<第1実施形態>
以下、エレベータ及びエレベータ調速機における第1の実施形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。なお、各図(図10以降も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1に示すように、本実施形態に係るエレベータ1は、ユーザが乗るためのかご1aと、かご1aに接続されるかごロープ1bと、かごロープ1bに接続される釣合錘1cと、かご1a及び釣合錘1cを昇降させる巻上機1dとを備えている。また、エレベータ1は、かご1aを案内するレール1eと、かご1aの移動速度を検出する調速ユニット1fと、装置全体を制御する制御部1gとを備えている。
かご1aは、レール1eに対して停止するために起動する停止装置1hを備えている。また、巻上機1dは、かごロープ1bが巻き掛けられる綱車1iと、綱車1iを回転させる駆動源(図示していない)と、綱車1iの回転を停止させるために、綱車1iを制動する制動部1jとを備えている。
図1及び図2に示すように、調速ユニット1fは、第1のエレベータ調速機(以下、単に「第1調速機」ともいう)2と、第2のエレベータ調速機(以下、単に「第2調速機」ともいう)3を備えている。まず、第1調速機2について、説明する。
第1調速機2は、無端円状のロープ2aと、ロープ2aとかご1aとを連結する連結機構2bと、ロープ2aが巻き掛けられる回転体21と、ロープ2aに張力が働くように、ロープ2aが巻き掛けられる張車2cとを備えている。これにより、第1調速機2は、回転体21の回転速度に基づいて、かご1aの移動速度を検出している。
図2及び図3に示すように、第1調速機2は、回転体21に接続されるリンク機構22と、リンク機構22に接続される第1及び第2錘23,24と、各錘23,24に力を加える加力部25とを備えている。また、第1調速機2は、かご1aの移動速度が上昇設定速度V1を超えたことを検出する速度検出部26と、回転体21を回転可能に支持する軸支部2dとを備えている。なお、調速ユニット1fは、かご1aの移動速度が第1下降設定速度V2を超えた際に、ロープ2aを把持する把持機構1kを備えている。
回転体21は、軸支部2dに回転可能に支持される軸部21aと、ロープ2aが巻き掛けられる環状の車部21bと、軸部21aと車部21bとを連結する複数の連結部21c,21dとを備えている。これにより、回転体21は、かご1aの移動速度に対応した回転速度で回転することになる。
なお、回転体21は、かご1aが下降している際に、下降時回転方向D4に回転し、かご1aが上昇している際に、下降時回転方向D4と反対方向である上昇時回転方向D5に回転する。また、複数の連結部21c,21dのうち、リンク機構22を支持する連結部21dは、支持部21dともいう。
リンク機構22は、第1錘23に接続される第1リンク体22aと、第1リンク体22aに接続される第2リンク体22bとを備えている。また、リンク機構22は、第2錘24に接続される第3リンク体22cと、第3リンク体22cと第1錘23とに接続される第4リンク体22dとを備えている。
リンク機構22は、回転体21の連結部21cと第1リンク体22aとを回転可能に接続する第1接続部22eと、第1リンク体22aと第2リンク体22bとを回転可能に接続する第2接続部22fとを備えている。また、リンク機構22は、回転体21の連結部21cと第3リンク体22cとを回転可能に接続する第3接続部22gと、第3リンク体22cと第4リンク体22dとを回転可能に接続する第4接続部22hと、第4リンク体22dと第1錘23とを回転可能に接続する第5接続部22iとを備えている。
第1リンク体22aの第1端部は、第1錘23に回転不能に接続されている。即ち、第1リンク体22aの第1端部は、第1錘23に不動に固定されており、第1リンク体22aは、第1錘23と一体的に形成されている。また、第1リンク体22aの中途部は、第1接続部22eによって、回転体21に回転可能に接続され、第1リンク体22aの第2端部は、第2接続部22fによって、第2リンク体22bに回転可能に接続されている。
第2リンク体22bの第1端部は、第2接続部22fによって、第1リンク体22aに回転可能に接続されている。また、回転体21の支持部21dは、孔部21eを備えており、第2リンク体22bは、孔部21eに挿入される挿入部22jを備えている。そして、第2リンク体22bは、中途部に、加力部25を保持する保持部22kを備えており、加力部25は、第2リンク体22bの保持部22kと回転体21の支持部21d(孔部21e)との間に保持されている。
