JP2008532539A5 - - Google Patents

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JP2008532539A5
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細胞の実体の成熟および輸送システム
本発明は、細胞、卵母細胞、胚、成熟卵子、またはその他の細胞組織を体外で培養するためのシステムおよび方法に関する。また、細胞、卵子、胚、卵母細胞、あるいはその他の細胞組織または物質の輸送のための手段に関する。
体外で卵子を成熟させるため、および胚を培養するためのさまざまな装置および方法が知られている。標準的な技術において、これらのプロセスは、卵子または胚を操作するためのピペットや、卵子または胚ならびに成熟または培養培地を入れるためのペトリ皿などの従来の用具を使用して達成される。卵子または胚は、通常、制御された温度およびガス環境の状況において培養器で培養される。それらは、一つずつまたはまとめて培養されてもよく、特に卵子については、卵丘細胞などのその他の細胞の存在下で培養されてもよい。成熟または培養は、ペトリ皿における培地の微小滴で実行されることが多く、その培地は不活性油で被覆され、その皿は、インキュベーターにおける環境へのガス通路を有する。従来のいくつかの成熟または培養手順において、卵子または胚が含まれる培地環境の量が重要となり、いくつかの卵子または胚が少量の培地にともに存在する場合に、成熟および培養の成功率がより高いということがいくつかの方法において証明されている。この自己分泌作用は、第二の卵子の発達に作用する第一の卵子または胚によって生成される微量の化学物質によってもたらされると考えられる。しかしながら、ある特定の状況においては、個々の卵子または胚を識別することも有益であり、従来の装置は、通常、胚または卵子が別々に保存されることができないが、その間の化学物質が交換可能である。特許文献1に開示されるVajtaらのwell−of−wells(WOW)方法により、これが可能になるが、胚の出口に対してウェルを閉鎖しないため、可搬型装置における使用には適していない。
培地は、通常、pHの変動を緩和し、この緩和は、重炭酸塩/二酸化炭素に基づいてもよく、その場合は、外部ガス環境における二酸化炭素の分圧が重要となり、HEPESなどのその他緩衝系に全体的または部分的に基づいてもよく、その場合は、ガス環境をあまり厳密に制御しなくてもよく、状況によって全く制御しなくてもよい場合がある。培地は、成熟または培養の間に、名目上一定の組成であってもよく、または、同一の名目組成の更新培地のために変更されてもよく、あるいは、例えば成熟または培養のプロセスを支援または制御するために培地状態を修正するために新たな培地であってもよい。具体的には、胚の培養のためのある方法において、最初に無血清培地で胚を培養し、後に培養において血清(多くの場合、ウシ胎児血清、FCS)を含む培地に変更することが有益であることが知られている。卵子の成熟の場合、成熟のプロセスは、種を成熟培地に添加すること、または培地を新鮮培地と取り替えて培地から種を除去することによって制御されてもよいことが知られている。これは、卵子または胚が、成熟または培養プロセス中に、例えば、卵子の採取位置または胚の生産位置から卵子が使用され得る第二の位置または胚が移植される第二の位置に輸送される場合に特に有利であってもよい。従来、培地は、例えば、同じ培養皿におけるある微小滴から別の微小滴など、ある培地からまた別の培地へピペットで取ることによって卵子または胚を移動させることによって変化させている。これは、単純な装置を使用するが、卵子および胚が繊細であるためピペットにより損傷を受け易いこと、ある量の培地が必然的に培地環境から別の培地環境へ輸送されるため、微小滴が少量である場合に特に重要となり、超低濃度で活性の古い培地からの物質が新しい培地に輸送されてもよい可能性があるが、逐次的洗浄ステップが使用されない場合に限ること、輸送プロセスはゆっくり行い、技術を有する者が行う必要があること、ならびに、輸送は遠隔で行うことができないこと、などの不利点を抱えるので、輸送中または完全装備の研究環境外では実行できない。
参照の後、装置の機能および方法の説明の実例として、胚の培養が説明される。プロセスの多くは、卵子の成熟および細胞またはその他の細胞の実体の培養にも適用されることが可能で、当技術分野に精通する者には、異なるサイズ区分の胚、卵子、および細胞について適切に選択された寸法でこの適用が可能であることが明白である。したがって、成熟および培養ならびに卵子、胚、および細胞の用語は、以下において、および便宜的に総称して>対象物=と呼ばれる場合に、同じ意味で使用される。本発明の特定の機能は、卵子の成熟または胚の培養に適用することが留意されたい。
多くの装置および方法が、従来技術におけるこれらおよびその他の問題を軽減するために提案されてきた。
Beebeらによる特許文献2および特許文献3は、ほぼ胚の大きさのマイクロチャネルを備えるシステムを提案し、そのマイクロチャネルには胚が入り、チャネルに沿った流れにおける同調によりマイクロチャネル内の狭窄部に配置され、その流れが、チャネル壁の一つに接触しているチャネルに沿って胚を回転させる。この装置は、胚の培地環境の厳密な制御を達成するが、不利点を抱え、その中でもとりわけ、逆方向の培地の流れに対して胚を明確に配置する手段を提供せず、胚が狭窄部から移動する傾向にあること、培地と外部ガス環境との間のガス交換に使用可能な手段を提供せず、各位置における多数の胚に使用可能な保存手段を提供しないが識別を行い、つまり、特許文献2の装置および方法において胚がある保持位置から別の保持位置まで移動することが可能であるため、胚の識別に関する情報を失うこと、といった不利点を抱える。輸送における使用に適切な装置を作製するという適応は開示されず、重力下または運動下で移動する胚に関する問題が潜在的に発生する。
Campbellらによる特許文献4は、輸送に適合した胚培養のための装置を提案し、胚は、胚が確実に保持される方法で閉鎖可能であるウェルに保持され、ウェルにおける培地が遠隔または自動制御下で取り替え可能にする供給および流れ生成手段を有する。また、特許文献4も、培地またはウェルにおける温度、pH、および化学成分などのパラメーターを監視および/または制御するための手段を開示するが、これがいかに達成されるかを示す装置の詳細については開示されていない。特許文献4の装置および方法は、制御化学環境において多数の胚を搬送するようには適合されていないが胚の識別は行うものであるが、共通のウェルまたは複数のウェルにおける胚を分割する手段が無いこと、ウェルが胚よりも大幅に大きいために培地環境が制御できず、第一の培地を第二の培地と完全に交換するための長時間および多量の培地が制御できないこと、ウェルへのアクセスが長い注入管の下方またはマイクロチャネルにおける同調のそばにあり、従来のピペットを使用して容易に達成できないこと、設計が従来の顕微鏡の使用に適していないことが挙げられる。
Thompsonらによる特許文献5は、胚を培養するための方法および装置を開示し、胚はタンク中の培地において培養され、そのタンクには一つ以上の貯蔵容器から培地が供給され、例えば、温度、pH、溶存酸素、溶液中のイオン、または胚の呼吸による代謝産物に関するセンサーが任意で設けられることにより、胚の周囲の培地が、培地の状態または制御装置に保存されるプログラムに対応して変更可能であるようにする。特許文献5に開示される装置は、大量の溶液を収容するマクロスケール装置を備え、この発明のタンクは大容量(10〜50ml)であるため、第一の培地と第二の培地を取り替えるために大量の培地も必要になる。デバイスは、装置外部にある別々の貯蔵容器および流動システム構成要素を使用するという点において内蔵型ではなく、輸送には適合しない。貯蔵容器から新たにガスが富化された培地の流れによってでしか、タンク内に胚のガス(二酸化炭素、空気)をかん流する手段が開示されない。実用的な輸送装置において、装置のサイズおよび胚の周囲の培地の量は、特許文献5に記載のものよりも少ないほうが有利であり、胚の周囲の培地とのガス平衡を可能にする手段が好ましい。
Van den Steenらによる特許文献6は、各区画で胚を保持する篩状の構成要素の積層配列に基づいて、チャンバを介した培地の流れを可能にする胚の発達のためのマイクロチャンバの配列を開示する。胚は、区画および篩状の構成要素の積層に配置され、胚を封鎖するように組み立てられる。その構成要素は、ほぼ胚の大きさで図示されるが、特許文献6における図は、単に略図であって、そのような構造を組み立てる手段は開示されない。装置の輸送を可能にする蓋またはその他の閉鎖手段も開示されない。
Vajtaらによる特許文献1は、大きいウェルの底部に位置する配列された小さいウェルにおいて胚を培養する方法を開示する(well−of−wells方法として既知である)。これにより、胚は、共通の培地において別々に配置可能になるが、培地またはウェルを含むデバイスのバランスが崩れた場合に胚を本来の位置に保持する手段を含まない。したがって、研究室環境外に胚を輸送するには適切ではない。また、その方法は、開放型ウェルに基づいているため、インキュベーターにおける環境からのガス交換またはそれによる加熱に依存する。さらに、培地を大きいウェルからピペットによって出し入れする手段以外に、培地の組成を変更する手段が開示されていない。
Vajtaらによる特許文献7は、胚移植に使用されるような毛細血管状のストローにおける卵子または胚の輸送を開示し、そのストローは、任意で密閉された端を有し、その成熟または培養プロセスは輸送中に実行可能であるが、輸送中に培地の交換ができない。
胚または卵子の輸送装置は、例えば、Cryologic Pty社(オーストラリア)(www.cryologic.com、www.biogenics.com)によって製造されたものが知られており、それは、輸送中の数時間または数日間の期間、一定の温度を維持するが、内部の格納容器における培地との交換のための一定のガス環境は維持できない。内部の格納容器は、一般的に、バイアル、ストロー、またはキャピラリーの形状であり、また、輸送中の培地の交換の手段がない。
特許文献4、特許文献5、および特許文献6に開示される従来技術のデバイスに関するさらなる問題は、小さいまたは低アスペクト比であるように適合されておらず(例えば、ストローなど)、輸送中にその状況を維持するために、結果として生じる電力の増大および絶縁の必要性を含めるために体積を増大させる必要がある。これにより、搬送時間が限定されるため、その含有物は搬送の遅れの影響を受け易い。さらに、現在市販されている装置は、絶縁が不十分で、サンプルを冷却ではなく加熱することによって温度を維持することが可能であるため、胚および卵子は、高い大気温度の期間が長引く場合に損傷を受け易い。
国際公開第0102539号パンフレット 米国特許第6193647号明細書 米国特許第6695765号明細書 米国特許出願公開第20020068358号明細書 米国特許第6673008号明細書 米国特許出願公開第20040234940号明細書 米国特許第6399375号明細書
「細胞の実体(cellular entity)」、「対象物」、および「胚」の用語は、装置内に配置され、本発明の方法で使用される卵子、胚、またはその他の細胞の実体と同じ意味で使用される。本装置の関連部分は、収容される対象物の一般的な寸法に基づいてサイズが決定可能である。胚、卵子、およびそれと同様なもの以外の細胞はより小さく、本発明の実施形態は、関連部分が適切にサイズ決定されるものにも適用する。
本発明の第一の側面によれば、請求項1から23に記載のデバイスが提供される。
本発明の第二の側面によれば、請求項24から35に記載の装置が存在する。
本発明の第三の側面によれば、請求項36から38に記載の輸送モジュールが提供される。
本発明のデバイス、装置、およびモジュールは、特に、再現可能でかつ安定した環境において、技術者の介入を必要とせずに細胞の実体の輸送を可能にする。
ウェル間における液体の流れについての本明細書における記載事項は、その間の化学種/分子の拡散にも関連する。
一実施形態において、本発明は、細胞の実体を培養または成熟させるための装置を提供し、前記装置は、ベースの表面に開放する一つ以上のウェルを有するベースと、細胞の実体の出入りを防ぐように各ウェルを閉鎖する働きをする蓋と、前記装置内のガス供給から分子が前記ウェル内の培地に輸送可能にする透過手段と、を含むデバイスを備える。
一実施形態において、本発明は、細胞の実体を培養または成熟させるための装置を提供し、前記装置は、ベースの表面に開放する多数のウェルを有するベースと、細胞の実体の出入りを防ぐように各ウェルを閉鎖する働きをする蓋と、前記細胞の実体がその本来のウェルに保持されて、隣接するウェルに含まれる細胞の実体間の物質的接触を防止するように構成される、ウェル間の化学的連通のための手段とを含むデバイスを備える。
さらなる実施形態によると、本発明は、細胞の実体を培養または成熟させるための装置を提供し、前記装置は、ベースの表面に開放する一つ以上のウェルを有するベースと、細胞の実体の出入りを防ぐように各ウェルを閉鎖する働きをする蓋と、前記蓋が所定の位置にある際に、ウェル内の培地の組成を変更するための手段とを含むデバイスを備える。
さらなる実施形態によると、本発明は、本発明のデバイスおよび前記デバイスと連動して動作する電気機器または輸送モジュールを備える、胚を培養および輸送するためのシステムを提供し、前記電気機器またはモジュールは、前記デバイスに流体を供給するための一つ以上の流体貯蔵容器と、前記電気機器と前記デバイスとの間の流体連通を生成する流体接続手段と、前記デバイスの流れを生成または調整するための流れ生成または制御手段と、外部電源とは独立している前記デバイスおよび前記電気機器の動作を可能にする電源と、前記デバイスおよび前記電気機器の動作を制御する制御手段とを備え、任意で前記デバイスと連接するセンサーからの出力を使用する。
前記表面は、好ましくは平らまたは平面である。前記ウェルは、好ましくは、細胞の実体の自動挿入または顕微鏡検査を容易にするために、二次元配列を形成する。
好ましくは、前記装置は、前記ベースを介して、倒立顕微鏡を使用して上から観察、標準の顕微鏡を使用して観察、またはその両方のために、ウェル内の前記胚の可視性を提供するように配置される。
