以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態により、本発明が限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
(放射線モニタリングシステムの概略構成)
本実施形態の放射線モニタリングシステムの概略構成について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の放射線モニタリングシステムの概略構成を示す模式図であり、測定装置とデータ処理装置との間で無線通信によりデータの伝送が行われる態様を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の放射線モニタリングシステムは、放射線を測定する複数の放射線測定装置(以下、単に「測定装置」と記す)10、より具体的には、測定装置10A,10B,10C,・・・と、これら測定装置10A,10B,10C,・・・により測定されたデータを取得して処理する装置(以下、データ処理装置と記す)50とを有する。複数の測定装置10A,10B,10C,・・・は、それぞれ異なる場所に配置される。
データ処理装置50は、各測定装置10との間でデータの伝送を行うためのトランスミッタ−レシーバ(以下、通信親機と記す)52と、各測定装置からの測定データを当該通信親機52を介して取得して、当該測定データの評価を行うユニット(以下、監視ユニットと記す)51とを有する。データ処理装置50の通信親機52は、複数の測定装置10A,10B,10C,・・・のそれぞれの通信子機18との間でデータの伝送が可能に構成されている。
また、本実施形態において、監視ユニット51は、各測定装置10から、それぞれ放射線に関する測定データを取得して、各測定装置により測定された放射線の線量率(又は線量)を算出し、これらの値が所定の設定値を超えたときに警報を発する機能を有している。監視ユニット51の構成と機能の詳細については、後述する。
各測定装置10は、放射線検出器12と、放射線検出器12に入射した放射線を示す情報を含むデータを、外部に伝送するためのトランスミッタ−レシーバ(以下、通信子機と記す)18と、放射線検出器12及び通信子機18に電力を供給する電源としての電池30とを有する。本実施形態において、各測定装置10は、その通信子機18を介して、データ処理装50との間で各種のデータの伝送を行う。
本実施形態において、各測定装置10と、データ処理装置50との間におけるデータの伝送は、通信親機52及び通信子機18を介して、無線通信により行われる。通信親機52及び通信子機18は、それぞれアンテナ53,19を有する。各測定装置10と、データ処理装置50との間における無線通信が確立されたときのデータの伝送路(を、それぞれ図1に破線矢印C1,C2,C3で示す。無線通信には、例えば、IEEE 802.11等、様々な通信規格のものを用いることができる。なお、本実施形態において複数の測定装置10A,10B,10C,・・・は、同じハードウェアで構成されており、以下、一つの測定装置10のハードウェア構成について説明する。
(測定装置の詳細な構成)
本実施形態の放射線モニタリングシステムのうち測定装置の構成例について図2を参照して説明する。図2は、本実施形態の放射線モニタリングシステムのうち測定装置の構成例を示す模式図である。
図2に示すように、測定装置10は、放射線検出器12と、増幅計数回路14と、上述した通信子機18と、各種の演算処理を行うプロセッサ20とを有する。また、測定装置10は、放射線検出器12、増幅計数回路14、通信子機18及びプロセッサ20に電力を供給するための電池30を有する。
本実施形態において、電池30は、再充電できるように設計されていないバッテリー、いわゆる一次電池である。このような一次電池30は、複数の素電池(cell)を並列又は直列に電気的に接続することにより実現することができる。このような素電池には、例えば、アルカリ乾電池等を用いることができる。測定装置10において、放射線検出器12、増幅計数回路14、通信子機18及びプロセッサ20は、それぞれ、電池30から電力の供給を受けて作動する。
測定装置10は、電池30から各種のデバイスに電力を供給するための電力回路32,34,36,38を有する。具体的には、放射線検出器12に電力を供給する電力回路(以下、検出器用電力回路と記す)32と、電池30から増幅計数回路14に電力を供給する電力回路(以下、増幅用電力回路と記す)34と、電池30からプロセッサ20に電力を供給する電力回路(以下、プロセッサ用電力回路と記す)36と、電池30から通信子機18に電力を供給する電力回路(以下、通信機用電力回路と記す)38とを有する。
これら電力回路32,34,36,38のうち、検出器用電力回路32,増幅用電力回路34,通信機用電力回路38は、トランジスタ等の当該回路の開閉を行うスイッチを含んでおり、これらスイッチのオン/オフは、プロセッサ20により制御される。スイッチがオフに制御されることにより、電力の供給が遮断される。すなわち、検出器用電力回路32は、プロセッサ20により制御されて電池30から放射線検出器12への電力の供給を遮断可能である。また、通信機用電力回路38は、プロセッサ20により制御されて電池30から通信子機18への電力の供給を遮断可能である。同様に、増幅用電力回路34は、電池30から増幅計数回路14への電力の供給を遮断可能である。
なお、測定装置10において、電池30から、放射線検出器12及び通信子機18の双方に電力が供給されない状態を「休止状態」と記す。本実施形態の測定装置10の休止状態においては、放射線検出器12、通信子機18に加えて、増幅計数回路14にも電池30からの電力が供給されない。なお、休止状態において、プロセッサ20は、いわゆるアイドル状態で作動しており、電池30から供給される電力については、プロセッサ20が当該状態を維持するのに必要な最低限の電力が消費されるのみである。なお、放射線検出器12及び通信子機18のうち少なくとも一方に電池30からの電力が供給されている状態を、以下に「作動状態」と記す。
放射線検出器12は、γ線やβ線等の電離放射線を検出するためのものであり、当該放射線検出器12に入射した放射線の量、すなわちエネルギ及び数を電気信号に変換する。このような放射線検出器12には、シンチレーション検出器や半導体検出器等、様々な検出器を用いることができる。放射線検出器12は、入射した放射線に関する電気信号(アナログ信号)を、増幅計数回路14に送出する。
増幅計数回路14は、放射線検出器12からの電気信号を受けて、当該電気信号を電気的に増幅して、放射線検出器12に入射した放射線(例えば、γ線)の数を計数する機能を有している。放射線検出器からの信号を電気的に増幅するための電力は、電池30から供給される。また、本実施形態の増幅計数回路14は放射線検出器12からのアナログ電気信号を受けて、これを処理することで放射線の検出情報を示すデジタル信号に変換する。
プロセッサ20は、各種の演算処理を行うためのものであり、放射線検出器12、増幅計数回路14、通信子機18及び電力回路32〜38を制御可能である。本実施形態のプロセッサ20は、各種の定数及び変数を格納可能な内部記憶装置(以下、単に「メモリ」と記す)22を含んでいる。当該メモリ22は、各種の半導体メモリ素子を用いることが可能である。
プロセッサ20は、所定の測定時間(例えば、1分間)に亘って放射線検出器12に入射した放射線の信号を、増幅計数回路14を通して取得する。本実施形態においては、プロセッサ20は、単位時間当たりに放射線検出器12に入射した放射線の数、いわゆる計数率を算出する。このようにして各測定装置10のプロセッサ20は、放射線検出器12に入射した放射線を測定する。
また、プロセッサ20は、上述した放射線を測定する機能に加えて、電池30の電池電圧を測定する機能を有する。電池電圧の測定については、一般的なアナログ−デジタル変換素子(ADC)などを用いて実現することができる。
なお、当該測定データには、各測定装置をそれぞれ識別するために各測定装置に固有の情報(以下、識別情報と記す)が含まれているものとしても良い。識別情報は、例えば、測定装置の設置場所を示す情報を含み、各測定装置10のメモリ22に予め保持されているものとしても良い。
測定装置10のプロセッサ20が算出した時刻は、他の測定装置10B,10Cや、データ処理装置50が算出する時刻と完全に一致していない場合がある。このため、各測定装置からデータ処理装置50に伝送される測定データには、当該測定装置のプロセッサ20において保持されている時刻を示す情報(以下、単に「時刻情報」と記す)を含めることが好ましい。
