JP2019151700A - オレフィン重合触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温重合時に生成する共重合体の分子量を高活性で高めつつ、非共役ポリエンの添加量がより少ない重合条件でも、十分な非共役ポリエン含量を持つエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造するための重合触媒を提供すること。【解決手段】下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒。【選択図】なし

Description

本発明は、オレフィン重合触媒に関する。
エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)に代表されるエチレン/α−オレフィン系ゴムは、その分子構造の主鎖に不飽和結合を有してないため、汎用されている共役ジエン系ゴムに比べ、耐熱性、耐候性に優れることから、自動車用部品、電線用材料、建築土木資材、工業材部品、各種樹脂の改質材等の用途に幅広く使用されている。
従来EPDM等のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムは、一般的にチタン系触媒あるいはバナジウム系触媒と有機アルミニウム化合物の組合せからなる触媒系(いわるゆチーグラー・ナッタ触媒系)を用いて製造されてきた。この触媒系の最大の欠点はその生産性であり、重合活性が低く触媒寿命が短いが故に、0から50℃付近の低い温度での重合を余儀なくされている。このため、重合溶液の高い粘度が障害となり、重合器内のオレフィン共重合体の濃度を充分に上げることができず、生産性が著しく低いという不具合を生じている。さらには、重合活性が低いために重合終了時に共重合体中に含まれる触媒残渣の量が多く、製品要求性能を満たさない場合が多々ある。従ってこれを除去するための脱灰処理プロセスが必要となり、生産コストの面で著しく不利となっている。
一方で、配位子にビスシクロペンタジエニル基やビスインデニル基を有する架橋メタロセン化合物を含む重合触媒によるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合が開示されている[特開2005-344101号公報、特開平9-151205号公報、特表2000-507635号公報]。この方法では、前述のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量が高くなるものの、高温重合を実施するには未だその分子量が不十分であった。一般に高温溶液重合においては重合溶液の粘度が低下するため、重合器内のオレフィン共重合体の濃度を高く保つことが可能となり、重合器当りの生産性が向上する。しかしながら一方で、重合温度の上昇に伴い生成するオレフィン共重合体の分子量は低下することが当該業者にとって周知である。従って、生産性の高い高温重合においても所望の高分子量のオレフィン共重合体を製造するためには、高分子量のオレフィン共重合体を生成する触媒が必要となっている。
また、通常、EPDM等のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体ゴムの製品は、その使用上の要求性能により、残存する重合溶媒や未反応のオレフィンモノマーの含有量が制限されている。製造設備においては、重合後工程で加熱や減圧等の操作を行うことによりこれらの不純物を取り除くことが一般的に行われている。例えばEPDMの製造においては、沸点が高い未反応の非共役ポリエンの除去に多大な負荷を要するため、重合反応器から排出された重合溶液中で、残存する未反応非共役ポリエンの量がEPDMに比べて少ないほど生産性の向上に繋がる。すなわち、ある一定時間で、ある一定量のEPDMを連続的に製造する場合において、該未反応非共役ポリエンの量が少ないほど加熱や減圧操作の負荷が軽減され、製造コストの低減が可能となる。また逆に、加熱や減圧操作の負荷をある一定に保った場合、該未反応非共役ポリエンの量が少ないほど製造設備の一定時間当りの生産量が増えるという効果がある。
こういった利点を得る目的で重合溶液中の未反応非共役ポリエンの量を低減する方法として、非共役ポリエンの共重合性能が高い重合触媒を使用する方法が挙げられる。このような重合触媒を使用することにより、ある所望の非共役ポリエン含有量を有するEPDMを製造する際、添加する非共役ポリエンの量を低減することが可能となり、結果として残存する未反応非共役ポリエンの量も低減されるという効果が得られる。
上記の通り、高温重合による高い生産性を実現するために高分子量のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を生成し、重合後工程での負荷軽減による生産性向上のために非共役ポリエン共重合性能が高い重合触媒が求められている。産業上ではとりわけ、これらの性能と、脱灰処理プロセスが不要となる高い重合活性とを同時に高いレベルでバランス良く実現する重合触媒が望まれている。
本出願人は、特許文献1(WO2009/081792)および特許文献2(WO2009/081794)において、特定の架橋シクロペンタジエニル-フルオレニルメタロセン化合物を含む触媒を用いたエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造方法を提案している。特許文献1の製造方法によれば、良好な重合活性で、高い分子量を有するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することができ、特許文献2の製造方法によれば、良好な重合活性で、高い分子量を有するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することができ、しかも重合温度をより高く設定することができる。
しかしながら、特許文献1、2に開示された製造方法等の従来のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造方法は、非共役ポリエンの添加量がより少ない重合条件でも、十分な非共役ポリエン含量を持つ共重合体を製造するという面において、さらなる改善の余地があった。
国際公開WO2009/081794号 国際公開WO2009/081792号
特許文献1,2に開示された製造方法によって、上述した、高温重合時に生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量を高めること、および高い重合活性でエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することを高いレベルで同時に実現することができたが、非共役ポリエンの添加量がより少ない重合条件でも、十分な非共役ポリエン含量を持つ共重合体を製造する技術が求められている。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、高温重合時に生成する共重合体の分子量を高めること、および高い重合活性で共重合体を製造することを同時に高いレベルで実施しつつ、非共役ポリエンの添加量がより少ない重合条件でも、十分な非共役ポリエン含量を持つエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造するための重合触媒を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明は、特定の構造を有する架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒である。本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
(A)下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物、ならびに、
(B)(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B−3)架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
を含むオレフィン重合触媒。
Figure 2019151700
式中、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、
1、R2、R3、R4、R7およびR8は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、
5およびR6は、アリール基または置換アリール基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、
1からR6までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、
AおよびBは、硫黄原子、酸素原子またはCR9であり、R9は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、Aが硫黄原子または酸素原子である場合、BはCR9であり、Bが硫黄原子または酸素原子である場合、AはCR9であり、AおよびBを含む環は可能な位置で二重結合を有し、
Qはハロゲン原子、炭素数1から20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、
nは1から4の整数であり、
jは1から4の整数である。
[2]
前記式[I]におけるnが1であることを特徴とする、項[1]に記載のオレフィン重合触媒。
[3]
前記式[I]におけるAまたはBが硫黄原子であり、他方がCHであることを特徴とする、項[1]または[2]に記載のオレフィン重合触媒。
[4]
前記式[I]におけるR1、R2、R3およびR4が全て水素原子であることを特徴とする、項[3]に記載のオレフィン重合触媒。
[5]
前記式[I]におけるYが炭素原子またはケイ素原子であることを特徴とする、項[4]に記載のオレフィン重合触媒。
[6]
前記式[I]におけるR5およびR6が、アリール基の水素原子の一つ以上をハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性置換基で置換してなる置換アリール基であって、該電子供与性置換基を複数個有する場合にはそれぞれの該電子供与性置換基は同一でも異なっていてもよく、該電子供与性置換基以外の、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基を有していてもよく、該置換基を複数個有する場合にはそれぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい置換アリール基であることを特徴とする、項[5]に記載のオレフィン重合触媒。
[7]
前記式[I]におけるR5およびR6が、前記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換アリール基であることを特徴とする、項[6]に記載のオレフィン重合触媒。
[8]
前記式[I]におけるR5およびR6が、前記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換フェニル基であることを特徴とする、項[7]に記載のオレフィン重合触媒。
[9]
前記式[I]におけるMがジルコニウム原子またはハフニウム原子であることを特徴とする、項[1]〜[8]のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒。
[10]
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと共役ポリエンとの共重合に用いられることを特徴とする、項[1]〜[9]のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒。
本発明に係る特定の構造を有する架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレン、α−オレフィンおよび非共役ポリエンを共重合することにより、以下の効果(1)〜(3)を同時に高いレベルでバランス良く実現し、これにより高い生産性かつ低コストで加工材料として優れた性能を有するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することが可能となるため、産業への貢献は極めて大きくかつ秀逸である。
効果(1):高分子量のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することが可能となる。これにより、高温重合においても生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量を所望の高い値に保つことができるため、高温重合を実施することが可能となる。特に高温の溶液重合においては、生成した共重合体を含む重合溶液の粘度が低下するため、低温重合時に比べて重合器内の共重合体の濃度を上げることが可能となり、結果として重合器当りの生産性が大幅に向上する。さらには、高温重合を実施することにより、重合器の除熱コストが大幅に低減される。
効果(2):高い非共役ポリエン共重合性能でエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することが可能となる。これにより、ある所望の非共役ポリエン含有量のオレフィン共重合体を製造する際、添加する非共役ポリエンの量を低減することが可能となり、その結果、重合溶液中の未反応非共役ポリエンの残存量が減るため、これを重合後工程で除去する際の負荷が軽減されるという利点が得られ、生産性の向上に繋がる。
効果(3):高い重合活性でエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を製造することが可能となる。これにより、触媒コストが低減されるのはもちろんのこと、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体中の触媒残渣が低減されるため、脱灰処理プロセスが不要となり、生産コストが低減されるという利点が得られる。