好ましくは、前記ウェル内の前記培地の温度を制御する手段が提供される。
好ましくは、前記装置本体または前記ウェル内の前記培地の温度を測定するための一つ以上の温度センサーが提供される。
好ましくは、前記装置本体または前記ウェル内の前記培地を加熱または冷却するための一つ以上の熱伝達手段が提供される。
一実施形態において、前記デバイスの全部または一部は、PDMSなどのガス透過性であるが液体不透過性である材料から作製される。PDMSは、ガスの溶解性が高く、水性液体の溶解性が低いため、前記ウェルの細胞内含有物の代謝のために、適切な厚さの材料を横切って、継続して酸素および二酸化炭素が十分に輸送可能にする。前記要素は、前記細胞内含有物の呼吸が維持されるようにするバルク材料を介して十分な輸送量を可能にするサイズである。
代替実施形態において、前記蓋または前記ベースは、ガス輸送を支持するが細孔に水性液体を通さない疎水性の有孔性材料から作製される。このような材料は、いくつかの形状で存在するが、特に適切であると考えられるものは、有孔性焼結ポリエチレンであって、商標が「VYON」あり、英国レクサムにあるPorvair社製のものが挙げられる。この材料は構造的に頑丈であり、高いガス輸送係数を有する。
好適な実施形態において、前記ベースは薄く、倒立顕微鏡上に置かれる際に優れた光学的特性を可能にし、前記ウェルの含有物と前記ベースの下の表面との間に優れた熱接触を提供するため、前記デバイスが伝熱面または冷却面に置かれる際に前記含有物の温度を厳密に制御することができる。
好ましくは、前記蓋および/または前記ベースの表面の少なくとも一部分は、親水性である。
好ましくは、前記蓋および/または前記ベースの表面の少なくとも一部分は、疎水性である。
好ましくは、物質を前記ウェルに放出するように働く放出制御デバイスが提供される。前記放出制御デバイスは、例えば、外部制御信号または刺激を使用して、自律していてもよく、例えば、時間放出型または制御可能であってもよい。
好ましくは、培地またはガスが流動する、前記ウェルと流体連通する一つ以上の流体チャネルが提供される。
好ましくは、前記ウェル内の前記培地に添加される材料の供給が、前記ウェル内の培地の化学組成を変更するために提供される。
好ましくは、前記装置を直接囲む環境において、またはさらなる流体チャネルを介して供給される、前記ウェル間のガス連通およびガス供給を可能にする手段が提供される。
好ましくは、前記デバイス上または前記電気機器の流体流動システムの一部として配置される透過手段と流体連通するガス貯蔵容器であって、透過手段は、前記デバイスにおいて、前記ガス貯蔵容器から前記培地にガス分子の輸送を可能にする、ガス貯蔵容器が提供される。
好ましくは、熱絶縁は、前記デバイスと前記環境との間で提供される。
前記電気機器またはその外部環境の温度を測定するさらなる温度センサーが提供されることが好ましく、その出力は、例えば、熱伝導手段あるいは前記電気機器またはデバイス内の流れを制御する前記制御手段によって記録または利用される。
好ましくは、前記ウェル内の培地または流体連通する培地における状況を監視する少なくとも一つのさらなるセンサー、例えば、溶存酸素および/またはpHセンサーが提供される。
好ましくは、前記システムのセンサーからの温度、pH、溶残酸素などのデータ、または前記細胞の実体が露出する前記培地における状態に関連する上述のその他のセンサーからデータを記録するデータロギング手段と、前記システムの正常機能およびそれが置かれている環境状態を測定する内部および外部温度センサーなどの、システムの他の部分にあるセンサーと、運動または有害事象を検出するために提供されてもよい加速度計および姿勢検出装置と、携帯電話インターフェースまたは無線データインターフェースなどの前記電気機器と遠隔システムとの間の通信を可能にする通信手段と、GPS位置検出手段のうちの一つ以上が提供され、上記手段は、前記電気機器および前記デバイスの動作を監視または制御する働きをし、その位置を記録し、状況および位置情報を遠隔ステーションに伝えることができる。
上述の好適な機能は、前記デバイスの一部として、あるいは前記装置または電気機器の一部として提供されてもよい。
さらなる実施形態において、本発明の前記輸送システムは、前記装置または前記デバイスの内部の温度を安定させるための手段をさらに備え、
冷却体などのヒートシンクのための収容領域を備える熱的絶縁外側ハウジングと、
安定する温度未満の温度で維持されるヒートシンクと、
前記ヒートシンクと前記デバイスとの間の熱的絶縁領域と、
前記デバイスまたはその周囲領域の温度を感知し、熱を前記デバイスに供給する手段と、センサー入力に応じて、前記デバイスの温度を制御するための制御手段と、
を備える。
好適な実施形態において、前記ヒートシンクは、前記装置に導入される前に冷却されてもよい材料またはアセンブリを含む冷却体を備える。
別の実施形態において、前記ヒートシンクは、前記外側絶縁ハウジングの外側に熱を分散する働きをする熱交換器を備える。
好適な実施形態において、前記デバイスおよび熱供給手段は、前記冷却体が配置される外側の閉鎖される熱的絶縁内側領域内に配置される。
好適な実施形態において、前記冷却体は、前記内側絶縁領域の周囲に実質的に分配される。
好適な実施形態において、前記冷却体は、前記デバイスが保持される所望の温度未満で潜熱を吸収または放出するように構成される、ゲルなどの相変化または共晶物質を含む。
前記デバイスヒーターおよび制御手段は、前記冷却体の温度を上回る設定温度に前記デバイスを維持するために必要な加熱の量を調節する。前記ヒーターの前記電気入力は、前記絶縁から前記冷却体への熱損失の割合との関連で前記制御手段によって制御される。
代替実施形態において、前記冷却体は、冷凍庫または冷蔵庫で事前に冷却されるのに適したその他のいかなる材料であってもよく、搬送前に前記装置に装着可能である。そのような材料は、液体または固体であってもよく、好ましくは、即時に対応および前記装置に容易に装着するように設計される副構成要素の中に含まれる。
好適な実施形態において、システムは、前記冷却体が前記デバイスに装着される前と後に、前記デバイスが配置される領域の温度を監視するための手段を付加的に備え、前記デバイスに制御温度プロファイルが発生するようにする。
好適な実施形態において、前記装置は、前記冷却体の温度を感知し、前記制御手段によって読み込まれる一つ以上の温度センサーを備える。このセンサーからの出力は、前記輸送モジュールの状況を監視するため、ならびに前記熱供給手段を制御するために使用されてもよい。
好適な実施形態において、前記制御手段は、前記輸送モジュール、前記外側絶縁ハウジングの外部の環境、前記外側絶縁ハウジングの内側の領域、前記内側絶縁ハウジングの内側の領域、前記デバイス、前記デバイス内の前記培地、前記装置内に提供される培地のためのいかなる貯蔵容器、および前記装置内の培地の温度、のうちの一つ以上の温度を感知する働きをし、
センサー入力に応じて加熱および/または冷却手段を制御して、事前にプログラムされるまたは後に伝達される指示に従って、温度または温度プロファイルを制御する働きをし、輸送中に前記輸送モジュールの状態を記録し、任意で伝達する働きをする、
プログラムを備える。
前記細胞の実体のための前記ウェルはいかなる形状であることも可能であるが、前記細胞の実体を保持するための指定領域を形成する場合に限る。
本発明は、ほんの一例として、以下の付随の概略図を参照して説明される。
図1は、ベース12および蓋14を備えるデバイス10を示し、1つ以上のクリップ、クランプ手段、またはその他の保持デバイス16を共に有する。ベース12は、図1の24で示されるように、該当する対象物を収めるような大きさである培地30が浸された一つ以上のウェル20が形成される表面18を有する。蓋14は、蓋がベース上に組み合わせられてウェル20の含有物を保持する際に、表面18に対して密封する表面22を有する。ウェル20は、対象物を収めるためにいかなる適切な形状であってもよく、図1では直線上の側面および平らな底面を有するが、テーパ状または階段状であってもよく、円形の底面を有してもよく、いかなる断面形状であってもよい。デバイス10は、外部環境とガス交換可能なように構成される。一実施形態において、デバイスの全部または一部は、PDMSなどのガス透過性であるが液体不透過性である材料から作製される。PDMSは、ガスの溶解性が高く、水性液体の溶解性が低いため、ウェルの細胞内含有物の代謝のために適切な厚さの材料を横切って、継続して酸素および二酸化炭素が十分に輸送可能である。代替の実施形態において、蓋またはベースは、ガスの輸送を支持するが細孔に水性液体を通さない疎水性の有孔性材料から作製される。このような材料は、いくつかの形状で存在するが、特に適切であると考えられるものは、有孔性焼結ポリエチレンまたはポリプロピレンであり、例えば、商標が「VYON」あり、英国レクサムにあるPorvair社製の材料が挙げられる。この材料は、構造的に頑丈であり、高いガス輸送係数を有する。
ゆえに、一実施形態において、蓋14は、疎水性の有孔性材料から全体が形成され、これにより、ベース12に対して十分密閉されるような強度を有することになり、液体含有物を損失しないようにウェル20を密閉するようにしながらも、ウェルの内部には蓋を介してガス拡散が可能になる。代替実施形態において、例えば、図2に示されるように、蓋は、剛体の非有孔性の主要構成要素28に保持されるガス透過性であるが液体不透過性である材料から形成される副構成要素26を備えてもよい。
任意で、ベースおよび蓋は、例えば、蓋およびベースの領域の間で密に嵌合または接着することによって、デバイスを保持せずに結合される。
デバイス10本体は、いかなる数のウェル20も収めるように適切であるいかなるサイズであってもよい。デバイスは、マイクロプレートハンドラーまたは顕微鏡用スライドホルダーなどの標準のバイオテクノロジー機器と相互に作用するように標準サイズに有利に形成される。
ウェル20は、図2のように対象物ごとに大量の培地を含有するような大きさであってもよく、または図1のように少量であってもよい。一つ以上の対象物がウェルに収容されてもよい。図2のようなウェル20のテーパ状の外形は、対象物をピペットでウェルの底面の中央に配置してより容易に見えるようにした後に、堆積してウェルに配置するためのいくつかの実施形態において有利であり、特に、ウェルが大きく、可視化が自動的または半自動的に行われる場合に有利である。ベース12は、透明材料から形成されることが好ましく、ウェルの底面から倒立顕微鏡による可視化を可能にするようにする。蓋の材料は、透明または半透明であってもよく、上部からの照明を可能にする。好適な実施形態において、蓋は、半透明である有孔性焼結ポリエチレンから形成され、ベースは、透明のポリスチレン、アクリル、または別のポリマーから形成される。ウェルの底面を下回るベース12の厚さは、観察に使用される光学に適合するように選択されることができる。
好適な実施形態において、ウェル20は、該当する対象物を収めるようなサイズであり、従来技術の同様の装置と比べると含まれる培地は少量である。一般的に、ウェルは、1E−6μlから100μlの間の体積を有し、一般的な最小寸法は、10μmから5mmの範囲内である。さらに好ましくは、胚、卵母細胞、および卵丘・卵母細胞複合体などの対象物については、一般的な寸法は、50から500μmの範囲内であり、ウェルは、1E−3μlから100μlの範囲内の体積を有し、最小寸法は、100μmから5mmの範囲内である。共通の培地スペースにおける多数のその他の細胞の培養について、これらの寸法も適切であるが、少数の細胞の培養については、寸法がより小さいことが好ましく、ウェルの容積は、1E−6μlから1μlの範囲内で、最小寸法は、10μmから1mmの範囲内である。
好適な実施形態において、ベース12は薄く、倒立顕微鏡上に置かれる際に優れた光学的特性を可能にし、ウェルの含有物とベースの下の表面との間に優れた熱接触を提供するため、デバイスが伝熱面または冷却面に置かれる際に含有物の温度を厳密に制御することができる。
使用の際、ウェル20は培地30で満たされ、対象物24は、手動またはロボットによるピペット操作器具を使用してその中に沈着される。多数のウェル20が、標準の形式で形成され、SBS規格のマイクロウェルプレートなどの標準のグリッドで配列されることにより、ロボットによるピペット操作器具と容易に接続するようにしてもよい。ベースおよび蓋は、ウェルに泡を閉じ込めないで蓋をベースに容易に適用できるように構成される。これは、蓋およびベースの表面の少なくとも一部分を親水性にすることにより、顕微鏡用スライドおよびカバースリップを使用する標準的な技術において実行可能であるので、密閉する前に、培地によって表面が湿水し、滑り運動によって余分な培地が蓋およびベースに移動するようになる。図3aに示される好適な実施形態において、ベース12の表面18は、その表面の少なくとも一部分が疎水性であるように作製され、図3aの位置32のようなレベルまでウェルが満たされる際に、表面よりも盛り上がるウェル内の培地のメニスカス34を可能にする。次に、蓋が所定の位置に配置されると、泡がウェル内に閉じ込められないような方法で、メニスカスを交差し、表面張力を壊すようにして、蓋14が適用される。表面18は、全体的に疎水性でもよく、あるいは図3aの36で示されるように、部分的またはパターン化して疎水性であってもよい。次に、メニスカスは、示されるように疎水性および親水性の領域の間の接合部分で表面18を交差してもよい。
クリップ手段16は、図1、2、3b、および3cにおいて単純なバネクリップで示され、実際には、そのような単純なクリップは、デバイスと共に使用されてもよく、そのクリップは、蓋が所定の位置に置かれた後に手動で適用される。具体的には、デバイスが、自動液体および/またはマイクロプレート処理装置と共に使用される場合に、当技術分野において既知であるプレスクランプまたは電磁クランプなどの、その他の形状のクリップまたはクランプを使用してもよい。