通信子機18は、トランスミッタとレシーバを組み合わせて単一のユニット(モジュール)としたものであり、送信と受信で共通の回路部分と同じアンテナ19を用いたものである。通信子機18は、データ処理装置50の通信親機52との間で無線通信を確立する。その後、各測定装置10においては、放射線検出器12により測定されたデータは、プロセッサ20によりデジタルデータとして処理された上で、データ処理装置50に伝送される。
測定装置10は、リアルタイムクロック(real-time clock、以下、「RTC」と記す)24と、当該RTC24にのみ電力を供給する専用の電池26とを有する。RTC24は、電池26からの電力の供給を受けて作動して、時刻を示す信号を生成する。RTC24は、プロセッサ20と電気的に接続されており、プロセッサ20は、RTC24から時刻を示す信号を取得する。本実施形態において、プロセッサ20は、RTC24から時刻を示す信号を継続的に受けている。また、プロセッサ20は、いわゆるタイマー機能を有しており、RTC24からの時刻を示す信号に基づいて、より高い精度の時刻を算出して、これを保持している。
なお、RTC24は、消費電力が極めて小さいため、電池26には、再充電するように設計されていない一次電池が用いられる。このような電池(一次電池)26には、一般的に、単数の小型のボタン電池が用いられ、例えば、コイン形状のリチウム電池(いわゆるコイン電池)を用いることができる。このような電池を用いることにより、RTC24は、極めて長期間に亘って作動することができる。
本実施形態において、プロセッサ20は、RTC24から時刻を示す信号を取得し、当該時刻に応じて、上述した電力回路32,34,38のそれぞれのオン/オフを制御して、放射線検出器12、増幅計数回路14及び通信子機18への電力供給/遮断を、それぞれ切り替えることが可能である。
これにより、プロセッサ20は、放射線検出器12及び通信子機18のうち少なくとも一方に電池30からの電力が供給される「作動状態」と、電池30からの電力が、放射線検出器12及び通信子機18の双方に供給されない「休止状態」とを切り替えることが可能である。各測定装置10は、当該作動状態において、放射線検出器12に入射した放射線を測定し、測定された放射線を示す情報を含む測定データを通信子機18を介して外部(本実施形態においては、データ処理装置50)伝送することができる。
データ処理装置50との間で測定データを含むデータの伝送が行われた後、次回の起動時刻まで、各測定装置10は、プロセッサ20により、電池30から放射線検出器12及び通信子機18に電力が供給されない休止状態に制御される。なお、本実施形態の休止状態においては、電池30から増幅計数回路14への電力供給も遮断される。各測定装置10における「作動状態」と「休止状態」との切り替えるタイミングについては、後述する。
上述したように、プロセッサ20は、上述した計数率や計数等の放射線検出器12に入射した放射線を示す情報(以下、放射線情報と記す)と、電池30の端子間電圧(以下、単に「電池電圧」と記す)を示す情報(以下、電池電圧情報と記す)とを取得している。なお、本実施形態において、プロセッサ20により取得される電池30の端子間電圧は、閉路電圧である。
プロセッサ20は、上述した放射線情報及び電池電圧情報を含む測定装置10において測定されたデータ(以下、測定データと記す)を生成する。測定データは、測定装置10からデータ処理装置50に伝送されるデータ、いわゆる送信用データである。本実施形態において、測定データには、上述した時刻情報や識別情報を示すデータが含まれる。プロセッサ20は、通信親機52との間に通信を確立するよう通信子機18を制御し、生成した測定データを、これら通信機18,52を介して、データ処理装置50(図1参照)に伝送する。
(データ処理装置の詳細な構成)
本実施形態の放射線モニタリングシステムのうちデータ処理装置の構成例について図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の放射線モニタリングシステムのうちデータ処理装置の構成例を示す模式図である。
データ処理装置50は、上述した通信親機(すなわちトランスミッタ−レシーバ)52と、当該通信親機52を介して各測定装置10からのデータを取得する監視ユニット51とを有する。本実施形態において、監視ユニット51と通信親機52は、一体に結合されており、利用者により持ち運び可能な(すなわち可搬性を有する)データ処理装置50を構成している。なお、通信親機52と監視ユニット51は、互いに結合されておらず、通信用ケーブル等を介して電気的に接続されているものとしても良い。
本実施形態の監視ユニット51は、利用者の入力を受け付ける入力機器54と、入力機器54からのデータや、通信親機52を介して取得されたデータを処理するプロセッサ55と、各種の情報を表示可能な表示器56と、各種のデータを格納し、当該データを保持する記憶装置58とを有する。入力機器54には、キーボードやタッチパネル等を用いることができる。表示器56には、タッチパネル等の画面を有する表示装置が用いられる。表示器56には、コンピュータ・ディスプレイ等の表示端末を用いることも可能である。プロセッサ55には、入力機器54、表示器56、記憶装置58が電気的に接続されており、これら機器・装置間においてデータの伝送が可能に構成されている。
監視ユニット51は、各測定装置10から、当該通信親機52を介してそれぞれ測定データを取得して、これら測定データの評価を行う。当該測定データには、各測定装置10の放射線情報及び電池電圧情報が含まれている。
監視ユニット51のプロセッサ55は、取得された放射線情報に基づいて各測定装置10の放射線検出器12に入射した放射線の線量率又は線量を算出する。なお、本実施形態において、プロセッサ55は、取得された電池電圧情報に基づいて、各測定装置10の電池30の電池電圧を算出する。プロセッサ55は、表示器56の画面の表示を制御することが可能なものであり、例えば、各測定装置10の線量率又は線量を示す情報が、測定装置の識別情報や時刻情報と共に表示させるよう、表示器56を制御する。
表示器56の画面に表示可能な項目には、測定が行われた時刻、測定装置が配置された場所、測定装置の識別情報、線量率や表面線量率等の測定種別、線量率や線量等の測定された値、警報を発するか否かを判定するための設定値と、その判定結果、各測定装置10の通信子機18と通信親機52との通信状態、各測定装置10の診断結果、各測定装置10の電池30からの電力供給を示す情報、当該電池30を交換するまでの時間などがある。
なお、本実施形態の監視ユニット51は、各測定装置10の電池30の残り寿命、すなわち現時点から電池30の交換が必要になるまでの放電時間を推定する機能を有しており、当該機能には、各測定装置10の電池30の電圧が、所定の判定電圧に到達するまでの時間を算出する機能を含んでいる。この機能を実現するプログラムは、予め記憶装置58に格納されており、プロセッサ55により実行される。当該機能については、後述する。なお、本実施形態のデータ処理装置50は、監視ユニット51が有する各種のデータを、通信親機52を介して、さらに上位の(別の)システムや機器に転送する機能を有することも好適である。なお、プロセッサ55は、推定された放電時間特性に基づいて、電池30を交換する日付及び時刻を算出する機能を有する。
監視ユニットの動作、画面に表示される項目及びその表示形態は、入力機器54が受け付けた利用者の操作入力に応じて変更することが可能である。また、操作入力に応じて、監視ユニット51、通信親機52、通信子機18を含む測定装置10、その他の放射線モニタリングシステムに関する設定を変更することが可能である。
各測定装置10について個別に設定が可能な項目には、上述したRTCから提供される時刻に関する設定及び修正、放射線の測定を含む一連の動作を開始する起動時刻(基準日時)の設定、所定の起動時刻から次回の起動時刻までの時間的な間隔(以下、測定監視間隔と記す、図4の符号Tint参照)、放射線測定が連続的に行われる1回の測定時間(図4の符号Tmsr参照)、プロセッサ20によるデータの処理方法と当該処理に必要な各種の定数、各測定装置10の識別情報、表示器56の画面において参照可能な各種の付帯情報などがある。各測定装置10は、所定の測定監視間隔ごとに設定された起動時刻に起動して、起動時刻の直後から放射線の測定を開始する。
これら各種の設定を示すデータは、記憶装置58に予め格納されており、入力機器54及びプロセッサ55により変更することが可能である。記憶装置58には、データの保守管理や、当該データに含まれる情報の出力(例えば、印刷)等、各種のユーティリティ・プログラムが格納されており、これらのプログラムは、プロセッサ55により読み出されて実行される。
