JP2019136913A - 液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッチングストップ層のクラックを介した液室形成部材へのダメージを低減する液体吐出ヘッドの製造方法を提供する。【解決手段】第一の面と、第一の面と反対側の第二の面と、第一の面と第二の面との間を貫通する貫通孔とを有する基板と、貫通孔に連通した液室を形成するとともに液室に連通した吐出口を有する液室形成部材と、を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、(1)基板の第一の面の上にエッチングストップ層を形成する工程と、(2)エッチングストップ層の上に液室形成部材となる部材を形成する工程と、(3)第二の面からエッチングストップ層までエッチャントが到達するように基板をエッチングして貫通孔を形成する工程と、(4)エッチングストップ層に焦点を合わせたレーザーを照射する工程と、(5)エッチングストップ層の貫通孔に臨む部分を除去する工程と、をこの順で含む。【選択図】図5

Description

本発明は、液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
インクジェット記録装置に代表されるインク等の液体を吐出して画像を記録する記録装置は、液体吐出ヘッドを有する。液体吐出ヘッドには多数の吐出口が形成されており、吐出エネルギー発生素子から発生させたエネルギーを用いて吐出口から液体を吐出する。液体吐出ヘッドは、シリコンウェハなどの基板と液室形成部材とを有する。基板には、液体を供給するための供給口が形成されている。液室形成部材は、基板上に形成されており、基板の供給口に連通し液体が流れる流路と、流路に連通する吐出口とを形成する部材である。
近年、半導体基板に対し、異方性エッチングにより貫通孔を形成し、貫通孔を流路への供給口とした液体吐出ヘッドなどのデバイスが製造されている。例えば、基板エッチング時に基板よりもエッチングレートが高い犠牲層を基板上に形成し、貫通孔の寸法および位置精度を向上させる方法がある。また、基板エッチング時に基板よりもエッチングレートが低いエッチングストップ層を基板および犠牲層上に形成し、基板エッチング後の工程でエッチングされた部分に臨むエッチングストップ層の部分を除去して貫通孔である供給口を形成する方法がある。これらの方法により、半導体基板表面側への基板エッチング液の滲み込みを防止することができる。
特許文献1には、半導体基板に対して貫通孔を歩留り良く形成するための方法として、次の工程を具える方法が示されている。半導体基板の表面に犠牲層を形成する工程。犠牲層を覆うエッチングストップ層を形成する工程。エッチングストップ層の上に保護層を形成する工程。半導体基板の裏面に開口部を持ったエッチングマスク層を形成する工程。エッチングマスク層の開口部からエッチングストップ層に至る半導体基板および犠牲層をエッチングする工程。エッチングされた部分に臨むエッチングストップ層を除去して貫通孔を形成する工程。
特開2004−090573号公報
特許文献1に記載される構成では、エッチングストップ層にクラックが発生してもエッチングストップ層上の保護層によって基板エッチング工程での半導体基板表面側へのエッチング液の滲み込みが防止される。しかしながら、その後の工程でエッチングストップ層を除去して貫通孔を形成する際に、エッチングストップ層のクラックを介して型材へ、さらには液室形成部材へダメージが入る場合がある。特に、エッチングストップ層よりも型材や液室形成部材のほうがダメージを受けやすい材質である場合にその傾向が顕著である。例えば、エッチングストップ層が無機膜であり、型材と液室形成部材が樹脂層である場合、エッチングストップ層が除去される前に処理液がクラックを通じて型材や液室形成部材にダメージを与えるおそれがある。液室形成部材へのダメージが大きいと剥がれの原因となるため、液体吐出ヘッドの製造歩留り低下の一因となりうる。
本発明は、エッチングストップ層のクラックを介した液室形成部材へのダメージを低減する液体吐出ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、
第一の面と、前記第一の面と反対側の第二の面と、前記第一の面と前記第二の面との間を貫通する貫通孔とを有する基板と、
