JP2019154434A - 細胞培養ディッシュ - Google Patents

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徹也 大林
Tetsuya Obayashi
徹也 大林
恵一 吉田
Keiichi Yoshida
恵一 吉田
上原 一剛
Kazutaka Uehara
一剛 上原
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Abstract

【課題】培養される細胞を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続ける細胞培養ディッシュを提供する。【解決手段】細胞培養ディッシュは、細胞又は組織を培養するために使用する容器であって、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材を収納する構造を配し、該構造には蓄熱材が収納されている容器である。収納される蓄熱材は潜熱蓄熱材であり、35℃〜40℃にて固相と液相の間の平衡化、若しくは固相と固相の間の平衡化を生じるものである。更に、本開示係る細胞培養ディッシュは、容器の底面に複数の突起状の足部を配置した容器である。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養ディッシュ、特に温度管理可能な細胞培養ディッシュに関する。
再生医療や生殖補助医療の現場では、インキュベータ内に保管される細胞培養ディッシュを用いて細胞(又は組織)が培養される。細胞が培養される環境は、生体と同様のものであり続けるのが望ましく、培養される細胞周辺の環境変化は、細胞の品質管理のためには良いものではない。
ところが、細胞を培養する細胞培養ディッシュは、顕微鏡による観察のためや、培地交換作業のために、インキュベータの外部に一時的に(例えば、数分間)置かれることが度々ある。顕微鏡による観察のために、細胞培養ディッシュをインキュベータ外部に、例えば、2分間取り出しても、5℃程度以上細胞周辺の環境の温度が低下し得ることが発明者らによって確認されている。
特開2011−211990号公報 特開2006−30144号公報
本開示は、培養される細胞を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続ける細胞培養ディッシュを提供する。
本開示に係る細胞培養ディッシュは、細胞又は組織を培養するために使用する容器であって、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材を収納する構造を配し、該構造に蓄熱材が収納されている容器である。収納される蓄熱材が潜熱蓄熱材であり、35℃〜40℃にて固相と液相の間の平衡化を生じるものである。更に、本開示に係る細胞培養ディッシュは、容器の底面に複数の突起状の足部を配置した容器である。潜熱蓄熱材は、固体から液体の相転移を伴わない、電子相転移熱を利用した固固相転移潜熱材であってもよい。また、潜熱蓄熱材は、20℃〜25℃程度の温度を保持するものであってもよい。
本開示に係る細胞培養ディッシュは、特に、インキュベータから一時的に、例えば、数分間、外部に取り出されても、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けることができる。
図1(a)(b)(c)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュの上面図(平面図)である。 図2(a)(b)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュの底面図である。 図3(a−1)(a−2)(b−1)(b−2)(c−1)(c−2)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10の縦断面図である。 図4(a−1)(b−1)(c−1)は、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュの上面図(平面図)であり、図4(a−2)(b−2)(c−2)は、図4(a−1)(b−1)(c−1)の夫々に対応する、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュの縦断面図である。 図5は、従来の、受精胚の体外培養専用ディッシュの上面図(平面図)(図5(1))と、側面図(図5(2))である 図6(a−1)は、従来の細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)の側面図であり、図6(a−2)は、同じ細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)の底面図である。 図7(b)(c)は、夫々、実施の形態3に係る細胞培養ディッシュの底面図である。 図8(a)は、実施の形態4に係る細胞培養ディッシュの上面図(平面図)であり、図8(b)は、実施の形態4に係る細胞培養ディッシュの縦断面図である。 図9(a)は、実施の形態5に係る、細胞培養ディッシュのための温度維持トレイの斜視図である。図9(b−1)は、実施の形態5に係る、細胞培養ディッシュのための温度維持トレイの側面図である。図9(b−2)は、温度維持トレイと細胞培養ディッシュとが積み重なる様子を示す側面図である。 図10(a−1)は、従来の、円形センターウエルを備える細胞培養ディッシュの縦断面図である。図10(a−2)は、従来の、円形センターウエルを備える細胞培養ディッシュの上面図である。図10(b−1)は、実施の形態6に係る、円形センターウエルを備える細胞培養ディッシュの上面図である。図10(b−2)は、実施の形態6に係る細胞培養ディッシュにおける、専用蓄熱アダプタの上面図である。図10(b−3)と図10(b−4)は、実施の形態6に係る、円形センターウエルを備える細胞培養ディッシュの縦断面図である。 図11は、四つの96ウエルプレートの上面図(上面写真)である。 図12は、図11に示す四つの96ウエルプレートの各々における、各カーソル(各ウエル)での温度履歴のグラフである。 図13(a)は、細胞培養ディッシュの上面図である。図13(b)は、図13(a)に示す細胞培養ディッシュの培地における温度履歴のグラフである。 図14(1)は、実験例3−1及び実験例3−2のために用意した、5個の、円柱形状の12ウエルのマルチウエルプレートを説明する図である。図14(2)は、実験例3−1及び実験例3−2において、夫々のマルチウエルプレートの12ウエルに配置した、デジタルサーモテープ片の測定対象温度を説明する図である。 実験例3−1における、5個のマルチウエルプレートにおける温度変化のグラフである。 5個のマルチウエルプレートにおいて、「35℃になるまでの時間」、「33℃になるまでの時間」、及び「31℃になるまでの時間」を、デジタルサーモテープにより測定した結果を示す表である。 実験例3−2における、5個のマルチウエルプレートにおける温度変化のグラフである。 図18(a)は従来の96ウエルプレートの平面図であり、図18(b)は同96ウエルプレートの縦断面図である。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
1.本発明に至る経緯
再生医療や生殖補助医療の分野では、一般的に、培養される細胞又は組織は可能な限り生体と同様の環境で培養すべき、とされている。特に、哺乳類の生体では温度変化は殆ど起きない。例えば、ヒトであれば生体の温度は常時37℃前後に保持されている。従って、培養細胞が内部に保管されるインキュベータは、細胞培養ディッシュが保持する培養細胞に対して、常時同じ環境(特に、温度)を与え続ける。
しかしながら、細胞培養では、細胞培養ディッシュ及び細胞をインキュベータの外部に出す機会が多く存在する。例えば、観察のために顕微鏡に数分間設定する作業や、数分間をかけて培地を交換する作業などがある。ここで、短時間(2分以内)の顕微鏡観察でも、培地の温度が5℃以上低下することがあることが発明者らによって確認されている。「培養される細胞は可能な限り生体と同様の環境で培養すべき」という原則からは、このことは、決して望ましいことではない。
図18(a)は従来の96ウエルプレート110の平面図であり、図18(b)は同96ウエルプレート110の縦断面図である。図18(b)は、図18(a)の平面図における線分AA’を通過する、図18(a)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。培養細胞及び培地が入れられる各々のウエル101は、(ウエル101間の)隙間104、外周部106、底面112などに取り囲まれている。細胞培養ディッシュ、即ち96ウエルプレートがインキュベータの外部に出されると、これら隙間104、外周部106、底面112付近の温度が低下し、それと共に、各ウエル101の培地の温度が低下する。
