JP2019132139A - 耐抜落ち性に優れたバルブシート - Google Patents

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Abstract

【課題】耐抜落ち性に優れたバルブシートを提供する。【解決手段】内燃機関の軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されて使用されるバルブシートで、外周面の少なくとも1箇所に粗面化領域を有する。配設される粗面化領域は、外周面に垂直な方向から観察して、圧入する方向に対し三角形状を呈し、かつ該三角形状は、圧入する方向に向く頂点の頂角αを10〜150°とする三角形状とする。そして該粗面化領域として、山高さが3〜80μmの円周方向に延在する凸部と谷深さが3〜100μmの円周方向に延在する凹部とが隣接してなる凹凸を、円周方向に垂直な方向に複数列有する凹凸混合部を、面積率で合計0.3%以上、配設する。これにより、バルブシートの高温保持力が増加し、抜け出し荷重が増大して、バルブシートの稼働中の抜け落ちを防止できる。なお、粗面化領域の形成は、レーザ光照射によることが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関用のバルブシートに係り、とくに軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されて使用されるバルブシートの耐抜落ち性の向上に関する。
バルブシートは、燃焼ガスのシールとバルブを冷却する役割を担って、エンジンのシリンダヘッドに圧入されて使用されてきた。しかし、エンジン運転中に高温での保持力(以下、高温保持力ともいう)が不足して、抜け落ちる場合があった。
このような問題に対し、例えば特許文献1には、バルブシート脱落防止構造が提案されている。特許文献1に記載されたバルブシート脱落防止構造は、シリンダヘッド圧入孔内周面に環状溝を形成するとともに、シリンダヘッド圧入孔に圧入するバルブシートの外周面にも環状溝を形成して、バルブシートを圧入した際に、これら環状溝で形成される空間に、半径方向に拡張する拡張リングを挿入してなる構造を有する。これによれば、バルブシートをシリンダヘッドへ装着する時には圧縮されていた拡張リングは、バルブシートを圧入した後には、圧入孔内周面に形成された環状溝とバルブシート外周面に形成された環状溝との中に納まると、拡張してこの両環状溝にまたがって配置するようになり、バルブシートの軸方向への動きは完全に抑制され、脱落は確実に防止できるとしている。
実開平01‐83109号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、シリンダヘッドの圧入孔内周面およびバルブシート外周面に溝加工を施し、環状溝を形成する必要があり、製造工程が複雑になるうえ、部品寸法が小さいことから所望の加工精度を確保することが難しいという問題があった。また、圧入時の振動で、拡張リングが振り落ちるという問題があり、所望の機能を確保することが難しいという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、内燃機関の軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されて使用されるバルブシートであって、内燃機関の稼働中に容易には抜け落ちない、耐抜落ち性に優れたバルブシートを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、内燃機関の軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されて使用されるバルブシートの耐抜落ち性に影響する各種要因について、鋭意検討した。
その結果、内燃機関の稼働中に保持力(高温での保持力)が不足して抜け落ちるという問題が発生する。保持力(高温での保持力)を向上させ、このような問題の発生を回避するため、本発明者らは、シリンダヘッド内周面に当接するバルブシートの外周面を、粗面化することに思い至った。
バルブシートの外周面は、通常、JIS B 0601-2001に規定される算術平均高さRaで0.8μm程度に仕上加工されている。本発明者らは、軽金属合金製シリンダヘッドにバルブシートを圧入する場合には、バルブシートの外周面表面を通常の仕上加工面に比べて粗い、たとえば、外周面を基準として山高さで3〜80μmとなるように粗面化することにより、高温保持力の指標である「高温抜け荷重」が顕著に高くなり、耐抜落ち性が向上することを見出した。しかも、粗面化する領域は、バルブシート外周面全域とする必要はなく、バルブシート外周面の一部領域でも十分に効果のあることを見出した。
