JP2019162822A - 強化繊維複合ロープ - Google Patents

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Abstract

【課題】高張力で伸び率が小さく、耐摩耗性に優れ、柔軟性であり、捩じれや切断端におけるほつれの発生がなく、かつ、安定した性能を発揮することができる強化繊維複合ロープの提供。【解決手段】モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成されることを特徴とする強化繊維複合ロープ。好ましくは、前記マルチフィラメント連続強化繊維束の内部には前記熱可塑性樹脂が実質的に存在しない。【選択図】なし

Description

本発明は、強化繊維複合ロープに関する。より詳しくは、本発明は、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成されることを特徴とする強化繊維複合ロープに関する。
従来、合成繊維ロープは、一般に複数本の合成繊維の原糸を1回又は2回の撚り工程を経てヤーン(撚糸)を製造し、このヤーンを複数本引き揃えながらさらに撚りをかけて、ヤーンの集合体であるストランドを製造し、そしてさらに、このストランドを複数本撚り合わせる又は組み合わせることによって製造されている。
一般に、3本のストランドを撚り合わせて作られるロープを3つ打ち、8本のストランドを組み合わせるロープを8つ打ちと称し、12本、16本等の偶数本のストランドを組み合わせたロープや、上記ストランドとして、多数の合成繊維を芯材として、これを組紐状に構成した筒状の外層により集束したものを撚り合わせたロープが知られている。
例えば、以下の特許文献1には、高張力ロープとして、中芯とそれを被覆する外層からなる二層構造のロープを開示しておる。特許文献1に記載されるように、ロープの中芯としては、一般に、ゆるく撚られたZ撚り、S撚同数のストランドを組み合わせ作られた組紐タイプ、断面が略々円形を保つ程度に撚られたストランドを撚り合わせた、撚り合わせタイプ、無撚で引き揃えるか又はできるだけ緩く撚られた引き揃えタイプ等が知られている。組紐タイプは、柔軟で形体安定性がよく、非自転性、高強力、撚り合わせタイプより伸びが少なく、キンクせず、スプライス可能であるが、曲げ疲労については、撚り合わせタイプに劣り、撚り合わせタイプは、曲げ疲労が少なく、高強力、スプライス可能、耐衝撃性がよいが、柔軟性を残すと形体安定性が悪くなり、少し自転し、そして引き揃えタイプは、高張力、低伸度、非自転性であるが、柔軟性に欠け、曲げ疲労が大きいという特徴がある。このように、要求特性に応じて、各種タイプのロープが製造されている。特許文献1では、耐摩耗性、耐光性が悪い芳香族ポリアミド繊維高張力ロープを中の中芯を、カーボンブラックや紫外線吸収材を添加したポリアミド繊維を組紐又は撚り合わせタイプの構造の外層で、覆って保護することで、耐摩耗性及び耐光性に優れた二層構造高張力ロープを提案している。
しかしながら、これらのロープは、ヤーンやストランドの撚りを重ねることにより構成されるので、ロープの伸び率は増加し、合成繊維が本来有する引張り強さを十分に生かすことができないだけでなく、ロープの称呼太さ(直径)が大きくなるに従って、ストランドを構成するヤーンの本数は増加し、複数本ヤーンの張力を合わせることが困難となり、合成繊維の本来有する引張強さの強力利用率は低下する等の問題点があった。
そこで、以下の特許文献2には、合成繊維の経糸と緯糸により構成された筒状織物と、該筒状織物内に集束された合成繊維束の芯材と、から成るストランドを複数本撚り合わせて又は組み合わせて構成したロープが提案され、これにより、筒状織物の経糸と芯材が、ロープの長手方向に配向されているので、高張力で伸び率の小さいロープとなり、合成繊維の引張り強さの強力利用率を飛躍的に向上させることができると共に、使用される合成繊維の伸び率とほぼ同一の伸び率を確保することができ、また、筒状織物で芯材を拘束するため、ロープの形状を安定的に保ち易く、ロープリード(ストランドの1回の撚り程)を自由に設定することができ、さらに称呼太さ(直径)の大きいロープを製造することができるという作用効果が奏されることが記載されている。
しかしながら、特許文献2に記載されたロープの芯材は、ポリエステル系等の合成繊維であり、ガラス繊維等の強化繊維と比較した場合に、かなり低張力であり、伸び率が大きいという問題がある。
他方、以下の特許文献3には、炭素繊維等の強化繊維束の外側に複数のナイロン繊維束を組み込んだ複合組紐(同書図1(b)参照)、炭素繊維束にナイロン繊維束を複数本巻き付けた複合撚紐(同書図1(a)参照)が開示されている。特許文献2によれば、かかる複合組紐又は複合撚紐を並列し、この並列繊維を縦方向、横方向、斜方向に積層して一体状繊維シートとし、これを加熱、加圧すれば、強化繊維間に熱可塑性合成樹脂が介在しているからこれを加熱することによって、短時間に含浸状態となる効果が奏されるとされる。
しかしながら、特許文献3に記載された複合組紐又は複合撚紐の芯材は、炭素繊維等の強化繊維であるため、合成繊維と比較した場合には、高張力であり、伸び率も小さいものの、強化繊維束は、複数本の合成繊維でその外周を被覆されているにすぎないため、かかる複合組紐又は複合撚紐をロープのストランドとして使用する場合には強化繊維同士の接触を回避することができないため、芯材である強化繊維の擦れ、摩耗、毛羽立ち等によって要求される張力を発揮できないという問題がある。