第3リンク体22cの第1端部は、第2錘24に回転不能に接続されている。即ち、第3リンク体22cの第1端部は、第2錘24に不動に固定されており、第3リンク体22cは、第2錘24と一体的に形成されている。また、第3リンク体22cの中途部は、第3接続部22gによって、回転体21に回転可能に接続され、第3リンク体22cの第2端部は、第4接続部22hによって、第4リンク体22dに回転可能に接続されている。
第4リンク体22dの第1端部は、第4接続部22hによって、第3リンク体22cに回転可能に接続されている。また、第4リンク体22dの第2端部は、第5接続部22iによって、第1錘23に回転可能に接続されている。
加力部25は、各錘23,24が回転体21の回転軸X1に近づくように、各錘23,24に力を加えている。本実施形態においては、加力部25は、筒状の弾性体(例えば、弦巻バネ)としており、伸長しようとする弾性復元力を、リンク機構22を経由して、各錘23,24に加えている。なお、第2リンク体22bは、加力部25の内部に挿入されている。
一方で、かご1aが移動し、回転体21が回転(自転)することに伴って、リンク機構22及び各錘23,24も、回転(公転)する。これにより、加力部25からの力よりも大きい遠心力が各錘23,24に働くため、各錘23,24は、回転体21の回転軸X1から離れるように移動する。このとき、第2リンク体22bは、回転体21の孔部21eの内部を移動し、加力部25を収縮させるように弾性変形させている。
ところで、各錘23,24は、板状に形成される錘部23a,24aと、錘部23a,24aから突出し、速度検出部26に検出される被検出部23b,24bとを備えている。そして、速度検出部26は、錘23,24の被検出部23b,24bに接触される検出子26aと、検出子26aを支持する検出本体部26bとを備えている。
これにより、かご1aの移動速度が上昇設定速度V1を超えた場合には、錘23,24が回転軸X1から所定距離だけ離れた位置まで移動するため、錘23,24の被検出部23b,24bが速度検出部26の検出子26aに接触する。そして、速度検出部26が制御部1gに速度超過信号を出力するため、制御部1gは、制動部1jに綱車1iを制動させる。
次に、第2調速機3について説明する。
図2及び図4に示すように、第2調速機3は、回転可能な回転体31と、回転体31に接続されるリンク機構32と、リンク機構32に接続される第1及び第2錘33,34と、各錘33,34に力を加える加力部35とを備えている。また、第2調速機3は、かご1aの下降速度が第1下降設定速度V2よりも遅い第2下降設定速度V3を超えたことを検出する速度検出部36と、回転体31を第1調速機2に接続する接続機構3aとを備えている。
接続機構3aは、第1調速機2の回転体21の回転のうち、下降時回転方向D4の回転力のみを第2調速機3の回転体31に伝達し、上昇時回転方向D5の回転力を第2調速機3の回転体31に伝達しない。即ち、接続機構3aは、一方向のみに回転力を伝達するワンウェイクラッチ機構である。
これにより、かご1aが下降する際には、第2調速機3の回転体31は、第1調速機2の回転体21と一体となって回転する一方で、かご1aが上昇する際には、第2調速機3の回転体31は回転しない。したがって、第2調速機3の回転体31は、かご1aの下降時のみに、かご1aの移動速度に対応した回転速度で回転することになる。
回転体31は、接続機構3aに接続される内側部31aと、各錘33,34よりも外側に配置される外側部31bと、内側部31aと外側部31bとを連結する複数の連結部31cとを備えている。また、回転体31は、リンク機構32を支持するために、内側部31aから突出する支持部31dを備えている。
リンク機構32は、第1錘33に接続される第1リンク体32aと、第1リンク体32aに接続される第2リンク体32bとを備えている。また、リンク機構32は、第2錘34に接続される第3リンク体32cと、第3リンク体32cと第1錘33とに接続される第4リンク体32dとを備えている。
リンク機構32は、回転体31の連結部31cと第1リンク体32aとを回転可能に接続する第1接続部32eと、第1リンク体32aと第2リンク体32bとを回転可能に接続する第2接続部32fとを備えている。また、リンク機構32は、回転体31の連結部31cと第3リンク体32cとを回転可能に接続する第3接続部32gと、第3リンク体32cと第4リンク体32dとを回転可能に接続する第4接続部32hと、第4リンク体32dと第1錘33とを回転可能に接続する第5接続部32iとを備えている。