すなわち、バルブシート外周面に、粗面化領域として、最大山高さ(又は山高さ)が3〜80μmとなる領域(以下、「凸状部」ともいう)あるいは最大谷深さ(又は谷深さ)が3〜100μmとなる領域(以下、凹状部ともいう)を、少なくとも1箇所設けることが、バルブシートの耐抜落ち性の向上に顕著に寄与することを見出した。なお、上記した最大山高さ(又は山高さ)を有する領域または上記した最大谷深さ(又は谷深さ)を有する領域が、外周面全域に対する面積率で0.3%程度存在すれば、耐抜落ち性の向上に対し十分に効果があることも知見した。かかる知見に基づき、本発明者らは、出願番号PCT/JP2017/24854として、耐抜落ち性に優れたバルブシートを提案した。
本発明者らは、バルブシートの耐抜落ち性の更なる向上のために、耐抜落ち性に影響する各種要因について更に検討を加えた。その結果、粗面化領域の形状や配置に工夫を加えることにより、更に耐抜落ち性を向上させることができることを新規に見出した。
すなわち、バルブシートの外周面の少なくとも1箇所に形成する粗面化領域を、三角形状に限定し、さらに三角形のひとつの頂点を、頂角αが10〜90°の範囲の鋭角である頂点としたうえで、該頂点がバルブシートの圧入方向に向くよう配置した、三角形状の粗面化領域を設けることにより、抜け出し荷重(高温抜け荷重)が顕著に増加すること、を知見した。
まず、本発明の基礎になった実験結果について、説明する。
鉄基粉末(純鉄粉)に、黒鉛粉末と、硬質粒子粉末と、固体潤滑剤粉末と、を配合し、混合、混練し、混合粉とした。ついで、得られた混合粉を、金型に充填し、成形プレスで加圧成形して、バルブシート(寸法:φ34mm×φ25mm×8mm)形状の圧粉体とした。ついで、圧粉体に、還元性雰囲気中で焼結処理を施し、焼結体Aとした。
これら焼結体Aに、切削・研削加工(仕上加工)を施し、所定寸法(寸法:φ32mm×φ25mm×6.0mm)のバルブシートとした。なお、バルブシート外周面の仕上加工面の表面粗さは、JIS Z 0601(2001)の規定に準拠したRaで、0.8μm以下であった。
ついで、仕上加工されたバルブシートの外周面で、高さ方向の中央部に、レーザ光照射処理により、面積率が変化するように、複数の箇所で粗面化領域を形成した。なお、粗面化領域は、円周方向に等間隔となるように配置した。また、形成した粗面化領域は、図3(a)に示すように、外周面に対し垂直方向から観察した状態で、三角形状を呈し、かつ圧入する方向に向く三角形の頂点の頂角αが、37°または90°とする三角形状を呈するように形成した。そして、粗面化領域の表面性状は、円周方向に延在する凹部と凸部とが隣接してなる凹凸を円周方向に垂直な方向に複数列有する領域とした。なお、本発明では、このような領域を「凹凸混合部」と称する。また、形成した凹部の谷深さはいずれも、外周面を基準として一定の谷深さ(=30μm)とし、形成した凸部の山高さはいずれも、外周面を基準として一定の山高さ(=30μm)とし、一定の山ピッチ(=75μm)とした。なお、レーザ光照射処理を行わず、仕上加工のままを基準材とした。
得られたバルブシートについて、図2に示す高温保持力測定装置を用いて、所定温度(200℃)における抜け出し荷重(高温抜け荷重)を測定した。
得られたバルブシート1を、高温保持力測定装置のアルミニウム合金製シリンダヘッド相当材2に圧入した。そして、シリンダヘッド相当材2の下部に配設された加熱手段4でバルブシートが所定温度(200℃)となるまで加熱した。ついで、所定の温度に加熱されたバルブシート1を、押し冶具3を用いて押圧し、シリンダヘッド相当材2から離脱させた。そのときの抜け出し荷重Lを、荷重計(図示せず)により測定した。
得られた抜け出し荷重について、粗面化領域を形成しない基準材を基準(1.00)として、各バルブシートの抜け出し荷重比を算出した。得られた結果を、粗面化領域の合計量(面積%)と抜け出し荷重比との関係で図1に示す。
図1から、粗面化領域の合計量(面積%)が増加するに伴い、抜出し荷重比が1.0を超えて増加し、粗面化領域なしの基準材に比べて抜け出し荷重が増加することがわかる。しかも、三角形状の粗面化領域を、頂角αが37°と鋭角である三角形の頂点を圧入方向に向くように配置することにより、頂角αが90°である場合にくらべ、粗面化領域の合計量が同じ場合に比べて、抜け出し荷重比が顕著に向上することを知見した。これは、バルブシートとシリンダヘッドとの密着性向上に起因すると考えられる。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものです。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)内燃機関の軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されるバルブシートであって、前記バルブシートの外周面の少なくとも1箇所に粗面化領域として、円周方向に延在する凹部と凸部とを隣接してなる凹凸を前記円周方向に垂直な方向に複数列有する凹凸混合部、を有してなり、かつ前記凹凸混合部が、前記外周面に対し垂直方向から観察して、圧入する方向に三角形状を呈し、かつ圧入する方向に向く該三角形状の頂点が、頂角α:10〜150°であり、前記粗面化領域を、前記外周面の全域に対する面積率で、合計で0.3%以上有することを特徴とする耐抜落ち性に優れたバルブシート。
