JP2019165687A - 特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法及び算出装置、及び特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法及び予兆検知装置 - Google Patents

特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法及び算出装置、及び特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法及び予兆検知装置 Download PDF

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Abstract

【課題】複数の種類が混在する植物プランクトン群のうち特定種の植物プランクトンの存在量を簡便に算出する。【解決手段】複数種類の植物プランクトンを含む植物プランクトン群に励起光を照射する。複数種類の植物プランクトンには特定種の植物プランクトンが含まれている可能性がある。特定種の植物プランクトンは励起光を吸収して蛍光を生じ、その蛍光を再吸収するクロロフィルaを有しており、再吸収の生じやすさが異なる複数の波長帯域A,Bにおいて蛍光の強度I670,I690をそれぞれ測定し、複数の波長帯域A,Bそれぞれにおいて測定された複数の蛍光の強度I670,I690に基づいて、特定種の植物プランクトンの存在量Kを算出する。【選択図】図1

Description

本発明は、特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法及び算出装置、及び特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法及び予兆検知装置に関する。
カレニア ミキモトイ(Karenia mikimotoi)及び/又はシャトネラ アンティーカ(Chattonella antiqua)等の特定種の植物プランクトンが増殖することにより所謂赤潮が発生し、養殖場において、生け簀中に混入する場合がある。この種の植物プランクトンが増殖すると、養殖魚類を大量斃死させるなどの漁業産業に大きなダメージを与えることがある。このため、従来、赤潮発生の予兆を検知する様々な取り組みがなされている。
例えば、現場にて採水された試料を顕微鏡で観察することにより、試料に含まれる植物プランクトンの種類を同定しつつ数を数え存在量を測定することが知られている。
また別の方法として、光学式クロロフィル計(例えばJFEアドバンテック株式会社の製品Infinity-CLW)を用いて、励起光を照射した際に、植物プランクトンが有する蛍光色素(例えばクロロフィル)から生じる蛍光の強度を測定することにより植物プランクトンの存在量を簡易的に測定することが知られている。
また別の方法として、多波長励起蛍光光度計(例えばJEFアドバンテック株式会社の製品Multi-Exciter)を用いて、複数の励起波長で励起光を照射した際に、植物プランクトンの蛍光色素から生じる蛍光の強度パターン(励起スペクトル)を測定することにより植物プランクトンの種類を「鋼」レベルで粗く分別することが知られている。
また別の方法として、特定種の植物プランクトンとしてカレニア ミキモトイを遺伝子分析により検出することが知られている。例えば、株式会社ニッポンジーンが販売する「赤潮原因プランクトン検出キット1−カレニア ミキモトイ」を用いて、現場にて採取された試料中にカレニア ミキモトイが存在するか否か、LAMP法により遺伝子の違いを調べて「種」レベルで分析することが知られている。
また別の方法として、非特許文献1〜3には、435nm付近の励起光を照射した際の植物プランクトンの蛍光スペクトルに関して、特定種の植物プランクトン(例えばカレニア ミキモトイ、シャトネラ アンティーカ)の蛍光スペクトルのピークの波長が、他の藻類に比して長波長側に位置していることが開示されている。さらに、上記特定種の植物プランクトンの蛍光スペクトルの波長670nmにおける蛍光強度に対する波長685nmにおける蛍光強度の比(f685/670)が、他の藻類に比して高く、該蛍光強度の比(f685/670)に基づいて特定種の植物プランクトンの存在量のモニタリングの可能性が示唆されている。
また別の方法として、非特許文献4には、試料中の植物プランクトン1つずつに、励起光を照射した際の、波長655nm及び波長685nmそれぞれにおける蛍光強度を測定し、波長655nmにおける蛍光強度が大きい場合は藍藻、波長685nmにおける蛍光強度が大きい場合には他の植物プランクトンというように植物プランクトンを「門」レベルで極粗く分別することが示唆されている。
島崎洋平著(他7名)、「数種植物プランクトン培養株における励起蛍光スペクトルの比較解析」、平成26年度公益社団法人日本水産学会春季大会講演要旨集、平成26年度公益社団法人日本水産学会春季大会、平成26年3月27日発行、p.143 島崎洋平著(他6名)、「励起蛍光スペクトルを利用した渦鞭毛藻Karenia mikimotoi赤潮動態モニタリング法の検討」、平成28年度公益社団法人日本水産学会春季大会講演要旨集、平成28年度公益社団法人日本水産学会春季大会、平成28年3月26日発行、p.86 島崎洋平著(他7名)、「水中観測型蛍光分光器を用いた有害渦鞭毛藻Karenia mikimotoiの現場モニタリングの検討」、平成29年度公益社団法人日本水産学会春季大会講演要旨集、平成29年度公益社団法人日本水産学会春季大会、平成29年3月26日発行、p.81 斎藤俊幸著(他2名)、「2波長の蛍光成分同時検出による藍藻のin situ粒径解析計測法の開発」、レーザー研究 第24巻 第4号、一般社団法人レーザー学会、平成8年4月発行、p.499−506
顕微鏡による観察の場合、採水、種の同定及び個数を数えるのに非常に手間を要するので、測定頻度、場所が限られてしまう。
光学式クロロフィル計によれば、植物プランクトンの総量的な情報しか得られないので、特定種の植物プランクトンの存在量を知ることができない。
多波長励起蛍光光度計及び非特許文献4の方法によれば、植物プランクトンの粗いレベルでの分別にとどまり、赤潮発生の要因になり得る特定種の植物プランクトン(例えばカレニア ミキモトイ、シャトネラ アンティーカ)を弁別するのに必要な「種」レベルでの分別ができない。
遺伝子分析によれば、「種」レベルでの植物プランクトンの分別はでき、特定種の植物プランクトンが存在するかどうかはわかるものの、遺伝子数がコントロールされずに高倍率で増幅されるため存在量を知ることはできない。また、シリンジ、加熱保湿器具などを用意し、注意深く使用する必要がある点、試薬を低温で温度管理する必要があり、扱いに手間を要する点、人が作業、判定に関与する必要があるため自動的に測定し判定できない点があり、実用上の制約もある。
非特許文献1〜3によれば、特定種の植物プランクトンの蛍光スペクトルのピークがシフトする現象のメカニズムが提示されておらず、どのような条件で測定し、どのようなパラメータを用いてどのような演算をすれば有用な情報が得られるのかわかっておらず、その適用の大きな制約になっていた。
すなわち、従来の方法では、複数の種類が混在する植物プランクトン群のうち特定種の植物プランクトンの存在量を簡便に得ることができない。このことはいつ、どの場所で発生するかわからない赤潮の予兆を検知するためには、大きな制約となる。
本発明は、複数の種類が混在する植物プランクトン群のうち特定種の植物プランクトンの存在量を簡便に算出することができる、特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法及び算出装置、及び特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法及び予兆検知装置を提供することを課題とする。
本願発明者は、特定種の植物プランクトンの蛍光スペクトルに見られる上記ピークシフトの現象のメカニズムについて以下の知見を得た。すなわち、植物プランクトンに含まれる蛍光色素は励起光を吸収して蛍光を発生する。この蛍光の一部が蛍光色素に再吸収されると共に蛍光を再発生する。