前記貫通孔に連通した液室を形成するとともに前記液室に連通した吐出口を有する液室形成部材と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
(1)前記基板の前記第一の面の上にエッチングストップ層を形成する工程と、
(2)前記エッチングストップ層の上に前記液室形成部材となる部材を形成する工程と、
(3)第二の面から前記エッチングストップ層までエッチャントが到達するように前記基板をエッチングして貫通孔を形成する工程と、
(4)前記エッチングストップ層に焦点を合わせたレーザーを照射する工程と、
(5)前記エッチングストップ層の前記貫通孔に臨む部分を除去する工程と、
をこの順で含む。
本発明によれば、エッチングストップ層のクラックを介した液室形成部材へのダメージを低減する液体吐出ヘッドの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの部分断面図である。 図1で示される液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面模式図である。 図1で示される液体吐出ヘッドの他の製造方法を示す断面模式図である。 他の実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示すフローチャートである。
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る液体吐出ヘッドの部分断面図である。液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド用基板1(単に基板ともいう)と、基板1の上に形成された液室形成部材20と、を備える。液室形成部材20は、基板1とともに液室30を形成(区画構成)している。
基板1は板状の部材であり、シリコンなどにより形成されている。基板1は、液室形成部材20が形成される側(あるいは形成された側)である第一の面15と、第一の面15の反対側の面である第二の面16を有する。基板1は、第一の面15と第二の面16との間を貫通する貫通孔4を有する。基板1の第一の面15の上に吐出エネルギー発生素子2とエッチングストップ層3とが形成されている。
吐出エネルギー発生素子2は、TaSiN等の発熱抵抗体からなる熱変換素子(ヒータ)などで形成される。吐出エネルギー発生素子2は基板1の第一の面15上に設けられるが、基板1の第一の面15に接していなくてもよい。例えば、吐出エネルギー発生素子2は基板1の第一の面15との間に何らかの部材を介して設けられていてもよいし、吐出エネルギー発生素子2の下方に空間が形成されていてもよい。また、吐出エネルギー発生素子2の最下層には基板1と接して熱の逃げを防ぐSiO膜やBPSG(Borophosphosilicate glass)膜などからなる蓄熱層を設けてもよい。
エッチングストップ層3は基板1の第一の面15の上に形成された薄膜層であり、単層でも複数層でもよい。エッチングストップ層3は、基板1の貫通孔4に臨む(相対する)位置に開口部7を有する。開口部7は、例えばエッチングストップ層3の貫通孔4に臨む部分を除去することにより形成される。エッチングストップ層3の開口部7と基板1の貫通孔4を合わせて供給口11と称する。供給口11は、液室30へ液体を供給する通路である。
液室形成部材20は、供給口11に連通する液室30を構成するとともに液室30に連通する吐出口21を有する。液室形成部材20は、樹脂や金属、あるいは無機材料で形成される。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂のような感光性樹脂が挙げられる。金属としては、例えばSUSプレートが挙げられ、無機材料としては、SiNやSiC、SiCN等が挙げられる。これらは組み合わせて液室形成部材20を構成することができるが、基板側に樹脂材料を配して液室形成部材を構成することが好ましい。図1では、液室形成部材20全体が樹脂で形成されている例を示している。
