以下、本発明の一つの実施形態による非接触給電装置を、図を参照しつつ説明する。この非接触給電装置は、共振コンデンサとともに並列共振する受信コイルと直列に接続されるリアクトルを有する、いわゆるSPL方式と同様の構成を有することで、定電圧出力動作を可能とする。さらに、この非接触給電装置は、送電側の共振を利用せず、受電側の共振により電力伝送することで、送信コイルと受信コイル間の結合度が低い場合にも、電力伝送効率の低下を抑制する。
本願の発明者は、このような非接触給電装置において、受電側の共振回路に接続される負荷回路のインピーダンスが無視できるほどの非常に小さな値である場合、非接触給電装置が定電圧出力動作する、送信コイルに印加される交流電力の周波数において、送信コイルに流れる電流が極大値となり、かつ、その交流電力の電圧の位相と、送信コイルに流れる電流の位相とが一致することを見出した。
そこで、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の位置関係が変化するなどにより、定電圧出力動作しなくなると、受電側の共振回路を、その共振回路の受信コイルと直列に接続されるコイルを介して短絡する。そしてこの非接触給電装置は、送信コイルに印加される交流電力の周波数を変更しながら、送信コイルに流れる電流を測定する。この非接触給電装置は、その電流の測定値が極大値となるか、あるいは、送信コイルに印加される電圧の位相と送信コイルを流れる電流の位相とが一致する周波数を検出し、検出した周波数を持つ交流電力を送信コイルに印加することで、定電圧出力動作を行う。
図1は、本発明の一つの実施形態に係る非接触給電装置の概略構成図である。図1に示されるように、非接触給電装置1は、送電装置2と、送電装置2から空間を介して非接触で電力伝送される受電装置3とを有する。送電装置2は、電力供給回路10と、送信コイル14と、コンデンサ15と、電流検出回路16と、通信器17と、ゲートドライバ18と、制御回路19とを有する。一方、受電装置3は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20と、コイル23と、全波整流回路25と平滑コンデンサ26を有する整流平滑回路24と、負荷回路27と、電圧検出回路28と、判定回路29と、リレー30と、通信器31と、蓄電回路32とを有する。
電力供給回路10は、調節可能なスイッチング周波数、及び、調節可能な電圧を持つ交流電力を送信コイル14へ供給する。そのために、電力供給回路10は、電圧可変電源11と、DC/DCコンバータ12と、3個のスイッチング素子13−1〜13−3とを有する。
電圧可変電源11は、直流電力を供給し、その直流電力の電圧を制御回路19からの制御によって調整可能な電源である。なお、電圧可変電源11は、供給する電圧を調整可能な様々な回路構成の何れを有していてもよい。非接触給電装置1が定電圧出力動作している間、電圧可変電源11から供給される直流電力は、スイッチング素子13−1及び13−2を介して交流電力に変換されて送信コイル14へ供給される。一方、非接触給電装置1が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、電圧可変電源11から供給される直流電力は、DC/DCコンバータ12及びスイッチング素子13−3を介して送信コイル14へ供給される。
DC/DCコンバータ12の入力端子は、電圧可変電源11の正極側端子と接続され、DC/DCコンバータ12の出力端子は、ダイオードD及びスイッチング素子13−3を介してコンデンサ15の一端と接続される。そしてDC/DCコンバータ12は、電圧可変電源11から供給された直流電力の電圧を所定の電圧(例えば、5V)に低下させる。
非接触給電装置1が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、DC/DCコンバータ12から出力された電圧は、ダイオードD、スイッチング素子13−3及びコンデンサ15を介して送信コイル14へ供給される。
スイッチング素子13−1〜13−3は、それぞれ、例えば、nチャネル型のMOSFETとすることができる。スイッチング素子13−1とスイッチング素子13−2は、電圧可変電源11の正極側端子と負極側端子との間に直列に接続される。また、電圧可変電源11の正極側に、スイッチング素子13−1が接続され、一方、電圧可変電源11の負極側に、スイッチング素子13−2が接続される。そしてスイッチング素子13−1のドレイン端子は、電圧可変電源11の正極側端子と接続され、スイッチング素子13−1のソース端子は、スイッチング素子13−2のドレイン端子と接続される。また、スイッチング素子13−1のソース端子、及び、スイッチング素子13−2のドレイン端子は、コンデンサ15を介して送信コイル14の一端と接続される。さらに、スイッチング素子13−2のソース端子は、電圧可変電源11の負極側端子、及び、電流検出回路16を介して送信コイル14の他端と接続される。
また、スイッチング素子13−3のドレイン端子は、DC/DCコンバータ12の出力端子と接続され、スイッチング素子13−3のソース端子は、コンデンサ15を介して送信コイル14の一端と接続される。そして各スイッチング素子のゲート端子は、ゲートドライバ18と接続される。
スイッチング素子13−1〜13−3は、それぞれ、制御回路19により制御され、かつ、ゲートドライバ18によりオン/オフが切り替えられる。スイッチング素子13−1〜13−3のオン/オフの制御については後述する。
送信コイル14は、電力供給回路10から供給された交流電力を、空間を介して受電装置3の共振回路20へ伝送する。
コンデンサ15は、送信コイル14と電力供給回路10の間に接続される。そしてコンデンサ15は、各スイッチング素子のスイッチング周波数でのオン/オフの切り替えに応じて充電と放電とを繰り返すことで、送信コイル14に、スイッチング周波数を持つ交流電力を供給する。なお、スイッチング周波数が調整される周波数範囲において送信コイル14とコンデンサ15とが共振回路として動作しないよう、送信コイル14とコンデンサ15の共振周波数は、受電装置3の共振回路20の共振周波数及びスイッチング周波数が調整される周波数範囲の下限周波数よりも小さくなるように、コンデンサ15の静電容量が設定されることが好ましい。
電流検出回路16は、送信コイル14と電力供給回路10との間に接続され、送信コイル14を流れる電流を測定する。そして電流検出回路16は、電流の測定値を制御回路19へ出力する。なお、電流検出回路16は、電流検出回路16に対して直列に接続される分流用のコンデンサ(図示せず)とともに、送信コイル14に対して、コンデンサ15と並列に接続されてもよい。この場合、電流検出回路16は、間接的に送信コイル14に流れる電流を測定できる。
通信器17は、受電装置3の通信器31から無線信号を受信する度に、その無線信号から、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否かなどを表す判定情報を取り出して、制御回路19へ出力する。また通信器17は、制御回路19から受け取った、非接触給電装置1が定電圧出力動作するスイッチング周波数が検出されたことを表す検出情報を含む無線信号を生成し、その無線信号を受電装置3の通信器31に対して送信する。そのために、通信器17は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を送受信するアンテナと、送信する無線信号を変調し、または、受信した無線信号を復調する通信回路とを有する。なお、所定の無線通信規格は、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