第1リンク体32aの第1端部は、第1錘33に回転不能に接続されている。即ち、第1リンク体32aの第1端部は、第1錘33に不動に固定されており、第1リンク体32aは、第1錘33と一体的に形成されている。また、第1リンク体32aの中途部は、第1接続部32eによって、回転体31に回転可能に接続され、第1リンク体32aの第2端部は、第2接続部32fによって、第2リンク体32bに回転可能に接続されている。
第2リンク体32bの第1端部は、第2接続部32fによって、第1リンク体32aに回転可能に接続されている。また、回転体31の支持部31dは、孔部31eを備えており、第2リンク体32bは、孔部31eに挿入される挿入部32jを備えている。そして、第2リンク体32bは、中途部に、加力部35を保持する保持部32kを備えており、加力部35は、第2リンク体32bの保持部32kと回転体31の支持部31d(孔部31e)との間に保持されている。
第3リンク体32cの第1端部は、第2錘34に回転不能に接続されている。即ち、第3リンク体32cの第1端部は、第2錘34に不動に固定されており、第3リンク体32cは、第2錘34と一体的に形成されている。また、第3リンク体32cの中途部は、第3接続部32gによって、回転体31に回転可能に接続され、第3リンク体32cの第2端部は、第4接続部32hによって、第4リンク体32dに回転可能に接続されている。
第4リンク体32dの第1端部は、第4接続部32hによって、第3リンク体32cに回転可能に接続されている。また、第4リンク体32dの第2端部は、第5接続部32iによって、第1錘33に回転可能に接続されている。
加力部35は、各錘33,34が回転体31の回転軸X1に近づくように、各錘33,34に力を加えている。本実施形態においては、加力部35は、筒状の弾性体(例えば、弦巻バネ)としており、伸長しようとする弾性復元力を、リンク機構32を経由して、各錘33,34に加えている。なお、第2リンク体32bは、加力部35の内部に挿入されている。
一方で、かご1aが下降し、回転体31が回転(自転)することに伴って、リンク機構32及び各錘33,34も、回転(公転)する。これにより、加力部35からの力よりも大きい遠心力が各錘33,34に働くため、各錘33,34は、回転体31の回転軸X1から離れるように移動する。このとき、第2リンク体32bは、回転体31の孔部31eの内部を移動し、加力部35を収縮させるように弾性変形させている。
ところで、各錘33,34は、板状に形成される錘部33a,34aと、錘部33a,34aから突出し、速度検出部36に検出される被検出部33b,34bとを備えている。そして、速度検出部36は、錘33,34の被検出部33b,34bに接触される検出子36aと、検出子36aを支持する検出本体部36bとを備えている。
これにより、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3(<V2)を超えた場合には、錘33,34が回転軸X1から所定距離だけ離れた位置まで移動するため、錘33,34の被検出部33b,34bが速度検出部36の検出子36aに接触する。そして、速度検出部36が制御部1gに速度超過信号を出力するため、制御部1gは、制動部1jに綱車1iを制動させる。
さらに、かご1aの下降速度が第1下降設定速度V2を超えた場合には、錘33,34がさらに回転軸X1から離れた位置まで移動するため、錘33,34が作動部3e(図2参照)に接触する。これにより、図示していない伝達機構が作動することによって、把持機構1kがロープ2aを把持し、かご1aの停止装置1hが起動する。
なお、第2下降設定速度V3は、例えば、下降速度の定格速度(例えば、600m/分)の130%以下とする必要があり、また、第1下降設定速度V2は、例えば、定格速度の140%以下とする必要がある。また、上昇設定速度V1は、例えば、上昇定格速度(例えば、1,200m/分)の130%とすることができる。
そして、上昇設定速度V1は、第1及び第2下降設定速度V2,V3よりも大きくなるように、設定されている。したがって、かご1aの下降速度が第1及び第2下降設定速度V2,V3となった場合でも、第1調速機2の速度検出部26が検出することはない。即ち、第1調速機2は、上昇速度の異常検出(上昇設定速度V1の検出)を行い、第2調速機3は、下降速度の異常検出(第1及び第2下降設定速度V2,V3の検出)を行っている。
