JP2019134053A - ウェアラブルデバイス、ウェアラブルデバイスの製造方法およびウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度及び落下衝撃耐久性に優れた、電ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物並びにそれからなるウェアラブルデバイスを提供する。【解決手段】上面に回路が形成された基板を備え、前記回路が配線により電気的に接続されているウェアラブルデバイスであって、前記基板は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含む液晶ポリエステル樹脂組成物からなる。前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂である。【選択図】なし
Description
本発明は、ウェアラブルデバイス、およびウェアラブルデバイス液晶ポリエステル樹脂組成物に関するものである。
近年、デバイスを装着するだけで、簡単かつ正確に使用可能なウェアラブルデバイスが注目されている。ウェアラブルデバイスは、取扱い時に誤って落下させるなど、外部からの衝撃にさらされやすいため、ウェアラブルデバイスに用いられる基板は、落下衝撃耐久性が要求される。さらに、基板をウェアラブルデバイスにアセンブリする際にピンを圧入することが多く、充分なピン圧入強度が求められる。
一方、さらなる省スペース化、軽量化のため樹脂部品に電子回路基板を組み込む立体回路基板形成技術の発展が求められている。樹脂成形品表面に立体的に電子回路パターンが形成されることで、回路基板設計の自由化、モジュールの小型化、部品点数の削減、組み立て工数の削減が可能となる。樹脂成形品に回路を形成する手法として、例えば、2回成形により回路形成箇所以外へマスキングを施すマスク形成手法や、レーザー照射による回路パターン描画手法などとめっき等の金属化技術との組み合わせが挙げられ、拡大を続けている。なかでも、レーザー照射によって樹脂組成物中の金属添加剤を活性化させてめっき等による金属化を行い、レーザー照射で描画した部分に金属パターンを形成する手法であるレーザー直接構造化工法は、パターン描画や金属化工程が容易であることから拡大を続けている。ウェアラブルデバイスへの適用も検討されており、例えば、液晶ポリマーとレーザー活性化可能な添加剤および誘電材料等の無機充填材からなる組成物の腕時計型デバイスへの適用(例えば特許文献1、2参考)が提案されている。
しかしながら、かかる従来技術においては、前記特許文献1、2に開示される樹脂組成物からなる成形品は、成形品表面の回路部の形成性に課題があった。また、ピン圧入強度に課題があるほか、ウェアラブルデバイスとして落下衝撃を加えた場合、回路の断線、短絡といった不良が生じることがあった。したがって、ウェアラブルデバイス、ウェアラブルデバイス用樹脂組成物は、上記課題に対し十分満足できるものではなく、更なる改良が求められている。
本発明は、レーザー直接構造化工法などの回路形成技術を適用可能とした場合に、成形品表面の回路部の形成性に優れ、また、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いたウェアラブルデバイスを提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造単位を有する液晶ポリエステル樹脂に回路形成用添加剤を含有する液晶ポリエステル樹脂組成物により、成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れたウェアラブルデバイスを得ることができることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
(1)上面に回路が形成された基板を備え、
前記回路が配線により電気的に接続されているウェアラブルデバイスであって、
前記基板は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含む液晶ポリエステル樹脂組成物からなり、
前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂である、ウェアラブルデバイス。
(2)前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤は1種の金属種からなる金属化合物である、(1)に記載のウェアラブルデバイス。
(3)前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤の配合量は、前記液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、3〜25重量部である、(1)または(2)に記載のウェアラブルデバイス。
(4)前記液晶ポリエステル樹脂組成物は無機充填材を含む液晶ポリエステル樹脂組成物である、(1)〜(3)のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
(5)ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂、および回路形成用添加剤を含む、ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物。
(6)(5)に記載のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の表面に、金属部を形成させる工程を含むウェアラブルデバイスの製造方法。
(7)ウェアラブルデバイスは、メガネ型、リストバンド型、腕時計型、カメラ型、ペンダント型、ヘッドフォン型、イヤホン型、ヘッドマウントディスプレイ型、Tシャツ型からなる群から選択される、(1)〜(4)のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
(1)上面に回路が形成された基板を備え、
前記回路が配線により電気的に接続されているウェアラブルデバイスであって、
前記基板は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含む液晶ポリエステル樹脂組成物からなり、
前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂である、ウェアラブルデバイス。
(2)前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤は1種の金属種からなる金属化合物である、(1)に記載のウェアラブルデバイス。
(3)前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤の配合量は、前記液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、3〜25重量部である、(1)または(2)に記載のウェアラブルデバイス。
(4)前記液晶ポリエステル樹脂組成物は無機充填材を含む液晶ポリエステル樹脂組成物である、(1)〜(3)のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
(5)ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂、および回路形成用添加剤を含む、ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物。
(6)(5)に記載のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の表面に、金属部を形成させる工程を含むウェアラブルデバイスの製造方法。
(7)ウェアラブルデバイスは、メガネ型、リストバンド型、腕時計型、カメラ型、ペンダント型、ヘッドフォン型、イヤホン型、ヘッドマウントディスプレイ型、Tシャツ型からなる群から選択される、(1)〜(4)のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物から構成されるウェアラブルデバイスは、成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる。したがって、本発明のウェアラブルデバイスは、基板をアセンブリする際にピンを圧入する際の割れが抑制され、さらに落下衝撃を加えても回路の断線、短絡といった不良が抑制される。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物>
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含み、前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂組成物である。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含み、前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂組成物である。
ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる成分について説明する。
[液晶ポリエステル樹脂]
