JP2019163196A - コンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー - Google Patents
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Abstract
Description
また、本発明の他の観点によれば、本発明のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマーに、細骨材を添加してなる、コンクリートの断面修復用ジオポリマーモルタルが提供される。
また、本発明ではパーライト粉末及び高炉スラグ粉末以外に他のフィラーを併用することもできる。例えば、高炉スラグ粉末の一部をメタカオリン、フライアッシュ、石炭灰、下水汚泥・都市ごみ焼却灰溶融スラグ粉末、砕石粉の1種又は2種以上で代替(置換)することができる。
細骨材の添加率は、活性フィラーと細骨材との質量比で、活性フィラー:細骨材=1:1〜4とすることができ、活性フィラー:細骨材=1:2〜3とすることが好ましい。
1.1 使用材料
本試験でジオポリマースラリー(GPS)に使用した材料を表1に示す。アルカリ溶液(AS)として、水ガラス水溶液(WG)、10Mの苛性ソーダ水溶液(NH)、液体ガラス(S)、ケイ酸リチウム(Li)のいずれか一種、又は複数種を所定の体積比で混合したものを使用した。WGは、JISK1408の1号水ガラスと水を1:1の体積比で調製したものであり、Liについては市販品の原液を使用した。また、新規のアルカリ溶液として、NHとSを所定の体積比で混合して一部のシリーズに使用した。Sは、Sの原液と水を1:2の体積比で混合したものであった。このSの成分は企業秘密のため不明である。
活性フィラーとしては、高炉スラグ粉末JISA6206の8000級(BFS8)、又は6000級(BFS6)を主に使用し、一部の調合については、フライアッシュJISA6201のI種(FA)、又はパーライト粉末(P)を混合した。活性フィラーの化学成分を表2に示す。
なお、ひび割れ補修用としてのGPSの性能を改善するために、一部の調合においてL−酒石酸ナトリウムを主成分とした遅延剤(R)(上記非特許文献1参照)とエーテル系収縮低減剤(SR)(下記参考文献1参照)を混和剤として添加した。
参考文献1 岡田朋久,李柱国,橋爪進,永井伴英:フライアッシュと高炉スラグ微粉末を用いたジオポリマーコンクリートの性能に及ぼす収縮低減剤の影響に関する研究,コンクリート工学年次論文集,Vol.39,No.1,2017,pp.2029−2034
本試験で作製したGPSの調合を表3に示す。活性フィラー(AF)の種類、アルカリ溶液(AS)の構成及び混和剤の添加有無を変えて、C、W、S、Pタイプに分けて試験を実施した。
Cタイプの調合では、BFS8を単独又はFAを併用し、NHとWGのいずれか又はこれらの混合水溶液をアルカリ溶液とした。
Wタイプは、BFSとFAを併用し、NHとWGの混合水溶液を使い、R又はRとSRを添加したものである。
Sタイプの調合の特徴として、SとNHの混合溶液をアルカリ溶液とした。
これらC、W、Sタイプでは、GPSの流動性や注入性を確保するために、液固比を0.7又は0.75とした。
Pタイプの調合では、BFS8とPを所定の割合で混合し、LiとNHの混合水溶液をアルカリ溶液とした。液固比は0.5又は0.6とした。
表3に示す調合によって使用材料を計量して、活性フィラーとアルカリ溶液をペーストミキサーに投入して2分間練り混ぜてGPSとした。活性フィラー、アルカリ溶液が2種類の材料で構成される場合にはアルカリ溶液と活性フィラーをそれぞれ予め混合してから練り混ぜを行った。活性フィラーの混合はペーストミキサーで行った。また、混和剤を添加する場合は、混和剤をアルカリ溶液で溶解させてから活性フィラーと混合した。練り混ぜた直後に得られたGPSのフレッシュ性状を測定し、硬化後の性能試験用供試体を作製した。
可使時間の測定方法はまだ確立されていないため、本試験では、室温20±3℃の条件下で、試料面を実験室用ミクロスパーテルで突き刺し、圧痕に液の進入が認められず、かつ圧痕が明瞭に残るまでの時間を計測し、アルカリ溶液の投入からの経過時間を可使時間とした。この可使時間以外の、以下の性能試験は主にW、S、Pタイプに対して行った。
練り混ぜ直後に、室温20±3℃の条件下でB型粘度計によって粘度を測定した。また、土木学会のPCグラウトのコンテシステンシー試験方法に準じて、容量630mL、排出口径φ14mm、上端口径φ70mm、高さ395mmのJロートを用いて流下時間を測定した。
日本建築仕上材工業会の保水性試験法(NSKS−003:補修用注入ポリマーセメントスラリー)に準じて保水係数の測定を行った。この保水係数が小さいほど保水性に優れているということである。
JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じて試験体の作製及び養生を行い、材齢28日で圧縮強度を測定した。試験体の寸法は、40×40×160mmとした。試験体の作製及び養生は、GPSを型枠に流し込んで、材齢1日で脱型後、乾燥収縮によるひび割れの発生を防ぐためにラップで密閉して20±3℃の室内で養生した。
JIS原案(コンクリートの溶液浸漬による耐薬品性試験方法)に準拠して、直径5cm×高さ10cmの円柱状の試験体を作製し、20℃、R.H.60%の養生を28日間行った。その後、5%の濃度の硫酸に浸漬し、7日ごとの質量変化率を計測し、表面の劣化状況の観察と記録を行った。なお、質量変化を測定する際には、試験体を水で洗ってから表面を布で拭き取り測定した。
JISA6024:2015の建築補修用及び建築補強用エポキシ樹脂のA法に準じて、試験体の作製及び養生を行い材齢28日で接着強度を測定した。なお、接着層の厚さは3mmとした。
直径5cm×高さ10cmの円柱状の試験体を20℃、R.H.60%の室内において作製し、2日後に脱型した。この試験体を作製する際に、長さが50mmの埋め込みゲージを試験体の長軸方向の中心に埋め込み、作製直後から長さの変化率を測定した。
2.1 可使時間
図1に、GPSの可使時間をタイプ別に示す。
CタイプではBFSのみを活性フィラーとした場合、アルカリ溶液の種類に拘らず、可使時間はほぼ同じであり20分以下であった。一方、FAとBFSを併用した場合、可使時間は、アルカリ溶液がNH、WG、NH+WGの順に長くなることが認められた。しかし、NH+WGを使っても可使時間は45分以下であった。流動性の経時変化を考慮すると、ひび割れや欠損部への注入充填作業は困難である。
図2に、W、S、PタイプのGPSの粘度試験の結果を示す。
同図に示すように、Wタイプ及びSタイプでは、BFS6の使用によりBFS8の使用と比較して小さい粘度が得られた。またWタイプに比べ、Sタイプの粘度は高い傾向が見られた。これは、Sタイプの液固比は小さいためである。なお、SRの添加によって、Sタイプの粘度は若干減少したが、Wタイプに与える影響は見られなかった。
WタイプのGPSの粘度は、BFS8の使用で約2000mPa・s、BFS6の使用で約1500mPa・sとなった。一方、Sタイプの場合、BFS8を使用したGPSの粘度は約3100mPa・sで、BFS6を使用したものは約2500mPa・sであった。
PタイプのGPSの粘度は、BFSの割合が大きいほど高い傾向が見られ、Pを70%混合した場合には約3000mPa・sであった。Pを50%混合した場合の粘度は約16000mPa・sと最も高くなったが、液固比を高くすることなどにより粘度を低くすることは可能である。なお、図2の結果からすると、GPSの粘度を低くするためにPの混合量は60%以上とすることが好ましい。
図3に、W、S、PタイプのGPSの流下時間を示す。
同図に示すように、球状粒子であるFAを使ったWタイプは液固比が大きいが、Sタイプと同等な流下時間を示した。また、RとSRの添加により、WタイプとSタイプのGPSの流下時間において大幅な変化は確認されなかった。しかし、GPSの流下時間は、使用したBFSの比表面積によって異なる傾向が見られた。すなわち、BFS8を使用した場合には約20秒であったが、BFS6の使用で8秒程度となり大幅に低下した。
PタイプのGPSについては、粘度と同様にBFSの割合が大きいほど流下時間は長い傾向が見られ。Pを70%混合した場合には約15秒であった。Pを50%混合した場合の流下時間は約125秒と最も長くなったが、液固比を高くすることなどにより流下時間を短くすることは可能である。なお、図3の結果からすると、Pの混合量は60%以上とすることが好ましい。
図4に、Sタイプ(S8)とPタイプ(P70)のGPSのテーブルフロー試験の結果及び経時変化を示す。
同図に示すように、SタイプのGPSの流動性は経過時間と共に大きく低下する傾向が見られた。凝結しなくても流動性が大幅に低下すると、ひび割れに注入できなくなる。すなわち、SタイプのGPSの可注入時間は20分程度しかないと判断された。
これに対して、PタイプのGPSの流動性は45分まで維持され、経時的低下は少なかった。すなわち、Pタイプの場合、可注入時間を45分程度まで延長できることが確認された。
図5に、GPSの保水係数に及ぼす混和剤とBFS種類の影響を示す。
SタイプとPタイプのGPSの保水係数はWタイプより大きかったが、いずれも30%以下であり保水性に問題はなかった。
図6(a)に、WタイプのGPS硬化体の圧縮強度を示す。