ゲートドライバ18は、制御回路19から、スイッチング素子13−1〜13−3のそれぞれのオン/オフを切り替える制御信号を受信し、その制御信号に応じて、スイッチング素子13−1〜13−3のそれぞれのゲート端子に印加する電圧を変化させる。すなわち、ゲートドライバ18は、スイッチング素子13−1をオンにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子13−1のゲート端子に、スイッチング素子13−1がオンとなる相対的に高い電圧を印加する。一方、ゲートドライバ18は、スイッチング素子13−1をオフにする制御信号を受け取ると、スイッチング素子13−1のゲート端子に、スイッチング素子13−1がオフとなる、相対的に低い電圧を印加する。これにより、ゲートドライバ18は、制御回路19により指示されたタイミングでスイッチング素子13−1のオン/オフを切り替える。ゲートドライバ18は、スイッチング素子13−2及びスイッチング素子13−3についても同様に、ゲート端子に印加する電圧を変化させることでスイッチング素子13−2及びスイッチング素子13−3のオン/オフを切り替える。
制御回路19は、例えば、不揮発性のメモリ回路及び揮発性のメモリ回路と、演算回路と、他の回路と接続するためのインターフェース回路とを有する。そして制御回路19は、通信器17から判定情報を受け取る度に、その判定情報に応じて、電力供給回路10から送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。
本実施形態では、非接触給電装置1が定電圧出力動作している間、制御回路19は、スイッチング素子13−3をオフに保つことを指示する制御信号をゲートドライバ18へ出力する。また制御回路19は、スイッチング素子13−1とスイッチング素子13−2のオン/オフを、定電圧出力動作となるスイッチング周波数にて交互に切り替えることを指示する制御信号をゲートドライバ18へ出力する。すなわち、スイッチング素子13−1がオンとなり、スイッチング素子13−2がオフとなる場合には、電圧可変電源11からスイッチング素子13−1を介してコンデンサ15へ電力が供給されてコンデンサ15が充電されるのに伴って、送信コイル14へ電流が流れる。一方、スイッチング素子13−1がオフとなり、スイッチング素子13−2がオンとなる場合には、コンデンサ15が放電して、コンデンサ15から送信コイル14へ電流が流れる。
その際、制御回路19は、スイッチング素子13−1とスイッチング素子13−2とが交互にオンとなり、かつ、スイッチング周波数に対応する1周期内でスイッチング素子13−1がオンとなっている期間とスイッチング素子13−2がオンとなっている期間とが等しくなるように、スイッチング素子13−1及びスイッチング素子13−2を制御する。なお、制御回路19は、スイッチング素子13−1とスイッチング素子13−2が同時にオンとなり、電圧可変電源11が短絡されることを防止するために、スイッチング素子13−1とスイッチング素子13−2のオン/オフを切り替える際に、両方のスイッチング素子がオフとなるデッドタイムを設けてもよい。
また、非接触給電装置1が定電圧出力動作するためのスイッチング周波数の調整が行われている間、制御回路19は、からの制御信号に従って、スイッチング素子13−1をオフに保ち、その代わりに、スイッチング素子13−3とスイッチング素子13−2のオン/オフを、スイッチング周波数にて交互に切り替えることを指示する制御信号をゲートドライバ18へ出力する。
さらに、通信器17が受電装置3からの無線信号を受信できない場合、受電装置3は、送電装置2から電力供給を受けることができる位置に存在しない、すなわち、送電装置2は待機状態にあると想定される。そこでこの場合、制御回路19は、電圧可変電源11から出力される電圧を設定可能な最小値としてもよい。これにより、送電装置2が待機状態となっている間、送信コイル14に印加される電圧も設定可能な最小値となるので、エネルギーの損失が抑制される。
なお、非接触給電装置1が定電圧出力動作するための、送信コイル14に印加される交流電力の電圧及びスイッチング周波数の制御の詳細については後述する。
次に、受電装置3について説明する。
共振回路20は、互いに並列に接続される受信コイル21と共振コンデンサ22とからなるLC共振回路である。そして共振回路20が有する受信コイル21の一端が共振コンデンサ22の一端に接続されるとともに、コイル23を介して整流平滑回路24の一方の入力端子に接続される。また、受信コイル21の他端が共振コンデンサ22の他端に接続されるとともに、整流平滑回路24の他方の入力端子に接続される。
受信コイル21は、送電装置2の送信コイル14に流れる交流電流と共振することで、送信コイル14から電力を受信する。そして受信コイル21は、共振コンデンサ22及びコイル23を介して、受信した電力を整流平滑回路24へ出力する。なお、受信コイル21の巻き数と、送電装置2の送信コイル14の巻き数は同一でもよく、あるいは、異なっていてもよい。
共振コンデンサ22は、その一端で受信コイル21の一端及びコイル23と接続され、他端で受信コイル21の他端及び整流平滑回路24と接続される。そして共振コンデンサ22は、受信コイル21にて受信した電力を、コイル23を介して整流平滑回路24へ出力する。
コイル23は、共振回路20と整流平滑回路24との間に接続される。本実施形態では、コイル23は、受信コイル21と直列となるように、その一端で共振回路20の受信コイル21及び共振コンデンサ22と接続され、他端で整流平滑回路24と接続される。そしてコイル23は、共振回路20からの電力を整流平滑回路24へ出力する。なお、このコイル23が設けられることにより、SPL方式と同様に、受電した電力の高調波成分が抑制される。また、受信コイル21の巻き数と、コイル23の巻き数は同一でもよく、あるいは、異なっていてもよい。
整流平滑回路24は、整流回路の一例であり、ブリッジ接続された4個のダイオードを有する全波整流回路25と平滑コンデンサ26とを有し、共振回路20により受信され、かつ、コイル23を介して受け取った電力を整流し、かつ、平滑化して、直流電力に変換する。そして整流平滑回路24は、その直流電力を、負荷回路27に出力する。
電圧検出回路28は、整流平滑回路24の両端子間の出力電圧を所定の周期ごとに測定する。整流平滑回路24の両端子間の出力電圧は、共振回路20の出力電圧と1対1に対応するので、整流平滑回路24の両端子間の出力電圧の測定値は、間接的に共振回路20の出力電圧の測定値となる。電圧検出回路28は、例えば、直流電圧を検出できる公知の様々な電圧検出回路の何れかとすることができる。そして電圧検出回路28は、その出力電圧の測定値を表す電圧検出信号を判定回路29へ出力する。
判定回路29は、電圧検出回路28から受け取った出力電圧の測定値に基づいて、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否か、及び、出力電圧の測定値が定電圧出力動作が行われているときの電圧の許容範囲内に含まれているか否か判定する。そして判定回路29は、その判定結果を通信器31へ通知する。そのために、判定回路29は、例えば、電圧の許容範囲を記憶するメモリ回路と、出力電圧の測定値と電圧の許容範囲とを比較する演算回路とを有する。