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂は、異方性溶融相を形成するポリエステルである。液晶ポリエステル樹脂としては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂は、異方性溶融相を形成するポリエステルである。液晶ポリエステル樹脂としては、例えば、後述するオキシカルボニル単位、ジオキシ単位、ジカルボニル単位などから異方性溶融相を形成するよう選ばれた構造単位から構成されるポリエステルなどが挙げられる。
次に、液晶ポリエステル樹脂を構成する構造単位について説明する。
オキシカルボニル単位としては、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位を含み、さらに例えば、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などに由来する構造単位を併用することができる。成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位は、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位が特に好ましい。
ジオキシ単位の具体例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオールに由来する構造単位、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールに由来する構造単位、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールに由来する構造単位などが挙げられる。成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、芳香族ジオールに由来する構造単位が好ましく、中でも4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンに由来する構造単位が特に好ましい。
ジカルボニル単位としては、テレフタル酸に由来する構造単位を含み、さらに例えば、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸に由来する構造単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸に由来する構造単位などを併用することができる。成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸に由来する構造単位を併用することが好ましい。
また、上記構造単位に加えて、p−アミノ安息香酸、p−アミノフェノールなどから生成した構造単位を、液晶性や特性を損なわない程度の範囲でさらに有することができる。
液晶ポリエステル樹脂の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、エチレングリコールに由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、2,6−ジヒドロキシナフタレンに由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、テレフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂などが挙げられる。
成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、特に好ましいのは、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、イソフタル酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂である。
上記の各構造単位を構成する原料モノマーは、各構造単位を形成しうる構造であり、例えば、各構造単位の水酸基のアシル化物、各構造単位のカルボキシル基のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物などのカルボン酸誘導体などが使用されてもよい。
液晶ポリエステル樹脂を構成するジオキシ単位の合計と、ジカルボニル単位の合計とは実質的に等モルである。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂は、前記液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が60〜77モル%である。液晶ポリエステル樹脂の全構造単位に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位およびテレフタル酸に由来する構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、液晶ポリエステル樹脂の耐熱性に優れることから、その液晶ポリエステル樹脂組成物を用いたウェアラブルデバイスの成形品表面の回路部の形成性に優れる。また、液晶ポリエステル樹脂が上記範囲の構造単位で構成されることで、液晶ポリエステル樹脂の融点が制御され、成形加工時の温度を過度に高くすることなくウェアラブルデバイスを成形することが可能となり、成形時における液晶ポリエステル樹脂組成物の劣化が抑制され、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる。
一方、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位の合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60モル%未満であると、液晶ポリエステル樹脂の耐熱性が低下するため、その液晶ポリエステル樹脂組成物を用いたウェアラブルデバイスの成形品表面の回路部の密着性が低下する。また、機械強度が大幅に低下し、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性が大幅に低下する。また、77モル%を超えると、液晶ポリエステル樹脂の結晶性および融点が過度に高くなるため、成形加工時の温度が過度に高くなり、液晶ポリエステル樹脂組成物の劣化が進行し、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性が大幅に低下する。
液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対する、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計は、65モル%以上が好ましく、69モル%以上がさらに好ましい。一方、76モル%以下が好ましい。
ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位は、いずれか一方の構造単位を有し、もう一方の構造単位が0モル%であってもよいが、それぞれが0モル%を超えることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、液晶ポリエステル樹脂の構造単位全量100モル%に対して、ハイドロキノン由来の構造単位を2モル%以上有することが好ましい。上記の構造とすることにより、液晶ポリエステル樹脂の結晶性を適度に制御でき、成形品表面の回路部の形成性や、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れたウェアラブルデバイスが得られる。より好ましくは4モル%以上、さらに好ましくは7.5モル%以上である。一方で、ハイドロキノン由来の構造単位は20モル%以下有することが好ましい。上記の構造とすることにより、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる。より好ましくは15モル%以下であり、さらに好ましくは12モル%以下である。
本発明の液晶ポリエステル樹脂は、成形品表面の回路部の形成性や、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、全芳香族液晶ポリエステル樹脂であることが好ましい。全芳香族液晶ポリエステル樹脂とは、エチレングリコールなどの脂肪族化合物から生成した構造単位を含まないことを特徴とする液晶ポリエステル樹脂である。
本発明の液晶ポリエステル樹脂について、各構造単位の含有量の算出法を以下に示す。まず、液晶ポリエステル樹脂をNMR(核磁気共鳴)試験管に量りとり、液晶ポリエステル樹脂が可溶な溶媒(例えば、ペンタフルオロフェノール/重テトラクロロエタン−d2混合溶媒)に溶解する。次に、得られた溶液について、1H−NMRスペクトル測定を行い、各構造単位由来のピーク面積比から算出することができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、耐熱性の観点から220℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。一方、加工時の液晶ポリエステル樹脂組成物の劣化を抑制し、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)は、360℃以下が好ましく、355℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましい。
