以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
以下では、先ず、図1A〜図4を用いて、本開示の一実施形態である非水電解質二次電池10の概略構成について説明する。
図1A、図1B、図2A〜図2C、及び図4に示すように、非水電解質二次電池10は、電池ケース25と、封口板23と、偏平状の電極体14とを備える。電池ケース25は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、高さ方向一方側に開口部を有する扁平角形の缶により構成されている。図1Bに示すように、電池ケース25は、底部40、一対の第1側面41、及び一対の第2側面42を有し、第2側面42は、第1側面41よりも大きくなっている。
図2に示すように、電極体14は、電池ケース25内に収容されている。電極体14は、図4に示すように、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して互いに絶縁された状態で巻回された構造を有する。電極体14の最外面側はセパレータ13で被覆され、負極板12は正極板11よりも外周側に配置される。
図3Aに示すように、正極板11は、厚さが例えば10〜20μm程度のアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなる正極芯体の両面に正極合剤スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定寸法に帯状に切断して製造される。塗布工程では、幅方向の一方側の端部に、長手方向に沿って両面に正極合剤層11aが形成されていない正極芯体露出部15が形成されるようにする。
この正極芯体露出部15の少なくとも一方側の表面には、例えば正極合剤層11aに隣接するように、正極芯体露出部15の長さ方向に沿って正極保護層11bが形成されることが好ましい。正極保護層11bには、絶縁性無機粒子と結着剤とが含まれる。この正極保護層11bは、正極合剤層11aよりも導電性が低い。正極保護層11bを設けることにより、異物等により負極合剤層12aと正極芯体との短絡を防止できる。また、正極保護層11bに導電性無機粒子を含有させることができる。これにより、正極保護層11bと負極合剤層12aが短絡した場合であっても、小さい内部短絡電流を流し続けることができ、これにより非水電解質二次電池10を安全な状態へと移行させることができる。正極保護層11bの導電性は、導電性無機粒子と、絶縁性無機粒子との混合比で制御できる。なお、正極保護層11bは、設けられなくてもよい。
図3Aに示すように、正極板11は、長手方向両側の切断端部である巻き始め側端部11sと巻き終わり側端部11eとに絶縁テープ(テープ)50がそれぞれ貼り付けられている。絶縁テープ50は、詳しくは後述するが、絶縁性の基材と、基材上に設けられた粘着層とを有している。また、絶縁テープ50は、基材上に粘着層が設けられていない非粘着領域を有する。このように正極板11の切断端部に絶縁テープ50を貼り付けることで、切断時に正極芯体の切断端部から突出して形成されたバリ突起による内部短絡を抑制することができる。
また、切断時の衝撃等で正極合剤層11aの小片が正極芯体から脱落し易くなることがある。絶縁テープ50を貼り付けることで正極合剤層11aの小片が脱落するのを抑制することができ、これによっても内部短絡を抑制する効果がある。なお、絶縁テープ50は、正極板11において長手方向と直交する幅方向の全体にわたって貼り付けてもよいし、正極芯体露出部15の幅方向端部側を覆わない程度の幅寸法で貼り付けてもよい。さらに、絶縁テープを負極板12の長手方向の端部にも貼り付けてもよい。
図3Bに示すように、負極板12は、厚さが例えば5〜15μm程度の銅箔又は銅合金箔からなる長尺帯状の負極芯体の両面に負極合剤スラリーを塗布し、乾燥及び圧延した後、所定の長さに切断する。塗布工程では、長手方向に沿って両面に負極合剤層12aが形成されていない負極芯体露出部16が形成されるようにする。なお、正極芯体露出部15および負極芯体露出部16は、それぞれ正極板11および負極板12の幅方向の両側の端部に沿って形成してもよい。
図4に示すように、正極芯体露出部15と負極芯体露出部16が夫々に対向する電極の合剤層11a,12aに重ならないように、正極板11及び負極板12を、対向する合剤層11a,12aに対して電極体14の幅方向(正極板11及び負極板12の幅方向)にずらして配置する。そして、セパレータ13を挟んで正極板11と負極板12とを互いに絶縁した状態で巻回し、偏平状に成形することで、偏平状の電極体14が作製される。電極体14は、巻回軸が延びる方向(帯状の正極板11、帯状の負極板12、及び帯状のセパレータ13を矩形状に展開したときの幅方向に一致)の一方側端部に複数枚積層された正極芯体露出部15を備え、他方側端部に複数枚積層された負極芯体露出部16を備える。セパレータ13の幅は、正極合剤層11a及び正極保護層11bを被覆できると共に負極合剤層12aの幅よりも大きいことが好ましい。
