JP2019148200A - 内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法 - Google Patents
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Abstract
Description
混合気成分状態の調節により気筒グループ間の燃焼状態が同一状態に収束すると予想される基準収束期間の経過前は、燃焼状態検出手段による燃焼状態の検出を禁止する燃焼状態検出禁止手段を備えたことを特徴とする内燃機関燃焼状態検出装置が開示されている。
[第1の実施の形態]
初めに、本発明の実施形態にかかる内燃機関を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)1を説明する。以下、ECU1のことを制御装置1と呼ぶ。
本実施形態では、内燃機関の制御装置1を、車両用の内燃機関100に適用した場合を例示して説明する。
本実施形態では、4気筒4サイクル型のガソリンエンジンを内燃機関100の一例として説明するが、内燃機関100の気筒数やサイクル数はこれに限定されるものではない。
この不安定性を定量化するため、過去の複数回の燃焼サイクルのIMEPの平均値μと、標準偏差σから算出されるパラメータcPiを用いて燃焼安定性を評価する方法がある。このパラメータcPiは、下記の数式2で表すことができる。この方法の場合、燃焼安定性を評価するために平均を取るサイクル数としては、数十から数百サイクルとする。つまり、過去の数十から数百サイクルの設定サイクルにおけるIMEPの平均値μと、標準偏差σを用いて、サイクルごとにcPiを算出する。そして、このcPiの値が閾値(設定閾値)以下であれば、燃焼が安定していると判断し、逆にcPiの値が設定閾値を超えた場合には燃焼が不安定となっていると判断するものである。
このなだらかな変化にも関わらず、その複数回の燃焼サイクルにおけるIMEPの平均値μは一定値であるため、この一定値である平均値μからの各IMEPの標準偏差σはなだらかな変化による影響を含み、実際の燃焼変動より大きくなることが分かる。すなわち、過渡状態においては、cPiはなだらかな変化の分だけ大きく算出されてしまうということができる。したがって、上記したようなcPiと設定閾値との比較に基づいて燃焼安定性を判断する方法では、過渡状態において常に燃焼が不安定と判断されてしまうことになる。換言すると、この方法によれば、燃焼安定性を正しく判断することができないという課題がある。
そこで図9に示すように本実施形態においては複数回の燃焼エネルギ(IMEP)の変化の傾向に着目する。この燃焼エネルギの傾向のことを燃焼エネルギのトレンドと呼んでも良い。すなわち、本実施形態においては、過渡運転時において燃焼エネルギの平均値μからではなく、複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギの変化の傾向を示す直線(近似直線)からの各サイクルでの燃焼エネルギの差分の分布に着目する。本発明者らは鋭意検討の末、この燃焼エネルギの変化の傾向を用いることで、燃焼安定性を正確に評価できることを突き止めたものである。
図10は、図5のIMEPの時系列からIMEPの平均値μの代わりに複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギ(IMEP)の変化の傾向を示す直線からの差分の分布の指標値ρを算出し、これを平均値μで割ることで求めたNew_cPiをプロットしたグラフを示す。このように本実施形態では複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギの変化の傾向を示す直線からの差分の分布の指標値ρを用いて燃焼安定性の判断指標を求める。上記したように図5において過渡状態の80〜180サイクルの期間は燃焼エネルギ(IMEP)がなだらかに変化するため、上記した燃焼エネルギの平均値μからの各燃焼エネルギの値の標準偏差σは大きくなってしまい、燃焼が不安定と判断されていた。
これに対し本実施形態の複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギの変化の傾向からの差分の分布の指標値ρを算出する方法によれば、このような過渡状態においても、過渡による変化の影響を受けることなく、燃焼が安定であると正しく判断することができる。つまり、本実施形態によれば燃焼安定性の評価を正確に行うことができる。
図11に、以上の本実施形態の燃焼安定性の評価を実現するための制御装置1の構成を説明する。図11の各ブロックは、本実施形態の制御装置1の機能ブロック図を説明する図である。
