JP2019143195A - チタン材 - Google Patents

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Abstract

【課題】チタン本来の色を保ち、かつ、金型等に対する摩擦係数が小さく潤滑性に優れたチタン材を提供する。【解決手段】純チタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、チタン基材の表面に形成された、厚さ1000nm未満の酸化チタン層と、を備え、酸化チタン層に対して入射角度1degでX線を入射させる薄膜X線回折を行った場合の酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruが、0.10〜1.41であり、酸化チタン層の表面と、酸化チタン層を取り除いたチタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下であるチタン材を採用する。【選択図】なし

Description

本発明は、チタン材に関する。
チタンの薄板や線材は、冷間圧延などの冷間加工後に、スケールを生じさせないために真空或いはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気にて焼鈍されるか、大気中で焼鈍した後に酸洗によって脱スケールされるのが一般的な製造方法である。したがって、通常のチタン材は、真空或いはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で熱処理された表面か、酸洗された表面を有している。
チタン材はこのままの表面では他の金属に比べ反応性が高いため、金属製の成形金型との間で焼き付きを生じさせやすい。そのため、チタン材との親和性の低い銅合金製の成形金型の使用や、チタンの成形に適した潤滑剤の選定などが行われてきた。その一方でチタン材の表面に種々の皮膜を形成する方法も検討されてきた。
その代表的な皮膜として、酸化皮膜、窒化皮膜等が挙げられる。特許文献1には、チタンまたはチタン合金からなる素材を酸化処理して表面に酸化被膜を形成し、次いで型材を介してプレス加工する技術が記載されている。
特許文献2には、純チタン板を750〜850℃で大気雰囲気中での酸化処理により1.0〜2.5μmの酸化大気皮膜を形成し、更に初絞り加工及び再絞り加工を行う技術が記載されている。
特許文献3には、冷間圧延後にチタン薄板の表面を0.2μm以上除去した後、真空雰囲気中あるいは不活性ガス雰囲気中にて焼鈍し、その後、陽極酸化処理を施すことで、酸化皮膜を形成する技術が記載されている。
これら特許文献1〜3に記載された技術はいずれも、成形金型に対する潤滑性の向上を目的とする。しかし、本来銀白色であるチタン材の表面が、これらの皮膜によって変色(発色或いは着色)してしまうことが避けられない。建材、自動車マフラー、筐体等の意匠性が求められる製品では、ユーザー側としてチタン材の変色が必ずしも好まれない場合があった。また、チタン材の変色によって、プレス成形後の成形品の目視での疵検査が困難になる場合もあった。そのため、チタン材の変色抑制と摩擦係数低減との両立が課題となっている。
特開平3−57526号公報 特開2002−192248号公報 特開2002−194591号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、チタン本来の色を保ち、かつ、金型等に対する摩擦係数が小さく潤滑性に優れたチタン材を提供することを課題とする。
[1] 純チタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、
前記チタン基材の表面に形成された、厚さ1000nm未満の酸化チタン層と、を備え、
前記酸化チタン層に対して入射角度1degでX線を入射させる薄膜X線回折を行った場合の前記酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruが、0.10〜1.41であり、
前記酸化チタン層の表面と、前記酸化チタン層を取り除いた前記チタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下であることを特徴とするチタン材。
本発明によれば、チタン本来の色を保ち、かつ、金型等に対する摩擦係数が小さく潤滑性に優れたチタン材を提供できる。