本実施形態において、監視ユニット51は、各測定装置10を制御する制御装置として機能するよう構成されている。具体的には、各測定装置10の各種の動作設定や時刻を変更・修正する機能を有している。監視ユニット51のうちプロセッサ55は、各測定装置10を制御するためのデータ(以下、制御データと記す)を生成する。
当該制御データには、上述した測定装置10の動作設定を示す情報や、データ処理装置50において用いられている時刻を示す情報が含まれている。当該時刻は、具体的には、監視ユニット51のプロセッサ55において保持されている高精度の時刻である。プロセッサ55は、通信親機52を制御して、生成した制御データを通信親機52を介して各測定装置10・・・(図1参照)に伝送する。各測定装置10のプロセッサ20は、監視ユニット51からの制御データに含まれる情報に従って、各種の設定を変更・修正する。制御データには、例えば、データ処理装置50において用いられている時刻を示す情報を含み、当該時刻は、各測定装置10における時刻の修正に用いられる。
なお、本実施形態において、監視ユニット51は、プロセッサ55により算出された線量率又は線量が、所定の設定値を超えた場合に、警報を発する機能を有する。このような警報は、例えば、表示器56が、線量率又は線量が設定値を超えた旨を画面に表示することや、監視ユニット51から警告音を発することにより実現される。また、監視ユニット51は、各測定装置10の電池30の電圧値が、所定の設定値を下回る場合にも、その旨を表示器56の画面に表示する等して、利用者に通知できる手段を備える。
以上のように構成された放射線モニタリングシステムによれば、異なる場所に配置された複数の測定装置10A,10B,10C,・・・において測定された放射線の線量率や電池30の電圧等の情報を統合・整理して利用者に提示することができる。また、各測定装置において放射線を測定するのに必要な電池による給電能力が枯渇してしまう時期を予測する事で、利用者は事前に電池を交換すべき時期を把握し、電池交換の作業を計画することで、欠測なくシステムを運用することができる。
以上のように構成された放射線モニタリングシステムにおいては、それぞれ異なる場所に配置された複数の測定装置を長期間に亘って使用するためには、各測定装置10の電池30の電力消費を抑制する必要がある。
そこで、本実施形態の放射線モニタリングシステムにおいては、各測定装置10のうち電池30から電力の供給を受けるデバイスを間欠的に作動させており、以下に図4を参照して説明する。図4は、本実施形態の放射線モニタリングシステムのうち各測定装置10の動作を説明するタイミングチャートである。
なお、図4には、多数の測定装置のうち3つの測定装置10A,10B,10Cのそれぞれの動作について説明しており、放射線モニタリングシステムに含まれる測定装置の数は、3つに限定されるものではない。
図2及び図4に示すように、複数の測定装置10A,10B,10Cは、所定の同じ起動時刻(基準日時)ts0において起動する。各測定装置10の起動は、プロセッサ20が有するタイマー機能により制御される。本実施形態において当該タイマー機能は、測定装置10が有するRTC24からの時刻に基づいて時間を管理している。動作・起動する時間間隔Tintはそれぞれ独立に設定する事ができるが、この図4の例では、いずれも同じ動作・起動間隔の時間設定がなされているものとして説明する。この場合、複数の測定装置10A,10B,10Cは、所定の誤差の範囲内で、ほぼ同時に起動することになる。このとき、各測定装置10においては、電池30から少なくとも放射線検出器12、増幅計数回路14及びプロセッサ20への電力供給が開始される。複数の測定装置10のうち一つの測定装置10の各種動作について以下に説明する。
測定装置10は、所定の測定時間Tmsrに亘って放射線検出器12に入射した放射線を測定する。具体的には、各測定装置10のプロセッサ20は、放射線検出器12に入射した放射線の数を増幅計数回路14から取得し、測定時間Tmsrに亘ってカウントされた放射線の数を含む測定データを生成する。測定時間Tmsrは、本実施形態において、1分間に設定されている。
測定時間Tmsrに亘る放射線の測定が終了した後、具体的には、図4に示すように、放射線の測定が終了した時刻(以下、測定終了時刻と記す)te0から、プロセッサ20は、電池30から放射線検出器12及び増幅計数回路14への電力供給が遮断される休止状態となるよう、電力回路32,34をオフに制御する。なお、測定時間Tmsrに亘って放射線が測定されている間、電池30から通信子機18には電力は供給されていない。
上述した測定データ等を通信子機18を通して伝送するために、各測定装置10は、放射線の測定を終了した時点すなわち測定終了時刻te0から、所定の遅延時間Daが経過した後に、データ処理装置50との間でデータの伝送を開始する。より具体的には、プロセッサ20は、電池30から通信子機18に電力が供給される作動状態となるよう電力回路38をオンに制御し、通信子機18と、データ処理装置50の通信親機52との間における通信の確立を試みる。なお、複数の測定装置のうち、最初にデータ処理装置50との間でデータの伝送を行う測定装置10の遅延時間Daは、ゼロに設定することができる。
測定装置10は、所定の遅延時間(ゼロ秒)が経過した後、すなわち放射線の測定が終了した直後に、電池30から通信子機18に電力が供給される作動状態に制御される。当該通信子機18は、通信親機52との間で無線通信を確立し、測定装置10とデータ処理装置50との間で各種のデータの伝送が可能となる。一例として、当該データの伝送路を、図1に破線矢印C1で示す。その後、測定装置10のプロセッサ20は、生成した測定データを、時刻情報及び識別情報を示すデータと併せて、通信子機18及び通信親機52を介してデータ処理装置50の監視ユニット51に伝送する。なお、測定装置10は、他の測定装置の通信子機18を介して、データ処理装置50との間でデータの伝送を行うものとしても良い。
一方、監視ユニット51からは、通信親機52及び通信子機18を介して、上述した制御データが測定装置10に伝送される。本実施形態において、制御データには、当該測定装置の各種の動作設定を示す情報に加えて、監視ユニット51で保持されている高精度の時刻を示す情報が含まれている。各測定装置10のプロセッサ20は、そのタイマー機能の時間の積算の基となる時刻、例えば、RTC24からの信号を受けて算出された時刻を、監視ユニット51からの「基準となる時刻」に合わせる形で修正することができる。また、起動時刻ts1,ts2、測定時間Tmsr、測定監視間隔Tint又は遅延時間Da(及びDb,Dc)を変更することも可能である。
なお、測定装置10とデータ処理装置50との間における、測定データの伝送と制御データの伝送は、通信子機18及び通信親機52の送信と受信とを交互に切り替えることにより、順次行われる。
測定装置10とデータ処理装置50との間におけるデータの伝送に要する時間、具体的には、通信子機18と通信親機52との間で無線通信を確立してから、測定データ及び制御データの伝送を完了するまでの時間は、測定時間Tmsrに比べて極めて短いものであり、例えば、せいぜいミリ秒オーダである。
このように測定装置10とデータ処理装置50との間におけるデータの伝送(データの伝送)が行われた後、今回の起動時刻ts0から所定の測定監視間隔経過後に設定された次回の起動時刻ts1まで、測定装置10は、電池30から放射線検出器12及び通信子機18に電力が供給されない休止状態に制御される。本実施形態においては、プロセッサ20が、電力回路32,34,38をそれぞれオフに制御して、電池30から放射線検出器12、増幅計数回路14及び通信子機18への電力供給を遮断する。
なお、測定装置10が休止状態に制御されている間、プロセッサ20は、電池30から電力回路36を通して僅かな電力の供給を受けて、アイドル状態で作動しており、次回の測定装置10の起動に備えている。このように測定装置10が休止状態に制御されている期間を、図4に符号Haで示し、以下に「休止期間」と記す。当該休止期間Haにおいて、プロセッサ20は、RTCからの時刻を示す信号を断続的に受けている。
プロセッサ20は、RTC24から次回の起動時刻ts1を示す信号を受けたときに、再び、測定装置10を起動して、測定装置10を休止状態から作動状態に切り替える。本実施形態においては、プロセッサ20は、電力回路32,34をそれぞれオンに制御する。放射線検出器12及び増幅計数回路14は、電池30から電力の供給を受けて作動する。測定装置10は、電池30から少なくとも放射線検出器12に電力が供給される作動状態となるよう制御され、放射線検出器12に入射した放射線の測定が、再び行われる。
