以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図1に、本発明の一形態による吸収性物品100を外面(装着時に、肌に対向する面とは反対側の面)から見た平面図を示す。また、図2に、図1の吸収性物品100を肌対向面から見た平面図を示す。さらに、図3に図1のI−I線断面図を、図4に図1のII−II線断面図を示す。以下においては、本発明の形態を、パッドタイプ使い捨ておむつ(尿取りパッド)の例に基づき説明する。
図1〜図3に示すように、吸収性物品100は、装着時に肌に対向する面(肌対向面ともいう)側に設けられた内側シート22と、肌対向面とは反対側の外面に設けられた外側シート21と、両シート21、22間に設けられた吸収体30とを備えた、略平面状の形状を有している。略平面状とは、薄く広がりをもった平坦な形状(シート状又は層状ともいう)を指すが、表面が部分的に膨出しているものも含まれる。
内側シート22は透液性であり、体液を速やかに透過させて吸収体30へと移行させる機能を有するものである。また、外側シート21は、不透液性であって、体液の外面からの漏れを防止できるものである。内側シート22は、装着時に肌に直接接触するシートとして使用してもよいし、内側シート22と同様の機能を有する別体のシートを内側シート22に重ねて設けることもできる。また、外側シート21も、外面に露出するシートとして使用してもよいし、外側シート21と同様の機能を有する別体のシートを外側シート21に重ねて設けることもできる。
外側シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。
内側シート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシート等を用いることができる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、アミド系等の合成繊維の他、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
内側シート22と吸収体30との間には、吸収体30により吸収した体液の逆戻りを防止する機能を有する中間シートを介在させることもできる。中間シートとしては、保水性が低く且つ液透過性の高い素材、例えば各種の不織布、メッシュフィルム等を用いることが好ましい。
吸収性物品100の端部(前後方向D1の両端部及び幅方向D2の両端部)においては、外側シート21と内側シート22とが貼り合わされていてよい。吸収性物品100の幅方向D2の両端部(両側部)には、前後方向D1に沿って、サイド不織布、又はギャザーを形成するための伸縮部材が組み込まれたギャザーシート等が設けられていてもよい。その場合、吸収性物品100の両端部において、サイド不織布又はギャザーシートと外側シート21とが貼り合されていてもよい。なお、上記の貼り合せは、例えば、ホットメルト接着剤、ヒートシール、超音波シールによって形成することができる。
吸収体30は、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、不織布等であってよく、必要に応じて粒子状等の高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子を混合する場合等、粒子のこぼれを防ぐためには、吸収体30は包装シートで包まれていた方が好ましい。また、吸収体30として、パルプ等の繊維状物を含まないポリマーシートを部分的に用いることもできる。
吸収体30における繊維目付、及び高吸収性ポリマーの目付は適宜定めることができるが、繊維目付は100〜700g/m2、好ましくは100〜600g/m2程度とすることができ、また吸収性ポリマーの目付は50〜550g/m2、好ましくは100〜350g/m2程度とすることができる。
吸収体30は、単層であってもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。また、吸収体30は、不織布やクレープ紙等の包装シートによって包まれていてもよい。吸収体が複数層から構成されている場合や、後述のように、吸収体30が別体になっている場合(後述のように、中央部吸収体31、側部吸収体32、主部吸収体38等に分割されている場合)には、各層又は各吸収体が包装シートによって包まれていてもよい。包装シートは、無着色(すなわち、白色)であってもよいし、着色されていてもよい。色は、排出された体液の色を目立たなくすることができる色、例えば体液の色に近い色、又は体液の色の補色若しくはそれに近い色等にすることができる。