本発明例及び比較例における、酸化チタン層の回折ピーク強度の比An/Ruと色差ΔE*abとの関係を示すグラフ。
チタン基材の表面に厚さ数十nm以上の酸化チタン層が形成されたチタン材は、金型等に対する潤滑性が向上するものの、酸化チタン層による光の干渉作用によってチタン本来の銀白色が変色する。潤滑性を向上させるには酸化チタン層の形成は不可避であるが、変色を伴うため、意匠性が求められる製品分野ではチタン材の変色が問題になる場合がある。
そこで、チタン材を変色または発色させずに潤滑性を高めることを目指して発明者らが検討したところ、所定の陽極酸化条件により陽極酸化皮膜をチタン基材の表面に形成し、次いで、所定の加熱温度および加熱時間により大気酸化を行うことで、陽極酸化皮膜の形成によって一旦変色したチタン材を、元のチタン特有の銀白色に戻せるようになることを見出した。このようなチタン材は、金型等に対して十分な潤滑性を有するものとなる。
より詳細には、陽極酸化処理によってアナターゼ型の酸化チタンを含有する陽極酸化皮膜を形成し、このような陽極酸化皮膜に対して所定の条件で大気酸化を行うと、ルチル型の酸化チタンが生成し、最終的にアナターゼ型及びルチル型が混在した酸化チタン層が形成される。アナターゼ型とルチル型が一定の割合で存在することにより、金型等に対する潤滑性を維持したままで、酸化チタン層の形成に伴う発色が抑制されるようになる。
以下、本実施形態のチタン材について説明する。本実施形態のチタン材は、純チタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、チタン基材の表面に形成された、厚さ1000nm未満の酸化チタン層と、を備え、酸化チタン層に対して入射角度1degでX線を入射させる薄膜X線回折を行った場合の酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruが、0.10〜1.41であり、酸化チタン層の表面と、酸化チタン層を取り除いたチタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下であるチタン材である。
本実施形態のチタン材の基材となるチタン基材は、純チタンもしくはチタン合金の何れかよりなる。ここでいう純チタンは、JIS規格の1種〜4種、およびそれに対応するASTM規格のGrade1〜4、DIN規格の3・7025、3・7035、3・7055で規定される工業用純チタンを含むものとする。すなわち、本発明で対象とする工業用純チタンは、質量%で、C:0.1%以下、H:0.015%以下、O:0.4%以下、N:0.07%以下、Fe:0.5%以下、残部Tiからなる。
チタン合金としては、α型チタン合金、α+β型チタン合金またはβ型チタン合金が挙げられる。
α型チタン合金としては、例えば高耐食性合金(ASTM Grade 7、11、16、26、13、30、33あるいはこれらに対応するJIS種や更に種々の元素を少量含有させたチタン材)、Ti−0.5Cu、Ti−1.0Cu、Ti−1.0Cu−0.5Nb、Ti−1.0Cu−1.0Sn−0.3Si−0.25Nb、Ti−0.5Al−0.45Si、Ti−0.9Al−0.35Si、Ti−3Al−2.5V、Ti−5Al−2.5Sn、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Mo、Ti−6Al−2.75Sn−4Zr−0.4Mo−0.45Siなどがある。
α+β型チタン合金としては、例えば、Ti−6Al−4V、Ti−6Al−6V−2Sn、Ti−6Al−7V、Ti−3Al−5V、Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Mo−4Cr、Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo、Ti−1Fe−0.35O、Ti−1.5Fe−0.5O、Ti−5Al−1Fe、Ti−5Al−1Fe−0.3Si、Ti−5Al−2Fe、Ti−5Al−2Fe−0.3Si、Ti−5Al−2Fe−3Mo、Ti−4.5Al−2Fe−2V−3Moなどがある。
さらに、β型チタン合金としては、例えば、Ti−11.5Mo−6Zr−4.5Sn,Ti−8V−3Al−6Cr−4Mo−4Zr,Ti−10V−2Fe−3Mo,Ti−13V−11Cr−3Al,Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn,Ti−6.8Mo−4.5Fe−1.5Al、Ti−20V−4Al−1Sn、Ti−22V−4Alなどがある。