ヨット、セールボート、スカイカイト、海洋モアリングライン、ケープダイビング、登山等の用途においては、ロープ自体の重さが軽く、かつ、高い張力にも耐えうるロープが要求されているところ、有機系合成繊維に代えて、高張力であり、かつ、伸び率が小さい無機系ガラス繊維や炭素繊維等の高張力繊維を、強化繊維として用いることが有効であるものの、これらの高張力繊維を、ロープを構成するストランドとして使用する場合に、該高張力繊維同士の接触による擦れ、摩耗、毛羽立ち等によって要求される張力を発揮できないという問題がある。
実開平3−53597号公報 特開2014−111851号公報 特開2006−123417号公報
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高張力で伸び率が小さく、耐摩耗性に優れ、柔軟性であり、捩じれや切断端におけるほつれの発生がなく、かつ、安定した性能を発揮することができる強化繊維複合ロープを提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り併せて又は組み合わせてロープを構成することにより、上記課題を解決しうることを予想外に見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成されることを特徴とする強化繊維複合ロープ。
[2]前記マルチフィラメント連続強化繊維束の内部には前記熱可塑性樹脂が実質的に存在しない、前記[1]に記載の強化繊維複合ロープ。
[3]前記連続強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミックス繊維、及び超高分子量ポリエチレン繊維からなる群から選ばれる、前記[1]又は[2]に記載の強化繊維複合ロープ。
[4]前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、及びポリウレタン系の樹脂からなる群から選ばれる、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の強化繊維複合ロープ。
[5]前記マルチフィラメント連続強化繊維束は撚糸である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の強化繊維複合ロープ。
[6]ヨット、セールボート、スカイカイト、海洋モアリングライン、ケープダイビング又は登山用の、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の強化繊維複合ロープ。
本発明に係る強化繊維複合ロープは、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドとして用いているため、高張力で伸び率が小さく、耐摩耗性に優れ、柔軟性であり、捩じれや切断端におけるほつれの発生がなく、かつ、安定した性能を発揮することができる。
特許文献1の合成繊維ロープの側面図(a)とその断面(b)である。12本のストランドを撚り合わせてロープが構成されている。 特許文献1の合成繊維ロープを構成するストランドの説明図である。筒状織物内に合成繊維束からなる芯材が配置されている。 特許文献2の複合撚紐(a)と複合組紐(b)の説明図である。 本実施形態の強化繊維複合ロープを構成する熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドの説明図である。 本実施形態の強化繊維複合ロープを構成する熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドの断面の走査型顕微鏡写真である。 本実施形態の強化繊維複合ロープを構成する熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドの製造方法の説明図である。 図6に示す製造方法に用いるダイの説明図である。 ガラス繊維の束のみのストランド8本を撚り合わせて組紐として構成したロープを構成するストランド1本の引っ張り強さと伸びの関係を示すグラフである。 ナイロン繊維(PA66)の束のみのストランド8本を撚り合わせて組紐として構成したロープを構成するストランド1本の引っ張り強さと伸びの関係を示すグラフである。 本実施形態の強化繊維複合ロープを構成する熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランド8本を撚り合わせて組紐として構成したロープを構成するストランド1本の引っ張り強さと伸びの関係を示すグラフである。 撚り方の異なる4種類のロープの外観図である。
以下、本実施形態の強化繊維複合ロープについて詳細に説明する。
本実施形態の強化繊維複合ロープは、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り併せて又は組み合わせて構成されることを特徴とする。本実施形態の強化繊維複合ロープにおいては、好ましくは、マルチフィラメント連続強化繊維束の内部には前記熱可塑性樹脂が実質的に存在しない。
[モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランド]
まず、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドストランド自体について説明する。
