横孔29aの一端部を通過するまでは,両脚片50a,50aが互いに近接するように撓まされ,位置決め凸部51,51が軸方向溝29bとの対応位置に達すると,両脚片50a,50aの復元力をもって位置決め凸部51,51は軸方向溝29bの内周面に嵌合し,この嵌合力によってキー部材50が定位置に保持され,横孔29aからの抜け出しがガタ無く阻止され,キー部材50が振動騒音を発することもない。
【0048】
しかも,位置決め凸部51,51が軸方向溝29bの内周面に嵌合したときは,両脚片50a,50aが弁ピストン18の頸部19を跨いで,カム面53,53を頸部19の外周面に当接させるので,もし,キー部材50が前記嵌合位置,即ち弁筒10に対する定位置を越えて横孔29aに押し込まれようとすると,カム面53,53が頸部19の外周面により押し広げられ,それに伴い両脚片50a,50aが位置決め凸部51の両端面を軸方向溝29bの内周面に強く押圧することになり,その結果,キー部材50の前記定位置からの行き過ぎを確実に防ぐことができ,組立性が良好となる。
【0049】
また位置決め凸部51,51が嵌合する軸方向溝29bは,第2ポート29の一部を構成するものであるから,キー部材50の弁筒10への取り付けに第2ポート29を有効に利用することができ,弁筒10の構造を特別複雑化しないで済み,そのインジェクション成形を容易に行うことができる。
【0050】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,負圧ブースタBは,前後一対のブースタピストンを同一の弁筒に結合したタンデム型に構成することもできる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,ブースタシェルに,その内部を負圧源に連なる前側の負圧室と後側の作動室とに区画するブースタピストンを収容し,このブースタピストンに連設される弁筒に,この弁筒に設けられたガイド孔に前後方向摺動自在に嵌合する弁ピストンと,この弁ピストンに前端部を連結する入力杆と,弁ピストン及び弁筒間で入力杆の前後動に応じて作動室を負圧室と大気とに連通切換えする制御弁と,該弁筒に,それを直径方向に貫通すると共に弁ピストンの頸部を跨いで取り付けられ,ブースタシェルに形成された第1ストッパに当接して弁筒の後退限を規定し,また前記頸部の前端に連なる第2ストッパを受け止めて弁筒に対する弁ピストンの後退限を規定する,一対の脚片からなる二股状のキー部材とを備える負圧ブースタにおいて,前記作動室と前記制御弁との間を連通するポートを,弁筒を直径線に沿って横切って前記作動室に開口する横孔と,前記ガイド孔の内周に形成されて前記横孔を前記制御弁に連通する複数の軸方向溝とで構成し,この横孔にキー部材の前記一対の脚片を挿入し,これら一対の脚片の互いに反対方向を向く外側面の長手方向中間部に,弁筒の前記軸方向溝の内周面に対向する位置決め凸部をそれぞれ形成して,これら位置決め凸部の頂面間距離を弁筒の前記横孔の横幅よりも大きく設定し,頂面間距離を狭めながら前記横孔に挿入した前記脚片の位置決め凸部の両端面を,弁筒の前記軸方向溝の内周面との対向位置で前記脚片の復元力をもって弁筒の前記軸方向溝の内周面に嵌合したので,キー部材の両脚片の位置決め凸部と弁筒の内周面との当接により,キー部材を弁筒の定位置に保持することができ,したがって弁筒の構造を特別複雑化しないで済み,その成形を容易に行うことができる。また,前記位置決め凸部を弁筒の内周面に嵌合したので,キー部材を弁筒の定位置にガタを無く保持することができて,振動騒音の発生を防ぐことができる。
【0052】
さらに本発明の第3の特徴によれば,第1又は第2の特徴に加えて,前記位置決め凸部の弁筒内周面との嵌合位置を超えてキー部材が弁筒に押入されると,前記頸部の外周面に当接して両脚片間を開くカム面を両脚片の相対向する内側面に形成したので,もし,キー部材が上記嵌合位置を越えて弁筒に押し込まれようとすると,カム面が頸部の外周面により押し広げられ,それに伴い両脚片が位置決め凸部を軸方向溝の内周面に強く押圧することになり,その結果,キー部材の前記定位置からの行き過ぎを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るシングル型負圧ブースタを入力杆の休止状態で示す縦断面図。