図3bは、平面図を示し、図3cは、図1〜3aにおける断面図と同様である、さらなる実施形態の平面図におけるC−Cにおける断面図を示し、ガス環境とウェル内の培地との間における交換が、ウェルに近接してベースに形成される一つ以上のガス供給チャネル70によって容易になり、ベースの材料を介して即座にガス分子が拡散するようになる。本実施形態は、ウェルおよびガス供給チャネルがPDMSで形成される場合に特に有利である。好適な実施形態において、ベース12は、基板11および本体構成要素13を備え、好ましくはPDMSまたはガス透過性の高い別のポリマーで形成される。基板は、本体構成要素の全体または一部から拡張してもよく、構造的な構成要素を形成せずにベースの副構成要素であってもよい。例えば、当技術分野で既知であるように、基板は、ガラスまたはポリカーボネートであり、PDMS層がそれにプラズマ結合される。ガス交換チャネルは、ガス供給のために、周囲のガス雰囲気に単純に開放されてもよく、あるいは一つ以上の流体コネクタ71によって接合されてもよい。図3bおよび3cに示されるように多くの個別のチャネルが使用されてもよく、あるいは、蛇行状であるいくつかの実施形態において、より少ない数のチャネルでより多くの数のウェルの近隣を通るようにしてもよい。チャネルは、基板11の厚さを介して形成されて、その主要表面で開放するようにしてもよく、あるいは、本体構成要素13を介して拡張して、その主要表面で開放するようにしてもよい。
図4は、本発明のさらなる好適な実施形態を示し、ウェル20は、ベースの表面18と蓋の表面22との間で形作られる共通の流体スペース40と流体連通している。蓋は、スペース40の周囲にある任意の密封手段44を使用して、ベースに密封されてもよい。隣接するウェルの間に存在する表面18と22との間の領域42は、ウェルの間の拡散経路であり、隣接するウェルの中の対象物がウェルから出て接触できないように構成されるが、スペース40の流体を介して化学的に連結するように構成される。領域42は、単純に、対象物を閉じ込めるのに十分狭いスペース40の一部であってもよい。別の好適な実施形態において、領域42は、拡散輸送を可能にする透水性材料により全体的にまたは部分的に占められており、例えば、培地により浸水するが、対象物が通過するには狭すぎる細孔を有する親水性の有孔性材料が挙げられる。そのような材料は、デバイスが移動または衝撃を受ける場合、または温度勾配を被る場合に、培地の物質的な流れを制限するようにも有利に機能し、対象物を輸送するためのデバイスにおいて有利である。適切な材料として、親水性になるように処理された有孔性焼結ポリエチレンが考えられる。例として、上記のようなPorvair社のVYON TMが挙げられる。多孔性ではないが透水性であるその他の材料も適用可能であり、例えば、対象とする形態でウェルの間の蓋の表面上またはベースの表面18に、当技術分野で既知の手段で形成可能なヒドロゲルポリマーが挙げられる。代替実施形態において、ウェル本体は、ヒドロゲルなどの透水性のポリマーで形成される。
図4のデバイスは、ウェル内の対象物およびウェル間の拡散の連結性の対象とする度合いに適合するような大きさであることができる。ウェルの間のスペース、スペース40および領域42の深さ、および領域42にある拡散特性(該当する場合)は全て、ウェルの間の拡散連結性を制御し、対象とする目的に適合するように選択されることができる。デバイスが、胚ではなく細胞に使用される場合、拡散制限物質を領域42に使用することによって、最小寸法が細胞より小さいスペース42の高さの制限を緩和するため、特に有利である。
さらなる実施形態において、領域42の材料は、活性であるように、つまり経時的および/またはその環境に応じて変化するように選択される。例えば、材料は、拡散特性が水和によって変化し、水和の度合いが増えると拡散係数が増加する、ゆっくりと水和するヒドロゲルポリマーのグループから選択される。本実施形態において、ウェルは、まず個別に隔離され、経時的に徐々に拡散的に連結される。これは、輸送中に隔離された対象物の培養から共有の培養に変更する状況に変更したい場合に潜在的に有利であり、具体的には、培地の組成が、変更されることによって、輸送中に培養を進行する場合に有利である。同様に、架橋性の低いゲル組成などのゆっくりと溶解する材料を領域に使用すると、経時的に拡散通路を開放する。領域42を部分的にのみ満たすが、経時的に徐々に膨れるヒドロゲル層を提供すると、所望の拡散連結を着実に制限する。
図5aは、デバイスおよびウェルの含有物の温度を監視および/または制御するための手段が提供される、さらなる好適な実施形態を示す。デバイスは、実質的には図4に示される実施形態であるが以下の機能を備え、例えば、その機能は、その他の図面に示されるような本発明のデバイスにも備えられてもよい。デバイスは、電気機器50の配置場所に配置されて示され、デバイスを加熱および/または冷却する働きをする熱交換手段52と接触している。保持デバイス16は、図示されるが、デバイスと熱交換手段との間の熱的接触を良好に維持するのに適したいかなる形状であることも可能である。デバイスには、ウェル20内の培地または共通スペース40と接触、あるいはそれに近接する一つ以上のセンサーが提供され、培地の状態を感知することができる。図5aにおいて、薄膜熱電温度計または抵抗温度計の形状である二つの温度センサー54、56が、蓋14の表面22上に形成されるように示される。これらは、二つ以上の接触トラック58、60によって、スプリングピン62、64の形状で示される外部の接触手段に連結され、デバイスと電気機器50との間を電気的に接続する。薄膜の金属製温度センサーの場合、導電要素を培地から絶縁することが重要であるため、薄い絶縁コーティング66が少なくとも培地に露出する導電領域に提供される。デバイス上の一つ以上の温度センサーにより、熱交換手段と連動して制御手段(図示せず)を使用し、培地の温度を厳密にフィードバック制御することができる。
代替実施形態において、温度センサーは、ベース12に装着または連結して提供される。センサーは、ウェルの底面またはスペース40の近くのベースの表面18上またはベースの材料内に配置されてもよい。
さらに、一つ以上の温度センサー68は、デバイスのベースまたは蓋の上に装着可能で、その外部温度を監視する。デバイスが、閉鎖および隔離された環境において使用される場合、効果的に等温になるように設計することが可能であり、外部デバイス温度は、培地の温度に対して十分近似である。
図5aにおいて、熱交換手段52は、電気ヒーター、ペルチェ素子、中を流動する流体によって加熱または冷却される金属ブロックであってもよい。デバイスのベース12上の温度さえも維持するように使用される能動的手段であってもよく、デバイスと手段52の両方が、気流などの熱源によって加熱される。ペルチェ素子が使用される場合、手段52は、当技術分野において既知であるヒートパイプまたは外部ラジエータなどの熱伝導またはヒートシンク手段を付加的に備え、外部環境から出入りして熱を伝えてもよい。
さらに、代替として、一つ以上の液体流路が、ベースおよび/または蓋の材料により全体的にまたは部分的に形作られて提供され、その中を流体がデバイスの温度を維持するために流れる。例えば、液体流路は、図5aの70における断面図で示されるようにベースの材料内で形作られてもよい。このような流路は、ウェルと近接近させるようにデバイスのベースの中を通って蛇行状であってもよく、あるいは、ウェルのグループの周囲に沿って流れてもよい。流体は、デバイスから離れたヒーターにより一定の温度に維持されるか、電気機器50に制御されることが好ましい。
図5bは、図5aに示される実施形態の平面図を示し、蓋が所定の位置に置かれた時にデバイスの内部がわかるように蓋が透明材料から成ることを前提としている。明確にするために、クランプ16は図示されていない。図5aは、図5bのA−Aに対応する断面図である。5x4列の20のウェルが図示される。ウェルのいかなる数または形状も本発明の範囲内であることが理解されるだろう。温度センサー56は、上述からわかるように、接触手段62と接触している接触トラック58とともに蓋の材料を介して可視的に図示される。特定の実施形態におけるさらなる機能は、図5bの点線で示されるような液流チャネル70であり、その中に加熱または冷却液が通過してもよい。好ましくは、このようなチャネル70は、下方からの十分な可視性を保持するためにウェルの底面の下を直接通過しない。このようなチャネルが有するパターンは、均一な温度分布を提供する熱流の必要性によって決定される。ゆえに、配列は、ウェルを交差するのではなくウェルの軸の間を選択的に、ウェル領域に近接またはウェル領域を介する蛇行状であるのが望ましい。
図6aおよび6bは、電気機器からデバイスに電気的接続が形成される、デバイスのさらなる実施形態を示す。図6bは、実施形態の平面図であり、図6aは、図6bのD−Dにおける断面図である。上述のように、スプリング接触62、64を使用することで、デバイスのベースに形成または装着しウェルに隣接して配置される抵抗温度計58の形状である温度センサーに接触される。センサー58は、図6bの平面図に示されるようにウェルの一側面に配置されるのが好ましく、図6aの描写においては、ウェルおよびベースの構成要素に対して一般的に垂直にセンサーが配置されることが示され、二つ以上の副構成要素層13および15であって、そのうちの片方に接触のための金属トラック、センサー、またはその他の構成要素が形成または装着可能である副構成要素層13および15から形成されるベース12の実際的に有用な構造を図示する。図6bにおいて、ウェルに近接して通り、好ましくはデバイス領域上のエネルギー密度に近くなるように配列される、ヒータートラック84が示される。さらなる標準的な接触手段86を使用してヒータートラックに接触することができる。ヒータートラックの配列および一つ以上のセンサーは、デバイス上のウェルのレイアウトに適合するように変更可能であることが正しく理解されるだろう。
図7は、本発明のシステムの実施形態を示し、ベース12および蓋14から形成されるデバイス10と、制御された状態下でデバイスの輸送を可能にするように構成され、デバイスが中または上に配置される電気機器50とを備える。電気機器は、熱交換手段52、一つ以上の電気接触手段62、デバイスおよび/または電気機器と連結されるセンサーから信号を受信し、デバイスおよび/または電気機器の動作を制御する働きをする制御手段72、および電源74を備える。好適な実施形態において、電気機器は、デバイスと流体連通しているまたは流体連通させることが可能で、ガスの貯蔵容器としての役割を果たすガス貯蔵容器を備え、電気機器およびデバイスが外部のガス源から遠隔にあっても培地における溶解ガスと交換することができる。ガス貯蔵容器は大気圧で動作してもよく、または超過気圧で動作してもよい。図7において、電気機器は、ガススペース78の形状のガス貯蔵容器を備える蓋76を有する。蓋は、デバイスの周囲にガス密シールを形成することが可能で、蓋は、一つ以上のポート80、82を有することにより、ガスでスペースを洗浄可能にし(一般的に5%の二酸化炭素/大気)、蓋が閉められた時にスペース内のガスを隔離可能にすることができる。
上記の実施形態は、制御された量の培地における固定位置に、対象物を一つずつまたはまとめて保持する働きをし、任意で対象物間において拡散される。さらなる特定の好適な実施形態において、デバイスは、対象物を浸す培地の組成を、時間の関数または外部刺激に応じて変更するように構成される。
図8aから8dは、本発明の実施形態を示し、デバイス内またはデバイスと流体連通して、例えば、デバイス上の一つ以上のウェル内において、個々の除放構造の動作によってウェル内の培地の組成が変化する。図8aから8dにおける全ての実施形態において、デバイスの他の部分(図示せず)およびシステムにおいてデバイスとともに使用可能な電気機器は、本明細書に記載のいかなる実施形態にも一致する。
図8aは、対象物24が存在するウェルにおいて制御放出構造100を備える第一の実施形態を示す。構造100は、徐々に溶解するコーティング物質104(例えば、砂糖)に囲まれる、培地に添加される物質102から成る内核を備える。このような多層組成は薬物送達の技術においてよく知られており、多くの適切な物質および運搬媒体が入手可能である。物質102は、培養プロセスにおいてそれ自体が活性でもよく、培地における物質の有効性と結び付くように働くか、それを除去する働きをしてもよく、あるいはその両方であってもよい。言うまでもなく、培地添加後すぐに放出が開始されるべき場合には、コーティング物質104は省略可能である。図8bは、ウェルの第一の部分に対象物を配置し、ウェルの第二の部分に構造100を配置する働きをするテーパ状または階段状の断面を有するウェルを示す。図8bにおいて、対象物は、ウェル108の狭い下部に配置され、一方、構造100は、広い上部106に保持される。図8cは、その代わりに、さらなる実施形態のウェルを示し、構造100がウェルの特定部分に配置されるように設計される形に形成され、ウェルおよび対象物に対して放出プロセスを限定した形状を提供する。図8cにおいて、構造はディスク状であり、ウェルの上部で保持されるが、対象物の沈殿物は底部に保持される。このような構造は、可溶性の層またはクロージャにより不溶性の本体部分から形成されてもよく、経時的に破壊されて含有物を放出する。図8dは、さらなる実施形態を示し、上層において放出制御物質104に被覆される物質102がウェルの底部に堆積される。本実施形態において、ウェル30は、培地を満たす前に物質102およびコーティング物質104の組成および厚さによる放出のタイミングをプログラミングする準備を整える。
その他の設計の放出構造は、当技術分野に精通する者には明白であり、本発明のデバイスおよび方法で使用されてもよい。具体的には、放出される物質は、例えば、徐々に拡散して液体と接触して透水性になるヒロドゲルなどのバリア物質により全体的または部分的に被覆されることができる。