本実施形態の強化繊維複合ロープの製造に用いるストランドは、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドであり、マルチチラメント繊維束を用いる場合には、該連続強化繊維の束の内部には該熱可塑性樹脂が実質的に存在しないものが好ましく、該ストランドの断面における該連続強化繊維の合計の面積をA(μm)、そして該複合糸中の該連続強化繊維の束の占有面積をB(μm)とするとき、以下の式:
緻密指数=A/B
で表される緻密指数が0.45以上であるものがさらに好ましい。
本明細書中、用語「マルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体」とは、図5に示すように、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との接点を結んだ線の外側の領域であって、該線の外側全体が熱可塑性樹脂により被覆されており、複合糸の表面に連続強化繊維が露出していない状態をいう。
本明細書中、用語「連続強化繊維束の内部」とは、図5に示すように、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との接点を結んだ線の内側の領域をいう。本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドにおいては、連続強化繊維束の内部には該熱可塑性樹脂は実質的に存在していないことが好ましい。尚、連続強化繊維がモノフィラメントの場合には、連続強化繊維束は存在せず、その内部に熱可塑性樹脂が存在し得ないことはいうまでもない。
また、本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドは、マルチフィラメントである連続強化繊維束の外周全体を取り囲んでいる熱可塑性樹脂の被覆は、連続強化繊維の束の最外側にある連続強化繊維に接しているものの、該繊維と接着していないか又は極めて弱い力で接着している。本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドでは、複合糸中の連続強化繊維と熱可塑性樹脂とが実質的に未接着で接しているため、糸条としての柔軟性に優れ、その結果、製織、編成における取り扱い性にも優れるものとなる。また、かかる「実質的に未接着で接している」状態では、前記した連続強化繊維と熱可塑性樹脂との接点を結んだ線の近傍において、空隙が存在する(図4参照)。かかる空隙は、走査型電子微鏡写真により観察することができる。また、複合糸中の連続強化繊維と熱可塑性樹脂とが実質的に未接着で接しているため、成形体とした場合に、強化繊維の拘束小さくなり、強度発現率が向上する。
前記したように、上記ストランドでは、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との接点を結んだ線の外側全体が熱可塑性樹脂により被覆されており、ストランドの表面に連続強化繊維が露出していない。このような熱可塑性樹脂による均一な被覆により、連続強化繊維の露出はなく、後工程での連続強化繊維、特に、傷つきやすいガラス繊維の損傷を低減することができる。例えば、外装としての熱可塑性樹脂被覆の損傷は、芯繊維であるガラス繊維の損傷を発生させ、ひいてはロープとしての強度の低下に繋がる。
上記ストランドでは、該複合糸の断面における連続強化繊維の合計の断面積をA(μm)、そして該複合糸中の該連続強化繊維の束の占有面積をB(μm)とするとき、以下の式:
緻密指数=A/B
で表される緻密指数が0.45以上であり、好ましくは0.47以上、より好ましくは0.50以上、さらに好ましくは0.53以上である。ここで、連続強化繊維の合計の断面積は断面積の写真を画像処理することによって求めることができる。連続強化繊維の束の占有面積B(μm)は、図1に示すように、連続強化繊維と熱可塑性樹脂との接点を結んだ線により囲まれた領域の面積である。したがって、緻密指数とは、許可繊維の合計の断面積を前記占有面積Bで除した値であり、1よりも小さな値となる。尚、連続強化繊維がモノフィラメントである場合には、緻密指数はほぼ1である。
緻密指数を大きくするためには、マルチフィラメント連続強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆させる際に連続強化繊維の束を緻密化させておくことが好ましい。かかる緻密化の方法としては、例えば、連続強化繊維にテンションをかけた状態で、これに溶融熱可塑性樹脂を接触させる方法が挙げられる。
複合糸中の連続強化繊維合計面積Bは、複合糸の任意の断面を観察することで測定することができる。具体的にはストランドの切断面から液状のエポキシ樹脂を注入(例えば、エポキシ樹脂にストランド断面を漬け込むことで毛管現象により吸引される)し硬化させた後に硬化している部分の切断面を精密に研磨した後、透過型電子顕微鏡(SEM)の反射電子画像を撮影し、画像処理によって求めることができる。ストランドの樹脂、エポキシ樹脂、強化繊維を区別し、強化繊維の断面の合計面積、強化繊維の束の占有面積を算出する。この時、強化繊維の束の専有面積は熱可塑性樹脂の最内部を結んだ線により囲まれた面積となる。