液室形成部材20と基板1との間に別な層が形成されていてもよい。例えば、液室形成部材20と基板1との密着性を向上させる密着層や、エッチングストップ層3の除去時に基板1や液室形成部材20を保護する保護層が設けられていてもよい。液室形成部材20には、液体を吐出するための吐出口21が液室30と連通するように形成されている。インクタンク(不図示)から供給口11を介して液室30に供給された液体は、吐出エネルギー発生素子2によってエネルギーを与えられ、吐出口21から吐出される。
次に、図2と図5を用いて、実施形態1に係る液体吐出ヘッドの製造方法について工程を追って説明する。図2は、液体吐出ヘッドの製造方法について工程順に示した断面模式図である。
まず、図2(a)に示すように、基板1の第一の面15の上に吐出エネルギー発生素子2とエッチングストップ層3を形成する(図5のステップS11)。基板1は、吐出エネルギー発生素子2を駆動する駆動回路(不図示)や駆動回路と吐出エネルギー発生素子2をつなぐ配線(不図示)等を作りこみやすいシリコン単結晶基板であることが好ましい。吐出エネルギー発生素子2は、抵抗体に電気を通して発熱させるヒータータイプが適用可能である。しかしこれに限らず、ピエゾ素子のように、電気を吐出エネルギーに変換可能な素子であればどのタイプでも適用可能である。ヒータータイプの場合、配線層を発熱抵抗体層と導体層の積層構造とし、導体層の一部を除去し、そのギャップ部分の発熱抵抗体層を露出することで形成することができる。この方法に限定されず、他の方法で形成してもよい。
エッチングストップ層3は、基板1の第一の面15の上の、少なくとも供給口11となる領域に形成する。この実施形態では吐出エネルギー発生素子2を除く第一の面15の全面にエッチングストップ層3を設けている。エッチングストップ層3は基板1のエッチングの際に耐えられるよう、基板1よりも後で用いるエッチャントに対するエッチングレートが遅く、かつ除去する際には基板1よりも除去しやすい材料が選択される。例えば、シリコンと、酸素、窒素あるいは炭素のいずれか一つ以上とよりなる化合物、具体的には酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、酸窒化シリコン、炭窒化シリコン等を用いることが好ましい。また、エッチングストップ層3は単層に限らず、複数層でもよい。また、供給口11の開口寸法、開口位置精度向上のために、基板1のエッチングの際に基板1よりも十分速くエッチングされる犠牲層をエッチングストップ層3の下に形成してもよい(図示せず)。犠牲層の材料としては純アルミニウム、アルミニウム合金などがあげられる。
次に、図2(b)に示すように、後に液室30となる領域に除去可能な形材31をエッチングストップ層3の上に形成する。その後、エッチングストップ層3および形材31を覆うように液室形成部材となる部材(ここでは液室形成部材20とする)を形成する(図5のステップS12)。形材31の材料は、周辺の材質との兼ね合いで選択される。液室形成部材20が樹脂材料の場合には、感光性樹脂を用いてフォトリソグラフ法で形材31を形成することができる。同様に、液室形成部材20は感光性樹脂材料を用いて形成することができる。液室形成部材20が複数層の場合には、下層を犠牲層の周縁部を覆う保護層として形材31の形成前にエッチングストップ層3上に形成してもよい。
その後、パターニングによって吐出エネルギー発生素子2に対向する液室形成部材20の位置に吐出口21を形成する。液室形成部材20を感光性樹脂材料を用いて形成した場合、フォトリソグラフ法で吐出口21を形成することができる。なお、吐出口21は後の工程で形成してもよい。
次に、図2(c)に示すように、エッチャントがエッチングストップ層3まで到達するように基板1を第二の面16側からエッチングして、基板1を貫通する貫通孔4を形成する(図5のステップS13)。具体的には、基板1の第二の面16上の貫通孔4を規定する領域に開口部を有するエッチングマスクを形成し、ドライエッチングを行う。あるいは、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、水酸化カリウム(KOH)等の薬液をエッチャントとしたウェットエッチングを行ってもよい。また、フッ素や塩素を含むガスをエッチャントとした反応性イオンエッチング、或いはレーザー加工等によって貫通孔4を形成することもできる。その後必要に応じてエッチングマスクを薬液によるウェット剥離や酸素プラズマを用いたアッシング等で除去する。なお、エッチングマスクは基板を用意する際に予め形成しておいてもよい。