この再吸収は、吸収が大きな波長の蛍光では起こりやすく、吸収が小さな波長の蛍光では起こり難い。例えば、吸収スペクトルの長波長側限界(吸収端と呼ぶ)の近傍(波長が長くなるにつれて吸収が減少する波長領域)では、その範囲内で波長が短くなると吸収が起こりやすく、その分だけ植物プランクトン個体内に吸収されずに透過して検出される蛍光は弱くなる。一方、波長が長くなり吸収端に近づくにつれて吸収され難く、植物プランクトン個体外部で検出される蛍光は弱くなり難い。蛍光スペクトルのピーク近傍に関して考えると、蛍光の吸収され易さは長波長になるほど低下するため、波長の短い方は長い方に比して、蛍光は再吸収により弱められ、そのため蛍光スペクトルのピークが長波長側にシフトする。
再吸収の起こりやすさは、最初に蛍光が生じた蛍光色素の周りに近接してどれだけ多くの蛍光色素があるかに依存する。特定種の植物プランクトンとして、カレニア ミキモトイ及びシャトネラ アンティーカは、顕微鏡で確認すると、蛍光色素(葉緑体)が互いに近接して体積的に密集しており、このため他の植物プランクトンに比して再吸収が起こりやすい。本発明は、上記知見に基づく。
本発明の一側面は、
複数種類の植物プランクトンを含む植物プランクトン群に励起光を照射し、ここで、前記複数種類の植物プランクトンには特定種の植物プランクトンが含まれている可能性があり、前記特定種の植物プランクトンは前記励起光を吸収して蛍光を生じ、その蛍光を再吸収する蛍光色素を有しており、
前記再吸収の生じやすさが異なる複数の波長帯域において前記蛍光の強度をそれぞれ測定し、
前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された複数の前記蛍光の強度に基づいて、前記特定種の植物プランクトンの存在量を算出する、特定種の植物プランクトンの算出方法を提供する。
本発明によれば、再吸収の生じやすさが異なる複数の波長帯域において測定された蛍光の強度に基づいて、再吸収が相対的に大きな特定種の植物プランクトンの存在量と、再吸収が相対的に小さな他の植物プランクトンの存在量とをそれぞれ算出することができる。しかも、蛍光の強度を測定波長に関しピンポイントではなく、広がりのある波長帯域において測定することにより、測定バラツキ及び測定ノイズが低減するので、ロバスト性の高い測定結果が容易に得られる。
ここで、本明細書において、存在量とは、セル数及び比率を含む包括的な意味を有している。例えば、特定種の植物プランクトンの存在量とは、特定種の植物プランクトンの、セル数、密度(セル数/ml)、他の植物プランクトンに対する存在比、及び植物プランクトン群全体のセル数に対する特定種の植物プランクトンのセル数のいずれかを意味するものとする。
好ましくは、前記蛍光色素は、クロロフィルaである。
本構成によれば、蛍光色素として、一般的に多量に含まれており、蛍光の再吸収現象が生じやすいクロロフィルaを有する特定種の植物プランクトンの存在量を算出することができる。
好ましくは、前記特定種の植物プランクトンは、カレニア ミキモトイ又はシャトネラ アンティーカである。
本構成によれば、赤潮発生の原因になり得る特定種の植物プランクトンの存在量を算出することができる。
好ましくは、2つの前記波長帯域それぞれにおいて、前記蛍光の強度を測定する。
本構成によれば、2つの波長帯域において測定された2つの蛍光強度それぞれに基づいて、それぞれの蛍光の強度に関連した方程式を2つ立てることができ、この連立方程式を解くことにより、特定種の植物プランクトンの存在量と他の植物プランクトンの存在量との2つの未知数を算出することができる。
好ましくは、2つの前記波長帯域それぞれにおいて測定された2つの前記蛍光の強度の比率に基づいて、前記植物プランクトン群における前記特定種の植物プランクトンの存在比を算出し、
前記植物プランクトン群の全体の前記蛍光の全体強度を測定し、ここで、前記全体強度は、2つの前記波長帯域よりも広い波長帯域での対象色素の蛍光強度であり、
前記存在比と前記全体強度とに基づいて、前記特定種の前記植物プランクトンの存在量を算出する。
本構成によれば、特定種の植物プランクトンの存在量を容易に算出することができる。なお、2つの波長帯域における蛍光強度ではなく、これらの強度比に基づいて算出することにより、励起光自体の強度変動による影響を受け難くい。
好ましくは、前記励起光よる散乱光の強度を散乱光検出波長帯域にて測定し、ここで、前記散乱光検出波長帯域は、前記複数の波長帯域とは異なっており、
前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された前記蛍光の強度に占める前記散乱光の寄与分を推定し、
前記蛍光の強度から、前記推定された寄与分を除去する。
本構成によれば、測定された蛍光の強度から、散乱光の影響が除外される。これにより、特定種の植物プランクトンの存在量の算出精度が向上する。
また、本発明の他の側面は、
特定種の植物プランクトンは、赤潮発生の原因になり得るものであって、
上記特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法により算出された特定種の植物プランクトンの存在量に基づいて、前記赤潮発生の予兆を検知する、特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法を提供する。
本発明によれば、特定種の植物プランクトンの存在量に基づいて、赤潮発生の予兆を検知できる。
また、本発明の更なる他の側面は、
複数種類の植物プランクトンを含む植物プランクトン群に励起光を照射する励起光発生部であって、前記複数種類の植物プランクトンには特定種の植物プランクトンが含まれている可能性があり、前記特定種の植物プランクトンは前記励起光を吸収して蛍光を生じ、その蛍光を再吸収する蛍光色素を有している、前記励起光発生部と、
前記再吸収の生じやすさが互いに異なる複数の波長帯域において前記蛍光の強度をそれぞれ測定する蛍光強度測定部と、
前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された複数の前記蛍光の強度に基づいて、前記特定種の植物プランクトンの存在量を算出する演算部と
を備えた特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置を提供する。
好ましくは、前記励起光発生部は、LED光源と励起光の波長帯域を制限する光学フィルタとを有しており、
前記蛍光強度測定部は、フォトダイオードと蛍光の波長帯域を制限する光学フィルタとを有する。
本構成によれば、励起光発生部及び蛍光強度測定部を簡易な構成により実現できる。特に、蛍光強度測定部に分光器を必要としないので、装置をコンパクト且つ安価に構成できる。
好ましくは、前記蛍光強度測定部は、2つの前記波長帯域それぞれにおける前記蛍光の強度と前記蛍光の全体の強度とを測定可能に構成されており、
前記演算部は、2つの前記波長帯域それぞれにおいて測定された2つの前記蛍光の強度の比率に基づいて前記植物プランクトン群における前記特定種の植物プランクトンの存在比を算出し、当該存在比と前記蛍光の全体の強度とに基づいて前記特定種の前記植物プランクトンの存在量を算出する。
また、本発明の更なる他の側面は、上記特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置により算出された特定種の植物プランクトンの前記存在量に基づいて、前記特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆を検知する予兆検知部を備えている、特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知装置を提供する。
本発明によれば、複数の種類が混在する植物プランクトン群においても、特定種の植物プランクトンの存在量を簡便に算出することができる。