(2)(1)において、前記凹凸混合部における前記凹部と前記凸部の延在する方向が、前記円周方向とのなす角で、0°超90°未満であることを特徴とするバルブシート。
(3)(1)または(2)において、前記凸部が、前記外周面を基準として、山高さで3〜80μmとなる凸部であり、前記凹部が、前記外周面を基準として、谷深さで3〜100μmとなる凹部であることを特徴とするバルブシート。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記凹凸混合部が、前記延在する方向に垂直な断面で、隣接する2つの前記凸部の間隔であるピッチで、1〜600μmである凹凸を有することを特徴とするバルブシート。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記凹凸混合部の複数列の凸部の山高さが、前記外周面を基準として一定の高さであるか、あるいは該基準から、圧入方向に沿って増加することを特徴とするバルブシート。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記粗面化領域を、前記外周面上で、前記円周方向に等間隔の各位置に形成することを特徴とするバルブシート。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記バルブシートが鉄基焼結合金製であることを特徴とするバルブシート。
本発明によれば、内燃機関の軽金属合金製シリンダブロックに圧入されたバルブシートの高温保持力が増大し、バルブシートが内燃機関の運転中に抜け落ちる事故の発生が激減するという、産業上格段の効果を奏する。
抜け出し荷重比と粗面化領域の合計量(面積%)との関係を示すグラフである。 高温保持力測定装置の概略を模式的に示す断面図である。 粗面化領域の好ましい形状を模式的に示す説明図である。 粗面化領域の好ましい形状を模式的に示す説明図である。 粗面化領域の好ましい形状を模式的に示す説明図である。
本発明バルブシートは、内燃機関のアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属合金製シリンダブロックに圧入された状態で使用される。本発明バルブシートは、素材を所定寸法に加工され、かつバルブシート外周面の少なくとも1箇所に「粗面化領域」を形成されてなる。ここでいう「粗面化領域」とは、通常の仕上加工面の表面粗さ(Ra:0.8μm程度)に比べて、局所的に粗い表面性状の領域を意味する。この「粗面化領域」は、軽金属合金製シリンダブロックにバルブシートが圧入された際に、軽金属合金製シリンダブロックの表層に噛み込み、シリンダブロックとの接合力(バルブシートの保持力)を高め、抜け出し荷重の増大に寄与し、エンジン稼動中のバルブシートの抜落ちを抑制する作用を有する。
本発明バルブシートでは、「粗面化領域」を、バルブシート外周面の、少なくとも1箇所、好ましくはバルブシートの軸周りに180°間隔で2箇所、さらにバルブシートの保持安定性という観点からは図3(b)に示すように、軸周りに120°間隔で3箇所等、バルブシートの円周方向に等間隔の各位置に形成することが好ましい。
本発明では、「粗面化領域」の形状は、図3(a)に示すように、外周面に対して垂直な方向から観察して、圧入方向に、三角形状を呈する形状とする。しかも、圧入する方向に向く三角形状の頂点を、頂角α:10〜150°の頂点とする。ここでいう頂角αは、頂点を形成するとなり合う二辺のなす角度αをいうものとする。頂点が丸みを有する場合には、となり合う二辺を延長した交点での角度であることはいうまでもない。これにより、圧入時の抵抗が小さくなるうえ、バルブシートの抜け出し荷重が顕著に増加する。圧入する方向に向く三角形状の頂点の頂角αが、10°未満では、噛み込み量が不足し、所望のシリンダブロックとの密着強度を確保できなくなる。また、頂角αが、150°を超えて大きくなると、シリンダブロックのアルミニウム合金の噛み込みが減少し、所望のシリンダブロックとの密着力を確保できなくなり、耐抜落ち性の顕著な向上が望めなくなる。このようなことから、「粗面化領域」の形状を、外周面に対して垂直な方向から観察して、圧入する方向に三角形状とし、かつ圧入する方向に向く、三角形状の頂点の頂角αを10〜150°の範囲に限定した。なお、好ましくは90°以下、より好ましくは90°未満である。