図9aおよび9bは、デバイス10の一部として形成される事前に準備された構造によって制御放出が達成される、二つのさらなる実施形態を示す。図9aにおいて、デバイスは、ウェル50内の培地に添加される物質102を含む貯蔵容器110本体を備える。貯蔵容器は、流体経路114を介して、ウェルと流体連通し、その流体経路114は、ベース12と蓋14との間の接触面を通過するように形作られてもよく、あるいはベース本体の中を通って形成されてもよい。貯蔵容器は、ベースの表面18で開放されるウェルの形状であることが有利であり、その中には、蓋をはめる前に培地がピペットで入れられてもよい。貯蔵容器の中における物質102は単独であってもよく、あるいは貯蔵容器において物質102が培地112へ拡散するのを遅らせる放出制御物質104に被覆または混合されてもよい。物質102が溶解されると、流体経路114を介してウェル30に自由に拡散される。物質102をウェル30内の培地に添加する添加プロセスは、物質104、貯蔵容器の寸法、および流体経路によって調節される。一般的に拡散は徐々に進行するが、一般的にそれは培養培地を変更するには必要なことであり、実際には本発明の本実施形態の有利な機能となっている。流体経路114は、貯蔵容器およびウェルに連結する経路であってもよく、あるいは親水性の有孔性材料、ヒドロゲル、または上記図4の実施形態で説明されたものと同様のものなどの、拡散および/または対流を制御する物質に全体的または部分的に満たされてもよく、また、その特性が経時的に変化して拡散を増大または減少させるという点において活性であってもよい。例えば、制御物質104は、スペース114に存在してもよい。図9bは、さらなる実施形態を示し、貯蔵容器がウェルに隣接して、中に含まれる物質102が徐々に拡散する多孔性または透水性の要素116によってウェルに連結される。添加の時間スケールは、ここでは物質116によって制御され、配列の形状によって、より均一に物質をウェル50に導入することができる。
図10は、対象物の培養および輸送に適合している本発明のさらなる実施形態にかかるデバイスを示し、ウェル内の培地は変化可能であるが、対象物は流れ、物的移動、および衝撃に逆らってウェル内に保持される。図10において、単一のウェルおよび連結する流体チャネルが示されるが、その他の好適な実施形態において、多数のウェル、図10に示されるチャネルおよびその他の機能から形成される流体経路の各部が同一のデバイスに含まれ、任意で一つ以上の共通の流体チャネルから流体が供給されることが正しく理解されるだろう。
デバイス200は、ベース202および蓋208を備え、ベースは任意で基板204から形成され、第一の本体部分205および第二の本体部分206は、永久的に連結される。ベースは、対象物24を含有するように事前に構成されるウェル20を備える。蓋208は、ウェルにアクセスするように取り外し可能であり、蓋が所定の位置にある場合は、流入ポート210、流入チャネル212、ウェル20、流出チャネル214、流出ポート216を備えるデバイスを通る流体経路を密封する。流入および流出ポートは、接続手段218を介してデバイスの外部につながるように図10に示される。あるいは、デバイスの一部として形成される一つ以上のさらなる流体チャネルと流体連通してもよいが、好適な実施形態においては、図10に示されるものと類似したその他の流れシステムに通じる。また、デバイスは、図10に示されるような各流れシステムの流入および流出ポートから流体を供給またはそこに流体を受け取るための一つ以上の流体貯蔵容器を備えてもよい。流体経路は可逆的であり、ここで言及される流入口は、流出口およびその反対としても使用してよい。対象物24は、ウェルの底面に近接した流入チャネルに形成される、ウェルから対象物が離れないようにする働きをする第一のくびれ領域220と、ウェルの出口の経路に形成される第二のくびれ領域によってウェル内に保持され、図10に示されるように、第一および第二の本体部分205、206の間に形作られるが、その他の実施形態においては、ベースの表面と蓋の表面との間に形成されてもよい。好適な実施形態において、図10に示されるように、ウェル20は、テーパ状または階段状の外形を有し、小さい断面寸法の内部領域224および大きい断面寸法の外部領域226を備える。蓋およびベース本体構成要素206のうちの一つが、順応性材料から形成されることにより、蓋とベースに設けられた大きい凹部228が密に取付けられ、外部の固定具を使用する必要なく蓋を所定の位置に保持できる。ウェルに取付けられた蓋の部分は、ウェルを閉鎖する働きをする。
図10のデバイス200は、成形または機械加工により形成された本体部分205、206上に基板204を接合することによって形成されてもよく、成形により形作られるウェルおよび流体経路の機能を備える。例えば、本体部分はPDMSから成形され、基板はガラスまたはポリマーから成形されてもよく、本体部分は、当技術分野で既知であるプラズマ活性接合により基板に接合される。本体部分は、例えばPDMSから形成されて、接合されてもよい。好適な実施形態において、第一および第二のくびれのうちの片方または両方は、本体部分206に挿入される別々に成形される構成要素によって全体的または部分的に形作られる。くびれのうちの片方または両方は、挿入部230内において形作られてもよく、一つまたは両方は、挿入部と基板204、第一の本体部分205、または第二の本体部分206との間のスペースによって形作られてもよい。本実施形態において、205で示される第一の本体部分は、図10において斜交平行で示される挿入部230に減少し、第一の本体部分204の残りの部分は、第二の本体部分206に組み込まれる。くびれのうちの片方または両方は、挿入部230内において形作られてもよく、一つまたは両方は、挿入部と基板204、第一の本体部分205、または第二の本体部分206との間のスペースによって形作られてもよい。代替実施形態において、基板、第一および第二の本体部分が、アクリルまたはポリカーボネートなどの剛体材料から成形され、積層され、圧力接合され、または接着接合される。第二の本体部分206が順応性材料から成る実施形態において、蓋は、アクリルなどの硬質ポリマーから成形されてもよい。第二の本体部分が剛体である実施形態において、蓋は、例えば、PDMSなどの順応性ポリマーから成形されてもよい。
この形状の構造は、結果として形成されるデバイスが光学的に透明で、倒立顕微鏡を使用して良質の平面基板を介して観察できるという有利性を有する。
図11は、図10の実施形態の平面図を示し、基板204の高さにおける平面を示す。任意のセンサー240が示され、基板204上に形成または装着され、トラック242、244によって接触端子248に接続される。センサーは、任意で温度センサーであり、二つの接触金属から伝熱温度計として、あるいは一つの金属から抵抗温度計として形成されてもよく、両方の場合において、薄い上層246(図10参照)によって流体チャネルにおける培地から電気的に絶縁される。センサーは、流出チャネル214において示されるが、流体チャネル、ウェルの近く、またはそこから離れたデバイス内の他の場所に同様に配置されてもよい。2つ以上のセンサーが提供されてもよい。センサーは、例えば、残存酸素またはpHについてのセンサーなど、温度センサー以外のものでもよく、その場合、上層246は、金属電極242、244に感知される種のアクセスを制御するように、あるいは所望の特性を感知する電気活性膜としての働きをするように活性であってもよい。上層246は、抵抗がpHに応じて変化するポリマーであってもよく、あるいは電位がpHまたはその他のイオン濃度に応じて変更する電気活性膜であってもよい。この場合、多層構造は、当技術分野において既知であるように、電極上のセンサー領域において形成されてもよい。
好適な実施形態において、多数のウェルおよび連結する流れシステムが、デバイスの一部として存在し、その場合、図11は、デバイスの部分的な平面図を示す。トラック242、244および接触248が、デバイスのいかなる位置にも形成されることができる。
図12は、本発明のさらなる実施形態にかかるデバイスを示し、本発明の電気機器の構成要素の概略図を示す。本実施形態において、デバイス300は、流体スペース42と流体連通する一つ以上のウェル20を備え、このスペースは、流入ポート302からデバイスを通り、スペース42を通って流出ポート304へ続く流体経路の一部を形成する。流体経路は、それに沿って流動する流体をウェル20内の培地と接触させて、ウェル内の物質がスペース42の流動液体の物質と交換可能にする。これにより、流入ポートに流入された流体に応じて、ウェル内の培地を更新することができ、組成を変更することができる。デバイスは、一つ以上の温度センサー330を備えることが好ましく、その温度センサーは、スペース42およびウェル20における培地と熱的接触するように配置され、上述のようにトラックおよび接触手段を介して接続される。デバイスは、ヒーターブロックとしてこの図において示される、温度センサー316およびヒーター318を備える熱交換手段52と接触して、配置場所または電気機器50に配置される。流体接続は、二つ以上のコネクタ324によってデバイスに形成され、この図において、デバイスのコネクタ手段326に押し込まれて構成されるように示されるが、従来のLuerまたはネジによるHPLCおよび「フライングリード」チューブをはじめとするいかなる適切な形状もとってよい。
電気機器50は、デバイスと連動して動作するための流体供給および流れ手段を備え、一つ以上の液体貯蔵容器306、ポンプ手段308、排水貯蔵容器310を含み、その貯蔵容器は、圧力を均等にするために通気孔312、314を備える。二つ以上の貯蔵容器306が提供されてもよく、その各々が異なる培地を有し、別の含有物が経路を介して流動開始する前に、その含有物が流体経路を介して実質的に完全に流動するようにするように流体経路に順番に接続され、あるいは、どの貯蔵容器が流体経路に接続されるかを選択するバルブ手段を備える。次に、ポンプは、事前に設定されたプログラムに応じて、あるいはデバイスまたは電気機器で検出された状態に応じて、流体経路を介して培地を流動させ、培地をウェル20と交換する。電気機器は、内部の温度センサーおよびヒーターを使用することで熱的に安定され、具体的には、液体貯蔵容器306は、絶縁および熱的に安定されて、流体における温度状態を制御するようにすることが好ましく、例えば、温度センサー320およびヒーターブロック322を備える。制御手段340は、センサーからの出力を検出し、ウェルにおけるヒーターを制御して事前に設定された温度または温度分布維持し、事前に設定されたプログラムに応じて培地の流れを制御する。
図13は、本発明のシステムの概略図を示し、デバイスを介して流体を提供する上述の実施形態のうちのいずれにもおけるデバイス、およびデバイスと共に使用する電気機器を備える。電気機器は、デバイスおよび流れシステムの全体またはその他の部分を含む絶縁エンクロージャ402を備える。絶縁エンクロージャには、デバイスおよび流れシステムの全体またはその他の部分が含まれる。絶縁エンクロージャは、デバイス400を挿入するように開放可能であり、二つ以上の絶縁区画を備えてもよく、その絶縁区画の温度は、熱交換手段322によってまとめてまたは別々に制御される。デバイス400は、上述のように、ヒーター318および温度センサー316が備えられる熱交換ブロック52に装着されるが、熱交換ブロックは、冷却可能であってもよく、また、ヒートシンク、あるいはシステムの一部として統合される冷却ユニットに冷却水を循環させるチャネル(図示せず)を備えるブロックに連接される、ペルチェ素子を備えることが可能であってもよい。流れシステムは、培地404、406のための一つ以上の貯蔵容器、ポンプ308、デバイスのポートに流体接続した流入フローライン408および流出フローライン410、ならびに排水貯蔵容器412を備える。ポンプは、デバイスの流入側にあってもよく、あるいは、414の点線で示されるように流出側にあってもよい。
本発明のシステムのための流れシステムに関する好適な実施形態は、図13に示される。一般的な状況において、培養の過程において第一の培地を第二の培地に変更する必要がある。図13における流れシステムは、バルブが培地を選択する必要無しで、一つだけのポンプでこれを実行可能にする。貯蔵容器404は、ポート420およびバルブ422を介して第一の培地に満たされており、貯蔵容器406は、ポート424およびバルブ426を介して第二の培地に満たされている。貯蔵容器406は通気孔430を介して通気され、排水貯蔵容器412は、通気孔432を介して通気される。流体チャネル428は、貯蔵容器406への出口に任意でキャピラリー停止を有するように構成され、貯蔵容器404を満たす間に培地1で満たされる。キャピラリー停止手段は、流れ圧力の無い状態で、培地1が貯蔵容器406に入らないことを意味する。いくつかの実施形態において、バルブがチャネル428を閉鎖するように提供されてもよい。その場合、ポンプ308は、貯蔵容器から培地を引き出し、デバイスを介して流動させる。デバブラー434は、システムから泡を回収するために任意で提供される。いくつかの実施形態において、バルブは、チャネル428を閉鎖するように提供されてもよい。次に、ポンプ308は、貯蔵容器から培地を引き、デバイスを介して流動される。デバブラー434は、システムから泡を回収するために任意で提供される。あるいは、バルブ配置は、流入フローライン408に提供され、システムに流体を引き込み、培地の流れが開始する前に泡を取り除いてもよい。貯蔵容器404が空になると、貯蔵容器406の含有物がそこに入り、順番にポンプを介して引かれてデバイスに流入する。貯蔵容器は、流動中の混合を制御するように高アスペクト比から作製されることが望ましい。
絶縁ハウジング402は、貯蔵容器、デバイス、またはその両方における培地とのガス交換のためにガス雰囲気を含むように気密であってもよい。したがって、貯蔵容器は、このプロセスを支援するために通気孔を提供されてもよく、その通気孔は、例えば、有孔性の疎水性ポリマーから作製される。あるいは、通気孔は、外部雰囲気に通気してもよい。バルブ422および426は、好適な実施形態において、ポート420、424における手動の密封キャップに置き換えられ、貯蔵容器に空気を閉じ込めないように密封可能であるように配置される。
図13のシステムは、システムのさまざまな部分において温度を監視および制御する、ならびに流れを制御し、デバイスの一部または流れシステムのその他の部分をとして備えられるさまざまなセンサー監視する役割を果たす制御手段340が提供される。
デバイス、電気機器、および流れシステムのその他の構成は、本発明のシステムにおける使用のために構想される。例えば、当技術分野において既知である流れシステムは、多数の貯蔵容器が共通のフローラインに接続されており、それぞれに連接するバルブまたはそれぞれに連接する個々のポンプ手段によって制御されて流動するものであり、それも使用されてもよい。システムのためのポンプ手段には、移動ポンプ、貯蔵容器内のガス圧あるいは機械的作動または外部流体圧力による貯蔵容器の壁の変形による培地の加圧、または当技術分野において既知であるその他の手段を含む。