融点(Tm)の測定は、示差走査熱量測定により行う。具体的には、まず、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm1)を観測する。吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、吸熱ピーク温度(Tm1)+20℃の温度でポリマーを5分間保持する。その後、20℃/分の降温条件で室温までポリマーを冷却する。そして、20℃/分の昇温条件でポリマーを加熱することにより吸熱ピーク温度(Tm2)を観測する。融点(Tm)とは、該吸熱ピーク温度(Tm2)を指す。
本発明の液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度は、機械強度の観点から1Pa・s以上が好ましく、5Pa・s以上がより好ましく、15Pa・s以上がさらに好ましい。一方、流動性の観点から、液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度は、200Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、50Pa・s以下がさらに好ましい。
なお、この溶融粘度は、液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)+20℃の温度で、かつ、せん断速度1000/秒の条件下で、高化式フローテスターによって測定した値である。
本発明の液晶ポリエステル樹脂を製造する方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。公知のポリエステルの重縮合法としては、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する構造単位、ハイドロキノンに由来する構造単位、テレフタル酸に由来する構造単位、およびイソフタル酸に由来する構造単位からなる液晶ポリエステル樹脂を例に、以下が挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンとテレフタル酸、イソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、およびイソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重合することによって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸フェニルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルから脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶ポリエステル樹脂を製造する方法。
なかでも(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、およびイソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアセチル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶ポリエステル樹脂を製造する方法が、液晶ポリエステル樹脂の末端構造の制御および重合度の制御に工業的に優れる点から、好ましく用いられる。
本発明で使用する液晶ポリエステル樹脂の製造方法として、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。固相重合法による処理としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、液晶ポリエステル樹脂のポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕する。粉砕したポリマーまたはオリゴマーを、窒素気流下、または、減圧下において加熱し、所望の重合度まで重縮合することで、反応を完了させる。上記加熱は、液晶ポリエステル樹脂の融点−50℃〜融点−5℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間行うことができる。
液晶ポリエステル樹脂の重縮合反応は、無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどを触媒として使用することもできる。
[回路形成用添加剤]
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、回路形成用添加剤を含有する。なお、回路形成用添加剤とは、当該回路形成用添加剤を含む樹脂組成物からなる成形品表面に、金属部を形成させることのできる添加剤を指す。回路形成用添加剤はレーザー直接構造化用添加剤であることが好ましい。ここで、レーザー直接構造化用添加剤とは、本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物中に配合することで、当該組成物からなる成形品へのレーザー照射時にレーザー直接構造化添加剤が成形品表面に露出、変質し、それを起点として、無電解めっきなどの方法でレーザー照射部に金属部を形成することができる性質を付与する添加剤を指す。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、回路形成用添加剤を含有する。なお、回路形成用添加剤とは、当該回路形成用添加剤を含む樹脂組成物からなる成形品表面に、金属部を形成させることのできる添加剤を指す。回路形成用添加剤はレーザー直接構造化用添加剤であることが好ましい。ここで、レーザー直接構造化用添加剤とは、本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物中に配合することで、当該組成物からなる成形品へのレーザー照射時にレーザー直接構造化添加剤が成形品表面に露出、変質し、それを起点として、無電解めっきなどの方法でレーザー照射部に金属部を形成することができる性質を付与する添加剤を指す。
本発明の回路形成用添加剤は、1種の金属種からなることが好ましい。回路形成用添加剤を構成する金属種として、例えば銅、スズ、コバルト、ニッケルまたは銀などが挙げられる。金属種としては、銅、スズが好ましく、銅が特に好ましい。回路形成用添加剤は、金属単体での使用であっても、金属を含む化合物としての使用であってもよい。金属を含む化合物としては、酸化物、硫化物、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、ピロリン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、有機金属化合物、錯体などを用いることができる。なかでも酸化物、リン酸塩、ピロリン酸塩が好ましく、リン酸塩、ピロリン酸塩が特に好ましい。回路形成用添加剤が1種の金属種、特に上述の金属種からなる単体、金属化合物から構成されることで、液晶ポリエステル樹脂組成物中に適度に分散するため、成形品表面の回路部の形成性に優れるため好ましい。さらには、液晶ポリエステル樹脂組成物の成形加工時における回路形成用添加剤の反応や分解が抑制されるため、ウェアラブルデバイス部品の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、回路形成用添加剤は、リン酸銅、ピロリン酸銅が特に好ましい。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、回路形成用添加剤を液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、3〜25重量部含むことが好ましい。回路形成用添加剤の配合量を3重量部以上とすることにより、液晶ポリエステル樹脂組成物からなるウェアラブルデバイス部品の回路部の形成が容易に進行するため好ましい。回路形成用添加剤の配合量は4重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましい。一方、回路形成用添加剤の配合量を25重量部以下とすることにより、液晶ポリエステル樹脂組成物からなるウェアラブルデバイス部品の機械強度に優れ、液晶ポリエステル樹脂組成物中に適度に分散するため、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から好ましい。回路形成用添加剤の配合量は、22重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
本発明の回路形成用添加剤は、平均粒子径が1μmより大きいことが好ましい。ここでいう平均粒子径は体積平均粒子径であり、次の方法により求めることができる。液晶ポリエステル樹脂組成物50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、回路形成用添加剤、または無機充填材を配合する場合は回路形成用添加剤と無機充填材の混合物を取り出す。混合物中の無機充填材は比重差により分離することができる。例えば樹脂成分が除去された回路形成用添加剤と無機充填材の混合物を取り出し、これをヨウ化メチレン(比重3.33)や1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)、エタノール(比重0.789)などを用いて回路形成用添加剤と無機充填材との間の比重となるよう適宜混合した混合液中に分散させ、回転数10000rpmで5分間遠心分離した後、浮遊した無機充填材をデカンテーションで取り除き、沈降した回路形成用添加剤をろ過により取り出す。得られた回路形成用添加剤を100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定する。