そして、「粗面化領域」は、円周方向に延在する凹部と凸部とが隣接してなる凹凸を円周方向に垂直な方向に複数列有する、凹凸が混合した表面性状の領域とする。本発明ではこのような領域を「凹凸混合部」と称し、外周面に少なくとも1箇所、配置する。このような領域をバルブシート外周面に設けることにより、凹部、凸部をそれぞれ単独で配置した場合より、耐抜落ち性が格段に向上する。
なお、凹凸混合部における凹部および凸部が延在する方向は、円周方向とするが、延在する方向を、円周方向を基準とし、時計回りにまたは反時計回りに円周方向とのなす角度で、0°超90°未満の範囲内の角度を有する方向(斜め方向)としてもよい。このような粗面化領域としても、上記したと同様な効果が期待できる。
このような粗面化領域としての「凹凸混合部」の一例を図4および図5に示す。
上記した「凹凸混合部」では、外周面を基準として、山高さで3〜80μmの凸部と谷深さで3〜100μmの凹部からなる凹凸とすることが好ましい。凸部の山高さが3μm未満では、山高さが低すぎて、バルブシートの抜落ちを防止できない。一方、山高さが80μmを超えて大きくなると、シリンダブロックのアルミニウム合金を削り取り、削り取られたアルミニウム合金に起因してシリンダブロックとの密着力が低下する。このため、「凹凸混合部」における凸部の山高さを3〜80μmの範囲に限定した。なお、山高さは、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは20〜40μmである。また、凹部の谷深さが、3μm未満では、谷深さが浅すぎて、シリンダブロックのアルミニウム合金を噛みこむ量が不足し、バルブシートの抜落ちを防止できない。一方、谷深さが100μmを超えて大きくなると、シリンダブロックのアルミニウム合金を削り取り、それに起因してシリンダブロックとの密着力が低下する。このため、「凹凸混合部」における凹部の谷深さを3〜100μmの範囲に限定することが好ましい。なお、谷深さは、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは15〜45μmである。
また、上記した粗面化領域としての「凹凸混合部」では、凹部および凸部が延在する方向に垂直な断面で、隣接する2つの凸部の間隔であるピッチ(以下、山ピッチともいう)で、1〜600μmである凹凸とすることが好ましい。凸部の山ピッチが、1μm未満では、ピッチが狭すぎて、シリンダブロックのアルミニウム合金を十分に噛み込むことができず、所望のシリンダブロックとの密着力を確保できなくなる。一方、山ピッチが600μmを超えて大きくなると、ピッチが広すぎて、シリンダブロックのアルミニウム合金を十分に噛み込むことができず、所望のシリンダブロックとの密着力を確保できなくなる。
なお、「粗面化領域」としての「凹凸混合部」では、凸部は、図4(a)に示すように外周面を基準として一定の山高さを有する凸部としても、あるいは図4(b)に示すように圧入方向に沿って山高さが、連続的に増加する凸部としてもよい。また、圧入方向に沿って山高さが段階的に増加する凸部としてもよい。なお、図5は、凹凸混合部の凹部、凸部の延在する方向を円周方向から傾けた斜め方向とした例である。
本発明では、「粗面化領域」として、上記した表面性状の「凹凸混合部」を、外周面の少なくとも1箇所で、外周面全域に対する面積率で合計0.3%以上を形成することで、十分に所望の保持力を維持できる。このため、「凸凹混合部」からなる「粗面化領域」は合計で、外周面全域に対する面積率で0.3%以上とする。なお、好ましくは0.5%以上である。一方、粗面化領域が、合計で面積率で50%を超えると、圧入したバルブシートの保持力が著しく低下する。このため、好ましくは、外周面全域に対する面積率で合計、0.5%以上50%以下である。
上記した表面性状の「粗面化領域」は、本発明ではレーザ光照射処理により形成することが、製造性、形状の安定性、製造コスト等の観点から好ましい。
本発明では、レーザ光の照射は、予め設定したバルブシート外周面の所定の位置で、予め設定された形状、大きさで、上記した所望の表面性状を有する「粗面化領域」となるように、照射パターン、照射時間、を選択して行うこととする。とくに、上記した所望の表面性状を有する「粗面化領域」とするためには、レーザ光の照射時間、出力、周波数等を適正に調整することが好ましい。
