JP2019160730A - リチウム金属二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕本開示のリチウム金属二次電池は、正極、負極および電解質を少なくとも含む。リチウム金属二次電池の満充電状態において、負極は炭素繊維集合体およびリチウム金属を少なくとも含む。炭素繊維集合体は、複数の炭素繊維を含む。複数の炭素繊維は、その表面が非晶質炭素により被覆されている。負極は、ラマン分光法によって得られるラマンスペクトルにおいて、DバンドとGバンドとのピーク強度比(D/G)が0.2以上であり、かつ、X線回折測定により求められる(002)面の面間隔が0.3402nm以下である。
本開示のリチウム金属二次電池では、炭素繊維集合体がLi金属24(負極活物質)の担体として使用される。炭素繊維集合体は良好な電子伝導体であるため、集電が容易になると考えられる。これにより、電池抵抗増加が抑制されると期待される。炭素繊維集合体において、複数の炭素繊維201は非晶質炭素22により被覆されている。リチウム金属二次電池の満充電状態において、非晶質炭素22の表面にはLi金属24が担持されている。非晶質炭素22の表面においてLi金属24の溶解反応および析出反応が起こると考えられる。
<金属二次電池>
図1は、本実施形態の金属二次電池の構成の一例を示す概略図である。
外装材50は、電極群40および電解質(図示せず)を収納している。電極群40は積層(スタック)型である。ただし電極群40は巻回型であってもよい。電極群40は、正極10、負極20およびセパレータ30を含む。すなわち電池100は、正極10、負極20および電解質を少なくとも含む。
<負極>
図3は本実施形態の負極の構成を示す第1断面概念図であり、図4は本実施形態の負極の構成を示す第2断面概念図である。負極20はシート状であり得る。電池100の満充電状態において、負極20は炭素繊維集合体21およびLi金属24を少なくとも含む。炭素繊維集合体21は、複数の炭素繊維201を含む。複数の炭素繊維201は、その表面が非晶質炭素22により被覆されている。炭素繊維集合体21の内部には複数の空孔23が形成されている。Li金属24は空孔23内にも成長していると考えられる。
図5に示す負極20においては、炭素繊維集合体21が基材である。炭素繊維集合体21は複数の炭素繊維を含むが、複数の炭素繊維の表面が非晶質炭素22により被覆されていない。該構成では、Li金属24がデンドライト状に成長すると考えられる。
(炭素繊維集合体)
炭素繊維集合体21は負極20の基材である。炭素繊維集合体21は、たとえばシート状であってもよい。炭素繊維集合体21は、たとえば50μm以上500μm以下の厚さを有してもよい。炭素繊維集合体21の厚さは、たとえばマイクロメータ等により測定される。厚さは少なくとも3箇所で測定される。少なくとも3箇所の算術平均が炭素繊維集合体21の厚さとされる。
(空孔率)
炭素繊維集合体21は70%以上90%以下の空孔率を有することが望ましい。空孔率が70%未満であると、容量維持率が低下する可能性がある。炭素繊維集合体21の内側に空間が少ないためと考えられる。空孔率が90%を超えても、容量維持率が低下する可能性がある。析出担体の表面積が減少することにより、局所的な電流集中が起こりやすくなるためと考えられる。
(非結晶質炭素による被覆)
炭素繊維集合体21に含まれる複数の炭素繊維201は、非結晶質炭素22により被覆されている。たとえば、非結晶質炭素22からなる膜により、複数の炭素繊維201が被覆されてもよい。非結晶質炭素22からなる膜の形成方法については特に限定はなく、たとえば、熱CVD法、プラズマCVD法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等により行われてもよい。非結晶質炭素22からなる膜の原料は、たとえばコールタールピッチであってもよい。
(ラマンスペクトル)