次に、酸化チタン層について説明する。本実施形態に係る酸化チタン層は、チタン基材上に形成されている。酸化チタン層は、アナターゼ型の酸化チタン及びルチル型の酸化チタンを含む。更に、本実施形態に係る酸化チタン層は、厚みが1000nm未満とされている。このような薄膜の酸化チタン層の結晶構造は、薄膜X線回折法によって同定することができる。
本実施形態に係る酸化チタン層は、入射角度1degでX線を入射させる薄膜X線回折を行った場合の酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruが、0.10〜1.41を示す。比An/Ruを0.10〜1.41の範囲とすることにより、チタン基材上に酸化チタン層を形成した場合でも光の干渉作用による変色が抑制される。変色をより抑制するたには、比An/Ruの範囲を、0.63〜1.24にすることがより好ましく、0.88〜1.19にすることが更に好ましい。
比An/Ruが0.10未満または1.41超になると、ルチル型の酸化チタンに対するアナターゼ型の酸化チタンの量が不足若しくは過剰になり、光の干渉作用による発色を抑制できなくなる。
薄膜X回折による酸化チタンの結晶構造の解析は、X線源としてCo管球を用い、酸化チタン層表面に対するX線の入射角度を1degで固定したまま、測定面中心付近の法線を回転軸とし、360deg回転させながら測定する微小角入射X線回折(GIXD)により行う。得られたX線回折図から、アナターゼ型酸化チタンの(101)面の回折ピークと、ルチル型酸化チタンの(110)面の回折ピークとを特定する。そして、それぞれの回折ピークの最大強度から、バックグラウンド強度を差し引いた値を、アナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度An、ルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとする。そして、ピーク強度An及びピーク強度Ruから、比An/Ruを求める。なお、X線回折図では、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタン、金属チタンの他に窒化チタン、炭化チタン、或いはそれらが混合した物質の回折ピークが検出される場合がある。
酸化チタン層の厚みは、1000nm未満とする。酸化チタン層の厚みは、900nm以下でもよく、700nm以下でもよく、600nm以下でもよい。また、酸化チタン層の厚みは、70nm以上が好ましい。酸化チタン層の厚みが1000nm以上になると、チタン材が銀白色から光沢ある灰色に変色するおそれがあるので好ましくない。また、酸化チタン層の厚みを70nm未満にすると、陽極酸化処理において非晶質の酸化チタンが生成し、非晶質の酸化チタンを大気酸化することでルチル型の酸化チタンに遷移し、これにより酸化チタン層中のアナターゼ型の酸化チタンが不足し、変色が起きるようになるため好ましくない。
酸化チタン層の厚みは、グロー放電分光分析法(GDS)によって測定することができる。GDSでは、チタン材の表面から、O(酸素)及びTiの分析を行う。酸化チタン層の厚みは、深さ方向に測定されるO濃度によって求める。具体的には、酸化チタン層の最表面から、最表面のO濃度に対して50%減少するO濃度までの深さ位置までの距離を、酸化チタン層の厚みとする。
次に、色度差について説明する。本実施形態に係るチタン材は、酸化チタン層の表面と、酸化チタン層を取り除いたチタン基材の表面との色差ΔE*abが、6以下であることが好ましい。色差ΔE*abが6以下の場合、目視による官能検査において色差がほぼ無いと見なすことができる。酸化チタン層の表面とチタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下であれば、チタン基材に酸化チタン層を形成した場合の色の変化が無いと見なすとこができる。
酸化チタン層およびチタン基材の測色は、JIS K 5600−4−5に準じて行い、JIS K 5600−4−4に準じて、表面の色調をL*a*b*表色系でのクロマティクネス指数a*及びb*、明度指数L*で定義する。ΔE*abは、下記式で表される。なお、チタン基材の表面の測色は、例えば、本実施形態のチタン材の表面を研削して酸化チタン層を除去し、更に表面研磨して平滑にした面を測色すればよい。
ΔE*ab=√((Δa*)2+(Δb*)2+(ΔL*)2) … (2)