本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明のオレフィン重合触媒は、上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)、および上述した化合物(B)を含むことを特徴としている。
<架橋メタロセン化合物(A)>
架橋メタロセン化合物(A)は、上記一般式[I]で表される。式[I]中のY、M、R1〜R8、A、B、Q、nおよびjを以下に説明する。
(Y、M、R 1 〜R 8 、A、B、Q、nおよびj)
Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子から選ばれ、好ましくは炭素原子またはケイ素原子、より好ましくは炭素原子である。
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、好ましくはジルコニウム原子またはハフニウム原子、より好ましくはジルコニウム原子である。
1、R2、R3、R4、R7およびR8は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R5およびR6は、アリール基または置換アリール基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1からR6までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、互いに結合していなくてもよい。
AおよびBは、硫黄原子、酸素原子またはCR9であり、R9は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、Aが硫黄原子または酸素原子である場合、BはCR9であり、Bが硫黄原子または酸素原子である場合、AはCR9であり、好ましい態様としては、AまたはBが硫黄原子であり、他方がCHである態様が挙げられる。なお、AおよびBを含む環は可能な位置で二重結合を有する。
ここで、炭素数1から20の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基、炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基、炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基が例示される。また、R1からR6までの隣接した置換基が互いに結合して環を形成する場合であれば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基等が例示される。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状飽和炭化水素基であるメチル基、エチル基、n-プロピル基、アリル(allyl)基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカニル基など、分岐状飽和炭化水素基であるイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基、シクロプロピルメチル基などが例示される。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6である。
炭素数3〜20の環状飽和炭化水素基としては、環状飽和炭化水素基であるシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基など、環状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1から17の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-シクロヘキシルシクロヘキシル基、4-フェニルシクロヘキシル基などが例示される。環状飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは5〜11である。
炭素数2〜20の鎖状不飽和炭化水素基としては、アルケニル基であるエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)など、アルキニル基であるエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)などが例示される。鎖状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは2〜4である。
炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基としては、環状不飽和炭化水素基であるシクロペンタジエニル基、ノルボルニル基、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基など、環状不飽和炭化水素基の水素原子が炭素数1から15の炭化水素基で置き換えられた基である3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、4-エチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、ビフェニリル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基(メシチル基)など、直鎖状炭化水素基または分岐状飽和炭化水素基の水素原子が炭素数3から19の環状飽和炭化水素基または環状不飽和炭化水素基で置き換えられた基であるベンジル基、クミル基などが例示される。環状不飽和炭化水素基の炭素数は好ましくは6〜10である。
炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルメチレン基(イソプロピリデン基)、エチルメチレン基、1-メチルエチレン基、2-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、n-プロピレン基などが例示される。アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜6である。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、o-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基、4,4'-ビフェニリレン基などが例示される。アリーレン基の炭素数は好ましくは6から12である。
アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、芳香族化合物から誘導された置換基であるフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基などが例示される。アリール基としては、フェニル基または2-ナフチル基が好ましい。
前記芳香族化合物としては、芳香族炭化水素および複素環式芳香族化合物であるベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、クリセン、ピレン、ピレン、インデン、アズレン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェンなどが例示される。
置換アリール基としては、前述した炭素数3〜20の環状不飽和炭化水素基の例と一部重複するが、前記アリール基が有する1以上の水素原子が炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基により置換されてなる基が挙げられ、具体的には3-メチルフェニル基(m-トリル基)、4-メチルフェニル基(p-トリル基)、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ビフェニリル基、4-(トリメチルシリル)フェニル基、4-アミノフェニル基、4-(ジメチルアミノ)フェニル基、4-(ジエチルアミノ)フェニル基、4-モルフォリニルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、5-メチルナフチル基、2-(6-メチル)ピリジル基などが例示される。また、置換アリール基としては、後述する「電子供与性基含有置換アリール基」も挙げられる。
ケイ素含有基としては、炭素数1から20の炭化水素基において、炭素原子がケイ素原子で置き換えられた基であるトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のアルキルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等のアリールシリル基、ペンタメチルジシラニル基、トリメチルシリルメチル基などが例示される。アルキルシリル基の炭素数は1〜10が好ましく、アリールシリル基の炭素数は6〜18が好ましい。
窒素含有基としては、アミノ基、ニトロ基、N-モルフォリニル基や、上述した炭素数1から20の炭化水素基またはケイ素含有基において、=CH-構造単位が窒素原子で置き換えられた基、-CH2-構造単位が炭素数1から20の炭化水素基が結合した窒素原子で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1から20の炭化水素基が結合した窒素原子またはニトリル基で置き換えられた基であるジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、シアノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピリジニル基などが例示される。窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、N-モルフォリニル基が好ましい。
酸素含有基としては、水酸基や、上述した炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基または窒素含有基において、-CH2-構造単位が酸素原子またはカルボニル基で置き換えられた基、または-CH3構造単位が炭素数1から20の炭化水素基が結合した酸素原子で置き換えられた基であるメトキシ基、エトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシロキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、1-メトキシエチル基、1-エトキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、n-2-オキサブチレン基、n-2-オキサペンチレン基、n-3-オキサペンチレン基、アルデヒド基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トリメチルシリルカルボニル基、カルバモイル基、メチルアミノカルボニル基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基、カルボキシメチル基、エトカルボキシメチル基、カルバモイルメチル基、フラニル基、ピラニル基などが例示される。酸素含有基としては、メトキシ基が好ましい。
ハロゲン原子としては、第17族元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示される。
ハロゲン含有基としては、上述した炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基または酸素含有基において、水素原子がハロゲン原子によって置換された基であるトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基などが例示される。
Qは、ハロゲン原子、炭素数1から20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から、同一のまたは異なる組合せで選ばれる。
ハロゲン原子および炭素数1から20の炭化水素基の詳細は、上述のとおりである。Qがハロゲン原子である場合は、塩素原子が好ましい。Qが炭素数1から20の炭化水素基である場合は、該炭化水素基の炭素数は1から7であることが好ましい。
アニオン配位子としては、メトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などのアルコキシ基、アセテート、ベンゾエートなどのカルボキシレート基、メシレート、トシレートなどのスルホネート基などを例示することができる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などを例示することができる。
nは1から4の整数である。
jは1から4の整数であり、好ましくは2である。
なお、式[I]に関する上記の例示は、本発明の以下の記載においても同様に適用される。
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)において、nは1であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(A−1)は、下記一般式[V]で表わされる。
Figure 2019151700
式[V]において、Y、M、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、A、B、Qおよびjの定義等は上述のとおりである。
該架橋メタロセン化合物(A−1)は、上記一般式[I]におけるnが2から4の整数である化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。さらに、該架橋メタロセン化合物(A−1)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の高分子量化という利点も得られる。
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A−1)において、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であることが好ましい。このような架橋メタロセン化合物(A−2)は、下記一般式[VI]で表わされる。
Figure 2019151700
式[VI]において、Y、M、R5、R6、R7、R8、A、B、Qおよびjの定義等は上述のとおりである。