また本実施形態の制御装置1は、傾向算出部230により算出された複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギの変化の傾向(数式5)と、燃焼エネルギ算出部210(燃焼パラメータ算出部)により算出された各燃焼サイクルごとの燃焼エネルギとの差分εを算出する差分算出部240を備え、燃焼安定性判断部250は差分εに基づいて燃焼の安定性を判定する。なお、燃焼エネルギ算出部210により算出された燃焼エネルギは記憶部220(メモリ)に記憶され、記憶部220に記憶された複数回の燃焼サイクルにおける各燃焼エネルギを用いて、傾向算出部230や燃焼安定性判断部250は上記の内容を実施する。
次に、上記した制御装置1の構成を踏まえ、本実施形態の燃焼状態の判断方法を説明する。
図12は、制御装置1による燃焼状態の判定方法のフローチャートである。まず、ステップS301において、燃焼エネルギ算出部210は、クランク角センサ1031で検出したクランク軸103のクランク角度θ(回転角度)に基づいて、吸気行程でピストン104がTDC(Top Dead Center)の位置にいる場合に、燃焼エネルギの算出を開始する。そして、燃焼エネルギ算出部210は、吸気行程でTDCの場合の燃焼エネルギを下記の数式3のように初期化する。
この場合、燃焼安定性判断部250は数式10のNew_cPiと予め設定された設定閾値とを比較する。そして燃焼安定性判断部250は、New_cPiが設定閾値以下の場合には、その複数回の燃焼サイクルにおいて燃焼が安定していると判断し、逆にNew_cPiが設定閾値を超えた場合には、燃焼が不安定となっていると判断する。
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施形態について図面を用いて説明する。実施形態1で説明した数式2、又は図6で説明したパラメータcPiは、図7又は図8で説明したように平均値μからの差分の分布の指標値ρを平均値μで割ったものを示した。つまり、数式2、図6、図7又は図8においては、下記の数式11により算出された値に基づいて、燃焼安定性が評価されていた。この数式11は、複数回の燃焼サイクルにおける各燃焼サイクルごとに算出した燃焼エネルギW_tの、複数回の燃焼サイクルの燃焼エネルギの平均値μからの差分を求め、これを二乗したものの複数回の燃焼サイクルTでの合計値を示す。つまり、平均値μからの差分であるため、燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trについては考慮されていないものであった。
以上のことから、数式7で示した複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trからの差分εの二乗の合計値(数式15の右辺の第1項)は、複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギW_t(IMEP)の平均値μからの燃焼エネルギW_tの分布の指標(数式15の左辺、数式11)から、燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trの傾きa、燃焼サイクルの数Tから求まる定数に基づく値(数式15の右辺の第2項)を引くことで求めることができる。
[制御装置の構成]
図13は、以上の本実施形態の燃焼安定性の評価を実現するための制御装置1Aの構成を説明する。図13の各ブロックは、本実施形態の制御装置1Aの機能ブロック図を説明する図である。
本実施形態の制御装置1Aは内燃機関100の各燃焼サイクルの燃焼エネルギを算出する燃焼エネルギ算出部410と、複数回の燃焼サイクルにおいて燃焼エネルギ算出部410により算出される燃焼エネルギの変化の傾向を算出する傾向算出部430と、を有する。また本実施形態の制御装置1Aは複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギ(IMEP)に基づいて、燃焼エネルギの分散を算出する分散算出部440と、傾向算出部430により算出された複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギの変化の傾向と、分散算出部440により算出された燃焼エネルギ(IMEP)の分散とに基づいて燃焼の安定性を判断する燃焼安定性判断部470と、を有する。
以下においては、制御装置1Aによる燃焼状態の判断方法について図14のフローチャートに沿って説明する。
まず図14のステップS501において、燃焼エネルギ算出部410は、クランク角センサ113で検出したクランク軸103のクランク角度θ(回転角度)に基づいて、ピストン104が吸気行程のTDCの位置にいる場合に、燃焼エネルギの算出を開始する。この燃焼エネルギ算出部410による燃焼エネルギの算出方法は、実施形態1の燃焼エネルギ算出部210による燃焼エネルギの算出方法と同じであるため(図12のステップS301参照)、詳細な説明は省略する。