上記ストランドでは、強化繊維と樹脂の接触する点を結んで得られる図形が円形近いほど糸条として均一であるため取り扱い性に優れ、また、樹脂含浸にも優れる傾向にある。円形に近くするためには、連続強化繊維と熱可塑性樹脂が接触する直前に、連続強化繊維の束が真円に近い形状にすることが好ましい。特に複数本の連続強化繊維を用いる場合、強化繊維は3本以上用いることが好ましく、コーティングの直前に円に近い形状、すなわち3本であれば3角形、4本であれば4角形、3角形で中心部に1本通った状態が好ましい。また、被覆熱可塑性樹脂に比べて質量の大きな連続強化繊維が均等に配置されることで、複合糸の重心が断面面積中心と一致し、複合糸の後加工、例えば、製織、編成等における糸振れを抑制することができる。連続強化繊維と熱可塑性樹脂の接触する点を結んで得られる図形は、前記したように、複合糸を樹脂包埋、精密研磨、光学顕微鏡観察、断面写真の画像処理によって求めることができる。
上記ストラドは、取り扱い性の観点から、直径I(μm)は、100〜5000μmであることが好ましく、150〜2000μmであることがより好ましく、200〜1500μmであることがさらに好ましい。ここでいう直径とは円面積相当直径のことである。
連続強化繊維と、それを被覆する熱可塑性樹脂との体積比率は、連続強化繊維:熱可塑性樹脂=10:90〜80:20であることが好ましく、20:80〜70:30であることがより好ましく、30:70〜60:40であることがさらに好ましい。
連続強化繊維の体積比率Hが10%以上であることにより、実用上十分な強度が得られ、他方、80%以下であることにより複合糸の張力が過度に高くなることを防止でき、良好な取り扱い性が得られる。
[連続強化繊維]
連続強化繊維としては、通常の繊維強化複合成形体に使用されるものを用いることができる。
連続強化繊維としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリベンザゾール系繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維等が挙げられる。
機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましく、生産性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
連続強化繊維として、ガラス繊維を選択した場合、集束剤を用いてもよく、集束剤は、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられ、界面接着強度向上に寄与する。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類等が挙げられる。
[潤滑剤]
潤滑剤は、ガラス繊維の開繊性向上に寄与する。
潤滑剤としては、目的に応じた通常の液体又は固体の任意の潤滑材料が使用可能であり、以下に限定されるものではないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系又は鉱物系のワックス;脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族系エステル、芳香族系エーテル等の界面活性剤等が挙げられる。
[結束剤]
結束剤は、ガラス繊維の集束性向上に寄与する。
結束剤としては、目的に応じたポリマー、熱可塑性樹脂が使用可能である。
結束剤としてのポリマーは、以下に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、これらの第1級、第2級又は第3級アミンとの塩等が挙げられる。また、例えば、m−キシリレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、イソホロンジイソシアナート等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるポリウレタン樹脂も好適に使用される。
アクリル酸のホモポリマー、コポリマーは、重量平均分子量1,000〜90,000であるものが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する共重合性モノマーとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。共重合性モノマーとして、エステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
アクリル酸のホモポリマー、コポリマーの第1級、第2級又は第3級アミンとの塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩やグリシン塩等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましい。
結束剤として用いられる熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性フッ素系樹脂、これらを変性させた変性熱可塑性樹脂等が挙げられる。
[ガラス繊維用の集束剤の組成]
連続強化繊維としてガラス繊維を用いた場合、当該ガラス繊維の集束剤においては、それぞれ、シランカップリング剤を0.1〜2質量%、潤滑剤を0.01〜1質量%、結束剤を1〜25質量%を含有することが好ましく、これらの成分を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することが好ましい。