混和剤を使用しなかった場合の圧縮強度が最も大きく、材齢28日の圧縮強度は約40N/mm2であった。しかし、混和剤の添加により強度の低下が見られた。特に、RとSRを共に添加する場合の圧縮強度の低下は大きく、材齢28日の圧縮強度は30N/mm2以下になった。また、Rのみを添加しBFS8を使用した場合であっても、圧縮強度は40N/mm2以下であった。
図6(b)に、SタイプのGPS硬化体の圧縮強度を示す。
SRを添加した場合、BFSの級に拘らず、材齢28日の圧縮強度は36N/mm2を超えたが、45N/mm2以下であった。
図6(c)に、PタイプのGPS硬化体の圧縮強度を示す。
BFSの割合が大きいほど、圧縮強度は大きくなった。また、Wタイプ、Sタイプと比較してPタイプの圧縮強度は大きく、BFSの割合が30%であっても材齢28日の圧縮強度は70N/mm2以上になった。
このようにPタイプによれば、常温下の強度発現性が向上し、高強度補修材を実現できることが確認された。
図7に、W、S、PタイプのGPSの材齢28日の接着強度を示す。
WタイプのGPSの接着強度は4.0N/mm2以下であった。Sタイプについては、SRの添加によって接着強度が4.0N/mm2を上回った。これに対して、PタイプのGPSでは、SRを添加しなくても接着強度は4.0N/mm2を上回った。
このように、Pタイプは、4.0N/mm2以上の高い接着強度を容易に実現できることが確認された。
図8に、W、S、PタイプのGPS硬化体の硫酸溶液浸漬後の質量変化率を示す。
WタイプのGPS硬化体の質量は浸漬期間の増加に伴って減少し、4週間では13%程度の減少が確認された。また、図9に示すように浸漬後に顕著な外観の破損が見られた。一方、SタイプのGPS硬化体の質量は浸漬期間の増加に伴って徐々に増加し、4週間では7%程度増加した。また、4週間後に、直径3mm程度、高さ5mm程度の寸法増加が見られた。なお、図9に示すように浸漬後に外観に若干の破損が見られた。これに対して、PタイプのGPS硬化体は、4週間浸漬後の質量減少率は2.8%とわずかであり、また図9に示すように外観の変化もほとんど見られなかった。
このようにPタイプは、耐酸性に優れることが確認された。
図10に、W、S、PタイプのGPS硬化体の長さ変化率を示す。
WタイプのW8RSRとW6RSRには長さ変化の違いがほとんどなくBFSの種類による影響は見られなかった。一方、Sタイプの場合、S8とS8SRの結果を比較すると、S8SRの長さ変化(収縮ひずみ)は小さく、SRの添加で乾燥収縮を抑制することが認められた。また、S8SRとS6SRを比べると、BFS6を使用したS6SRの方が、長さ変化は小さかった。PタイプのGPS硬化体の長さ変化は、W、Sタイプに比べ大きかったが、いずれも長さ変化率は1.5%以下で、補修材料としての乾燥収縮率(3%以下)の要求は満足している。
活性フィラーとしてPとBFSを併用したPタイプのGPSによれば、ひび割れ補修と断面修復の注入・充填材として高い注入性・充填性と適切な可使時間を確保しながら、常温下での強度(圧縮強度・接着強度)の発現性に優れ、更に高い耐酸性も確保することができる。
Claims (6)
- アルカリ溶液に、パーライト粉末及び高炉スラグ粉末を含む活性フィラーを混合してなる、コンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー。
- アルカリ溶液が、ケイ酸リチウム及び水酸化ナトリウムを含む水溶液である、請求項1に記載のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー。
- パーライト粉末と高炉スラグ粉末との質量比が、
パーライト粉末:高炉スラグ粉末=80:20〜50:50である、請求項1又は2に記載のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー。 - 高炉スラグ粉末の一部を、メタカオリン、フライアッシュ、石炭灰、下水汚泥・都市ごみ焼却灰溶融スラグ粉末、砕石粉の1種又は2種以上で代替している、請求項1から3のいずれかに記載のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー。
- 液固比が0.4〜0.7である、請求項1から4のいずれかに記載のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマー。
- 請求項1から5のいずれかに記載のコンクリートのひび割れ補修又は断面修復用ジオポリマーに、細骨材を添加してなる、コンクリートの断面修復用ジオポリマーモルタル。
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