該架橋メタロセン化合物(A−2)は、上記一般式[V]におけるR1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上が水素原子以外の置換基で置換された化合物に比べ、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。さらに、該架橋メタロセン化合物(A−2)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、重合活性の向上および生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の高分子量化という利点も得られる。また同時に、非共役ポリエンの共重合性能の向上という利点も得られる。
上記一般式[VI]で表される架橋メタロセン化合物(A−2)において、Yは炭素原子であることがさらに好ましい。このような架橋メタロセン化合物(A−3)は、下記一般式[VII]で表わされる。
Figure 2019151700
式[VII]において、M、R5、R6、R7、R8、A、B、Qおよびjの定義等は上述のとおりである。
上記一般式[VII]で表される架橋メタロセン化合物(A−3)において、Aは硫黄原子であり、BはCHであることがさらに好ましい。このような架橋メタロセン化合物(A−4)は、下記一般式[VIII]で表わされる。
Figure 2019151700
式[VIII]において、M、R5、R6、R7、R8、Qおよびjの定義等は上述のとおりである。
該架橋メタロセン化合物(A−4)は、上記一般式[VII]における化合物に比べ、ジチオフェン部分の製法が確立されているために、製造工程が簡素化され、製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。さらに、該架橋メタロセン化合物(A−4)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、該化合物(A−4)は熱的に安定なため、高温での重合活性の向上という利点も得られる。また同時に、非共役ポリエンの共重合性能の向上という利点も得られる。
該架橋メタロセン化合物(A−4)は、例えば下式[IX]のような簡便な方法で合成することが可能である。
Figure 2019151700
式[IX]において、M、R5、R6、R7およびR8の定義等は上述のとおりである。
上記式[IX]において、R5およびR6は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい置換基であるが、一般式R5−C(=O)−R6で表される、このような条件を満たす種々のケトンが一般の試薬メーカーより市販されているため、該架橋メタロセン化合物(A−4)の原料の入手が容易である。また、仮にこのようなケトンが市販されていない場合でも、例えばOlahらによる方法[Heterocycles, 40, 79 (1995)]などにより、該ケトンは容易に合成することが可能である。このように、該架橋メタロセン化合物(A−4)は、上記一般式[V]におけるYがケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子から選ばれる化合物に比べ製造工程が簡素かつ容易であり、製造コストがさらに低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。さらに、該架橋メタロセン化合物(A−4)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のさらなる高分子量化という利点も得られる。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6はアリール基および置換アリール基から選ばれる基であることが好ましい。該架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、重合活性のさらなる向上および生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のさらなる高分子量化という利点が得られる。また同時に、非共役ポリエンの共重合性能の向上という利点も得られる。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6はアリール基および置換アリール基から選ばれる同一の基である。R5およびR6をこのように選択することにより、該架橋メタロセン化合物の合成工程が簡素化され、さらに製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6は同一の置換アリール基であることが好ましい。該架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のさらなる高分子量化という利点が得られる。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6は、アリール基の水素原子の一つ以上をハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性置換基で置換してなる置換アリール基であって、該電子供与性置換基を複数個有する場合にはそれぞれの該電子供与性置換基は同一でも異なっていてもよく、該電子供与性置換基以外の、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基を有していてもよく、該置換基を複数個有する場合にはそれぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい置換アリール基(以下「電子供与性基含有置換アリール基」ともいう。)であることが好ましい。該架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のさらなる高分子量化という利点が得られる。
ハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基は、以下のように定義および例示される。ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L. P. Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則で求められた置換基定数にはベンゼン環のパラ位に置換した際のσpおよびメタ位に置換した際のσmがあり、これらの値は多くの一般的な文献に見出すことができる。例えば、HanschおよびTaftによる文献[Chem. Rev., 91, 165 (1991)]には非常に広範な置換基について詳細な記載がなされている。ただし、これらの文献に記載されているσpおよびσmは、同じ置換基であっても文献によって値が僅かに異なる場合がある。本発明ではこのような状況によって生じる混乱を回避するために、記載のある限りの置換基においてはHanschおよびTaftによる文献[Chem. Rev., 91, 165 (1991)]のTable 1(168-175頁)に記載された値をハメット則の置換基定数σpおよびσmと定義する。本発明においてハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基とは、該電子供与性基がフェニル基のパラ位(4位)に置換している場合はσpが-0.2以下の電子供与性基であり、フェニル基のメタ位(3位)に置換している場合はσmが-0.2以下の電子供与性基である。また、該電子供与性基がフェニル基のオルト位(2位)に置換している場合、またはフェニル基以外のアリール基の任意の位置に置換している場合は、σpが-0.2以下の電子供与性基である。
ハメット則の置換基定数σpまたはσmが-0.2以下の電子供与性置換基としては、p-アミノ基(4-アミノ基)、p-ジメチルアミノ基(4-ジメチルアミノ基)、p-ジエチルアミノ基(4-ジエチルアミノ基)、m-ジエチルアミノ基(3-ジエチルアミノ基)などの窒素含有基、p-メトキシ基(4-メトキシ基)、p-エトキシ基(4-エトキシ基)などの酸素含有基、p-t-ブチル基(4-t-ブチル基)などの三級炭化水素基、p-トリメチルシロキシ基(4-トリメチルシロキシ基)などのケイ素含有基などを例示することができる。尚、本発明で定義されるハメット則の置換基定数σpまたはσmが-0.2以下の電子供与性置換基は、HanschおよびTaftによる文献[Chem. Rev., 91, 165 (1991)]のTable 1(168-175頁)に記載された置換基に限定されない。該文献に記載のない置換基であっても、ハメット則に基いて測定した場合の置換基定数σpまたはσmがその範囲となるであろう置換基は、本発明で定義するハメット則の置換基定数σpまたはσmが-0.2以下の電子供与性基に含まれる。このような置換基としては、p-N-モルフォリニル基(4-N-モルフォリニル基)、m-N-モルフォリニル基(3-N-モルフォリニル基)などを例示することができる。
電子供与性基含有置換アリール基において、該電子供与性置換基が複数個置換している場合それぞれの電子供与性置換基は同一でも異なっていてもよく、該電子供与性置換基以外に炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基が置換していてもよく、該置換基が複数個置換している場合それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよいが、一つの置換アリール基に含まれる該電子供与性置換基および該置換基の各々のハメット則の置換基定数σの総和は-0.15以下であることが好ましい。このような置換アリール基としては、m,p-ジメトキシフェニル基(3,4-ジメトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メトキシフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メチルフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m-メチルフェニル基(4-メトキシ-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m,m-ジメチルフェニル基(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル基)などが例示される。
電子供与性基含有置換アリール基が有してもよい炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基としては、上述したこれらの原子または置換基の具体例を挙げることができる。
本出願人は、種々の架橋メタロセン化合物について鋭意検討した結果、上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6を、特にハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性置換基が一つ以上置換した電子供与性基含有置換アリール基とした場合に、該架橋メタロセン化合物(A−4)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する際、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量がさらに高くなることを初めて見出した。
本発明の架橋メタロセン化合物(A−4)のような有機金属錯体触媒によるオレフィンの配位重合においては、触媒の中心金属上でオレフィンが繰り返し重合することにより、生成するオレフィン重合体の分子鎖が生長し(生長反応)、該オレフィン重合体の分子量が増大することが知られている。一方、連鎖移動と呼ばれる反応において、オレフィン重合体の分子鎖が触媒の中心金属から解離することにより、該分子鎖の生長反応が停止し、従って該オレフィン重合体の分子量の増大も停止することも知られている。以上より、オレフィン重合体の分子量は、それを生成する有機金属錯体触媒に固有の、生長反応の頻度と連鎖移動反応の頻度との比率によって特徴づけられる。即ち、生長反応の頻度と連鎖移動反応の頻度との比が大きいほど生成するオレフィン重合体の分子量は高くなり、逆に小さいほど分子量は低くなるという関係である。ここで、それぞれの反応の頻度はそれぞれの反応の活性化エネルギーから見積もることができ、活性化エネルギーが低い反応はその頻度が高く、逆に活性化エネルギーが高い反応はその頻度が低いと見做すことができると考えられる。一般に、オレフィン重合における生長反応の頻度は連鎖移動反応の頻度に比して十分に高い、即ち生長反応の活性化エネルギーは連鎖移動反応の活性化エネルギーに比して十分に低いことが知られている。従って、連鎖移動反応の活性化エネルギーから生長反応の活性化エネルギーを減じた値(以下、ΔEC)は正となり、この値が大きいほど連鎖移動反応の頻度に比して生長反応の頻度が大きくなり、結果生成するオレフィン重合体の分子量が高くなることが推定される。このようにして行うオレフィン重合体の分子量の推定の妥当性は、例えばLaineらの計算結果によっても裏付けられている[Organometallics, 30, 1350 (2011)]。上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)においては、R5およびR6を、特にハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性置換基が一つ以上置換した電子供与性基含有置換アリール基とした場合に、上記ΔECが増大し、該架橋メタロセン化合物(A−4)を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する際に、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量が高くなるものと推測される。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6に含まれる電子供与性置換基は、窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基であることがより好ましく、酸素含有基であることがさらに好ましい。これらの置換基はハメット則におけるσが特に低く、高温重合時に生成する共重合体の分子量を高める効果を発揮する。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6は、上記電子供与性置換基としての窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基を含む置換フェニル基であることがより好ましく、酸素含有基を含む置換フェニル基であることがさらに好ましい。例えば上記式[IX]のような方法に従って合成する場合、原料となる種々のベンゾフェノンが一般の試薬メーカーより市販されているため原料の入手が容易となり、製造工程が簡素化され、さらに製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