仕上加工されたバルブシート外周面に、レーザ光を照射すると、表面が溶融し、溶融した溶湯が排出されることにより凹部を、一方、排出された溶湯が凝固してその周りに凸部を、それぞれ形成する。そのため、レーザ光の照射時間、出力、周波数等を調整することにより、上記した所望の表面性状を有する「粗面化領域」を容易に形成できる。なお、「粗面化領域」は、レーザ光照射処理に代えて、塑性加工処理によっても形成できる。
なお、粗面化領域は、バルブシートの外周面上で、かつ高さ方向で、バルブ当接面に近接した位置に配設されてなることが好ましい。このような位置に配設すると、シリンダヘッドとの密着性が向上する。
本発明バルブシートは、上記した粗面化領域を有するバルブシートであればよく、その素材を限定する必要はない。溶製材、焼結体など、常用のバルブシート向け素材がいずれも適用できる。なかでも、鉄基焼結合金製とすることが、加工性、製造性に優れ、バルブシートとして具備すべき特性の調整等が容易であるという観点から好ましい。
本発明バルブシート用素材として好適な、鉄基焼結合金としては、質量%で、C:0.4〜1.5%を含み、あるいはさらに、Ni、Co、Cr、Mo、V、W、Si、S、Mn、Bのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で40%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる基地部組成を有することが好ましい。そして、鉄基合金製焼結体には、上記した基地組成の基地相中に、MnS、CaF2、BN等の固体潤滑剤粒子、ビッカース硬さHVで500〜1200HV0.1の硬さを有するMo−Si−Fe系金属間化合物粒子、Mo−Si−Ni系金属間化合物粒子、Co基金属間化合物粒子等の硬質粒子を分散させることが好ましい。なお、被削性改善を目的とした粒子を分散させてもよいことはいうまでもない。
次に、本発明バルブシート用素材として好適な、鉄基合金焼結体の製造方法について簡単に説明する。
原料とする鉄系粉末に、上記した焼結体の組成となるように、黒鉛粉末と、潤滑剤粉末と、あるいはさらに合金用粉末と、あるいはさらに固体潤滑剤粉末および/または硬質粒子粉末と、を配合し、混合機等で混合、混錬し、混合粉とする。ついで、得られた混合粉を、所定形状の金型に装入し、加圧成形して所定形状の圧粉体とする。ついでこれら圧粉体に焼結処理を施し、焼結体とする。焼結処理は、常用の焼結方法である、還元雰囲気、もしくは非酸化性雰囲気中で1100〜1200℃で行うことが好ましい。このようにして得られた焼結体を、切削、研削等の加工により所定寸法形状の内燃機関用バルブシートとする。
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
鉄基粉末(純鉄粉)に、黒鉛粉末と、硬質粒子粉末と、固体潤滑剤粉末と、を配合し、混合、混練し、混合粉とした。なお、鉄基粉末と黒鉛粉末と硬質粒子粉末と固体潤滑剤粉末との合計量に対する質量%で、黒鉛粉末を1.0%、硬質粒子粉末を10.0%、固体潤滑剤粉末を0.5%、それぞれ配合した。硬質粒子は、ビッカース硬さHVで800〜1200HVのNi−Mo−Cr−Co系硬質粒子とした。固体潤滑剤粒子は、MnSとした。
ついで、得られた混合粉を、金型に充填し、成形プレスで加圧成形して、バルブシート(寸法:φ34mm×φ25mm×8mm)形状の圧粉体とした。得られた圧粉体の密度は6.5〜7.1g/cmであった。ついで、圧粉体に、還元性雰囲気中で1100〜1200℃×60minの焼結処理を施し、焼結体aとした。得られた焼結体aの密度は6.2〜7.2g/cmであった。なお、密度はアルキメデス法で測定した。
これら焼結体aに、切削・研削加工(仕上加工)を施し、所定寸法(寸法:φ32mm×φ25mm×6.0mm)のバルブシートとした。なお、バルブシート外周面の仕上加工面の表面粗さは、JIS Z 0601(2001)の規定に準拠したRaで、0.09〜0.15μmであった。
ついで、仕上加工されたバルブシートの外周面上で、バルブシートの高さ方向で中央位置に、表1に示す性状の粗面化領域を形成した。粗面化領域は、圧入する方向に三角形状を呈するように形成し、本発明例は、圧入する方向に向く頂点の頂角αを、19°、37°、53°、90°、127°とした。また、粗面化領域の個数、大きさも変化した。
なお、粗面化領域の形成は、レーザ光照射処理によった。レーザ光照射処理では、上記した所望の表面性状を有する「粗面化領域」となるように、レーザ光の照射パターン、照射時間、出力、周波数等を調整して行った。山高さ、谷深さは、非接触形状系(ワンショット3D測定マクロスコープ)(商品名)((株)キーエンス製)を用いて測定した。レーザ光照射処理を行わず、仕上加工ままの状態を保持するバルブシートを従来例(バルブシートNo.1)とした。