さらに、判定回路29は、出力電圧の測定値が、電圧の許容範囲から外れている間、リレー30をオンにして、共振回路20の両端を、コイル23を介して短絡させ、送電装置2から、非接触給電装置1が定電圧出力動作するスイッチング周波数が検出されたことを表す検出情報を受信するまで、共振回路20の両端が短絡した状態を維持する。これにより、送電装置2の制御回路19が、非接触給電装置1が定電圧出力動作することが可能な、送信コイル14に印加される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を調整している間、共振回路20と接続される回路のインピーダンスが無視できるほど小さな値となる。
また、通信器31を介して、送電装置2から検出情報を受信すると、判定回路29は、リレー30をオフにして、共振回路20の両端を開放する。これにより、共振回路20に接続される回路のインピーダンスは、負荷回路27の抵抗に応じた値となる。さらに、判定回路29は、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれる場合、すなわち、非接触給電装置1が定電圧出力動作している場合、リレー30がオフの状態、すなわち、共振回路20の両端を開放させた状態を維持する。そして判定回路29は、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれることを表す判定結果を通信器31へ通知する。
リレー30は、短絡回路の一例であり、一端がコイル23と整流平滑回路24の入力側の一端との間に接続され、他端が共振回路20と整流平滑回路24の入力側の他端との間に接続される。本実施形態では、リレー30は、ノーマリーオフ型のリレーであり、判定回路29がオンとなるようにリレー30を制御することで、リレー30はオンとなる。リレー30がオンとなると、共振回路20はコイル23を介して短絡される。したがって、共振回路20と接続される回路のインピーダンスは無視できる程度の値となる。
通信器31は、所定の送信周期ごとに、判定回路29から受け取った判定結果に応じて、非接触給電装置1が定電圧出力動作しているか否か、及び、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれるか否かを表す判定情報を含む無線信号を生成し、その無線信号を送電装置2の通信器17へ向けて送信する。また、通信器31は、送電装置2の通信器17から検出情報を含む無線信号を受信すると、その検出情報を判定回路29へ出力する。そのために、通信器31は、例えば、所定の無線通信規格に準じて無線信号を送受信するアンテナと、送信する無線信号を変調し、または、受信した無線信号を復調する通信回路とを有する。なお、所定の無線通信規格は、通信器17と同様に、例えば、ISO/IEC 15693、ZigBee(登録商標)、あるいはBluetooth(登録商標)とすることができる。
蓄電回路32は、整流平滑回路24を介して出力される電力により蓄電され、判定回路29がリレー30をオンに維持する際に利用するための電力を判定回路29に提供する。そのために、蓄電回路32は、例えば、コンデンサを有し、コンデンサの一端が、順方向バイアスされるように設けられたダイオードを介して整流平滑回路24の正極側出力端子と一端と接続され、コンデンサの他端が接地される。そして受電装置3が送電装置2から給電されている間、蓄電回路32のコンデンサは、整流平滑回路24から出力される電力により充電される。また、非接触給電装置1が定電圧出力動作しなくなり、リレー30がオンになって整流平滑回路24から電力が出力されなくなると、判定回路29は、蓄電回路32のコンデンサが放電することで得られる電力を利用して、リレー30がオンとなる状態を維持する。
なお、蓄電回路32は、コンデンサ以外の電力を蓄電可能な回路を有していてもよい。例えば、蓄電回路32は、コンデンサの代わりに、二次電池を有していてもよい。またこの場合、蓄電回路32により蓄電された電力は、判定回路29及び通信器31を駆動するために利用されてもよい。
以下、非接触給電装置1の動作の詳細について説明する。
本実施形態では、送電装置2の制御回路19は、通信器17から受け取った判定情報において、出力電圧の測定値が所定の許容範囲から外れていること、すなわち、非接触給電装置1が定電圧出力動作していないことが示されている場合、非接触給電装置1が定電圧出力動作することが可能となるように、送信コイル14に供給される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を調整する。
ここで、本実施形態による非接触給電装置は、送電側における共振を利用しない。このことから、非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性は、受電側の共振回路のコイルに対して直列に接続されるリアクトルを設ける、いわゆるSPL方式の非接触給電装置において、送信コイルと直列接続されるコンデンサの静電容量を大きくして、送電側の共振回路の共振周波数を低下させたときの出力電圧の周波数特性と類似したものとなる。
図2は、非接触給電装置1の等価回路図である。この等価回路100において、送電側の送信コイル14と受電側の共振回路20の受信コイル21とが結合して、n:1の理想トランスを形成するものとする。Lr及びLmは、送電側の送信コイル14の漏れインダクタンス及び励磁インダクタンスである。なお、送電側の送信コイル14のインダクタンスLpは、(Lm+Lr)と等しく、送信コイル14と受信コイル21間の結合度をkとすると、Lr=(1-k)Lp、Lm=kLpである。また、Riは、送電側の巻線抵抗値であり、Risは、受電側の巻線抵抗値である。Cpは、受電側の共振回路20における、受信コイル21と並列接続される共振コンデンサ22の静電容量である。Lopは、受信コイル21と直列接続されるコイル23のインダクタンスである。そしてRacは、負荷回路27の交流等価抵抗値であり、Rac=(8/π2)×Roで表される。
図3は、本実施形態による非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図3において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cp=20nF、Lop=3Lp、Ri=Ris=0.3Ω、n=1、Vin=200V、Ro=200Ω(Rac≒162.1Ω)とした。グラフ301は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ302は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ303は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ304は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ305は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ306は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