回路形成用添加剤の平均粒子径が1μmより大きいと、無機充填材を配合する場合、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造時や成形加工時において、回路形成用添加剤と無機充填材との混練が促進されるため、それぞれの凝集が抑制され、得られるウェアラブルデバイス中で、回路形成用添加剤と無機充填材がそれぞれ分散性に優れる。それにより、ウェアラブルデバイスの回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるため好ましい。1.5μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。一方、回路形成用添加剤の液晶ポリエステル樹脂組成物中での分散性向上の観点から、回路形成用添加剤の平均粒子径の上限は、350μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
[充填材]
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂の機械強度その他の特性を付与するために充填材を含有してもよい。充填材としては、液晶ポリエステルに配合させても成形品表面に金属部を形成させる性質を付与しない充填材であり、上述の回路形成用添加剤とは異なるものである。充填材としては、例えば、繊維状、ウィスカー状、板状、粉末状、粒状などの各種形状の充填材を挙げることができる。具体的には、繊維状、ウィスカー状充填材としては、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、および針状酸化チタンなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、クレー、黒鉛、および二硫化モリブデンなどが挙げられる。粉状、粒状の充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、酸化チタン、酸化亜鉛、およびポリリン酸カルシウムなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂の機械強度その他の特性を付与するために充填材を含有してもよい。充填材としては、液晶ポリエステルに配合させても成形品表面に金属部を形成させる性質を付与しない充填材であり、上述の回路形成用添加剤とは異なるものである。充填材としては、例えば、繊維状、ウィスカー状、板状、粉末状、粒状などの各種形状の充填材を挙げることができる。具体的には、繊維状、ウィスカー状充填材としては、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、および針状酸化チタンなどが挙げられる。板状充填材としては、マイカ、タルク、カオリン、ガラスフレーク、クレー、黒鉛、および二硫化モリブデンなどが挙げられる。粉状、粒状の充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、酸化チタン、酸化亜鉛、およびポリリン酸カルシウムなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
上記充填材中、ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどを挙げることができる。
上記充填材は、その表面が公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤により処理されていてもよい。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、充填材の含有量は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、10〜200重量部が好ましい。充填材含有量が10重量部以上であれば、成形品の機械強度を向上させることができるため好ましい。15重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材含有量が200重量部以下であれば、成形性および流動性に優れた液晶ポリエステル樹脂組成物が得られるため好ましい。150重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
充填材のモース硬度は2.0〜7.0の範囲であることが好ましい。モース硬度は、モース硬度1〜10の標準物質との擦り合わせによる傷の有無で判別することができる。充填材のモース硬度が上記範囲であることで、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造、成形加工時において、回路形成用添加剤と混練されることで、それぞれの分散性が向上し、得られる樹脂組成物からなる成形品表面の回路部の形成性が向上するため好ましい。充填材のモース硬度は、成形品の補強効果の観点から2.5以上が好ましい。一方、成形加工時の、射出成形機のシリンダー、スクリューの摩耗を抑制する観点から6.5以下が好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
モース硬度が2.0未満の充填材を含有する場合、モース硬度が4.0〜7.0の充填材をさらに含有することが好ましい。上記範囲のモース硬度の充填材を組み合わせることで、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造、成形加工時において、回路形成用添加剤と混練されることで、それぞれの分散性が向上し、得られる樹脂組成物からなる成形品表面の回路部の形成性が向上するため好ましい。成形品表面の回路部の形成性に優れる観点から、モース硬度が2.0未満の充填材の含有量は、モース硬度が4.0〜7.0の充填材の含有量の0.1倍以上であることが好ましい。より好ましくは0.2倍以上である。一方、成形品の補強効果の観点から、モース硬度が2.0未満の充填材の含有量は、モース硬度が4.0〜7.0の充填材の含有量の5倍以下が好ましい。より好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下である。
また、上記充填材の中で、補強効果に優れ、回路形成用添加剤との混練時の分散性に優れるため、得られる液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品表面の回路部の形成性、成形品のピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れることから、板状充填材が好ましい。板状充填材として、例えばタルク、マイカ、ガラスフレークなどが挙げられ、中でも補強効果が高く、得られる液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れることからマイカが好ましい。
板状充填材は、平均粒子径が10〜1000μmであることが好ましい。ここでいう平均粒子径は体積平均粒子径であり、前述の方法により求めることができる。板状充填材の平均粒子径が10μm以上であると、補強効果に優れるため好ましい。15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。一方、板状充填材の平均粒子径が1000μm以下であると、液晶ポリエステル樹脂組成物中の分散性が向上するため、得られる液晶ポリエステル樹脂組成物の成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるため好ましい。900μm以下がより好ましく、700μm以下がさらに好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、板状充填材の平均粒子径が、回路形成用添加剤の平均粒子径の0.1〜30倍であることが好ましい。回路形成用添加剤と充填材の平均粒子径の関係が上記範囲である場合、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造時、成形加工時に回路形成用添加剤と板状充填材とが混練されることで、それぞれの凝集が抑制され、得られる成形品中で回路形成用添加剤と板状充填材がそれぞれ分散性に優れ、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるため好ましい。回路形成用添加剤と板状充填材の分散性向上の観点から、板状充填材の平均粒子径は、回路形成用添加剤の平均粒子径の0.5倍以上が好ましい。一方、充填材の補強効果の向上の観点から、15倍以下が好ましく、10倍以下がより好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸等の長鎖脂肪酸、そのエステル、そのハーフエステル、シリコーン、高級アルコール、高級脂肪酸アマイド、およびポリエチレンワックスなど)、染料または顔料を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、赤燐、シリコーン系難燃剤など)、難燃助剤、および帯電防止剤から選択される通常の添加剤を配合することが出来る。あるいは、液晶ポリエステル樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。特に、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、オレフィン系エラストマーを配合することが好ましい。