ここで、上記電子供与性置換基としての窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基を含む置換フェニル基としては、o-アミノフェニル基(2-アミノフェニル基)、p-アミノフェニル基(4-アミノフェニル基)、o-(ジメチルアミノ)フェニル基(2-(ジメチルアミノ)フェニル基)、p-(ジメチルアミノ)フェニル基(4-(ジメチルアミノ)フェニル基)、o-(ジエチルアミノ)フェニル基(2-(ジエチルアミノ)フェニル基)、p-(ジエチルアミノ)フェニル基(4-(ジエチルアミノ)フェニル基)、m-(ジエチルアミノ)フェニル基(3-(ジエチルアミノ)フェニル基)、o-メトキシフェニル基(2-メトキシフェニル基)、p-メトキシフェニル基(4-メトキシフェニル基)、o-エトキシフェニル基(2-エトキシフェニル基)、p-エトキシフェニル基(4-エトキシフェニル基)、o-N-モルフォリニルフェニル基(2-N-モルフォリニルフェニル基)、p-N-モルフォリニルフェニル基(4-N-モルフォリニルフェニル基)、m-N-モルフォリニルフェニル基(3-N-モルフォリニルフェニル基)、o,p-ジメトキシフェニル基(2,4-ジメトキシフェニル基)、m,p-ジメトキシフェニル基(3,4-ジメトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メトキシフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メチルフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m-メチルフェニル基(4-メトキシ-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m,m-ジメチルフェニル基(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル基)などが例示される。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6は、上記Yとしての炭素原子との結合に対するメタ位および/またはパラ位に上記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換フェニル基であることがさらに好ましい。例えば上記式[IX]のような方法に従って合成する場合、該基がオルト位に置換した場合に比べて合成が容易となり、製造工程が簡素化され、さらに製造コストが低減され、ひいてはこの架橋メタロセン化合物を用いることでエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造コストが低減されるという利点が得られる。
上記一般式[VIII]で表される架橋メタロセン化合物(A−4)において、R5およびR6が、上記Yとしての炭素原子との結合に対するメタ位および/またはパラ位に上記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換フェニル基である場合、該酸素含有基は下記一般式[III]で表される基であることがさらに好ましい。
10−O− …[III]
式[III]において、R10は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、Oの右に描かれた線はフェニル基との結合を表す。
10としての炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基およびハロゲン含有基としては、上述したこれらの置換基の具体例を挙げることができる。
このような架橋メタロセン化合物(A−5)は、下記一般式[X]で表わされる。
Figure 2019151700
式[X]において、M、R7、R8、Qおよびjの定義等は上述のとおりである。R10およびR11は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R10の隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、OR10はハメット則の置換基定数σ-0.2以下の酸素含有基であり、該酸素含有基が複数個存在する場合にはそれぞれの酸素含有基は互いに同一でも異なっていてもよく、nは1から3の整数であり、mは0から4の整数である。
該架橋メタロセン化合物(A−5)は、上記一般式[III]で表されるOR10のハメット則におけるσがさらに低いため、高温重合時に生成する共重合体の分子量を高める効果を発揮する。
上記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物(A)、上記一般式[V]で表される架橋メタロセン化合物(A−1)、上記一般式[VI]で表される架橋メタロセン化合物(A−2)、上記一般式[VII]で表される本発明の架橋メタロセン化合物(A−3)、上記一般式[VIII]で表される本発明の架橋メタロセン化合物(A−4)または上記一般式[X]で表される本発明の架橋メタロセン化合物(A−5)において、Mはジルコニウム原子であることがさらに好ましい。Mがジルコニウム原子である上記架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合触媒の存在下でエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合する場合、生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のさらなる高分子量化、および非共役ポリエンの共重合性能の向上という利点が得られる。
(架橋メタロセン化合物(A)の例示等)
このような架橋メタロセン化合物(A)としては、
[ジメチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジエチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジ-n-ブチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、 [ジシクロペンチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[シクロペンチリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[シクロヘキシリデン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ジフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジ-1-ナフチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジ-2-ナフチルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ビス(3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3,4-ジメチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-n-ヘキシルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-シクロヘキシルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-t-ブチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ビス(3-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3,4-ジメトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-メトキシ-3-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-メトキシ-3,4-ジメチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-エトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-フェノキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス{4-(トリメチルシロキシ)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ビス{3-(ジメチルアミノ)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス{4-(ジメチルアミノ)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-N-モルフォリニルフェニル)(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ビス{4-(トリメチルシリル)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ビス(3-クロロフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-クロロフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(3-フルオロフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス(4-フルオロフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス{3-(トリフルオロメチル)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ビス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[メチルフェニルメチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メチルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[メチル{4-(ジメチルアミノ)フェニル}メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[メチル(4-N-モルフォリニルフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ジメチルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジエチルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジシクロヘキシルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルシリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジ(4-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[ジメチルゲルミレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、[ジフェニルゲルミレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド、
[1-(η5-シクロペンタジエニル)-2-(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))エチレン]ジルコニウムジクロリド、[1-(η5-シクロペンタジエニル)-3-(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))プロピレン]ジルコニウムジクロリド、[1-(η5-シクロペンタジエニル)-2-(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))-1,1,2,2-テトラメチルシリレン]ジルコニウムジクロリド、[1-(η5-シクロペンタジエニル)-2-(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))フェニレン]ジルコニウムジクロリド、および
これらの化合物のジルコニウム原子をハフニウム原子に置き換えた化合物またはクロロ配位子をメチル基に置き換えた化合物
などが例示されるが、架橋メタロセン化合物(A)はこれらの例示に限定されない。
<化合物(B)>
本発明のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の製造方法は、上記の架橋メタロセン化合物(A)、ならびに有機金属化合物(B−1)、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)および架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含むオレフィン重合触媒の存在下で、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとを共重合することを特徴としている。
有機金属化合物(B−1)として、具体的には下記のような周期律表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
(B−1a)一般式 Ra mAl(ORb)npq