貯蔵容器、ポンプ手段、およびその他の流れ要素は、デバイス本体に統合されてもよく、あるいはデバイスおよび流れシステムの全部または一部は、輸送モジュールまたは電気機器およびシステムの残りの部分が内部に取付けられる部分組立品に統合されてもよい。
図14は、共通部分は同じ番号が付けられている、図13にかかるシステムの実施形態の概略図である。システム450は、輸送モジュールまたは電気機器(図示せず)内に装着されるデバイス400を備え、その電気機器は、流れシステム、制御手段、および電源(図示せず)の構成要素を収容する絶縁ハウジング(図示せず)を有する。デバイスおよび貯蔵容器は、電気機器の反対側に示されるが、これは単に概略であり、それらは実用的な配置で存在可能であり、システムは、輸送中にいかなる方向でも動作することを目的としているため、図14における配置は、事実上関連している。実用的な実施形態における貯蔵容器は、貯蔵容器を閉鎖する際に液体を通気孔に移動させるストッパー454、456によって閉じられる。いくつかの実施形態において、システムの構成要素は、好ましくは、システム全体の温度を均一に維持するような導熱性である、物質452の固形ブロックにおいて装着または形成される。あるいは、システムは、動作中に、内部が効果的に均一な温度であるように十分に絶縁される。電気機器は、クリップおよびヒンジで閉鎖および任意で密封されるように設計される、一つ以上の蓋462、464によって閉鎖される。好適な実施形態において、システムは、デバイスと流体連通してガス貯蔵容器としての役割を果たすガススペースを備え、任意でバルブが付けられる一つ以上のガス流入口470が、輸送前に、外部ガス供給472からガススペースに流して満たすために提供される。図14において、このスペース468は、蓋462内に存在するように示されるが、その他の場所に位置してもよい。スペースは、加圧されてもよくまたは大気圧でもよい。あるいは、ガス貯蔵容器が、システムの他の部分から閉鎖し、いくつかの実施形態においてデバイス本体に形成される特定のガスラインおよびチャネルを介してガスをデバイスに供給する働きをするように、別々に提供されてもよい。
さらなる実施形態において、デバイスは、マイクロチップベースまたは磁気ベースのメモリシステムなどのメモリを付加的に備え、デバイスに関するデータおよびその内容が記録、読み込み、保存、デバイスとともに輸送可能にする。好適な実施形態において、メモリおよび付随する制御回路は、デバイス上にまたはデバイス内に装着され、必要に応じて電源も装着される。メモリシステムは、デバイスから離れた状態で電気接触、無線、または光通信によりその他のシステムに接続されてもよく、あるいは磁気的に記録および読み込みされてもよい。好適な実施形態において、メモリシステムは、デバイスで使用中の対象物および培地に関する識別、履歴、内容、次の作用、および動作情報に関する情報を含む。
メモリシステムは、電気機器の制御システムと独立してまたは共同でデバイスの機能を制御する働きをするデバイス制御システムを備えてもよく、例えば、デバイスの特定のウェルにおける対象物の状態を表示し、デバイス全体、対象物全部、または単にいくつかのウェルの場合におけるユーザーによる介入を促進または阻止する。
好適な実施形態において、デバイスは、例えば、顕微鏡によるデバイス上の対象物の観測に関連するさらなる制御手段と連動して動作可能であり、顕微鏡制御手段は、デバイスのウェル内の対象物の詳細、培地の状態、実験観察、および次の作用の指示を、デバイスおよび電気機器を備えるシステム、さらなる実験者、またはその両方によって、デバイスにおいてメモリから読み込みまたはメモリへ書き出しすることができる。好適な実施形態において、デバイスのメモリシステムは、デバイスおよび/または電気機器の使用および動作を制御するために、実験情報システムと相互作用し、使用の追跡、状況の記録、または記帳またはその他の規則作用への順守を確実にする。
上記の実施形態は、その例は当技術分野において既知である電子システムのデバイス上またはデバイス内に装着されることを必要とし、上記の実施形態のいくつかに開示されたような電気接触の提供を必要とする。あるいは、無線通信は、デバイス、電気機器、または別のデバイスから離れたシステムの間で形成されてもよい。どちらの場合も、デバイス上またはデバイス内のメモリシステムを装着するのに必要な設計は、標準的であり、当技術分野において既知である。
さらなる実施形態において、電気機器は、以下のうちの一つ以上を付加的に備える。
システムのセンサーからの温度、pH、溶残酸素などのデータ、または胚が露出する培地における状態に関連する上述のその他のセンサーからデータを記録するデータロギング手段。
システムの正常機能およびシステムが置かれている環境状態を測定する内部および外部温度センサーなどの、システムの他の部分にあるセンサー。
運動、衝撃、または有害事象を検出するために提供されてもよい加速度計および姿勢検出装置。
携帯電話インターフェースまたは無線データインターフェースなどの電気機器と遠隔システムとの間の通信を可能にする通信手段。
GPS位置検出手段。
上記手段は、電気機器の制御手段と共に、電気機器およびデバイスの動作を監視または制御する働きをし、その位置を記録し、状況および位置情報を遠隔ステーションに伝えることができる。
本発明の輸送システムを配置し、任意でその状態およびその中の対象物の状態に関する情報を受領可能であることは、輸送における損失または遅延の場合に有益である。上記機能によりこれが可能になる。
胚のためのウェルを有するデバイスを備えるシステムは、胚を輸送するために提供され、そのウェルは、蓋によって閉鎖され、上述の輸送モジュールまたは電気機器は、以下の役割を果たす。
胚の温度を制御する。
ウェル内の培地の組成を任意で制御する。
制御されたガス環境を任意で提供する。
デバイスの状況を記録する。
電気機器の他の部分の状況を記録する。
電気機器の外部の状況を任意で記録する。
特定の実施形態において、電気機器は、電気機器およびデバイスの動作を監視または制御、あるいはその位置を記録、ならびにデータを遠隔位置に送信する働きをすることが可能なGPS位置ロガー、携帯電話インターフェース、無線データインターフェースなどの、電気機器と外部装置との間の通信手段を備える。
本発明の目的は、制御温度でペイロードを輸送するための装置および方法を提供することであり、従来技術の装置における欠点が克服される。そのような欠点には、温度調節機能乏しいこと、温度が一定範囲から出る前の耐久性が短いこと、4日以上の要求の耐久性を達成するにはサイズが大きくおよび/または重量が大きいこと、温度を0℃近くに維持し、サンプルがまず装置に取付けられてこれに反作用するように導入された装置の動作に迎合する際にサンプルを凍結しようとする輸送装置の冷却傾向があること、平均大気を越える温度を維持し、温度上昇に長時間耐える温輸送装置機能が欠落していること、が挙げられる。従来技術の装置は全て、上記のうちの少なくとも一つを被る。平均大気温度は、約10〜25℃の範囲の平均温度として以下において定義される。
NagleによるUS6020575は、平均大気温度以上で搬送することを目的とする装置を開示し、内部空間を形作る外側絶縁層を有し、内部空間に近接する電気ヒーターおよび共晶物質(または「相変化物質」、PCM)を備え、共晶物質は、加熱作用を助ける役割をすることを目的としている。
RixによるUS6822198は、内部電気ヒーターおよび冷却パックを入れる絶縁ハウジングを備える輸送装置を開示する。ヒーターに対する冷却パックの位置は、開示されておらず、ヒーターと冷却パックとの間の絶縁はない。この装置は、冷却パックの間の接触を防止する機能は備えていないので、ヒーターによる冷却パックの非制御な加熱を潜在的に被り、使用時に、耐久性が変わりやすくかつ潜在的に短く、また、非制御の温度勾配は、ヒーターと冷却パックとの間のチャンバ内に存在する。
NadeurによるWO03/101861は、ペイロードを取り囲んで接触するPCMを備える本体を含む搬送装置を開示し、融点Tcを有するPCMは、ペイロードの保存温度と実質的に同じである。この装置は、PCMがTcに達すると温度の安定を維持するが、PCMを凍結させるためには、何らかの方法でTc以下に冷却する必要がある。PCMをTcまで暖めるためには、調節、つまり暖める必要があるが、それには時間がかかりエラーを出しやすく、PCMの多くが有する融解の範囲を広げると、PCMの冷却能力の相当部分を無駄にすることになる。特にOCに近接して動作する装置については、水性のペイロードが凍結する危険性があり、それは生体サンプルのために回避すべきである。
従来の技術において、大容量の冷却剤と、冷却剤を凍結するために−15℃から−20℃の従来のフリーザーを使用する性能とを組み合わせる輸送装置は知られておらず、その設計は、ペイロードが0℃以下に冷却されることを防ぐ一方、内部温度を0℃に近い温度にする。
例えば、生きた生体サンプルを温度範囲37〜39℃で輸送するために、平均大気温度を越える温度で動作する温度制御輸送装置が既知である。これらの装置は、通常、絶縁および内部加熱手段、例えば、予熱したPCMまたは電池パックで充電された電気ヒーターなどに依存し、バッテリーまたはPCMの容量および絶縁によって制限される耐久性を有する。生体物質の小規模な輸送に適合された従来技術の装置には、冷凍能力がないが、高い大気温度において過熱する傾向があり、温暖な気候に輸送する過程に直面する可能性が高い。
温度感受性物の過熱保護は、HofらによるUS4425998によって開示され、絶縁外側ハウジングに取り囲まれる温度感受性物よりも少し低い融点Tcである塩の形状で、PCMの層を提供する。Hofらによる配置は、ペイロードからの熱流束(Tcを越える)が保護塩を融解する傾向があるので、加熱されたペイロードの保護には適していない。しかしながら、塩の融点が動作温度を下回われば下回るほど、外側絶縁が良好になるので、断熱がより良くなるが、加熱されたペイロードに融解される塩の傾向は大きくなる。本発明は、内側絶縁層を提供し、絶縁およびPCMパラメーターの有利な組み合わせを選択したことによりHofらの設計とは異なっている。
本発明は、制御温度でペイロードを郵送するための装置を提供し、外側ハウジング、外側絶縁領域、熱吸収材などのヒートシンクを有するヒートシンク領域を備え、いくつかの実施形態においては、装置に導入する前に予冷してもよい冷却体などのヒートシンク要素、内側絶縁領域、および加熱ペイロードを備える。その装置は、ゼロ未満から平均大気温度を大幅に越える範囲におけるいかなる所要の温度でも動作するように構成されることができる。
第一の好適な実施形態において、装置は、37〜41℃の範囲などの平均大気温度を越える温度で、例えば、培養細胞、胚、または卵母細胞などの細胞の実体の培養および輸送ために使用するように構成され、本実施形態において、ヒートシンクは、熱吸収材料の形状であることが好ましく、高い大気温度に長時間さらされることによって生じる加熱から装置を保護する働きをする。
第二の好適な実施形態において、装置は、例えば、組織サンプル、器官、血液、または血液製剤、あるいは温度感受性薬物またはその他の化学薬品の輸送のために、0〜10℃の範囲などの平均大気温度未満で使用するように構成され、この構成において、ヒートシンクは、装置から可逆的に取り外し可能な一つ以上の容器において熱吸収材料の形状であることが有利であり、装置に導入される前に冷却されてもよい。
上記実施形態のいずれかにおいて、熱吸収材料は、ペイロードの所望の制御温度よりも低い転移温度を有する相変化物質(PCM)または共晶物質であることが好ましい。高めの温度の場合、PCMは、好ましくは、10℃〜1℃の範囲の転移温度を有し、さらに好ましくは、所望の動作温度より5℃〜2℃、つまり、所望の動作温度未満でわずかな温度保護を可能にする範囲である。低めの温度の実施形態の場合、わずかに過熱であることは、あまり重要ではないので、PCMは、好ましくは、10℃〜0℃未満の範囲の転移温度を有し、さらに好ましくは、所望の動作温度未満の4℃〜1℃の範囲である。1℃〜4℃の範囲で使用するための具体的な好適な実施形態は、転移温度が0℃に近い水性の熱吸収材料を使用する。
図15は、装置の第一の実施形態の概略の断面図を示す。装置500は、ベース502およびベースに密着して所定の場所に配置または閉鎖手段(図示せず)によって閉鎖される蓋504を備える。装置は、外側ハウジング506を備え、外側絶縁領域508および熱吸収材料を有するヒートシシンク領域510を備える。好適な実施形態において、熱吸収材料は、ペイロードの所望の動作温度以下の平均転移温度を有するように選択される相変化物質(PCM)を含む。装置は、ヒートシンク領域とペイロードスペース514との間に配置される内側絶縁領域512をさらに備える。ペイロードスペースは、蓋504を開けることによって開放されてアクセスし、好適な実施形態において、装置から可逆的に取り外し可能なペイロードユニット516を備える。ペイロードユニットは、ペイロード520、ペイロードを過熱するヒーターユニット522、制御手段524、および電源(例えば、電池)526を保持する内側ハウジング518を備える。制御手段は、温度センサー528によりペイロードの温度を測定する。いくつかの実施形態において、センサー528はペイロード本体に装着され、その他の実施形態においては、ペイロードはペイロード容器(図15に図示せず)に収容され、ヒーターは、ペイロード容器を加熱し、温度センサーは、ペイロード容器またはペイロード本体に装着されてもよい。図15におけるヒーターおよびペイロードの配置は概略であるので、その他の配置も可能であり、例えば、ヒーターがペイロード内に位置付けられてもよく、その周りに分配されてもよい。また、制御手段は、センサー530で大気温度を読み込むことも好ましい。
好適な実施形態において、絶縁領域のうちの一つまたは両方は、一つ以上の真空断熱パネル(VIP)を備える。外側ハウジングは、例えば発泡スチロール(EPS)などの絶縁および/または衝撃吸収材料を付加的に備えてもよい。