上記のような方法で貫通孔4を形成する際に、膜応力などの影響で貫通孔4上のエッチングストップ層3の応力集中部分や膜質が悪い部分にクラック5が入ることがある(図2(c))。特に、エッチングストップ層3の下に犠牲層を設ける場合には、エッチングストップ層3にカバレッジや膜質の悪くなる段差部が形成され、段差部にクラック5が発生しやすい。
そこで、図2(d)に示すように、エッチングストップ層3に焦点を合わせた集光角θcのレーザー40を照射する(図5のステップS14)。エッチングストップ層3がレーザー40で加熱溶融されてクラック5まで広がり、次いでレーザー40の照射を止めて放冷することで溶融したエッチングストップ層3が冷え固まり、クラック5を接合する。
レーザー40の照射は、所望の領域についてレーザースポットを順次走査することが好ましい。照射(走査)処理位置は、貫通孔4上のエッチングストップ層3全体でもよい。クラック5の有無にかかわらずエッチングストップ層3全体が順次溶融され、放冷されて再び固化することにより、どの位置にあるクラックも接合される。また、後のエッチングストップ層3の除去工程で液室形成部材20へのダメージが問題となりうる液室形成部材20近傍、すなわち貫通孔4の外周部(第一の面側の開口端部)近傍のエッチングストップ層3だけを処理してもよい。貫通孔4の外周部近傍以外のエッチングストップ層3にクラックがあっても、その部分から侵入するエッチング液は液室形成部材20にダメージを与えにくいからである。この方法により処理時間を短縮することができる。あるいは、クラック5の位置を事前に検査し、クラック5がある部分に選択的にレーザー40の照射等の処理をしてもよい。これにより処理時間をさらに短縮することができる。クラックの検査は、ある程度大きなクラックを検出する場合であれば光学的な画像検査で検出することができる。より小さいクラックまで検出したい場合は、例えば適切な光を照射してクラックからの反射光を観測することでその位置を検出することができる。より好ましくは、クラック5がある部分にのみレーザー40を照射する。
レーザー40の入射経路は基板1の第一の面15側からでも第二の面16側からでもよい。第一の面側から入射させる場合は、液室形成部材20および形材31によってレーザー40が吸収、反射、散乱されないようなレーザー波長と材料の組み合わせを選択する必要がある。第二の面側から基板1を介して入射させる場合は、基板1によってレーザー40が吸収、反射、散乱されないようなレーザー波長を選択する必要がある。基板1がシリコンからなる場合には赤外線レーザーが好ましい。第二の面側から貫通孔4を介して入射させる場合は、エッチングストップ層3まで遮るものがないのでエッチングストップ層3以外の吸収、反射、散乱を考慮する必要がないため好ましい。
いずれの場合でもエッチングストップ層3にレーザー40が吸収されてエッチングストップ層3が加熱融解される必要がある。そのため、エッチングストップ層3に吸収される波長のレーザーを用いる。例えば、エッチングストップ層3が酸化シリコン層の場合、吸収波長帯域のレーザーとしてCOレーザーを用いることができる。あるいはエッチングストップ層3に吸収されない透過波長の高強度レーザーを用いてエッチングストップ層3に照射、集光し、レーザーの非線形吸収効果を用いて集光部の局所(照射部)にのみ吸収、融解させることが好ましい。非線形吸収効果を用いて集光部の局所にのみ吸収させる場合は、集光部周辺への熱影響によるダメージを低減することができる。
吸収されたレーザー光のエネルギーは、まず電子を励起し、その後緩和することで熱として周囲に伝わる。したがって、エッチングストップ層3の緩和時間よりも短いパルス幅のレーザーを用いると、レーザーの照射が終わった後に熱が伝わるため、周辺への熱影響を広げずにレーザー40を照射した部分を加熱することができる。具体的には10ps以下のパルス幅のレーザーを用いることが好ましい。エッチングストップ層3が複数層からなる場合は、すべての層のクラック5を処理する必要はなく、後のエッチングストップ層3の除去工程で液室形成部材20にダメージが入らないように少なくとも貫通孔4に露出した最表層のクラック5を処理すればよい。