以上に説明したように、本実施形態の測定装置10は、起動時刻ts0から測定時間Tmsrに亘って放射線の測定を行い、放射線の測定が終了した後、具体的には、測定終了時刻te0から遅延時間Daが経過した後、ごく短時間に亘ってデータの伝送(図4に符号Caで示す)を行う。具体的には、通信子機18と通信親機52との間で無線通信を確立し、これら通信機18,52を介して、無線通信によりデータ処理装置50との間で測定データ及び制御データ等の伝送を行う。なお、当該測定装置10について、遅延時間Daは、ゼロ秒に設定されており、放射線の測定が終了した直後から上述したデータの伝送Caが行われる。
本実施形態の放射線測定システムにおいては、データ処理装置50との間でデータの伝送Caを終了した後、今回の起動時刻ts0から所定の測定監視間隔Tintが経過した後に設定された次回の起動時刻ts1まで、各測定装置10は、電池30から放射線検出器12、増幅計数回路14及び通信子機18に電力が供給されない休止状態となるよう、プロセッサ20により検出器用電力回路32、増幅用電力回路34及び通信機用電力回路38が制御されて当該電池30から当該放射線検出器12、増幅計数回路14及び通信子機18への電力の供給が遮断される。これにより、データの伝送の終了後から、次回の起動時刻ts1,ts2までの期間Haにおいて、電池30の電力消費が抑制することができる。
本実施形態の放射線測定システムは、それぞれ異なる場所に配置された複数の測定装置10(具体的には、10A,10B、10C)を有する。各測定装置10は、放射線を測定した後、共通のデータ処理装置50との間で、測定データを含むデータの伝送を行う。データの伝送が行われた後、次回の起動時刻ts1,ts2までの期間Haにおいて、複数の測定装置10のぞれぞれの電池30の電力消費が抑制される。
本実施形態のシステムは、各測定装置10により測定された放射線情報を含むデータを処理するデータ処理装置50の監視ユニット51が、測定された放射線の線量率又は線量が所定の設定値を超えたときに警報を発する「放射線モニタリングシステム」である。本実施形態の放射線モニタリングシステムによれば、監視ユニット51が継続的に、各測定装置10により測定された放射線をモニタリングすることにより、監視ユニット51の利用者は、測定装置10が配置された複数の場所の放射線の線量率や線量の変化を、その場でリアルタイムに把握することができる。
また、本実施形態の放射線モニタリング方法は、図4に示すように、複数の測定装置10A,10B,10Cにおいて、それぞれ、電池30から少なくとも放射線検出器12に電力を供給して当該放射線検出器12に入射した放射線を測定するステップ(以下、測定ステップと記す)Ma,Mb,Mcと、当該測定ステップMa,Mb,Mcが終了した後、これら測定装置10A,10B,10Cにおいて電池30から少なくとも通信子機18に電力を供給してデータ処理装置50との間において測定データを含むデータの伝送を行うステップ(以下、伝送ステップと記す)Ca,Cb,Ccとを有する。
加えて、本実施形態の放射線モニタリング方法は、当該伝送ステップCa,Cb,Ccが行われた後、起動時刻ts0から所定の測定監視間隔Tintが経過した後に設定された次回の起動時刻ts1まで、これら測定装置10A,10B,10Cを、それぞれ、電池30から放射線検出器12及び通信子機18のいずれにも電力が供給されない休止状態に制御するステップ(以下、休止ステップと記す)Ha,Hb,Hcとを有する。
このような測定ステップMa,Mb,Mc、伝送ステップCa,Cb,Cc及び休止ステップHa,Hb,Hcを、それぞれ複数の測定装置10A,10B,10Cにおいて所定の測定監視間隔Tintごとに繰り返す。即ち、こうした間欠的に作動する機能を実装する事で、電池30の電力消費を抑制することができ、電池30の交換を行わなくとも、各測定装置10を長期間に亘って使用して、各測定装置10により測定された測定データを、データ処理装置50により収集して評価することができる。
なお、本実施形態において、上述した伝送ステップは、各測定装置10において測定された放射線を示す情報を含む測定データを、各測定装置10から順次、データ処理装置50に伝送するステップ、すなわち「測定データ伝送ステップ」と、各測定装置を制御するための制御データを、当該データ処理装置から各測定装置に伝送するステップ、すなわち「制御データ伝送ステップ」とを有するものとした。データ処理装置50からの制御データに従って各測定装置10を制御することにより、例えば、各測定装置10において用いられている時刻を修正して同期させることができる。
なお、本実施形態の放射線モニタリング方法において、複数の測定装置10A,10B,10Cは、同じ起動時刻ts0,ts1に起動して、放射線を測定する測定ステップを行い、当該測定ステップが行われた後、具体的には、同じ測定終了時刻te0,te1から、それぞれ異なる値に設定された遅延時間Da,Db,Dcが経過した後に、伝送ステップが行われる。これにより、複数の測定装置10A,10B,10Cのそれぞれと、単数のデータ処理装置50との間で通信上の無駄な衝突が生じることによる通信のやり直し、それに伴うで電力消費を抑制することができ、各測定装置10の通信子機18と、データ処理装置50の通信親機52との間で通信を確立することが容易になる。
なお、本実施形態においては、図1及び図4に示すように、それぞれ異なる場所に配置された複数の測定装置10A,10B,10Cが、ほぼ同じ起動時刻ts0,ts1に起動して放射線の測定を開始するよう設定されている。加えて、複数の測定装置10A,10B,10Cは、当該起動時刻ts0,ts1から同じ測定時間Tmsrに亘って放射線の測定を行う。放射線の測定は、図4に示すように、ほぼ同じ測定終了時刻te0,te1に終了する。複数の測定装置10A,10B,10Cは、それぞれ、データ処理装置50との間でデータの伝送を行った後、次回の起動時刻ts1,ts2までの期間Ha,Hb,Hc、休止状態に制御される。
例えば、最初の起動時刻ts0は、例えば、12時10分に設定され、測定時間Tmsrは、1分間に設定され、測定監視間隔Tintは、10分間に設定される。このように本実施形態において、複数の測定装置10A,10B,10Cは、同じ時間帯に、それぞれ異なる場所の放射線を測定し、それぞれ、測定データをデータ処理装置50に伝送する。
このようにして、本実施形態においては、複数の測定装置10A,10B,10Cにより同じ時間帯においてそれぞれ異なる場所の放射線を測定する。複数の測定装置10A,10B,10Cを間欠的に作動状態にして放射線を測定することにより、それぞれの電池30の電力消費を抑制しつつ、データ処理装置50は、それぞれ異なる場所の同じ時間帯の測定データを収集して処理することができる。データ処理装置50の監視ユニット51の利用者は、場所による線量率又は線量の違いを容易に把握することが可能となり、線量率又は線量が、所定の設定値を超えた場合には、監視ユニット51は、利用者に対して警報を発することが可能となる。
なお、本実施形態においては、図4に示すように、複数の測定装置10A,10B,10Cにより同じ時間帯、すなわち同じ起動時刻ts0,ts1から同じ測定時間Tmsrに亘って放射線を測定するものとしたが、各測定装置10において放射線を測定する時間帯は、これに限定されるものではない。複数の測定装置10A,10B,10Cは、共通のデータ処理装置50との間でデータの伝送を行った後、それぞれの次回の起動時刻まで、電池30から放射線検出器12及び通信子機18に電力が供給されない休止状態に制御されて間欠的に作動するものであれば良い。複数の測定装置10A,10B,10Cは、それぞれの用途や目的に応じて、起動時刻、測定時間を異ならせるものとしても良い。また、測定装置10A,10B,10Cごとに、測定監視間隔を異なることも可能である。
〔遅延時間の設定手法〕
本実施形態の放射線モニタリング技術において各測定装置に予め設定される遅延時間について、図1及び図4を参照して詳細を説明する。遅延時間(例えば、図4にDa,Db,Dcで示す)は、各測定装置において放射線の測定を終了してから、当該測定装置とデータ処理装置との間でデータの伝送を行うために、通信子機18と通信親機52との間における通信の確立を開始するまでの時間である。
上述した測定データを通信子機18を通して伝送するために、本実施形態においては、放射線の測定を終了する時点すなわち測定終了時刻te0から、所定の遅延時間Daが経過した後に、プロセッサ20は、電池30から通信子機18に電力が供給される作動状態となるよう、電力回路38をオンに制御する。
図4に示すように、複数の測定装置10A,10B,10Cは、同じ測定終了時刻te0,te1から、異なる値に設定された遅延時間Da,Db,Dcが経過した後に、データ処理装置50との間で、順次、データの伝送Ca,Cb,Ccを行う。例えば、測定装置10の遅延時間Daを、上述したようにゼロ秒に設定し、測定装置10Bの遅延時間Dbを1秒に設定し、測定装置10Cの遅延時間Dcを2秒に設定することができる。