ただし、上記式においてΔa*は酸化チタン層表面のa*とチタン基材表面のa*との差分であり、Δb*は酸化チタン層表面のb*とチタン基材表面のb*との差分であり、ΔL*は酸化チタン層表面のL*とチタン基材表面のL*との差分である。
次に、本実施形態のチタン材の製造方法について説明する。
本実施形態のチタン材は、チタン基材に対して陽極酸化処理を行うことで陽極酸化皮膜を形成した後、大気中雰囲気で酸化処理を行うことによって製造される。陽極酸化処理によってアナターゼ型酸化チタンを含有する陽極酸化皮膜を形成し、次いで、大気雰囲気中での酸化処理を行うことにより、ルチル型の酸化チタンを生成させる。その結果、アナターゼ型及びルチル型が混在した酸化チタン層が形成される。アナターゼ型とルチル型が一定の割合で存在することにより、金型等に対する潤滑性を維持したままで、酸化チタン層の形成に伴う発色が抑制されるようになる。
製造に用いるチタン基材は、板状、棒状、管状の何れの形態を有するものであってもよい。例えば、板状のチタン基材を製造するには、純チタンまたはチタン合金からなるスラブを熱間圧延し、次いで、冷間圧延を行って板状とする。その後、大気雰囲気または不活性ガス雰囲気で焼鈍を行ってもよい。焼鈍によって酸化皮膜が形成された場合は、酸洗を行って表面酸化膜を除去するとよい。
チタン基材に対し、陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理の条件は、例えば、りん酸濃度20〜25g/Lのりん酸水溶液中に、チタン基材を陽極として浸漬し、電解電圧10〜150V、電解時間5〜15分の条件を例示できる。
りん酸水溶液は、りん酸を20〜25g/Lの濃度で含有するものがよい。りん酸以外の物質、例えばりん酸塩を用いた場合は、アナターゼ型の酸化チタンを生成できない場合がある。りん酸の濃度は、より好ましくは21〜24g/Lの範囲である。
電解電圧は10〜150Vの範囲が好ましい。電解電圧が10V未満では陽極酸化皮膜の厚みが薄くなり、十分な量のアナターゼ型の酸化チタンを生成できず、酸化チタン層の比An/Ruを0.10〜1.41の範囲にできなくなる場合がある。また、電解電圧が150Vを超えると、陽極酸化皮膜の厚みが過剰になり、酸化チタン層の厚みが1000nm以上になるおそれがある。また、ルチル型酸化チタンが生成してしまうおそれがある。
電解時間は5〜15分の範囲が好ましい。電解時間が5分未満では陽極酸化皮膜の厚みが薄くなり、十分な量のアナターゼ型の酸化チタンを生成できず、酸化チタン層の比An/Ruを0.10〜1.41の範囲にできなくなる場合がある。また、電解時間が15分を超えると、陽極酸化皮膜の厚みが過剰になり、酸化チタン層の厚みが1000nm以上になるおそれがある。
陽極酸化処理後は、チタン基材を水洗してりん酸水溶液を洗い流すとよい。水洗は例えば純水を用いるとよい。
次いで、大気雰囲気中で酸化処理を行う。酸化処理によって、ルチル型の酸化チタンを生成させる。ルチル型の酸化チタンは、先に生成したアナターゼ型の酸化チタンの一部が変化したものでもよく、チタン基材のチタンが酸化されて新たにルチル型の酸化チタンとして生成したものでもよい。大気雰囲気中以外の雰囲気、例えば、不活性ガス雰囲気中で加熱処理を行った場合は、ルチル型酸化チタンが生成せず、陽極酸化皮膜が薄くなって剥がれやすくなり、潤滑性が低下するので好ましくない。
酸化処理は、陽極酸化処理後のチタン基材を、所定の加熱温度に保持した加熱炉内に、所定時間保持することにより行う。保持時間は、チタン基材の温度が加熱温度に到達した時点から加熱炉から取り出す時点までの時間とする。加熱炉から取り出した後のチタン基材は空冷する。加熱炉は、バッチ式でも連続式でもよい。
加熱温度は650〜750℃の範囲とし、保持時間は0.5〜300分間の範囲とする。加熱温度が650℃未満では、ルチル型の酸化チタンが生成せず、酸化チタン層の比An/Ruが1.41を超えて、色差ΔE*abを6以下にできなくなる。一方、加熱温度が750℃を超えると、ルチル型の酸化チタンが過剰に生成し、酸化チタン層の比An/Ruが0.10未満になり、色差ΔE*abを6以下にできなくなる。
チタン基材の温度が加熱開始時の温度から加熱温度に到達するまでの平均の昇温速度は、例えば、1℃/秒以上がよい。平均の昇温速度が1℃/秒未満では処理時間が長引いて生産性が低下するうえ、ルチル型の酸化チタンが昇温途中に盛んに形成され、過剰な量になるおそれがある。好ましくは10℃/秒以上がよい。一方、平均の昇温速度の上限は特に定める必要はないが、いたずらに昇温速度を高めることは生産コスト増大につながるため、通常は200℃/秒以下とする。