負極20は、ラマン分光法によって得られるラマンスペクトルにおいて、DバンドとGバンドとのピーク強度比(D/G)が0.2以上である。本明細書において「Dバンド」とは、欠陥や非晶質炭素成分に由来する1360cm−1付近のラマンバンドを示す。本明細書において「Gバンド」とは、C=C結合に由来する1580cm−1付近のラマンバンドを示す。DバンドとGバンドとのピーク強度比(D/G)から、負極20の表面の結晶性を評価することができる。D/Gが0.2以上の場合、炭素繊維集合体21の表面が非結晶質炭素22により十分被覆されていると考えられる。すなわち、負極20の表面が非晶質であると考えられる。なお、ラマンスペクトルの測定方法は、たとえば後述する実施例の項の記載に従ってもよい。負極20は、ラマン分光法によって得られるラマンスペクトルにおいて、DバンドとGバンドとのピーク強度比(D/G)が、たとえば0.2以上0.7以下であってもよい。
(X線回折測定により求められる(002)面の面間隔)
負極20は、XRD測定により求められる(002)面の面間隔が0.3402nm以下である。すなわち、炭素繊維集合体21は高度に結晶化されているものと考えられる。負極20は、XRD測定により求められる(002)面の面間隔が、たとえば0.3366nm以上0.3402nm以下であってもよい。なお、XRDの測定方法は、たとえば後述する実施例の項の記載に従ってもよい。
<正極>
正極10はシート状であり得る。正極10は、たとえば正極集電体11および正極合材層12を含む。正極集電体11は、たとえばAl箔等であってもよい。正極集電体11は、たとえば10μm以上50μm以下の厚さを有してもよい。
<セパレータ>
セパレータ30は多孔質フィルムである。セパレータ30は、たとえば10μm以上50μm以下の厚さを有してもよい。セパレータ30は、たとえばポリオレフィン製であってもよい。セパレータ30は単層構造を有してもよい。セパレータ30は多層構造を有してもよい。
<電解質>
電解質は典型的には液体電解質である。液体電解質は、電解液、イオン液体等であってもよい。電解液はLi塩および溶媒を含む。Li塩は、たとえばLiPF6、LiBF4、LiN(SO2F)2等であってもよい。電解液は、たとえば0.5mоl/l以上2mоl/l以下のLi塩を含んでもよい。電解液は、たとえば3mоl/l以上5mоl/l以下のLi塩を含んでもよい。
<電池の製造>
《実施例1》
1.負極の製造
炭素繊維集合体21として、炭素繊維不織布(シート状、厚さ 100μm、空孔率 80%)が準備された。炭素繊維不織布は3次元構造を有しており、負極20の基材となる。炭素繊維不織布が所定の大きさに裁断された。炭素繊維不織布が3000℃で熱処理され、高結晶化された。
2.正極の製造
正極集電体11(Al箔)の表面にスラリーが塗布されることにより、正極合材層12が形成された。これにより正極10が製造された。正極10が所定の大きさに裁断された。正極合材層12は、片面で20mg/cm2の目付を有する。正極合材層12は、正極活物質〔Li(Ni,Co,Mn)O2〕、導電材(カーボンブラック)、バインダ(PVDF)、およびN−メチル−2ピロリドン(NMP)を含む。
3.組み立て
炭素繊維集合体21、セパレータ30および正極10がこの順序で積層された。これにより電極群40が形成された。セパレータ30はポリエチレン製の多孔質フィルム(厚さ20μm)である。
溶媒:[EC:DMC:EMC=3:4:3(体積比)]
4.初回充放電
電池100が4.2Vまで充電された。すなわち電池100が満充電状態にされた。充電により負極20において、非晶質炭素22の表面にLi金属24が析出した。すなわち、リチウム金属二次電池の満充電状態において、負極20は炭素繊維集合体21およびLi金属24を少なくとも含んでいる。ここで、負極20に貯蔵され得るLi金属24は、正極10と負極20との容量比に依存する。本開示においては、電池100の満充電状態において、負極20におけるLi金属24と炭素(C)成分の存在モル比(Li/C)が0.2以上となるよう負極20が構成されている。
《実施例2》
非晶質炭素22の結晶性を調整するための熱処理温度が1000℃から1500℃に変更されたことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《実施例3》
非晶質炭素22の結晶性を調整するための熱処理温度が1000℃から500℃に変更されたことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《実施例4》
炭素繊維不織布を高結晶化するための熱処理温度が3000℃から2000℃に変更されたことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《比較例1》