オレフィン系エラストマーは、オレフィン重合体もしくはオレフィン共重合体のどちらであっても良く、オレフィン重合体もしくは共重合体の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのα、β−不飽和カルボン酸およびそのアルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。
その他、反応性の官能基を含有するオレフィンの重合体もしくは共重合体も挙げられる。
例えば、エポキシ基を含有するオレフィンとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどが、カルボキシル基およびその塩、酸無水物基を含有するオレフィンの例としては、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基を含有する単量体成分を導入した場合、その導入量は、オレフィン系樹脂全体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが好ましい。
オレフィン系エラストマーの配合量は、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、1重量部以上が好ましい。より好ましくは3重量部以上である。一方、オレフィン系エラストマーの熱劣化による液晶ポリエステル樹脂組成物の劣化を抑制し、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる観点から、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、30重量部以下が好ましい。より好ましくは20重量部以下である。
液晶ポリエステル樹脂以外の重合体を配合する場合、液晶ポリエステル樹脂組成物中の樹脂種の中で、液晶ポリエステル樹脂の割合が最も多いことが好ましい。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物に、回路形成用添加剤、充填材、および他の添加剤等を配合する方法としては、例えば、液晶ポリエステル樹脂に回路形成用添加剤、充填材、およびその他の固体状の添加剤等を配合するドライブレンド法や、液晶ポリエステル樹脂、回路形成用添加剤、および充填材にその他の液体状の添加剤等を配合する溶液配合法、回路形成用添加剤、充填材、およびその他の添加剤を液晶ポリエステル樹脂の重合時に添加する方法や、液晶ポリエステル樹脂と回路形成用添加剤、充填材、およびその他の添加剤を溶融混練する方法などを用いることができる。なかでも溶融混練する方法が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、液晶ポリエステル樹脂の融点+50℃以下で溶融混練して液晶ポリエステル樹脂組成物とすることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。
二軸押出機については、液晶ポリエステル樹脂と回路形成用添加剤、および充填材の分散性を向上させるため、ニーディング部を1箇所以上設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ニーディング部の設置箇所は、例えば、充填材をサイドフィーダーから添加する場合、液晶ポリエステル樹脂の可塑化を促進させるために、充填材のサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、液晶ポリエステル樹脂と充填材との分散性を向上させるため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。
また、二軸押出機中の水分や混練中に生じた分解物を除去するため、ベント部を設けていることが好ましく、2箇所以上設けていることがより好ましい。ベント部の設置箇所は、例えば、充填材をサイドフィーダーから添加する場合、液晶ポリエステル樹脂の付着水分を除去するために、充填材を投入するサイドフィーダーより上流側に1箇所以上、溶融混練時の分解ガス、充填材供給時の持ち込み空気を除去するため、サイドフィーダーよりも下流側に1箇所以上の計2箇所以上設置することが好ましい。ベント部は、常圧下としてもよく、減圧下としてもよい。また、溶融混練時の最大せん断応力は5000〜20000Paとすることが好ましい。好ましくは、7500〜18000Pa、更に好ましくは、8000〜16000Paである。最大せん断応力は押出機中の樹脂温度、および押出機シリンダー径、スクリュー回転数、ニーディング部のクリアランスから算出した混練時の最大せん断速度において高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用いて測定することができる。溶融混練時の最大せん断応力を上記範囲とすることで、回路形成用添加剤および充填材の分散性を向上させつつ樹脂組成物の劣化が抑制される。そのため、得られる成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるため好ましい。
混練方法としては、1)液晶ポリエステル樹脂、回路形成用添加剤、充填材およびその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)液晶ポリエステル樹脂、回路形成用添加剤、およびその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材およびその他添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)液晶ポリエステル樹脂と回路形成用添加剤、およびその他の添加剤を高濃度に含むマスターペレットを作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットを液晶ポリエステル樹脂および充填材と混練する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの公知の溶融成形を行うことによって、優れた表面外観(色調)および機械的性質、耐熱性、難燃性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの各種フィルム、未延伸糸、超延伸糸などの各種繊維などが挙げられる。特に加工性の観点から射出成形であることが好ましい。
[ウェアラブルデバイス]
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、ウェアラブルデバイスを構成する部品である基板を成形するための原料として用いることができる。以下、本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物が使用されるウェアラブルデバイスについて説明する。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、ウェアラブルデバイスを構成する部品である基板を成形するための原料として用いることができる。以下、本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物が使用されるウェアラブルデバイスについて説明する。
ウェアラブルデバイスとは、身につけて使う情報機器のことであり、体に装着して利用する形態の機器をさす。具体的には、メガネ型、リストバンド型、腕時計型、カメラ型、ペンダント型、ヘッドフォン型、イヤホン型、ヘッドマウントディスプレイ型、Tシャツ型などの形状のものがある。また、パソコンやスマートフォンなどと連携して入出力を補助するもの、ディスプレーやカメラを内蔵したもの、スマートフォンの操作を可能にするリモコン様のもの、Tシャツタイプで表示機能や身体の状況をモニタリングできる機能をもつものなどが挙げられるが、体に装着して利用する形態の機器であれば上記に限定されるものではなく、上記2つ以上の組み合わせのウェアラブルデバイスであってもよい。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物を成形してなるウェアラブルデバイスは、上面に配線により電気的に接続されている回路が形成された基板を備える。
基板は、本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形された成形品である。そのため、成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れる。そのため、ピンを圧入して基板をウェアラブルデバイスにアセンブリする際に割れたりすることなく、また、取扱い時に誤って落下させた場合においてウェアラブルデバイスの信頼性に優れる。基板の形状は、平面状であっても、立体状であってもよい。基板は、金属回路が配線により電気的に接続されており、金属回路は、三次元回路であってもよい。
上記のウェアラブルデバイス基板は、表面に金属回路部を有しているが、表面に金属回路部を形成させる方法としては特に限定されず、成形品への触媒付与を含む各種めっき処理による方法、2回成形により回路形成箇所以外へマスキングを施すマスク形成方法、レーザー照射による成形品表面の変性、部分除去による方法、およびそれらの組み合わせによるものが挙げられる。特にレーザー直接構造化工法などに代表される、成形品へのレーザー照射によるパターン描画工程とめっき処理による金属化工程とを含む、レーザー照射部への選択的な金属回路部形成方法が、1回成形で成形品を作成可能なこと、回路の狭ピッチ化が容易なこと、回路パターンの変更時に金型変更が不要でレーザー照射パターンを変えるだけでよいことなどの利点があり好ましい。
