JP2019137905A - 焼入れ型及び環状部材の製造方法 - Google Patents

焼入れ型及び環状部材の製造方法 Download PDF

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康平 金谷
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Abstract

【課題】鋼製の環状部材を拘束して熱処理を行なうときに、拘束することによるワークの変形を防止する。【解決手段】ワーク20の鉛直方向下側に配置される第1の型31は、鉛直方向上方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第1拘束面35を備え、ワーク20の鉛直方向上側に配置される第2の型32は、鉛直方向下方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第2拘束面45を備える。第1拘束面35と第2拘束面45とが、互いに同軸で、かつ、軸方向に所定の間隔で対向するように第1の型31と第2の型32とが固定され、ワーク20は、鋼のA1変態点より高い温度のときは、第1拘束面35と第2拘束面45で拘束されず、鋼のA1変態点より低い温度のときに、熱収縮することによって、第1拘束面35と第2拘束面45との間で拘束される。【選択図】図2

Description

本発明は、熱処理が施された鋼製の環状部材を製造するための焼入れ型、及び、環状部材の製造方法に関する。
軸受の内輪や外輪のような、熱処理が施された鋼製の環状部材を製造する場合には、環状の加工素材(ワーク)に焼入れ等の熱処理が施され、その後、研削加工される。熱処理工程では、鋼のA1変態点(おおむね800°C)より高温に加熱されたワークを冷却油中に投入し、急速に冷却することによってワークの表面に硬化層を形成している。このとき、ワーク各部の冷却速度の違いや金属組織が変態することによって内部応力が発生し、ワークが変形する場合がある。特に、大径のワークでは、変形量が大きくなるので、研削加工をするときの取り代が増加し、製造コストが増大するという問題がある。
そこで、従来より、高温のワークを、焼入れ型に固定した状態で冷却油中に投入する熱処理方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、ワークを拘束する焼入れ型の拘束面を円錐面で形成し、当該拘束面をワークに押し付けた状態で熱処理をすることによって、ワークの変形を防止している。
特開2007−131903号公報
しかしながら、特許文献1の焼入れ型を使用した場合には、冷却油中に投入する前に、概ね900℃程度に加熱された高温のワークが、焼入れ型によって径方向に付勢されている。高温に加熱されたワークは軟化しており容易に変形する。焼入れ型の拘束面は、ワークの軸方向端部のみで当接しているので、ワークの軸端部が径方向外方に押し広げられることによって、軌道面が形成されるワーク内周面の母線形状が湾曲し、研削加工終了時に、焼入れ深さのばらつきが生じる場合がある。軸受の内輪や外輪のように、転動体が転動する軌道面を有する環状部材では、転がり寿命が低下する等の不具合を生じる。このため、特許文献1の焼入れ型では、焼入れ型を押し付ける力を精度良く管理して、拘束によるワークの変形を防止する必要があり、熱処理の作業能率が低下するという問題がある。
本発明の目的は、鋼製の環状部材に焼入れ等の熱処理を行なうときに、ワークを拘束して、焼入れ時の内部応力等に起因する変形を防止する場合であっても、更に、拘束することによるワークの変形を防止して、形状精度の優れたワークを製造する製造方法を提供することである。
本発明の一形態は、環状のワークを焼入れするときにワークを軸方向に拘束する焼入れ型であって、ワークの鉛直方向上側に配置される第1の型と、ワークの鉛直方向下側に配置される第2の型を備え、第1の型は、鉛直方向下方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第1拘束面を備え、第2の型は、鉛直方向上方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第2拘束面を備え、第1拘束面と第2拘束面は、互いに同軸に配置されるとともに、軸方向に所定の間隔で固定されており、ワークが、第1拘束面と第2拘束面の間に略同軸に設置され、ワークの温度が鋼のA1変態点より高い温度のときは第1拘束面と第2拘束面で拘束されず、鋼のA1変態点より低い温度のときに熱収縮することによって、第2拘束面との径方向の接触位置が変化し、第1拘束面と第2拘束面との間で軸方向に拘束されることを特徴としている。