本発明の第1実施形態に係る特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置の概略構成を示す図。 クロロフィルa及びクロロフィルbの吸収スペクトルを示すグラフ。 植物プランクトンの蛍光スペクトルを示すグラフ。 特定種の植物プランクトンにおいて蛍光スペクトルのピークシフトが起こるメカニズムを説明する図。 波長帯域の中心波長及び幅の決め方を説明するグラフ。 変形例に係る、波長帯域の中心波長及び幅の決め方を説明するグラフ。 特定種の植物プランクトンの密度と蛍光強度との関係を示すグラフ。 他の植物プランクトンの密度と蛍光強度との関係を示すグラフ。 植物プランクトンの密度と蛍光比との関係を示すグラフ。 特定種の植物プランクトンの存在量の算出結果と顕微鏡で観察した同存在量との関係を示すグラフ。 現場における実測結果と特定種の植物プランクトンの蛍光強度比との関係を示すグラフ。 他の現場における実測結果と特定種の植物プランクトンの蛍光強度比との関係を示すグラフ。 第6実施形態に係る特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置の概略構成を示す図。 蛍光スペクトルに含まれる励起光の散乱光成分を概念的に示すグラフ。
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置1の概略構成を示している。図1に示されるように、算出装置1は、植物プランクトンを含む測定対象の試料に励起光を照射する励起光発生部10と、励起光により試料から生じた蛍光を測定する蛍光強度測定部20と、これらの駆動を制御すると共に測定結果を解析する制御装置30とを備えている。
励起光発生部10は、発光素子11と送光用光学フィルタユニット12とを有している。発光素子11は、試料に向かう送光軸を有し試料に向かって励起光を照射するように構成されている。本実施形態では、発光素子11としてLED(発光ダイオード)が採用されている。
送光用光学フィルタユニット12は、発光素子11の送光軸に対向するように発光素子11と測定対象の試料との間に配設されており、発光素子11により照射された励起光のうち特定の波長帯域の励起光を通過させ、他の波長の励起光をカットするように構成されている。本実施形態では、送光用光学フィルタユニット12は、例えば薄膜フィルタ又はガラスフィルタにより構成されている。
なお、本実施形態では、植物プランクトンに含まれる蛍光色素の1つであるクロロフィルaを効率的に励起できるように、送光用光学フィルタユニット12による波長帯域が設定されている。具体的には、クロロフィルa及びクロロフィルbの吸収スペクトルを示す図2(Sven Beer、Mats Bjork(「o」はウムラウト記号付き)、及びJohn Beardall著による”Photosynthesis in the Marine Environment, First Edition”に開示された図4.2)を参照して、クロロフィルaは、波長が約420nm〜約450nmの波長帯域において吸収が大きくなっている。本実施形態では、クロロフィルaが効率よく励起されるように、励起光としてクロロフィルaへの吸収が大きい中心波長が435nm、半価幅が約120nmである波長帯域の励起光が用いられている。
蛍光強度測定部20は、受光素子21と受光用光学フィルタユニット22とを有している。受光素子21は、試料に対向するように配設され、励起光により試料から生じた蛍光を測定するように構成されている。本実施形態では、受光素子21としてフォトダイオードPDが採用されている。
受光用光学フィルタユニット22は、受光素子21の受光軸に対向するように受光素子21と測定対象の試料との間に配設されており、試料から生じた蛍光のうち特定の波長帯域の蛍光を通過させ、他をカットするように構成されている。本実施形態では、互いに異なる波長帯域A,Bそれぞれに対応した2種類の受光用光学フィルタユニット22A及び22Bが設けられている。
波長帯域Aは、中心波長が670nm、半価幅が12nmである。波長帯域Bは、中心波長が690nm、半価幅が12nmである。すなわち、受光用光学フィルタユニット22Aは、波長がおおよそ664nm以上676nm以下である蛍光を通過させ、その他の波長成分をカットする。受光用光学フィルタユニット22Bは、波長がおおよそ684nm以上696nm以下である蛍光を通過させ、その他の波長成分をカットする。
制御装置30は、CPU、メモリ、記憶装置、および入出力装置を備えた周知のコンピュータと、コンピュータに実装されたソフトウエアとにより構成されている。制御装置30は、駆動部31と、演算部32と、予兆検知部33とを有している。
駆動部31は、励起光発生部10の発光素子11に電力を供給することにより発光素子11からの励起光の照射を制御する。演算部32は、蛍光強度測定部20の受光素子21により測定された蛍光の強度を数学的に解析して、試料に含まれる特定種の植物プランクトンの存在量を算出して推定する。予兆検知部33は、演算部32により算出された特定種の植物プランクトンの存在量に基づいて、赤潮発生の予兆を検知する。
以下、演算部32における特定種の植物プランクトンの存在量の算出アルゴリズムと、予兆検知部33による赤潮発生の予兆検知について説明する。
本願発明者は、特定種の植物プランクトンとして、赤潮発生の原因となり得る有害種の植物プランクトン、より具体的にはカレニア ミキモトイ及びシャトネラ アンティーカ等の特定の有害種の植物プランクトンに注目し、これらの蛍光スペクトルのピークが、他の植物プランクトン(主に赤潮の原因になり難い無害種の植物プランクトンであるが、カレニア ミキモトイ及びシャトネラ アンティーカ以外の有害種の植物プランクトンも含まれる。以下説明を簡単にするため、まとめて無害種の植物プランクトンと称する)の蛍光スペクトルに比して長波長側にシフト(以下、ピークシフトと称する)する現象を発見した。本願発明者は、この現象のメカニズムを明らかにすることにより、この現象を利用して特定の有害種の植物プランクトンの存在量を算出する方法を見出した。
図3には、2種類の植物プランクトンに励起光を照射した際の蛍光スペクトルが示されている。ここで、本実施形態における蛍光スペクトルは、測定された波長帯域における強度最大値で他のすべての強度値を割って正規化した正規化スペクトルを意味している。
図3には、特定の有害種の植物プランクトンの一例としてカレニア ミキモトイの蛍光スペクトルが太線により示されており、無害種の植物プランクトンの一例として珪藻の蛍光スペクトルが細線により示されている。また、それぞれの蛍光スペクトルは、単一種の植物プランクトンが含まれる試料に対して励起光を照射した際に得られる蛍光の強度を、分解能の高い検出器(例えば分光器)により測定することにより得られる。
図3に示されるように、珪藻の蛍光スペクトルはピークが約681nmに位置しているのに対して、カレニア ミキモトイの蛍光スペクトルはピークが約683nmに位置している。すなわち、カレニア ミキモトイは、蛍光スペクトルのピークが珪藻に比して約2nm長波長側に位置している。本願発明者は鋭意検討の結果、このシフトピークが、植物プランクトンが有する蛍光色素(クロロフィルa)による蛍光の再吸収により生じていることを突き止めた。
図2を併せて参照して、クロロフィルaは、670nm周辺にも吸収スペクトルのピークが存在している。このピークの長波長側限界(吸収端と呼ぶ)の近傍(波長が長くなるにつれて吸収が減少する波長領域)では、波長が短くなるにつれて吸収が起こりやすくなるのに対して、波長が長くなり吸収端に近づくにつれて吸収され難くなる。すなわち、ピークが位置する約670nm周辺の波長帯域においては、クロロフィルaによる吸収が起こり易いのに対して、約690nm周辺の吸収端においてはクロロフィルaによる吸収が起こり難い。
すなわち、励起光により生じた蛍光のうち、約670nm周辺の波長帯域の蛍光は、同一個体内の他のクロロフィルaにより再吸収されやすい一方で、約690nm周辺の波長帯域の蛍光は他のクロロフィルaにより再吸収され難く外部へ放射される。この再吸収の起こりやすさは、最初に蛍光が生じたクロロフィルaの周りに近接してどれだけ多くのクロロフィルaがあるかに依存している。カレニア ミキモトイ、シャトネラ アンティーカ等の特定の有害種の植物プランクトンは、互いに近接したクロロフィルaを体積的に多く含んでいるので、これにより無害種の植物プランクトンに比して再吸収が起こりやすいと考えられる。