図3に示されるように、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路27の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは、結合度ごとに(図のポイント311〜313の3通り)存在する。したがって、送信コイル14が共振しないスイッチング周波数を持つ交流電力を送信コイル14に印加しても、負荷回路27の抵抗値の変化に対して非接触給電装置1を定電圧出力動作させることができることが分かる。さらに、ポイント311〜313で示される通り、負荷回路27の抵抗値の変動に関して定電圧出力となるときの出力電圧は、結合度に応じて互いに異なっているものの、この出力電圧の差は、送信コイル14に印加する電圧を調節することで、結合度によらず、略一定の出力電圧とすることができる。
図4は、図3に示されたシミュレーションにおいて、結合度に応じて送信コイル14に印加する電圧を変化させたときの、出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図4において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ401は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRac、送信コイルに印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ402は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac) 、送信コイルに印加される電圧をVinとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ403は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値をRac、送信コイルに印加される電圧を(0.47*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ404は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac) 、送信コイルに印加される電圧を(0.47*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ405は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値をRac、送信コイルに印加される電圧を(0.19*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ406は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac) 、送信コイルに印加される電圧を(0.19*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
図3に示されたポイント311〜313に対応する、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路27の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは、ポイント411〜413の3通りとなる。そしてポイント411〜413のそれぞれの出力電圧は、互いに略等しい。
以上により、負荷回路27の抵抗値及び結合度の何れが変動しても、送信コイル14に印加する交流電力のスイッチング周波数及び電圧を適切に調節することで、出力電圧が略一定に保たれることが分かる。
また、発明者は、受電装置3の負荷回路27の抵抗値が予め設定された値となる場合には、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数において、非接触給電装置1の入力インピーダンスが極小値となるという知見を得た。さらに、発明者は、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数と、負荷回路27の抵抗値が無視できるほど小さい場合に出力電圧が極大値となる周波数と、非接触給電装置1の入力インピーダンスが極小値となる周波数とが一致するという知見を得た。
図5は、結合度を一定として、共振回路20と接続される回路のインピーダンスを変化させたときの、出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図5において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ501は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ502は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ503は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。そしてグラフ504は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、図3に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。
図5に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値を非常に小さな値にまで低下させると、グラフ503及びグラフ504に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値がRacであるときと(10*Rac)であるときとで出力電圧がほとんど変化しない、周波数f0において、出力電圧は極大値となる。これは、負荷回路27の交流等価抵抗値が略0である場合、次式が成立するためである。
ここで、Lopは、受信コイル21と直列接続されるコイル23のインダクタンスである。またCpは、共振コンデンサ22の静電容量である。L2は、受信コイル21の自己インダクタンスであり、kは結合度である。Lr2は、送信コイル14を短絡した際の受信コイル21のインダクタンスである。そしてfは送信コイル14に印加される交流電力の周波数である。したがって、(1)式を周波数fについて解いて得られる、次式で表される周波数f0にて、出力電圧は最大となる。
なお、負荷回路27の交流等価抵抗値がRacであるときの周波数f0における出力電圧と比較して、負荷回路27の交流等価抵抗値が(0.1*Rac)または(0.01*Rac)であるときの周波数f0における出力電圧が低いのは以下の理由による。すなわち、負荷回路27の交流等価抵抗値が非常に小さいと、流れる電流が大きくなるため、その電流による電圧降下の影響が大きくなるためである。