本実施形態においては、第1調速機2の速度検出部26と第2調速機3の速度検出部36とは、共通の速度検出部である。したがって、第1調速機2の錘23,24と第2調速機3の錘33,34とは、速度検出部26,36の検出子26a,36aにそれぞれ接触可能となるように、回転軸X1方向において、互いに接近して配置されている。なお、第1調速機2の速度検出部26と第2調速機3の速度検出部36とは、それぞれ異なる速度検出部である、という構成でもよい。
ところで、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3を超えた際に、制動部1jが綱車1iを制動するものの、何らかの原因(例えば、かごロープ1bの破断)で、かご1aの下降速度が低下しない場合もある。斯かる場合には、第2調速機3の錘33,34は、速度検出部36の検出子36aと接触する位置よりも、さらに回転軸X1から離れた位置まで移動する。
これにより、例えば、錘33,34が速度検出部36に過度に接触することで、速度検出部36が損傷する可能性がある。また、例えば、加力部35が弾性限界を超えて変形することで、加力部35が塑性変形して損傷する可能性がある。また、例えば、リンク体32a〜32dや接続部32e〜32iに過度な力が作用して、リンク体32a〜32dや接続部32e〜32iが損傷する可能性がある。
そこで、第2調速機3は、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する規制部3bを備えている。具体的には、回転体31及び錘33,34は、錘33,34の移動を規制するように、互いに接する接触部31f,33c,34cをそれぞれ備えており、回転体31の接触部31f及び錘33,34の接触部33c,34cは、規制部3bを構成している。
回転体31の接触部31fは、外側部31bから突出して形成されている。そして、回転体31の接触部31fは、凹状に形成されている。具体的には、回転体31の接触部31fは、凹状の湾曲面となるように、形成されている。
錘33,34の接触部33c,34cは、錘部33a,34aの外周部で構成されている。そして、錘33,34の接触部33c,34cは、凸状に形成されている。具体的には、錘33,34の接触部33c,34cは、凸状の湾曲面となるように、形成されている。
したがって、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3よりもさらに速くなった場合には、図5に示すように、錘33,34の接触部33c,34cが回転体31の接触部31fに接触する。これにより、錘33,34の移動が規制されるため、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
このとき、錘33,34の接触部33c,34cが凸状に形成されており、回転体31の接触部31fが凹状に形成されているため、回転体31の接触部31fが錘33,34を保持する。したがって、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3を大きく超えた場合でも、錘33,34の移動を確実に規制することができる。
なお、錘33,34の接触部33c,34cが回転体31の接触部31fに接触するまでに、錘33,34は、作動部3eと接触するように構成されている。したがって、錘33,34が作動部3eと接触してから、かご1aの停止装置1hが起動するまでの時間に、錘33,34の移動が規制部3bによって規制されることになる。
以上より、本実施形態に係るエレベータ1は、エレベータ調速機3を備える。そして、本実施形態に係るエレベータ調速機3は、かご1aの移動速度に対応した回転速度で回転する回転体31と、前記回転体31と共に回転するように、前記回転体31に接続されるリンク機構32と、前記リンク機構32に接続され、前記回転体31が回転することに伴って前記回転体31の回転軸X1から離れるように移動する錘33,34と、前記錘33,34が前記回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する規制部3bと、を備える。
斯かる構成によれば、回転体31が回転することに伴って、錘33,34が回転体31の回転軸X1から離れるように移動する。それに対して、規制部3bは、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する。これにより、錘33,34が回転軸X1から離れ過ぎた位置まで移動することを防止することができる。