また、図18に示すような96ウエルプレート110は、一般的に、創薬スクリーニングの作業で用いられる。その場合、外周部106付近のウエル101における培養細胞及び培地では、中央付近のウエル101におけるものと比べて、様々な観測データがばらつくことが以前から知られている。この理由について、発明者らは、中央付近のウエル101と対比して外周部106付近のウエル101は周囲環境の変化の影響を受けやすいような構造をウエルプレート110が有しているからではないか、と考えた。発明者らは、特に、96ウエルプレートをインキュベータの外部に出したときに、外周部106付近のウエル101は温度が低下しやすいような構造を、ウエルプレート110が有しているからではないか、と推測した。
後でも説明するが、図6(a−1)は、従来の細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)110の側面図であり、図6(a−2)は、同じ細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)110の底面図である。図6に示す一般的な細胞培養ディッシュ110の底面12aの外周端部には、例えば、ポリスチレン樹脂により細胞培養ディッシュ110と一体成形される、高さ数mm(例えば、1mm)の足部14が設けられている。発明者らは、この足部14が、顕微鏡観察のためや培地交換のための作業台(図示せず。)に接触することにより、外周端部付近のウエル101は、中央付近のウエル101よりも、作業台に対して放熱しやすく、よって、温度が低下しやすいのではないか、と推測した。
以上のように、以下の2点が問題点としてあげられ得る。
[問題点1]インキュベータ内に保管される細胞培養ディッシュ110を度々インキュベータの外部に出すことにより、細胞培養ディッシュ110及びウエル101の温度が低下してしまう。
[問題点2]インキュベータ内に保管される細胞培養ディッシュ10を度々インキュベータの外部に出すことにより、細胞培養ディッシュ110がマルチウエルプレートである場合、外周端部付近のウエル101における培養細胞及び培地では、様々な観測データがばらつく。
本発明に係る実施の形態は、上述の問題点を解決するものである。要するに、本発明に係る実施の形態は、細胞培養ディッシュにおいて、潜熱蓄熱材を活用するもの、及び、ディッシュ(マルチウエルプレート)の構造を改良するもの、である。このようにすることにより、インキュベータから数分間細胞培養ディッシュを外部に取り出した場合でも、細胞培養ディッシュの培地の温度が低下することがなく、更に、細胞培養ディッシュ(マルチウエルプレート)の外周端部付近のウエルの培地の温度が、中央付近のウエルの培地の温度よりも低下することがない。
2.[実施の形態1]
以下、図1〜図3を参照して実施の形態1を説明する。
2.1.細胞培養ディッシュの構成
図1(a)(b)(c)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10の上面図(平面図)である。図2(a)(b)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10の底面図である。図3(a−1)(a−2)(b−1)(b−2)(c−1)(c−2)は、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10の縦断面図である。
なお、図3(a−1)(a−2)は、図1(a)の平面図における線分AA’を通過する、図1(a)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。同様に、図3(b−1)(b−2)は、図1(b)の平面図における線分BB’を通過する、図1(b)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。図3(c−1)(c−2)は、図1(c)の平面図における線分CC’を通過する、図1(c)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。
図18に示す従来の細胞培養ディッシュ110は96ウエルのマルチウエルプレートであり、一方、図1〜図3に示す実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は24ウエルのマルチウエルプレートである。両者においては、ウエルの数は異なるが、ウエル(穴)間の隙間、外周部、及び、底面部を備えることは共通する。図1〜図3に示す実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、例えば、ポリスチレン樹脂により一体成形されているのが好ましい。なお、図1〜図3に示す実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、よく知られているように、細胞だけでなく組織の培養にも用いられ得る容器である。
実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4、外周部6、底面部12のうちの、一部に、又は全てに、蓄熱材8を充填して収納する。即ち、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、細胞又は組織を培養する部位であるウエル101の周囲に、蓄熱材8を収納する構造であるウエル間の隙間4、外周部6、底面部12を配している。
蓄熱材8は、潜熱蓄熱材であることが望ましく、人体などの生体の通常有する温度、例えば、35℃〜40℃程度の温度を保持する作用があるものが好ましい。即ち、液相と固相の間の平衡化により、あるいは電子相転移熱の利用により、37℃程度の温度を保持し得る蓄熱材8であることが好ましい。本開示における蓄熱材として利用できる物質として、ノルマルパラフィン、PEG1000、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、二酸化バナジウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。ノルマルパラフィンを含む蓄熱材の具体的な商品としては、コアフロント株式会社製の「サーモパック36」が挙げられる。PEG1000を含む蓄熱材の具体的な商品としては、株式会社イノアックコーポレーション製の「ヒートワン」が挙げられる。二酸化バナジウムを含む蓄熱材の具体的な商品としては、株式会社高純度化学研究社製の「Smartec(登録商標) HS」等が挙げられる。なお、蓄熱材8は、20℃〜25℃程度の温度を保持するものであってもよい。
実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10における、ウエル間の隙間4には、例えば、適宜加熱されて液相となっている蓄熱材8が、例えば、シリンジを用いて充填されるのが好ましい(以下も同様である。)。ウエル間の隙間4では、その最上部まで蓄熱材8が充填されてもよい(例えば、図3(a−1)(a−2)(b−1)(b−2)参照。)が、隙間の高さの途中までのみ充填されるのであってもよい。蓄熱材8は充填後放熱を行えば、当然ながら固相となりウエル間の隙間4にて固定される。以下も同様である。
実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10における、外周部6にも、例えば、適宜加熱されて液相となっている蓄熱材8が、充填されるのが好ましい。但し、図18(b)に示す96ウエルプレート110では外周部106の下側が開放されているが、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10では、外周部6に蓄熱材8が充填されるのであれば、例えば、細胞培養ディッシュ10そのものを形成する樹脂であるポリスチレン樹脂の薄板により外周部6の下側が蓋をされているのが好ましい。外周部6でも、その最上部まで蓄熱材8が充填されてもよい(例えば、図3(a−1)(a−2)(c−1)(c−2)参照。)が、外周部6の高さの途中までのみ充填されるのであってもよい。
なお、実施の形態4にて詳しく述べるように、蓄熱材8として、酸化バナジウムをエポキシレジン樹脂、シリコン樹脂あるいはウレタン樹脂と混合して成形化し、それを充填するようにしてもよい。
実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10における、底面部12にも、例えば、適宜加熱されて液相となっている蓄熱材8が、充填されるのが好ましい。この場合、例えば、マルチウエルの下方の下部面16と、予め細胞培養ディッシュ10と一体成形されているポリスチレン樹脂の薄板との間の、厚さ1mm程度の薄層空間に、所定の注入口を介して蓄熱材8が充填される、というものであってもよい。
図1の上面図(平面図)を参照して、図1(a)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4及び外周部6に、蓄熱材8が充填され収納されている。図1(b)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4に蓄熱材8が充填されて収納され、外周部6には何も充填されていない。図1(c)に示す細胞培養ディッシュ10では、外周部6に蓄熱材8が充填されて収納され、ウエル間の隙間4には何も充填されていない。