本発明の他の形態は、環状のワークを軸方向に拘束して焼入れする環状部材の製造方法であって、ワークの鉛直方向上側に配置される第1の型と、ワークの鉛直方向下側に配置される第2の型を備え、第1の型は、鉛直方向下方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第1拘束面を備え、第2の型は、鉛直方向上方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第2拘束面を備え、第2の型を、第2拘束面を鉛直方向上方に向けて設置する第1ステップと、ワークを鋼のA1変態点以上の温度に加熱し、第2拘束面の上に載置する第2ステップと、第1の型を、第1拘束面を鉛直方向下方に向けて設置し、第1拘束面と第2拘束面とが、前記ワークを挟んで互いに同軸に配置されるとともに、軸方向に所定の間隔で固定される第3ステップと、第1の型と第2の型とが互いに固定された状態で、ワークとともに冷却油中に浸漬される第4ステップとを順に実施し、ワークは、ワークの温度が鋼のA1変態点より高い温度のときは、第1拘束面と第2拘束面で拘束されず、鋼のA1変態点より低い温度のときに、熱収縮することによって、第2拘束面との径方向の接触位置が変化し、第1拘束面と第2拘束面との間で軸方向に拘束されることを特徴としている。
本発明によると、鋼製の環状部材に焼入れ等の熱処理を行なうときに、ワークを拘束して、焼入れ時の内部応力等に起因する変形を防止する場合であっても、更に、拘束によるワークの変形を防止して、形状精度の優れたワークを製造する製造方法を提供することができる。
本実施形態の製造方法で加工されるワークの軸方向断面図である。 焼入れ型の構成を説明するための説明図である。 図2のX−Xの位置における焼入れ型の断面図である。 焼入れ時の、第1拘束面及び第2拘束面とワークとの位置関係を説明する模式図である。
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」)を、図を用いて説明する。本実施形態は、大型の円すいころ軸受の外輪を製造する製造方法である。外輪は、外周の直径が、概ね20センチメートルから1メートル程度である。外輪は、加工素材(ワーク)に焼入れ等の熱処理をした後、研削加工することによって製造される。
(ワークの形態)
図1は、ワーク20(環状部材)の軸方向断面図である。ワーク20は、クロムモリブデン鋼(例えば,JIS SCM420)や、ニッケルクロムモリブデン鋼(例えば、JIS SNCM420)などの低炭素鋼で製造されている。
ワーク20は、環状で、内周面21と、外周面22と、軸方向一の側の端面(以下、「小端面23」)と、軸方向他の側の端面(以下、「大端面24」)と、を有している。以下の説明では、ワーク20の中心軸mの方向を、軸方向といい、中心軸mに直交する方向を径方向という。また、図1の下方を軸方向一の側、上方を軸方向他の側として説明する。
内周面21は、中心軸mを回転軸とする円錐面の一部であり、軸方向他の側に向かうにしたがって縮径している。内周面21には、熱処理後に研削加工が施されて、図示しない円すいころが転動する軌道面が、形成される。
外周面22は、中心軸mを中心とする円筒面である。
小端面23は、外周面22の軸方向一の側の端部と、内周面21の軸方向一の側の端部とを径方向につないでおり、大端面24は、外周面22の軸方向他の側の端部と、内周面21の軸方向他の側の端部とを径方向につないでいる。小端面23及び大端面24は、それぞれ中心軸mと直交する面で、互いに平行である。
(焼入れ型の形態)
図2は、焼入れ型30の構成を説明するための説明図であって、ワーク20が組み込まれた状態を示している。