使用の際、ヒーターは、大気への熱流束に対してペイロード温度を制御する。大気が制御温度未満であると、熱は、内側絶縁、熱吸収材料、および外側絶縁を介して失われる。熱吸収材料は、絶縁よりも高い熱容量を有するように選択され、熱を吸収および発散することによって大気へ/からの熱流束を和らげる働きをする。熱吸収材料がPCMである場合、PCMは、転移温度または転移温度に近い温度で熱の貯蔵容器としての役割を果たす。装置の動作は、胚の培養に適したペイロードの制御温度が38℃である例によって示される。図15の装置の特定の有利点は、熱吸収材料が、高い大気温度に対して保護するように働く。転移温度Tcが30〜35℃であるPCMが使用されるのが好ましい。大気温度がTcを大幅に下回る場合、PCMは凍結し、内側および外側絶縁領域の間の伝導リンクとしての役割を果たす。大気への熱損失率は、主に絶縁領域の熱抵抗の合計によって決まる。大気温度がTcを上回ると、熱は、大気からPCMへ流動し、これが徐々に融解し熱を吸収するため、ペイロードへの熱流束を実質的に防ぐ。最後に、PCMは、全体的に融解すると、もう一度効果的に伝導リンクとしての役割を果たし、過熱温度保護は消耗される。この時点で、ペイロードの温度は、上昇し始める。大気温度がTcを下回ると、PCMは徐々に凍結し、ある程度の過熱保護は回復する。
Tcを上回る大気温度における耐久性は、熱吸収領域の熱容量および外側絶縁領域の熱抵抗によって決まり、これらは、装置の保護ならびにサイズおよび重さの間で有利に譲歩するように選択される。内側および外側絶縁領域の熱抵抗の合計は、低い大気温度での特定のバッテリー容量のためヒーターの所要電力および装置の耐久性を決定する。熱吸収材料がPCMである場合、過熱保護が作用するようにするために、PCMは、装置が標準の大気温度である場合に実質的に凍結するべきである。約35℃のTcであるPCMの38℃で動作する装置の好適な実施形態において、外側絶縁領域は、内部領域よりも低い熱抵抗を有することが好ましい。これは、PCMが38℃よりも平均大気温度に近いように保たれることによって、PCMが凍結し続けることを意味する。しかしながら、外側の熱絶縁が小さくなればなるほど、過熱に対して保護を維持するために必要なPCMの熱容量が大きくなる。内側および外側絶縁がVIPを備える好適な実施形態に関して、トレードオフは、VIPの厚さおよびPCMの厚さ(および質量)にある。37〜40℃の範囲における制御温度に適合するような装置の典型的な実施形態において、内側と外側の絶縁の厚さ率は、1:1と4:1の間であることが好ましい。平均大気温度に近い制御温度で動作するように設計された実施形態において、最適比は異なり、PCMのTcはより低く、全体の絶縁のより多くの割合が有利にPCMの外側に配置され、過熱状態におけるPCMへの熱伝導が遅くなる。外側と内側絶縁の割合は、装置の設計要件に応じて選択される。
37〜40℃の範囲の制御温度で動作するように構成された装置の典型的な実施形態において、熱伝導が0.0042W/mKであるVIP(ドイツ、ブルツブルグにあるVa−Q−Tec GmbH社製のVaq−VIP)およびTcが35℃で潜熱容量が99kJ/litre=500kJ/m2であり、厚さが5mmのパネル(ドイツ、ハンブルグのRubitherm GmbH社製のファイバーボードにおけるRubitherm RT35)であるPCMを使用して、内側と外側の絶縁の厚さの割合は、約1:1と約4:1の間になるように選択されてもよい。好適な実施形態の実例が与えられたが、これらに限定されないことが理解される。これらの材料を使用する好適な実施形態は、5〜15mmの厚さの範囲の外側のVIP、5〜10mmの厚さの範囲のPCM層、および外側VIPの厚さの1から4倍である内側のVIP層を有する。好適な実施形態は、約5mmの厚さの外側の絶縁VIP、8mmの厚さのPCM層、および約20mmの厚さの内側VIPを有する。この組み合わせによって、50℃の大気温度に対して制御温度38℃で約8時間、電気機器の輸送のために過熱保護が与えられる。さらなる好適な実施形態は、約8mmの厚さの外側の絶縁VIP、5mmの厚さのPCM層、および約17mmの厚さのVIPを有する。また、この組み合わせによっても、50℃の大気温度に対して制御温度38℃で約8時間、装置のための過熱保護が与えられる。
図15の実施形態において、ヒートシンク領域は、装置の周囲で実質的に広がるように示され、ヒートシンク領域の熱吸収材料は、外側および内側の絶縁領域の間に均一に分配される。本実施形態において、大気熱エネルギーが外側のハウジングの優先的に一面に到達した場合、例えば、日光からの熱は、その面からまず、ヒートシンク領域の隣接する熱吸収材料に流動する。ある一定の量の熱は、局地的に過熱された熱吸収材料から、隣接する面の材料へと伝導されるが、これは、熱吸収領域の熱伝導率によって限定されないが、それが薄い場合、または熱吸収材料が分離したパネルの形状である場合には限定される。したがって、代替実施形態において、熱吸収材料、例えば、パネル形状におけるPCMは、熱発生率の高い領域から熱を伝導する働きをする導電性材料、例えば金属の層によって接触される。さらなる好適な実施形態において、熱吸収材料は、外側および内側の絶縁と間の局所領域に提供され、例えば金属などの熱伝導性の材料の層は、外側の絶縁の内部を実質的に取り囲んで提供され、外側絶縁の内側から熱吸収材料の領域まで熱を伝導する働きをする。この種の好適な実施形態において、熱吸収材料の総量は、熱吸収材料が装置の各面の本来の場所に提供されて、その面に到達した熱を吸収する実施形態に比べると、削減されてもよい。
装置は、いかなる所望の形であってもよく(しかし、長方形の面の製造が一番容易である)、当技術分野に既知であるさまざまな材料およびさまざまな方法により製造してもよい。絶縁領域は、装置の各面または一つ以上の連続パネルを外側ハウジングに適合するように形成するために、VIPまたは別々のパネルから形成されることが好ましい。適切なパネルの供給者の例として、ドイツ、ブルツブルグにあるVa−Q−Tec GmbH社製の「Va−Q−VIP」、米国、カリフォルニア州、コスタメサにあるTechnautics Inc.社製の「VacuPanel」、米国にあるThermoSafe Inc.にあるVIP(無銘柄)が挙げられる。VIPは、例えば耐穿刺性プラスチックから形成される薄い保護層またはライナー(図15に図示せず)によって保護されることが好ましい。ヒートシンク領域で使用される適切な熱吸収材料の例として、例えば、ドイツ、ハンブルグのRubitherm GmbH社製の「Rubitherm」などのシート状のPCMが挙げられ、さまざまな厚さおよびTc値で入手可能であり、高耐久性の輸送ハウジング内でVIPパネルと近接配置で容易に組み立てられてもよい。ヒーター、温度センサー、制御手段、および電源は、当技術分野で既知である種類である。制御手段は、マイクロプロセッサおよびプログラミング手段を備えることが好ましく、例えば、ヒーター、バッテリー充電、温度およびその他のセンサーからのログ読込みを制御するなど動作プログラムを装置の制御動作に提供し、入力および出力機能を提供する。
図16は、本体502および可逆的に開放可能な蓋504を備える装置500のさらなる実施形態を示す。装置は、外側ハウジング506、外側絶縁領域508、および熱吸収材料を含むヒートシンク領域510を備え、それらは共に、内側の絶縁スペース540を形作る。内側の絶縁ユニット542は、好適な実施形態において、装置から可逆的に取り外し可能であり、ペイロードスペース514を形作るハウジング518および内側絶縁領域512を備える。内側の絶縁ユニットは、ペイロード520およびヒーター522、制御手段524、および電源526をさらに収容する。制御手段は、ペイロードの温度、あるいは、ペイロードがさらなる容器(図示せず)に収容される実施形態においては、任意で容器の温度を表示する温度センサー528を読み込む。好適な実施形態において、制御手段は、大気温度センサー530を読み込む。また、制御手段は、任意で、ヒーターの温度を測定する追加の温度センサー548、および/またはヒートシンク領域の温度を測定する552、および/または内側絶縁領域の内部の温度を読み込むさらなる温度センサー(図示せず)を読み込む。図16における実施形態において、センサー530および552からのリード線550および554は、絶縁およびヒートシンク領域の中を通って、内側の絶縁ユニット542の中に入り、このようにして、リード線は、延長されるまたはプラグを抜くことによりユニット542を取り除くことができる。いくつかの実施形態において、ペイロード本体上のセンサー528は省略され、代わりに、ペイロードの温度を制御するために使用されるセンサー548から読み込まれる。
好適な実施形態において、内側の絶縁ハウジング542は気密であるため、ガス環境が、装置の他の部分からスペース514において維持可能になる。これは、例えば、ペイロードが、pH制御のために二酸化炭素雰囲気を必要とする培地において培養細胞、胚、卵母細胞などを含む場合に有利になる。この場合、内側の絶縁ハウジングの蓋544は、内側ハウジングのベースに対するガスケットまたはOリングの圧密シールを有することが好ましい。バルブ560によって閉鎖されるガス流入口558、およびバルブ564によって閉鎖されるガス流出口562は、ガス雰囲気を内側のハウジング542に導入するために提供される。電力線コネクタ556も、気密であるように構成される。
図15および16の実施形態において、制御手段および電源は、内側の絶縁内にあるように示される。そのどちらかまたは両方が装置の他の部分に存在するという実施形態が、本発明に含まれることが理解されたい。好適な実施形態において、その両方は、外側の絶縁と内側の絶縁との間、または、外側ハウジング506と外側絶縁との間に位置付けられる。
図17は、さらなる実施形態を示し、制御された温度およびガス環境において細胞、胚、または卵母細胞などの細胞の実体を収容および培養するように構成されるマイクロ流体デバイスなどの、流体デバイス570の形でペイロードを収容および輸送するように構成される。装置500は、また、本体502、蓋504、外側ハウジング506、外側絶縁領域508、ヒートシンク領域510、および内側絶縁領域512を備え、それらは共に内側スペース540を形作る。内側のハウジング518は、本実施形態において気密で、スペース540または大気におけるガス雰囲気とは異なるガス雰囲気を含むペイロードスペース514を形作る。ガス流入口558、流入バルブ560、流出口562、および流出バルブ564は、装置が閉鎖されると、装置の外からスペースにガスが流動することを可能にする。好適な実施形態において、ハウジング518は気密の蓋586によって閉鎖される。いくつかの実施形態において、蓋586は、ペイロードスペース514から分離してもよい上部ペイロードスペース588を形作る。図17において、二つのスペースは、相互に開放であるように示される。制御手段524および電源526は、いかなる前述の実施形態(図示せず)のように温度センサーを備えて、上述のように提供される。
図17における実施形態は、液状の培地をデバイス570に流動することを可能にする流体回路を有し、制御バルブ574、576を各々に有する流体貯蔵容器571、572、ポンプ578、デバイスへの流入ライン580、排水貯蔵容器584に通じる流出ライン582を備える。
本実施形態および前述の実施形態において、加熱手段は、電気ヒーターであることが望ましい。代替実施形態において、加熱手段は、装置の他の部分にある電気ヒーターなどの熱源から、マイクロ流体デバイス570の本体における加熱チャネルを介した流動流体によって、ペイロードを加熱する働きをする流体熱伝導手段を備える。
図18は、さらなる実施形態を示し、平均の大気温度以下にペイロードスペースの温度を制御するように構成される。本体602および蓋604を含む装置600は、外側ハウジング606および外側絶縁領域608を備え、それらは共に内側スペース609を形作り、そのスペース内に、装置から可逆的に取り外し可能な一つ以上のヒートシンク要素610を収めるヒートシンク領域を備える。装置は、内部ユニット616をさらに備え、その内部ユニットは装置から取り外し可能であり、内側絶縁領域612、ペイロードスペース614を備え、内側絶縁領域の外部にハウジング要素(図示せず)をさらに備える。図18において、ペイロード620は、蓋付きのペイロード容器および内部のペイロード含有物(図示せず)を備える。本実施形態は、第一のサンプル容器の周囲に第二の格納容器を必要とする、組織サンプル、生検、体液、およびその同様なものなどの生体物質の輸送用に構成される。図18に示されるペイロード容器は円筒形であるが、いかなる形状のペイロードまたはペイロード容器も本発明の範囲内である。ペイロードスペース内の少なくとも一領域は、ヒーター622によって加熱され、好適な実施形態において、例えば、図18の円筒形のペイロード容器を密接して収容するような円筒形の構成によって、ペイロードの周囲に部分的または全体的に配置される。ヒーターは、ヒーターに隣接して示される温度センサー628からのセンサー入力に応じて、制御手段624によって制御されるが、温度センサーは、例えば、ペイロード容器と近接近またはペイロード容器内、あるいはペイロードに隣接、その上に装着、またはその中などの他の部分に配置されてもよい。さらなる温度センサー、例えば、大気温度センサー630は、制御手段によって提供されてもよく、任意で読み込まれてもよい。代替実施形態において、大気センサー630は、Maxim Inc.社製の「i−button」またはHeatwatch Inc.社製の「heat button」などの自律センサーであり、内部ユニット616とセンサーとの間の接続632が必要ないという利点を有する。電源626は、ユニット616内に提供され、ユニット616が電力線接続627を使用して装置から取り外される際に、電力線に接続されてもよい。