形成した粗面化領域を、模式的に図4(a)、(b)および図5に示す。
図4、図5は、外周面に対し垂直方向から観察した状態で、粗面化領域が圧入する方向で三角形状を呈し、その表面性状が凸凹混合部を呈する場合である。図4(a)はその凸部が、外周面を基準として一定の山高さを有し、しかもその凹部がいずれも外周面を基準として一定の谷深さを有する場合である。図4(b)は、その凸部、凹部が、外周面を基準として連続して増加する山高さ、谷深さを有する場合である。なお、図4は、いずれも円周方向に沿って延在する凸部と凹部を延在する方向に垂直な方向に隣接してなる凹凸を、圧入方向に複数列有する領域とする場合である。また、図5は、延在する凸部と凹部を延在する方向に垂直な方向に隣接してなる凹凸を、延在する方向に垂直な方向に複数列有し、かつ延在する方向を、円周方向に対し45°傾けた領域を有する場合である。なお、列の数(複数列)は、粗面化領域の大きさ、山ピッチに応じて、変化させた。
得られたバルブシートについて、図2に示す高温保持力測定装置を用いて、所定温度(200℃)における抜け出し荷重(高温抜け荷重)を測定し、バルブシートの高温保持力を評価した。
評価対象のバルブシート1を、高温保持力測定装置のアルミニウム合金製シリンダヘッド相当材2に圧入した。そして、シリンダヘッド相当材2の下部に配設された加熱手段4でバルブシートが所定温度(200℃)となるまで加熱した。
ついで、所定の温度に加熱されたバルブシート1を、押し冶具3を用いて押圧し、シリンダヘッド相当材2から離脱させた。そのときの抜け出し荷重Lを、荷重計(図示せず)により測定した。得られた抜け出し荷重について、従来例を基準(1.00)として、各バルブシートの抜け出し荷重比を算出し、耐抜落ち性を評価した。得られた結果を表1に示す。
Figure 2019132139
本発明例は、いずれも、粗面化領域なしの従来例に比べて、抜け出し荷重が顕著に増大し、耐抜落ち性が向上している。なお、本発明の範囲を外れる比較例では、粗面化領域なしの従来例に比べて抜け出し荷重の増加は得られるものの、本発明例に比べて抜け出し荷重は低く、顕著な抜け出し荷重の増大は得られない。また、本発明の範囲内でも、三角形の頂角αが90°以下、とくに90°未満の鋭角である粗面化領域の場合に、同じ面積率の他の粗面化領域と比較して、抜け出し荷重の増加が著しい。
1 バルブシート
2 シリンダヘッド相当材
3 押し冶具
4 加熱手段
10 高温保持力測定装置

Claims (7)

  1. 内燃機関の軽金属合金製シリンダヘッドに圧入されるバルブシートであって、
    前記バルブシートの外周面の少なくとも1箇所に粗面化領域として、円周方向に延在する凹部と凸部とを隣接してなる凹凸を前記円周方向に垂直な方向に複数列有する凹凸混合部、を有してなり、かつ
    前記凹凸混合部が、前記外周面に対し垂直方向から観察して、圧入する方向に三角形状を呈し、かつ圧入する方向に向く該三角形状の頂点が、頂角α:10〜150°であり、
    前記粗面化領域を、前記外周面の全域に対する面積率で、合計で0.3%以上有することを特徴とする耐抜落ち性に優れたバルブシート。
  2. 前記凹凸混合部における前記凹部と前記凸部の延在する方向が、前記円周方向とのなす角で、0°超90°未満であることを特徴とする請求項1に記載のバルブシート。
  3. 前記凸部が、前記外周面を基準として、山高さで3〜80μmとなる凸部であり、前記凹部が、前記外周面を基準として、谷深さで3〜100μmとなる凹部であることを特徴とする請求項1または2に記載のバルブシート。
  4. 前記凹凸混合部が、前記延在する方向に垂直な断面で、隣接する2つの前記凸部の間隔であるピッチで、1〜600μmである凹凸を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のバルブシート。
  5. 前記凹凸混合部の複数列の凸部の山高さが、前記外周面を基準として一定の高さであるか、あるいは該基準から、圧入方向に沿って増加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のバルブシート。
  6. 前記粗面化領域を、前記外周面上で、前記円周方向に等間隔の各位置に形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のバルブシート。
  7. 前記バルブシートが鉄基焼結合金製であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のバルブシート。
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