図6は、非接触給電装置の出力電圧の周波数特性と入力インピーダンスの周波数特性との関係の一例を示す図である。図6の上側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。また、図6の下側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、入力インピーダンスを表す。なお、このシミュレーションでも、図3に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。上側のグラフにおいて、グラフ601(図5のグラフ501と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ602(図5のグラフ502と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ603(図5のグラフ503と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。そしてグラフ604(図5のグラフ504と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
また、下側のグラフにおいて、グラフ611は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。また、グラフ612は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。さらに、グラフ613は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。そしてグラフ614は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの非接触給電装置1の入力インピーダンスの周波数特性を表す。
図6に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値が小さいほど、入力インピーダンスが極小値となる周波数は、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数f0に近づく。特に、負荷回路27の交流等価抵抗値が(0.01*Rac)である場合、周波数f0にて入力インピーダンスは極小値となる。すなわち、周波数f0にて、送信コイル14に流れる電流は極大値を持つ。
図7は、非接触給電装置の出力電圧の周波数特性と、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性との関係の一例を示す図である。図7の上側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。また、図7の下側のグラフにおいて、横軸は、周波数を表し、縦軸は、位相の遅れを表す。なお、この図において、位相の遅れが正の値を持つ場合、電圧の位相に対して電流の位相が遅れていることを示す。また、このシミュレーションでも、図3に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。上側のグラフにおいて、グラフ701(図5のグラフ501と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ702(図5のグラフ502と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの非接触給電装置1の出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ703(図5のグラフ503と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。そしてグラフ704(図5のグラフ504と同一)は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
また、下側のグラフにおいて、グラフ711は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。また、グラフ712は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。さらに、グラフ713は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。そしてグラフ714は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。
図7に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値が小さいほど、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となる周波数は、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数f0に近づく。特に、負荷回路27の交流等価抵抗値が(0.01*Rac)である場合、周波数f0にて送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0、すなわち、力率が1となる。すなわち、負荷回路27の交流等価抵抗値が(0.01*Rac)である場合、周波数f0よりも高い周波数では、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが正の値となり、いわゆる誘導性駆動となる。そのため、特に、その位相の遅れが0°〜90°となる周波数帯域では、非接触給電装置1は、電力供給回路10及び送信コイル14をソフトスイッチング動作させることができる。一方、周波数f0よりも低い周波数では、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが負の値となり、いわゆる容量性駆動となる。そのため、特に、その位相の遅れが0°〜-90°となる周波数帯域では、電力供給回路10及び送信コイル14はハードスイッチング動作することとなり、電力伝送効率が低下する。
以上により、制御回路19は、定電圧出力動作を達成するために、下記のように送信コイル14に印加される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御する。
受電装置3から通信器17を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、非接触給電装置1が定電圧出力動作していないことが示されている場合、制御回路19は、ゲートドライバ18を介してスイッチング素子13−1をオフに保つとともに、スイッチング素子13−3及び13−2のオン/オフを交互に切り替えることで、DC/DCコンバータ12から送信コイル14に電力が供給されるようにする。また制御回路19は、DC/DCコンバータ12から送信コイル14に供給される電圧が所定値となるように、電圧可変電源11を制御する。これにより、制御回路19は、送電装置2から受電装置3へ供給される電力を、受電装置3が故障しない程度に低下させる。
そして制御回路19は、スイッチング周波数を変化させながら、電流検出回路16による、送信コイル14に流れる電流の測定値を監視して、その電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数を検出する。なお、本実施形態のように、非接触給電装置1が定電圧出力動作していない場合には、受電装置3の共振回路20はコイル23を介して短絡されており、共振回路20と接続される回路のインピーダンスは無視できるほど小さな値となっている。この場合、図6に示されるように、送信コイル14に流れる電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数の近傍では、スイッチング周波数の変化に対してその電流の測定値が急激に変化する。そこで、制御回路19は、その電流の測定値が所定の閾値以上となるスイッチング周波数を、その電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数として検出してもよい。なお、所定の閾値は、例えば、送信コイル14に流れる電流値が極大値となるスイッチング周波数から、所定の許容誤差だけずれたスイッチング周波数における、送信コイル14に流れる電流値に応じた値とすることができる。