本形態では、吸収性物品100は、平面視で、全体として細長い形状を有している。すなわち、吸収性物品100は、第1方向(前後方向)D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向(幅方向)D2に、上記長さより小さい所定の幅を有する。吸収性物品100の前後方向D1の長さ(全長)は、350〜700mm程度、幅方向D2の長さ(全幅)は130〜400mm程度とすることができる。吸収性物品100の形状は、前後方向に延びる中心線を対称線として線対称とすることができるが、必ずしも線対称である必要はない。また、吸収性物品100の構成(内側シート21、外側シート22、吸収体30等の各要素の大きさ、形状、配置等)も線対称であってよいが、吸収性物品100の形状及び構成共に線対称でなくてもよい。
図1に示すように、吸収性物品100においては、前方の端部を含む領域である前方端部領域Fと、後方の端部を含む領域である後方端部領域Rとを有しており、前方端部領域Fと後方端部領域Rとの間が中央領域Mとなっている。そして、中央領域Mは、その前方において股間対応領域Cを含んでいてよい。図1に示す形態では、前方端部領域F及び後方端部領域Rには、股間対応領域Cを含めていないが、股間対応領域Cの一部を含めてもよい。なお、前方端部領域F及び後方端部領域Rの前後方向D1の長さは、40〜100mm程度とすることができる。なお、吸収性物品100の装着時には、前方(前方端部領域Fの側)が腹側に、後方(後方端部領域Rの側)が背側になるようにする。また、前方端部領域F及び/又は後方端部領域Rを、単に端部領域という場合がある。
本明細書において、「股間対応領域」とは、使用時に身体の股間(股下)に対応させる部分を意味する。股間対応領域Cは、例えば、吸収性物品の前後方向中央若しくはその近傍から前方の所定位置までの範囲であってもよいし、吸収性物品の前後方向中央の所定範囲であってもよい。なお、図示の形態では、吸収性物品100の幅はほぼ一定であるが、吸収性物品100には、幅が狭くなっている括れ部分が形成されていてもよい。そして、括れ部分が形成されている領域又はその一部を股間対応領域とすることもできる。
図1及び図2に示すように、吸収性物品100は、箱襞(ボックスプリーツ(box pleat))構造BPを備えている。箱襞構造BPは、裏側(肌対向面側)で折り目が突き合わせられた襞構造である。上記の箱襞構造BPは、少なくとも部分的に展開可能である。つまり、箱襞が接着等によって固定されているのではなく、装着時の動作における通常の力で引っ張ることによって箱襞を開いて広げることができるものである。この箱襞構造BPは、前方端部領域Fに設けられている。すなわち、箱襞構造BPは、股間対応領域Cには設けられていない。
図1〜図3に示すように、箱襞構造BPは、中央部41と、中央部41の各側方に接続部45を介して接続された2つの側部42とを有していてよい。図1には、吸収性物品を装着する前であって、箱襞構造BPが展開されていない状態を示す。その未展開の状態で、側部42、42はいずれも、中央部41の肌対向面側(内側シート22側)に配置されている。これにより、箱襞構造BPの展開前では、中央部41が、外面側に突出した状態となっている(図3)。
中央部41と側部42とを接続する接続部45は、柔軟性又は可撓性を有していることが好ましい。これにより、箱襞構造BPを滑らかな動作で、また小さな力で展開させることができる。図示の形態では、接続部45は、外側シート21と内側シート22とが積層されて構成されている。箱襞構造BPを展開させるための柔軟性又は可撓性を有するのであれば、接続部45にも吸収体を配置することもできる。
図1〜図3に示すように、中央部41には中央部吸収体31が配置されており、また側部42には側部吸収体32が配置されている。これにより、箱襞構造BPにクッション性を付与することができ、特に、中央部吸収体31は、後述の識別体80と身体との間の緩衝材となり得るので、端部領域における装着感を向上させることができる。また、端部領域にまで体液が移行してきた場合でも、吸収体によって体液を吸収することが可能であるので、端部領域における漏れを防止することができる。