図2の底面図を参照して、図2(a)に示す細胞培養ディッシュ10では、マルチウエルの下方の下部面16と、予め細胞培養ディッシュ10と一体成形されているポリスチレン樹脂の薄板との間の、厚さ1mm程度の薄層空間に、蓄熱材8が充填されて収納されている。図2(b)に示す細胞培養ディッシュ10では、底面部12には何も充填されていない。
更に、図3の縦断面図を参照して、図3(a−1)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(a)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(a)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(a−1)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4、外周部6、及び底面部12の全てに、蓄熱材8が充填されて収納されている。
図3(a−2)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(a)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(b)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(a−2)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4、及び外周部6に、蓄熱材8が充填されて収納されている。
図3(b−1)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(b)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(a)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(b−1)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4、及び底面部12に、蓄熱材8が充填されて収納されている。
図3(b−2)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(b)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(b)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(b−2)に示す細胞培養ディッシュ10では、ウエル間の隙間4のみに、蓄熱材8が充填されて収納されている。
図3(c−1)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(c)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(a)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(c−1)に示す細胞培養ディッシュ10では、外周部6、及び底面部12に、蓄熱材8が充填されて収納されている。
図3(c−2)に縦断面を示す細胞培養ディッシュ10は、図1(c)に示す細胞培養ディッシュ10と図2(b)に示す細胞培養ディッシュ10とが組み合わせられたものである。即ち、図3(b−2)に示す細胞培養ディッシュ10では、外周部6のみに、蓄熱材8が充填されて収納されている。
以上、図1〜図3に示すように、細胞又は組織培養に使用する容器である、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、細胞又は組織を培養する部位であるウエル1の周囲に、蓄熱材8を収納する構造(例えば、ウエル間の隙間4、外周部6、底面部12、など)を配し、該構造には蓄熱材8が収納されている。
なお、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10において、例えば、外周部6に蓄熱材8を充填して収納する構造である場合、次のような構成にしてもよい。つまり、蓄熱材8が占有すべき空間(即ち、外周部6の形状)を包み込む袋状の立体形状を極薄い連続状のシリコンゴムで作成し、その上で袋状の立体形状内部に蓄熱材8を充填した後で、袋状の立体形状を外周部6に填め込むようにしてもよい。蓄熱材8を充填し得る他の空間、例えば、ウエル間の隙間4や底面部12などについても、同様の填め込み式を採用することができる。
2.2.細胞培養ディッシュの動作・作用
実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、細胞又は組織を培養する部位であるウエル1の周囲に、蓄熱材8を収納する構造(例えば、ウエル間の隙間4、外周部6、底面部12、など)を配し、該構造には蓄熱材8が収納される。ここで、収納される蓄熱材8として、37℃付近の融点を有するノルマルパラフィンが用いられる場合を想定する。このとき、この細胞培養ディッシュ10を、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。すると、蓄熱材8は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間細胞培養ディッシュ10を外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ10の温度は37℃付近から下がることがない。数分後、この細胞培養ディッシュ10をインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材8は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ10の温度は37℃付近であり続ける。このように、細胞培養ディッシュ10が、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、温度変化が殆ど生じない。
2.3.効果等
以上のように、本実施の形態は、細胞又は組織を培養するために使用する容器である細胞培養ディッシュ10、特に、マルチウエルプレートにおいて、細胞又は組織を培養する部位であるウエル1の周囲に蓄熱材8を収納する構造、例えば、ウエル間の隙間4、外周部6、底面部12を配する。細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材8を収納するための構造には、液相である潜熱蓄熱材、例えば、液相であるノルマルパラフィンが、事前に充填されて収納される。
このように、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材が収納されていると、細胞培養ディッシュが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがない。インキュベータはその内部に生体と同様の温度環境を保持するものであることから、本実施の形態に係る細胞培養ディッシュは、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けるものである。
3.[実施の形態2]
次に、以下、図4及び図5を参照して実施の形態2を説明する。
3.1.細胞培養ディッシュの構成
図4(a−1)は、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の上面図(平面図)であり、図4(a−2)は、それに対応する、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の縦断面図である。図4(b−1)は、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の上面図(平面図)であり、図4(b−2)は、それに対応する、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の縦断面図である。更に、図4(c−1)は、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の上面図(平面図)であり、図4(c−2)は、それに対応する、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20の縦断面図である。
なお、図4(a−2)は、図4(a−1)の平面図における線分AA’を通過する、図4(a−1)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。同様に、図4(b−2)は、図4(b−1)の平面図における線分BB’を通過する、図4(b−1)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。図4c−2)は、図4(c−1)の平面図における線分CC’を通過する、図4(c−1)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。