また、3つの測定装置10A,10B,10Cによりそれぞれ異なる場所の放射線の測定を同じ起動時刻ts0,ts1から行い、測定時間Tmsrが1分間であり且つ測定監視間隔が10分間である場合において、一つの通信子機18が通信親機52との通信を確立するのに要する時間と、一つの測定装置10がデータ処理装置50との間で測定データ及び制御データの伝送を行うのに要する時間との和が、例えば、1秒である場合には、遅延時間Da,Db,Dcの時間的な差を、1秒より十分に大きい値、例えば、1.5秒に設定する。
このように本実施形態においては、上述した測定するステップにおいて、複数の測定装置10A,10B,10Cを、同じ起動時刻ts0,ts1に起動して同じ測定時間Tmsrに亘って放射線を測定し、上述した伝送するステップは、複数の測定装置10A,10B,10Cにおいて、放射線の測定を終了した時刻から、それぞれ異なる値に設定された遅延時間Da,Db,Dcが経過した後に行われるものとした。
このように遅延時間Da,Db,Dcを設定することにより、各測定装置10の通信子機18と、データ処理装置50の通信親機52との間において通信上の衝突が生じることを、確実に回避することができる。通信上の衝突には、例えば、特定の通信子機18と通信親機52との接続が確立できず、当該接続の確立を再び試みる、いわゆるリトライが発生することである。当該リトライが生じることを防止することにより、当該接続が確立されるまでの待ち時間を抑制することができる。これにより、各測定装置10においては、通信子機18における電力消費を抑制することができ、当該通信子機18に電力を供給する電池30を長期間に亘って使用することができる。
なお、測定装置の数は、上述した3台に限定されるものではない。例えば、測定監視間隔が10分間であり、30台の測定装置10A,10B,10C,・・・により、同一の時間帯に放射線の測定を行う場合、遅延時間の時間的な差を仮に1.5秒に設定したとすると、30台の測定装置に必要な遅延時間の合計は、45秒となる。この場合、測定時間Tmsrを1分間とすると、データ処理装置50との間でデータの伝送が行われた後、次回の起動時刻までに、各測定装置10を休止状態にすることができる。なお、測定監視間隔Tintは、各測定装置10の遅延時間を確保できる範囲で、任意の値(例えば、5分間、10分間、30分間等)に設定することができる。
〔測定装置における時刻合わせ〕
本実施形態の測定装置における時刻合わせについて、図1〜図4を参照して説明する。なお、本実施形態においては、各測定装置10は、図3に示すように、時刻を示す信号を生成するRTC24を有する。プロセッサ20は、RTC24からの時刻を示す信号に基づいて、詳細な時刻を算出する。
本実施形態においては、複数の測定装置10のそれぞれにおいて、RTC24が時刻を示す信号を生成し、当該信号に基づいてプロセッサ20が詳細な時刻を算出し、当該時刻を保持している。プロセッサ20は、当該時刻に基づいて対応する測定装置10の起動時刻を設定する。このため、複数の測定装置10は、時刻については、基本的に同期していないため、それぞれのプロセッサ20が算出し、保持している時刻に僅かなずれが生じている場合がある。このような場合、原理的には、複数の測定装置10は、本来起動するはずの時刻に対して、それぞれ僅かなずれを持った時刻に起動することがある。
そこで、本実施形態においては、上述した伝送ステップにおいてデータ処理装置50の監視ユニット51から複数の測定装置10のそれぞれに伝送される制御データには、監視ユニット51のプロセッサ55において保持されている時刻を示す情報が含まれている。監視ユニット51は、測定装置10のRTC24とは別に、高い精度で時刻を示す信号を生成する回路(図示せず)を有し、プロセッサ55は、当該信号に基づいて基準となる時刻を算出している。プロセッサ55は、当該時刻を示す情報を含む制御データを、通信親機52を介して各測定装置10に伝送する。
各測定装置10のプロセッサ20は、監視ユニット51からの制御データに含まれる基準となる時刻を示す情報に従って、当該プロセッサ20が保持している時刻を修正する。なお、プロセッサ20は、データ処理装置50からの時刻を示す情報に従って、RTC24が保持している時刻を修正することも可能である。
このように、本実施形態においては、上述した制御データを伝送するステップにおいて、当該制御データは、データ処理装置50において用いられている時刻を示す情報を含み、当該制御データを伝送するステップが行われた後、各測定装置10において、当該制御データに含まれている時刻を示す情報に従って、当該測定装置10のプロセッサ20が保持している時刻を修正するものとした。
これにより、データ処理装置50において保持されている時刻を基準として、複数の測定装置10の時刻を都度同期させることができる。各測定装置10は、データ処理装置50を基準に同期した時刻に基づいて起動して、作動状態と休止状態との切替を制御することができ、放射線を測定する測定ステップ、データを伝送する伝送ステップ、電池30から放射線検出器12及び通信子機18に電力が供給されない休止状態に制御される休止ステップを、時間的に高い精度で切り替えることができる。
なお、本実施形態の各測定装置10において、RTC24は、専用の一次電池26から電力の供給を受けている。当該一次電池26は、放射線検出器12又は通信子機18に電力を供給する一次電池30とは別の電源であり、測定装置10の作動状態/休止状態に拘わらず、RTC24に電力を供給する。RTC24の消費電力は、極めて小さいものであるため、当該一次電池26は、放射線検出器12や通信子機18に電力を供給する一次電池30の交換時期に比べて遥かに長い期間、連続的に使用することができる。
〔各測定装置の電池電圧情報の表示〕
本実施形態の放射線モニタリングシステムにおいて、図1及び図3に示すデータ処理装置50の監視ユニット51は、各測定装置10からの測定データを取得しており、当該測定データには、当該測定装置10の電池30の端子間電圧を示す情報である電池電圧情報や識別情報が含まれている。監視ユニット51は、複数の測定装置10A,10B,10Cから、それぞれデータの伝送Ca,Cb,Ccが行われる度に、それぞれの電池30の電池電圧情報及び識別情報を含むデータを取得している。
図3に示す監視ユニット51において、当該測定データは、記憶装置58に格納され、プロセッサ55により読み出される。プロセッサ55は、複数の測定装置10A,10B,10C,・・・のそれぞれの電池30の電池電圧情報を、識別情報と共に、表示器56の画面に表示させる。これにより、利用者は、監視ユニット51の表示器56の画面上で、各測定装置10の電池30の電圧を容易に確認することができ、電池30からの電力供給状態や、電池30の交換が必要となる時期を、測定装置10ごとに把握することができる。複数の測定装置10A,10B,10Cで、それぞれ休止状態に制御される期間Ha,Hb,Hcの長さが異なる場合や、それぞれの測定時間Tmsrの長さが異なる場合に、特に有用である。
なお、当該監視ユニット51を含むデータ処理装置50は、各測定装置10の放射線情報や電池電圧情報を含む測定データを、通信親機52を介して、さらに上位の(別の)システムや機器に転送することも好適である。データ処理装置50から測定データ等の転送を受けたシステムや機器において、その利用者が、電池30の交換時期等に係る各測定装置10の保守を示す情報を事前に知ることが可能となる。
なお、監視ユニット51の利用者等が、電池30の交換時期等を把握するためには、当該電池30の電圧を、表示器56の画面に表示する手法に限定されるものではない。監視ユニット51においてプロセッサ55が、特定の測定装置10において時期を異ならせて(具体的には、所定の測定監視間隔Tintをあけて)測定された複数の電池電圧情報に基づいて、当該測定装置10の電池30の交換時期を算出、推定することも好ましく、以下に、その一例について説明する。
〔一次電池の残り寿命の推定方法〕
本実施形態の放射線モニタリングシステム方法においては、各測定装置10が有する一次電池30の残り寿命、すなわち当該電池30の交換時期を推定する。以下に、本実施形態の一次電池の残り寿命の推定方法について、図1〜図3と、図5、図6及び図7を参照して説明する。図5は、本実施形態の一次電池の残り寿命を推定する方法を説明するフローチャートである。図6は、一次電池の放電時間と電池電圧との関係を示すグラフである。図7は、一次電池の放電時間の平方根と電池の電池電圧との関係を示すグラフである。
なお、本実施形態においては、一次電池の残り寿命の推定方法の一例として、図1に示す放射線モニタリングシステムを構成する各測定装置10が有する電池30の残り寿命を、監視ユニット51において算出、推定する場合について説明する。