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1から15、好ましくは1から4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である)
で表される有機アルミニウム化合物。
このような化合物として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリ-n-アルキルアルミニウム、
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリ-2-メチルブチルアルミニウム、トリ-3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ-2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐状アルキルアルミニウム、
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム、
トリフェニルアルミニウム、トリ(4-メチルフェニル)アルミニウムなどのトリアリールアルミニウム、
ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、
一般式(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≦2xである)で表されるイソプレニルアルミニウムなどのアルケニルアルミニウム、
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド、
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド、
一般式Ra 2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのアルキルアルミニウムアリーロキシド、
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド、
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、
エチルアルミニウムジクロリドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム、
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド、
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドおよびその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム、
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム
などを例示することができる。また、上記一般式Ra mAl(ORb)npqで表される化合物に類似する化合物も使用することができ、例えば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C2H5)2AlN(C2H5)Al(C2H5)2などを挙げることができる。
(B−1b)一般式 M2AlRa 4
(式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数1から15、好ましくは1から4の炭化水素基を示す。)
で表される周期律表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
このような化合物として、LiAl(C25)4、LiAl(C715)4 などを例示することができる。
(B−1c)一般式 Rab3
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1から15、好ましくは1から4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである)
で表される周期律表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)としては、従来公知のアルミノキサンをそのまま使用することができる。具体的には、下記一般式[XI]
Figure 2019151700
および/または下記一般式[XII]
Figure 2019151700
(式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す)
で表わされる化合物を挙げることができ、特にRがメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが利用される。これらアルミノキサン類に若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。本発明においてエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合を高温で行う場合には、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物も適用することができる。また、特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサンなども好適に利用できる。なお、本発明のオレフィン重合で用いられることのある「ベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物」とは、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であり、ベンゼンに対して不溶性または難溶性である化合物である。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、上記(B−1a)の有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。これらの有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いることができる。
また、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)として、下記一般式[XIII]で表されるような修飾メチルアルミノキサン等も挙げることができる。
Figure 2019151700
式中、Rは炭素数1から10の炭化水素基、mおよびnはそれぞれ独立に2以上の整数を示す。
この修飾メチルアルミノキサンはトリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて調製されるものである。このような化合物は一般にMMAOと呼ばれている。このようなMMAOはUS4960878公報およびUS5041584工法で挙げられている方法で調製することが出来る。また、東ソー・ファインケム社等からもトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製した、Rがイソブチル基であるものがMMAOやTMAOといった名称で市販されている。このようなMMAOは各種溶媒への溶解性および保存安定性を改良したアルミノキサンであり、具体的には上記式[XI]、[XII]で表わされる化合物のうちのベンゼンに対して不溶性または難溶性の化合物とは違い、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解する。
さらに、有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)として、下記一般式[XIV]で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物も挙げることができる。
Figure 2019151700
式中、Rcは炭素数1から10の炭化水素基を示す。Rdは、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から10の炭化水素基を示す。
架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)(以下、「イオン化イオン性化合物」または単に「イオン性化合物」と略称する場合がある。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。ただし、前述の(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物は含まない。
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物は、下記一般式[XV]で表されるホウ素化合物である。
Figure 2019151700
式中、Re+としては、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。RfからRiは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、好ましくは置換アリール基である。
上記カルベニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムカチオンなどの三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
上記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n-プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキル置換アンモニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
上記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(4-メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
e+としては、上記具体例のうち、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルベニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、カルベニウムカチオンを含む化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス{3,5-ジ-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリス(4-メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、トリアルキル置換アンモニウムカチオンを含む化合物として、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(2-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(4-メチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{4-(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムなどを例示することができる。
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンを含む化合物として、N,N-ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、 N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、 N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル}ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどを例示することができる。
本発明において好ましく使用されるイオン化イオン性化合物のうち、ジアルキルアンモニウムカチオンを含む化合物として、ジ-n-プロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
その他、本出願人によって開示(特開2004-51676号公報)されているイオン性化合物も制限無く使用が可能である。
上記のイオン性化合物(B−3)は、1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
有機金属化合物(B−1)としては、市販品のために入手が容易なトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましい。このうち、取り扱いが容易なトリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)としては、市販品のために入手が容易なメチルアルミノキサン、およびトリメチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムを用いて調製したMMAOが好ましい。このうち、各種溶媒への溶解性および保存安定性が改良されたMMAOが特に好ましい。
架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)としては、市販品として入手が容易であり、かつ重合活性向上への寄与が大きいことから、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
(B−1)から(B−3)の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)としては、重合活性が大きく向上することから、トリイソブチルアルミニウムとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せ、およびトリイソブチルアルミニウムとN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートとの組合せが特に好ましい。
<担体(C)>
本発明では、オレフィン重合触媒の構成成分として、必要に応じて担体(C)を用いてもよい。