炭素繊維不織布に含まれる複数の炭素繊維201の表面が非晶質炭素22により被覆されなかったことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《比較例2》
炭素繊維不織布を高結晶化するための熱処理温度が3000℃から1000℃に変更されたこと、および炭素繊維不織布に含まれる複数の炭素繊維201の表面が非晶質炭素22により被覆されなかったことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《比較例3》
炭素繊維不織布を高結晶化するための熱処理温度が3000℃から1000℃に変更されたことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
《参考例1》
Cuからなるセルメットにピッチコートを施す事により、非晶質炭素22からなる層を設け、負極20とした。該負極20が用いられたことを除いては、実施例1と同様に電池100が製造された。
<評価>
《直流抵抗値》
25℃環境において、以下の条件により充放電が10サイクル実施された。2サイクル目の充放電時の平均充電電圧と平均放電電圧との差が電流密度により除されることにより、直流抵抗値が算出された。結果は下記表1の「直流抵抗値」の欄に示されている。直流抵抗値は比較例1の直流抵抗を100として、実施例およびその他の比較例の直流抵抗値を相対評価したものである。値が小さい程、直流抵抗値が小さいことを示している。
放電:定電流方式、放電電圧 3.0V、電流密度 2mA/cm2
《10サイクル後容量維持率》
25℃環境において、充放電が10サイクル実施された。条件は上述の通りである。10サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量で除されることにより、10サイクル後の容量維持率が算出された。結果は下記表1の「容量維持率」の欄に示されている。値が高いほど、充放電サイクル後の容量維持率が高いことを示している。
《ラマン分光法による負極の分析》
各実施例および各比較例に係る負極のラマンスペクトルを測定し、炭素繊維不織布表面の結晶性を評価した。波長532nmの励起光でラマン分光測定を行い、欠陥や非晶質炭素成分に由来する1360cm−1付近のラマンバンド(Dバンド)と、C=C結合に由来する1580cm−1付近のラマンバンド(Gバンド)との比(D/G)が算出された。結果は下記表1の「ラマンD/G」の欄に示されている。なお、実施例1について得られたスペクトルは、図6に示されている。
《XRD測定による負極の分析》
各実施例および各比較例に係る負極をホルダーに設置し、以下の条件でXRD測定し、(002)面の面間隔を算出することにより、炭素繊維不織布自体の結晶性を評価した。結果は下記表1の「面間隔」の欄に示されている。なお、実施例1について得られたXRD図形は、図7に示されている。
(XRD測定条件)
モノクロメータ:グラファイト単結晶
カウンタ:シンチレーションカウンタ
X線:CuKα線(波長1.54051Å,管電圧50kV,管電流300mA)
測定範囲:2θ=10°〜80°
スキャンスピード:10°/min
ステップ幅:0.02°
測定温度:室温(25℃)
上記表1に示されるように、実施例1〜実施例4は、電池抵抗の増加の抑制と、容量維持率の低下の抑制とが両立されていた。高度に結晶化された炭素繊維不織布は良好な電子伝導体であるため、集電が容易であったものと考えられる。これにより、電池抵抗増加が抑制されたと考えられる。また、炭素繊維不織布に含まれる複数の炭素繊維201が非晶質炭素22により被覆されることにより、デンドライト成長が抑制されるものと考えられる。
Claims (1)
- 正極、負極および電解質を少なくとも含み、
リチウム金属二次電池の満充電状態において、前記負極は炭素繊維集合体およびリチウム金属を少なくとも含み、
前記炭素繊維集合体は、複数の炭素繊維を含み、
前記複数の炭素繊維は、その表面が非晶質炭素により被覆されており、
前記負極は、ラマン分光法によって得られるラマンスペクトルにおいて、DバンドとGバンドとのピーク強度比(D/G)が0.2以上であり、かつ、X線回折測定により求められる(002)面の面間隔が0.3402nm以下である、
リチウム金属二次電池。
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