例えば、組織サンプルの輸送などの適用のために、温度範囲0〜10℃で使用するように構成される好適な実施形態において、ヒートシンク要素610は、水性の冷却剤を含む。その要素は、スペース609においてヒートシンク領域に合うように構成される瓶の形をとってもよく、あるいは代替実施形態において、ヒートシンク領域に合うような形で柔軟に詰められて凍結されるゲルパックであってもよい。使用の際、好適な実施形態において、ヒートシンク要素は、従来のフリーザーで凍結され、フリーザーからすぐに絶縁ハウジングに配置されてもよい。ペイロード、ヒーター、制御手段、および電源を備える内部ユニットはバッテリーを有してもよく、そのバッテリーは、装置外で充電され、内部ユニットに関する制御を使用して所望の温度に事前設定され、次にヒートシンク要素に隣接する装置に挿入されるセンサー628は、内側絶縁領域612からヒートシンクへの伝導による温度低下を検出し、制御手段は、ペイロードスペースを加熱して、ヒートシンクからの冷却を防いで所望の温度を維持する。蓋604が取付けられると、装置は輸送されてもよい。ヒートシンクが約0℃に到達すると、温度はほぼ一定に維持され、ヒーターは、次に、制御温度と0℃との間での差を維持するように作動する。組織サンプルに適切であるような例えば2℃などの低い制御温度の場合、内側絶縁領域があるためにこれを実行するには低電力で済むが、従来技術の輸送システムは、そのような内側絶縁領域を備えていないため、一定のバッテリー容量の結果として生じる短い耐久性および冷却能力の早期損失からより高電力が必要になる。外側絶縁608は、冷却剤を融解から絶縁する役割を果たし、内側絶縁は、ペイロードとヒートシンク610との間の温度勾配を制御する。
本実施形態において、サンプルが凍結して劣化する危険性を伴わずに、サンプルが0℃に維持できることが大いに有利である。また、ペイロードの温度が、4℃の水で緩和または0℃を越える転移温度のPCMを使用することにより0℃を上回って維持される従来技術の輸送装置と比べると、本発明の装置は、一定のサイズおよび重さについて大幅に長い耐久性を有する。緩和のために使用される水は、単位体積および質量当たりの冷却能力にほとんど貢献せず、例えば4〜6℃の転移温度を有するPCMは、より低い一定の潜熱とより低い密度を両方持ち合わせているため、単位体積の潜熱は、水の半分程にも低い。さらに、従来技術の非加熱輸送装置でTcが0℃を越えるPCMを使用する際でも必要である冷却剤の前処理(部分解凍)が必要ないことから、輸送プロトコルにおける起こり得る失敗の重大な原因を回避する。
大幅に0℃を上回る制御温度は、上記の実施形態で達成されてもよいが、ヒーターに必要な電力は増大する。大幅に0℃を越える動作のための好適な実施形態は、さらに絶縁性の内側絶縁領域612を備えてもよい。好適な実施形態において、PCMは、一定の輸送耐久性に必要とされるバッテリー容量を最小限にするために、所望の制御温度以下の限定された温度範囲内のTc値を有するヒートシンク要素において使用される。例えば、8〜15℃の温度範囲で作動するように構成された好適な実施形態においては、4℃〜8℃のTcを有する相変化物質が氷の代わりに使用されてもよく、10℃以上の範囲については、5℃〜10℃のTcを有する相変化物質が使用されてもよい。一般的に、好適な実施形態において、制御温度以下の約0℃〜20℃のTcを有するPCMが使用され、さらなる好適な実施形態においては1℃〜10℃であり、最も好適な実施形態においては1℃〜5℃である。
好適な実施形態において、外側絶縁が少なくとも一つのVIPパネルを備え、さらなる好適な実施形態においては、装置の各面につき一つのVIPパネルを備える。VIPの絶縁特性は、一定の大気条件における輸送人の対象とする耐久性に関して選択される。いくつかの実施形態において、VIPパネルは、内側絶縁領域にも使用される。好適な実施形態において、内側絶縁の要件は、外側絶縁およびその他の絶縁材の要件よりも厳しくなく、例えば、構造ポリマー発砲体が使用されてもよい。内部ユニットは、必要であれば、構造ハウジング(図示せず)に収容されてもよい。
図18の実施形態の実験装置は、熱伝導率が0.0042W/mKで230x230x20mmの厚さの6枚のVIPパネル(Va−Q−Tec GmbH社製のVaq−Q−VIP)と、210x160x40mmの4つのプラスチック容器によって形作られるヒートシンク領域に配置される、Tc=0℃で潜熱容量が330kJ/kgである2.7kgのアイス/ゲルパックとを有する外側ハウジングで構成された。内側絶縁は、熱伝導率が約0.03W/mKで、110x110x210mmであるポリウレタンフォームのブロックであり、直径70mmの円筒形のペイロード容器がその中に軸方向に配置され、20mmの厚さの最小内側絶縁領域が提供された。
50Wの薄いシート状のヒーターは、内側絶縁の内部でペイロード容器620の周囲に装着され、制御温度が1℃に設定されたヒーター制御手段は、ヒーターに隣接した628で示される温度センサーと接続された。「i−button」温度ロガーがペイロード容器の内部に配置された。平均大気温度は20℃であった。凍結したアイスパックは、ヒートシンク領域に−18℃で配置された。ペイロード容器内の温度が約10時間で1℃に到達し、7日(7日でテストは終了した)上回る耐久性のために1℃のうちの0.25℃以内で維持された。7日を越える総エネルギー消費は、2.5kj(平均電力は4mW)であった。比較するために、同一のハウジング、外側および内側絶縁を使用するが活性加熱無しで、Tcが4〜6℃で特定の熱容量が2.4kJ/kgで相対密度が0.8であるPCMを容器に満たすために使用して−18℃で装置に挿入される実験において、ペイロードの温度は、3時間以内で0℃未満まで下がった。4.2kJ/kgの特定の熱容量を有する電気加熱したアイスベースのゲルパックを使用しなければ、さらに短時間でペイロードを0℃未満に冷却することが予想された。Tc=4〜6℃のPCMを使用すると、ペイロード温度は急速に4℃まで到達し、4.5日後に着実に8℃に達するようになり、それを越えると、PCMは完全に溶けて温度は急激に上昇した。本発明の装置は、本発明の抗性無しの装置に比べると、短期間でのより優れた凍結に対する耐久性、より優れた温度調節、および一定のサイズと重さに関してさらに長い耐久性を有した。
図18の実施形態の代替実施形態は、本発明の範囲内である。例えば、追加のヒートシンク要素は、内部ユニット616の上および/または下に配置されてもよく、内側絶縁は、ペイロード容器620の上に付加的に伸びてもよい。
図19は、さらなる好適な実施形態を示し、装置600は、図18の実施形態の装置と共通する部分を有する。内部ユニット616は、内側絶縁領域612、ペイロード容器620、ヒーター622、および制御装置624を上述のように備える。ここで、ヒーターは、主にペイロードスペースの底に配置され、熱は、一つ以上の伝導要素634、例えば、ヒーターと良好に熱的接触する金属円筒によって、ペイロードスペースの周囲から伝導される。伝導要素の温度は、その要素と接触する温度センサー628によって制御されてもよく、任意で、ヒーターと接触する追加のセンサー638、ならびに必要に応じてペイロード容器内にペイロード636と接触する640に制御されてもよい。
代替実施形態(図示せず)において、ヒーターまたは伝導要素は、ペイロード容器またはペイロード本体に内部で適合するような形で、それらの間の良好な熱的接触を提供してもよい。例えば、ヒーターまたは伝導体は、容器に適合するロッドの形状であってもよく、ペイロード容器の中央から放射状に外側に向かって、内側絶縁そしてヒートシンクに熱流束を提供する。
図20は、装置内の蓋付きの内側ペイロードスペースにペイロードを含むように構成される、さらなる好適な実施形態を示す。装置600は、外側ハウジング606、外側絶縁領域608、装置の構造の一部として形成される本実施形態における内部ユニット616、内部仕切り654を備え、それらは共に、可逆的に取り外し可能なヒートシンク要素610、ならびに制御手段624および装置の本体を介して電力線接続627によって接続されることのある電源626を備えるスペース656を収める一つ以上のヒートシンク領域609を形作る。内部ユニット616は、(任意で)内側のハウジング644および内側絶縁領域612を備え、ベース650および可逆的に開放可能である蓋652を有し、それらはペイロードスペース614を形作る。ペイロード620は、スペース614に適合するような適切な形状の容器であるように示される。ヒーター622は、ペイロードスペース内に配置される。温度センサー628は、ペイロードスペースの温度を感知するために提供され、638は、ヒーターの温度を感知するために提供され、640は、ペイロード容器またはペイロード本体の温度を感知するために提供されてもよい。温度センサー630は、大気温度を読み込むために任意で提供される。制御手段624および電源626は、内側絶縁610によりペイロードスペースと分離され、仕切り654によってヒートシンク要素610から分離され、好適な実施形態において、その仕切り自体が制御手段および電源からヒートシンク要素に到達する熱を防ぐように絶縁する。本実施形態のように内側絶縁の外に電源が位置することにより、従来熱が内側絶縁を介して損失可能であったよりも、さらなる熱を電源が消散する場合、特に、バッテリー充電の場合に有利になる。いくつかの実施形態において、電源の部分(例えば、電力トランジスタまたはIC)は、外側ハウジングと良好に熱接触するように配置されて、バッテリー充電時の分散を可能にしてもよい。
図18〜20の実施形態において、ヒートシンク要素は、装置の別の部分から分離するように示され、フリーザーで容易に冷却できるようにしている。代替実施形態において、ヒートシンク要素は、装置、好ましくは内部ユニットの不可欠な要素として形成され、装置から可逆的に取り外し可能であるため、ユニット全部を取り外して冷却することができる。ユニットは、装置において一括して取り替えられてもよい。図21における装置は、前述の実施形態と共通部分を有し、共通の番号が付けられている。本実施形態において、スペース609を収めるヒートシンクは、取り外し可能な内部ユニット616が収められるスペースと共通である。ユニット616は、外側ハウジング644、ヒートシンク領域610を備え、好適な実施形態においては、PCM、内側絶縁領域612を備え、内側ペイロードスペース614を形成する。ユニット616は、ペイロードスペースへのアクセスを提供する蓋を有する。ユニット616は、使用前に取り外されて冷却され、熱吸収材料610をそのTc未満にする。好適な実施形態において、ユニット616は、例えば、ユニットの底面でプラグ接続656によって装置に接続される。
図22は、ヒーターが装置の一部としてユニット616の外部に配置される代替実施形態を示す。ユニット616は、熱伝導要素658と熱的に伝達するサンプルスペース614を備え、好適な実施形態において、実質的に均一な温度をスペース614内で達成するように構成され、例えば、614の周囲に配置される。熱伝導要素は、ユニット616の外部と熱伝導領域660を介して、ユニット616が装置に挿入される際にヒーター622と熱接触するように熱接触手段662(図22に図示せず)に熱接触する。このようにして、ユニット616は、電気接続を必要とせずに、受動要素であることが可能である。
異なるTcを有するPCMを使用することによって、異なる範囲の制御温度に適合した装置が構成可能であることを理解されたい。例えば、−4、−1、0、2〜6、3〜9、5、7、20〜22、24、26〜28、29、32、33〜38、35〜36、44〜45、48、58の温度のPCMが利用可能であることが既知である。0〜20℃の範囲、好ましくはTcより1℃〜5℃高い制御温度での使用に適した装置が製造可能で、ペイロードの温度より上回るように電気加熱を使用して温度制御を達成することができる。各場合において、PCMとヒーターとの間の内側絶縁層の存在は、最適な性能を提供するには必須である。
上記実施形態において、制御手段は、当技術分野に既知であるいかなる種類のものであってもよい。好適な実施形態において、制御は、外部デバイスと通信可能で、RF、IR、Bluetooth、USB、またはその他のケーブルによる接続をはじめとする当技術分野で既知である手段によってプログラムのアップロード、データのダウンロード、状況更新などが可能になる。
さらなる実施形態において、装置は、以下のうちの一つ以上を付加的に備える。
システムのセンサーからの温度、pH、溶残酸素などのデータ、またはペイロードの状態に関連する上述のその他のセンサーからのデータを記録するデータロギング手段。
システムの正常機能およびシステムが置かれている環境状態を測定する内部および外部温度センサーなどの、システムの他の部分にあるセンサー。
運動、衝撃、または有害事象を検出するために提供されてもよい加速度計および姿勢検出装置。
携帯電話インターフェースまたは無線データインターフェースなどの電気機器と遠隔システムとの間の通信を可能にする通信手段。
GPS位置検出手段。
上記手段は、装置の制御手段と共に、装置およびデバイスの動作を監視または制御する働きをし、その位置を記録し、状況および位置情報を遠隔ステーションに伝えることができる。
本発明の輸送システムを配置し、任意でその状態およびその中の対象物の状態に関する情報を受領可能であることは、輸送における損失または遅延の場合に有益である。上記機能によりこれが可能になる。
図1は、本発明の第一の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図2は、本発明の第二の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図3aは、蓋をデバイスに適用する方法を示す、第二の実施形態のデバイスの縦断面図を示す。 図3bは、さらなる実施形態のデバイスの平面図を示す。 図3cは、図3bのC−Cの線に沿った縦断面図を示す。 図4は、本発明の第三の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図5aは、本発明の第四の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図5bは、図5aに示される実施形態の平面図を示す。 図6aは、本発明の第五の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図6bは、図6aに示される実施形態の平面図を示す。 図7は、デバイスおよび電気機器を備える本発明のシステムの概略の縦断面図を示す。 図8aは、本発明のデバイスの第六の実施形態のウェルの縦断面図を示す。 図8bは、本発明の第七の実施形態にかかるデバイスのウェルの縦断面図を示す。 図8cは、本発明の第八の実施形態にかかるデバイスのウェルの縦断面図を示す。 図8dは、本発明の第九の実施形態にかかるデバイスのウェルの縦断面図を示す。 図9aは、本発明の第十の実施形態にかかるデバイスの縦断面図の一部を示す。 図9bは、本発明の第十一の実施形態にかかるデバイスの縦断面図の一部を示す。 図10は、本発明の第十二の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図11は、図10に示される実施形態の平面図を示す。 図12は、本発明の電気機器の液流システムの概略図とともに、本発明の第十三の実施形態にかかるデバイスの縦断面図を示す。 図13は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える本発明のシステムの概略図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。 図14は、電気機器における使用のための液流システムの要素を有する、デバイスおよび電気機器を備える図13のシステムの概略図を示し、図15〜22は、本発明の実施形態のさらなる縦断面図を示す。