換言すると、影響除去部460は、分散算出部440により算出された複数回の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギW_tの平均値μからの分散((Σ(W_t−μ)^2)/T)から影響算出部450により算出された燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trによる寄与分(a^2*(Σ(t−(T+1)/2)^2)/T)を引くことで燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trの影響を除去する。これにより影響除去部460は燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trの影響を除去した燃焼エネルギW_tの分布の指標値(Σ(ε_t^2)/T)を算出することができる。
なお、数式17で求めた燃焼エネルギの変化の傾向による寄与分を除いた燃焼エネルギの分布の指標値(Σ(ε_t^2)/T)に基づいて、数式8〜10によりNew_cPiを求めることが可能であるが、この方法は実施形態1と同様であるため説明を省略する。また実施形態1、2では、内燃機関100の過渡運転時の燃焼エネルギの変化の傾向Trを算出して、過渡運転時の燃焼状態の安定性評価を行う場合を例示して説明したが、制御装置1、1Aは、定常運転時においても燃焼エネルギの変化の傾向を算出したうえで、燃焼状態の安定性評価を行ってもよい。
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施形態について図面を用いて説明する。実施形態1、2では、複数回の設定回数の燃焼サイクルにおける燃焼エネルギW_tの変化からの分布を正しく評価することを目的としてきた。しかし、ある1燃焼サイクルにおいて突発的に燃焼エネルギW_tが変化することを検出したいという要求もある。
図15は、本実施形態にかかる過渡運転時の燃焼エネルギに突発的な変化が生じた状態を説明するための図である。実施形態1、2で、燃焼エネルギの分布から複数回の燃焼サイクルでの燃焼エネルギW_tの変化の傾向Trを求めたので、本実施形態では、この変化の傾向Trを用いて、突発的な燃焼の変化を検出する方法について説明する。
[制御装置の構成]
図16は、以上の本実施形態の突発的な燃焼の変化を検出するための制御装置1Bの構成を説明する。図16の各ブロックは、本実施形態の制御装置1Bの機能ブロック図を説明している。
本実施形態の制御装置1Bは実施形態1、2と同様に、内燃機関100の各燃焼サイクルの燃焼エネルギを算出する燃焼エネルギ算出部610と、過去の複数回の燃焼サイクルの燃焼エネルギを記憶する記憶部620と、複数回の燃焼サイクルにおいて燃焼エネルギ算出部610により算出される燃焼エネルギの変化の傾向を算出する傾向算出部630と、を有する。
以下、本実施形態の制御装置1Bによる突発的な燃焼の変化の判断方法を説明する。図17は、制御装置1Bによる燃焼状態の判断方法のフローチャートである。まず、ステップS701において、燃焼エネルギ算出部610は、クランク角センサ113で検出したクランク軸103のクランク角度θ(回転角度)に基づいて、ピストン104が吸気行程のTDCの位置にいる場合に、燃焼エネルギの算出を開始する。この燃焼エネルギ算出部610による燃焼エネルギの算出方法は、実施形態1、2と同様であるため、説明を省略する。
図18は1燃焼サイクルにおける筒内圧の変化を示す図である。ここで筒内圧が最大となるクランク角度θPmaxにおいて燃焼が最大になるものとして、このクランク角度θPmaxの分布幅に基づいて、燃焼状態の安定性を評価することが可能である。内燃機関100の気筒の燃焼状態が安定している場合、燃焼が最大になるクランク角度θPmaxの分布幅は所定の設定範囲内となる。一方、内燃機関100の燃焼状態が不安定の場合、燃焼が最大になるクランク角度θPmaxの分布幅は所定の設定範囲を超えて大きくなる。
したがって、制御装置(1、1A、1B)の燃焼安定性判断部(250、470)は、燃焼が最大になるクランク角度θPmaxの分布幅を評価パラメータとし、これに基づいて、内燃機関100の燃焼状態の安定性を判断(評価)することができる。なお、θPmaxは燃焼タイミングとも呼ばれる。このように燃焼時期に着目しても、実施形態1、2と同様に燃焼状態の安定性を過渡状態においても正しく判断(評価)することが可能である。
以上の通り、以上の実施形態で説明した内燃機関の制御装置1、1A、1Bは燃焼安定性判断部(250、470、650)により算出された燃焼安定性に基づいて、内燃機関の空燃比、又は点火タイミングの何れかを制御する制御部(マイコン)を備えたものである。
Claims (13)
- 内燃機関の各燃焼サイクルの燃焼パラメータを算出する燃焼パラメータ算出部と、