図1〜図3に示すように、箱襞構造BPの中央部41には、識別体80が設けられている。図示の形態では、識別体80は、吸収体30とは別体であり、外側シート21の上に配置されているが、識別体80の配置、形状、材質等の構成は、触覚により識別可能なものであれば、特に限定されない。触覚により識別可能な識別体80が設けられていることで、光の乏しい暗い部屋等でも、装着者(介助者が装着を行う場合には介助者)は、装着の向き(どちらが前でどちらが後か)を容易に識別することができる。また、視覚の弱い装着者又は装着介助者であっても、装着の向きを容易に識別することができる。
吸収性物品100は、箱襞構造BPに隣接して主部48を備えている。図示の形態では、中央領域M及び後方端部領域Rが主部48に相当する。図1及び図2に示すように、主部48には主部吸収体38、38が配置されている。図1及び図2に示す形態では、主部吸収体38、38は、前後方向の中心線の両側に、幅方向D2に互いに間隔を置いて配置されている。そして、主部吸収体38、38はそれぞれ、側部吸収体32、32と接続されて、一体化されている。
図示の形態では、2つの主部吸収体38、38が間隔を置いて配置されているが、主部吸収体38、38同士は接着されていてもよい。また、主部吸収体38、38間に、別の吸収体を嵌め込むこともできる。さらに、主部吸収体38、38を一体として構成することもできる。
本形態では、主部48においても箱襞が形成されている。この箱襞は、図1、図2及び図4に示すように、外側シート21と内側シート22とで構成されたものである。主部48に形成されている箱襞は、展開可能であってもよく、展開不能であってもよい。図示の形態では、主部48に形成された箱襞は展開不能になっている。具体的には、図4に示すように、主部48において、外側シート21と内側シート22とで形成された箱襞が接着されている。すなわち、主部48の箱襞においては、外側シート21同士が重なる部分、及び内側シート22同士が重なる部分が、接着剤やヒートシール等の接着手段によって接着され、固定されている。端部領域に設けられた箱襞構造BP以外の部分の箱襞が展開可能である場合には、装着後、その部分が身体の動きに伴って幅方向D2に広がりやすくなるので、よれの原因となったり、密着性を損なったりする場合がある。そのため、主部48における箱襞は、図示の形態のように展開不能であると好ましい。
次に、箱襞構造BPが展開する際の形状の変化について説明する。箱襞構造BPは、例えば、図1の矢印Pで示す方向に両側部42、42を引っ張ることによって展開することができる。このときの引っ張る方向は、側部を引っ張る方向の力に、幅方向D2に沿って外側に向かう成分が含まれていればよい。すなわち、両側部42、42を図示のようにそれぞれ斜め後方に引っ張ってもよいし、それぞれ幅方向D2に沿って外側に(互いに反対方向に)引っ張ってもよい。なお、本明細書では、引っ張る力に、幅方向D2に沿って外側に向かう成分が含まれていれば、概ね幅方向D2外側に又は幅方向D2外側に引っ張るという場合がある。
吸収性物品100を装着する際には、装着者又は装着介助者は、端部領域における違和感や漏れを低減するために、通常、端部領域のシワを伸ばす動作を行う。具体的には、端部領域の幅方向外側の端縁を両手でそれぞれ持って、それぞれ幅方向外側に引っ張る動作を行う。上述のように箱襞構造BPは、概ね幅方向D2外側に引っ張ることにより展開可能に構成されているので、装着者又は装着介助者は、通常の装着時の自然な動作によって箱襞構造BPを展開することができる。但し、箱襞構造BPは、前後方向D1外側に引っ張ることによって展開させる構成とすることもできる。
図5に、箱襞構造BPが展開された後の吸収性物品100を外面(外側シート21側)から見た部分平面図を示す。また、図6に、図5のIII−III線断面図を示す。図5に示すように、展開後の状態では、両側部42、42は、概ね幅方向D2外側に、より具体的には斜め後方に移動している。これにより、図5及び図6に示すように、中央部41は、少なくとも部分的に両側部42、42間に落ち込んで、両側部42、42間に配置される。このように、箱襞構造BPを展開することによって、展開前の中央部41と側部42との重なり(図1〜図3)が少なくとも部分的に解消されることになる。
本形態では、中央部41内に中央部吸収体31が、側部42に側部吸収体32が配置されている。箱襞構造BPの展開によって、中央部吸収体31は、側部吸収体32、32の間に落込み、側部吸収体32、32間に配置される。そして、展開前の中央部吸収体31と側部吸収体42との重なり(図1〜図3)が解消される。
このように、装着時に箱襞構造BPを展開することによって、展開前に存在していた、識別体80を備えた中央部41の外面側への盛り上がりをなくすことができる。これにより、図6に示すように、中央部41及び側部42、42にわたる領域の厚みをほぼ均一にすることが可能となる。ここで、中央部41の厚みとは、識別体80を含む厚みを指す。上記構成によって、装着中に箱襞構造BPが設けられている側が圧迫された場合、例えば、強い伸縮性を有する衣類を着用した場合や、箱襞構造BPが設けられている部分の上に身体が載るように横たわった場合等でも、識別体80が身体に当たることによる違和感が生じにくい。したがって、光の乏しい暗い部屋等でも吸収性物品100の前後を識別できるという識別体80の効果を維持しつつ、装着中の違和感を生じにくい構成を得ることができる。
上述のように、箱襞構造BPが展開された状態では、中央部41から側部42、42にわたる領域の厚みをほぼ均一にすることができる。すなわち、箱襞構造BPを展開することによって、或いは展開後に、装着作業における通常の力で箱襞構造BPを押さえることによって、中央部41の厚みを、側部42の厚みにほぼ等しくすることができる。なお、本明細書において「側部の厚みにほぼ等しい」とは、中央部41の厚みが、側部42の厚みの0.8〜1.2倍、好ましくは0.9〜1.1倍、より好ましくは0.95〜1.05倍であることを意味する。箱襞構造BPの展開後の中央部41の厚みは、側部42の厚みより小さくなっていてもよい。
箱襞構造BPにおける中央部41に配置されている中央部吸収体31の厚み、及び側部吸収体32の厚みは、それぞれ均一であってもなくてもよい。ここで、側部吸収体32の厚みは、端部領域における違和感を低減する観点から均一であることが好ましい。一方、図3及び図6に示すように、中央部吸収体31の厚みは均一でないことが好ましい。より具体的には、中央部吸収体31において、識別体80が配置されている部分の厚みは、それ以外の部分の厚みより小さくなっていることが好ましい。これにより、箱襞構造BPを展開することによって、或いは箱襞構造BPを展開した上、展開された箱襞構造BPを軽く外面から押さえることによって、識別体80を、中央部吸収体31の厚みが薄くなっている部分に容易に落ち込ませることができる。これにより、装着中に識別体80が設けられている部分に力がかかっても、識別体80によって生じ得る違和感を低減することができる。
側部吸収体32の厚み(厚みが均一でない場合には平均値)は、3〜30mm、好ましくは7〜15mm程度であると好ましい。また、中央部吸収体31の厚みは、厚みが最大となる位置で3〜30mm、好ましくは5〜10mm程度とすることができ、厚みが最小となる位置で、1〜10mm、好ましくは2〜5mm程度とすることができる。側部吸収体32の厚み(厚みが均一でない場合には平均値)は、で5〜30mm、好ましくは7〜15mm程度であると好ましい。
なお、図3及び図6に示すように、中央部吸収体31においては、外面側から肌対向面側に窪む凹部を中央に形成することによって、識別体80が設けられている部分の厚みを小さくしているが、中央部吸収体31には、肌対向面側から外面側へ窪む凹部を形成してもよい。
図7A及び図7Bに、中央部吸収体31の変形例を示す。図7Aは、吸収性物品100の箱襞構造BPを部分的に示す図であり、説明しやすさのために、側部41の図示を省略している。図7Bは、図7AのIV−IV線断面図である。図3及び図6に示す例では、中央部吸収体31は単層であって、識別体80が設けられている部分の厚みが薄い構成となっているが、図7A及び図7Bに示す例では、中央部吸収体31は、第1層31Aと、第1層31Aの肌対向面側(内側シート21側)に配置された第2層31Bとの2層で構成されている。
図7A及び図7Bに示すように、第1層31Aは、中央部吸収体31の全体にわたって均一な厚みで配置されている。一方、第2層31Bは、少なくとも識別体80が設けられている部分には吸収体が存在しない。図示の形態では、第2層31Bは、中央に穴があいた形状となっている。よって、図7に示す例においても、図6に示す中央部吸収体31と同様に、箱襞構造BPを展開することによって、或いは箱襞構造BPを展開した上、展開された箱襞構造BPを軽く外面から押さえることによって、識別体80を容易に落ち込ませることができる。これにより、装着中における、識別体80による違和感を低減することができる。なお、第1層31Aと第2層31Bとの積層を逆にして、外面側に、識別体80が設けられている部分に吸収体のない層を配置し、肌対向面側に、吸収体31の全体にわたって吸収体を有する層を配置することもできる。
識別体80は、ゴム、樹脂製等とすることができる。その場合、識別体80は、中実であってもよいし、中に空洞を有するものや筒状であってよい。また、識別体80は、繊維や粒子等の集合体が不透液性のシート等で包まれた構成とすることもできるし、不織布や紙等をシート状に複数枚積層して、ある程度の厚みを有する構成とすることもできる。識別体80として、吸収体30と同じ材料を使用することもできる。なお、識別体80は、触覚による識別をより容易にするという観点からは、吸収体30や外側シート21等よりも硬い材質であると好ましい。一方、装着中の違和感を低減させるという観点からは、識別体80として、吸収体と同様の硬さの材料を用いることが好ましい。
また、識別体80は、外側シート21上ではなく、外側シート21の肌対向面側に配置されていてよく、例えば、中央部吸収体31に接触するように配置されていてもよい。その場合、識別体80は、中央部吸収体31の外面側及び肌対向面側のいずれに設けられていてもよいし、中央部吸収体31の内部に埋め込まれていてもよい。また、中央部吸収体31が包装シートによって包まれている場合には、包装シートと接触するように配置されていてもよい。識別体80が中央部吸収体31に接触するように配置されている場合、識別体80を中央部吸収体31と同じ材料から形成し、中央部吸収体31と一体化することもできる。その場合、中央部吸収体31が識別体80となっているといえる。このように中央部吸収体31自体が識別体80となる形態は、識別体80のために別の材料を準備する必要がないので、製造がより容易である。
図8に、識別体80の変形例を示す。図8に示す識別体80は、平面視で円形の複数の突出部の集合体によって構成されている。また、図示の形態は、点字である。これにより、視力の弱い装着者又は装着介助者が触読して吸収性物品100の装着する向きを識別することも可能である。
図1等に示す識別体80は、直方体の形状を有し、平面視で長方形の形状を有するが、識別体80の形状は図示のものに限られない。例えば、識別体80の平面視形状は、正方形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等であってよい。また、識別体80の、吸収性物品100の厚み方向に切った断面形状は、台形、平行四辺形等の四角形、部分円形、部分楕円形等であってもよい。
なお、本形態では、識別体80は吸収性物品100の外面(外側シート21側)から突出している。吸収性物品が、装着を介助する介助者によって装着される場合、介助者は手袋をはめて手袋越しに吸収性物品に触れることが多いが、その場合には、素手で吸収性物品に触れる場合に比べて、触覚は鈍りやすい。外面から突出する識別体80を備えていることで、装着介助者が手袋をはめていて触覚が鈍っていても、吸収性物品の装着の向きを容易に認識することができる。
識別体80の平面視での面積は、49〜1400mm2程度とすることができる。識別体80の厚み(吸収性物品100の厚み方向の長さ)は、3〜12mm、好ましくは5〜8mm程度とすることができる。また、外側シート21、内側シート22等の厚みが薄いことから、上述の中央部41の厚みは、中央部吸収体31の厚みと識別体80の厚みとの合計にほぼ等しく、5〜22mm、好ましくは7〜15mm程度とすることができる。側部41の厚みは、上述の側部吸収体31の厚みにほぼ等しい。
図5等に示すように、箱襞構造BPは扇形に、すなわち、吸収性物品100の端部に近付く程より広く開くように展開される。このような扇形に開く構成は、上述のように箱襞構造BPに隣接する主部48における箱襞が固定されていて展開不能であることから、好ましい。しかしながら、箱襞構造BPの前方及び後方の開きが同程度となるような構成とすることもできる。その場合、箱襞構造BPとそれに隣接する主部48とで、吸収体30を別個に構成し、必要に応じて外側シート21及び内側シート22も別個に構成しておいて、結合してもよい。