送信コイル14に流れる電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数は、図6に示される周波数f0といった、非接触給電装置1の入力インピーダンスが極小値となる周波数、すなわち、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数である。そこで制御回路19は、送信コイル14に流れる電流の測定値が極大値となるスイッチング周波数が検出されると、そのスイッチング周波数にて、電圧可変電源11からの電力が送信コイル14に供給されるように、ゲートドライバ18を介してスイッチング素子13−1及び13−2のオン/オフを制御する。また制御回路19は、スイッチング素子13−3をオフにする。これにより、制御回路19は、非接触給電装置1を定電圧出力動作させることが可能となる。そして制御回路19は、非接触給電装置1が定電圧出力動作するスイッチング周波数が検出されたことを表す検出情報を通信器17へ通知し、通信器17に、その検出情報を含む無線信号を受電装置3の通信器31へ送信させる。
その後、制御回路19は、受電装置3の共振回路20からの出力電圧の測定値が所定の許容範囲内となるように、スイッチング周波数に応じた電圧が送信コイル14に供給されるよう、電力供給回路10の電圧可変電源11を制御する。その際、制御回路19は、例えば、スイッチング周波数と電圧可変電源11から供給される電力の電圧との関係を表した参照テーブルを参照することで、電圧可変電源11から供給される電力の電圧を決定すればよい。そのような参照テーブルは、例えば、制御回路19が有するメモリに予め記憶される。
なお、制御回路19は、検出情報を受電装置3へ送信してから、送信コイル14に印加する交流電力の電圧をスイッチング周波数に応じた電圧に変更するまでに相当する一定期間の間、受電装置3から出力電圧の測定値が所定の許容範囲から外れていることを表す判定情報を受け取っても、スイッチング周波数の探索を行わないことが好ましい。これにより、制御回路19は、非接触給電装置1が定電圧出力動作するスイッチング周波数が検出されているにもかかわらず、スイッチング周波数の再探索が行われることを防止できる。
また、制御回路19は、上記の参照テーブルを参照する代わりに、受電装置3から通信器17を介して受けとった無線信号に含まれる判定情報において、出力電圧の測定値が電圧の許容範囲に含まれることが示されるようになるまで、電圧可変電源11から供給される電力の電圧を徐々に変化させてもよい。
変形例によれば、制御回路19は、スイッチング周波数を変化させながら、電流検出回路16による、送信コイル14に流れる電流の測定値を監視して、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となるスイッチング周波数を検出してもよい。この場合、制御回路19は、例えば、スイッチング素子13−3及び13−2のオン/オフの切り替えタイミングと、送信コイル14のインダクタンスとコンデンサ15の静電容量に応じた時定数とに基づいて、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相を特定すればよい。一方、制御回路19は、電流検出回路16による、送信コイル14に流れる電流の測定値の時間変化により、送信コイル14に流れる電流の位相をもとめればよい。
図7に示されるように、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となるスイッチング周波数は、非接触給電装置1が定電圧出力動作する周波数である。そこで、制御回路19は、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となるスイッチング周波数が検出されると、上記と同様に、検出されたスイッチング周波数にて、電圧可変電源11からの電力が送信コイル14に供給されるように、ゲートドライバ18を介してスイッチング素子13−1及び13−2のオン/オフを制御し、スイッチング素子13−3をオフに保てばよい。なお、この変形例においても、制御回路19は、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相と電流の位相の差の絶対値が所定の閾値以下となったスイッチング周波数を、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となるスイッチング周波数として検出してもよい。
以上に説明してきたように、この非接触給電装置は、受電装置の共振回路を、受信コイルと直列に接続されるコイルを介して短絡した状態で、送電装置の送信コイルに流れる電流を測定して、その電流が極大値となるか、送信コイルに印加される電圧の位相と送信コイルに流れる電流の位相が一致する、送信コイルに印加される交流電力のスイッチング周波数を検出する。これにより、この非接触給電装置は、定電圧出力動作するスイッチング周波数を正確に検出できる。そしてこの非接触給電装置は、共振回路を開放した後、検出されたスイッチング周波数にて、非接触給電装置が定電圧出力動作するよう、送信コイルに印加される交流電力の電圧を調整する。したがって、この非接触給電装置は、送信コイルと受信コイル間の結合度が一定でない場合、あるいは、負荷回路の抵抗値が一定でないでも、定電圧出力動作することができる。
変形例によれば、受電装置3において、送信コイル14に印加される交流電力と共振する共振回路とは別個に、伝送された電力を取り出すための出力コイルが設けられてもよい。
図8は、変形例による、受電装置4の構成図である。図8に示されるように、この変形例による受電装置4は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20と、コイル23と、全波整流回路25と平滑コンデンサ26を有する整流平滑回路24と、負荷回路27と、電圧検出回路28と、判定回路29と、リレー30と、通信器31と、蓄電回路32と、出力コイル33とを有する。この変形例による受電装置4は、上記の実施形態による受電装置3と比較して、出力コイル33を有する点、及び、共振回路20の代わりに出力コイル33から伝送された電力が取り出される点で相違する。そこで以下では、この相違点及び関連する点について説明する。
出力コイル33は、共振回路20の受信コイル21と電磁結合可能に配置される。例えば、出力コイル33と受信コイル21とは、同一の芯線に対して巻き付けられる。そのため、出力コイル33は、受信コイル21とともにトランスを構成し、受信コイル21にて受電した電力を、出力コイル33から取り出すことができる。そして出力コイル33の一端がコイル23を介して整流平滑回路24の一方の入力端子に接続される。また、出力コイル33の他端が整流平滑回路24の他方の入力端子に接続される。したがって、共振回路20を介して出力コイル33から取り出される電力は、コイル23及び整流平滑回路24を介して負荷回路27へ供給される。なお、この変形例では、共振回路20は、コイル23及び整流平滑回路24とは直接に接続されない。