複数回の燃焼サイクルにおいて前記燃焼パラメータ算出部により算出される前記燃焼パラメータの変化の傾向を算出する傾向算出部と、
前記複数回の燃焼サイクルにおける前記燃焼パラメータと前記傾向算出部により算出された前記変化の傾向とに基づいて、燃焼の安定性を判断する燃焼安定性判断部と、を有する内燃機関の制御装置。 - 内燃機関の各燃焼サイクルの燃焼パラメータを算出する燃焼パラメータ算出部と、
複数回の燃焼サイクルにおいて前記燃焼パラメータ算出部により算出される前記燃焼パラメータの変化の傾向を算出する傾向算出部と、
前記複数回の燃焼サイクルにおける前記燃焼パラメータに基づいて、前記燃焼パラメータの分散を算出する分散算出部と、
前記傾向算出部により算出された前記複数回の燃焼サイクルにおける前記燃焼パラメータの変化の傾向と、前記分散算出部により算出された前記燃焼パラメータの分散とに基づいて燃焼の安定性を判断する燃焼安定性判断部と、を有する内燃機関の制御装置。 - 前記傾向算出部により算出された前記複数回の燃焼サイクルにおける燃焼パラメータの変化の傾向と、前記燃焼パラメータ算出部により算出された各燃焼サイクルごとの燃焼パラメータとの差分を算出する差分算出部を備え、
前記燃焼安定性判断部は、前記差分算出部により算出された前記差分に基づいて燃焼の安定性を判断する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記傾向算出部は、前記燃焼パラメータの変化の傾向を前記複数回の燃焼サイクルにおける燃焼パラメータの分布を1次関数で近似することで算出する請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記分散算出部は、前記複数回の燃焼サイクルにおける燃焼パラメータの平均値からの前記複数回の燃焼サイクルにおける燃焼パラメータの分散を算出する請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記分散算出部により前記平均値からの燃焼パラメータの分散から、前記傾向算出部により算出された前記燃焼パラメータの変化の傾向による寄与分を引くことで燃焼パラメータの変化の傾向の影響を除去する影響除去部を有する請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼安定性判断部は、前記影響除去部により前記燃焼パラメータの変化の傾向の影響が除去された燃焼パラメータの分布の指標値に基づいて燃焼の安定性を判断する請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関の各燃焼サイクルの燃焼パラメータを算出する燃焼パラメータ算出部と、
複数回の燃焼サイクルにおいて前記燃焼パラメータ算出部により算出される前記燃焼パラメータの変化の傾向を算出する傾向算出部と、
前記複数回の燃焼サイクルにおける前記燃焼パラメータと前記傾向算出部により算出された前記変化の傾向とに基づいて、燃焼状態の突発的な変化を判断する燃焼突発変化判断部と、を有する内燃機関の制御装置。 - 前記傾向算出部により算出された前記燃焼パラメータの変化の傾向と、前記燃焼パラメータ算出部により算出された前記燃焼パラメータとの差分を算出する差分算出部を備え、
前記燃焼突発変化判断部は、前記差分算出部により算出された前記差分が設定閾値を超えている場合に、当該燃焼サイクルにおける燃焼パラメータが突発的に変化したと判断する請求項8に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記燃焼パラメータは、前記各燃焼サイクルにおける燃焼エネルギ、燃焼時期、燃焼速度のうちの何れかである請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼安定性判断部により判断された燃焼の安定性に基づいて、前記内燃機関の空燃比、又は点火のタイミングの何れかを制御する制御部を備えた請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記内燃機関の前記各燃焼サイクルは、当該内燃機関の過渡状態における燃焼サイクルである請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
- 内燃機関の各燃焼サイクルの燃焼パラメータを算出する燃焼パラメータ算出ステップと、
複数回の燃焼サイクルでの前記燃焼パラメータの変化の傾向を算出する傾向算出ステップと、
前記複数回の燃焼サイクルでの燃焼パラメータと前記燃焼パラメータの前記変化の傾向とに基づいて、燃焼の安定性を判断する燃焼安定性判断ステップと、を有する内燃機関の制御方法。
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