ガラス繊維用の集束剤におけるシランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、0.1〜2質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1質量%、さらに好ましくは0.2〜0.5質量%である。
ガラス繊維用の集束剤における潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点、及びエアスプライサーによる繋ぎ糸の引張り破断強力向上と混繊工程における開繊性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上であり、界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
ガラス繊維用の集束剤における結束剤の配合量は、ガラス繊維の集束性制御及び界面接着強度向上と複合成形体の機械的強度向上との観点から、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。
[ガラス繊維用の集束剤の使用態様]
ガラス繊維用の集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調製してもよいが、集束剤の分散安定性向上、耐熱性向上の観点から、水溶液の形態とすることが好ましい。
本実施形態の複合糸及び連続強化繊維樹脂成形体を構成する連続強化繊維としてのガラス繊維は、上述した集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維を乾燥することによって連続的に得られる。
集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、シランカップリング剤、潤滑剤及び結束剤の合計質量として、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.2〜2質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%付与する。
尚、連続強化繊維として、炭素繊維を選択した場合には、集束剤は、潤滑剤、結束剤からなることが好ましい。集束剤、潤滑剤、結束剤の種類については、特に制限はなく公知の物が使用できる。具体的材料としては、特開2015−101794号公報に記載されている材料を使用できる。
その他の連続強化繊維を用いる場合、連続強化繊維の特性に応じ、ガラス繊維、炭素繊維に用いる集束剤の種類、付与量を適宜選択すればよく、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
[連続強化繊維の形状]
本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを構成する連続強化繊維はマルチフィラメントであることができる。単糸数は、取扱い性の観点から30〜15,000本であることが好ましい。
連続強化繊維の単糸径は、強度の観点、及び、取り扱い性の観点から2〜30μmであることが好ましく、4〜25μmであることがより好ましく、6〜20μmであることがさらに好ましく、8〜15μmであることがさらにより好ましい。
本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドの製造に使用する原材料としての連続強化繊維はどのような形態でも構わないが、撚りのあるヤーン、ケーキ、撚りのないDWR(ダイレクトワインドロービング)に巻き取ってあると、樹脂を被覆させる工程での生産性、生産安定性が高まるため好ましい。生産性の観点からはDWRが、生産安定性の観点からはヤーンが好ましい。
[熱可塑性樹脂]
本実施形態の熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドは、上述した連続強化繊維と、当該連続強化繊維を被覆する熱可塑性樹脂を具備する。
熱可塑性樹脂は、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、及び熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が、機械的物性、汎用性の観点からより好ましく、熱的物性の観点を加えるとポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂がさらに好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点からポリアミド系樹脂がよりさらに好ましく、ポリアミド66(PA66)を好適に用いることができる。
樹脂の粘度や表面張力調整、界面強度の強化のために複数の樹脂をコンパウンドして用いることは好ましい。
[ポリエステル系樹脂]
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に−CO−O−(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。
熱可塑性樹脂として用いられるポリエステル系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、ホモポリエステルであってもよく、また、共重合ポリエステルであってもよい。