図4に示す実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20は、特に、受精胚の体外培養専用ディッシュとして用いられる、細胞又は組織を培養するための容器である。図5は、従来の、受精胚の体外培養専用ディッシュの上面図(平面図)(図5(1))と、側面図(図5(2))であるが、受精胚の体外培養専用ディッシュ本体に加えて、内蓋22と外蓋23とを示している。受精胚の体外培養専用ディッシュ本体は、細胞培養部1a、細胞培養部周囲の隙間4a、及び外周部6aから構成される。外蓋23は、排気口26と吸気口28を備える。外蓋23が体外培養専用ディッシュ本体に装着されると、体外培養専用ディッシュ本体は密閉され、内部の気相は維持されるが、所定のポンプ(図示せず。)を用いることにより体外培養専用ディッシュ本体の内部の気体は排気口26及び吸気口28を介して少しずつ入れ換えられる。内蓋22は、細胞培養部1aを覆って被せられている。
なお、外蓋23の上面には蓄熱材注入口24が設けられており、以下で説明する蓄熱材は、この注入口を介して注入され得る。
図4を参照して、図4(a−1)(a−2)に示す細胞培養ディッシュ20では、細胞培養部周囲の隙間4a、及び外周部6aに、蓄熱材8が充填されて収納されている。図4(b−1)(b−2)に示す細胞培養ディッシュ20では、細胞培養部周囲の隙間4aに蓄熱材8が充填されて収納され、外周部6aには何も充填されていない。図4(c−1)(c−2)に示す細胞培養ディッシュ20では、そもそも外周部6aが備わっておらず、よって細胞培養部周囲の隙間4aのみに蓄熱材8が充填されて収納されている。
以上、図4に示すように、特に、受精胚の体外培養に使用する容器である、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20は、細胞を培養する部位である細胞培養部1aの周囲に、蓄熱材8を収納する構造(例えば、細胞培養部周囲の隙間4a、外周部6a、など)を配し、該構造には蓄熱材8が収納されている。
なお、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20においても、蓄熱材8が占有すべき空間(例えば、細胞培養部周囲の隙間4a、外周部6a、など)を包み込む袋状の立体形状を極薄い連続状のシリコンゴムで作成し、その上で袋状の立体形状内部に蓄熱材8を充填した後で、袋状の立体形状を細胞培養部周囲の隙間4aや外周部6aに填め込む、という填め込み式を採用してもよい。
3.2.細胞培養ディッシュの動作・作用
実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20は、受精胚を体外培養する部位である細胞培養部1aの周囲に、蓄熱材8を収納する構造(例えば、細胞培養部周囲の隙間4a、外周部6a、など)を配し、該構造には蓄熱材8が収納される。ここで、収納される蓄熱材8として、37℃付近の融点を有するノルマルパラフィンが用いられる場合を想定する。このとき、この細胞培養ディッシュ20を、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。すると、蓄熱材8は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間細胞培養ディッシュ20を外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ20の温度は37℃付近から下がることがない。数分後、この細胞培養ディッシュ20をインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材8は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ20の温度は37℃付近であり続ける。このように、細胞培養ディッシュ20が、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、温度変化が殆ど生じない。
3.3.効果等
以上のように、本実施の形態は、細胞又は組織を培養するために使用する容器である細胞培養ディッシュ20、特に、受精胚の体外培養専用ディッシュにおいて、細胞又は組織を培養する部位である細胞培養部1aの周囲に蓄熱材8を収納する構造、例えば、細胞培養部周囲の隙間4a、外周部6aを配する。細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材8を収納する構造には、液相である潜熱蓄熱材、例えば、ノルマルパラフィンが、事前に充填されて収納される。
このように、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材が収納されていると、細胞培養ディッシュが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがない。インキュベータはその内部に生体と同様の温度環境を保持するものであることから、本実施の形態に係る細胞培養ディッシュは、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けるものである。
4.[実施の形態3]
次に、以下、図6及び図7を参照して実施の形態3を説明する。なお、実施の形態3は、前述の実施の形態、特に、実施の形態1と略同様のものであり、以下では、両者の差異を中心に説明し、同様の部分については説明を省略する。
4.1.細胞培養ディッシュの構成
図6(a−1)は、従来の細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)110の側面図であり、図6(a−2)は、同じ細胞培養ディッシュ(特に、ウエルプレート)110の底面図である。前述のように、図6に示す一般的な細胞培養ディッシュ110の底面12aの外周端部には、例えば、ポリスチレン樹脂により細胞培養ディッシュ110と一体成形される、高さ数mm(例えば、1mm)の足部14が設けられている。外周端部に足部14を設ける理由としては、他の作業台に配置したときに底面12a全体が作業台に直接接触するのを回避すること、及び、個々のウエルプレートの上面に上面蓋を被せ、その上で複数のウエルプレートを重ねるときに全体の構成が安定すること、等が挙げられている。
更に前述のように、ウエルプレートにおいて、外周端部付近のウエルにおける培養細胞及び培地では、中央付近のウエルにおけるものと比べて、様々な観測データがばらつくことが一般に指摘されている。この理由について、発明者らは、中央付近のウエルと対比して外周端部付近のウエルは周囲環境の変化の影響を受けやすいような構造をウエルプレートが有しているからではないか、と考えている。即ち、発明者らは、上述の足部14が、顕微鏡観察のためや培地交換のための作業台(図示せず。)に接触することにより、外周端部付近のウエルは、中央付近のウエルよりも、作業台に対して放熱しやすく、よって、温度が低下しやすい、と推測している。
なお、後で説明する[実験例1]において、外周端部付近のウエルは中央付近のウエルよりも温度が低下しやすいことを明らかにしている。
そこで、実施の形態3に係る細胞培養ディッシュ10aでは、足部の構造に工夫が加えられている。図7(b)(c)は、夫々、実施の形態3に係る細胞培養ディッシュ10aの底面図である。なお図示していないが、ウエルプレートのウエルの周囲には蓄熱材8を収納する構造(例えば、ウエル間の隙間、外周部、底面部、など)が配され、該構造には蓄熱材8が収納される。
図7(b)に示す細胞培養ディッシュ10aでは、従来の細胞培養ディッシュ110(図6参照)と比べて、足部14bの大きさが非常に小さくされている。即ち、足部14bが細胞培養ディッシュ10aの底面12aと接する面積が、非常に小さくされている。具体的には、図7(b)に示す細胞培養ディッシュ10aでは、底面12aの外周端部付近にて、特に、角部分にて、直径数mm(例えば、1mm)高さ数mm(例えば、1mm)の突起状の足部14bが複数設けられている。図7(b)に示す細胞培養ディッシュ10aは、突起状の足部14bが少なくとも四つ設けられるものであるが、設けられる突起状の足部14bの個数は、三つでも五つでも又はそれ以上でもよい。突起状の足部14bは、外周端部付近以外の位置に設けられてもよい。足部14bが小さくなることで、足部14bから放熱される単位時間当たりの熱量は小さくなり、外周端部付近のウエルでは温度が低下し難くなる。
更に、足部14bからの放熱を極力回避するためには、実施の形態3に係る細胞培養ディッシュ10aでは、足部14bは、ゴムや発布スチロールなどの断熱材で構成されていることが望ましい。