より好ましい酸化処理の条件は、下記(1)〜(3)に示すいずれかの条件である。(1)〜(3)に示す条件から外れると、ルチル型の酸化チタンの生成量が不足または過剰になり、酸化チタン層の比An/Ruを0.10〜1.41の範囲にできなくなる場合がある。
(1)650℃以上690℃未満の加熱温度で15〜300分加熱する条件。
(2)690℃以上720℃未満の加熱温度で5〜60分加熱する条件。
(3)720℃以上750℃以下の加熱温度で0.5〜5分加熱する条件。
以上の工程を経ることにより、本実施形態のチタン材を得ることができる。本実施形態のチタン材は、チタン本来の銀白色の外観を呈し、かつ、金型等に対する摩擦係数が小さく潤滑性に優れたものになる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
基材となるチタン基材は、JIS1種に規定されるチタンからなるチタン薄板を用いた。チタンインゴットを熱間圧延した後、スケール除去を施し、厚さ5mmのチタン薄板を板厚0.5mmまで冷間圧延し、不活性ガス雰囲気中で焼鈍してチタン薄板とした。チタン薄板の表面に着色はなく、チタン本来の銀白色を呈していた。
チタン基材を、濃度20〜25g/Lの20℃のりん酸水溶液中で、5~200Vで5分保持する条件で、陽極酸化処理を行った。陽極酸化後、チタン材の表面を純水で洗浄した。
次に、陽極酸化処理後のチタン基材を、平均の昇温速度30℃/秒で所定の加熱温度まで昇温し、所定の保持時間加熱し、その後、空冷することにより、酸化チタン層を有するチタン材を製造した。得られたチタン材について、酸化チタン層の厚み測定、薄膜X線回折測定、色度差の測定、外観観察、ピンオンディスク評価を行った。結果を表1及び表2に示す。また、酸化チタン層の回折ピーク強度の比An/Ruと色差ΔE*abとの関係を図1に示す。
(酸化チタン層の厚み測定)
酸化チタン層の厚みは、グロー放電分光分析法(GDS)によって測定した。GDSにより、チタン材の表面から、O(酸素)及びTiの分析を行った。酸化チタン層の厚みは、深さ方向に測定されるO濃度によって求めた。具体的には、酸化チタン層の最表面から、最表面のO濃度に対して50%減少するO濃度までの深さ位置までの距離を、酸化チタン層の厚みとした。
(薄膜X線回折測定)
薄膜X回折による酸化チタンの結晶構造の解析は、X線源としてCo管球を用い、酸化チタン層表面に対するX線の入射角度を1degで固定したまま、測定面中心付近の法線を回転軸とし、360deg回転させながら測定する微小角入射X線回折(GIXD)により行った。得られたX線回折図から、アナターゼ型酸化チタンの(101)面の回折ピークと、ルチル型酸化チタンの(110)面の回折ピークとを特定した。そして、それぞれの回折ピークの最大強度から、バックグラウンド強度を差し引いた値を、アナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度An、ルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとした。そして、ピーク強度An及びピーク強度Ruから、比An/Ruを求めた。なお、X線回折図では、アナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの他に、金属チタンの回折ピークが検出されたが、他の物質の回折ピークは認められなかった。
(色差)
酸化チタン層およびチタン基材の測色は、JIS K 5600−4−5に準じて行い、JIS K 5600−4−4に準じて、表面の色調をL*a*b*表色系でのクロマティクネス指数a*及びb*、明度指数L*で定義した。酸化チタン層の表面とチタン基材の表面との色差ΔEabは、L表色系でのクロマティクネス指数をa及びb、明度指数をLとしたとき、下記式で求めた。なお、チタン基材の表面の彩度は、本実施形態のチタン材の表面を研削して酸化チタン層を除去し、表面研磨して平滑にした面とすることができるが、本実施例では陽極酸化処理前のチタン薄板の表面の彩度を予め測定し、この測定値を用いて色差を求めた。
ΔEab=√((Δa+(Δb+(ΔL) … (2)
ただし、上記式においてΔa*は酸化チタン層表面のa*とチタン基材表面のa*との差分であり、Δb*は酸化チタン層表面のb*とチタン基材表面のb*との差分であり、ΔL*は酸化チタン層表面のL*とチタン基材表面のL*との差分である。