金属回路部形成箇所に照射するレーザーについては、特に制限はなく、YVO4レーザー、CO2レーザー、Arレーザー、およびエキシマレーザーなどが挙げられる。特に、基本波長1064nmまたは第2高波長532nmの波長で作動するNd;YAGレーザー、YVO4レーザー、FAYbレーザーが、金属回路部の形成性に優れるため好ましい。また、レーザー光線の発振方式は連続発振レーザーであってもパルスレーザーであってもよい。金属回路部形成箇所に照射するレーザーは、成形品表面の熱劣化、溶融樹脂による回路形成用添加剤の埋没を抑制する点から、強いレーザー出力を短時間照射するパルスレーザーが好ましい。
上記方法により形成される回路部の金属種は、金、銀、銅、白金、亜鉛、スズ、ニッケル、カドミウム、クロム、およびそれらを含む合金などが挙げられ、特に金、銅、ニッケルが金属回路部の形成性、密着性の点から好ましい。また、金属回路部の安定性、導通性の向上の観点から、成形品の金属回路部上にめっき等の手法によりさらに異なる種類の金属種からなる金属層を形成してもよい。
上記の方法により得られた、金属回路を形成したウェアラブルデバイス用基板は、従来技術である回路を形成する基板とそれを保持する成形品からなる回路部材に比べ、省スペースであり、製造工程の簡略化が図れ、三次元回路を有する立体形状の基板の作成が容易であることから有用である。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
各実施例および比較例に用いた液晶ポリエステル樹脂を次に示す。
液晶ポリエステル樹脂の組成分析および特性評価は以下の方法により行った。
(1)液晶ポリエステル樹脂の組成分析
液晶ポリエステル樹脂の組成分析は、1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)測定により実施した。液晶ポリエステル樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃で1H−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位に由来するピーク面積比から組成を分析した。
液晶ポリエステル樹脂の組成分析は、1H−核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)測定により実施した。液晶ポリエステル樹脂をNMR試料管に50mg秤量し、溶媒(ペンタフルオロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2=65/35(重量比)混合溶媒)800μLに溶解して、UNITY INOVA500型NMR装置(バリアン社製)を用いて観測周波数500MHz、温度80℃で1H−NMR測定を実施し、7〜9.5ppm付近に観測される各構造単位に由来するピーク面積比から組成を分析した。
(2)液晶ポリエステル樹脂の融点(Tm)測定
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)により、液晶ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点(Tm)とした。以下の製造例においては、融点をTmと記載する。
示差走査熱量計DSC−7(パーキンエルマー製)により、液晶ポリエステル樹脂を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)を融点(Tm)とした。以下の製造例においては、融点をTmと記載する。
(3)液晶ポリエステル樹脂の溶融粘度測定
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用い、液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃に設定された高化式フローテスター炉内で、液晶ポリエステル樹脂を溶融させるため液晶ポリエステル樹脂を装填してから5分間保持した後に、せん断速度1000/秒で溶融粘度を測定した。
高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用い、液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃に設定された高化式フローテスター炉内で、液晶ポリエステル樹脂を溶融させるため液晶ポリエステル樹脂を装填してから5分間保持した後に、せん断速度1000/秒で溶融粘度を測定した。
製造例1 液晶ポリエステル樹脂(A−1)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から350℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−1)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−1)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が60.0モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が12.0モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が8.0モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が15.2モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が4.8モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、75.2モル%であった。また、Tmは330℃、溶融粘度は28Pa・sであった。
製造例2 液晶ポリエステル樹脂(A−2)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル302重量部、ハイドロキノン119重量部、テレフタル酸247重量部、イソフタル酸202重量部および無水酢酸1302重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から330℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル302重量部、ハイドロキノン119重量部、テレフタル酸247重量部、イソフタル酸202重量部および無水酢酸1302重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から330℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−2)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−2)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が53.8モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が13.8モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が9.2モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が12.7モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が10.4モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、66.5モル%であった。また、Tmは310℃、溶融粘度は30Pa・sであった。
製造例3 液晶ポリエステル樹脂(A−3)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1057重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル151重量部、ハイドロキノン59重量部、テレフタル酸202重量部、イソフタル酸22重量部および無水酢酸1152重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から365℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を365℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−3)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸1057重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル151重量部、ハイドロキノン59重量部、テレフタル酸202重量部、イソフタル酸22重量部および無水酢酸1152重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から365℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を365℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−3)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−3)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が73.9モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が7.8モル%、ハイドロキノン由来の構造単位の割合が5.2モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が11.7モル%、イソフタル酸由来の構造単位の割合が1.3モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、85.7モル%であった。また、Tmは351℃、溶融粘度は31Pa・sであった。