また、本実施形態係るエレベータ調速機3においては、前記回転体31及び前記錘33,34は、前記錘33,34の移動を規制するように、互いに接する接触部31f,33c,34cをそれぞれ備え、前記回転体31の前記接触部31f及び前記錘33,34の前記接触部33c,34cは、前記規制部3bを構成する、という構成である。
斯かる構成によれば、回転体31及び錘33,34は、互いに接する接触部31f,33c,34cをそれぞれ備えている。そして、回転体31の接触部31f及び錘33,34の接触部33c,34cは、互いに接することによって、錘33,34の移動を規制する。これにより、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
また、本実施形態に係るエレベータ調速機3においては、前記錘33,34の前記接触部33c,34cは、凸状に形成され、前記回転体31の前記接触部31fは、前記錘33,34を保持するために、凹状に形成される、という構成である。
斯かる構成によれば、錘33,34の接触部33c,34cが凸状に形成されており、それに対して、回転体31の接触部31fが凹状に形成されている。これにより、回転体31の接触部31fが錘33,34の接触部33c,34cと接することにより、回転体31の接触部31fが錘33,34を保持することができる。
なお、エレベータ1及びエレベータ調速機3は、上記した第1実施形態に係るエレベータ1及びエレベータ調速機3の構成及び作用に限定されるものではない。例えば、上記した第1実施形態に係るエレベータ1及びエレベータ調速機3に対して、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した第1実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記第1実施形態に係るエレベータ調速機3においては、規制部3bは、回転体31の接触部31f及び錘33,34の接触部33c,34cによって、構成されている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機3は、斯かる構成に限られない。例えば、図6〜図9に示すように、規制部3c,3dは、回転体31の接触部31g,31h及びリンク機構32の接触部32m,32nによって、構成されている、という構成でもよい。
具体的には、エレベータ調速機3においては、前記リンク機構32は、第1端部が前記錘33に接続され且つ中途部が前記回転体31に回転可能に接続される第1リンク体32aと、第1端部が前記第1リンク体32aの第2端部に回転可能に接続される第2リンク体32b、とを備え、前記回転体31は、孔部31eを備え、前記第2リンク体32bは、前記錘33が移動することに伴って前記孔部31eの内部を移動するように、前記孔部31eに挿入され、前記回転体31及び前記第2リンク体32bは、前記錘33の移動を規制するように、互いに接する接触部31g,31h,32m,32nをそれぞれ備え、前記回転体31の前記接触部31g,31h及び前記第2リンク体32bの前記接触部32m,32nは、前記規制部3c,3dを構成する、という構成でもよい。
斯かる構成によれば、回転体31及び第2リンク体32bは、互いに接する接触部31g,31h,32m,32nをそれぞれ備えている。そして、回転体31の接触部31g,31h及び第2リンク体32bの接触部32m,32nは、互いに接することによって、錘33の移動を規制する。これにより、錘33が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。なお、図6〜図9に係る構成について、以下に説明する。
(1−1)図6及び図7に係る規制部3cにおいては、第2リンク体32bの接触部32mは、挿入部32jよりも幅広に形成されており、具体的には、回転体31の孔部31eの開口幅よりも幅広に形成されている。そして、回転体31の接触部31gは、孔部31eの開口端部で構成されている。
そして、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3よりもさらに速くなった場合には、図7に示すように、第2リンク体32bの接触部32mが回転体31の接触部31gに接触する。これにより、錘33,34の移動が規制されるため、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
(1−2)図8及び図9に係る規制部3dにおいては、第2リンク体32bの接触部32nは、第2リンク体32bの第2端部で構成されている。そして、回転体31の孔部31eは、底を有するように筒状に形成されており、回転体31の接触部31hは、孔部31eの底部で構成されている。
そして、かご1aの下降速度が第2下降設定速度V3よりもさらに速くなった場合には、図9に示すように、第2リンク体32bの接触部32nが回転体31の接触部31hに接触する。これにより、錘33,34の移動が規制されるため、錘33,34が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
(2)また、上記第1実施形態に係るエレベータ調速機3においては、錘33,34の接触部33c,34cは、凸状に形成され、回転体31の接触部31fは、凹状に形成される、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機3は、斯かる構成が好ましいものの斯かる構成に限られない。例えば、錘33,34の接触部33c,34c及び回転体31の接触部31fの少なくとも一方は、平坦状に形成されている、という構成でもよい。
(3)また、上記第1実施形態に係るエレベータ1においては、第1調速機2及び第2調速機3のうち、第2調速機3のみが、規制部3bを備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、第1調速機2も、規制部を備えることで、第1調速機2及び第2調速機3の両方が、規制部を備えている、という構成でもよい。また、例えば、第1調速機2及び第2調速機3のうち、第1調速機2のみが、規制部を備えている、という構成でもよい。
(4)また、上記第1実施形態に係るエレベータ1は、第1調速機2及び第2調速機3を備えている、という構成である。しかしながら、エレベータ1は、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、第1調速機2のみを備えており、第1調速機2は、規制部を備えている、という構成でもよい。
<第2実施形態>
次に、エレベータ調速機における第2の実施形態について、図10〜図13を参照しながら説明する。
図10に示すように、本実施形態に係る調速機4は、不動である固定軸41と、固定軸41に回転可能に接続され、ロープ2aが巻き掛けられる回転体42と、固定軸41に沿って移動可能な移動体43と、回転体42及び移動体43に接続されるリンク機構44と、リンク機構44に接続される錘45,45と、錘45,45に力を加える加力部46とを備えている。また、調速機4は、かご1aの移動速度が設定速度を超えたことを検出する速度検出部47を備えている。
回転体42は、固定軸41に回転可能に支持される軸部42aと、ロープ2aが巻き掛けられる環状の車部42bと、軸部42aと車部42bとを連結する連結部(図示していない)とを備えている。これにより、回転体42は、かご1aの移動速度に対応した回転速度で回転することになる。したがって、調速機4は、回転体42の回転速度に基づいて、かご1aの移動速度を検出している。
移動体43は、筒状に形成されている。そして、固定軸41は、移動体43の内部に挿入され、移動体43は、固定軸41上をスライドして、移動する。これにより、移動体43は、回転体42の回転軸X1に沿って移動する。なお、固定軸41は、移動体43が回転体42から所定距離以上離れることを停止させるために、移動体43と接する停止部41aを備えている。
リンク機構44は、移動体43及び錘45に接続される第1リンク体44aと、回転体42及び錘45に接続される第2リンク体44bとを備えている。また、リンク機構44は、第1リンク体44aと第2リンク体44bと錘45とを回転可能に接続する第1接続部44cと、第1リンク体44aと移動体43とを回転可能に接続する第2接続部44dと、第2リンク体44bと回転体42とを回転可能に接続する第3接続部44eとを備えている。
第1リンク体44aの第1端部は、錘45の中心に回転可能に接続されており、第1リンク体44aの第2端部は、移動体43の外周部に回転可能に接続されている。また、第2リンク体44bの第1端部は、錘45の中心に回転可能に接続されており、第2リンク体44bの第2端部は、回転体42の軸部42aに回転可能に接続されている。
加力部46は、錘45が回転体42の回転軸X1に近づくように、錘45に力を加えている。本実施形態においては、加力部46は、筒状の弾性体(例えば、弦巻バネ)としており、伸長しようとする弾性復元力を、移動体43及びリンク機構44を経由して、錘45に加えている。具体的には、加力部46は、回転体42と移動体43との間に配置され、回転体42と移動体43とが離れるように、移動体43に力を加えている。なお、固定軸41は、加力部46の内部に挿入されている。
したがって、かご1aが移動し、回転体42が回転(自転)することに伴って、移動体43及びリンク機構44及び錘45も、回転(公転)する。これにより、加力部46からの力よりも大きい遠心力が錘45に働くため、錘45は、回転体42の回転軸X1から離れるように移動する。このとき、移動体43が回転体42に近づくように移動するため、加力部46は、収縮するように弾性変形する。
そして、錘45は、板状に形成されおり、速度検出部47は、錘45に接触される検出子47aと、検出子47aを支持する検出本体部47bとを備えている。これにより、かご1aの移動速度が設定速度を超えた際に、錘45が回転軸X1から所定距離だけ離れた位置まで移動するため、錘45が速度検出部47の検出子47aに接触する。そして、速度検出部47が制御部1gに速度超過信号を出力するため、制御部1gは、制動部1jに綱車1iを制動させる。
ところで、調速機4は、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する規制部4aを備えている。具体的には、回転体42及び錘45は、錘45の移動を規制するように、互いに接する接触部42c,45aをそれぞれ備えており、回転体42の接触部42c及び錘45の接触部45aは、規制部4aを構成している。
回転体42の接触部42cは、車部42bから回転軸X1方向に沿って突出している。そして、回転体42の接触部42cは、凹状に形成されている。具体的には、回転体42の接触部42cは、凹状の湾曲面となるように、形成されている。
錘45の接触部45aは、錘45の外周部で構成されている。そして、錘45の接触部45aは、凸状に形成されている。具体的には、錘45の接触部45aは、凸状の湾曲面となるように、形成されている。
したがって、かご1aの移動速度が設定速度よりもさらに速くなった場合には、図11に示すように、錘45の接触部45aが回転体42の接触部42cに接触する。これにより、錘45の移動が規制されるため、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
このとき、錘45の接触部45aが凸状に形成されており、回転体42の接触部42cが凹状に形成されているため、回転体42の接触部42cが錘45を保持する。したがって、かご1aの移動速度が設定速度を大きく超えた場合でも、錘45の移動を確実に規制することができる。
以上より、本実施形態係るエレベータ調速機4は、かご1aの移動速度に対応した回転速度で回転する回転体42と、前記回転体42と共に回転するように、前記回転体42に接続されるリンク機構44と、前記リンク機構44に接続され、前記回転体42が回転することに伴って前記回転体42の回転軸X1から離れるように移動する錘45と、前記錘45が前記回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する規制部4aと、を備える。
斯かる構成によれば、回転体42が回転することに伴って、錘45が回転体42の回転軸X1から離れるように移動する。それに対して、規制部4aは、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制する。これにより、錘45が回転軸X1から離れ過ぎた位置まで移動することを防止することができる。
また、本実施形態に係るエレベータ調速機4においては、前記回転体42及び前記錘45は、前記錘45の移動を規制するように、互いに接する接触部42c,45aをそれぞれ備え、前記回転体42の前記接触部42c及び前記錘45の前記接触部45aは、前記規制部4aを構成する、という構成である。
斯かる構成によれば、回転体42及び錘45は、互いに接する接触部42c,45aをそれぞれ備えている。そして、回転体42の接触部42c及び錘45の接触部45aは、互いに接することによって、錘45の移動を規制する。これにより、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
また、本実施形態係るエレベータ調速機4においては、前記錘45の前記接触部45aは、凸状に形成され、前記回転体42の前記接触部42cは、前記錘45を保持するために、凹状に形成される、という構成である。
斯かる構成によれば、錘45の接触部45aが凸状に形成されており、それに対して、回転体42の接触部42cが凹状に形成されている。これにより、回転体42の接触部42cが錘45の接触部45aと接することにより、回転体42の接触部42cが錘45を保持することができる。
なお、エレベータ調速機4は、上記した第2実施形態に係るエレベータ調速機4の構成及び作用に限定されるものではない。例えば、上記した第2実施形態に係るエレベータ調速機4に対して、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した第2実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記第2実施形態に係るエレベータ調速機4においては、規制部4aは、回転体42の接触部42c及び錘45の接触部45aによって、構成されている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機4は、斯かる構成に限られない。例えば、図12及び図13に示すように、規制部4bは、回転体42の接触部42d及び移動体43の接触部43aによって、構成されている、という構成でもよい。
具体的には、エレベータ調速機4は、前記回転軸X1に沿って移動可能な移動体43を備え、前記リンク機構44は、第1端部が前記錘45に回転可能に接続され且つ第2端部が前記移動体43に回転可能に接続される第1リンク体44aと、第1端部が前記錘45に回転可能に接続され且つ第2端部が前記回転体42に回転可能に接続される第2リンク体44bと、を備え、前記回転体42及び前記移動体43は、前記錘45の移動を規制するように、互いに接する接触部42d,43aをそれぞれ備え、前記回転体42の前記接触部42d及び前記移動体43の前記接触部43aは、前記規制部4bを構成する、という構成でもよい。
斯かる構成によれば、回転体42及び移動体43は、互いに接する接触部42d,43aをそれぞれ備えている。そして、回転体42の接触部42d及び移動体43の接触部43aは、互いに接することによって、錘45の移動を規制する。これにより、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。なお、図12及び図13に係る構成について、以下に説明する。
図12及び図13に係る調速機4においては、回転体42は、軸部42aから、移動体43に向けて回転軸X1に沿って突出する突出部42eを備えており、回転体42の接触部42dは、突出部42eの先端部で構成されている。また、移動体43は、固定軸41上をスライドする筒状の移動本体部43bから、回転体42に向けて回転軸X1に沿って突出する突出部43cを備えており、移動体43の接触部43aは、突出部43cの先端部で構成されている。
そして、回転体42の突出部42e及び移動体43の突出部43cは、加力部46の外周部と接することで、加力部46を保持している。なお、突出部42e,43cは、回転体42及び移動体43の両方に備えられている、という構成だけでなく、例えば、回転体42又は移動体43の何れか一方に備えられている、という構成でもよい。
そして、かご1aの移動速度が設定速度よりもさらに速くなった場合には、図13に示すように、移動体43の接触部43aが回転体42の接触部42dに接触する。これにより、錘45の移動が規制されるため、錘45が回転軸X1から所定距離以上離れることを規制することができる。
(2)また、上記第2実施形態に係るエレベータ調速機4においては、錘45の接触部45aは、凸状に形成され、回転体42の接触部42cは、凹状に形成される、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機4は、斯かる構成が好ましいものの斯かる構成に限られない。例えば、錘45の接触部45a及び回転体42の接触部42cの少なくとも一方は、平坦状に形成されている、という構成でもよい。
なお、エレベータ1及びエレベータ調速機3,4は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1及びエレベータ調速機3,4は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る各構成や各方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する変更例に係る構成を、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係るエレベータ調速機3,4においては、錘33,34,45は、二つ備えられている、という構成である。しかしながら、エレベータ調速機3,4は、斯かる構成に限られない。例えば、錘33,34,45は、一つ又は三つ以上備えられている、という構成でもよい。