JP2019142992A - 延伸多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
一方で、これらの多孔フィルムが使用される用途では、更なる使用感の向上が求められているため、柔軟性や風合いなどの触感の更なる改良や、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生の抑制などが必要となる。しかしながら、特許文献3〜6では、不快音の抑制に関する技術的設計指針に関する言及がない。
本発明の延伸多孔フィルムは熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、空孔率が25%〜80%である延伸多孔フィルムである。
空孔率が25%以上の場合、後述するように、延伸多孔フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くなり、不快音を十分に抑制することができる。また、空孔率が80%以下の場合、実用的に使用できる程度のフィルム強度を確保することができ、さらに、防水性が十分となり接する液状物の漏れを引き起こしにくいものとなる。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)の内部に連通した空隙を有するフィルムである。すなわち、本発明の延伸多孔フィルムにおいて音が伝播する場合、フィルムとして固体部を形成している樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音と、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音との2つの伝わり方を示す。そのため、音の抑制には、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音の抑制、及び、連通した空隙を伝播する音の抑制を考慮しなければならない。
また、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)のtanδのピーク位置は音の発生雰囲気温度での減衰に関連すると共に、温度−時間換算則の観点から、周波数に対する減衰にも関連する。そのため、様々な周波数を有する不快音を吸音、または発生させないためには、tanδのピーク幅は広い方が好ましい。
従って、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が、−20℃において0.100以上であることが、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制のために重要である。前述したように、tanδが0.100以上となる温度範囲が広くなることが様々な周波数の不快音を抑制できるため好ましい。
従って、フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くするために延伸多孔フィルムの空孔率が25%以上であることが重要である。
なお、動的粘弾性測定は、サンプル片の厚みをあらかじめ測定し、サンプル片の厚みとサンプル片の幅の値を測定装置に入力することにより、サンプル片の断面積が計算され、各値が算出される。
本発明の延伸多孔フィルムは、樹脂組成物(Z)中に空孔が生じているため、多孔体をそのまま測定した場合、算出される貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδに誤差が生じやすい。よって、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを得るためには、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いてMD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片について動的粘弾性測定を行うことが好ましい。ただし、延伸多孔フィルムを融点以上に加熱することでフィルムを融解し空孔を消失させた後、プレスサンプルを作製し、該プレスサンプルより短冊状のサンプル片を切り出して動的粘弾性測定を行うことによっても、本発明の規定する貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、tanδを算出することができる。本発明においては、いずれの測定方法も採用することができる。
前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)の測定は、無作為に3点測定し、その算術平均値を用いた。得られた前記延伸多孔フィルムの比重(W1)、及び、前記樹脂組成物(Z)の比重(W0)から、以下の式より空孔率を算出した。
空孔率(%)=[1−(W1/W0)]×100
ここで、坪量は、サンプル(縦方向(MD):250mm、横方向(TD):200mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を20倍した値を坪量とする。
ここで、透気度はJISP8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1−55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に10点測定し、その算術平均値を透気度とする。
ここで、透湿度はJISZ0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の諸条件に準拠する。吸湿剤として塩化カルシウムを15g用い、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。サンプルは無作為に2点測定し、その算術平均値を求めた。
ここで、延伸方向の引張破断伸びは、JISK7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断伸びである。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断伸びの算術平均値とする。
ここで、熱収縮率は、延伸方向200mm×延伸方向と垂直方向10mmに切り出したサンプルを、槽内温度60℃に設定した対流オーブンに1時間静置加熱する。その後、延伸方向の長さL(mm)を測定し、式「(200−L)/200×100(%)」により、算出した値である。本発明においては、3回測定を行い算出した熱収縮率の算術平均値とする。
ここで、全光線透過率は、JISK7361に準拠したヘイズメータを用い、無作為に5点測定し、その算術平均値を求めたものである。
本発明の延伸多孔フィルムは、熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなることが重要である。
前記無機充填材(A)としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイトなどの微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現、汎用性の高さ、低価格および銘柄の豊富さなどの利点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系共重合体、エチレン・酢酸ビニル系共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアセタール系樹脂等が挙げられる。中でも、柔軟性、耐熱性、連通孔の形成、環境衛生性、臭気などの観点から、前記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。前記熱可塑性樹脂が2種類以上で構成される場合、その合計が前記熱可塑性樹脂の質量となり、樹脂組成物(Z)中における、前記熱可塑性樹脂の質量比率が算出される。
前記ポリエチレン系樹脂(B)は、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ、エチレンを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。よって、ポリエチレン系樹脂(B)は、エチレン単独重合体でもよく、エチレンを主たるモノマー成分とし、かつ、他のモノマーを含有する共重合体であってもよい。共重合体の例を挙げると、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・(1−ブテン)共重合体、エチレン・(1−ヘキセン)共重合体、エチレン・(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、エチレン・(1−オクテン)共重合体などのエチレン・(α−オレフィン)共重合体や、また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・エチレングリコール共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・スチレン共重合体、エチレン・ジエン共重合体、エチレン・環状オレフィン共重合体などが挙げられる。エチレン・プロピレン・(1−ブテン)共重合体など、上述のモノマー成分を2種以上含有する多元共重合体であってもよい。