次に、図7(c)に示す細胞培養ディッシュ10aでは、従来の細胞培養ディッシュ110(図6参照)と比べて、複数の突起状の足部14cが底面12aの全体に均一に配置されている。即ち、複数の突起状の足部14cが細胞培養ディッシュ10aの底面12aの全体と接する部分が均一にされている。具体的には、図7(c)に示す細胞培養ディッシュ10aでは、直径数mm(例えば、1mm)高さ数mm(例えば、1mm)の突起状の足部14cが、底面12aの全体にて格子状に8×12個、均一に設けられている。足部14cと底面12aの全体との接触部分が均一であればよく、勿論、他の個数の突起状の足部14cが設けられてもよく、格子状でない均一な配置形態(例えば、千鳥状)で複数の突起状の足部14cが設けられてもよい。足部14cと底面12aの全体との接触部分を均一にすることで、複数の足部14cから均一に少しずつしか放熱されず、多数のウエル全体において僅かずつしか温度が低下しないこととなり、よって、外周端部付近のウエルが中央付近のウエルよりも温度が低下しやすいという事象が回避される。
図7(c)に示す細胞培養ディッシュ10aにおいても、足部14cからの放熱を極力回避するために、足部14cが、ゴムや発布スチロールなどの断熱材で構成されていることが望ましい。
4.2.細胞培養ディッシュの動作・作用
実施の形態3に係る細胞培養ディッシュ10aは、複数の足部14bと底面12aとの接触面積が小さくなるように、若しくは、複数の足部14cと底面12aとが接する部分が底面12aの全体において均一になるように、底面12aに複数の突起状の足部(14b、14c)を配置する。突起状の足部(14b、14c)は望ましくは断熱材で構成される。ウエルプレートのウエルの周囲には蓄熱材8を収納する構造(例えば、ウエル間の隙間、外周部、底面部、など)を配し、該構造には蓄熱材8が収納される。ここで、収納される蓄熱材8として、37℃付近の融点を有するノルマルパラフィンが用いられる場合を想定する。このとき、この細胞培養ディッシュ10aを、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。蓄熱材8は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間細胞培養ディッシュ10aを外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ10aの温度は37℃付近から下がることがない。特に、底面12aにおける複数の突起状の足部(14b、14c)の存在により、外周端部付近のウエルが中央付近のウエルよりも温度が低下しやすいという事象が回避される。数分後、この細胞培養ディッシュ10aをインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材8は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ10aの温度は37℃付近であり続ける。このように、細胞培養ディッシュ10aが、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、特に、マルチウエルのどのウエルにおいても、温度変化が殆ど生じない。
4.3.効果等
以上のように、本実施の形態は、細胞又は組織を培養するために使用する容器である細胞培養ディッシュ10a、特に、マルチウエルプレートにおいて、細胞又は組織を培養する部位であるウエル1の周囲に蓄熱材8を収納する構造を配する。更に、容器の底面12aには複数の突起状の足部(14b、14c)が配置されている。突起状の足部14bは、容器の外周端部付近にて少なくとも四つ設けられている。又は、複数の突起状の足部14cと容器の底面12aとが接する部分が、底面12aの全体において均一になるように、複数の突起状の足部14cが底面12aに配置されている。
なお、ウエル1の周囲に蓄熱材8を収納する構造には、液相である潜熱蓄熱材、例えば、ノルマルパラフィンが、事前に充填されて収納される。ここでも、蓄熱材8の収納時に占有すべき空間を包み込む袋状の立体形状を極薄い連続状のシリコンゴムで作成し、その上で袋状の立体形状内部に蓄熱材8を充填した後で、袋状の立体形状を、蓄熱材8を収納する構造に填め込む、という填め込み式が採用されてもよい。また、実施の形態4で説明するように、蓄熱材8として、潜熱蓄熱材である粉末状の酸化バナジウムをエポキシレジン樹脂、シリコン樹脂あるいはウレタン樹脂と混合して成形化したものを用いてもよい。
このように、容器の底面には複数の突起状の足部が配置されていると、細胞培養ディッシュが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがなく、特に、外周端部付近のウエルが中央付近のウエルよりも温度が低下しやすいという事象が回避される。
上述の実施の形態3は、マルチウエルプレートにて用いられ得ることを説明した。実施の形態3は、図4や図5に示す受精胚の体外培養専用ディッシュ20において用いられてもよい。
5.[実施の形態4]
次に、図8を参照して実施の形態4を説明する。なお、実施の形態4は、前述の実施の形態、特に、実施の形態1と類似するものであり、以下では、両者の差異を中心に説明する。
5.1.細胞培養ディッシュの構成
図8(a)は、実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30の上面図(平面図)であり、図8(b)は、実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30の縦断面図である。
なお、図8(b)は、図8(a)の平面図における線分αα’を通過する、図8(a)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。
図1〜図3に示す実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10は、直方体形状の24ウエルのマルチウエルプレートであり、一方、図8に示す実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30は、円柱形状の12ウエルのマルチウエルプレートである。円柱形状底面の円の直径は、例えば、45mmである。実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10と実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30との、両者においては、プレート全体の形状、及びウエルの数は異なるが、ウエル(穴)31間の隙間や底面部等を備えることは共通する。
図8に示す実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30は、例えば、ポリスチレン樹脂により一体成形されているが、図8(b)に示すように、底面部35において各ウエル31を取り囲むように、蓄熱材34が充填されている。
ここでの、蓄熱材34は、液相/固相の相転移を伴わない、電子相転移熱を利用した固固相転移潜熱材である潜熱蓄熱材を含むものであり、例えば、酸化バナジウムを含むものである。蓄熱材34は、シリコンと酸化バナジウムを混合したものでもよく、粘土と酸化バナジウムを混合したものでもよい([実験例3−1]及び[実験例3−2]参照。)。
更に、実施の形態4において、ポリスチレン樹脂からなる細胞培養ディッシュ30と、酸化バナジウムが混合されたポリスチレン樹脂からなる蓄熱材34部分とが、一体成形されてもよい。
酸化バナジウムを含む蓄熱材34は、人体などの生体の通常有する温度、例えば、35℃〜40℃程度の温度を保持する作用があるものが好ましい。また、蓄熱材34は、別の温度を、例えば、20℃〜25℃程度の温度を、保持する作用のあるものでもよい。固固相転移潜熱材である潜熱蓄熱材は、酸化バナジウム以外のものであってもよい。
5.2.細胞培養ディッシュの動作・作用
実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30は、細胞又は組織を培養する部位であるウエル31の周囲に、固体(粉末)の潜熱蓄熱材を含む蓄熱材34を収納する構造を配し、該構造には蓄熱材34が収納される。ここで、収納される蓄熱材34として、酸化バナジウムが含まれる場合を想定する。このとき、この細胞培養ディッシュ30を、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。すると、蓄熱材34は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間細胞培養ディッシュ30を外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ30の温度は37℃付近から下がることがない。数分後、この細胞培養ディッシュ30をインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材34は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ30の温度は37℃付近であり続ける。このように、細胞培養ディッシュ30が、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、温度変化が殆ど生じない。