図4には、励起光による生じる蛍光が概念的に示されており、図4(a)に特定の有害種の植物プランクトンの場合が示されており、図4(b)に無害種の植物プランクトンの場合が示されている。図4(a)を参照して、特定の有害種の植物プランクトンに含まれる蛍光色素としてのクロロフィルaは、中心波長が435nmである短波長の励起光Xを吸収して、励起光Xよりも波長が長い蛍光Zを生じる。この蛍光Zには、波長が約670nmであり相対的に波長が短い蛍光Z1と、波長が約690nmであり相対的に波長が長い蛍光Z2とが含まれている。
図4(a)に示すように、蛍光Z2は同一個体内のクロロフィルaに再吸収され難いのに対し、蛍光Z1は同一個体内のクロロフィルaに再吸収されて、Z1の強度はその分小さくなる。なお再吸収された結果、そのエネルギの一部により更に蛍光Z3を生じる。上述したように、特定の有害種の植物プランクトン、すなわちカレニア ミキモトイ、シャトネラ アンティーカ等は、同一個体内においてクロロフィルaが体積的に多く含まれているので、励起光が一つのクロロフィルaに吸収されて、ここから生じた蛍光が同一個体内のクロロフィルaに再吸収されやすいためと考えられる。
これに対して、図4(b)に示すように、無害種の植物プランクトンでは、特定の有害種の植物プランクトンのようにクロロフィルaを体積的に多く含んでおらず、一つのクロロフィルから生じた蛍光が、同一個体内のクロロフィルaを通過しにくいため、再吸収され難いと考えられる。
すなわち、特定の有害種の植物プランクトンは、670nm付近において再吸収により蛍光の強度が弱められるため、外部の検出器で測定した蛍光スペクトルのピークが長波長側へシフトするように見えるピークシフトが生じると考えられる。
この現象を利用して、本願の発明者は、特定の有害種の植物プランクトンの存在量を算出するに際して、以下の知見を得た。
第1に、着目する蛍光色素としては、再吸収が起こり得るものである必要がある。励起光により蛍光を発生する蛍光色素と、再吸収する蛍光色素とが同じ種類である必要はないが、一般的に量の多い、再吸収が十分に起こり得るものとして、例えばクロロフィルaが適当である。
第2に、励起光としては、再吸収がおこり得る蛍光を発生させることができるエネルギを持つものを含むことが必要である。吸収スペクトルの波長上限を超えるような蛍光しか生じないような低いエネルギの励起光では不適当である。
第3に、区別したい植物プランクトンの種類間で、再吸収の程度が異なる必要がある。例として上述したように、カレニア ミキモトイ、シャトネラ アンティーカは、他種と比べ、蛍光色素が蛍光を再吸収しやすい空間分布になっている。
第4に、再吸収の程度が異なる複数の波長帯域における蛍光の強度を用いることにより、再吸収が相対的に大きなプランクトン種類の存在量と、再吸収が相対的に小さなプランクトン種類の存在量という2つの未知量をこのメカニズムに基づいて算出できる。
すなわち、本実施形態では、励起光発生部10が、測定対象の試料に励起光を照射する。試料には、複数の種類の植物プランクトンが混在しており、赤潮の原因になり得る特定の有害種の植物プランクトンが含まれている可能性がある植物プランクトン群が含まれている。次いで、蛍光強度測定部20が、励起光により試料から生じた蛍光について、受光用光学フィルタユニット22A,22Bを介して波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度を測定する。その後、演算部32が、波長帯域A,Bそれぞれにおいて測定された蛍光強度を数学的に解析することにより、特定種(有害種)の植物プランクトンの存在量とその他(無害種)の植物プランクトンの存在量とを算出する。
演算部32における数学的解析では、波長帯域A,Bそれぞれについて測定された蛍光強度についての以下の式(1)及び式(2)を立て、これらの2つ式からなる連立方程式を解くことにより、特定の有害種の植物プランクトンの存在量K(セル数)と、その他の植物プランクトンの存在量D(セル数)とを算出する。なお、セル数とは植物プランクトンの個体数、個数を意味している。
Figure 2019165687
I670:波長帯域Aにおける試料の蛍光強度
Ik670:波長帯域Aにおける特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id670:波長帯域Aにおける無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Figure 2019165687
I690:波長帯域Bにおける試料の蛍光強度
Ik690:波長帯域Bにおける特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id690:波長帯域Bにおける無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
式(1)及び式(2)において、試料には特定の有害種の植物プランクトン1種類及び無害種の植物プランクトン1種類のうち少なくとも一方が含まれることを前提とし、それぞれの波長帯域A,Bで測定された蛍光強度I670及びI690が、それぞれの波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度と無害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度とを合計することにより表されている。また、無害種の植物プランクトンに関しては、複数種の植物プランクトンが混在する場合には、Id670等は、複数の無害種の植物プランクトンの存在比に応じた平均的な値を意味する。
それぞれの波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、それぞれの波長帯域において、特定の有害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度に、その存在量K(セル数)を乗じた値として表されている。同様に、それぞれの波長帯域における無害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、それぞれの波長帯域において、無害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度に、その存在量D(セル数)を乗じた値として表されている。
上記式(1)及び式(2)のI670及びI690は、試料毎に算出装置1において測定するものであり、Ik670,Id670,Ik690及びId690は、単一の種類の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度を、波長帯域A,Bそれぞれにおいて事前に測定しておくものである。
上記式(1)及び(2)を連立方程式として数学的に解くことにより、未知数である特定の有害種の植物プランクトンの存在量K及びその他の植物プランクトンの存在量Dがそれぞれ算出される。以下に、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの算出式を式(3)により示す。その他の植物プランクトンの存在量Dについては省略する。
Figure 2019165687
すなわち、再吸収の生じやすさが異なる2つの波長帯域A,Bにおいて測定された蛍光強度に基づいて、再吸収が相対的に大きな特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kと、再吸収が相対的に小さなその他の植物プランクトンの存在量Dとをそれぞれ算出することができる。ここで、蛍光の強度を波長帯域に関しピンポイントではなく広がりのある波長帯域A,Bにおいて測定することにより、測定バラツキ及び測定ノイズが低減するので、ロバスト性の高い測定結果が容易に得られる。
また、励起光発生部10は、発光素子11及び送光用光学フィルタユニット12により構成されており、蛍光強度測定部20は、受光素子21及び受光用光学フィルタユニット22により構成されている。すなわち、大型且つ高額になりやすい分光器を必要としないので、算出装置1をコンパクト且つ廉価に構成しやすい。