電極体14の一方側端部において複数枚積層された正極芯体露出部15は、図2Aに示すように、正極集電体17を介して正極端子18に電気的に接続される。また、電極体14の他方側端部において複数枚積層された負極芯体露出部16は、負極集電体19を介して負極端子20に電気的に接続される。また、詳述しないが、図2Aに示すように、正極集電体17と正極端子18との間には、電池ケース25の内部のガス圧が所定値以上となったときに電流経路を遮断するように作動する電流遮断機構27が設けられることが好ましい。
図2A〜図2Cに示すように、正極集電体17及び負極集電体19にはリブが形成されていることが好ましい。
図1A、図1B及び図2Aに示すように、正極端子18及び負極端子20の夫々は、絶縁部材21、22を介して封口板23に固定される。封口板23は、電池ケース25内のガス圧が電流遮断機構27の作動圧よりも高くなったときに開放されるガス排出弁28を有する。正極集電体17、正極端子18及び封口板23は、それぞれアルミニウム又はアルミニウム合金で形成され、負極集電体19及び負極端子20は、それぞれ銅又は銅合金で形成される。図2Cに示すように、偏平状の電極体14は、封口板23側を除く周囲に絶縁性の樹脂シート24を介在させた状態で一面が開放された角形の電池ケース25内に挿入される。
図2B及び図2Cに示すように、正極板11側では、巻回されて積層された複数枚の正極芯体露出部15は、厚み方向において2分割され、その間に正極用中間部材30が配置される。正極用中間部材30は樹脂材料からなり、正極用中間部材30には、導電性の正極用導電部材29が、1以上、例えば2個保持される。正極用導電部材29はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されることが好ましい。
負極板12側でも、巻回されて積層された複数枚の負極芯体露出部16は、厚み方向におけて2分割され、その間に負極用中間部材32が配置される。負極用中間部材32は、樹脂材料からなり、負極用中間部材32には導電性の負極用導電部材31が、1以上、例えば2個保持される。負極用導電部材31は銅又は銅合金で形成されることが好ましい。
正極用導電部材29と、その延在方向の両側に配置されている収束された正極芯体露出部15は、例えば抵抗溶接されて電気的に接続され、収束された正極芯体露出部15と、その電池ケース25の奥行方向外側に配置された正極集電体17も、例えば抵抗溶接されて電気的に接続される。また、同様に、負極用導電部材31と、その両側に配置されて収束されている負極芯体露出部16は、例えば抵抗溶接されて電気的に接続され、収束された負極芯体露出部16と、その電池ケース25の奥行方向外側に配置された負極集電体19も、例えば抵抗溶接されて電気的に接続される。正極集電体17の正極芯体露出部15側とは反対側の端部は、正極端子18に電気的に接続され、負極集電体19の負極芯体露出部15側とは反対側の端部は、負極端子20に電気的に接続される。その結果、正極芯体露出部15が正極端子18に電気的に接続され、負極芯体露出部16が負極端子20に電気的に接続される。
正極芯体露出部15と正極集電体17の接続、及び負極芯体露出部16と負極集電体19の接続を抵抗溶接により行う例を示したが、レーザ溶接又は超音波溶接を用いてもよい。また、正極用中間部材30及び負極用中間部材32を用いなくてもよい。
図1Aに示すように、封口板23には電解液注液孔が設けられる。正極集電体17、負極集電体19、及び封口板23等が取り付けられた電極体14を、電池ケース25内に配置する。このとき、電極体14を箱状ないし袋状に成形した絶縁シート24内に配置した状態で、電極体14を電池ケース25内に挿入することが好ましい。
その後、封口板23と電池ケース25との嵌合部をレーザ溶接し、その後、電解液注液孔から非水電解液を注液する。その後、電解液注液孔をブラインドリベット等の封止部材26により密閉する。
非水電解質二次電池10は、単独であるいは複数個が直列、並列ないし直並列に接続されて各種用途で使用される。非水電解質二次電池10を車載用途等において複数個直列ないし並列に接続して使用する際には、別途正極外部端子及び負極外部端子を設けてそれぞれの電池をバスバーで接続するとよい。
なお、電極体14が、その巻回軸が電池ケース25の底部40と平行となる向きに配置される場合について説明したが、電極体が、その巻回軸が電池ケース25の底部40と垂直となる向きに配置される構成でもよい。また、非水電解質二次電池10が、巻回型の電極体14を有する例について説明したが、これに限定されるものではなく、非水電解質二次電池は積層型の電極体を備えてもよい。