上述のように箱襞構造BPが扇形に開く場合、中央部吸収体31は、吸収性物品100の端部に近付く程、幅が広くなる形状、例えば、端部側に底辺を有する三角形、端部側に長辺を有する台形等であることが好ましい。例えば、図1に示すように、中央部吸収体31は、平面視で二等辺三角形となっていることが好ましい。
側部吸収体31の平面視形状は、箱襞構造BPを展開したときに、中央部吸収体31が側部32、32間に落ち込むような形状であれば、特に限定されない。但し、図示の形態のように、側部吸収体32、32同士の間隔を端部に近付く程大きくして、端部に近づく程幅が広くなる形状を有する中央部吸収体31に対応する形状とすることが好ましい。
なお、図示の形態では、箱襞構造BPは前方端部領域Fに設けられているが、前方端部領域Fではなく後方端部領域Rに設けられていてもよい。また、前方端部領域Fと後方端部領域Rの両方に設けられていてもよい。箱襞構造BPが両端部領域F、Rに設けられている場合には、箱襞構造BPの構成を相違させ、その相違を触覚により識別できるよう構成することが好ましい。但し、箱襞構造BPは、図示のように前方端部領域Fのみに設けられていることが好ましい。吸収性物品100の装着者は、就寝時に仰向けになっている場合が多いためである。つまり、箱襞構造BPが、装着時に腹側となる前方端部領域Fに設けられていることで、背側において識別体80を含む箱襞構造BPの上に身体が載ることを避けることができるので、違和感を低減することができる。
図9に、本発明の別の形態による吸収性物品200を外面(外側シート221側)から見た部分平面図を示す。図1等に示す吸収性物品100と同様、吸収性物品200は、前方端部領域Fに、展開可能な箱襞構造BPを備えている。箱襞構造BPは、中央部241と、この中央部241の各側方に接続部245、245を介して接続された側部242、242とを有している。両側部241、241は、中央部241の肌対向面側に重ねられている。また、中央部241には、触覚により識別可能な識別体280が設けられている。中央部241は中央部吸収体231を有し、側部242、242はそれぞれ側部吸収体241、241を有している。また、吸収性物品200は、箱襞構造BPに隣接して、中央領域Mから主部248を有し、主部248は主部吸収体231を有している。但し、図9に示す吸収性物品200は、側部吸収体232と主部吸収体238とが別体になっている点で、吸収性物品100(図1等)と異なる。それ以外の点では、吸収性物品200の構成は、吸収性物品100について説明したものと同様とすることができる。
図9に示すように、箱襞構造BPの展開前の状態では、側部吸収体232と、側部吸収体232に前後方向D1で隣接する主部吸収体238とは、離間して配置されている。ここで、側部吸収体232と主部吸収体238とは、側部吸収体232の後方の端縁と主部吸収体238の前方の端縁とが所定の角度βをなすように配置されていることが好ましい。
図9の吸収性物品200においても、箱襞構造BPを展開させるには、側部242、242を幅方向D2外側に引っ張ればよい。例えば、図9の矢印Pで示す方向に(斜め後方に)引っ張ることができる。図9に示す吸収性物品200においては、上述のように側部吸収体232と主部吸収体238とが別体になっているため、側部242が移動しやすい。側部吸収体と主部吸収体とが接続されている場合には、箱襞構造BPの展開によって、側部から主部にわたって(側部吸収体から主部吸収体にわたって)歪みが生じる場合があるが(図5等)、本形態によれば、そのような歪みも防止することができる。このため、吸収性物品200の密着性が高まり、装着感の向上や漏れの防止といった効果を得ることができる。
図10に、箱襞構造BPが展開された後の吸収性物品200を外面から見た部分平面図を示す。図10に示すように、箱襞構造BPの展開後においては、中央部241が側部242、242間に少なくとも部分的に落ち込んで、両側部242、242間に配置されている。より具体的には、中央部吸収体231が側部吸収体232、232間に落ち込んで、箱襞構造BPの展開前の中央部吸収体231と側部吸収体232、232との重なりがなくなっている。これにより、中央部241から側部242にわたる領域をほぼ平坦にすることが可能となる。