予兆検知部33は、算出された特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kに基づいて、赤潮発生の予兆を検知する。例えば、特定の有害種の植物プランクトンとしてカレニア ミキモトイに注目する場合に試料1mlあたりの存在量Kが50セル以上算出されたとき、今後赤潮レベルにまで発展する可能性が高いとみなし、予兆検知部33は赤潮発生の予兆を検知する。また、特定の有害種の植物プランクトンとしてシャトネラ アンティーカに注目する場合に試料1mlあたりの存在量Kが10セル以上であるとき、予兆検知部33は赤潮発生の予兆を検知する。
すなわち、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kに基づいて、赤潮発生の予兆を検知できる。この他、例えば、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kを定期的に算出することにより、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの変化(例えば増殖速度)を算出して、それがある閾値を超えた場合に、赤潮発生の予兆を検知するようにしてもよい。
次に、波長帯域A,Bの設定方法について説明する。
まず、他の一般的な種の植物プランクトンと区別して存在量を算出したい、再吸収の大きな種(例えば特定の有害種の植物プランクトンの1つであるカレニア ミキモトイ)、単一種に対して、所定の励起光を照射し、波長分解能の高い検出器で蛍光スペクトルを測定する。次いで、測定された蛍光スペクトルを、その蛍光スペクトルの強度最大値で、全ての強度値を割り(正規化)、正規化スペクトルを求める(スペクトルKと称する)。スペクトルKは、波長λの関数K(λ)として表される。
同様に、他の一般的な種の植物プランクトン、すなわち再吸収の小さな種、単一種に対して、蛍光スペクトルを測定すると共に、正規化スペクトルを求める(スペクトルDと称する)。スペクトルDは、波長λの関数D(λ)として表される。
次に、式(4)に示すように、スペクトルD(λ)とスペクトルK(λ)との差分である差分スペクトルF(λ)を求める。
Figure 2019165687
蛍光強度測定部20の仕様、すなわち受光用光学フィルタユニット22の仕様に基づいて波長帯域の幅wを決定する。次に、式(5)に示すように、差分スペクトルF(λ)を、波長帯域の幅wで積分してG(λ)を求める。
Figure 2019165687
図5に、特定の有害種の植物プランクトンの一例としてカレニア ミキモトイのスペクトルK(λ)と、無害種の植物プランクトンの一例として珪藻のスペクトルD(λ)と、差分スペクトルF(λ)と、幅wを12nmとした場合のG(λ)とを示している。
G(λ)を参照して、相互に最も大きな部分と最も小さな部分とを選択する。すなわち、G(λ)は、中心波長670nm周辺において最小値となり、中心波長690nm周辺において最大値となる。したがって、中心波長670nm、幅wが12nmの帯域を波長帯域Aと、中心波長690nm、幅wが12nmの帯域を波長帯域Bとして設定する。
なお、上記波長帯域の設定方法では、波長帯域の幅wを、蛍光強度測定部20において採用する受光用光学フィルタユニット22に基づいて決定しているが、上記設定方法により設定された波長帯域A,Bの差が大きくならない場合には、幅wを見直してもよい。
また、波長帯域A,Bを設定する他の設定方法として、2つ選ぶ波長帯域は両者の差が大きくなるように、一方はGが正の値を取り、もう一方のGが負の値を取るように、且つ、上記求めたG(λ)の形から考えて正負の切り替わる波長からそれぞれ10nm程度離れた位置に波長を選択してもよい。より具体的には、G(λ)の正負が切り替わる波長(λg)付近ではG(λ)の変化が急峻であり、たとえばフィルターの中心波長、半価幅の製造上のばらつきによる、測定強度値の変動が大きくなるため、その悪影響をできるだけ抑えるため、ある程度λgから離れた波長に、各フィルターの中心波長を設定することも有効である。この場合、正負の切り替わる波長が682nmであるので、波長帯域Aの中心波長を672nmに設定し、波長帯域Bの中心波長を692nmに設定してもよい。大まかには、F(λ)のゼロ点である波長より一方の波長帯域の中心波長を小さくし、他方の波長帯域の中心波長を大きくしてもよい。
また、波長帯域A,Bを設定する更なる他の設定方法として、まず、式(6)及び式(7)に示すように、スペクトルK(λ)及びスペクトルD(λ)をそれぞれ、中心波長λにおいて波長帯域の幅wにより積分すると共に、例えばその10%の値をそれぞれK強度(λ)、D強度(λ)とする。次いで、G(λ)の絶対値が、K強度(λ)及びD強度(λ)よりも大きい波長範囲に中心波長を設定すればよい。これは、測定誤差の影響を考えた場合に、測定したい差異変化分、G(λ)が、K(λ)及びD(λ)に対して、ある程度大きいことが望ましいという考えによる条件である。
Figure 2019165687
Figure 2019165687
図6に、K強度(λ)とD強度(λ)とG(λ)の絶対値とが示されている。すなわち、G(λ)の絶対値が、K強度(λ)及びD強度(λ)よりも大きい波長帯域として、645nm以上678nm以下の波長帯域と、688nm以上695nm以下の波長帯域とを選択できる。
さらに、K強度(λ)及びD強度(λ)が、大きい範囲に中心波長を選択するのが望ましい。例えば、K強度(λ)及びD強度(λ)それぞれの最大強度に対して30%以上の波長帯域から中心波長を設定するのが望ましい。したがって、図6を参照して665nm以上700nm以下の波長帯域から中心波長を設定するのが望ましい。
したがって、波長帯域Aを中心波長が665nm以上678nm以下から選択し、波長帯域Bを中心波長が688nm以上695nm以下から選択することができる。この場合、例えば、波長帯域Aの中心波長を670nmに設定し、波長帯域Bの中心波長を690nmに設定できる。
なお、演算部32における上記算出アルゴリズムは、蛍光及び再吸収という現象が植物プランクトンの存在量及び密度に依存しないことを前提としている。すなわち、存在量及び/又は密度が増大若しくは減少するにつれて再吸収の発生に差異が生じるとすれば、植物プランクトン1つあたりの蛍光強度を、植物プランクトンの存在量及び/又は密度の関数として考慮する必要がある。
しかしながら、本願の発明者は、蛍光強度は、赤潮の予兆を検知するという目的から考えた場合の実用的な個数範囲において植物プランクトンの存在量及び密度に依存していないことを確認した。図7〜図9を参照して具体的に説明する。図7は、特定の有害種の植物プランクトンの一例としてのカレニア ミキモトイの密度(1mlあたりのセル数)に対する670nm及び690nmにおける蛍光強度を示している。同様に図8は、無害種の植物プランクトンの一例としての珪藻の密度(1mlあたりのセル数)に対する670nm及び690nmにおける蛍光強度を示している。また、図9は、特定の有害種の植物プランクトンとしてのカレニア ミキモトイ及びシャトネラ アンティーカと、無害種の植物プランクトンとしての珪藻の、蛍光比(670nmにおける蛍光強度に対する690nmにおける蛍光強度の比)を示している。
図7及び図8に示すように、植物プランクトンの蛍光強度は、密度が増大するにつれて比例して増大しており、一定値に飽和(サチュレート)する傾向がない。また、図9に示すように、植物プランクトンの蛍光比は、密度によらず略一定である。したがって、植物プランクトンの蛍光強度は、植物プランクトンの個体数及び密度に依存しないことが確認され、上記算出アルゴリズムが成立する。
図10は、演算部32により算出された特定の有害種の植物プランクトンの算出密度と、同じ試料を顕微鏡により観察した際の実測密度との関係を示している。具体的には、図10において植物プランクトンとしてカレニア ミキモトイのみが存在する場合を丸で示し、カレニア ミキモトイに加えて珪藻が存在する場合を菱形で示している。
図10に示すように、算出密度と実測密度とは概ね一致しており、本算出アルゴリズムによる高い算出精度が確認された。
