JP2014189437A - ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法 - Google Patents

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泰文 棚橋
Yoshie Sato
良恵 佐藤
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Abstract

【課題】 本発明は、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法に関し、特に普通ポルトランドセメントに比べてひび割れが発生しやすいことが一般に知られている高炉セメント組成物のひび割れ発生を抑制して低減することができる、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明のひび割れ低減型高炉セメント組成物は、高炉セメントに対して硫酸ナトリウムを2〜5質量%配合してなる、高炉セメント組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法に関し、特に普通ポルトランドセメントに比べてひび割れが発生しやすいことが一般に知られている高炉セメント組成物のひび割れ発生を抑制して低減することができる、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法に関する。
現在、産業廃棄物等の利用が重要となってきており、製鉄工程で派生する副産物である高炉スラグをセメント原料の一部に利用した高炉セメントが有効に利用されるようになっている。
高炉セメントは、高炉スラグの微粉末とセメントを混合したセメントであり、JIS R 5211に規定されている。
高炉セメントを用いたコンクリートは、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートと比較して、また耐塩性に優れているという利点を有するが、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートに比較と比較して、ひび割れが発生しやすいという問題があることが一般に知られている。
コンクリート構造物のひび割れが発生する一因として、硬化した後にコンクリートの乾燥収縮が進行することが挙げられる。
これまで高炉セメントを用いたコンクリートのひび割れを抑制する対策として、石膏の追加添加が有効であるが、その他に以下の提案がされている。
「高炉セメントコンクリートの引張応力下における変形性能に関する一考察」,第65回セメント技術大会講演要旨pp136−137(2011)(非特許文献1)や、「高炉セメントモルタルの破壊エネルギー」,第66回セメント技術大会講演要旨pp214−215(2012)(非特許文献2)には、高炉セメントを用いたコンクリートのひび割れ抵抗性を高めるため、例えば水中養生のような湿潤養生期間を延長することが有効であることが記載されている。
また、「低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いたコンクリートの特徴」,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,2005(非特許文献3)や、「試作した高炉セメントを用いたコンクリートの耐久性」コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.1,2008(非特許文献4)には、高炉セメントの比表面積を小さくしたり、更には、SO量を増やすことで、高炉セメントを用いたコンクリートのひび割れ抵抗性は向上させることが記載されている。
さらに、特許第4822498号公報(特許文献1)には、膨張材、ひび割れ収縮低減剤、アルカリ金属塩を混合したセメント混和剤を使用することによりセメント硬化体のひび割れが低減することが、特開2011−102201号公報(特許文献2)や特開2011−102202号公報(特許文献3)には、高炉セメントを用いたコンクリートに収縮低減剤を添加することが開示されている。
しかし、水中養生のような湿潤養生期間を延長して長期にすることは、工期の問題から限界がある。
また、セメントの比表面積を小さくすると、コンクリートの初期強度が低下してしまう。
膨張材と収縮低減剤を併用することはひび割れ抵抗性向上に有効であるが、これらの材料の併用はコンクリートのコストを上昇させ、望ましくない。
さらに、アルカリ金属塩の添加はコンクリートのアルカリ総量を増加させるため、アルカリ骨材反応の危険性が高まる等の問題点がある。
また、市販の収縮低減剤は消泡作用、空気連行作用を有するものが混在しており、空気量の管理が煩雑となる。
特許第4822498号公報 特開2011−102201号公報 特開2011−102202号公報
「高炉セメントコンクリートの引張応力下における変形性能に関する一考察」、第65回セメント技術大会講演要旨pp136−137(2011) 「高炉セメントモルタルの破壊エネルギー」,第66回セメント技術大会講演要旨pp214−215(2012) 「低発熱・収縮抑制型高炉セメントを用いたコンクリートの特徴」,コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,2005 「試作した高炉セメントを用いたコンクリートの耐久性」コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.1,2008(非特許文献4)
本発明の目的は、上記課題を解決し、石膏の追加添加をすることなく、高炉セメントから得られるコンクリート構造物のひび割れ発生を抑制することができる、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法を提供することである。