この中でも、耐熱収縮性と寸法安定性の観点から、エチレン単独重合体や、エチレン・(α−オレフィン)共重合体が好ましい。
密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)を含むことにより、延伸多孔フィルムの通気性、透湿性、耐熱収縮性、寸法安定性、耐液漏れ性、隠ぺい性、外観などを満足させることが可能となる。ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、0.910g/cm3以上0.937g/cm3以下であることがより好ましく、0.910g/cm3以上0.935g/cm3以下であることが特に好ましい。ここで、密度はピクノメーター法(JIS K7112 B法)により測定した密度である。また、後述する樹脂の密度についても同様に測定したときの値である。
ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃〜200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する樹脂の融点についても同様に測定したときの値である。
ここで、MFRはJIS K7219に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)は、密度は0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であり、かつ、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどのα−オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、ジエン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、エチレン・(α−オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましい。
また、前記無機充填材(A)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、樹脂組成物の成形が容易となり、生産性に問題ないものとなる。
また、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下である場合、耐熱収縮性や寸法安定性に優れたフィルムとなる。
さらには、前記ポリエチレン系樹脂(B)の混合組成比が上述の好ましい範囲における上限以下であり、かつ、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が上述の好ましい範囲における下限以上である場合、柔軟性や風合いといった肌触りのよい触感が得られ、フィルムが擦れる際に生じる不快音を抑制しやすくなる。
さらに本発明の延伸多孔フィルムは、前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(D)を0.1質量%〜8.0質量%含むことが好ましい。可塑剤(D)が0.1質量%以上含まれていれば、前記樹脂組成物(Z)のtanδの値が大きくなり、さらに前記樹脂組成物(Z)のtanδのピーク幅を広くすることができる。一方、可塑剤(D)が8.0質量%以下であれば、可塑剤のブリードアウトを抑制することができ、延伸多孔フィルムをロール状に巻き取った際のブロッキングや、印刷時の印刷不良を抑制できる。
ひまし油類としては、通常のひまし油、精製ひまし油、硬化ひまし油および脱水ひまし油などが挙げられる。また、硬化ひまし油としては、12−ヒドロキシオクタデカン酸とグリセリンからなるトリグリセライドを主成分とする硬化ひまし油などが挙げられる。
本発明の延伸多孔フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができるが、少なくとも一軸方向に延伸されることが重要である。
ここで、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
下記に示す実施例、比較例において、延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の未延伸フィルムを用いて、MD4mm、TD35mmに切り出された短冊状のサンプル片を用い、上述の方法に従い動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E’’)、及び、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)を算出した。その後、−20℃においてtanδが0.100以上である場合は「○」と判定し、−20℃においてtanδが0.100未満となる場合は「×」と判定した。
さらに、20℃におけるE’(単位:×108Pa)、並びに、−30℃、−20℃、−10℃、0℃、10℃、20℃、及び、30℃におけるtanδの値を表1に纏めた。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの坪量を算出した。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの空孔率を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの透気度を算出した。透気度測定装置として、旭精工(株)社製 王研式透気度測定機EGO1−55型を用いた。
上記の方法に従い、延伸多孔フィルムの透湿度を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断強度を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断伸びを算出した。
上述の方法に従い、60℃で1時間加熱したときの延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)における熱収縮率を算出した。
上述の方法に従い、延伸多孔フィルムの全光線透過率を算出した。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)1000mm、横方向(TD)200mmに切り出し、手で触り、下記判断基準に従い、評価した。
○:フィルムに柔らかい風合いを感じる。
×:フィルムに硬さを感じる。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)1000mm、横方向(TD)200mmに切り出し、フィルムをこすり合わせて、下記判断基準に従い、評価した。
○:こすり合わせても不快な音を感じない。
×:こすり合わせるとガサガサと不快な音を感じる。
上記(1)〜(11)に示す評価を鑑み、下記基準にて総合評価を行った。
A:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した、通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムである。
B:柔軟性と風合いといった優れた触感を有し、通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、不快な音の発生を感じるフィルムである。
C:通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、柔軟性や風合いといった触感を感じられず、かつ、不快な音の発生を感じるフィルムである。
D:通気性と透湿性などの延伸多孔フィルムに求められる物性が不十分なフィルムである。
<無機充填材(A)>
・備北粉化工業(株)社製、重質炭酸カルシウム「ライトンBS−0」(平均粒子径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)。以下、「A−1」と略する。
<ポリエチレン系樹脂(B)>