5.3.効果等
以上のように、本実施の形態は、細胞又は組織を培養するために使用する容器である細胞培養ディッシュ30、特に、マルチウエルプレートにおいて、細胞又は組織を培養する部位であるウエル31の周囲に蓄熱材34を収納する構造を配する。細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材34を収納するための構造には、固固相転移潜熱材である潜熱蓄熱材、例えば、粉末である酸化バナジウムを含むシリコンや粘土が、事前に充填されて収納される。
このように、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材が収納されていると、細胞培養ディッシュが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがない。インキュベータはその内部に生体と同様の温度環境を保持するものであることから、本実施の形態に係る細胞培養ディッシュは、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けるものである。
6.[実施の形態5]
次に、図9を参照して実施の形態5を説明する。
6.1.細胞培養ディッシュのための温度維持トレイの構成
図9(a)は、実施の形態5に係る、細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ40の斜視図である。実施の形態5に係る温度維持トレイ40は、例えば円柱形状である細胞培養ディッシュ30aより僅かに大きい円柱形状のトレイであり、円柱形状の細胞培養ディッシュ30aが上方から填め込まれ得る(図9(b−2)参照。)即ち、温度維持トレイと細胞培養ディッシュとは一体となって、温度維持のための細胞培養ディッシュと成り得る。
なお、ここでの細胞培養ディッシュ30aは、例えば、従来の細胞培養ディッシュ30aと同様のもの(但し、円柱形状)でもよいし、実施の形態1に係る細胞培養ディッシュ10と同様のもの(但し、円柱形状)でもよいし、実施の形態2に係る細胞培養ディッシュ20と同様のものでもよいし、実施の形態4に係る細胞培養ディッシュ30と同様のものでもよいし、後で説明する実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60と同様のものでもよい。
図9(b−1)は、実施の形態5に係る、細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ40の側面図である。図9(a)及び図9(b−1)に示すように、実施の形態5に係る温度維持トレイ40では、ポリスチレン樹脂からなる本体部分と、酸化バナジウムが混合されたポリスチレン樹脂からなる蓄熱材42部分とが、一体成形される。なお、蓄熱材42部分は温度維持トレイ40の内側の底に配され、温度維持トレイ40の外側の底には断熱材44が配されるのが、好ましい。
なお、実施の形態5に係る細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ40、及び、温度維持トレイ40は、図9(b−2)に示すように、(下方から)温度維持トレイ40、細胞培養ディッシュ30a、温度維持トレイ40、細胞培養ディッシュ30a、温度維持トレイ40・・・と積み重ねて使用することができる構造を備えている。このように、細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ40は、細胞又は組織を培養する部位である細胞培養ディッシュ30aのウエルの周囲に、固体(粉末)の潜熱蓄熱材を含む蓄熱材42を配置(収納)する構造を配する。
実施の形態5に係る細胞培養ディッシュのための温度維持トレイは、細胞培養ディッシュよりも相当に大きいものであってもよい。例えば、図9(c)に示すように、実施の形態5に係る細胞培養ディッシュのための温度維持トレイ50は、2個の細胞培養ディッシュ30aを収容し得るものであってもよい。図9(c)は、実施の形態5に係る細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ40の斜視図である。
図9(c)に示す温度維持トレイ50は、ポリスチレン樹脂からなる本体部分と、酸化バナジウムが混合されたポリスチレン樹脂からなる蓄熱材52部分とが、一体成形される。蓄熱材52部分は温度維持トレイ50の内側の底に配され、温度維持トレイ50の外側の底には断熱材54が配される。更に、蓄熱材52部分には、2個の円状突起部56が形成されており、これらの上部に細胞培養ディッシュ30aが置かれることが想定されている。このように、図9(c)に示す細胞培養ディッシュ30aのための温度維持トレイ50も、細胞又は組織を培養する部位である細胞培養ディッシュ30aのウエルの周囲に、固体(粉末)の潜熱蓄熱材を含む蓄熱材52を配置(収納)する構造を配する。図9(c)に示すような場合でも、温度維持トレイと細胞培養ディッシュとは一体となって、温度維持のための細胞培養ディッシュと成り得る。
図9に示す実施の形態5において、酸化バナジウムを含む蓄熱材42、52は、人体などの生体の通常有する温度、例えば、35℃〜40℃程度の温度を保持する作用があるものが好ましい。また、蓄熱材42、52は、別の温度を、例えば、20℃〜25℃程度の温度を、保持する作用のあるものでもよい。固固相転移潜熱材である潜熱蓄熱材は、酸化バナジウム以外のものであってもよい。
6.2.細胞培養ディッシュのための温度維持トレイの動作・作用
実施の形態5に係る温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aは、細胞又は組織を培養する部位であるウエルの周囲に、固体(粉末)の潜熱蓄熱材を含む蓄熱材42、52を収納する構造を配し、該構造には蓄熱材42、52が収納される。ここで、収納される蓄熱材42、52として、酸化バナジウムが含まれる場合を想定する。このとき、温度維持トレイ40、50上に細胞培養ディッシュ30aを載せたままとして、この温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aを、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。すると、蓄熱材42、52は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aを外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ30aの温度は37℃付近から下がることがない。数分後、これらの温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aをインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材42、52は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ30aの温度は37℃付近であり続ける。このように、温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aが、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、温度変化が殆ど生じない。
6.3.効果等
以上のように、本実施の形態は、細胞又は組織を培養するために使用する容器である、温度維持トレイ40、50及び細胞培養ディッシュ30aにおいて、細胞又は組織を培養する部位であるウエルの周囲に蓄熱材42、52を収納する構造を配する。細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材42、52を配置(収納)するための構造には、固固相転移潜熱材である潜熱蓄熱材、例えば、粉末である酸化バナジウムが混合されたポリスチレン樹脂が、ポリスチレン樹脂からなる本体部分と一体成形されて、配置(収納)される。
このように、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材が収納されていると、細胞培養ディッシュ及び温度維持トレイが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがない。インキュベータはその内部に生体と同様の温度環境を保持するものであることから、本実施の形態に係る温度維持トレイ及び細胞培養ディッシュは、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けるものである。
7.[実施の形態6]
次に、以下、図10を参照して実施の形態6を説明する。
7.1.細胞培養ディッシュの構成