(ピンオンディスク評価)
ピンオンディスク型摩擦・磨耗試験機にて、潤滑剤を用いずに、面圧1MPa、速度0.1m/minの条件で、日本工業規格G4805に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材SUJ2製のピンでチタン材の表面を摺動した。
このとき、当該試験においてチタン材の表面に深さ1μm以上の溝状の疵が生じた場合は、実機のプレス成形加工で不良が発生する可能性が高いので、不合格と判断した。
深さ1μm未満の溝状の疵が生じた場合は合格と判断した。
また、摺動開始から50s以降の平均動摩擦係数の測定を行った。
表1及び表2に示すように、No.1〜14は本発明例であり、An/Ruの強度比が0.10〜1.41となり、チタン基材と色差が6以下かつ摺動試験で凝着せず、1μm以上の深い疵の発生を抑制できた。
No.15〜17は、陽極酸化処理のみを行った比較例であり、色差が6より大きくなった。また、No.15では、ピンオンディスク評価において1μm以上の深い疵が生じた。
No.18、19は大気酸化のみを行った比較例であり、色差が6より大きくなった。また、No.18では、ピンオンディスク評価において1μm以上の深い疵が生じた。
No.20は陽極酸化処理及び酸化処理を行っていないチタン材であり、表面の酸化チタン層が形成されていないため、ピンオンディスクで凝着し、1μm以上の深い疵が生じた。
No.21、22は、陽極酸化処理の電解電圧が低く、十分にアナターゼ型酸化チタンが十分に形成されなかったため、大気酸化でルチル型酸化チタンの体積割合が過剰となり、色差が6より大きくなった。
No.23は、陽極酸化処理の電解電圧が高いため、陽極酸化皮膜の厚さが1000nm(1μm)となり、大気酸化後の酸化チタン層の厚みが厚すぎるため、外観が灰色となり、色差が6より大きくなった。また、絶縁破壊が生じ、酸化皮膜が均一に形成されず、むらになった。
No.24は、陽極酸化処理の電解電圧が高いため、陽極酸化皮膜の厚さが1000nm(1μm)となり、さらにルチル型の酸化チタンが生成した。そのため、大気酸化後のルチル型酸化チタンの体積割合が過剰となり、さらに酸化チタン層が厚すぎるため、外観が灰色となり、色差が6より大きくなった。また、絶縁破壊が生じ、酸化皮膜が均一に形成されず、むらになった。
No.25〜28は、大気酸化処理の加熱温度が低く、十分にルチル型酸化チタンが形成されなかったため、陽極酸化処理で形成したアナターゼ型酸化チタンの体積割合が過剰となり、色差が6より大きくなった。
No.29、30は、大気酸化処理の温度が高く、ルチル型酸化チタンが過剰に形成したため、アナターゼ型酸化チタンの体積割合が小さくなり、色差が6より大きくなった。
No.31は大気酸化処理の保持時間が短く、十分にルチル型酸化チタンが形成されなかったため、陽極酸化処理で形成したアナターゼ型酸化チタンの体積割合が過剰となり、色差が6より大きくなった。
No.32は大気酸化処理の保持時間が長く、ルチル型酸化チタンが過剰に形成したため、アナターゼ型酸化チタンの体積割合が小さくなり、色差が6より大きくなった。
また、図1に示すように、酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruを0.10〜1.41の範囲とすることにより、酸化チタン層の表面と酸化チタン層を取り除いたチタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下になることがわかる。
Figure 2019143195
Figure 2019143195

Claims (1)

  1. 純チタンまたはチタン合金からなるチタン基材と、
    前記チタン基材の表面に形成された、厚さ1000nm未満の酸化チタン層と、を備え、
    前記酸化チタン層に対して入射角度1degでX線を入射させる薄膜X線回折を行った場合の前記酸化チタン層に含まれるアナターゼ型酸化チタンの(101)回折ピークのピーク強度Anとルチル型酸化チタンの(110)の回折ピークのピーク強度Ruとの比An/Ruが、0.10〜1.41であり、
    前記酸化チタン層の表面と、前記酸化チタン層を取り除いた前記チタン基材の表面との色差ΔE*abが6以下であることを特徴とするチタン材。
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