この変形例において、受信コイル21の巻き数と出力コイル33の巻き数は同一でもよく、あるいは、互いに異なっていてもよい。例えば、受信コイル21の巻き数を出力コイル33の巻き数よりも多くすることで、電力伝送効率を維持しつつ、取り出される電力の電圧を低下させることが可能となる。そのため、この変形例によれば、受信コイル21の巻き数を出力コイル33の巻き数よりも多くすることで、負荷回路27に印加可能な電圧の上限値が低い場合でも、DC/DCコンバータといった、電圧を低下させるための回路が不要となる。
なお、この変形例においても、リレー30は、一端がコイル23と整流平滑回路24の入力側の一端との間に接続され、他端が共振回路20と整流平滑回路24の入力側の他端との間に接続されればよい。そして判定回路29は、電圧検出回路28により測定された、出力電圧の測定値が所定の許容範囲から外れる場合に、リレー30をオンにして、出力コイル33の両端を、コイル23を介して短絡すればよい。これにより、共振回路20は、コイル23を介して短絡され、共振回路20と接続される回路のインピーダンスは無視できる程度に小さくなる。そのため、この変形例による非接触給電装置も、上記の実施形態による非接触給電装置と同様に、定電圧出力動作するスイッチング周波数を正確に検出できる。
他の変形例によれば、リレー30として、ノーマリーオン型のリレーが用いられてもよい。
図9は、他の変形例による、受電装置5の構成図である。図9に示されるように、この変形例による受電装置5は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20と、コイル23と、全波整流回路25と平滑コンデンサ26を有する整流平滑回路24と、負荷回路27と、電圧検出回路28と、判定回路29と、リレー30と、通信器31と、蓄電回路32と、出力コイル33とを有する。この変形例による受電装置5は、上記の変形例による受電装置4と比較して、リレー30のタイプ、及び、蓄電回路32への電力供給元の位置が相違する。そこで以下では、この相違点及び関連する点について説明する。
この変形例では、リレー30は、ノーマリーオン型のリレーであり、非接触給電装置が定電圧出力動作している間、すなわち、電圧検出回路28により測定された出力電圧の測定値が所定の許容範囲に含まれている間、判定回路29によりオフとなるよう駆動される。そして、電圧検出回路28により測定された出力電圧の測定値が所定の許容範囲から外れると、判定回路29は、リレー30をオンにする。その後、送電側にて非接触給電装置が定電圧出力動作可能なスイッチング周波数が検出されたことが通信器31を介して送電装置2から通知されると、判定回路29は、蓄電回路32により蓄電された電力を利用してリレー30をオフにする。
蓄電回路32は、受電装置5が送電装置2から電力供給されている間に、出力コイル33の両端のそれぞれから、ダイオードを介して整流された電力により充電される。なお、この例では、リレー30がオンとなって、出力コイル33の両端が短絡されても、蓄電回路32は、出力コイル33の直後に接続されているので、スイッチング周波数の探索中でも伝送された電力により充電可能である。そして蓄電回路32により蓄電された電力は、上記のように、リレー30をオフにするために利用される。
この変形例による非接触給電装置も、定電圧出力動作する、送信コイル14に印加される電力のスイッチング周波数の探索中に共振回路20をコイル23を介して短絡することができるので、上記の実施形態による非接触給電装置と同様に、定電圧出力動作するスイッチング周波数を正確に検出できる。
さらに他の変形例によれば、受電装置の共振回路において、受信コイルと共振コンデンサとが直列に接続されてもよい。この場合も、非接触給電装置は、定電圧出力動作することが可能であるため、上記の実施形態または変形例と同様に、共振回路を短絡した状態で、送信コイルに流れる電流を調べることで、定電圧出力動作するスイッチング周波数を検出できる。
図10は、この変形例による、受電装置6の構成図である。図10に示されるように、この変形例による受電装置6は、受信コイル21及び共振コンデンサ22を有する共振回路20aと、全波整流回路25と平滑コンデンサ26を有する整流平滑回路24と、負荷回路27と、電圧検出回路28と、判定回路29と、リレー30と、通信器31と、蓄電回路32と、出力コイル33とを有する。この変形例による受電装置6は、図1に示される受電装置3と比較して、共振回路20aの構成、及び、コイル23が省略される点で相違する。そこで以下では、この相違点及び関連する点について説明する。
共振回路20aでは、受信コイル21と共振コンデンサ22とは直列に接続される。そして受信コイル21を介して受電した電力は、共振コンデンサ22を介して整流平滑回路24へ出力される。この場合、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置は、一次直列二次直列コンデンサ方式(以下、SS方式と呼ぶ)と同様の構成を有するため、定電圧出力動作することができる。またこの例では、SPL方式の非接触給電装置とは異なり、共振回路20aは、直列共振するので、コイル23は省略されてよい。なお、SS方式と異なり、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置は、送電側において送信コイル14の共振を利用しなくてもよい。
非接触給電では、電力伝送効率は、送信コイルと受信コイル間の結合度kと、共振/共鳴の強さの指標であるQ値の積で表される。そのため、電力伝送効率を向上するためには、Q値を高くすることが求められる。この変形例では、上記のように、受電装置6は、RLC直列共振回路として動作する。この場合、Q値は次式で表される。
ここでCは、共振コンデンサ22の容量であり、Lは、受信コイル21のインダクタンスであり、Rは、共振回路20aと接続される回路のインピーダンスである。(3)式から明らかな通り、負荷回路27のインピーダンスが大きくなるほど、Q値は低下する。したがって、負荷回路27により消費される電力が一定である場合、Q値を高くするためには、共振回路20aから出力される電圧及び負荷回路27のインピーダンスが低い方が好ましい。また、上記の実施形態または変形例における共振回路20のように、受信コイル20と共振コンデンサ21とが並列共振する場合とは逆に、(3)式から明らかな通り、Q値を高くするためには、受電装置6では、受信コイル21のインダクタンスは大きく、かつ、共振コンデンサ22の容量は小さい方が好ましい。