焼入れ型30は、下型31(第1の型)と上型32(第2の型)とで構成される。上型32と下型31は、それぞれ、JIS S45Cなどの機械構造用炭素鋼や、JIS SUJ2などの高炭素クロム軸受鋼などで形成されている。ワーク20に焼入れをするときには、図2に示すように、ワーク20が、上型32と下型31とで軸方向に挟まれた位置に配置される。図2では、焼入れ時に、冷却油が流れる向きを、実線の矢印Fで示している。
以下、上型32及び下型31についての説明においても、図2におけるワーク20の中心軸mの方向を軸方向といい、中心軸mと直交する方向を径方向という。また、図2の下方を軸方向一の側、上方を軸方向他の側とする。
下型31は、円錐台形状であり、第1側面33と第2側面34と第1拘束面35を備えている。第1側面33と第2側面34は、それぞれ中心軸mと直交する向きの平面であり互いに平行である。第1側面33の直径は、ワーク20の小端面23の内周側の直径より大径であり、第2側面34の外径は、ワーク20の小端面23の内周側の直径より小径である。
第1拘束面35は、第1側面33の外周と第2側面34の外周をつなぐ面である。第1拘束面35は、中心軸mを回転軸とする円錐面で形成されており、軸方向一の側から軸方向他の側に進むにしたがって縮径している。
図3は、焼入れ型30を、図2のX−Xの位置で軸方向に見たときの、断面図である。図2は、下型31を、図3のY−Yの位置における断面で示している。
下型31には、複数の第1油流路37と、第1ガイド孔36が形成されている。
第1ガイド孔36は、下型31の中心に、中心軸mに沿って軸方向に貫通する向きに形成されている。第1ガイド孔36の内周は、中心軸mを中心とする円筒面であって、第1側面33及び第2側面34と直交する向きに形成されている。
第1油流路37は、焼入れ時に、ワーク20の軌道面を冷却する冷却油が、上型32及び下型31とワーク20とで囲まれた空間Kに流入するための流路である。図3に示すように、第1油流路37は、中心軸mと平行な軸を中心とする円筒孔であって、軸方向に貫通しており、中心軸mの周りに同心円状で等間隔に配置されている。また、図2に示すように、第1油流路37は、軸方向の一端が第1側面33に開口するとともに、軸方向の他端が第1拘束面35の中央付近に開口している。
図2に示すように、上型32は、ワーク20を挟んで下型31と反対側にほぼ同軸に配置される。上型32は、円錐台形状であり、第3側面43と第4側面44と第2拘束面45を備えている。
第3側面43と第4側面44は、それぞれ中心軸mと直交する向きの平面であり互いに平行に形成されている。第3側面43の直径は、ワーク20の大端面24の内周側の直径より小径であり、第4側面44の外径は、ワーク20の大端面24の内周側の直径より大径である。
第2拘束面45は、第3側面43の外周と第4側面44の外周をつなぐ面である。第2拘束面45は、中心軸mを回転軸とする円錐面で形成されており、軸方向他の側から軸方向一の側に進むにしたがって縮径している。
上型32には、下型31と同様に、複数の第2油流路47と、第2ガイド孔46が形成されている。
第2ガイド孔46は、上型32の中心に、中心軸mに沿って軸方向に貫通する向きに形成されている。第2ガイド孔46の内周は、中心軸mを中心とする円筒面であって、第3側面43及び第4側面44と直交する向きに形成されている。
第2油流路47は、焼入れ時に、ワーク20の軌道面を冷却した冷却油が、空間Kから流出するための流路である。第2油流路47は、中心軸mと平行な軸を中心とする円筒孔であって、軸方向に貫通しており、中心軸mの周りに同心円状で等間隔に配置されている。第2油流路47は、軸方向の一端が第2拘束面45の中央付近に開口するとともに、軸方向の他端が第4側面44に開口している。
図2に示すように、上型32と下型31との間には、複数の間座40が設置される。間座40は、円柱状で、円筒形状の外周面40aと、軸方向両側に外周面40aの軸と直交する向きに形成された間座端面40bを備えている。間座端面40bには、研削加工が施されて、間座端面40b間の寸法、すなわち間座40の軸方向の長さLが、所定の寸法に仕上げられている。
本実施形態の焼入れ型30では、複数の間座40が、それぞれの軸を鉛直方向に向けて、下型31の第2側面34上に設置される。間座40は、上型32と下型31との軸方向の間隔を設定するために設置されている。間座40が設置される第2端面上の位置は、厳密に規定される必要はなく、少なくとも3個の間座40が、中心軸mから径方向に離れた位置で、周方向に略等間隔に離れて設置されるのが好ましい(図3参照)。