更に、高炉セメントのフレッシュ性状を損なうことなく、アルカリ骨材反応の促進を招かない、高炉セメントから得られるコンクリート構造物のひび割れ発生を抑制することができる、ひび割れ低減型高炉セメント組成物及びその製造方法を提供することである。
なお、ここで高炉セメント組成物には、高炉セメント、高炉セメントモルタル、高炉セメントコンクリートを含むものである。
本発明は、高炉セメントに対して硫酸ナトリウムを2〜5質量%配合してなることを特徴とする、ひび割れ低減型高炉セメント組成物である。
他の本発明は、高炉セメントに対して、予め硫酸ナトリウムを2〜5質量%となるように添加配合することを特徴とする、ひび割れ低減型高炉セメント組成物の製造方法である。
本発明によれば、高炉セメントを用いて得られるコンクリート硬化物となる高炉セメント組成物が、フレッシュ性状を損なうことなく、優れたひび割れ低減性能を備えることが可能となる。
また、本発明の高炉セメント組成物の製造方法によれば、上記本発明のひび割れ低減型高炉セメント組成物を、有効に簡便な方法で製造することができることとなる。
セメント組成物による供試体のひび割れ抵抗性を試験する装置の概略図である。
本発明を以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明のひび割れ低減型高炉セメント組成物は、高炉セメントに対して硫酸ナトリウム(NaSO)を2〜5質量%配合してなる、ひび割れ低減型高炉セメント組成物である。
本発明に適用する高炉セメントは、JIS R 5211に規定されている高炉セメントを用いることができ、高炉セメントB種が好適に使用できる。
また、本発明の高炉セメント組成物中に含まれる硫酸ナトリウムは、市場で入手できる公知のものを用いることができる。
該高炉セメント組成物中の硫酸ナトリウムの配合割合は、該高炉セメントに対して、2〜5質量%、好適には、2〜4質量%である。
即ち、高炉セメント100質量部に対して、硫酸ナトリウムを2〜5質量部配合するものである。
かかる配合量が5質量%を超えるとアルカリ総量過多の為アルカリ骨材反応が懸念され、また2質量%未満であると十分なひび割れ抵抗性が得られない。
更に、本発明の高炉セメント組成物には、その他の混和剤、例えば減水剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、消泡剤、乾燥収縮低減剤、防錆剤、防凍剤、着色剤などの混和材や、耐久性を向上させるための炭素繊維や鋼繊維などの補強材を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
減水剤としては、例えば、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系等の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等の液状または粉末状のいずれの公知の減水剤も使用できる。
本発明の高炉セメント組成物は、原材料である上記セメント、硫酸ナトリウム、細骨材及び粗骨材、必要に応じて上記公知の減水剤等の混和剤や補強材等を所定量均一混合して製造することができるものである。
また、当該セメント組成物と水とを混練してコンクリートを製造するが、予め当該セメント組成物を調製してこれと水とを混合しても、全ての原材料を一度に混合しても均一に混練できる方法であれば特に限定されない。
特に、本発明の高炉セメント組成物を製造するにあたり、高炉セメントに硫酸ナトリウムを予め配合しておくことが、コンクリート混練時の材料の偏り防止の点から望ましい。
混練水の量は、使用する材料の種類や配合により変化させることができる。
また、上記混練条件、混練機の種類などに限定はなく慣用の混練機を使用することが可能である。
このように製造した、本発明の高炉セメント組成物を用いた建築、土木構造物等は、石膏を追加添加することなく、優れたひび割れ低減性を有することとなり、耐久性を向上することができる。
本発明を具体的な実施例及び試験例により詳述する。
(実施例1〜3、比較例1〜7)
(使用材料)
以下の表1及び表3に示す各材料を用いて、以下の実施例1〜3及び比較例1〜7を実施した。
なお、表1中の細骨材の珪砂は、表2に示す混合質量割合で珪砂3〜7号を混合したものを用いた。
Figure 2014189437
Figure 2014189437
Figure 2014189437
上記表1及び表3の各材料を、表4に示す割合で配合して、各モルタルを調製した。なお、水(W)は水道水を使用した。
Figure 2014189437
(試験例)
(試験例1:ひび割れ抵抗性試験)
(試験の概要)
表3に示す各モルタルを用いて、ひび割れ抵抗性試験(一拘束試験)を実施した。
ひび割れ抵抗性試験は、以下のようにして実施した。
まず、表3に示す各モルタルを用いて図1に示す供試体を作成し、ひび割れ発生までの鋼材のひずみを測定し、得られた測定値から、下記式[1]により、一軸方向に作用する引張応力を算出する。
また自由収縮ひずみと鋼材のひずみとの差により、鋼材によって拘束されたひずみ(拘束ひずみ)を求める。
なお、本ひび割れ抵抗性試験は、JCI「混和材料から見た収縮ひび割れ低減と耐久性改善に関する研究委員会」試案を参考に行った。
Figure 2014189437
(試験条件及び結果)
鉄筋埋設型の一拘束試験を実施する供試体として、図1に示すように、表3の各モルタルを用い、100×100×1100mmの供試体を使用した。
各モルタル供試体の中央にφ32mmの丸鋼を埋設し、鉄筋中央には2箇所ひずみゲージを貼付け、打設直後からのひずみ量を測定した。
なお、ひび割れ発生時期や箇所を特定しやすいように、鉄筋両端400mmはねじ加工によりコンクリートとの定着をはかり、中央300mmの区間はスリップ区間とし、テフロン(登録商標)シートを巻きつけた。