図10(a−2)は、従来の、円形センターウエル62を備える細胞培養ディッシュ60’の上面図である。図10(a−1)は、従来の、円形センターウエル62を備える細胞培養ディッシュ60’の縦断面図である。なお、図10(a−1)は、図10(a−2)の上面図における線分αα’を通過する、図10(a−2)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。細胞や組織が円形センターウエル62から飛び出ることを防ぐために、円形センターウエル62の周囲にはテーパー構造63が設けられている。
図10(b−1)は、実施の形態6に係る、円形センターウエル62を備える細胞培養ディッシュ60の上面図である。実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60は、図10(a−1)(a−2)に示す従来の細胞培養ディッシュ60’と同様のものであるが、実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60においては、円形センターウエル62の外側に、3個のボウル状構造63が備わる。これらボウル状構造63は空洞である。つまり、これらボウル状構造63は、細胞培養ディッシュ60本体がテーブル等に接する面積を少なくして、細胞培養ディッシュ60の保温効果を向上させるためのものである。なお、ボウル状構造63は、より多く設けられてもよいし、全く設けられなくてもよい。
更に、実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60は、図10(b−2)に示す、専用蓄熱アダプタ70を用いる。図10(b−2)は、実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60における、専用蓄熱アダプタ70の上面図である。専用蓄熱アダプタ70は主として蓄熱材72により構成される。専用蓄熱アダプタ70の下面には、板状の断熱材65が貼り付けられている。なお、蓄熱材72は、酸化バナジウムを混ぜ込んだ樹脂(例えば、ポリスチレン樹脂)で成形されてもよいし、液相/固相の相転移を行うノルマルパラフィンで形成されてもよい。
専用蓄熱アダプタ70は、実施の形態6に係る細胞培養ディッシュ60の下面から填め込むものである。特に、細胞培養ディッシュ60のテーパー構造63の内部に、蓄熱材72が入り込むように、専用蓄熱アダプタ70は構成されている。図10(b−3)は、図10(b−1)の上面図における線分A’Aを通過する、図10(b−1)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。図10(b−3)の細胞培養ディッシュ60の縦断面図では、テーパー構造63の内部に、専用蓄熱アダプタ70の蓄熱材72が入り込む様子が示されている。なお、専用蓄熱アダプタ70においても、ボウル状構造64が設けられる。図10(b−4)は、図10(b−1)の上面図における線分BB’を通過する、図10(b−1)の紙面に垂直な平面による縦断面図である。図10(b−4)の細胞培養ディッシュ60の縦断面図では、専用蓄熱アダプタ70にもボウル状構造64が設けられることが示されている。
7.2.細胞培養ディッシュの動作・作用
実施の形態6に係る、専用蓄熱アダプタ70を用いる細胞培養ディッシュ60は、細胞又は組織を培養する部位である円形センターウエル62の周囲に、潜熱蓄熱材を含む蓄熱材72を収納する構造を配し、該構造には蓄熱材72が収納される。ここで、収納される蓄熱材72として、酸化バナジウムが含まれる場合を想定する。このとき、専用蓄熱アダプタ70を用いる細胞培養ディッシュ60を、37℃以上の内部温度を有するインキュベータ内に一定時間以上(例えば、12時間以上)保管しておく。すると、蓄熱材72は十分な潜熱を吸収するから、顕微鏡観察や培地交換の作業のために数分間細胞培養ディッシュ60を外部へ取り出したとしても、培地及び培養細胞を含む細胞培養ディッシュ60の温度は37℃付近から下がることがない。数分後、この専用蓄熱アダプタ70を用いる細胞培養ディッシュ60をインキュベータ内部に戻せば、蓄熱材72は失った潜熱を回復しつつ、細胞培養ディッシュ60の温度は37℃付近であり続ける。このように、専用蓄熱アダプタ70を用いる細胞培養ディッシュ60が、インキュベータ内部、インキュベータ外部、及びインキュベータ内部と、移されても、温度変化が殆ど生じない。
7.3.効果等
以上のように、本実施の形態において、細胞又は組織を培養するために使用する容器である細胞培養ディッシュ60は、細胞又は組織を培養する部位である円形センターウエル62の周囲に蓄熱材72を収納する構造を配する。細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材72を配置(収納)するための構造には、固相である潜熱蓄熱材、例えば、粉末である酸化バナジウムが混合されたエポキシレジン樹脂、シリコン樹脂若しくはウレタン樹脂が、ポリスチレン樹脂からなる本体部分と一体成形された専用蓄熱アダプタ70が配置(収納)される。
このように、細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材が収納されていると、細胞培養ディッシュが、インキュベータから一時的に数分間外部に取り出されても、培養される細胞又は組織、及び培地の温度を低下させることがない。インキュベータはその内部に生体と同様の温度環境を保持するものであることから、本実施の形態に係る細胞培養ディッシュは、培養される細胞又は組織を可能な限り生体と同様の温度環境で培養し続けるものである。
8.他の実施の形態
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1〜3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
9.[実験例1]
図11は、四つの96ウエルプレートの上面図(上面写真)である。右上の96ウエルプレートでは、ウエル間の隙間に、ノルマルパラフィン(具体的には、コアフロント株式会社製の「サーモパック36」)(以下、蓄熱材[1]と称する。)が収納されている。左下の96ウエルプレートでは、ウエル間の隙間に、PEG(具体的には、株式会社イノアックコーポレーション製の「ヒートワン」)(以下、蓄熱材[2]と称する。)が収納されている。右下の96ウエルプレートでは、ウエル間の隙間に、一般的なPEG1000(以下、蓄熱材[3]と称する。)が収納されている。なお、右上の96ウエルプレートでは、蓄熱材は何ら収納されていない。
図11に示す四つの96ウエルプレートの底面の外周端部には、図6に示す一般的な細胞培養ディッシュ110の底面12aの外周端部と同様に、ポリスチレン樹脂により細胞培養ディッシュと一体成形される高さ数mm(例えば、1mm)の足部が設けられている。
[実験例1]では、夫々の96ウエルプレートにおけるウエルの内で、対応する8個のウエルについて、温度履歴を測定している。対応する8個のウエルは、四つの96ウエルプレートにおいて、相対的に同じ位置にある。
図11にて、左上の96ウエルプレートでは、8個のウエルに×印及び番号が付されている。これらの×印及び番号について、夫々順に、カーソル_1〜8と称することとする。
図11にて、右上の96ウエルプレートでも、左上の96ウエルプレートの8個のウエルに対応する、8個のウエルに×印及び番号が付されている。これらの×印及び番号について、夫々順に、カーソル_9〜16と称することとする。
図11にて、左下の96ウエルプレートでも、左上の96ウエルプレートの8個のウエルに対応する、8個のウエルに×印及び番号が付されている。これらの×印及び番号について、夫々順に、カーソル_17〜24と称することとする。
図11にて、右下の96ウエルプレートでも、左上の96ウエルプレートの8個のウエルに対応する、8個のウエルに×印及び番号が付されている。これらの×印及び番号について、夫々順に、カーソル_25〜32と称することとする。
図11に示す四つの96ウエルプレートについて、ウエルに培地100μlを充填した上で、インキュベータ内部で所定の時間(ここでは、24時間)、所定の温度(ここでは、37℃)で培養した後、外部(室温:23℃)の作業台に取り出して、温度履歴を計測した。温度履歴計測はサーモカメラで行った。図12は、各96ウエルプレートにおける、各カーソル(各ウエル)での温度履歴のグラフである。つまり、図12(a)は、蓄熱材が収納されていない96ウエルプレートにおける各カーソル(各ウエル)についての温度履歴のグラフである。図12(b)は、蓄熱材[1]が収納されている96ウエルプレートにおける各カーソル(各ウエル)についての温度履歴のグラフである。図12(c)は、蓄熱材[2]が収納されている96ウエルプレートにおける各カーソル(各ウエル)についての温度履歴のグラフである。図12(d)は、蓄熱材[3]が収納されている96ウエルプレートにおける各カーソル(各ウエル)についての温度履歴のグラフである。