当該電池30は、起動する度に、測定装置10のうち、少なくとも放射線検出器12及び通信子機18、本実施形態においては、RTC24以外のデバイス、例えば、増幅計数回路14及びプロセッサ20にも電力を供給する。測定装置10は、起動時刻に起動して、放射線検出器12に入射した放射線の測定と、通信子機18を介してデータ処理装置50との間においてデータの伝送を行う度に、電池30は、放電を行う。すなわち、電池30は、放射線検出器12及び通信子機18の少なくとも一方に給電する。
図5に示すように、まず、監視ユニット51のプロセッサ55は、特定の測定装置10において実際に測定された電池30の電池電圧(以下、実測電圧と記す)Vmiと、当該実測電圧Vmiが測定されるまでに、電池が使用を開始され最初の電池電圧測定を始めた時間からの放電時間tとを、上述した測定監視間隔Tintごとに取得する。(S02)。当該実測電圧Vmiは、測定装置10からの測定データに含まれている。放電時間tは、実測電圧Vmiと対応して測定データに含まれているものとしても良いし、監視ユニット51が、測定データとは別に、時間を積算して算出しているものとしても良い。
本実施形態において、実測電圧Vmiは、電池30の電池電圧、例えば、端子間電圧(閉路電圧)である。
そして、ステップS04において、今回取得された実測電圧Vmiが、所定の判定値(以下、切替電圧と記す)Va以上であるか否かを判定する。当該切替電圧Vaは、図6に示すように、一次電池30の放電時間に対する電池電圧の特性が大きく変化する電圧である。図7に示すように、電池電圧が、切替電圧Va以上である場合、放電時間tの平方根と、電池電圧は、実質的に、一次関数(一次式すなわち直線式)の関係にあることが分かる。
当該関係にあるのは、電池30内の負極近傍には、放電時間が経過するに従って、電気分解による生成物が僅かずつ堆積し、負極近傍に形成された堆積物の(いわゆる電解生成物)の層が電池30の内部抵抗となるためと考えられる。堆積物の層(以下、堆積層と記す)の厚さが放電時間当たりに増大する増大率は、電流値に比例するものとし、且つ堆積層を抵抗として、当該電流値は、堆積層の厚さに反比例すると仮定した場合、以下の微分方程式(1)が、成立する。
当該式(1)において、
Dは、堆積層の厚さ
Iは、堆積層を流れる電流
K1は、定数
tは、放電時間である。
この式(1)を解くことにより、堆積層の厚さDが、放電時間tの平方根に対して比例する式を得ることができる。電池30が一定の電気的負荷に一定の電流を流す場合、その内部抵抗に流れる電流も一定となるため、その内部抵抗において生じる電圧降下が、電池30の電池電圧の降下の一部分として測定される。よって、電池30の端子間電圧(閉路電圧)である電池電圧は、放電時間の一次関数で表される。
上述した切替電圧Vaは、後述する終止電圧Veより高い値であって、放電時間tの平方根と電池電圧との概ね一次関数の関係を示す電池電圧のうち、最も低い値に設定される。本実施形態において、電池30の切替電圧Vaは、3.6[V]又は、これを僅かに上回る値に予め設定されている。当該切替電圧Vaは、適合実験やシミュレーション等により求めることができ、記憶装置58に予め格納されている。
電池30の電池電圧が、切替電圧Va以上である場合、放電時間tの平方根と電池電圧との関係は、下記の式(2)で示す一次関数で表すことができる。当該式(2)を用いて、図5にステップS06〜S16で示される切替電圧到達時間ΔT1を推定する演算処理(以下、通常モード処理と記す)を行う。なお、式(2)で示される電池電圧が切替電圧Va以上である領域における放電時間tと電池電圧の関係、すなわち電圧降下特性を、以下に「通常モード電圧降下特性」と記す。
当該式(2)において、
Vは、電池30の電池電圧(端子間電圧、閉路電圧)
tは、電池30の放電時間
A及びBは、通常モード処理において、最小二乗法により求められる係数(変数)
(通常モード電圧降下特性の初期値においては、所定の定数)
実測電圧Vmiが、切替電圧Va以上である場合(S04:Yes)、予測電圧Vciを算出する。予測電圧Vciは、図7に示すような、通常モード電圧降下特性(初期値)と、今回の放電時間tに基づいて算出される。通常モード電圧降下特性(初期値)は、適合実験やシミュレーション等により求めることができ、記憶装置58に予め格納されている。今回取得された実測電圧Vmiが、特定の測定装置10の電池30について4回目に取得された実測電圧Vm4である場合、これに対応する今回の放電時間t4と、通常モード電圧降下特性(初期値)に基づいて、今回の予測電圧Vc4を算出する。
なお、通常モード電圧降下特性(初期値)は、特定の測定装置10において前回までに複数回取得された実測電圧と、今回取得された放電時間に基づいて算出することができる。本実施形態においては、前回までに取得された複数の実測電圧Vm1,Vm2,Vm3のそれぞれの平方根と、各実測電圧にそれぞれ対応する放電時間t1,t2,t3に基づいて、最小二乗法により、上述した式(2)で表される一次関数である通常モード電圧降下特性(初期値)が算出される。
ステップS02において4回目の実測電圧Vm4と対応する放電時間t4が取得された場合、プロセッサ55は、当該放電時間t4と、上述した通常モード電圧降下特性(初期値)に基づいて、予測電圧Vc4を算出することができる。
そして、ステップS08において、実測電圧Vmiと予測電圧Vciとを差が、所定の判定値S以上であるか否かを判定する。すなわち、電池30の状態に大きな変化があったか否かを判定している。例えば、電池30の周囲の環境や消費される電流に大きな変化があった場合に、実測電圧Vmiと予測電圧Vciとの間に、判定値Sを超える差が生じる。当該判定値Sは、適合実験やシミュレーション等により求めることができ、記憶装置58に予め格納されている。
実測電圧Vmiと予測電圧Vciとの差が、判定値S以下である場合(S08:Yes)、ステップS10において、今回取得された実測電圧Vmi及びその放電時間tと、前回までに取得された複数の実測電圧Vmi及びその放電時間tに基づいて、新たな通常モード電圧降下特性を、最小二乗法により算出する。具体的には、取得された時期が異なる3セット以上の実測電圧Vmi及びその放電時間tに基づいて、上述した式(2)における係数A及びBを求める。これら係数A及びBが決定された式(2)が、新たに算出された通常モード電圧降下特性を示す式となる。
例えば、前回までに2回取得された複数の実測電圧Vm1,Vm2と、それぞれ対応する放電時間t1,t2が既に取得されている場合、今回(3回目)に取得された実測電圧Vm3とその放電時間t3を加えて、これら3セットの実測電圧Vm1〜Vm3及び放電時間t1〜t3に基づいて、最小二乗法を用いて、上述した式(2)の係数A及びBを決定(適合)する。このようにしてA及びBが決定された式(2)は、新たな通常モード電圧降下特性(以下、更新値と記す)を示している。
そして、新たに算出された通常モード電圧降下特性(すなわち更新値)を、記憶装置58に格納し、以降の通常モード処理(S06〜S16)において、当該通常モード電圧降下特性(更新値)を、予測電圧Vciの算出や、後述する切替電圧到達時間ΔT1の算出、推定に使用する。
そして、ステップS14において、当該通常モード電圧降下特性(更新値)に基づいて、所定の切替電圧Va(図6及び図7参照)に到達するまでの放電時間(以下、切替電圧到達時間と記す)ΔT1を推定する。切替電圧到達時間ΔT1は、図6に示すように、完全に充電された電池30が放電を開始した時点から、所定の電気的負荷に応じて放電を行うことにより電池電圧が降下して、所定の切替電圧Vaに到達するまでの放電時間である。具体的には、放電時間の平方根と電池電圧との一次関数である通常モード電圧降下特性に基づいて、所定の切替電圧Vaに到達する切替電圧到達時間ΔT1を、外挿法により推定することができる。推定された切替電圧到達時間ΔT1は、記憶装置58に格納、保持される。
そして、ステップS16において、切替電圧Vaに到達してから終止電圧Veに到達するまでに要する放電時間(以下、単に「終止電圧到達時間」と記す)ΔT2を取得する(図6参照)。なお、終止電圧Veは、電池30の放電を終了する限度を示す電圧であり、これ以上電力を取り出した場合、液漏れ等を起こしやすくなる事が知られている。例えば、一つのアルカリ乾電池(cell)の終止電圧が0.9[V]程度である。電池30は、公称電圧1.5[V]のアルカリ乾電池(一次電池)が3個、直列に接続されたものである場合、その終止電圧Veは、2.7[V]とみなすことができる。