基板1の第二の面16側から貫通孔4を介してレーザー40を入射させる場合、垂直に入射させると基板1の陰に隠れるクラック5を処理するためには斜めに入射させればよい。具体的には、図3に示すように、基板1の厚さをa、基板1の第一の面15側の貫通孔4の開口寸法をb、基板1の第二の面16側の貫通孔4の開口寸法をcとし、集光角θcのレーザー40の光軸方向と基板面に垂直な方向のなす入射角をθとする。このとき、下記式(1)
Figure 2019136913
を満たすように貫通孔4に対してクラック5とは反対側からレーザー40を入射させることで基板1に遮られずにレーザー40を斜めに入射させることができる。
(100)基板に対して結晶異方性エッチングを用いて(111)面が貫通孔の側面となるようにした場合、基板面と貫通孔の側面のなす角は図3に示すように下記式(2)
Figure 2019136913
となる。そこで、基板1の厚さをa、基板1の第一の面15側の貫通孔4の開口寸法をbとすると基板1の第二の面16側の貫通孔4の開口寸法cは下記式(3)
Figure 2019136913
となる。そのため、入射角θは、下記式(4)
Figure 2019136913
となるようにするのが好ましい。このようにレーザー40が貫通孔4に対してクラック5とは反対側から斜めに入射することで、貫通孔4の開口端部よりも外側に進行したクラック5を処理することができる。入射角θは大きければ大きいほど基板1の陰に隠れるクラックを処理しやすくなるため、下記式(5)
Figure 2019136913
となるようにするのがより好ましい。
同様に、反応性イオンエッチングやレーザー加工などの貫通孔4が略垂直形状となる加工方法の場合、基板1の第二の面16側の貫通孔4の開口寸法は
c=b
なので、入射角θは下記式(6)
Figure 2019136913
となるようにするのが好ましい。基板1の陰に隠れるクラックを処理しやすくするためには上記制約の範囲で入射角θはできるだけ大きくするのが好ましい。
次に、図2(e)に示すように、エッチングストップ層3の貫通孔4に臨む(相対する)部分を除去して開口部7を設けることで供給口11を形成する(図5のステップS15)。ここで、先の工程でクラック5を除去したことで液室形成部材20にダメージが入ることなく供給口11を形成できる。エッチングストップ層3はCFなどのガスを用いた反応性イオンエッチングなどのドライエッチングや、バッファード・フッ酸などの薬液によるウェットエッチングで除去することができる。エッチングストップ層3が複数層からなる場合は一度に除去してもよいし、基板1側の層から一層ずつ除去を行ってもよい。
最後に、形材31を除去することで液室30を形成し、ダイサーにより基板1から各々の単位のチップ形態に分離することで、液体吐出ヘッドを完成させることができる(図示せず)。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(第1の実施例)
第1の実施例に係る液体吐出ヘッドの製造方法を具体的に説明する。図2は実施例1の液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板1を用意した。基板1は、基板厚725μmの(100)シリコン単結晶基板を用いた。基板1の第一の面15上に吐出エネルギー発生素子2を形成した。吐出エネルギー発生素子2は、抵抗体に電気を通して発熱させるヒーターを用いた。さらに基板1の吐出エネルギー発生素子2が形成された部分を除く第一の面15上にエッチングストップ層3を形成した。エッチングストップ層3は、プラズマを用いた化学的気相蒸着(CVD;Chemical Vapor Deposition)法を用いて酸化シリコンを0.5μmの厚さに成膜することで形成した。成膜した酸化シリコンの屈折率は1.7であった。なお、基板上には複数個のチップを同時に形成するが、図面では一つのチップの一断面を示す。
次に、図2(b)に示すように、形材31を吐出エネルギー発生素子2とエッチングストップ層3上の後に液室30となる領域に形成し、その後、エッチングストップ層3および形材31を覆うように液室形成部材20を形成した。さらに、吐出エネルギー発生素子2に対向する液室形成部材20の位置に、パターニングによって吐出口21を形成した。