製造例4 液晶ポリエステル樹脂(A−4)
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、145℃から320℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−4)を得た。
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部および無水酢酸960重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、145℃から320℃まで4時間で昇温させた。その後、重合温度を320℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(A−4)を得た。
この液晶ポリエステル樹脂(A−4)について組成分析を行ったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位の割合が66.7モル%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位の割合が6.3モル%、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレンジオキシ単位の割合が10.4モル%、テレフタル酸由来の構造単位の割合が16.7モル%であった。ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位とテレフタル酸由来の構造単位の合計は液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して、83.3モル%であった。また、Tmは313℃、溶融粘度は13Pa・sであった。
各実施例および比較例において用いた回路形成用添加剤を次に示す。
(B−1):リン酸銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−2):ピロリン酸銅(II)(関東化学製、平均粒子径1μm)
(B−3):酸化銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−4):酸化スズ(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−5):銅クロム酸化物 Black3702(アサヒ化成工業製、平均粒子径0.8μm)
(B−1):リン酸銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−2):ピロリン酸銅(II)(関東化学製、平均粒子径1μm)
(B−3):酸化銅(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−4):酸化スズ(II)(和光純薬製、平均粒子径3μm)
(B−5):銅クロム酸化物 Black3702(アサヒ化成工業製、平均粒子径0.8μm)
各実施例および比較例において用いた充填材および添加剤を次に示す。
(C−1):マイカ AB−25S(ヤマグチマイカ製、平均粒子径24μm、モース硬度2.8)
(C−2):ガラスミルドファイバー EPDE−40M−10A(日本電気硝子製、平均繊維長40μm、平均繊維径9μm、モース硬度5.5)
(C−3):タルク NK64(富士タルク工業製、平均粒子径19μm、モース硬度1)
(D−1):“ボンドファースト”2C(住友化学(株)製、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン含有量94重量%、グリシジルメタクリレート含有量6重量%)
(C−1):マイカ AB−25S(ヤマグチマイカ製、平均粒子径24μm、モース硬度2.8)
(C−2):ガラスミルドファイバー EPDE−40M−10A(日本電気硝子製、平均繊維長40μm、平均繊維径9μm、モース硬度5.5)
(C−3):タルク NK64(富士タルク工業製、平均粒子径19μm、モース硬度1)
(D−1):“ボンドファースト”2C(住友化学(株)製、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン含有量94重量%、グリシジルメタクリレート含有量6重量%)
実施例1〜9、比較例1〜4
サイドフィーダーを備えた東芝機械製TEM35B型2軸押出機で、各製造例で得られた液晶ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−4)100重量部に対し、表1に示す配合量で、回路形成用添加剤(B−1)〜(B−5)および添加剤(D−1)を元込めフィーダーから投入し、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、表1に示す配合量で、充填材(C−1)〜(C−2)をサイドフィーダーから投入し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−4)の融点+10℃に設定し、溶融混練してペレットとした。得られた液晶ポリエステル樹脂組成物のペレットを熱風乾燥後を用いて150℃で3時間乾燥した後、以下(4)〜(8)の評価を行った。結果を表1に示す。
サイドフィーダーを備えた東芝機械製TEM35B型2軸押出機で、各製造例で得られた液晶ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−4)100重量部に対し、表1に示す配合量で、回路形成用添加剤(B−1)〜(B−5)および添加剤(D−1)を元込めフィーダーから投入し、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対し、表1に示す配合量で、充填材(C−1)〜(C−2)をサイドフィーダーから投入し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−4)の融点+10℃に設定し、溶融混練してペレットとした。得られた液晶ポリエステル樹脂組成物のペレットを熱風乾燥後を用いて150℃で3時間乾燥した後、以下(4)〜(8)の評価を行った。結果を表1に示す。
(4)回路形成用添加剤、充填材の平均粒子径測定
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物のペレット50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、樹脂組成物中の回路形成用添加剤および充填材の混合物を取り出した。得られた混合物を、ヨウ化メチレン(比重3.33)中に分散させ、回転数10000rpmで5分間遠心分離した後、浮遊した充填材をデカンテーションで取り出し、沈降した回路形成用添加剤をろ過により取り出した。得られた回路形成用添加剤、充填材を100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定し、体積平均粒径を算出した。
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物のペレット50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、樹脂組成物中の回路形成用添加剤および充填材の混合物を取り出した。得られた混合物を、ヨウ化メチレン(比重3.33)中に分散させ、回転数10000rpmで5分間遠心分離した後、浮遊した充填材をデカンテーションで取り出し、沈降した回路形成用添加剤をろ過により取り出した。得られた回路形成用添加剤、充填材を100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定し、体積平均粒径を算出した。
(5)回路部分の形成性
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、金型温度を90℃として、70mm×70mm×1mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品表面に、パナソニック製LP−V10U FAYbレーザー装置を用い、波長1064nm、周波数50Hz、レーザー出力5.0W、走査速度3000mm/sの条件でレーザー照射を行った。その成形品に6μm厚の無電解銅めっき処理を実施し、その後、冷熱衝撃装置(ESPEC社製TSA−70L)にて、室温から5分で−40℃まで降温させ30分保持、その後5分で150℃まで昇温し30分保持を1サイクルとして10回繰り返す試験条件で冷熱処理を行った。その冷熱処理成形品のめっき表面を、市販のNTカッター(幅9mm、35°傾斜の刃)を用いて、1mm間隔のマス目が100個出来るよう、樹脂成形品に達する深さで切り傷を入れた。マス目にテープ(粘着力3.4〜3.9N/cmのニチバン製セロテープ(登録商標)、幅18mm)を十分に密着させ、テープの両端を持ち垂直方向に瞬間的に引き剥がし、めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数を測定した。また、成形品表面にめっきが形成されなかったものは「×」とした。めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数(めっき処理面残存数)が多いほど、成形品の回路部の形成性に優れるとした。