通常モード処理において、電池電圧が、切替電圧Vaより低い領域における電圧降下を指数関数的に増大させる成分について算出するための実測電圧Vmi及び放電時間tが取得されていない場合、終止電圧到達時間ΔT2には、所定の定数が用いられる。この終止電圧到達時間ΔT2を示す定数は、適合実験やシミュレーションにより求めることができ、記憶装置58に予め格納されている。なお、後述する加速モード処理においては、終止電圧到達時間ΔT2は、変数として設定される。
そして、ステップS18において、電池30が完全に充電された初期状態(すなわち放電時間ゼロの状態)から、終止電圧Veに到達するまでの合計の放電時間(以下、寿命予測時間と記す)Tcを算出する。具体的には、プロセッサ55は、ステップS14において推定された切替電圧到達時間ΔT1に、ステップS16において取得された終止電圧到達時間ΔT2を加えて、寿命予測時間Tcを算出する。
一方、ステップS08において、実測電圧Vmiと予測電圧Vciとの差が、判定値Sを超える場合(S08:Yes)、ステップS22において、通常モード電圧降下特性をリセットして初期値に戻す。電池30の状態が大きく変化した場合、今回取得された実測電圧Vmi、例えばVm4は、当該変化が生じた後の値であり、当該変化が生じる前に取得された実測電圧Vm1〜Vm3と共に、通常モード電圧降下特性(更新値)を求めるのは、適切でないからである。
今回取得された実測電圧Vm4と、その放電時間t4は、記憶装置58に格納又はプロセッサ55に保持される(S24)。今回取得された実測電圧Vm4とその放電時間t4は、次回に、初期値ではない新しい通常モード電圧降下特性(更新値)を算出するための最初のデータとして用いられる。なお、前回までに取得された実測電圧Vm1〜Vm3及び放電時間t1〜t3は、電池30の状態が大きく変化する前の値であるため、今後において通常モード電圧降下特性(更新値)を算出するためには用いられない。
当該ステップS24が行われた後、又はステップS18において寿命予測時間Tcが算出された後、ステップS20において、上述した各種の変数を、さらに演算処理して、各種の情報を表示器56の画面に表示させる。例えば、監視ユニット51のプロセッサ55は、ステップS18において算出された寿命予測時間Tcから、完全に充電された電池30が現時点までに放電を行った放電時間を減ずることにより、現時点から電池電圧が終止電圧Veに到達するまで残りの放電時間、すなわち「残り寿命」を算出、推定する。
ステップS20において、電池電圧が終止電圧Veに到達する日付や時刻を算出、推定して、これを表示器56の画面に表示させることも好適である。具体的には、プロセッサ55は、測定監視間隔Tintに対する電池30が給電する時間の比率(以下、単に「デューティー比」と記す)Rdを算出する。現時点の時刻と、上述した「残り寿命」と、当該デューティー比Rdに基づいて、電池電圧が終止電圧Veに到達する時刻を推定することができる。
当該デューティー比Rdの算定には、例えば、上述した測定監視間隔Tintに対して、給電している時間としては測定時間Tmsrを用いることができる(図4参照)。測定監視間隔Tintが5分間であり且つTmsrが1分間である場合、デューティー比Rdは、0.2となる。電池30の残り寿命(残りの放電時間)を当該デューティー比Rdで除した値(時間)を、現時点の時刻に加えることにより、電池電圧が終止電圧Veに到達する時刻を推定することができる。なお、現時点の時刻には、監視ユニット51が各測定装置10に伝送する制御データに含まれる時刻を用いることが好適である。
本実施形態において、監視ユニット51のプロセッサ55は、各種の変数を表示用に処理して、表示器56の画面に表示させる。画面に表示される変数には、例えば、各測定装置10の電池30の「残り寿命」や、当該電池30の電池電圧が切替電圧Vaに到達する日付・時刻、当該電池電圧が終止電圧Veに到達する日付・時刻がある。
なお、上述したステップS22において通常の電圧降下特性がリセットされて初期値に戻った場合、ステップS18において寿命予測時間Tcは、算出されないため、ステップS20において「残り寿命」や、電池電圧が終止電圧Veに到達すると推定される日付・時刻は、算出することができない。この場合、ステップS20においては、これらの情報に代えて、電池30の現時点での電池電圧、すなわち実測電圧Vmiを、表示器56の画面に表示させるものとしても良い。今回算出されなかった寿命予測時間Tc及びこれに基づく各種の情報については、次回以降、ステップS18が実行された場合に表示される。
以上に説明した通常モード処理(S06〜S20)においては、ステップS02において取得される実測電圧Vmiが、切替電圧Va以上である場合に、繰り返し実行される。電池30の状態変化が小さい場合(S08:No)、新たに取得された最新の実測電圧Vmiを用いて、新たな通常モード電圧降下特性が算出され、当該通常モード電圧降下特性(更新値)に更新される(S10,S12)。そして、当該更新された通常モード電圧降下特性に基づいて、切替電圧到達時間ΔT1、寿命予測時間Tc、及びこれらに基づく各種の変数が更新される。このようにして、新たに実測電圧Vmiが取得される度に、表示器56の画面に表示される情報も更新される。
なお、最小二乗法により、通常モード電圧降下特性(更新値)を求めるためには、少なくとも3セットのデータ、具体的には、実測電圧Vm1〜Vm3と、その放電時間t1〜t3が必要となる。2セットのデータでは、直線式は求められるものの、最小二乗法を適用することはできない。1セットのデータのみの場合も同様である。しかし、これらの場合においても、記憶装置に予め格納されている初期値の通常モード電圧降下特性を用いて、後述する切替電圧到達時間ΔT1等を算出することが可能である。
なお、取得された実測電圧Vmiと放電時間のデータのセットの数が3未満の場合、すなわち3回目のデータが未だ取得されていない場合、上述したステップS10〜S18を行わないものとしても良い。この場合、電池30の状態変化が大きいと判定された場合(S08:Yes)と同様に、ステップS24で示されるデータの保持を行って、ステップS18における寿命予測時間Tcの算出は、行わないものとしても良い。このように、ステップS10〜S18を省略(スキップ)する場合には、ステップS20において、表示器56の画面に取得された実測電圧Vmiを表示することが好適である。
(加速モード処理)
本実施形態においては、図5及び図6に示すように、放電時間が長くなるに従って電池電圧が降下し、ステップS02において取得された最新の実測電圧Vmiが、切替電圧Vaを下回る場合(S04:No)、電圧降下特性は、上述した通常モード電圧降下特性から変化する。図6に示すように、電池電圧が切替電圧Vaより低い領域においては、放電時間が経過するに従って電池電圧が加速度的に降下している。具体的には、放電時間tの平方根に対して直線形に電圧降下する成分(通常モード電圧降下特性)に、さらに電圧降下を指数関数的に増大させる成分(劣化成分)が付加される。当該領域における電圧降下は、以下の式(3)で表すことができる。
当該式(3)において、
Vは、電池30の電池電圧(端子間電圧、閉路電圧)
tは、電池30の放電時間
A及びBは、通常モード処理において、最小二乗法により求められた係数(変数)
ΔT1は、 通常モード処理において算出された最新の切替電圧到達時間(変数)
C及びDは、加速モード処理において、最小二乗法により求められる係数(変数)
(ここで、Aは負の値、Cは正の値をとる)
当該式(3)は、通常モード処理において用いられた式(2)に対して、電池電圧を加速度的に降下させる劣化成分(指数関数成分)が減算されたものである。当該劣化成分は、切替電圧Vaを下回った後、すなわち切替電圧到達時間ΔT1経過後に顕在化することを表している。電池30の電池電圧が切替電圧Vaを下回る(すなわち切替電圧ΔT1が経過した)場合、放電時間と電池電圧の関係は、上記の式(3)で表すことができる。当該式(3)を用いて、図5にステップS30〜S34で示される終止電圧到達時間ΔT2を推定する演算処理(以下、加速モード処理と記す)を行う。なお、式(3)で示される電池電圧が切替電圧Vaを下回る領域における放電時間tと電池電圧との関係、すなわち電圧降下特性を、以下に「加速モード電圧降下特性」と記す。
加速モード電圧降下特性のうち、放電時間tの平方根に対して直線形に電圧降下する成分は、既に図5のステップS10において、通常モード電圧降下特性(更新値)が算出されており、最新の値がステップS12において記憶装置58に格納されている。加速モード電圧降下特性のうち、上述した通常モード電圧降下特性に付加される成分V’は、上記の式(3)を変形することにより、以下の式(4)のように表すことができる。
当該式(4)の両辺を、対数(log)変換することにより、直線形の式(一次関数)を得ることができ、最小二乗法により、加速モード電圧降下特性を算出することができる。