次に、図2(c)に示すように、基板1の第二の面16上の貫通孔4を画定する領域が開口したエッチングマスクを形成した。次いで、エッチングストップ層3をストップ層として、TMAHを用いた結晶異方性エッチングによって基板1をエッチングして貫通孔4を形成した後、エッチングマスクを除去した。
エッチングマスクは次のように形成した。まずポリエーテルアミドをスピンコートにより塗布して250℃で1時間加熱することにより、2μmの厚さに成膜した。次に、ポリエーテルアミドは感光性を有しないため、このポリエーテルアミドの上に感光性樹脂を塗布してパターニングを行った。パターニングされた感光性樹脂をマスクとして酸素プラズマ法により不要な部分のポリエーテルアミドを除去することでエッチングマスクを形成した。
また、基板のエッチングは、83℃の22%TMAH水溶液を用いて、(100)基板に対して(111)面が貫通孔の側面となるように結晶異方性エッチングを行い、貫通孔を形成した。基板1の第一の面15側の貫通孔4の開口寸法は200μmであった。エッチングマスクは貫通孔形成後にウェット剥離することで除去した。
ここで、全チップについて検査を行ったところ、一部のチップの貫通孔4上のエッチングストップ層3にクラック5が入っていた。
次に、図2(d)に示すように、エッチングストップ層3に焦点を合わせた集光角θcのCOレーザー40を照射した。レーザー40のスポットを少しずつ動かしながら繰り返すことで貫通孔4上のエッチングストップ層3全体を順次走査してクラック5を接合した。レーザー40の入射経路は基板1の第二の面16側から貫通孔4を介して垂直に入射させた。
次に、図2(e)に示すように、バッファード・フッ酸を用いたウェットエッチングによりエッチングストップ層3の貫通孔4に臨む部分(貫通孔4に露出した部分)を除去して開口部7を形成した。先の工程でクラック5を除去したことで液室形成部材20へのダメージを低減した供給口11を形成することができた。
最後に、薬液による剥離によって形材31を除去することで液室30を形成し、ダイサーにより基板1から各々の単位のチップ形態に分離することで、液体吐出ヘッドを完成させた(図示せず)。
この実施例で作製した液体吐出ヘッドは、クラック5があるままでエッチングストップ層3を除去した場合に比べて液室形成部材20へのダメージがあるチップが少なくなり、製造歩留りを向上させることができた。
(第2の実施例)
ここでは、第1の実施例と同じ構成要素についてはその説明を割愛し、第1の実施例と異なる構成要素について説明する。
第2の実施例では、図3に示すように、基板1の厚さaが725μm、基板1の第一の面15側の貫通孔4の開口寸法bが200μmであった。(100)基板に対して結晶異方性エッチングを行い(111)面が貫通孔の側面となるので、上記の(4)式に示す角度の範囲に収まるようにレーザー入射角を設定した。具体的には、レーザー40の光軸方向と基板面に垂直な方向のなす入射角θが約14度となるように貫通孔4を介して集光角θcが約30度のレーザー40を斜めに入射させた。その結果、貫通孔4よりも外側に進行したクラック5も処理することができるようになり、第1の実施例よりも液室形成部材20へのダメージがあるチップが少なくなり、製造歩留りをより向上させることができた。
(第3の実施例)
図4は第3の実施例の液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図である。ここでは、第1の実施例と同じ構成要素についてはその説明を割愛し、第1の実施例と異なる構成要素について説明する。
第3の実施例では、図4(a)に示すように、貫通孔4の位置、寸法精度向上のためにエッチングストップ層3の下に犠牲層6を設けた。具体的には、まず基板1の第一の面15側に犠牲層6を形成し、次いで犠牲層6と基板1の第一の面15の上にエッチングストップ層3を形成した。犠牲層6を設けることにより、開口部7(供給口11)の位置精度、寸法精度を向上させることができる。犠牲層6は厚さ0.4μmのAl−Siをスパッタリング法により成膜することで形成した。その結果、犠牲層6の上の段差部のエッチングストップ層3Aは周囲の平坦部のエッチングストップ層3に比べて薄く成膜された。