また、図11及び図12に現場水域における調査結果が示されている。なお、図11及び図12では、3つのグラフが横に並列するように示されており、それぞれ縦軸に水深を取っている。左端のグラフには、所定の水深で採取された試料の顕微鏡観察結果であって、当該水深に存在する植物プランクトンの種類及び密度が示されている。中央のグラフには、クロロフィルセンサを用いて測定された各水深におけるクロロフィルaの蛍光強度(任意単位)が示されている。右端のグラフには、各水深において測定された蛍光の、670nmの波長における蛍光強度に対する685nmの波長における蛍光強度の比が示されている。
図11には、無害種の植物プランクトンとして、プロロセントラム デンタータム(Prorocentrum dentatum)Pdが多く存在する場合が示されており、図12にはカレニア ミキモトイKmとヘテロシグマ アカシオ(Heterosigma akashiwo)Haとの両方が存在する場合が示されている。
図11を参照して、水深2mにおいて、顕微鏡観察結果からプロロセントラム デンタータムPdが多く見られており、さらにクロロフィルセンサでもクロロフィルaが多く検出されている。しかしながら、蛍光強度比は高くない。
一方、図12を参照して、水深0mでは、顕微鏡観察結果からヘテロシグマ アカシオHaが多く見られているものの、蛍光強度比は高くない。水深6mにおいて、顕微鏡観察結果からカレニア ミキモトイが多く見られ、クロロフィルセンサにおいてもクロロフィルaが多く検出されている。さらに、蛍光強度比も高くなっている。
すなわち、クロロフィルセンサによりクロロフィルaを検出するのみでは、単に何らかの種類の植物プランクトンが存在することは検出できるものの、他の種の植物プランクトンと区別して、有害種(この場合カレニア ミキモトイ)の植物プランクトンを検出することはできない。これに対して、蛍光強度比を算出することにより、例えば670nmの波長における蛍光強度に対する685nmの波長における蛍光強度の比である蛍光強度比を算出し、この蛍光強度比が1.5を超える場合に特定の有害種の植物プランクトンが存在していることを検出することができる。したがって、蛍光強度比を用いることにより、植物プランクトンの種の弁別をすることができる。
(第2実施形態)
第2実施形態に係る算出装置1は、演算部32による算出アルゴリズムのみ異なり他は同一である。第2実施形態における算出アルゴリズムでは、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度I670及びI690の強度比rとに基づいて、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kを算出する。なお、全体の蛍光強度Iとは、波長帯域A,Bのように特定の波長帯域に限定しておらず、測定対象とする色素が発生する波長域全体の蛍光を測定するものであり、厳密には、波長域全体を測定しなくても、それが推定できるだけの広い波長範囲での測定ができればよい。
具体的には、全波長帯域における蛍光強度Iについての式(8)と、波長帯域Aの蛍光強度I670に対する波長帯域Bの蛍光強度I690の比である強度比rについての式(9)を立て、これらの2つの式からなる連立方程式を解くことにより、特定の有害種の植物プランクトンの存在量K(セル数)と、その他の植物プランクトンの存在量D(セル数)とを算出する。
Figure 2019165687
I:全波長帯域における試料の蛍光強度
Ik:全波長帯域における特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id:全波長帯域における無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Figure 2019165687
なお、式(9)において、中心波長670nmにおける蛍光強度I670、及び中心波長690nmにおける蛍光強度I690は、式(1)及び式(2)の右辺を代入する。
上記式(8)において、試料には特定の有害種の植物プランクトン1種類及び無害種の植物プランクトン1種類のうち少なくとも一方が含まれることを前提とし、全波長帯域における蛍光強度Iは、全波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度と無害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度とを合計することにより表されている。
全波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、全波長帯域において、特定の有害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度Ikに、その存在量K(セル数)を乗じた値として表されている。同様に、全波長帯域における無害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、全波長帯域において、無害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度Idに、その存在量D(セル数)を乗じた値として表されている。
上記式(8)における蛍光強度I、及び式(9)における強度比r(すなわちI670及びI690)は、試料毎に算出装置1において測定するものであり、Ik及びIdは、単一の種類の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度を全波長帯域において事前に測定しておくものである。
上記式(8)及び(9)を連立方程式として数学的に解くことにより、未知数である特定の有害種の植物プランクトンの存在量K及びその他の植物プランクトンの存在量Dがそれぞれ算出される。以下に、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの算出式を式(10)により示す。その他の植物プランクトンの存在量Dについては省略する。
Figure 2019165687
したがって、第2実施形態に係る算出方法によれば、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度I670及びI690の強度比rとに基づいて、再吸収が相対的に大きな特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kと、再吸収が相対的に小さなその他の植物プランクトンの存在量Dとをそれぞれ算出することができる。
また、2つの波長帯域A,Bにおける強度ではなく、これらの強度比rに基づいて算出することにより、励起光発生部10から照射される励起光自体の強度変動による影響を受け難い。
(第3実施形態)
第3実施形態に係る算出装置1は、演算部32による算出アルゴリズムのみ異なり他は同一である。第3実施形態における算出アルゴリズムでは、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度I670及びI690の強度差Gとに基づいて、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kを算出する。
具体的には、全波長帯域における蛍光強度Iについての式(8)と、波長帯域Aの蛍光強度I670と波長帯域Bの蛍光強度I690との差である強度差Gについての式(11)を立て、これらの2つの式からなる連立方程式を解くことにより、特定の有害種の植物プランクトンの存在量K(セル数)と、その他の植物プランクトンの存在量D(セル数)とを算出する。
Figure 2019165687
式(11)における強度差Gは、試料毎に算出装置1において測定したI690及びI670から算出する。式(11)の右辺の蛍光強度I670及びI690には、式(1)及び式(2)の右辺を代入する。
上記式(8)及び(11)を連立方程式として数学的に解くことにより、未知数である特定の有害種の植物プランクトンの存在量K及びその他の植物プランクトンの存在量Dがそれぞれ算出される。以下に、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの算出式を式(12)により示す。その他の植物プランクトンの存在量Dについては省略する。