図12(b)にて顕著に表れているように、蓄熱材[1]が収納されている96ウエルプレートでは、1000秒頃までは、どのウエルでも35℃程度以上に温度が保たれているが、その後は、カーソル_9、カーソル_10、カーソル_11、カーソル_12など、プレートの外周端部に近いウエルにて先に温度低下が始まっている。
また、図12(a)に示される、蓄熱材が収納されていない96ウエルプレートにおける温度履歴では、どのカーソル(ウエル)も同じように温度低下しているが、特に、プレートの外周端部に近いカーソル_1、カーソル_2、カーソル_3にて、より早く温度低下が始まっていることが分かる。
このように、プレートの外周端部に近いウエルにおいては、温度低下がより早い時期に且つ急峻に開始することが分かる。プレートの外周端部に近いウエルにおける、早い時期の且つ急峻の温度低下を、できるだけ回避するためには、図7に示すように、突起状の足部を底面に配置することが、有効である。
10.[実験例2]
図13(a)は、細胞培養ディッシュの上面図である。60mmディッシュの内側に35mmディッシュを接着している。60mmディッシュの蓋の中央付近には針状温度計が入る穴を空けた。35mmディッシュの内側には厚さ3mmで培地を入れ、35mmディッシュの外側且つ60mmディッシュの内側には、蓄熱材を収納した。蓄熱材は以下の四つである。
・ノルマルパラフィン(具体的には、コアフロント株式会社製の「サーモパック36」)(蓄熱材[1])。
・PEG(具体的には、株式会社イノアックコーポレーション製の「ヒートワン」)(蓄熱材[2])。
・一般的なPEG1000(蓄熱材[3])。
・PBS(蓄熱材[4])。
従って、四つの細胞培養ディッシュを用意した。
上記の四つの細胞培養ディッシュを、内部温度37℃のインキュベータで12時間以上保温し、その後室温(23℃)の外部に取り出し、作業台(実験台)上に置いた。60mmディッシュの蓋の穴に針状温度計を差し込み、温度履歴の計測を開始した。
図13(b)は、上記の四つの細胞培養ディッシュの培地における温度履歴のグラフである。図13(b)に示されるように、蓄熱材[1]が収納された細胞培養ディッシュにおいて、より長い間、37℃に近い高温が保持される傾向にある。
11.[実験例3−1]
図14(1)に示すように、細胞培養ディッシュとして、実施の形態4に示すような円柱形状の12ウエルのマルチウエルプレート(直径45mm)を、5個(A〜E)用意した。底面部には、夫々、以下のような蓄熱材が充填された。
A.そのまま
B.シリコンのみ
C.シリコン+潜熱蓄熱材(固体)
D.粘土のみ
E.粘土+潜熱蓄熱材(固体)
「A.そのまま」とは、充填する蓄熱材を用いないことを意味する。また、潜熱蓄熱材として、酸化バナジウム(株式会社高純度化学研究所製「Smartec(登録商標)HS35)を用いた。
図15に示すように、各ウエルには、デジタルサーモテープ片を入れ、水(80μl)を充填した。デジタルサーモテープは、(36℃、34℃、32℃)のものである。5個のマルチウエルプレートを37℃のインキュベータに入れ、37℃に安定するまでそれらを保温した。インキュベータから取り出し、各デジタルサーモテープにより温度変化を観察し、同時に、サーモカメラで温度変化を測定した。
夫々、4行×3列の12ウエルを含む、5個のマルチウエルプレートは、図14(1)に示すように、同じ向きに並べた。夫々のマルチウエルプレートの12ウエルにおいて、図14(2)に示すように、測定対象温度のデジタルサーモテープ片を配置している。また、夫々のマルチウエルプレートにおいて、左上のウエルと、3行・2列のウエルを、サーモカメラによる温度変化測定の対象とした。つまり、図15に示すように、
・Aのマルチウエルプレートでは、カーソル_9とカーソル_10を、
・Bのマルチウエルプレートでは、カーソル_5とカーソル_6を、
・Cのマルチウエルプレートでは、カーソル_1とカーソル_2を、
・Dのマルチウエルプレートでは、カーソル_7とカーソル_8を、
・Eのマルチウエルプレートでは、カーソル_3とカーソル_4を、
夫々、測定の対象としている。
サーモカメラによる温度変化測定の結果を示す図15から分かるように、「C.シリコン+潜熱蓄熱材(固体)」を底面部に充填したマルチウエルプレート、及び、「E.粘土+潜熱蓄熱材(固体)」を底面部に充填したマルチウエルプレートでは、温度が下がり難い。
12.[実験例3−2]
[実験例3−1]と同じように、図14(1)に示す、円柱形状の12ウエルのマルチウエルプレート(直径45mm)を、5個(A〜E)用意した。夫々の底面部には、図14に示すものと同じ蓄熱材を充填した。
図15に示すように、各ウエルには、デジタルサーモテープ片を入れ、水(80μl)を充填し、更に、3mlのオイルをその上に充填した。デジタルサーモテープは、(36℃、34℃、32℃)のものである。夫々4行×3列の12ウエルを含む、5個のマルチウエルプレートは、図14に示すように、同じ向きに並べられている。夫々のマルチウエルプレートの12ウエルにおいて、図14(2)に示すように、測定対象温度のデジタルサーモテープ片を配置している。また、夫々のマルチウエルプレートにおいて、2行・2列のウエルを、サーモカメラによる温度変化測定の対象とした。つまり、図17に示すように、
・Aのマルチウエルプレートでは、カーソル_5を、
・Bのマルチウエルプレートでは、カーソル_3を、
・Cのマルチウエルプレートでは、カーソル_1を、
・Dのマルチウエルプレートでは、カーソル_4を、
・Eのマルチウエルプレートでは、カーソル_2を、
夫々、測定の対象としている。
5個のマルチウエルプレートを37℃のインキュベータに入れ、37℃に安定するまでそれらを保温した。インキュベータから取り出し、各デジタルサーモテープにより温度変化を観察し、同時に、サーモカメラで温度変化を測定した。
図16は、A〜Eの各マルチウエルプレートにおいて、「35℃になるまでの時間」、
「33℃になるまでの時間」、及び「31℃になるまでの時間」を、デジタルサーモテープにより測定した結果を示す表である。潜熱蓄熱材を含む、シリコン又は粘土が底面部に充填されたマルチウエルプレートでは、5分を経過しても、33℃以上を維持していることがわかる。
更に、サーモカメラによる温度変化測定の結果を示す図17から分かるように、「C.シリコン+潜熱蓄熱材(固体)」を底面部に充填したマルチウエルプレート(カーソル_1)、及び、「E.粘土+潜熱蓄熱材(固体)」を底面部に充填したマルチウエルプレート(カーソル_2)では、温度が下がり難い。
1、31、101・・・ウエル、1a・・・細胞培養部、4、104・・・ウエル間の隙間、4a・・・細胞培養部周囲の隙間、6、6a、106・・・外周部、8、34、42、52、72・・・蓄熱材、10、10a、20、30、30a、60・・・細胞培養ディッシュ、12・・・底面部、12a、112・・・底面、14、14b、14c・・・足部、16・・・下部面、35・・・底面部、40、50・・・温度維持トレイ、44、54、65・・・断熱材、62・・・円形センターウエル、63・・・テーパー構造、64・・・ボウル状構造、70・・・専用蓄熱アダプタ。

Claims (14)

  1. 細胞又は組織を培養するために使用する容器であって、
    細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材を収納する構造を配し、
    前記構造に蓄熱材が収納されている容器。
  2. 細胞又は組織を培養するために使用する容器であって、
    細胞又は組織を培養する部位の周囲に蓄熱材を収納する構造を配している、
    容器。
  3. 前記構造が、複数の前記細胞又は組織を培養する部位の間の隙間である、請求項1又は2に記載の容器。
  4. 前記構造が、複数の前記細胞又は組織を培養する部位の周囲の隙間である、請求項1又は2に記載の容器。
  5. 前記構造が、前記容器の外周部である、請求項1又は2に記載の容器。
  6. 前記構造が、前記容器の底面部である、請求項1又は2に記載の容器。
  7. 前記容器の底面に複数の突起状の足部を配置した請求項1又は2に記載の容器。
  8. 前記複数の突起状の足部の各々が、断熱材で構成されている請求項7に記載の容器。
  9. 前記突起状の足部が、前記容器の外周端部付近にて少なくとも四つ設けられている、請求項8に記載の容器。
  10. 前記複数の突起状の足部と前記容器の底面とが接する部分が、前記底面の全体において均一になるように、前記複数の突起状の足部が前記底面に配置されている、請求項8に記載の容器。
  11. 前記蓄熱材が潜熱蓄熱材である、請求項1〜10のうちのいずれか一に記載の容器。
  12. 前記潜熱蓄熱材が35℃〜40℃にて固相と液相の間の平衡化を生じるものである、請求項11に記載の容器。
  13. 前記潜熱蓄熱材が35℃〜40℃の温度を保持するものである、請求項11に記載の容器。
  14. 前記潜熱蓄熱材が20℃〜25℃の温度を保持するものである、請求項11に記載の容器。
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