本発明で用いられることのある担体(C)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25 、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.5から300 μm、好ましくは1.0から200 μmであって、比表面積が50から1000 m2/g、好ましくは100から700 m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3から3.0 cm3/gの範囲にある。このような担体は、必要に応じて100から1000℃、好ましくは150から700℃で焼成してから使用される。
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いてもよい。
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって、構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含まれるイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質(ゲスト化合物)を導入することをインターカレーションという。ゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4などの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)などを加水分解重縮合して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
担体(C)としての有機化合物としては、粒径が0.5から300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2から14のα−オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
<上記オレフィン重合触媒を用いた、エチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合>
本発明のオレフィン重合触媒は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと非共役ポリエンとの共重合に用いることが好ましい。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサンなどの炭素数3から20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィン、例えば炭素数3から10の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。これらのα−オレフィンは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。またその選択については、生成する共重合体の特性上最も望ましいものとなるように選ぶことが可能である。例えば、本発明で得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体または当共重合体を含む混合物を加硫処理した際の物性が望ましいものとなるようにα−オレフィンの種類を選択することができる。
非共役ポリエンとしては、非共役不飽和結合を2個以上有する化合物が制限なく使用できるが、例えば後述の非共役環状ポリエン、非共役鎖状ポリエンなどが挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
[非共役環状ポリエン]
非共役環状ポリエンとして具体的には、例えば下記一般式[IV]で表される化合物が挙げられる。
Figure 2019151700
式[IV]において、nは0から2の整数であり、
10、R11、R12およびR13は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、
10からR13までの任意の二つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、該環は二重結合を含んでいてもよく、R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成していてもよく、R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成していてもよく、
以下の(i)から(iv)の要件の少なくとも一つが満たされる。
(i)R10からR13の少なくとも一つは、二重結合を一つ以上有する炭化水素基である。
(ii)R10からR13までの任意の二つの置換基が互いに結合して環を形成し、該環が二重結合を含んでいる。
(iii)R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成している。
(iv)R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成している。
上記一般式[IV]において、R10、R11、R12およびR13として挙げた、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基の具体例としては、上記一般式[I]の説明の中で挙げられたこれらの原子および置換基の具体例が挙げられる。
上記一般式[IV]において、R10、R11、R12およびR13のいずれか一つ以上が、二重結合を一つ以上有する炭化水素基である場合、該炭化水素基としてはエテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルエテニル基(イソプロペニル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,4-ヘキサジエニル基などが例示される。例えばR10がエテニル基(ビニル基)の場合、上記一般式[IV]の化合物は下記一般式[IV-I]で表すことができる。
Figure 2019151700
式[IV-I]において、nは0から2の整数であり、
11、R12およびR13は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、
11からR13の任意の二つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、該環は二重結合を含んでいてもよく、R12とR13とでアルキリデン基を形成していてもよく、R11とR13とが互いに結合して二重結合を形成していてもよい。
上記一般式[IV]において、R10からR13までの任意の二つの置換基が互いに結合して環を形成し、該環が二重結合を含んでいる場合、上記一般式[IV]の化合物は、例えば下記一般式[IV-II]または[IV-III]で表すことができる。
Figure 2019151700
式[IV-II]および[IV-III]において、nは0から2の整数であり、
11、R12およびR13は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、
11からR13の任意の二つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、該環は二重結合を含んでいてもよく、R12とR13とでアルキリデン基を形成していてもよく、R11とR13とが互いに結合して二重結合を形成していてもよい。
上記一般式[IV]において、R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成している場合、該アルキリデン基は通常炭素数1から20のアルキリデン基であり、具体的な例としてはメチレン基(CH2=)、エチリデン基(CH3CH=)、プロピリデン基(CH3CH2CH=)およびイソプロピリデン基((CH3)2C=)などが挙げられる。例えば、R10とR11とでエチリデン基を形成している場合、上記一般式[IV]の化合物は下記一般式[IV-IV]で表すことができる。
Figure 2019151700
式[IV-IV]において、nは0から2の整数であり、
12およびR13は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、
12とR13とは互いに結合して環を形成していてもよく、該環は二重結合を含んでいてもよく、R12とR13とでアルキリデン基を形成していてもよい。
上記一般式[IV]において、R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成している場合、上記一般式[IV]の化合物は、例えば下記一般式[IV-V]で表すことができる。
Figure 2019151700
式[IV-V]において、nは0から2の整数であり、
11およびR13は水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、該炭化水素基は二重結合を有していてもよく、
11とR13とは互いに結合して環を形成していてもよく、該環は二重結合を含んでいてもよい。
上記一般式[IV]で表される非共役環状ポリエンのうち、R10からR13の少なくとも一つが二重結合を一つ以上有する炭化水素基である化合物として、例えば5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)および下記の化合物などが例示される。これらのうち、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましい。
Figure 2019151700
上記一般式[IV]で表される非共役環状ポリエンのうち、R10からR13までの任意の二つの置換基が互いに結合して環を形成し、該環が二重結合を含んでいる化合物として、例えばジシクロペンタジエン(DCPD)、ジメチルジシクロペンタジエンおよび下記の化合物などが例示される。これらのうち、ジシクロペンタジエン(DCPD)が好ましい。
Figure 2019151700
上記一般式[IV]で表される非共役環状ポリエンのうち、R10とR11とで、またはR12とR13とでアルキリデン基を形成している化合物として、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネンおよび下記の化合物などが例示される。これらのうち、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
Figure 2019151700
上記一般式[IV]で表される非共役環状ポリエンのうち、R10とR12とが、またはR11とR13とが互いに結合して二重結合を形成している化合物としては、下記のものが好ましい。
Figure 2019151700
上記一般式[IV]で表される非共役環状ポリエンとしては、nが0の非共役環状ポリエンが好ましく、特に上記一般式[IV]においてnが0のアルキリデン基置換非共役環状ポリエン、上記一般式[IV]においてnが0の二重結合含有環置換非共役環状ポリエン、nが0の二重結合含有炭化水素基置換非共役環状ポリエンが好ましい。具体的には、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)がより好ましい。このうち5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)または5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が特に好ましい。
[非共役鎖状ポリエン]
非共役鎖状ポリエンとして具体的には、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、6,7−ジメチル−1,6−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエンなどが挙げられる。
他の非共役鎖状ポリエンとしては、例えば1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のα,ω−ジエン等が挙げられる
また、他の非共役鎖状ポリエンとしては、例えば下記一般式[XVI-I]で表される非共役トリエンまたはテトラエンが挙げられる。
Figure 2019151700
式[XVI-I]において、pおよびrは、0または1(ただしpとrとは同時に0ではない)、
qは0〜5の整数(ただしpとrの両方が1の場合qは0ではない)、
sは1〜6の整数、
14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、
21は炭素数1〜3のアルキル基、
22は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または−(CH2)n−CR23=C(R24)R25で表される基(ここでnは1〜5の整数、R23およびR24はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、R25は炭素数1〜3のアルキル基である)
である。ただしpとrの両方が1の場合、R22は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。
上記一般式[XVI-I]で示される非共役トリエンまたはテトラエンの中でも下記一般式[XVI-II]で示される非共役トリエンが好ましい。
Figure 2019151700
式[XVI-II]において、R16、R17、R20、R21およびR22はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはエチル基である。ただし、R21とR22とが同時に水素原子になることはない。
なお、上記一般式[XVI-II]で示される非共役トリエンは、上記一般式[XVI-I]で示される非共役トリエンまたはテトラエンにおいてpが0、qが0、rが1、sが2、R18およびR19が水素原子である非共役トリエンである。さらに上記一般式[XVI-II]で示される非共役トリエンの中でも、R20およびR22がどちらもメチル基である化合物が好ましい。
上記一般式[XVI-I]で表される非共役トリエンまたはテトラエンとしては、具体的には下記化合物などが挙げられる(ただし、上記一般式[XVI-II]に含まれる化合物は除く)。
Figure 2019151700
Figure 2019151700