Figure 2019165687
ここで、式(13)及び(14)によりGk及びGdを設定すると、式(12)は式(15)に整理される。
Figure 2019165687
Figure 2019165687
Figure 2019165687
したがって、第3実施形態に係る算出方法によれば、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度の強度差Gとに基づいて、再吸収が相対的に大きな特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kと、再吸収が相対的に小さなその他の植物プランクトンの存在量Dとをそれぞれ算出することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態に係る算出装置1は、上記実施形態に対して、蛍光強度測定部20を3つの波長帯域A1,B1,C1において蛍光強度を検出するように変更すると共に、演算部32による算出アルゴリズムが異なり他は同一である。第4実施形態における算出アルゴリズムでは、3つの波長帯域A1,B1,C1それぞれにおける蛍光強度I1,I2,I3についての以下の式(16)〜式(18)を立て、これらの3つの式からなる連立方程式を解くことにより、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kを算出する。
Figure 2019165687
Ik1:波長帯域A1における特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id1:波長帯域A1における無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Figure 2019165687
Ik2:波長帯域B1における特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id2:波長帯域B1における無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Figure 2019165687
Ik3:波長帯域C1における特定の有害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
Id3:波長帯域C1における無害種の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度
式(16)〜式(18)において、試料には特定の有害種の植物プランクトン1種類及び無害種の植物プランクトン1種類のうち少なくとも一方が含まれることを前提とし、それぞれの波長帯域A1,B1,C1で測定された蛍光強度I1,I2,I3が、それぞれの波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度と無害種の植物プランクトンより生じる蛍光強度とを合計することにより表されている。
それぞれの波長帯域における特定の有害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、それぞれの波長帯域において、特定の有害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度に、その存在量K(セル数)を乗じた値として表されている。同様に、それぞれの波長帯域における無害種の植物プランクトンから生じる蛍光強度は、それぞれの波長帯域において、無害種の植物プランクトン1つ(セル)から生じる蛍光強度に、その存在量D(セル数)を乗じた値として表されている。
上記式(16)〜式(18)のI1,I2,I3は、試料毎に算出装置1において測定するものであり、Ik1,Ik2,Ik3,Id1,Id2,Id3は、単一の種類の植物プランクトン1セルあたりの蛍光強度を、波長帯域A1,B1,C1それぞれにおいて事前に測定しておくものである。
なお、未知量が特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kとその他の植物プランクトンの存在量Dの2つであるのに対して、連立方程式が3つであるので、このうちの2つの連立方程式を解くというアルゴリズムは不適当である。したがって、本実施形態では、3つの連立方程式に対して最適な未知量K及びDを最小2乗法により算出する。すなわち、以下の式(19)におけるSを最小化するように、式(20)及び式(21)により未知量K及びDを算出する。
Figure 2019165687
Figure 2019165687
Figure 2019165687
式(20)及び式(21)から未知数である特定の有害種の植物プランクトンの存在量K及びその他の植物プランクトンの存在量Dがそれぞれ算出される。以下に、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの算出式を式(22)により示す。その他の植物プランクトンの存在量Dについては省略する。
Figure 2019165687
したがって、第4実施形態に係る算出方法によれば、3つの波長帯域A1,B1,C1それぞれにおける蛍光強度I1,I2,I3に基づいて、再吸収が相対的に大きな特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kと、再吸収が相対的に小さなその他の植物プランクトンの存在量Dとをそれぞれ算出することができる。
なお、本実施形態では、未知量が2つで、波長帯域がそれより数が多い場合の例について説明したが、未知量は3つ以上であってもよい。例えば、再吸収の程度の異なる3つの異なる種の植物プランクトンそれぞれの存在量が未知量であるとき、蛍光強度を測定する波長帯域として、再吸収のされやすさの異なる3つ以上を選択し、それぞれにおいて蛍光強度を測定することにより、上述した算出方法により未知量を算出することができる。
すなわち、未知量の数と測定する波長帯域の数とが等しい場合、連立方程式を解くことにより算出することができる。また、未知量の数よりも測定する波長帯域の数が多い場合、例えば最小2乗法により最適値を求めることができる。これにより、未知量が3以上であっても、上述した算出方法により未知量を算出することができる。
また、測定する波長帯域として、再吸収のされやすさが異なるものだけでなく、別の蛍光色素からの蛍光を測定するためのものも含んでもよい。
(第5実施形態)
第5実施形態に係る算出装置1は、演算部32による算出アルゴリズムのみ異なり他は同一である。第5実施形態における算出アルゴリズムでは、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度I670及びI690の強度比rとに基づいて、無害種の植物プランクトンの存在量Dに対する特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの存在比K/Dを算出する。
具体的には、全波長帯域における蛍光強度Iについての式(8)と、波長帯域Aの蛍光強度I670に対する波長帯域Bの蛍光強度I690の比である強度比rについての式(9)とからなる連立方程式を解くことにより、無害種の植物プランクトンの存在量Dに対する特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの存在比(K/D)を算出する。以下に、存在比(K/D)を式(23)により示す。
Figure 2019165687
ここで、強度比rは、特定の有害種の植物プランクトンが100%であるときIk690/Id670になり、特定の有害種の植物プランクトンが減少するにつれて、無害種の植物プランクトンが100%であるときのId690/Id670に近づく。
また、存在比K/DをPとすれば、植物プランクトンの全存在量(D+K)に対する特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの比率(K/(D+K))を、式(24)のように表現できる。
Figure 2019165687