共重合ポリエステルの場合、ホモポリエステルに適宜第3成分を共重合させたものが好ましく、第3成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のジカルボン酸成分等が挙げられる。
また、バイオマス資源由来の原料を用いたポリエステル系樹脂を用いることもでき、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
[ポリアミド系樹脂]
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
熱可塑性樹脂として用いられるポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられる。
ポリアミド系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
ラクタムとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカンラクタムやドデカラクタムが挙げられる。ω−アミノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。ラクタム又はω−アミノカルボン酸はそれぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
ジアミン(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
ジカルボン酸(単量体)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。単量体としてのジアミン及びジカルボン酸はそれぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
ポリアミド系樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(PA6、ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(PA66、ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
[ストランドの製造方法]
上記ストランドの製造方法は、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆する工程を有する。
連続強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆する方法としては、図6、7に示す方法を例示できる。
本実施形態のストランドは、連続強化繊維の周囲に熱可塑性樹脂がなるべく均一に被覆されていることが好ましい。連続強化繊維の周囲に熱可塑性樹脂を均一に被覆するためには、熱可塑性樹脂の粘度、連続強化繊維の比重、密度、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の親和性が重要であり、連続強化繊維を、熱可塑性樹脂を溶融させたものと圧力がかかった状態で接触すること、連続強化繊維と溶融した熱可塑性樹脂が接触し排出されるダイ部分の形状、連続強化繊維の張力、熱可塑性樹脂の溶融温度、ライン速度の調整が重要であり、特にダイの形状が重要となる。
最適なダイの形状は、用いる連続強化繊維の種類、形状、表面処理剤、被覆する樹脂の種類によっても異なるが、溶融状態の樹脂と連続強化繊維が接触する部分の樹脂の圧力が、均一になるような設計が好ましい。圧力を均一にコントロールするために、溶融した樹脂をダイへ導入する入り口の径よりも、連続強化繊維と接触した状態で排出される吐出口の径を小さくし、連続強化繊維と溶融樹脂が接触する部分の圧力を高めておくことが好ましい。溶融した樹脂をダイへ送り出す圧力と、樹脂の粘度、連続強化繊維を引き抜くライン速度を調整することで、連続強化繊維と溶融樹脂が接触する部分の圧力を一定に保つことが好ましい。
緻密指数を小さくするためには、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を被覆させる際に連続強化繊維を緻密化させておくことが好ましい。かかる緻密化の方法としては、例えば、連続強化繊維に張力(テンション)をかけた状態で、これに溶融熱可塑性樹脂を接触させる方法が挙げられる。
上記ストランドの製造装置は、糸の送り出し装置、樹脂を溶融させる装置、ダイ、冷却装置、検知器、巻き取り機等から構成され、押出式コーティング装置、ディッピング式コーティング装置等が使用できる。樹脂の厚みをコントロールしやすい押出式コーティング装置が好ましい。
樹脂の溶融温度は、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度であればよいが、熱劣化を抑制する観点から、熱可塑性樹脂の融点+10〜100℃であることが好ましく、融点+20〜80℃であることがより好ましく、融点+30〜70℃であることがさらに好ましい。樹脂を溶融させる装置は、例えば、押し出し機を使用すればよい。樹脂の粘度にあわせてスクリューの形状を調整し、適切な圧力でダイに溶融樹脂を送り込むことが好ましい。必要に応じて、窒素パージやベントを行うことは好ましい。