本実施形態の焼入れ型30では、下型31の第1ガイド孔36と上型32の第2ガイド孔46に、案内軸50が挿入されている。案内軸50の直径は、第1ガイド孔36及び第2ガイド孔46の直径よりわずかに小さい。案内軸50が、第1ガイド孔36と第2ガイド孔46に同時に挿入されることによって、上型32と下型31とが案内軸50を基準として組み合され、これにより、下型31の第1拘束面35と上型32の第2拘束面45とが同軸に設置される。
案内軸50の軸方向長さは、間座40を挟んで上型32と下型31を組み合わせたときの、第1側面33と第4側面44との軸方向の寸法よりわずかに小さい。案内軸50の両端には、軸方向にねじ穴が設けられており、座金を介してボルト51が螺合されることによって、上型32と下型31とが、互いに固定され、第1拘束面35と第2拘束面45とが軸方向に所定の寸法だけ離れた状態で同軸に固定される。
なお、間座40の形態は、本実施形態に限定されない。例えば、図示を省略するが、間座40は、第1または第2ガイド孔46より大径で、かつ、第2端面の外径より小さい直径の円筒状の部材であって、中心軸mと略同軸に設置されてもよい。また、案内軸50が、段付きの円筒形状であって、軸方向の中央に両端より大径の大径部を設けてもよい。この場合には、大径部の軸方向長さを調整することによって、第1拘束面35と第2拘束面45を、軸方向に所定の寸法だけ離れた状態で同軸に固定することができる。
(熱処理の手順)
次に、図2を参照しつつ、焼入れ型30を使用して、ワーク20の表面に硬化層を形成する熱処理の手順を説明する。本実施形態では、ワーク20が大径であるため、1次焼入れ、2次焼入れ、焼き戻しの順に熱処理が行われる。
1次焼入れでは、ワーク20を浸炭雰囲気炉に入れ、更に、必要に応じてアンモニアガスを供給しながら、鋼のA1変態点以上の温度(概ね800℃から1000℃)に加熱している。これにより、ワーク20の表面に、浸炭層又は浸炭窒化層が形成される。その後、ワーク20を冷却油の中に投入して急冷することによって、浸炭層又は浸炭窒化層がマルテンサイト組織に変態し、硬度の高い浸炭層又は浸炭窒化層(以下、硬化層という)が形成される。1次焼入れでは、ワーク20は拘束されていない。
次に、焼入れ型30を使用して、2次焼入れを行う。2次焼入れでは、1次焼入れが完了したワーク20を再度焼入れすることによって、硬化層の硬度を更に高くすることができる。
2次焼入れでは、ワーク20を鋼のA1変態点以上の温度に加熱する第1ステップと、ワーク20を下型31の第1拘束面35の上に載置する第2ステップと、上型32をワーク20の鉛直方向上方に設置し、下型31と固定する第3ステップと、ワーク20と焼入れ型30とを組み合わせた状態で冷却油中に浸漬する第4ステップとが、順次行われる。各ステップにおける操作について、具体的に説明する。
第1ステップでは、1次焼入れが完了したワーク20を加熱炉の中に投入し、鋼のA1変態点以上の温度(概ね790℃から900℃である)に加熱している。
第2ステップでは、図2に示すように、下型31が、中心軸mを鉛直方向に向けて、第2側面34を鉛直方向上向きとして設置される。
次に、ワーク20が、鋼のA1変態点以上の温度を保った状態で、下型31の上に略同軸に載置される。ワーク20は、小端面23が下型31と対向する向きに載置されており、ワーク20の小端面23の内周が、下型31の第1拘束面35と当接している。
第3ステップでは、下型31の第2側面34の上に、複数の間座40と上型32が設置される。上型32は、中心軸mを鉛直方向に向けて、第3側面43を鉛直方向下向きにして、間座40の上に載置される。
このとき、下型31の第1ガイド孔36と上型32の第2ガイド孔46に、案内軸50が挿入されて、第1拘束面35と第2拘束面45とが互いに同軸に組み合わされる。本実施形態では、ワーク20の寸法に応じて、あらかじめ間座40の軸方向長さLが所定の寸法に設定されており、ワーク20と第2拘束面45との間には、周方向の少なくとも一部ですきまを有するようになっている。
すなわち、本実施形態では、ワーク20が高温の状態のときは、焼入れ型30に組み込まれたワーク20は、第1拘束面35と第2拘束面45との間で拘束されていない。