加速モード処理においては、取得された実測電圧Vmiが切替電圧Vaを下回る場合(S04:No)、ステップS30において、今回取得された最新の実測電圧Vmi及びその放電時間tを、電池電圧が切替電圧Vaを下回った後、前回までに測定監視間隔Tintをあけて取得された2セット以上の実測電圧Vmi及びその放電時間tに加えた合計3セット以上の実測電圧Vmi及び放電時間に基づいて、最小二乗法により、加速モード電圧降下特性を算出する。具体的には、最小二乗法により式(4)の係数C及びDを求める。これら係数C及びDが決定された式(3)が、加速モード電圧降下特性(更新値)となる。
そして、ステップS32において、新たに算出された加速モード電圧降下特性(更新値)を、記憶装置58に格納する。ステップS34において、当該加速モード電圧降下特性(更新値)に基づいて、終止電圧到達時間ΔT2を推定する。具体的には、加速モード電圧降下特性に基づいて、所定の終止電圧Veに到達する終止電圧到達時間ΔT2を、外挿法により推定することができる。推定された終止電圧到達時間ΔT2は、記憶装置58に格納、保持される。
なお、上述した加速モード処理において、係数C及びDを、最小二乗法により求めるためには、切替電圧Vaを下回った後、実測電圧Vmiとその放電時間tを、少なくとも3回取得する必要がある。切替電圧Vaを下回った後、3回目の実測電圧Vmiが未だ取得されていない場合、ステップS34において終止電圧到達時間ΔT2を最小二乗法により算出する代わりに、ステップS16と同様に、記憶装置58に予め格納されている終止電圧到達時間(定数)を取得することが好適である。
ステップS34において推定された終止電圧到達時間ΔT2に、ステップS14において推定された最新の切替電圧到達時間ΔT1を加えて、寿命予測時間Tcを算出する(S18)。そして、ステップS20において、プロセッサ55は、寿命予測時間Tcに基づいて、電池30の電池電圧が、終止電圧Veに到達するまでの残りの放電時間である「残り寿命」、当該終止電圧Veに到達する時刻、電池電圧が切替電圧Vaに到達する時刻など、各種の変数を算出する。プロセッサ55は、推定した切替電圧到達時間ΔT1、終止電圧到達時間ΔT2、寿命予測時間Tc、残り寿命、電池電圧が切替電圧Vaや終止電圧Veに到達する時刻等の各種の変数を、表示器56の画面に表示することができる。
本実施形態の放射線モニタリング方法においては、各測定装置10の電池30の電池電圧情報として実測電圧Vmiを、測定時期を異ならせて(具体的には、測定監視間隔Tintをあけて)監視ユニット51が測定データとして複数回取得し、測定時期が異なる少なくとも3つ以上の実測電圧に基づいて、最小二乗法により通常モード電圧降下特性を算出し(式(2)参照)、当該算出された電圧降下特性に基づいて、外挿法により所定の切替電圧Vaに到達する切替電圧到達時間ΔT1を推定するものとした(通常モード処理、S02〜S14)。これにより、アルカリ乾電池等の一次電池30の電池電圧が、加速度的に降下し始める放電時間を把握することができる。
当該通常モード処理においては、最新の実測電圧Vmiが取得される度に、通常モード電圧降下特性を更新し、当該更新された通常モード電圧降下特性に基づいて、最新の切替電圧到達時間ΔT1を推定するものとした。これにより、高い精度で電池30の残り寿命や交換時期を推定することができる。電池30において加速度的な電圧降下が始まる前、すなわち切替電圧Vaに到達する前に、当該電池30を新しいものに交換することが好適である。
加えて、本実施形態においては、電池30の実測電圧Vmiが、切替電圧Vaを下回る(S04:No)場合には、加速モード処理(S30〜S34)を行って、少なくとも3つ以上の測定時期が異なる実測電圧Vmiに基づいて、最小二乗法により加速モード電圧降下特性を算出し(式(3)及び(4)参照)、当該電圧降下特性に基づいて、外挿法により所定の終止電圧Veに到達する終止電圧到達時間ΔT2を、推定するものとした。これにより、利用者は、一次電池30が終止電圧Veに到達する時期、すなわち電池30が放射線検出器12や通信子機18に電力を全く供給できなくなる時期を知ることができる。
本実施形態においては、当該加速モード処理においても、最新の実測電圧Vmiが取得される度に、加速モード電圧降下特性を更新し、当該更新された加速モード電圧降下特性に基づいて、最新の終止電圧到達時間ΔT2を推定するものとした。これにより、終止電圧到達時間ΔT2として所定の定数を取得する(S16)場合に比べて、より高い精度で、電池30の残り寿命や交換時期を推定することができる。
以上に説明したように本実施形態の放射線モニタリング方法は、放射線検出器12及び通信子機18に電力を供給する電池30は、一次電池であり、且つ上述した測定データを伝送するステップが行われた後、データ処理装置50により、特定の測定装置10において測定時期を異ならせて測定された電池電圧である複数の実測電圧Vmiに基づいて、現時点から当該一次電池30の交換が必要になるまでの放電時間である残り寿命を推定するステップを、さらに含むものとした。これにより、各測定装置10において電池30が電力を供給できなくなる前に、当該電池30を新しいものに交換することができ、当該測定装置10の放射線検出器12や通信子機18を正常に作動させることができる。
[他の実施形態]
上述した実施形態において、複数の測定装置10は、それぞれ、測定データを、無線通信によりデータ処理装置50に伝送するものとしたが、各測定装置10とデータ処理装置50との間でデータを伝送する手法は、無線通信に限定されるものではない。例えば、複数の測定装置10のうち少なくとも一部の通信子機18と、データ処理装置50の通信親機52とを、通信用ケーブルにより接続し、当該通信用ケーブルを介して各測定装置10とデータ処理装置50との間におけるデータの伝送を行うものとしても良い。
また、上述した実施形態のシステムは、複数の測定装置10と、各測定装置10から測定データを取得する単数のデータ処理装置50とを有し、当該データ処理装置50は、取得した測定データの評価を行う装置として、各測定装置10により測定された放射線の線量率(又は線量)が、所定の設定値を超えたとき警報を発する監視ユニット51であるものとしたが、本発明に係るデータ処理装置は、この態様に限定されるものではない。本発明に係るデータ処理装置は、各測定装置10からの測定データを取得して処理するものであれば良い。本発明に係るデータ処理装置は、測定データに含まれる物理量が所定の設定値を超えたときに警報を発する機能を有していないものとしても良く、取得した各測定装置10からの測定データを、例えば、記憶装置58に格納して保存するものや、さらに上位のシステムや、別の機器に転送する機能を有するものとしても良い。
また、実施形態において、複数の測定装置10は、それぞれ、少なくとも放射線検出器12及び通信子機18に電力を供給する一次電池30を有するものとしたが、各測定装置10において放射線検出器12や通信子機18に電力を供給する電池は、アルカリ乾電池等の一次電池に限定されるものではない。測定装置10において少なくとも放射線検出器12及び通信子機18に電力を供給する電池30には、再充電可能に設計された二次電池(「蓄電池」とも呼称される)を用いることができ、例えば、リチウムイオン電池等を用いることも可能である。
なお、測定装置10の電池30に二次電池を用いた場合、当該二次電池の充電レベルとして電荷量(SOC:state-of-charge)を推定する理論は、確立されており、また、高精度で電池の残り容量(%)を推定する手法が存在する。二次電池を用いる場合には、既存の手法を用いることにより、一般的なノートPCと同様に、測定装置10の電池の残り容量を算出、推定し、当該残り容量に基づいて、当該電池を交換又は充電する時期を推定することが可能である。
また、上述した「一次電池の残り寿命の推定方法」は、放射線検出器12に入射した放射線を測定し、測定された放射線を示す情報を、測定データとして通信子機18を介して外部に伝送する測定装置10において、少なくとも放射線検出器12及び通信子機18に電力を供給する一次電池30の残り寿命を推定するものとしたが、当該「残り寿命の推定方法」が適用される一次電池は、測定装置10の電池30に限定されるものではない。当該推定方法は、電池の端子間電圧(閉路電圧)を測定可能なものであれば、アルカリ乾電池単体や、当該乾電池が直列又は並列に接続された電池等、様々な一次電池に適用することができる。
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態はその他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。