Figure 2019151700
上記一般式[XVI-II]で表される非共役トリエンとしては、具体的には下記化合物などが挙げられる。
Figure 2019151700
上記一般式[XVI-I]で表される非共役トリエンまたはテトラエンは公知の方法で製造することができ、その方法は例えば本出願人による特開平9−235327号公報、特開2001−114837号公報などに詳細に記載されている。
本発明のオレフィン重合触媒を用いることにより、高分子量のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の高温重合が可能となる。すなわち、上記オレフィン重合触媒を使用することにより、高温重合時に生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量を所望の高い値に保つことができる。溶液重合においては、生成したエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を含む重合溶液の粘度が高温で低下するため、低温重合時に比べて重合器内のエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の濃度を上げることが可能となり、結果として重合器当りの生産性が向上する。本発明のオレフィン重合触媒を用いたエチレン、α−オレフィンおよび非共役ポリエンの共重合は、溶液重合、懸濁重合(スラリー重合)などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、このように、本発明の効果を最大限享受し得るという観点からは溶液重合が特に好ましい。
上記重合触媒の各成分の使用法、添加順序は任意に選ばれる。また、触媒中の各成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
架橋メタロセン化合物(A)(以下「成分(A)」ともいう。)は、反応容積1リットル当り、通常10-9から10-1モル、好ましくは10-8から10-2モルになるような量で用いられる。
有機金属化合物(B−1)(以下「成分(B−1)」ともいう。)は、成分(B−1)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−1)/M]が通常0.01から50000、好ましくは0.05から10000となるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(B−2)(以下「成分(B−2)」ともいう。)は、成分(B−2)中のアルミニウム原子と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−2)/M]が、通常10から5000、好ましくは20から2000となるような量で用いられる。
架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B−3)(以下「成分(B−3)」ともいう。)は、成分(B−3)と、成分(A)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(B−3)/M]が通常1から10000、好ましくは1から5000となるような量で用いられる。
重合温度は通常50℃から300℃、好ましくは80℃から250℃、更に好ましくは100℃から200℃である。上述の通り、本発明においては、高温重合を行うことによって生産性の向上および生産コストの低減という利点が得られるが、重合温度が300℃を過度に超えると得られるポリマーに劣化が起こる場合があるので好ましくない。また、得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の性状の観点から、重合温度が100℃から200℃の領域において、フィルム等多くの産業分野で好適に用いられるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体を効率良く生産することが可能である。
重合圧力は、通常、常圧〜10MPaゲージ圧(MPa-G)、好ましくは常圧〜8 MPa-Gである。
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに、重合を反応条件の異なる二つ以上の重合器で連続的に行うことも可能である。
得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する成分(B)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体1kgあたり0.001から5000NL程度が適当である。
液相重合法において用いられる重合溶媒は、通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。重合溶媒としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられ、特に好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサンが挙げられる。重合対象であるα−オレフィン自身を重合溶媒として用いることもできる。尚、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も重合溶媒として使用することが出来るが、環境への負荷軽減の視点および人体健康への影響の最少化の視点からは、これらの使用は好ましくない。
本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体は、(i)エチレンから誘導される構造単位(エチレン単位)と、(ii)炭素数3以上のα−オレフィンから誘導される構造単位(α−オレフィン単位)とを、モル比[(i)/(ii)]で表して通常99/1〜1/99の範囲で含有するが、特に制限はない。
本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のエチレンに由来する構造単位の含有量は、通常50 mol%以上である。
また本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の非共役ポリエン化合物に由来する構造単位は、特に制限はないが、全構造単位中、通常0.1〜49 mol%、好ましくは0.2〜8 mol%、さらに好ましくは0.3〜5 mol%の割合の範囲にある。
本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造される、エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、特に制限はないが、通常0.02〜20 dl/g、好ましくは0.05〜10 dl/gの範囲にある。[η]が当該範囲内にあると、成形加工性に優れる点で好ましい。
本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体は、下記式[XVII]により算出されるB値が、B値≧1.05であることが好ましい。
B値=(c+d)/[2×a×(e+f)] ‥‥[XVII]
式[XVII]中、a、eおよびfはそれぞれ前記エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体中のエチレンモル分率、α−オレフィンモル分率および非共役ポリエンモル分率であり、cはエチレン-α−オレフィンダイアッドモル分率、dはエチレン-非共役ポリエンダイアッドモル分率である。
B値は、共重合体中における共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示す指標であり、上記式[XVII]中のa、c、d、e、fは、13C NMRスペクトルを測定し、J. C. Randall [Macromolecules, 15, 353 (1982)]、J. Ray [Macromolecules, 10, 773 (1977)]らの報告に基づいて求めることができる。
B値≧1.05であるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体は、B値<1.05であるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体と比べ、モノマーの交互共重合性が強く、結果、エチレン平均連鎖長が短く、重要物性の一つである低温特性が良好である。またこのB値が大きいほど、α−オレフィン単位または非共役ポリエン単位のブロック的連鎖が短く(交互共重合性が強く)、α−オレフィン単位および非共役ポリエン単位の分布が一様であることを示している。一方、B値が小さいほど非共役ポリエン系共重合体のα−オレフィン単位および非共役ポリエン単位の分布が一様でなく(交互共重合性が弱く)、ブロック的連鎖が長い。このブロック的連鎖の長さがエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の物性面における特性に影響を及ぼすことになり、例えば、B値が大きいほどブロック的連鎖が短く、良好な低温特性を示す。また、B値が1.00よりも小さいほどエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のポリマー鎖中の組成分布は広く、このような共重合体は、組成分布の狭い共重合体に比べて、例えば加硫した場合には強度などの物性を十分に発現しないことがある。
本発明のオレフィン重合触媒を用いることにより、B値≧1.05であるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体が得られるが、例えば、チタン系非メタロセン触媒を用いた場合、あるいは特表2001−522398号公報記載の幾何拘束型触媒を用いた場合、得られるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のB値は1.05未満である。
本発明のオレフィン重合触媒を用いて製造されるエチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体のGPCにより測定された重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常1.0から4.0、好ましくは1.2から3.5、さらに好ましくは1.5から3.2である。Mw/Mnが当該範囲内にあると、機械強度と加工性(混練、押出)のバランスの点で好ましい。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
架橋メタロセン化合物およびその前駆体の構造は、1H NMRスペクトル(270 MHz、日本電子GSH-270)、FD-質量(以下FD-MS)スペクトル(日本電子SX-102A)等を測定し、決定した。
エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体の物性/性状は以下の方法で測定した。
[エチレン含有量、プロピレン含有量、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)含有量]
o-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1[vol/vol%])を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅4.7・sec(45Oパルス)測定条件下(100 MHz、日本電子ECX400P)、または測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅5.0・sec(45Oパルス)測定条件下(125 MHz、ブルカー・バイオスピンAVANCEIIIcryo-500)にて13C NMRスペクトルを測定し、算出した。
[B値]
o-ジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1[vol/vol%])を測定溶媒とし、測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅4.7・sec(45Oパルス)測定条件下(100 MHz、日本電子ECX400P)、または測定温度120℃、スペクトル幅250ppm、パルス繰り返し時間5.5秒、パルス幅5.0・sec(45Oパルス)測定条件下(125 MHz、ブルカー・バイオスピンAVANCEIIIcryo-500)にて13C NMRスペクトルを測定し、下記一般式[XVII]に基づき算出した。
B値=(c+d)/[2×a×(e+f)] ‥[XVII]
式[XVII]中、a、eおよびfはそれぞれ前記エチレン/α−オレフィン/非共役ポリエン共重合体中のエチレンモル分率、α−オレフィンモル分率および非共役ポリエンモル分率であり、cはエチレン-α−オレフィンダイアッドモル分率、dはエチレン-非共役ポリエンダイアッドモル分率である。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC 2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムはTSKgel GMH6-HT:2本およびTSKgel GMH6-HTL:2本(いずれも東ソー社製)であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)と酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%とを用い、前記移動相は1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500μlとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×105については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×105についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。各種平均分子量は、汎用校正の手順に従い、ポリスチレン分子量換算として計算した。
[重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)]