この状態で、図2に示すように、案内軸50の軸方向両側に座金を介してボルト51を締め付けることによって、下型31と上型32とが互いに固定される。ワーク20は、焼入れ型30で拘束されないので、ボルト51を締結するときに、十分な締め付けトルクを付与することができる。こうして、本実施形態では、上型32と下型31とを確実に固定できるとともに、焼入れ型30を組み立てる際の作業効率を高くすることができる。
第4ステップでは、高温のワーク20と焼入れ型30とが組み合わされた状態で、冷却油の中に投入される。
冷却油は、下型31の第1油流路37を通って、空間Kに流入する。第1油流路37は、第1拘束面35の径方向のほぼ中央に形成されており、ワーク20の内周面21の近傍に開口している。これにより、第1油流路37から空間Kに流入した冷却油は、すぐにワーク20の内周面21と接触し、内周面21が急冷される。また、第1油流路37が、周方向に等しい間隔で、数多く設置されているので、内周面21では、周方向の硬さのムラを抑制することができる。
冷却油は、油槽内で撹拌されているため、内周面21を冷却した冷却油は、鉛直方向の上方に移動し、上型32に形成された第2油流路47を通って、空間Kから排出される。同時に、下型31の第1油流路37から、未だワーク20と接触していない冷たい冷却油が空間Kに流入する。こうして、ワーク20の内周面21が、連続的に冷却される。
なお、ワーク20を冷却油中に投入するときには、ワーク20の中心軸mを鉛直方向に向けた状態で、投入するのが好ましい。これにより、空間K内に空気だまりが生じるのを防止できるので、冷却油が、内周面21の全周と確実に接触し、硬さのムラがない硬化層を形成することができる。
次に、第4ステップにおいて、ワーク20の変形を防止する作用効果について説明する。
図4は、ワーク20に焼入れをするときの、第1拘束面35及び第2拘束面45とワーク20との位置関係を説明する模式図である。また、図4では、ワーク20が鋼のA1変態点以上の温度(以下、単に「高温」という場合がある)のときの位置を実線で示し、室温に冷却されたときの位置を破線で示している。
第3ステップでは、高温のワーク20が、焼入れ型30に組み込まれている。ワーク20は、熱膨張することによって、直径が拡大しており、図4に示すように、ワーク20の大端面24の内周と第2拘束面45との間にすきまが形成されている。図4では、理解を容易にするために、各部のすきまの大きさを誇張して示している。実際のすきまの大きさは、ワーク20の大きさによって異なるが、径方向片側で1〜数ミリメートル程度である。
高温のワーク20が下型31の上に載置されたときの、ワーク20の小端面23の内周と第1拘束面35とが接触する点を「点A」とする。
次に、第4ステップでは、ワーク20は、温度の低下にともなって内径が収縮(熱収縮)する。ワーク20の温度が、鋼のA1変態点より低い温度になると、ワーク20と第1拘束面35とが接触する点Aの位置が、第1拘束面35に沿って径方向内方に移動する。そして、図4に、破線で示したように、周方向の少なくとも一部で、大端面24の内周が第2拘束面45と接触する。大端面24の内周が第2拘束面45と当接したときに、ワーク20の小端面23の内周と第1拘束面35とが接触する点を「点B」とする。
更に、ワーク20の温度が低下すると、大端面24の内周が全周にわたって第2拘束面45と当接するとともに、小端面23の内周が、全周にわたって第1拘束面35と当接する。本実施形態では、第1拘束面35と第2拘束面45は同軸に設置された円錐面である。このため、ワーク20の小端面23の内周及び大端面24の内周が、全周にわたって第1拘束面35、第2拘束面45と接するときには、ワーク20の中心軸は焼入れ型30の中心軸と同軸に整列する。
なお、第1拘束面35、第2拘束面45によって、ワーク20の変形を防止する効果を確実にするために、ワーク20の温度が、400℃から700℃のときに、大端面24の内周及び小端面23の内周が、それぞれ全周にわたって第2拘束面45及び第1拘束面35と当接することが望ましい。
こうして、本実施形態では、ワーク20は、第1拘束面35及び第2拘束面45によって、ワーク20の軸方向両端がそれぞれ真円の状態で拘束されるので、焼入れ時の内部応力等に起因する変形を防止することができる。