【図2】 図1の2部拡大図。
【図3】 図2の3−3線断面図。
【図4】 図3の4−4線断面図。
【図5】 図3の5−5線断面で示す,倍力作用説明図。
【図6】 図5に対応した倍力解除過程説明図。
【符号の説明】
B・・・・負圧ブースタ
V・・・・負圧源
1・・・・ブースタシェル
2・・・・負圧室
3・・・・作動室
4・・・・ブースタピストン
9・・・・第1ストッパ(係止環)
10・・・弁筒
11・・・ガイド孔
18・・・弁ピストン
19・・・頸部
19a・・第2ストッパ(ストッパ面)
20・・・入力杆
29・・・第2ポート(ポート)
29a・・横孔
29b・・軸方向溝
38・・・制御弁
50・・・キー部材
50a・・脚片
51・・・凸部
52・・・凹部
53・・・カム面
Claims (3)
- ブースタシェル(1)に,その内部を負圧源(V)に連なる前側の負圧室(2)と後側の作動室(3)とに区画するブースタピストン(4)を収容し,このブースタピストン(4)に連設される弁筒(10)に,この弁筒(10)に設けられたガイド孔(11)に前後方向摺動自在に嵌合する弁ピストン(18)と,この弁ピストン(18)に前端部を連結する入力杆(20)と,弁ピストン(18)及び弁筒(10)間で入力杆(20)の前後動に応じて作動室(3)を負圧室(2)と大気とに連通切換えする制御弁(38)と,該弁筒(10)に,それを直径方向に貫通すると共に弁ピストン(18)の頸部(19)を跨いで取り付けられ,ブースタシェル(1)に形成された第1ストッパ(9)に当接して弁筒(10)の後退限を規定し,また前記頸部(19)の前端に連なる第2ストッパ(19a)を受け止めて弁筒(10)に対する弁ピストン(18)の後退限を規定する,一対の脚片(50a,50a)からなる二股状のキー部材(50)とを備える負圧ブースタにおいて,
前記作動室(3)と前記制御弁(38)との間を連通するポート(29)を,弁筒(10)を直径線に沿って横切って前記作動室(3)に開口する横孔(29a)と,前記ガイド孔(11)の内周に形成されて前記横孔(29a)を前記制御弁(38)に連通する複数の軸方向溝(29b)とで構成し,この横孔(29a)にキー部材(50)の前記一対の脚片(50a,50a)を挿入し,
これら一対の脚片(50a,50a)の互いに反対方向を向く外側面の長手方向中間部に,弁筒(10)の前記軸方向溝(29b)の内周面に対向する位置決め凸部(51,51)をそれぞれ形成して,これら位置決め凸部(51,51)の頂面間距離(A)を弁筒(10)の前記横孔(29a)の横幅(B)よりも大きく設定し,
頂面間距離(A)を狭めながら前記横孔(29a)に挿入した前記脚片(50a,50a)の位置決め凸部(51)の両端面を,弁筒(10)の前記軸方向溝(29b)の内周面との対向位置で前記脚片(50a,50a)の復元力をもって弁筒(10)の前記軸方向溝(29b)の内周面に嵌合したことを特徴する,負圧ブースタ。 - 請求項1記載の負圧ブースタにおいて,
前記脚片(50a)の前記外側面に,前記位置決め凸部(51)の両端に連なる凹部(52)を形成し,それら凹部(52)によって位置決め凸部(51)の両端面を円弧に形成したことを特徴する,負圧ブースタ。 - 請求項1又は2記載の負圧ブースタにおいて,
前記位置決め凸部(51)の弁筒(10)内周面との嵌合位置を超えてキー部材(50)が弁筒(10)に押入されると,前記頸部(19)の外周面に当接して両脚片(50a,50a)間を開くカム面(53)を両脚片(50a,50a)の相対向する内側面に形成したことを特徴する,負圧ブースタ。
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