式(24)によれば、植物プランクトンの全存在量(D+K)に対する特定種の植物プランクトンの存在量Kの比率(K/(D+K))は、無害種の植物プランクトンが100%のときPがゼロになるのでゼロとなり、特定種の植物プランクトンが100%のときPが無限大になるので1となる。一方、式(23)によれば、特定の有害種の植物プランクトンが100%であるとき、存在比(K/D)は無限大になってしまう。
したがって、式(24)のように、特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの比率は、無害種の植物プランクトンの存在量Dに対する比率により表すよりも、全体(D+K)に対する比率で表すほうが好ましい。
したがって、第5実施形態に係る算出方法によれば、全体の蛍光強度Iと、2つの波長帯域A,Bそれぞれにおける蛍光強度I670及びI690の強度比rとに基づいて、再吸収が相対的に小さなその他の植物プランクトンの存在量Dに対する、再吸収が相対的に大きな特定の有害種の植物プランクトンの存在量Kの比率(K/D)を算出することができる。
(第6実施形態)
第6実施形態は、上記第1〜第5実施形態に対して、測定される蛍光強度から散乱光の影響を除外する構成が追加されている点で異なっている。ここで、散乱光とは、励起光発生部10から照射された励起光のうち、励起光に含まれる蛍光と同じ波長帯域成分が、例えば、海水、植物プランクトンを含む懸濁物、装置自身、及び他の障害物により散乱された光である。
図13は、第6実施形態に係る算出装置100の概略構成を示す図である。図6に示すように、算出装置100は、算出装置1に対して蛍光強度測定部20が異なっている。具体的には、蛍光強度測定部20に、散乱光を測定するため波長帯域C(散乱光検出波長帯域)に対応した、受光用光学フィルタユニット22Cと該フィルタを通過した蛍光を検出する受光素子21を更に備えている。波長帯域Cは、中心波長が620nm、半価幅が12nmである。
図14は、蛍光スペクトルに含まれる励起光の散乱光成分を概念的に示すグラフである。図14においてハッチングを付して示すように、蛍光スペクトルには散乱光成分が含まれている。また、散乱光成分は、波長が620nm周辺において、蛍光スペクトルの大半を占める一方で、波長が620nmより大きくなるにつれて減少する。
すなわち、演算部32は、予め測定した散乱光のスペクトル形状と波長帯域Cにおいて測定された強度とに基づいて、波長帯域A,Bにおいて測定された蛍光強度に占める散乱光の強度(寄与分)を例えば相似により推定すると共に、これらを波長帯域A,Bそれぞれにおいて測定された蛍光強度からそれぞれ除く。
これによって、測定された蛍光強度から、散乱光の影響が除外されるので、特定の有害種の植物プランクトンの存在量の算出精度が向上する。
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
1 特定の有害種の植物プランクトンの存在量の算出装置
10 励起光発生部
11 発光素子
12 送光用光学フィルタユニット
20 蛍光強度測定部
21 受光素子
22 受光用光学フィルタユニット
30 制御装置
31 駆動部
32 演算部
33 予兆検知部

Claims (11)

  1. 複数種類の植物プランクトンを含む植物プランクトン群に励起光を照射し、ここで、前記複数種類の植物プランクトンには特定種の植物プランクトンが含まれている可能性があり、前記特定種の植物プランクトンは前記励起光を吸収して蛍光を生じ、その蛍光を再吸収する蛍光色素を有しており、
    前記再吸収の生じやすさが異なる複数の波長帯域において前記蛍光の強度をそれぞれ測定し、
    前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された複数の前記蛍光の強度に基づいて、前記特定種の植物プランクトンの存在量を算出する、特定種の植物プランクトンの算出方法。
  2. 前記蛍光色素は、クロロフィルaである、
    請求項1に記載の特定種の植物プランクトンの算出方法。
  3. 前記特定種の植物プランクトンは、カレニア ミキモトイ又はシャトネラ アンティーカである、
    請求項1又は2に記載の特定種の植物プランクトンの算出方法。
  4. 2つの前記波長帯域それぞれにおいて、前記蛍光の強度を測定する、
    請求項1〜3のいずれか1つに記載の特定種の植物プランクトンの算出方法。
  5. 2つの前記波長帯域それぞれにおいて測定された2つの前記蛍光の強度の比率に基づいて、前記植物プランクトン群における前記特定種の植物プランクトンの存在比を算出し、
    前記植物プランクトン群の全体の前記蛍光の全体強度を測定し、ここで、前記全体強度は、2つの前記波長帯域よりも広い波長帯域での対象色素の蛍光強度であり、
    前記存在比と前記全体強度とに基づいて、前記特定種の前記植物プランクトンの存在量を算出する、
    請求項1〜4のいずれか1つに記載の特定種の植物プランクトンの算出方法。
  6. 前記励起光による散乱光の強度を散乱光検出波長帯域にて測定し、ここで、前記散乱光検出波長帯域は、前記複数の波長帯域とは異なっており、
    前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された前記蛍光の強度に占める前記散乱光の寄与分を推定し、
    前記蛍光の強度から、前記推定された寄与分を除去する、
    請求項1〜5のいずれか1つに記載の特定種の植物プランクトンの算出方法。
  7. 特定種の植物プランクトンは、赤潮発生の原因になり得るものであって、
    請求項1〜6のいずれか1つに記載の特定種の植物プランクトンの存在量の算出方法により算出された特定種の植物プランクトンの存在量に基づいて、前記赤潮発生の予兆を検知する、特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知方法。
  8. 複数種類の植物プランクトンを含む植物プランクトン群に励起光を照射する励起光発生部であって、前記複数種類の植物プランクトンには特定種の植物プランクトンが含まれている可能性があり、前記特定種の植物プランクトンは前記励起光を吸収して蛍光を生じ、その蛍光を再吸収する蛍光色素を有している、前記励起光発生部と、
    前記再吸収の生じやすさが互いに異なる複数の波長帯域において前記蛍光の強度をそれぞれ測定する蛍光強度測定部と、
    前記複数の波長帯域それぞれにおいて測定された複数の前記蛍光の強度に基づいて、前記特定種の植物プランクトンの存在量を算出する演算部と
    を備えた特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置。
  9. 前記励起光発生部は、LED光源と励起光の波長帯域を制限する光学フィルタとを有しており、
    前記蛍光強度測定部は、フォトダイオードと蛍光の波長帯域を制限する光学フィルタとを有する、
    請求項8に記載の特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置。
  10. 前記蛍光強度測定部は、2つの前記波長帯域それぞれにおける前記蛍光の強度と前記蛍光の全体の強度とを測定可能に構成されており、
    前記演算部は、2つの前記波長帯域それぞれにおいて測定された2つの前記蛍光の強度の比率に基づいて前記植物プランクトン群における前記特定種の植物プランクトンの存在比を算出し、当該存在比と前記蛍光の全体の強度とに基づいて前記特定種の前記植物プランクトンの存在量を算出する、
    請求項8又は9に記載の特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置。
  11. 請求項8〜10のいずれか1つに記載の特定種の植物プランクトンの存在量の算出装置により算出された特定種の植物プランクトンの前記存在量に基づいて、前記特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆を検知する予兆検知部を備えている、特定種の植物プランクトンによる赤潮発生の予兆検知装置。
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