更に、本実施形態では、ワーク20の温度が鋼のA1変態点より低い温度のときに、第1拘束面35及び第2拘束面45によってワーク20が拘束されるに過ぎない。高温の状態では、ワーク20が拘束されないので、上型32を下型31とボルト締結等によって固定した場合であっても、ワーク20が焼入れ型30で付勢されることによる変形を防止できる。したがって、焼入れ型30にワーク20を組み込むときから焼き入れが完了するまで、外輪の軌道面の母線は直線状態を維持しているので、研削加工をした後、軌道面の焼入れ深さが一様になり、軌道面の転がり寿命を良好にすることができる。
本実施形態では、第1拘束面35及び第2拘束面45を形成する各円錐面の角度(円錐面の母線と、中心軸mとのなす角度(劣角)をいう)の設定に特徴がある。
ワーク20が収縮し、ワーク20の小端面23の内周と第1拘束面35との接触点が、点Aから点Bに移動するときには、ワーク20は、第1拘束面35を滑りながら移動する。ワーク20は、自重により、第1拘束面35に対し鉛直方向下向きに押し付けられている。一般的に、潤滑条件下では鉄と鉄のすべり摩擦係数は、0.1〜0.2程度である。このため、第1拘束面35の円錐面の角度α1が小さいとき(概ね60°より小さいとき)には、すべり摩擦面にかじり等が生じる虞がある。特に大型の軸受の外輪等の場合には、ワーク20の重量が大きく、さらにかじりを生じやすくなる。
一方、第1拘束面35の円錐面の角度α1が大きいときには、ワーク20の小端面23の径方向の位置決めが困難になる。このため、上型32の第2拘束面45によってワーク20を焼入れ型30と同軸に保持したときであっても、ワーク20の小端面23が位置ずれすることによって、ワーク20の中心軸と焼入れ型30の中心軸が同軸に整列しない場合がある。このときは、ワーク20が傾いた状態で拘束されるので、焼入れ完了時にワーク20が楕円形に変形する恐れがある。
このため、本実施形態では、第1拘束面35の円錐面の角度α1は、60°から70°に設定されている。これにより、ワーク20が収縮するときに、第1拘束面35との間でかじり等を生じることなく容易に移動するとともに、ワーク20の小端面23を焼入れ型30と同軸に位置決めすることができる。
第2拘束面45の円錐面の角度α2は、第1拘束面35の円錐面の角度α1に比べて小さくなっている。
角度α2が大きい場合には、ワーク20が収縮して、大端面24の内周と第2拘束面45とが接触するときに、ワーク20の径方向の位置を決定するのが困難になる。一方、α2を小さくした場合には、直径寸法の異なるワーク20を共通の上型32を使用して熱処理するために、第2拘束面45の軸方向の寸法を大きくしておく必要がある。この場合には、上型32が大きくなって重量が増大するので、焼入れ作業が困難になる。
このため、本実施形態では、第1拘束面35の円錐面の角度α1は、30°から40°に設定されている。これにより、ワーク20が収縮するときに、ワーク20の大端面24を、第2拘束面45と同軸となるように案内することができる。また、大端面24の内径寸法が異なった他の外輪を熱処理するときには、間座40の軸方向寸法を変えるだけで、上型32を共通して使用することができる。これにより、焼入れ作業のコストを低くすることができる。
2次焼入れが完了した後、ワーク20は、焼入れ型30と分離される。本実施形態では、ボルト51を緩めることによって、上型32及びワーク20を容易に取り外すことができる。その後、ワーク20は、加熱炉内で、160℃から180℃に加熱した後、徐冷して、焼戻し処理が行われる。その後、内周面21、外周面22、第1端面、第2端面に研削加工が施されて、円すいころ軸受の外輪が製造される。
上記で説明したように、本実施形態の製造方法では、焼入れ型30を使用して焼入れ時の熱変形を抑制するとともに、焼入れ型30で拘束するときのワーク20の変形を防止できる。したがって、熱処理完了時のワーク20の形状精度を高くすることができる。この結果、研削加工時の取り代のばらつきを小さくできるので、研削加工工数を低減して、外輪を製造するコストを低減するとともに、焼入れ層の品質を高めて、転がり寿命を向上することができる。
また、本実施形態では、ワーク20の形状に応じて、間座40の高さを調整するだけで、種々の形状のワーク20を熱処理することができる。したがって、ワーク20の形状ごとに焼入れ型30を製造する必要がないので、焼入れ型30の製造コストを大幅に低減することができる