上記測定法により測定したMwを、同じく上記測定法により測定したMnで除して算出した。
[極限粘度([η])]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。重合体約20 mgをデカリン15 mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5 ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として採用した。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[実施例1]
[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドの合成
(i) ビス(4-メトキシフェニル)(シクロペンタジエニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン)メタンの合成
窒素雰囲気下、100 ml三口フラスコに脱水シクロペンチルメチルエーテル 30 ml、2,5-ジメチル-7H-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン 2.29 g (11.1 mmol)を装入した。この溶液にn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.55 M) 7.16 ml (11.1 mmol)を氷水浴下、5分かけて滴下した。室温で1時間攪拌した。6,6-ビス(4-メチルフェニル)フルベン 2.90 g (10.0 mmol)を加え、室温で15時間撹拌した。反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を装入し、有機層を分離し、水層を塩化メチレン 300 mlで抽出し、先の有機層と合わせて水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄することでビス(4-メトキシフェニル)(シクロペンタジエニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン)メタンを白色粉末として得た。収量は1.94 g、収率は63%であった。ビス(4-メトキシフェニル)(シクロペンタジエニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン)メタンの同定はFD-MSスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
FD-MSスペクトル: M/z 497 (M+)
(ii) [ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドの合成
窒素雰囲気下、100 mlシュレンク管にビス(4-メトキシフェニル)(シクロペンタジエニル)-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン)メタン 0.497 g (1.00mmol)、脱水テトラヒドロフラン 144 mg (2.00 mmol)、脱水トルエン 30 mLを装入した。ドライアイス/アセトン浴で冷却後、1.55 Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液 1.29 ml (2.0 mmol)を10分間で滴下した。室温に昇温後、4時間攪拌した。ドライアイス/アセトン浴で冷却後、四塩化ジルコニウム 0.233 g (1.00mmol)を加え、室温で17時間反応させた。溶媒を留去した後、脱水ジクロロメタン約15 mlを加え、可溶分を抽出した。得られた溶液を濃縮し、脱水ジエチルエーテル5mL、脱水ヘキサン2 mlを加え、析出した固体を濾過によって収集し、橙色粉末として[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル) (η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドを得た。収量は0.350 g、収率は53%であった。[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル) (η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドの同定は1H NMRスペクトルおよびFD-MSスペクトルにて行った。以下にその測定値を示す。
1H NMRスペクトル(270 MHz, C6D6): δ/ppm 7.46 (d, J = 8.9, 4H), 6.81 (d, J = 8.9, Hz, 4H), 6.72 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 6.41 (d, J = 2.6 Hz, 2H), 5.89 (d, J = 2.6 Hz, 2H), 3.28 (s, 6H), 2.19 (d, J = 1.3 Hz, 6H)
FD-MSスペクトル: M/z 656 (M+)
[製造例1]
[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル) (η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン/ENB共重合
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス(SUS)製オートクレーブに、活性アルミナにより不純物を除去したn-ヘキサン1030 mL、ENB 4.0 mLを25℃で装入し、密閉した後95℃に維持した。プロピレンを分圧で0.90 MPa分装入し、その後、1.60 MPa-Gまでエチレンにより昇圧した。先ず、1Mのトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.3 mLを圧入し、次いで、0.0001 Mの[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル) (η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液0.3 mLを圧入した。続いて、0.0001 Mのトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液1.2 mLを圧入し、15分間重合反応を行った。重合反応中、温度は95℃を維持、圧力はエチレン加圧により1.60 MPa-Gを維持した。重合反応開始15分後、2 mLのメタノールを窒素により圧入し、重合反応を停止した。
得られた重合溶液は濃塩酸5 mLを含んだ1Lのメタノール/アセトン混合溶液(1/1[vol/vol%])中に混合し、その後1時間室温にて攪拌し脱灰した。析出したエチレン/プロピレン/ENB共重合体は、濾取し、これを130℃、-600 mmH gの条件で10時間乾燥し、エチレン含有量81.4 mol%、プロピレン含有量16.9 mol%、ENB含有量6.1 wt%、[η] = 1.06 dl/gのエチレン/プロピレン/ENB共重合体9.04 gを得た。結果を表1に示す。
[比較製造例1]
[ビス(4-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2, 7-ジ-tert-ブチル-フルオレニル)]ハフニウムジクロリドによるエチレン/プロピレン/ENB共重合
充分に窒素置換した内容積2Lのステンレス(SUS)製オートクレーブに、活性アルミナにより不純物を除去したn-ヘキサン1030 mL、ENB 5.0 mLを25℃で装入し、密閉した後95℃に維持した。プロピレンを分圧で0.40 MPa分装入し、その後、1.60 MPa-Gまでエチレンにより昇圧した。先ず、1 Mのトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液0.3 mLを圧入し、次いで、0.0001 Mの[ビス(4-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2, 7-ジ-tert-ブチル-フルオレニル)]ハフニウムジクロリドのトルエン溶液2.5 mLを圧入した。続いて、0.001 Mのトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液4.0 mLを圧入し、15分間重合反応を行った。重合反応中、温度は95℃を維持、圧力はエチレン加圧により1.60 MPa-Gを維持した。重合反応開始15分後、2 mLのメタノールを窒素により圧入し、重合反応を停止した。
得られた重合溶液は濃塩酸5 mLを含んだ1Lのメタノール/アセトン混合溶液(1/1[vol/vol%])中に混合し、その後1時間室温にて攪拌し脱灰した。析出したエチレン/プロピレン/ENB共重合体は、濾取し、これを130℃、-600 mmH gの条件で10時間乾燥し、エチレン含有量75.9 mol%、プロピレン含有量23.2 mol%、ENB含有量3.5 wt%、[η]=3.29 dl/gのエチレン/プロピレン/ENB共重合体11.7 gを得た。結果を表1に示す。
Figure 2019151700
注)成分(A)として以下の架橋メタロセン化合物を使用した。
i : [ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル) (η5-7-(2,5-ジメチル-シクロペンタ[1,2-b:4,3-b']-ジチオフェン))]ジルコニウムジクロリド
ii : [ビス(4-メチルフェニル)シリレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2, 7-ジ-tert-ブチル-フルオレニル)]ハフニウムジクロリド

Claims (10)

  1. (A)下記一般式[I]で表される架橋メタロセン化合物、ならびに、
    (B)(B−1)有機金属化合物、(B−2)有機アルミニウムオキシ化合物および(B−3)架橋メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
    を含むオレフィン重合触媒。
    Figure 2019151700
    [式中、Yは、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、
    Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、
    1、R2、R3、R4、R7およびR8は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、
    5およびR6は、アリール基または置換アリール基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、
    1からR6までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、
    AおよびBは、硫黄原子、酸素原子またはCR9であり、R9は、水素原子、炭素数1から20の炭化水素基、アリール基、置換アリール基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる原子または置換基であり、Aが硫黄原子または酸素原子である場合、BはCR9であり、Bが硫黄原子または酸素原子である場合、AはCR9であり、AおよびBを含む環は可能な位置で二重結合を有し、
    Qはハロゲン原子、炭素数1から20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、
    nは1から4の整数であり、
    jは1から4の整数である。]
  2. 前記式[I]におけるnが1であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合触媒。
  3. 前記式[I]におけるAまたはBが硫黄原子であり、他方がCHであることを特徴とする、請求項1または2に記載のオレフィン重合触媒。
  4. 前記式[I]におけるR1、R2、R3およびR4が全て水素原子であることを特徴とする、請求項3に記載のオレフィン重合触媒。
  5. 前記式[I]におけるYが炭素原子またはケイ素原子であることを特徴とする、請求項4に記載のオレフィン重合触媒。
  6. 前記式[I]におけるR5およびR6が、アリール基の水素原子の一つ以上をハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性置換基で置換してなる置換アリール基であって、該電子供与性置換基を複数個有する場合にはそれぞれの該電子供与性置換基は同一でも異なっていてもよく、該電子供与性置換基以外の、炭素数1から20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる置換基を有していてもよく、該置換基を複数個有する場合にはそれぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい置換アリール基であることを特徴とする、請求項5に記載のオレフィン重合触媒。
  7. 前記式[I]におけるR5およびR6が、前記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換アリール基であることを特徴とする、請求項6に記載のオレフィン重合触媒。
  8. 前記式[I]におけるR5およびR6が、前記電子供与性置換基としての酸素含有基を含む置換フェニル基であることを特徴とする、請求項7に記載のオレフィン重合触媒。
  9. 前記式[I]におけるMがジルコニウム原子またはハフニウム原子であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒。
  10. エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンと共役ポリエンとの共重合に用いられることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒。
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