Claims (64)

  1. 細胞の実体を培養する装置であって、前記装置は、
    細胞の実態を培養するデバイスとガス源とを含み、
    前記デバイスは、一つ以上のウェルを有する基板であって、前記一つ以上のウェルは、細胞の実体を保持するように適合されている、基板と、
    前記細胞の実体の出入りを防ぐように前記基板に解放可能なように固定可能な蓋手段と、
    前記一つ以上のウェルと前記ガス源との間でガスを輸送するガス輸送手段と
    を含む、装置
  2. 前記ガス源からのガスは前記デバイスの外部の雰囲気であり、前記ガス輸送手段は、前記雰囲気と使用中の前記一つ以上のウェルとの間でガス交換する手段を含む、請求項1に記載の装置。
  3. 前記ガス源は、前記装置の一部として形成されたガス輸送チャネルまたはガス貯蔵容器を含む、請求項1または2に記載の装置。
  4. 前記ガス輸送手段は、前記デバイスの一つ以上のガス透過可能要素またはガス透過可能領域を含み、前記一つ以上のガス透過可能要素またはガス透過可能領域を介して、前記一つ以上のウェルと前記ガス源との間でガスが拡散することが可能である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
  5. 前記ガス輸送手段は、前記デバイスの一部として形成されたガス輸送チャネルまたはガス貯蔵容器を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
  6. 前記デバイスが使用中に配置されるハウジングをさらに含み、前記ガス源は、前記ハウジング内に含有されるガス雰囲気を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
  7. 前記ガス透過可能要素またはガス透過可能領域は、有孔性ポリマーを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。
  8. 前記一つ以上のウェルは、前記基板の主要表面に対して開いている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
  9. 前記デバイスは、複数のウェルを含み、前記一つ以上のウェルの間で化学種の流動または拡散を可能にするために前記一つ以上のウェルを連結する流体輸送手段をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
  10. 培養中に少なくとも一つの細胞の実体を輸送する装置であって、前記装置は、
    細胞の実体を培養するデバイスを含み、
    前記デバイスは、
    一つ以上のウェルを有する基板であって、前記一つ以上のウェルは、細胞の実体を保持するように適合されている、基板と、
    前記一つ以上のウェルから前記細胞の実体の出入りを防ぐ蓋手段と、
    前記一つ以上のウェルへのまたは前記一つ以上のウェルからの化学種の流動または拡散を可能にするために前記一つ以上のウェルを連結する流体輸送手段と
    を備え
    前記装置は、輸送中の前記デバイスの状態を監視および/または制御するように動作可能な輸送モジュールをさらに含む、装置。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置を含む、培養中に細胞の実体を輸送する装置であって、
    輸送中の前記デバイスの状態を監視および/または制御するように動作可能な輸送モジュールをさらに含む、装置
  12. 前記一つ以上のウェルは、前記細胞の実体を前記一つ以上のウェルの各々の所定位置に配置させるようにテーパ状である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置
  13. 前記一つ以上のウェルは、基板の主要表面に対して開いている開口部を有し、前記主要表面は、より大きな親水性およびより小さな親水性の領域を有するように、パターン化されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
  14. 流体経路は、複数のウェルの間に提供される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置
  15. 前記流体輸送手段は、複数のウェルの間の前記流体の拡散および/または対流を制御する材料を含む、請求項9〜14のいずれか一項に記載の装置
  16. 前記材料は、親水性の有孔性ポリマー、液相における種に透過可能であるポリマー、ヒドロゲル、フィルター材料からなる群のメンバーである、請求項15に記載の装置
  17. 前記一つ以上のウェルにおける液体媒体の組成を経時的に変更する手段を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置
  18. 前記組成を変更する手段は、前記一つ以上のウェルまたは前記液体媒体に放出される物質を含んでいる物質放出手段を備える、請求項17に記載の装置
  19. 前記ウェルまたは媒体に前記物質を放出する時期および/または割合を制御する放出制御手段をさらに備える、請求項18に記載の装置
  20. 前記物質放出手段は、前記蓋手段が固定される前に、前記一つ以上のウェルに提供される物体の形態である、請求項18または19に記載の装置
  21. 前記物質放出手段は、前記一つ以上のウェルの壁の材料の一つ以上の層の形態である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の装置
  22. 前記物質放出手段は、制御材料の層によって全体的または部分的に被覆されている、放出される物質の層を備える、請求項19〜21のいずれか一項に記載の装置
  23. 前記放出される物質は、前記一つ以上のウェルへの流体経路を有する貯蔵容器に提供され、
    前記放出制御手段は、制御材料から作成される前記流体経路内のバリアを含む、請求項18に記載の装置
  24. 前記放出制御手段は、
    液体媒体において可溶可能であるか、または液体媒体に接触して透水可能になる制御材料を含む、請求項18〜23のいずれかに一項に記載の装置
  25. 前記制御材料は、
    印加電位に応答して電気化学反応によって透水可能になるか、破壊され、あるいは、
    付加される力に応答して機械的に透水可能になるか、破壊される、請求項22または23に記載の装置
  26. 前記放出制御手段は、前記物質または前記蓋手段に装着される要素を含み、放出される物質を含んでいる貯蔵容器と前記一つ以上のウェルとの間の流体経路の流動を制御する、請求項18〜25のいずれかに一項に記載の装置
  27. 温度センサーおよび温度制御手段をさらに備える、請求項1〜26のいずれか一項に記載の装置
  28. 前記デバイスは、前記一つ以上のウェルの各々に対して開いた一つ以上の流体チャネルをさらに備える、請求項1〜27のいずれか一項に記載の装置
  29. メモリシステムをさらに備える、請求項1〜28のいずれか一項に記載の装置
  30. 前記輸送モジュールは、熱絶縁性ハウジングを含む、請求項10〜29のいずれか一項に記載の装置。
  31. 前記輸送モジュールは、前記一つ以上のウェルの含有物の温度を制御する温度制御手段を含む、請求項10〜30のいずれか一項に記載の装置。
  32. 前記輸送モジュールは、ヒートシンクをさらに備える、請求項10〜31のいずれか一項に記載の装置。
  33. 前記ヒートシンクは、前記装置および/またはデバイスの内部の動作温度未満の温度に維持される、請求項32に記載の装置。
  34. 前記ヒートシンクは、前記装置に導入される前に冷却され得る材料またはアセンブリを含んでいる冷却体を備える、請求項32または33に記載の装置。
  35. 前記ヒートシンクまたは冷却体は、前記デバイスが維持されるのが所望される温度未満で潜熱を吸収または放出するように適合される相変化または共晶物質、例えばゲルを含む、請求項32〜34のいずれか一項に記載の装置。
  36. 前記輸送モジュールは、前記一つ以上のウェルにおける液体媒体の組成を経時的に変更する手段を含む、請求項10〜35のいずれか一項に記載の装置。
  37. 前記輸送モジュールは、前記ウェルまたは媒体への前記物質の放出の時期および/または割合を制御する制御手段を含む、請求項10〜36のいずれか一項に記載の装置。
  38. 前記デバイスは、前記ウェルの含有物の温度を感知する温度センサーを備える、請求項10〜37のいずれか一項に記載の装置。
  39. 前記デバイスは、前記デバイスの状況を感知する複数の異なるセンサーを備え、
    前記輸送モジュールは、時間の関数として状況を記録する手段を備える、請求項10〜38のいずれか一項に記載の装置。
  40. 前記装置は、前記ウェルの全てまたは単にいくつかにおけるデバイスの全対象物に関して、ユーザーの介入を促進または防止する手段を提供する、請求項10〜39のいずれか一項に記載の装置。
  41. 請求項10〜40のいずれか一項に記載の装置において使用する輸送モジュール。
  42. 前記輸送モジュールおよび/または関連デバイスに関するデータを送信する無線通信装置に装着する通信用インターフェースを含む、請求項41に記載の輸送モジュール。
  43. 遠隔地から制御信号を受信する無線通信装置に装着する通信用インターフェースを含む、請求項41または42に記載の輸送モジュール。
  44. 前記流体輸送手段は、前記化学種の中または前記化学種内での拡散を制御するように動作可能な液体相拡散手段を含む、請求項10に記載の輸送モジュール。
  45. 制御された温度でペイロードを輸送する装置であって、
    前記装置は、
    外側ハウジングと、
    外側の熱絶縁性領域と、
    内側の熱絶縁性領域と、
    前記外側の熱絶縁性領域と前記内側の熱絶縁性領域との間のヒートシンク領域と
    を備え、
    前記内側の熱絶縁性領域は、ペイロードを収容する空洞を画定し、
    前記装置は、前記空洞内に配置されたヒートシンクをさらに含む、装置。
  46. 前記加熱手段は電気ヒーターを備える、請求項45に記載の装置。
  47. 前記外側の熱絶縁性領域は、一つ以上の熱絶縁性要素を備える、請求項45または46に記載の装置。
  48. 前記内側の熱絶縁性領域は、一つ以上の熱絶縁性要素を備える、請求項45〜47のいずれか一項に記載の装置。
  49. 前記一つ以上の熱絶縁要素は、一つ以上の真空断熱パネルである、請求項47または48に記載の装置。
  50. 前記ヒートシンク領域は、一つ以上の熱吸収要素を備える、請求項45〜49のいずれか一項に記載の装置。
  51. 前記ヒートシンク領域は、相変化物質を備える、請求項45〜50のいずれか一項に記載の装置。
  52. 前記ヒートシンク領域は、冷却され得る一つ以上の取り外し可能部分を備える、請求項45〜51のいずれか一項に記載の装置。
  53. 取り外し可能なペイロードユニットをさらに備え、前記ペイロードユニットは、ペイロードのための収容領域と、使用中のペイロードを加熱する手段とを含む、請求項45〜52のいずれか一項に記載の装置。
  54. 前記ペイロードユニットは、前記内側の絶縁領域をさらに含む、請求項53に記載の装置。
  55. 前記ペイロードユニットは、前記ヒートシンク領域をさらに含む、請求項54に記載の装置。
  56. 前記ヒートシンク領域は、相変化物質を含み、前記相変化物質は、前記ペイロードの所望の温度未満の温度範囲で融解する、請求項45〜55のいずれか一項に記載の装置。
  57. 前記装置は、ペイロード温度を37〜41℃の範囲に維持するように適合されており、前記相変化物質は、前記ペイロードの所望の制御温度未満の温度範囲の遷移温度を有するように選択される、請求項56に記載の装置。
  58. 前記装置は、ペイロード温度を1〜4℃の範囲に維持するように適合されており、前記相変化物質は、0℃付近の遷移温度を有するように選択される、請求項56に記載の装置。
  59. 前記外側絶縁領域の熱抵抗は、前記内側絶縁領域の熱抵抗未満である、請求項45〜58のいずれか一項に記載の装置。
  60. 前記熱絶縁領域における熱絶縁要素の熱伝導性は、前記内側絶縁領域における熱絶縁要素の熱伝導性未満である、請求項45〜59のいずれか一項に記載の装置。
  61. 前記ヒートシンク領域内に配置された、前記領域内の熱吸収要素に熱を伝導するように機能する伝導性の材料をさらに含む、請求項45〜60のいずれか一項に記載の装置。
  62. 前記ペイロードスペースの全体または一部は、前記ペイロードスペースまたは前記ペイロードスペースの一部と雰囲気との間でのガスの通過を制限するように密封されている、請求項45〜61のいずれか一項に記載の装置。
  63. 前記ペイロードスペース内の温度を制御する制御手段をさらに含む、請求項45〜62のいずれか一項に記載の装置。
  64. 前記ペイロードは、細胞の実体、例えば細胞または胚を培養するように適合された流体デバイスを含む、請求項45〜63のいずれか一項に記載の装置。
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