図4(b)に示すように、形材31と液室形成部材20の形成後の貫通孔4の形成工程において、犠牲層6の上のエッチングストップ層3Aの膜厚が薄くなったため、クラック5が多数発生した。
図4(c)に示すように、基板1の第二の面16側から貫通孔4を介して垂直にレーザー処理した。この際、レーザー処理時間短縮のため、エッチングストップ層3の段差部3Aよりも内側の領域を除いたエッチングストップ層3(即ち貫通孔4の第一の面側の開口端部近傍のエッチングストップ層3)を順次走査してクラック5を接合した。その後は第1の実施例と同様にエッチングストップ層3、段差部3Aの貫通孔4に臨む部分を除去し、さらに形材31を除去した。その結果、製造歩留りを維持しつつ、第1の実施例よりも供給口11の位置、寸法精度を向上させることができ、かつ処理時間も短くできた。
1 基板
2 吐出エネルギー発生素子
3 エッチングストップ層
3A 段差部
4 貫通孔
5 クラック
6 犠牲層
7 開口部
11 供給口
15 第一の面
16 第二の面
20 液室形成部材
21 吐出口
30 液室
31 形材
40 レーザー

Claims (8)

  1. 第一の面と、前記第一の面と反対側の第二の面と、前記第一の面と前記第二の面との間を貫通する貫通孔とを有する基板と、
    前記貫通孔に連通した液室を形成するとともに前記液室に連通した吐出口を有する液室形成部材と、
    を有する液体吐出ヘッドの製造方法であって、
    (1)前記基板の前記第一の面の上にエッチングストップ層を形成する工程と、
    (2)前記エッチングストップ層の上に前記液室形成部材となる部材を形成する工程と、
    (3)第二の面から前記エッチングストップ層までエッチャントが到達するように前記基板をエッチングして貫通孔を形成する工程と、
    (4)前記エッチングストップ層に焦点を合わせたレーザーを照射する工程と、
    (5)前記エッチングストップ層の前記貫通孔に臨む部分を除去する工程と、
    をこの順で含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  2. 前記(4)の工程で、前記基板の第二の面側から前記貫通孔を介してレーザーを照射する請求項1に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  3. 前記(4)の工程で、前記基板の厚さがa、前記第一の面側の前記貫通孔の開口寸法がb、前記第二の面側の前記貫通孔の開口寸法がcのとき、集光角θcの前記レーザーの光軸と基板面に垂直な方向がなす入射角をθとして下記式(1)
    Figure 2019136913
    を満たす請求項2に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  4. 前記(1)の工程の前に、前記基板の第一の面側に犠牲層を形成する工程をさらに含み、前記(1)の工程で前記犠牲層と前記基板の第一の面の上に前記エッチングストップ層を形成する請求項1から3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記(4)の工程で前記エッチングストップ層の段差部よりも内側の領域を除いた前記エッチングストップ層にレーザーを照射する請求項4に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記(4)の工程の前に、前記エッチングストップ層のクラックを検査する工程をさらに含み、前記(4)の工程で該クラックがある位置に選択的にレーザーを照射する請求項1から5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記エッチングストップ層が酸化シリコン層であり、前記レーザーがCOレーザーである請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記エッチングストップ層が吸収しない波長のレーザーで前記エッチングストップ層を照射し、レーザーの非線形吸収効果により照射部のエッチングストップ層を融解させる請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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