冷却は空冷でもよいし、水バスに浸漬することによって行ってもよいし、冷却ローラーに巻きつけることによって行ってもよい。冷却ローラーに巻きつけると同時に水を噴霧してもよい。冷却に水を用いた場合は、必要に応じて乾燥機構を設けることが好ましい。乾燥は、空気等の流体を用いて行ってもよいし、温度をかけてもよいし、布等で物理的に水を除去してもよい。検知器は、例えば光学的手法によって直径の安定性や、糸の振れ幅の検知による重心の偏りを検出することができる。巻き取り機は自動制御で行ってもよいし、マニュアル制御をしてもよい。
糸の速度は生産性と生産安定性の観点から、10〜2000m/分であることが好ましく、50〜1800m/分であることがより好ましく、100〜1500m/分であることが好ましい。
糸の送り出し装置、連続強化繊維と溶融した樹脂が接触するダイ、冷却装置は直線に配置することが好ましい。それぞれの装置の前後には、必要において糸の直径よりも少しだけ大きなガイドを通し、ダイの前後での糸の位置をコントロールすることが好ましい。
[強化繊維複合ロープ]
次に、本実施形態の強化繊維複合ロープを構成する前記ストランド複数本を、どのように撚り合わせ又は組み合わせるかについて説明する。
一般に、繊維ロープの構造は、細い繊維を撚り合わせてヤーンとし、さらにそれを撚り合わせてストランドとしたものを三つ打ち、八つ打ち、十二打ちにように撚り合わせ又は編組したものである。撚り方の異なる4種類のロープの外観を図11に示す。三打ちロープは、3本のストランドを撚り合わせたロープである。エイトロープ(八打ちロープ2×4)は、Z撚ストランド4本及びS撚ストランド4本をそれぞれ2本ずつ引き揃え、交互に4組を編んだロープであり、非自転で柔軟性が良好でキンクしにくい。トエルロープ(十二打ちロープ2×6)は、Z撚ストランド4本及びS撚ストランド4本をそれぞれ2本ずつ引き揃え、交互に6組編んだロープであり、非自転で柔軟性が良好でキンクしにくい。タフレロープ(二重組打ロープの商品名)は、引き揃えて編組した芯ロープを、編組したロープで包んだ構造で糸の充填率が高くなり強度が上がる。これらの順にストランド数が増して表面が滑らかとなるとともに、伸びが小さくなり強度が大きくなる傾向である。
ロープの特性(強度、柔軟性、伸び、耐型崩れ等)を決める要素は、撚りの方向と撚りの長さである。ロープの撚りの方向は、一般的にはZ撚でストランドはS撚である。これは単に慣習上多用されているにすぎないが、Z撚ロープならストランドはZ撚、ヤーンはZ撚のように撚られている。撚りの長さは、ストランド1回の撚り程(リード、ワイヤーロープではピッチど呼ぶ)で表す。JIS規格によると、合成繊維ロープのリードは、三つ打ちのものはロープの呼称太さ(ロープ径)の3.3倍以下、八つ打ちのものは呼称太さの3.5倍以下と規定されている。ロープの破断荷重は、ヤーンの破断荷重の合計より小さくなるが、これを撚り減りと呼ぶ。ナイロンロープの撚り減りは約20%である。
本実施形態の強化繊維複合ロープは、前記ストランド複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成されることを特徴とするが、かかる「撚り合わせ」又は「組み合わせ」のタイプに特に制限はない。例えば、前記した一般的なロープのタイプのいずれでもよく、また、図1に示すような12本のストランドを組み合わせて構成したものであることができる(但し、図1は、特許文献1に記載されたロープのタイプである)。本実施形態の強化繊維複合ロープにおいては、各ストランドを撚らないが、伸び率を小さくしたり、撚り減りを小さくするために好ましいが、本実施形態においては、ストランドの撚りを排除するものではない。また、ロープの製造に使用するストランドの本数にも特に制限はなく、ヨット、セールボート、スカイカイト、海洋モアリングライン、ケープダイビング又は登山等の用途や、芯材として使用する強化繊維の種類や太さ等に応じて適宜決定することができる。但し、本実施形態の強化繊維複合ロープは、軽くて高強度であることが長所であるため、ロープの太さとしては、あまり太いものは好ましくない。
上記ストランド複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成される本実施形態の強化繊維複合ロープの引張強度は、ストランドの熱可塑性樹脂被覆の損傷による連続強化繊維の劣化に伴い低下する。したがって、本実施形態においては、強化繊維複合ロープの使用時においても、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている状態が維持されていることが重要である。
以下の実施例により本発明を具体的に説明する。
[樹脂コーティングストランドの製造]
[被覆用樹脂]
連続強化繊維を被覆するための熱可塑性樹脂として、以下の樹脂を用意した。
ポリアミド66繊維(PA66)(商品名:レオナ(登録商標)470/144BAU、旭化成せんい(株)製
[連続強化繊維]
下記集束剤aを1.0質量%付着させた、繊度685dtex、単糸数400のマルチフィラメントガラス繊維3本を撚りあわせたものを連続強化繊維として用いた。巻き取り形態はロービングであった。
[集束剤aの組成(固形分換算)]
・シランカップリング剤:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%[商品名:KBE−903(信越化学工業(株)製)]
・潤滑剤:ワックス0.1質量%[商品名:カルナウバワックス((株)加藤洋行製)]
・結束剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体塩5質量%[商品名:アクアリックTL(日本触媒(株)製)]
[PA66コーティングストランドの製造装置及び製造方法]
図6、7に示す装置を使用した。糸の繰り出しから、ダイ、冷却、巻き取りまで、糸が直線になるように配置し、ダイの直前、冷却水に触れた直後、冷却器を出た直後、巻き取り機の直前に糸のガイドを設置した。押し出し機は糸に対して90度の角度に設置した。冷却はウォーターバスを用い、冷却後、空気により水分を吹き飛ばした。糸の速度は200m/分とし、巻き取り機によってコントロールした。押し出しは280〜295℃で行った。ダイの内部で溶融した樹脂と、連続強化繊維が微加圧の状態で接触するように、樹脂の導入部分よりも連続強化繊維との接触部分が小さくなるように絞りを入れたダイを使用し、押し出し機の押出速度を微調整した。
[樹脂コーティングのないストランドの製造]
前記樹脂コーティングストランドの製造に用いた繊度685dtex、単糸数400のマルチフィラメントガラス繊維3本を撚りあわせたものを用いて、樹脂コーティングのない連続強化繊維のみのストランドを製造した。
[樹脂のみのストランドの製造]
[被覆用樹脂]
前記樹脂コーティングストランドの製造に用いた繊度470dtex、単糸数144のマルチフィラメント熱可塑性樹脂繊維8本を撚りあわせたものを用いて、樹脂のみのストランドを製造した。
得られた各ストランドの繊度、最大引張応力を以下の表1に示す。
[ロープの製造]
前記にように製造した各ストランドを製紐機の錘にセットし、8つ打ちの組紐を製紐した。組み角度は45度とした。8つ打ちの組紐の太さ(繊度)は、各ストランド1本の繊度×8×1.5程度、引張最大応力は、各ストランド1本の最大引張応力×8×0.8程度であった。
図8〜10は、前記のように製造した各ロープを構成する各ストランド1本あたりの引っ張り強さと伸びの関係を示すグラフである。
PA66コーティングストランドの最大引張応力は、ガラス繊維のみストランドの最大引張応力よりも高かった。これは、ガラス繊維束を熱可塑性樹脂でコーティングすることで、これを用いてロープにした場合、ガラス繊維束がある程度固定され、ずれ等がなくなりガラス繊維の損傷が少なくなったためと考えられる。
尚、ガラス繊維のみストランドの伸び率は、約3.2%であった。
このように、PA66コーティングストランドは、ガラス繊維のみストランドと比較して、同等又はこれ以上の高張力に耐え、かつ、伸び率についても、PA66繊維のみストランドに比較して、ガラス繊維のみストランドと同等であった。
また、ロープを構成するためにガラス繊維のみストランドを用いる場合、捩れやほつれを防ぐため、撚りを多くする必要があるが、撚りを多くすると、ストランド及びロープの柔軟性が失われてしまう。これに反し、ロープを構成するためにPA66コーティングストランドを用いる場合には、ガラス繊維の束の周囲に樹脂被覆があるため、捩れほつれを防ぐためにガラス繊維の撚りを多くする必要がないため、ストランド及びロープの柔軟性を保持することができる。
本発明に係る強化繊維複合ロープは、モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドとして用いているため、高張力で伸び率が小さく、耐摩耗性に優れ、柔軟性であり、捩じれや切断端におけるほつれの発生がなく、かつ、安定した性能を発揮することができる。それゆえ、本発明に係る強化繊維複合ロープは、ヨット、セールボート、スカイカイト、海洋モアリングライン、ケープダイビング又は登山用のロープとして好適に利用可能である。
1 合成繊維ロープ
2 ストランド
3 筒状織物
4 合成繊維束からなる芯材
5 炭素繊維束
6 ナイロン繊維束
7 複合撚紐
8 複合組紐

Claims (6)

  1. モノフィラメント連続強化繊維の又はマルチフィラメント連続強化繊維束の外周全体が熱可塑性樹脂により被覆されている熱可塑性樹脂コーティング強化繊維ストランドを、複数本を撚り合わせて又は組み合わせて構成されることを特徴とする強化繊維複合ロープ。
  2. 前記マルチフィラメント連続強化繊維束の内部には前記熱可塑性樹脂が実質的に存在しない、請求項1に記載の強化繊維複合ロープ。
  3. 前記連続強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セラミックス繊維、及び超高分子量ポリエチレン繊維からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の強化繊維複合ロープ。
  4. 前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリビニルアルコール系、ポリプロピレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリ塩化ビニリデン系、及びポリウレタン系の樹脂からなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の強化繊維複合ロープ。
  5. 前記マルチフィラメント連続強化繊維束は撚糸である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の強化繊維複合ロープ。
  6. ヨット、セールボート、スカイカイト、海洋モアリングライン、ケープダイビング又は登山用の、請求項1〜5のいずれか1項に記載の強化繊維複合ロープ。
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