図11は、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置の出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図11において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。なお、このシミュレーションでは、Lp=174μH、Cp=20nF、Ri=Ris=0.1Ω、n=1、Vin=300V、Ro=200Ω(Rac≒162.1Ω)とした。グラフ1101は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1102は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。また、グラフ1103は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.5*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1104は、結合度k=0.3、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.5*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1105は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値をRac、送信コイル14に印加される電圧を(0.25*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1106は、結合度k=0.6、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)、送信コイル14に印加される電圧を(0.25*Vin)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。
図11に示されるように、結合度kが変化しない条件下で、負荷回路27の交流等価抵抗値が変化しても出力電圧が略一定となる(すなわち、定電圧出力となる)、周波数と出力電圧の組み合わせは、結合度ごとに(図のポイント1111〜1113の3通り)存在する。したがって、この変形例による非接触給電装置も、送信コイル14に印加する交流電力のスイッチング周波数及び電圧を調節することで、結合度によらず、略一定の出力電圧を得ることができる。
図12は、結合度を一定として、共振回路20aと接続される回路のインピーダンスを変化させたときの、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置についての出力電圧の周波数特性のシミュレーション結果の一例を示す図である。図12において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、出力電圧を表す。グラフ1201は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの出力電圧の周波数特性を表す。またグラフ1202は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。さらに、グラフ1203は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。そしてグラフ1204は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの出力電圧の周波数特性を表す。なお、このシミュレーションでは、図11に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。
図12に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値を非常に小さな値にまで低下させると、グラフ1203及びグラフ1204に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値がRacであるときの出力電圧と負荷回路27の交流等価抵抗値が(10*Rac)であるときとの出力電圧とが略同一となる周波数f0において、出力電圧は極大値となる。したがって、負荷回路27の交流等価抵抗値が小さいほど、入力インピーダンスが極小値となる周波数、すなわち、送信コイル14に流れる電流が極大値となる周波数は、周波数f0に近づく。
図13は、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置についての出力電圧の周波数特性と、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性との関係の一例を示す図である。図13において、横軸は、周波数を表し、縦軸は、位相の遅れを表す。なお、この図において、位相の遅れが正の値を持つ場合、電圧の位相に対して電流の位相が遅れていることを示す。また、このシミュレーションでも、図11に示されたシミュレーションに用いられた各回路素子のパラメータの値と同じ値を使用した。
グラフ1311は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値をRacとしたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。また、グラフ1312は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(10*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。さらに、グラフ1313は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.1*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。そしてグラフ1314は、結合度k=0.15、負荷回路27の交流等価抵抗値を(0.01*Rac)としたときの送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れの周波数特性を表す。
図13に示されるように、負荷回路27の交流等価抵抗値が小さいほど、送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが0となる周波数は、非接触給電装置が定電圧出力動作する周波数f0に近づく。特に、負荷回路27の交流等価抵抗値が(0.01*Rac)である場合、周波数f0にて送信コイル14に印加される交流電力についての電圧の位相に対する電流の位相の遅れが略0、すなわち、力率が略1となる。
したがって、送電装置2と受電装置6とを有する非接触給電装置においても、送電装置2の制御回路19は、図1に示される非接触給電装置1と同様に送信コイル14に印加される交流電力のスイッチング周波数及び電圧を制御すればよい。また受電装置6の判定回路29も、図1に示される非接触給電装置1と同様に、通信器31を介して判定情報を送電装置2へ送信し、送電装置2から検出情報を受信し、かつ、リレー30を制御すればよい。
さらに他の変形例によれば、短絡回路として、リレーの代わりに、直列に接続される二つのMOSFETが用いられてもよい。この場合には、その二つのMOSFETのソース端子同士、あるいは、ドレイン端子同士が互いに接続されればよい。そして判定回路29は、共振回路20(または共振回路20a)を短絡する際には、その二つのMOSFETのゲート端子に、その二つのMOSFETがオンとなる電圧を印加し、一方、共振回路20(または共振回路20a)を開放する際には、その二つのMOSFETのゲート端子に、その二つのMOSFETがオンとなる電圧を印加すればよい。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。