なお、本実施形態は、外輪の他、種々の環状の部品に適用できる。例えば、内輪の内周に焼入れする場合や、ギアの内周に焼入れをする等、種々利用することができる。また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
10:外輪、20:ワーク、21:内周面、22:外周面、23:小端面、24:大端面、30:焼入れ型、31:下型、32:上型、33:第1側面、34:第2側面、35:第1拘束面、36:第1ガイド孔、37:第1油流路、40:間座、40a:外周面、40b:間座端面、43:第3側面、44:第4側面、45:第2拘束面、46:第2ガイド孔、47:第2油流路、50:案内軸、51:ボルト

Claims (4)

  1. 環状のワークを焼入れするときに、前記ワークを拘束する焼入れ型であって、
    前記ワークの鉛直方向下側に配置される第1の型と、前記ワークの鉛直方向上側に配置される第2の型を備え、
    前記第1の型は、鉛直方向上方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第1拘束面を備え、
    前記第2の型は、鉛直方向下方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第2拘束面を備え、
    前記第1拘束面と前記第2拘束面とが、互いに同軸で、かつ、軸方向に所定の間隔で対向するように前記第1の型と前記第2の型とが固定されており、
    前記ワークが、前記第1拘束面と前記第2拘束面の間に略同軸に設置され、
    前記間隔は、前記ワークの温度が鋼のA1変態点より高い温度のときは、前記ワークが前記第1拘束面と前記第2拘束面で拘束されず、前記ワークの温度が鋼のA1変態点より低い温度のときに、前記ワークが熱収縮することによって、前記第1拘束面と前記第2拘束面との間で拘束されるように設定されたことを特徴とする焼入れ型。
  2. 前記第1拘束面を構成する円錐面の軸と母線とがなす劣角が60°を越えて70°未満であり、
    前記第2拘束面を構成する円錐面の軸と母線とがなす劣角が30°を越えて40°未満であることを特徴とする、請求項1に記載する焼入れ型。
  3. 環状のワークを軸方向に拘束して焼入れする環状部材の製造方法であって、
    前記ワークの鉛直方向下側に配置される第1の型と、前記ワークの鉛直方向上側に配置される第2の型を備え、
    前記第1の型は、鉛直方向上方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第1拘束面を備え、
    前記第2の型は、鉛直方向下方に進むにしたがって縮径する円錐面からなる第2拘束面を備え、
    前記ワークを鋼のA1変態点以上の温度に加熱する第1ステップと、
    前記第1の型を、前記第1拘束面を鉛直方向上方に向けて設置し、前記ワークを、前記第1拘束面の上に略同軸に載置する第2ステップと、
    前記第2の型が、前記ワークの鉛直方向上方で前記第2拘束面を鉛直方向下方に向けて設置され、前記第1拘束面と前記第2拘束面とが、互いに同軸で、かつ、軸方向に所定の間隔で対向するように前記第1の型と前記第2の型とが固定される第3ステップと、
    前記第1の型と前記第2の型とが互いに固定された状態で、前記ワークとともに冷却油中に浸漬される第4ステップとを順に実施し、
    第3ステップにおける前記間隔は、前記ワークの温度が鋼のA1変態点より高い温度のときは、前記ワークが前記第1拘束面と前記第2拘束面で拘束されず、前記ワークの温度が鋼のA1変態点より低い温度のときに、前記ワークが熱収縮することによって、前記第1拘束面と前記第2拘束面との間で拘束されるように設定されていることを特徴とする環状部材の製造方法。
  4. 前記第1拘束面を構成する円錐面の軸と母線とがなす劣角が60°を越えて70°未満であり、
    前記第2拘束面を構成する円錐面の軸と母線とがなす劣角が30°を越えて40°未満であることを特徴とする、請求項3に記載する環状部材の製造方法。
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