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、金型温度を90℃として、70mm×70mm×1mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品表面に、パナソニック製LP−V10U FAYbレーザー装置を用い、波長1064nm、周波数50Hz、レーザー出力5.0W、走査速度3000mm/sの条件でレーザー照射を行った。その成形品に6μm厚の無電解銅めっき処理を実施し、その後、冷熱衝撃装置(ESPEC社製TSA−70L)にて、室温から5分で−40℃まで降温させ30分保持、その後5分で150℃まで昇温し30分保持を1サイクルとして10回繰り返す試験条件で冷熱処理を行った。その冷熱処理成形品のめっき表面を、市販のNTカッター(幅9mm、35°傾斜の刃)を用いて、1mm間隔のマス目が100個出来るよう、樹脂成形品に達する深さで切り傷を入れた。マス目にテープ(粘着力3.4〜3.9N/cmのニチバン製セロテープ(登録商標)、幅18mm)を十分に密着させ、テープの両端を持ち垂直方向に瞬間的に引き剥がし、めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数を測定した。また、成形品表面にめっきが形成されなかったものは「×」とした。めっき処理面が剥離せずに残ったマス目の数(めっき処理面残存数)が多いほど、成形品の回路部の形成性に優れるとした。
(6)ピン圧入強度
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂組成物の融点+20℃、金型温度を90℃として、2.8mmピッチで1.5mm×1.5mmの角穴が20個付いた、厚さ3mmのピン圧入試験片を成形した。得られた試験片の角穴に、1.6mm×1.6mmの黄銅製角棒を各々挿入し、角穴のうち割れの発生したものの数を調べた。割れ数が少ないほどピン圧入強度に優れるとした。
各実施例および比較例で得られた液晶性樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂組成物の融点+20℃、金型温度を90℃として、2.8mmピッチで1.5mm×1.5mmの角穴が20個付いた、厚さ3mmのピン圧入試験片を成形した。得られた試験片の角穴に、1.6mm×1.6mmの黄銅製角棒を各々挿入し、角穴のうち割れの発生したものの数を調べた。割れ数が少ないほどピン圧入強度に優れるとした。
(7)ウェアラブルデバイスの落下衝撃耐久性
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、金型温度を90℃として、30mm×20mm×0.5mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品表面に、パナソニック製LP−V10U FAYbレーザー装置を用い、波長1064nm、周波数50Hz、レーザー出力5.0W、走査速度3000mm/sの条件で、0.2mm幅、1mm間隔の配線パターンのレーザー照射を行った。その成形品に6μm厚の無電解銅めっき処理を実施した。配線パターンと接続するように、基板を腕時計型ウェアラブルデバイスにピンで圧入してアセンブリし、腕時計型ウェアラブルデバイスを得た。その後、SUS容器に収納して閉蓋し、当該収納容器を1.5m高さから50回落下させたあと開蓋し、落下衝撃後のウェアラブルデバイスの配線の導通をテスターで評価した。落下衝撃後も導通しているものを「○」、落下衝撃により配線が剥離、基板が割れるなどして断線、短絡しているものを「×」、めっき処理による配線パターンが形成されないものを「−」とした。導通しているものほどウェアラブルデバイスの落下衝撃耐久性に優れるとした。
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物を、ファナックα30C射出成形機(ファナック製、スクリュー径28mm)に供し、シリンダー温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+20℃、金型温度を90℃として、30mm×20mm×0.5mm厚の角形成形品を成形した。得られた成形品表面に、パナソニック製LP−V10U FAYbレーザー装置を用い、波長1064nm、周波数50Hz、レーザー出力5.0W、走査速度3000mm/sの条件で、0.2mm幅、1mm間隔の配線パターンのレーザー照射を行った。その成形品に6μm厚の無電解銅めっき処理を実施した。配線パターンと接続するように、基板を腕時計型ウェアラブルデバイスにピンで圧入してアセンブリし、腕時計型ウェアラブルデバイスを得た。その後、SUS容器に収納して閉蓋し、当該収納容器を1.5m高さから50回落下させたあと開蓋し、落下衝撃後のウェアラブルデバイスの配線の導通をテスターで評価した。落下衝撃後も導通しているものを「○」、落下衝撃により配線が剥離、基板が割れるなどして断線、短絡しているものを「×」、めっき処理による配線パターンが形成されないものを「−」とした。導通しているものほどウェアラブルデバイスの落下衝撃耐久性に優れるとした。
表1の結果から、本発明の実施形態のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、成形品表面の回路部の形成性、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れることがわかる。そのため、ピンを圧入して基板をウェアラブルデバイスにアセンブリする際に割れたりすることなく、さらにはウェアラブルデバイスの取扱い時に誤って落下させた場合にウェアラブルデバイスの信頼性に優れ、表面に金属回路を有するウェアラブルデバイス基板への使用に適しているといえる。
本発明のウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物は、ピン圧入強度および落下衝撃耐久性に優れるため、表面に金属回路を有するウェアラブルデバイス基板への使用に有用である。
Claims (7)
- 上面に回路が形成された基板を備え、
前記回路が配線により電気的に接続されているウェアラブルデバイスであって、
前記基板は、液晶ポリエステル樹脂および回路形成用添加剤を含む液晶ポリエステル樹脂組成物からなり、
前記液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂である、ウェアラブルデバイス。 - 前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤は1種の金属種からなる金属化合物である、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
- 前記液晶ポリエステル樹脂組成物に含まれる前記回路形成用添加剤の配合量は、前記液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、3〜25重量部である、請求項1または2に記載のウェアラブルデバイス。
- 前記液晶ポリエステル樹脂組成物は無機充填材を含む液晶ポリエステル樹脂組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
- ヒドロキシ安息香酸に由来する構造単位とテレフタル酸に由来する構造単位との合計が、液晶ポリエステル樹脂の全構造単位100モル%に対して60〜77モル%である液晶ポリエステル樹脂、および回路形成用添加剤を含む、ウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物。
- 請求項5に記載のウェアラブル端末用液晶ポリエステル樹脂組成物からなる成形品の表面に、金属部を形成させる工程を含むウェアラブルデバイスの製造方法。
- ウェアラブルデバイスは、メガネ型、リストバンド型、腕時計型、カメラ型、ペンダント型、ヘッドフォン型、イヤホン型、ヘッドマウントディスプレイ型からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のウェアラブルデバイス。
Priority Applications (1)
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JP2018014434A JP2019134053A (ja) | 2018-01-31 | 2018-01-31 | ウェアラブルデバイス、ウェアラブルデバイスの製造方法およびウェアラブルデバイス用液晶ポリエステル樹脂組成物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2018
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