また、図9に示すように、吸収性物品200における箱襞構造BPを展開する際、側部242、242をそれぞれ、吸収性物品200の面方向に沿って(面方向に対して平行に配置されている状態を保ちながら)後方に回転させることができる。すなわち、点Sを中心として矢印Qの方向に回転させることができる。これにより、図10に示すように、側部241は主部248に当接する、より具体的には、側部吸収体232を主部吸収体238に当接することができる。ここで、側部吸収体232及び主部吸収体238の互いに向かい合う端縁が、互いに対応した輪郭であると好ましい。これにより、箱襞構造BPの展開後には、側部吸収体232と主部吸収体238とが係合して、ほぼ隙間なく接触することができるので、側部242と主部248との境界付近での体液の漏れを防止することができる。
図9の形態では、側部吸収体232及び主部吸収体238の互いに向かい合う端縁は、いずれも直線状になっているが、曲線状とすることもできる。例えば、側部吸収体232の、主部吸収体238の方を向く端縁は、主部吸収体238が配置されている側に向かって凸又は凹となる輪郭を有することができる。その場合、主部吸収体238の、側部吸収体232の方を向く端縁は、側部吸収体232が配置されている側に向かって凹又は凸となる輪郭(側部吸収体232の端縁の輪郭形状に対応する輪郭)を有することができる。
図10に示すように、吸収性物品200の箱襞構造BPの展開後には、主部吸収体231、側部吸収体231、231、及び主部吸収体238、238は、全体として略矩形の形状となっている。図示の形態では、中央部吸収体231の前方の端縁と側部吸収体232の前方の端縁との前後方向D1の位置がほぼ等しくなっており、幅方向D2にほぼ沿った一直線上に配置されている。また、側部吸収体232の側方の端縁と主部吸収体238の側方の端縁との幅方向D2の位置もほぼ等しくなっており、前後方向D1にほぼ沿った一直線上に配置されている。
このように、箱襞構造BPの展開後に、各吸収体(中央部吸収体231、側部吸収体232、及び主部吸収体238)の端縁が前後方向D1及び幅方向D2に揃っている(位置合わせされている)ことで、前後方向D1の端部及び幅方向D2の端部において余分な吸収体が配置されることを回避できる。また、装着中に、前後方向D1の端部及び幅方向D2の端部の輪郭を凹凸のない形状とすることができるので、凹凸を含む部分が肌に押し付けられることによって生じ得る違和感をなくすことができる。
なお、箱襞構造BPの展開前に、側部吸収体232の後方の端縁と主部吸収体238の前方の端縁となす角度α(図9)は、中央部吸収体231と側部吸収体232とが重なっている部分における、中央部吸収体231の幅方向D2外側の端縁と側部吸収体232の幅方向D2内側の端縁とがなす角度βと概ね同じであるか又は角度βより大きいことが好ましい。角度αが角度βと概ね同じであると、箱襞構造BPの展開後における、中央部吸収体231と側部吸収体232との間、及び側部吸収体232と主部吸収体238との間の隙間を小さくすることができるので、好ましい。「角度αと角度βとが概ね同じである」とは、角度αが角度βの0.9〜1.1倍、好ましくは0.95〜1.05倍であることを指す。なお、角度α及び角度βは、15〜45°程度であると好ましい。
図9及び図10に示す吸収性物品200の箱襞構造BPの展開についてより詳細に説明するため、図11A及び図11Bに、吸収性物品200の吸収体230(中央部吸収体231、側部吸収体232、及び主部吸収体238)を示す。図11Aには、箱襞構造BPの展開前の状態を、図11Bには、箱襞構造BPの展開後の状態を示す。箱襞構造BPを展開する場合には、図11Bの矢印Qで示す方向、すなわち、吸収性物品200の面又は吸収体230の面方向に沿って、点Sを中心として側部吸収体232を回転させることができる。そして、箱襞構造BPの展開後には、図11Bに示すように、中央部吸収体231が側部吸収体232、232間に配置され、側部吸収体232、232がそれぞれ主部吸収体238、238に当接している。
以上、本発明の形態について、パッドタイプの使い捨ておむつを例として説明したが、本形態は、テープタイプ、パンツタイプ等の使い捨ておむつや、生理用ナプキン等においても好適に用いることができる。