電極体14を構成する正極板11の正極合剤層11aに含まれる正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiaMO2(a=0.8〜1.2、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiaCoO2(a=0.8〜1.2)、LiaNiO2(a=0.8〜1.2)、LiaNiyCo1−yO2(a=0.8〜1.2、y=0.01〜0.99)、LiaMnO2(a=0.8〜1.2)、LiaCoxMnyNizO2(a=0.8〜1.2、x+y+z=1)や、LiMn2O4又はLiFePO4などを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、上述のリチウム遷移金属複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム、タングステンなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。
具体例として、正極合剤層は、正極活物質としてのLiNi0.35Co0.35Mn0.30O2と、導電剤としてのカーボンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、質量比で93.5:5:1.5の割合で含んだものを用いることができる。
非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(C2F5SO2)3、LiAsF6、LiClO4、LiPF2O2などのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF6を用いることが好ましい。
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB(リチウム−ビスオキサレートボレート)の他、中心原子にC2O4 2−が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C2O4)xRy](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C2O4)F2]、Li[P(C2O4)F4]、Li[P(C2O4)2F2]などがある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8〜1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が非水電解液1リットル当たり1.0〜1.6モルであることが望ましい。
電極体14を構成する負極板12の負極合剤層12aに含まれる負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、珪素材料、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
具体例として、負極合剤層は、負極活物質としての黒鉛と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)を質量比で98:1:1の割合で含んだものを用いることができる。
セパレータとしては、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができる。セパレータとしては、ポリオレフィン製の微多孔性膜を用いるのが好ましい。また、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
正極とセパレータとの界面ないし負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーを含む層を形成することができる。このフィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムなどを単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層の形成は、正極板、負極板、あるいはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極板、負極板、あるいはセパレータに貼り付ける方法などを用いることができる。
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の非水電解質二次電池10が備える電極体14を構成する正極板11について説明する。図5は、絶縁テープ50が貼り付けられた正極板11の端部11dを示す拡大断面図である。図6は、絶縁テープ50の非粘着領域56に対向する正極合剤層11の部分からリチウムが絶縁テープ50の端部60を回り込んで移動して負極板12に析出する様子を模式的に示す図である。
図3Aを参照して上述したように、正極板11の巻き始め端部と巻き終わり端部には絶縁テープ50がそれぞれ貼り付けられている。図5に示すように、正極板11の端部11dは、例えば、カッター等によって切断された切断端部となっている。図5に示される正極板11の端部11dは、例えば巻き終わり端部である。また、正極板11の端部11dは、セパレータ13を介して負極板12と対向している。負極板12は正極板11よりも長手方向の寸法が長く形成されている(図3参照)。そのため、負極板12の端部12dは正極板11の端部11dよりも外側に位置している。