養生条件は材齢5日までは封かん養生とし、材齢5日の脱型以降は20℃、60%R.H.の条件で気中養生とした。この際、供試体打設面および底面にはアルミテープを貼付け、側面および両端面を乾燥面とした。
得られた結果を表5に示す。
表5中、拘束ひずみ(μ)値が50μ以下であれば「×」、50〜70μであれば「△」、70〜100μであれば「○」、100μを超える場合は「◎」と評価とした。
即ち、拘束ひずみの数値が大きいほどひび割れ抵抗性が良好であることを意味する。
またフレッシュ性状の評価は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」で行うフロー試験にて、測定値が180mm以上の場合は「○」(供試体作成が容易に可能な流動性を有するもの)、130〜180mmの場合は「△」(供試体作成がやや困難なもの)、130mm以下の場合は「×」(供試体作成が困難なもの)として評価した。
また、総合評価は、基本的には、ひび割れ抵抗性の評価に依存して評価した。
Figure 2014189437
表5の結果より以下のことがわかる。
実施例1〜3の硫酸ナトリウム(NaSO)を混合した高炉セメントは、他と比較し高いひび割れ抵抗性を持ち、混合率を上げると、ひび割れ抵抗性が増した。
しかし、下記の試験例2で示す比較例9のように、硫酸ナトリウム(NaSO)の混合率を上げすぎると、コンクリート中のアルカリ総量の増加によりアルカリ骨材反応が懸念される。
比較例5の硫酸カリウム(KSO)を混合した高炉セメントは、比較例2の高炉セメント通常品よりひび割れ抵抗性に優れてはいるが、フレッシュ性状が悪く適さない。
また、比較例6の硫酸アルミニウムを混合した高炉セメントは、フレッシュ性状が著しく悪く、供モルタル試体を作製することが困難であったため、ひび割れ抵抗性試験は実施不可能であった。
これらの結果より、市販の高炉セメントB種に対して、硫酸ナトリウム(NaSO)を2〜5質量%混合することで、ひび割れ抵抗性は向上したことがわかる。
(実施例4、比較例8〜9)
(使用材料)
以下の各材料を用いて、実施例4及び比較例8〜9を実施した。
・セメント(C):高炉セメントB種(密度3.04g/cm 住友大阪セメント株式会社製)
・硫酸ナトリウム混合高炉セメント(混合率5wt%と6wt%、密度3.02g/cm
なお、高炉セメント及び硫酸ナトリウムは上記実施例1に用いたものと同じものを用いた。
・細骨材(S):島原産砕砂(密度:2.72g/cm、反応性骨材)
・粗骨材(G):島原産砕石(密度:2.77g/cm、反応性骨材)
・混和剤(Ad):商品名 ポゾリス78S、BASFジャパン株式会社製
・水:水道水
上記細骨材および粗骨材は、骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法およびモルタルバー法)により「無害でない」と判定されたものを使用した。具体的には、骨材のアルカリシリカ反応性試験は、JIS A 1145「骨材のアルカリシリカ反応性試験(化学法)」およびJIS A 1146「骨材のアルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法)」に準じて行った。
上記各材料を、表6に示す割合で配合して、各コンクリートを調製した。
Figure 2014189437
(試験例2:アルカリ骨材反応試験)
(試験の概要)
高炉セメントに硫酸ナトリウム(NaSO)を混合したセメントを用いたコンクリートは、アルカリ総量が増加し、アルカリ骨材反応の危険性が高まる。そこで、反応性骨材を用いた上記表6に示すコンクリートを用いてコンクリート供試体を作製し、アルカリ骨材反応性の有無を確認した。
なお、アルカリ骨材反応試験は「ZKT−206 コンクリートのアルカリシリカ反応性迅速試験方法」に準じて行った。
(試験結果)
各コンクリート供試体において、得られた結果を以下の表7に示す。
なお、各実施例4及び比較例8〜9の供試体を3個ずつ実施した。
表7中、相対動弾性係数≧80.0%の場合は「反応性なし(A)」、相対動弾性係数<80.0%の場合は再試験し、相対動弾性係数≧70.0%の場合は「反応性なし(B)」、相対動弾性係数<70.0%の場合「反応性あり」と評価する。
Figure 2014189437
表7の結果より以下のことがわかる。
実施例4の硫酸ナトリウムの混合率が5.0質量%以下であれば、アルカリ骨材反応の危険性はないが、比較例10に示すように、硫酸ナトリウムの混合率が5.0質量%を超えた6質量%ではアルカリ骨材反応が懸念されることがわかる。
本発明は、普通ポルトランドセメントに比較して、ひび割れが生じやすい高炉セメントに適用してひび割れの発生を抑制するのに利用することができる。

Claims (2)

  1. 高炉セメントに対して硫酸ナトリウムを2〜5質量%配合してなることを特徴とする、ひび割れ低減型高炉セメント組成物。
  2. 高炉セメントに対してアルカリ硫酸塩を2〜5質量%となるように予め添加配合することを特徴とする、ひび割れ低減型高炉セメント組成物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015209346A (ja) * 2014-04-24 2015-11-24 住友大阪セメント株式会社 3成分混合系結合材からなるアルカリシリカ反応抑制材及び該抑制材を用いたコンクリート
JP2016190771A (ja) * 2015-03-31 2016-11-10 住友大阪セメント株式会社 セメント組成物及びセメント硬化体の製造方法
JP2021143088A (ja) * 2020-03-11 2021-09-24 住友大阪セメント株式会社 セメント組成物、及び、セメント硬化体の製造方法

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