・日本ポリエチレン(株)社製、直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF230」(密度0.921g/cm3、MFR1.0g/10分、融点121℃)。以下、「B−1」と略する。
・日本ポリエチレン(株)社製、分岐状低密度ポリエチレン「ノバテックLD LF441」(密度0.918g/cm3、MFR2.3g/10分、融点113℃)。以下、「B−2」と略する。
<軟質ポリオレフィン系樹脂(C)>
・日本ポリエチレン(株)社製、メタロセン系エチレン・(α−オレフィン)共重合体「カーネル KF360T」(密度0.898g/cm3、MFR3.5g/10分、融点90℃)。以下、「C−1」と略する。
・ダウ・ケミカル社製、エチレン・オクテンブロック共重合体「Infuse D9100.05」(密度0.877g/cm3、MFR1.0g/10分、融点120℃)。以下、「C−2」と略する。
<可塑剤(D)>
・ケイエフ・トレーディング(株)社製、硬化ひまし油「HCO−P3」。以下、「D−1」と略する。
・(株)ジェイ・プラス社製、液体ポリエステル系可塑剤「ダイヤサイザー D600」。以下、「D−2」と略する。
<酸化防止剤>
・BASFジャパン(株)社製、酸化防止剤「Irganox B225」。以下、「E−1」と略する。
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比130%(延伸倍率2.3倍)、(T)−(U)ドロー比130%(延伸倍率2.3倍)を掛けてMDに合計5.3倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
実施例1と同様の手法により、未延伸フィルムを採取した。その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)、(T)−(U)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けてMDに合計4.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
実施例1と同様の手法により、未延伸フィルムを採取した。その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比70%(延伸倍率1.7倍)、(T)−(U)ドロー比70%(延伸倍率1.7倍)を掛けてMDに合計2.9倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
実施例1と同様の手法により、未延伸フィルムを採取した。その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比40%(延伸倍率1.4倍)、(T)−(U)ドロー比40%(延伸倍率1.4倍)を掛けてMDに合計2.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、20℃に設定したロール(S)と20℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)、(T)−(U)ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けてMDに合計4.0倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
それぞれの原材料を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度200℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したTダイにて、樹脂組成物を押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムに関して、動的粘弾性測定を行った。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)−(T)ドロー比130%(延伸倍率2.3倍)、(T)−(U)ドロー比130%(延伸倍率2.3倍)を掛けてMDに合計5.3倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムに関して、各種評価を行った。結果を表1に纏めた。
この結果は、本発明の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδ、及び、延伸多孔フィルムの空孔率が本発明の規定する範囲を満たしているためと考えられる。具体的には、実施例1〜4の延伸多孔フィルムを構成する樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出されたtanδが、−20℃において0.100以上となっているため、樹脂組成物(Z)を振動して伝播する音が減衰し、不快音の抑制に寄与しているためと考えられる。また、実施例1〜4の延伸多孔フィルムの空孔率が25%〜80%の範囲にあることから、連通した空隙を伝播する音が、空隙と樹脂組成物(Z)との壁面との衝突する際に生じるエネルギー損失の回数が多くなり、不快音の抑制に寄与していると考えられる。
一方、比較例1で得られたフィルムは、実施例1〜3と同様に、本発明の規定する前述のtanδの規定を満たした樹脂組成物(Z)を用いたものであるが、比較例1で得られた延伸多孔フィルムは、本発明の規定する空孔率を逸脱している。そのため、比較例1で得られたフィルムは、柔軟性や風合いといった触感には優れるものの、不快音の抑制には不十分であった。
また、比較例2で得られたフィルムは、本発明の規定する空孔率を満たしたものであるが、−20℃におけるtanδが0.100未満となり、不快音の抑制には不十分であった。
すなわち、優れた触感と、フィルムが擦れ時に生じる不快音の抑制を両立するためには、前述のtanδ、及び、空孔率の両方が、本発明が規定する範囲を満たすことが重要であることが分かる。
Claims (9)
- 熱可塑性樹脂を25質量%〜54質量%、無機充填材(A)を46質量%〜75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる延伸多孔フィルムであって、
該樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)が−20℃において0.100以上であり、空孔率が25%〜80%である延伸多孔フィルム。 - 前記樹脂組成物(Z)の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)が、20℃において8.0×108Pa以下である請求項1に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1または2に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂の密度が0.850g/cm3以上0.940g/cm3以下である請求項3に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン系樹脂として、密度が0.910g/cm3以上0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂(B)、及び、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満の軟質ポリオレフィン系樹脂(C)をそれぞれ有する請求項3または4に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記無機充填材(A)、前記ポリエチレン系樹脂(B)、及び、前記軟質ポリオレフィン系樹脂(C)の混合組成比が(A)/(B)/(C)=50質量%〜75質量%/5質量%〜45質量%/5質量%〜45質量%(ただし、(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)である請求項5に記載の延伸多孔フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤(D)を0.1質量%〜8.0質量%含む請求項1〜6のいずれかに記載の延伸多孔フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを用いた衛生用品。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の延伸多孔フィルムを用いた衣服。
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