正極板11は、アルミニウム合金箔からなる正極芯体11cの両面に正極合剤層11aが形成されている。正極合剤層11aは、正極芯体11cの端部(すなわち正極板11の端部11d)まで形成されている。
絶縁テープ50は、絶縁性の基材52と、基材52上に設けられた粘着層54とを有する。また、絶縁テープ50は、基材52上に粘着層54が設けられていない非粘着領域56を有する。基材52の材料には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニール、テフロン(登録商標)、ポリイミド、カプトン(登録商標)、ポリフェニレンサルファイドなどが用いられる。また、粘着層54には、例えば、アクリル系、シリコン系、ゴム系の糊剤が用いられる。
絶縁テープ50は、その外側端部が正極板11の端部11dからはみ出すように貼り付けられている。ここで、絶縁テープ50や後述するリチウム放出抑制部等について内側および外側とは、長尺帯状をなす正極板11の長手方向中央部側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。
絶縁テープ50において、非粘着領域56は基材52の内側端部に設けられている。すなわち、基材52の他の領域には粘着層54が設けられおり、粘着層54は基材52の外側端部まで連続して設けられている。ここで、非粘着領域56の端部60は、絶縁テープ50の内側端部に一致する。
絶縁テープ50は、粘着層54が正極板11の端部の外側および内側に位置した状態で貼り付けられている。本実施形態では、2枚の絶縁テープ50が正極板11の端部の両面に貼り付けられた例が示される。したがって、2枚の絶縁テープ50は、正極板11の端部11dの外側において粘着層54同士が接着された状態になっている。
なお、本実施形態では、正極板11の巻き始め端部と巻き終わり端部の両方に絶縁テープ50を貼り付ける例について説明するが、これに限定されるものではなく、何れか一方の端部だけに絶縁テープを貼り付けてもよい。また、正極板11の端部11dの両面に絶縁テープ50を貼り付ける場合に限らず、端部11dの片面だけに絶縁テープを貼り付けてもよい。
上記のように正極板11の端部11dに貼り付けられた絶縁テープ50は、その非粘着領域56が正極板11の端部11dから所定寸法(例えば数mm程度)だけ内側に離れた位置で正極合剤層11aに対向するように配置されている。図5では、絶縁テープ50の非粘着領域56と正極合剤層11aとの間に粘着層54の厚みに相当する一定の隙間が形成されているように示すが、実際には非粘着領域56が正極合剤層11aの表面に接触していてもよい。
このように正極板11の端部11dに絶縁テープ50を貼り付けることで、切断時に正極芯体11cの端縁部に形成されたバリ突起や、正極板11の端部から脱落した正極合剤層11aの小片に起因して、内部短絡が生じるのを抑制することができる。
また、絶縁テープ50に非粘着領域56を設けたことで、粘着層54が電解液を吸収してセパレータ13内の電解液を枯渇させ、リチウムが析出しやすくなって内部短絡の原因となることも抑制できる。
しかし、本願発明者らは、このように絶縁テープ50に非粘着領域56を設けたことで、非水電解質二次電池の充電時に、正極合剤層11aからセパレータ13を通過して負極板12側へ移動するリチウムイオンが負極合剤層12aの表面で析出することがあり、内部短絡の原因となり得ることを見出した。具体的には、非水電解質二次電池において、温度25℃、充電開始時の充電状態値SOC(State Of Charge)50%、通電電流85A、通電時間100秒、休止時間600秒(すなわち10分)として、休止時間600秒を挟んで充電と放電を行う充放電サイクルを500サイクル繰り返し行ったところ、負極板12上でのリチウム金属の析出が発生したことを確認した。
本願発明者らが鋭意検討を行った結果、非粘着領域を設けた絶縁テープを正極板の端部に貼り付けた場合のハイレート充電時のリチウム金属析出は、次のようなメカニズムによって生じることが判った。
図6に示すように、絶縁テープ50の非粘着領域56に対向する正極合剤層11aの部分から放出されたリチウムイオンは、非粘着領域56の端部60(すなわち絶縁テープ50の内側端部)を回り込んで、負極板12側へ移動する。そうすると、非粘着領域56の端部60の近傍に位置する負極合剤層12a上で正極板11から移動してきたリチウムイオンの量が他の領域よりも多くなる。その結果、負極合剤層12aでの吸蔵可能量を超えてしまい、非粘着領域56の端部60の近傍に位置する負極合剤層12a上でリチウム金属70が析出することが判明した。
そこで、本開示に係る非水電解質二次電池10では、上記のような知見に基づいて、絶縁テープ50において非粘着領域56の端部60の近傍に位置する正極合剤層11aに、リチウムイオンの放出が抑制されるリチウム放出抑制部62を設けることによって、リチウムの金属析出を抑制することとした。
図5に示すように、絶縁テープ50の非粘着領域56の端部60の近傍に位置する正極合剤層11aに、リチウムイオンの放出が抑制されているリチウム放出抑制部62が設けられている。図5において、正極合剤層11aのリチウム放出抑制部62がハッチング部分で示されている。
リチウム放出抑制部62は、絶縁テープ50の非粘着領域56で覆われた第1領域62aと、非粘着領域56の端部60よりも内側に位置して絶縁テープ50によって覆われていない第2領域62bとを含む。第1領域62aと第2領域62bの境界位置は、絶縁テープ50における非粘着領域56の端部60の位置に対応する。
ここで、正極板11の長手方向に関し、第1領域62aの寸法をL1、第2領域62bの寸法をL2、リチウム放出抑制部62の寸法をL(=L1+L2)としたとき、第1領域62aおよび第2領域62bの寸法L1,L2は夫々、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上8mm以下であることがより好ましく、3mm以上6mm以下であることが更に好ましい。また、リチウム放出抑制部62の寸法Lは、2mm以上20mm以下であることが好ましく、4mm以上16mm以下であることがより好ましく、6mm以上12mm以下であることが更に好ましい。
正極合剤層11aのリチウム放出抑制部62は、例えば、正極合剤層11aの充填密度を局部的に高くした部分とすることができる。具体的には、正極板11の製造する際に正極合剤層11aを圧延する工程において、リチウム放出抑制部62となる正極合剤層11aの部分に対する押圧力を他の部分よりも大きくするか、または、圧延する回数を他の部分よりも多くすることによって、正極合剤層11の充填密度を局部的に高くすることができる。このように充填密度を局部的に高くすることでリチウム放出抑制部62に含まれる隙間が小さくなって、電解液が内部に浸入しにくくなる。そうすると、第1および第2領域62a,62bではリチウムイオンの放出がされにくくなり、その結果、リチウム放出抑制部62に対向する負極合剤層12aの位置でリチウムの金属析出を抑制することができる。
また、別の態様として、リチウム放出抑制部62は、正極合剤層11aに含まれる正極活物質の量が局所的に低減された部分とすることができる。具体的には、例えば、正極板11の製造する際に正極合剤スラリーを他の領域よりも薄く塗布し、乾燥および圧延することによって正極活物質の量が局所的に低減された部分を形成することができる。このようにして正極活物質の量が比較的少ない部分としてリチウム放出抑制部60を構成することで、第1及び第2領域62a,62bから放出されるリチウムイオンの量が正極合剤層11aの他の領域に比べて少なくなり、その結果、リチウム放出抑制部62に対向する負極合剤層12aの位置でリチウムの金属析出を抑制することができる。
また、さらに別の態様として、リチウム放出抑制部62は、正極合剤層11aの表面に電池反応阻害層を設けた部分とすることができる。ここで電池反応阻害層は、正極合剤層11aへの電解質の侵入を阻害する機能を有する層であり、例えば、正極合剤層11aに含まれる結着剤と同じ材料(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF))によって正極合剤層11aの表面に薄層を形成して電解質の浸入を阻害してもよい。なお、電池反応阻害層は、正極合剤層11aの表面に限定されるものではなく、正極合剤層11aの内部に形成されてもよい。
また、さらに別の態様として、リチウム放出抑制部62は、正極合剤層11aに含まれる正極活物質を局部的に失活させた部分であってもよい。この場合、リチウム放出抑制部62は、正極合剤層11aに含まれる正極活物質が熱的に失活されていてもよい。具体的には、正極合剤層11aにおける第1領域62aおよび第2領域62bを例えば、レーザ照射、ホットプレスなどによって活性を失わせることによって、リチウムイオンの放出を抑制することができる。
なお、正極合剤層11aの失活によるリチウムイオンの放出抑制は、正極合剤層11aの充填密度の局部的増加、又は、正極合剤層に含まれる正極活物質量の局所的低減と合わせて、実施されてもよい。
上述したように絶縁テープ50の非粘着領域56の端部60近傍に位置する正極合剤層11aに、リチウムイオンの放出が抑制されるリチウム放出抑制部62を設けたことで、上記端部60近傍において負極板12側へ放出される又は移動するリチウムイオンを低減することができ、その結果、負極板12上でのリチウムの金属析出を抑制することができる。
なお、本開示は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることはいうまでもない。