JP2019131471A - 抗TGF−beta3抗体およびその使用 - Google Patents

抗TGF−beta3抗体およびその使用 Download PDF

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Keishi Fujio
圭志 藤尾
僚久 岡村
Tomohisa Okamura
僚久 岡村
一彦 山本
Kazuhiko Yamamoto
一彦 山本
眞璃子 井上
Mariko Inoue
眞璃子 井上
俊彦 駒井
Toshihiko Komai
俊彦 駒井
信広 坂
Nobuhiro Saka
信広 坂
達也 野中
Tatsuya Nonaka
達也 野中
慎也 石井
Shinya Ishii
慎也 石井
博子 村田
Hiroko Murata
博子 村田
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Abstract

【課題】本発明は、抗TGF-beta3抗体および同抗体を使用する方法を提供する。【解決手段】本発明の抗TGF-beta3抗体は、TGF-beta3に対する結合活性は有するがTGF-beta3に対する中和活性は有さず、B細胞活性化の抑制剤および自己免疫疾患の治療剤として有用である。【選択図】なし

Description

本発明は、抗TGF-beta3抗体およびその使用、より詳細には抗TGF-beta3抗体を用いたB細胞活性化の抑制剤および自己免疫疾患の治療剤に関する。
自己抗体は、複数の臓器系での重篤な炎症によって特徴付けられる全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)などの様々な自己免疫疾患を誘導する事が知られている(非特許文献1)。高親和性の自己抗体の主な起源は、胚中心(germinal center : GC)で体細胞超変異を受けた自己反応性B細胞である(非特許文献2)。最近になって、CD4陽性CD25陰性LAG3陽性で規定されるレギュラトリーT細胞(LAG3+ Treg)により産生されたTGF-beta3によりB細胞活性化が抑制されることが明らかとなった(非特許文献3)。
WO 2005097832
Tsokos, G.C. Systemic lupus erythematosus. N. Engl. J. Med. 365, 2110-2121 (2011). Linterman, M.A., et al. Foxp3+ follicular regulatory T cells control the germinal center response. Nat. Med. 17, 975-982 (2011). Nature Communications 6 : 6329 doi: 10.1038/ncomms7329 (2015)
本発明は、抗TGF-beta3抗体およびその使用方法を提供する。
具体的には、本発明は以下のものを提供する。
〔1〕TGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体。
〔2〕〔1〕の抗体であって、以下(1)から(29)のいずれかに記載の抗体:
(1)配列番号:101に記載のCDR1、配列番号:102に記載のCDR2、配列番号:103に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:105に記載のCDR1、配列番号:106に記載のCDR2、配列番号:107に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(2)配列番号:141に記載のCDR1、配列番号:142に記載のCDR2、配列番号:143に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:145に記載のCDR1、配列番号:146に記載のCDR2、配列番号:147に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(3)配列番号:161に記載のCDR1、配列番号:162に記載のCDR2、配列番号:163に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:165に記載のCDR1、配列番号:166に記載のCDR2、配列番号:167に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(4)配列番号:171に記載のCDR1、配列番号:172に記載のCDR2、配列番号:173に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:175に記載のCDR1、配列番号:176に記載のCDR2、配列番号:177に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(5)配列番号:181に記載のCDR1、配列番号:182に記載のCDR2、配列番号:183に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:185に記載のCDR1、配列番号:186に記載のCDR2、配列番号:187に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(6)配列番号:191に記載のCDR1、配列番号:192に記載のCDR2、配列番号:193に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:195に記載のCDR1、配列番号:196に記載のCDR2、配列番号:197に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(7)配列番号:201に記載のCDR1、配列番号:202に記載のCDR2、配列番号:203に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:205に記載のCDR1、配列番号:206に記載のCDR2、配列番号:207に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(8)配列番号:211に記載のCDR1、配列番号:212に記載のCDR2、配列番号:213に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:215に記載のCDR1、配列番号:216に記載のCDR2、配列番号:217に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(9)配列番号:241に記載のCDR1、配列番号:242に記載のCDR2、配列番号:243に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:245に記載のCDR1、配列番号:246に記載のCDR2、配列番号:247に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(10)配列番号:261に記載のCDR1、配列番号:262に記載のCDR2、配列番号:263に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:265に記載のCDR1、配列番号:266に記載のCDR2、配列番号:267に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(11)配列番号:291に記載のCDR1、配列番号:292に記載のCDR2、配列番号:293に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:295に記載のCDR1、配列番号:296に記載のCDR2、配列番号:297に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(12)配列番号:301に記載のCDR1、配列番号:302に記載のCDR2、配列番号:303に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:305に記載のCDR1、配列番号:306に記載のCDR2、配列番号:307に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(13)配列番号:361に記載のCDR1、配列番号:362に記載のCDR2、配列番号:363に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:365に記載のCDR1、配列番号:366に記載のCDR2、配列番号:367に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(14)配列番号:371に記載のCDR1、配列番号:372に記載のCDR2、配列番号:373に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:375に記載のCDR1、配列番号:376に記載のCDR2、配列番号:377に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(15)配列番号:391に記載のCDR1、配列番号:392に記載のCDR2、配列番号:393に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:395に記載のCDR1、配列番号:396に記載のCDR2、配列番号:397に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(16)配列番号:401に記載のCDR1、配列番号:402に記載のCDR2、配列番号:403に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:405に記載のCDR1、配列番号:406に記載のCDR2、配列番号:407に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(17)配列番号:481に記載のCDR1、配列番号:482に記載のCDR2、配列番号:483に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:485に記載のCDR1、配列番号:486に記載のCDR2、配列番号:487に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(18)配列番号:491に記載のCDR1、配列番号:492に記載のCDR2、配列番号:493に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:495に記載のCDR1、配列番号:496に記載のCDR2、配列番号:497に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(19)配列番号:511に記載のCDR1、配列番号:512に記載のCDR2、配列番号:513に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:515に記載のCDR1、配列番号:516に記載のCDR2、配列番号:517に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(20)配列番号:521に記載のCDR1、配列番号:522に記載のCDR2、配列番号:523に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:525に記載のCDR1、配列番号:526に記載のCDR2、配列番号:527に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(21)配列番号:531に記載のCDR1、配列番号:532に記載のCDR2、配列番号:533に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:535に記載のCDR1、配列番号:536に記載のCDR2、配列番号:537に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(22)配列番号:561に記載のCDR1、配列番号:562に記載のCDR2、配列番号:563に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:565に記載のCDR1、配列番号:566に記載のCDR2、配列番号:567に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(23)配列番号:571に記載のCDR1、配列番号:572に記載のCDR2、配列番号:573に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:575に記載のCDR1、配列番号:576に記載のCDR2、配列番号:577に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(24)配列番号:681に記載のCDR1、配列番号:682に記載のCDR2、配列番号:683に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:685に記載のCDR1、配列番号:686に記載のCDR2、配列番号:687に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(25)配列番号:721に記載のCDR1、配列番号:722に記載のCDR2、配列番号:723に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:725に記載のCDR1、配列番号:726に記載のCDR2、配列番号:727に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(26)配列番号:741に記載のCDR1、配列番号:742に記載のCDR2、配列番号:743に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:745に記載のCDR1、配列番号:746に記載のCDR2、配列番号:747に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(27)配列番号:791に記載のCDR1、配列番号:792に記載のCDR2、配列番号:793に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:795に記載のCDR1、配列番号:796に記載のCDR2、配列番号:797に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(28)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体とTGF-beta3への結合において競合する抗体
(29)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体が結合するTGF-beta3のエピトープと同じエピトープに結合する抗体
〔3〕TGF-beta3のLatent体および/またはMature体に結合する〔1〕または〔2〕の抗体。
〔4〕TGF-beta3の生理活性の抑制が20%以下である〔1〕−〔3〕のいずれかの抗体。
〔5〕TGF-beta3への結合値に対するTGF-beta1およびTGF-beta2への結合値が10%未満である〔1〕−〔4〕のいずれかの抗体。
〔6〕モノクローナル抗体である、〔1〕−〔5〕のいずれかの抗体。
〔7〕ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、〔1〕−〔6〕のいずれかの抗体。
〔8〕B細胞を認識する可変領域を更に含む二重特異性抗体である〔1〕−〔7〕のいずれかの抗体。
〔9〕前記可変領域はCD19、CD20、CD40、CD22、IL21R、BAFF-R、BCMA、TACI、CD27、又はCD138に含まれるいずれか1つを認識する〔8〕の抗体。
〔10〕〔1〕−〔9〕のいずれかの抗体を含むB細胞活性化の抑制剤。
〔11〕〔1〕−〔9〕のいずれかの抗体を含む自己免疫疾患の治療剤。
〔12〕前記自己免疫疾患は全身性エリテマトーデス、天疱瘡、多発性硬化症、視神経脊髄炎、ANCA関連血管炎、関節リウマチ、移植臓器拒絶、シェーグレン症候群、若年性皮膚筋炎、重症筋無力症、又はバセドウ病、橋本病等の自己免疫性甲状腺疾患のいずれかである〔11〕の治療剤。
〔13〕〔1〕−〔9〕のいずれかの抗体を投与する工程を含む、B細胞活性化を抑制する方法または自己免疫疾患を治療する方法。
〔14〕B細胞活性化の抑制または自己免疫疾患の治療において用いるための、〔1〕−〔9〕のいずれかの抗体。
〔15〕B細胞活性化の抑制剤または自己免疫疾患の治療剤の製造のための、〔1〕−〔9〕のいずれかの抗体の使用。
TGF-beta3のエピトープ・ビニングの実験デザインを示す図である。 抗原には結合しないコントロール抗体を第一抗体として用いた場合の、「in-tandem法」に依るエピトープ・ビニングの典型的なセンサーグラムを示す図である。 各抗TGFb3抗体を第一抗体として用いた場合の、「in-tandem法」に依るエピトープ・ビニングの典型的なセンサーグラムを示す図である。 取得された抗TGF-beta3抗体の競合を示す図である。 Mature h(m)TGF-beta3と抗TGF-beta3特異的非中和抗体のimmuno-complex (IC)によるヒトB細胞増殖抑制効果を示す図である。 BALB/c nu/nuマウスへのCD4+CD25-T細胞移入モデルにおける抗dsDNA抗体および抗Smith抗体産生抑制効果を示す図である。(A) Day12, 20, 28における血漿中の抗dsDNA抗体価の推移を示す。(B) Day28における血漿中の抗Smith抗体価を示す。エラーバーは標準誤差を示す。IC17-hIgGに対する有意差検定はStudent-t testを用いた。(N=3〜5, *; p < 0.05, **; p < 0.01)
I.定義
本明細書の趣旨での「アクセプターヒトフレームワーク」は、下で定義するヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する、軽鎖可変ドメイン (VL) フレームワークまたは重鎖可変ドメイン (VH) フレームワークのアミノ酸配列を含む、フレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来するアクセプターヒトフレームワークは、それらの同じアミノ酸配列を含んでもよいし、またはアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様において、アミノ酸の変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と、配列が同一である。
「アフィニティ」は、分子(例えば、抗体)の結合部位1個と、分子の結合パートナー(例えば、抗原)との間の、非共有結合的な相互作用の合計の強度のことをいう。別段示さない限り、本明細書で用いられる「結合アフィニティ」は、ある結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1相互作用を反映する、固有の結合アフィニティのことをいう。分子XのそのパートナーYに対するアフィニティは、一般的に、解離定数 (Kd) により表すことができる。アフィニティは、本明細書に記載のものを含む、当該技術分野において知られた通常の方法によって測定され得る。結合アフィニティを測定するための具体的な実例となるおよび例示的な態様については、下で述べる。
「アフィニティ成熟」抗体は、改変を備えていない親抗体と比較して、1つまたは複数の超可変領域 (hypervariable region: HVR) 中に抗体の抗原に対するアフィニティの改善をもたらす1つまたは複数の改変を伴う抗体のことをいう。
用語「抗TGF-beta3抗体」または「TGF-beta3に結合する抗体」は、充分なアフィニティでTGF-beta3と結合することのできる抗体であって、その結果その抗体がTGF-beta3を標的化したときにB細胞活性化抑制剤および/または自己免疫疾患の治療剤として有用であるような抗体のことをいう。一態様において、無関係な非TGF-beta3タンパク質への抗TGF-beta3抗体の結合の程度は、(例えば、放射免疫測定法 (radioimmunoassay: RIA) により)測定したとき、抗体のTGF-beta3への結合の約10%未満である。特定の態様において、TGF-beta3に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M〜10-13M、例えば、10-9M〜10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。特定の態様において、抗TGF-beta3抗体は、異なる種からのTGF-beta3間で保存されているTGF-beta3のエピトープに結合する。
本明細書で用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限りは、これらに限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む、種々の抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、完全抗体が結合する抗原に結合する当該完全抗体の一部分を含む、当該完全抗体以外の分子のことをいう。抗体断片の例は、これらに限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および、抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
本発明に記載する「競合する抗体」あるいは「同じエピトープに結合する抗体」とは、実施例6(OctetHTXシステムを用いたin-tandem法に依るエピトープ競合アッセイ)の評価手法により第一抗体と第二抗体との結合レスポンスを測定した場合に、第二抗体の結合レスポンス値が60%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは20%以下となものを指す。
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖および/または軽鎖の残りの部分が異なった供給源または種に由来する抗体のことをいう。
抗体の「クラス」は、抗体の重鎖に備わる定常ドメインまたは定常領域のタイプのことをいう。抗体には5つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMである。そして、このうちいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられてもよい。例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2である。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域に起因する、抗体のアイソタイプによって異なる生物学的活性のことをいう。抗体のエフェクター機能の例には次のものが含まれる:C1q結合および補体依存性細胞傷害(complement dependent cytotoxicity:CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity: ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;および、B細胞活性化。
ある剤(例えば、薬学的製剤)の「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効である、必要な用量におけるおよび必要な期間にわたっての、量のことをいう。
本明細書で用語「Fc領域」は、少なくとも定常領域の一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然型配列のFc領域および変異体Fc領域を含む。一態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延びる。ただし、Fc領域のC末端のリジン (Lys447) またはグリシン‐リジン(Gly446-Lys447)は、存在していてもしていなくてもよい。本明細書では別段特定しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD 1991 に記載の、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)にしたがう。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域 (HVR) 残基以外の、可変ドメイン残基のことをいう。可変ドメインのFRは、通常4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。それに応じて、HVRおよびFRの配列は、通常次の順序でVH(またはVL)に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
用語「全長抗体」、「完全抗体」、および「全部抗体」は、本明細書では相互に交換可能に用いられ、天然型抗体構造に実質的に類似した構造を有する、または本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体のことをいう。
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」は、相互に交換可能に用いられ、外来核酸を導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)のことをいう。宿主細胞は「形質転換体」および「形質転換細胞」を含み、これには初代の形質転換細胞および継代数によらずその細胞に由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸の内容において完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。オリジナルの形質転換細胞がスクリーニングされたまたは選択された際に用いられたものと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫も、本明細書では含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生された抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を用いる非ヒト供給源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を備える抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒトの抗原結合残基を含むヒト化抗体を、明確に除外するものである。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択群において最も共通して生じるアミノ酸残基を示すフレームワークである。通常、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。通常、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3におけるサブグループである。一態様において、VLについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループκIである。一態様において、VHについて、サブグループは上記のKabatらによるサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含む、キメラ抗体のことをいう。ある態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、当該可変領域においては、すべてのもしくは実質的にすべてのHVR(例えばCDR)は非ヒト抗体のものに対応し、かつ、すべてのもしくは実質的にすべてのFRはヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。抗体(例えば、非ヒト抗体)の「ヒト化された形態」は、ヒト化を経た抗体のことをいう。
本明細書で用いられる用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変であり(「相補性決定領域」または「CDR」(complementarity determining region))、および/または構造的に定まったループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原接触残基(「抗原接触」)を含む、抗体の可変ドメインの各領域のことをいう。通常、抗体は6つのHVRを含む:VHに3つ(H1、H2、H3)、およびVLに3つ(L1、L2、L3)である。本明細書での例示的なHVRは、以下のものを含む:
(a) アミノ酸残基26-32 (L1)、50-52 (L2)、91-96 (L3)、26-32 (H1)、53-55 (H2)、および96-101 (H3)のところで生じる超可変ループ (Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b) アミノ酸残基24-34 (L1)、50-56 (L2)、89-97 (L3)、31-35b (H1)、50-65 (H2)、 および95-102 (H3)のところで生じるCDR (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c) アミノ酸残基27c-36 (L1)、46-55 (L2)、89-96 (L3)、30-35b (H1)、47-58 (H2)、および93-101 (H3) のところで生じる抗原接触 (MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));ならびに、
(d) HVRアミノ酸残基46-56 (L2)、47-56 (L2)、48-56 (L2)、49-56 (L2)、26-35 (H1)、26-35b (H1)、49-65 (H2)、93-102 (H3)、および94-102 (H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組合せ。
別段示さない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上記のKabatらにしたがって番号付けされる。
「個体」または「被験体」は哺乳動物である。哺乳動物は、これらに限定されるものではないが、飼育動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、ならびに、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む。特定の態様では、個体または被験体は、ヒトである。
「単離された」抗体は、そのもともとの環境の成分から分離されたものである。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点分離法 (isoelectric focusing: IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)で測定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の総説として、例えば、Flatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007) を参照のこと。
「単離された」核酸は、そのもともとの環境の成分から分離された核酸分子のことをいう。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞の中に含まれた核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外に存在しているかまたは本来の染色体上の位置とは異なる染色体上の位置に存在している。
「抗TGF-beta3抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖および軽鎖(またはその断片)をコードする1つまたは複数の核酸分子のことをいい、1つのベクターまたは別々のベクターに乗っている核酸分子、および、宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在している核酸分子を含む。
本明細書でいう用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体のことをいう。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、生じ得る変異抗体(例えば、自然に生じる変異を含む変異抗体、またはモノクローナル抗体調製物の製造中に発生する変異抗体。そのような変異体は通常若干量存在している。)を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるものである、という抗体の特徴を示し、何らかの特定の方法による抗体の製造を求めるものと解釈されるべきではない。例えば、本発明にしたがって用いられるモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含んだトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な手法によって作成されてよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法および他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
「天然型抗体」は、天然に生じる様々な構造を伴う免疫グロブリン分子のことをいう。例えば、天然型IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VH) を有し、それに3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)が続く。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域 (VL) を有し、それに定常軽鎖 (CL) ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに帰属させられてよい。
用語「添付文書」は、治療用品の商用パッケージに通常含まれ、そのような治療用品の使用に関する、適応症、用法、用量、投与方法、併用療法、禁忌、および/または警告についての情報を含む使用説明書のことをいうために用いられる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント (%) アミノ酸配列同一性」は、最大のパーセント配列同一性を得るように配列を整列させてかつ必要ならギャップを導入した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとしたときの、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の、百分率比として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決める目的のアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign (DNASTAR) ソフトウェア、またはGENETYX(登録商標)(株式会社ゼネティックス)などの、公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用することにより達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントをとるための適切なパラメーターを決定することができる。
ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、ジェネンテック社の著作であり、そのソースコードは米国著作権庁 (U.S. Copyright Office, Wasington D.C., 20559) に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、ジェネンテック社 (Genentech, Inc., South San Francisco, California) から公に入手可能であるし、ソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、Digital UNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされる。すべての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、またはそれとの、またはそれに対する、ある%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列A、ということもできる)は、次のように計算される:分率X/Yの100倍。ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、当該プログラムのAおよびBのアラインメントにおいて同一である一致としてスコアされたアミノ酸残基の数であり、YはB中のアミノ酸残基の全数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBへの%アミノ酸配列同一性は、BのAへの%アミノ酸配列同一性と等しくないことが、理解されるであろう。別段特に明示しない限り、本明細書で用いられるすべての%アミノ酸配列同一性値は、直前の段落で述べたとおりALIGN-2コンピュータプログラムを用いて得られるものである。
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれた有効成分の生物学的活性が効果を発揮し得るような形態にある調製物であって、かつ製剤が投与される被験体に許容できない程度に毒性のある追加の要素を含んでいない調製物のことをいう。
「薬学的に許容される担体」は、被験体に対して無毒な、薬学的製剤中の有効成分以外の成分のことをいう。薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または保存剤を含む。
本明細書でいう用語「TGF-beta」は、別段示さない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意の天然型TGF-betaのことをいう。この用語は、「全長」のプロセシングを受けていないTGF-betaも、細胞中でのプロセシングの結果生じるいかなる形態のTGF-betaも包含する。この用語はまた、自然に生じるTGF-betaの変異体、例えば、スプライス変異体や対立遺伝子変異体も包含する。
本明細書で用いられる「治療」(および、その文法上の派生語、例えば「治療する」、「治療すること」など)は、治療される個体の自然経過を改変することを企図した臨床的介入を意味し、予防のためにも、臨床的病態の経過の間にも実施され得る。治療の望ましい効果は、これらに限定されるものではないが、疾患の発生または再発の防止、症状の軽減、疾患による任意の直接的または間接的な病理的影響の減弱、転移の防止、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和、および寛解または改善された予後を含む。いくつかの態様において、本発明の抗体は、疾患の発症を遅らせる、または疾患の進行を遅くするために用いられる。
自己免疫疾患
「自己免疫疾患」は、その個体自身の組織から生じかつその個体自身の組織に対して向けられる非悪性疾患または障害のことをいう。本明細書で、自己免疫疾患は、悪性またはがん性の疾患または状態を明確に除外するものであり、特にB細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病 (acute lymphoblastic leukemia: ALL)、慢性リンパ球性白血病 (chronic lymphocytic leukemia: CLL)、ヘアリー細胞白血病、および慢性骨髄芽球性白血病を除外する。自己免疫疾患または障害の例は、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:乾癬および皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患などの炎症性反応;全身性強皮症および硬化症;炎症性腸疾患に関連する反応(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎);呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群;adult respiratory distress syndrome: ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;例えば湿疹および喘息ならびにT細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う他の状態などのアレルギー性状態;アテローム硬化;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス (SLE) (ループス腎炎、皮膚ループスを含むがこれらに限定されない);糖尿病(例えば、I型糖尿病またはインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;橋本甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;ならびに典型的に結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症、および血管炎において見られるサイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫反応;悪性貧血(アジソン病);白血球の漏出を伴う疾患;中枢神経系 (central nervous system: CNS) 炎症性障害;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症またはクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない);重症筋無力症;抗原‐抗体複合体介在性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;バセドウ病;ランバート‐イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター病;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性ニューロパシー;免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura: ITP)または自己免疫性血小板減少症。
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体を抗原へと結合させることに関与する、抗体の重鎖または軽鎖のドメインのことをいう。天然型抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、通常、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域 (FR) および3つの超可変領域 (HVR) を含む、類似の構造を有する。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007) 参照。)1つのVHまたはVLドメインで、抗原結合特異性を与えるに充分であろう。さらに、ある特定の抗原に結合する抗体は、当該抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使ってそれぞれVLまたはVHドメインの相補的ライブラリをスクリーニングして、単離されてもよい。例えばPortolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991) 参照。
本明細書で用いられる用語「ベクター」は、それが連結されたもう1つの核酸を増やすことができる、核酸分子のことをいう。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、および、それが導入された宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。あるベクターは、自身が動作的に連結された核酸の、発現をもたらすことができる。そのようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」とも称される。
II.抗TGF-beta3抗体およびその使用
本発明者らは、TGF-beta3によるB細胞活性化の抑制の作用に着目し、当該作用を活用する自己免疫疾患の治療剤を開発するために鋭意研究を行った。その結果、TGF-beta3を認識する抗体のうち、所定の機能(プロファイル)を有するものが、B細胞活性化を抑制し、ひいては自己免疫疾患の治療剤として有用であることを見出した。
具体的には、本発明の抗TGF-beta3抗体は、以下のプロファイルを有する:
(1)TGF-beta3に対し非中和である;
(2)TGF-beta1, 2, 3の中でTGF-beta3に特異的に結合する;
(3)(任意)Mature体だけでなく、Latent体のTGF-beta3にも結合する。
本明細書において、TGF-beta3に対し「非中和(Non-Neutralizing)」であるとは、実施例4に記載の評価手法により、抗体濃度400ng/mLの条件下でTGF-beta3の生理活性の抑制効率が20%以下であることを指し、より好ましくは抗体濃度2000ng/mLの条件下でTGF-beta3の生理活性の抑制効率25%以下、より好ましくは抗体濃度2000ng/mLの条件下でTGF-beta3の生理活性の抑制効率が20%以下であることを指す。
別の観点から見ると、非中和抗体とは、TGF-beta3のTGF-beta受容体への結合を阻害しないように結合する抗体と定義することもできる。したがって、「TGF-beta3に結合する非中和抗体」は、「TGF-beta3がTGF-beta受容体に結合し得る態様でTGF-beta3に結合する抗体」と表すこともできる。
また別の観点から見ると、非中和抗体は、TGF-beta3のTGF-beta受容体への結合によりTGF-beta受容体を発現する細胞に与える生物学的作用を阻害しないように、TGF-beta3に結合する抗体と定義することもできる。したがって、「TGF-beta3に結合する非中和抗体」は、「TGF-beta3がTGF-beta受容体を発現する細胞を活性化し得る態様でTGF-beta3に結合する抗体」と表すこともできる。
また別の観点から見ると、非中和抗体は、TGF-beta受容体を発現する細胞の活性化によりSmadシグナルが入る生理活性を阻害しないように、TGF-beta3に結合する抗体と定義することもできる。したがって、「TGF-beta3に結合する非中和抗体」は、「TGF-beta3がSmadシグナルを出し得る態様でTGF-beta3に結合する抗体」と表すこともできる。
また別の観点から見ると、非中和抗体は、Smadシグナルが入ることによりB細胞活性化が抑制される作用を阻害しないように、TGF-beta3に結合する抗体と定義することもできる。したがって、「TGF-beta3に結合する非中和抗体」は、「TGF-beta3によりB細胞の活性化を抑制し得る態様でTGF-beta3に結合する抗体」と表すこともできる。
本明細書において、「TGF-beta3に特異的(TGFb3-specific)に結合する」とは、TGF-beta1, 2よりもTGF-beta3への結合活性が強いことを意味し、具体的には、実施例5に記載の評価手法により、TGF-beta3への結合に対するTGF-beta1およびTGF-beta2への結合値が10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満であることを指す。
特定の理論に拘束されるものではないが、本発明の抗TGF-beta3抗体はTGF-beta3への中和活性を有さないため、本発明の抗体がTGF-beta3に結合することによってTGF-beta3の半減期が長くなり、ひいてはTGF-beta3の血中濃度が高められ、結果としてTGF-beta3によるB細胞活性化の抑制効果が増強されることが期待される。
また、本発明の抗TGF-beta3抗体はTGF-beta3に特異的な結合活性を有するため、TGF-beta1, 2にも結合する抗体とは異なり、TGF-beta3へ結合することによる効果が薄れることがなく、TGF-beta1への結合により線維化が起こり肺腺癌を引き起こす等の副作用の恐れがない。
さらに、本発明の抗TGF-beta3抗体は好ましくは、Mature体だけでなくLatent体のTGF-beta3にも結合することができる。TGF-beta3はMature体よりもLatent体の方が血中濃度は高いため、Latent体のTGF-beta3への結合活性を有する本発明の抗体は、より高いB細胞活性化の抑制効果を発揮することができる。
本発明の特定の態様において、本発明の抗体は、一方の可変領域でTGF-beta3に結合し、他方の可変領域でB細胞表面マーカーに結合することができるBispecific抗体(二重特異性抗体)であり、当該二種の抗原に結合することにより、TGF-beta3を効率的に目的とするB細胞へ届けることができる。しかし、Bispecific抗体ではなく、通常抗体であっても、TGF-beta3への中和活性を有さない抗体であれば、結合によりTGF-beta3の半減期が長くなり血中濃度を高めることができるため、B細胞活性化の抑制効果の増強が期待される。したがって、本発明の抗体は前記の所定のプロファイルを満たすものであれば足り、特にBispecific抗体等に限定されない。
本発明は、抗TGF-beta3抗体を含むB細胞活性化の抑制剤を提供する。B細胞は好ましくは自己反応性B細胞であり、B細胞活性化の抑制としては、例えばB細胞による抗体産生の抑制があげられる。また抑制剤は自己免疫疾患の治療剤の用途で用いることができる。
TGF-beta3(TGFβ3/TGFb3)は、配列番号1(latent体)〜2(mature体)にあげるアミノ酸配列を有するものを含み、またこれらアミノ酸配列の一部を改変、修飾し同様のB細胞活性化の抑制作用を有するものを含む。自己免疫疾患としてはSLE、天疱瘡(Pemphigus)、多発性硬化症(Multiple Sclerosis)、視神経脊髄炎(NMO)、ANCA関連血管炎、関節リウマチ、移植臓器拒絶、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、若年性皮膚筋炎(Juvenile dermatomyositis)、重症筋無力症(Myasthenia gravis)、又はバセドウ病、橋本病等の自己免疫性甲状腺疾患(Autoimmune thyroid disease including Graves' disease or Hashimoto's thyroiditis)等が挙げられる。
別の観点においては、本発明は、TGF-beta3に結合する抗体又は抗体断片を含む自己免疫疾患の治療剤を提供する。抗体断片は可変領域又はFc領域等の抗体の構成要素が分離されたものを意味する。
前記抗体又は抗体断片はB細胞を認識する可変領域を含む構成をとることもできる。B細胞を認識は、例えばCD19、CD20、CD40、CD22、IL21R、BAFF-R、BCMA、TACI、CD27、又はCD138に含まれるいずれか1つまたは複数をマーカーとして行うことができる。
別の観点においては、本発明は、TGF-beta3を認識する第一の可変領域と、B細胞を認識する第二の可変領域とを含む多重特異性抗体を含む自己免疫疾患の治療剤を提供する。
別の観点においては、本発明は、前記治療剤を含む医療用キットを提供する。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
A.例示的抗TGF-beta3抗体
一局面において、本発明はTGF-beta3に結合する、単離された抗体を提供する。特定の態様において、抗TGF-beta3抗体は、TGF-beta1, 2, 3の中でTGF-beta3に特異的に結合し、TGF-beta3に対し非中和である抗体である。特定の態様において、抗TGF-beta3抗体は、TGF-beta3のMature体およびLatent体に結合する。
別の局面において、本発明は、以下(1)から(29)のいずれかに記載の、TGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体を提供する:
(1)配列番号:101に記載のCDR1、配列番号:102に記載のCDR2、配列番号:103に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:105に記載のCDR1、配列番号:106に記載のCDR2、配列番号:107に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(2)配列番号:141に記載のCDR1、配列番号:142に記載のCDR2、配列番号:143に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:145に記載のCDR1、配列番号:146に記載のCDR2、配列番号:147に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(3)配列番号:161に記載のCDR1、配列番号:162に記載のCDR2、配列番号:163に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:165に記載のCDR1、配列番号:166に記載のCDR2、配列番号:167に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(4)配列番号:171に記載のCDR1、配列番号:172に記載のCDR2、配列番号:173に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:175に記載のCDR1、配列番号:176に記載のCDR2、配列番号:177に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(5)配列番号:181に記載のCDR1、配列番号:182に記載のCDR2、配列番号:183に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:185に記載のCDR1、配列番号:186に記載のCDR2、配列番号:187に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(6)配列番号:191に記載のCDR1、配列番号:192に記載のCDR2、配列番号:193に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:195に記載のCDR1、配列番号:196に記載のCDR2、配列番号:197に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(7)配列番号:201に記載のCDR1、配列番号:202に記載のCDR2、配列番号:203に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:205に記載のCDR1、配列番号:206に記載のCDR2、配列番号:207に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(8)配列番号:211に記載のCDR1、配列番号:212に記載のCDR2、配列番号:213に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:215に記載のCDR1、配列番号:216に記載のCDR2、配列番号:217に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(9)配列番号:241に記載のCDR1、配列番号:242に記載のCDR2、配列番号:243に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:245に記載のCDR1、配列番号:246に記載のCDR2、配列番号:247に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(10)配列番号:261に記載のCDR1、配列番号:262に記載のCDR2、配列番号:263に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:265に記載のCDR1、配列番号:266に記載のCDR2、配列番号:267に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(11)配列番号:291に記載のCDR1、配列番号:292に記載のCDR2、配列番号:293に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:295に記載のCDR1、配列番号:296に記載のCDR2、配列番号:297に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(12)配列番号:301に記載のCDR1、配列番号:302に記載のCDR2、配列番号:303に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:305に記載のCDR1、配列番号:306に記載のCDR2、配列番号:307に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(13)配列番号:361に記載のCDR1、配列番号:362に記載のCDR2、配列番号:363に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:365に記載のCDR1、配列番号:366に記載のCDR2、配列番号:367に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(14)配列番号:371に記載のCDR1、配列番号:372に記載のCDR2、配列番号:373に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:375に記載のCDR1、配列番号:376に記載のCDR2、配列番号:377に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(15)配列番号:391に記載のCDR1、配列番号:392に記載のCDR2、配列番号:393に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:395に記載のCDR1、配列番号:396に記載のCDR2、配列番号:397に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(16)配列番号:401に記載のCDR1、配列番号:402に記載のCDR2、配列番号:403に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:405に記載のCDR1、配列番号:406に記載のCDR2、配列番号:407に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(17)配列番号:481に記載のCDR1、配列番号:482に記載のCDR2、配列番号:483に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:485に記載のCDR1、配列番号:486に記載のCDR2、配列番号:487に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(18)配列番号:491に記載のCDR1、配列番号:492に記載のCDR2、配列番号:493に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:495に記載のCDR1、配列番号:496に記載のCDR2、配列番号:497に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(19)配列番号:511に記載のCDR1、配列番号:512に記載のCDR2、配列番号:513に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:515に記載のCDR1、配列番号:516に記載のCDR2、配列番号:517に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(20)配列番号:521に記載のCDR1、配列番号:522に記載のCDR2、配列番号:523に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:525に記載のCDR1、配列番号:526に記載のCDR2、配列番号:527に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(21)配列番号:531に記載のCDR1、配列番号:532に記載のCDR2、配列番号:533に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:535に記載のCDR1、配列番号:536に記載のCDR2、配列番号:537に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(22)配列番号:561に記載のCDR1、配列番号:562に記載のCDR2、配列番号:563に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:565に記載のCDR1、配列番号:566に記載のCDR2、配列番号:567に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(23)配列番号:571に記載のCDR1、配列番号:572に記載のCDR2、配列番号:573に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:575に記載のCDR1、配列番号:576に記載のCDR2、配列番号:577に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(24)配列番号:681に記載のCDR1、配列番号:682に記載のCDR2、配列番号:683に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:685に記載のCDR1、配列番号:686に記載のCDR2、配列番号:687に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(25)配列番号:721に記載のCDR1、配列番号:722に記載のCDR2、配列番号:723に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:725に記載のCDR1、配列番号:726に記載のCDR2、配列番号:727に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(26)配列番号:741に記載のCDR1、配列番号:742に記載のCDR2、配列番号:743に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:745に記載のCDR1、配列番号:746に記載のCDR2、配列番号:747に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(27)配列番号:791に記載のCDR1、配列番号:792に記載のCDR2、配列番号:793に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:795に記載のCDR1、配列番号:796に記載のCDR2、配列番号:797に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
(28)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体とTGF-beta3への結合において競合する抗体
(29)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体が結合するTGF-beta3のエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
本発明のさらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗TGF-beta3抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。一態様において、抗TGF-beta3抗体は、例えば、Fv、Fab、Fab'、scFv、ダイアボディ、またはF(ab')2断片などの、抗体断片である。一態様において、抗TGF-beta3抗体はFcRn結合能を有し、例えば、FcRn結合領域を含むFc領域を有する。別の態様において、抗体は全長抗体である。
さらなる局面において、上述の態様の任意のものによる抗TGF-beta3抗体は、単独または組み合わせで、以下の項目1〜7に記載の任意の特徴を取り込んでもよい。
1.抗体のアフィニティ
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nMまたは≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば10-8M〜10-13M、例えば10-9M〜10-13M)の解離定数 (Kd) を有する。
一態様において、Kdは、放射性標識抗原結合測定法 (radiolabeled antigen binding assay: RIA) によって測定される。一態様において、RIAは、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて実施される。例えば、抗原に対するFabの溶液中結合アフィニティは、非標識抗原の漸増量系列の存在下で最小濃度の (125I) 標識抗原によりFabを平衡化させ、次いで結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングされたプレートにより捕捉することによって測定される。(例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999) を参照のこと)。測定条件を構築するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート (Thermo Scientific) を50mM炭酸ナトリウム (pH9.6) 中5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体 (Cappel Labs) で一晩コーティングし、その後に室温(およそ23℃)で2〜5時間、PBS中2% (w/v) ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着プレート (Nunc #269620) において、100 pMまたは26 pMの [125I]-抗原を、(例えば、Presta et al., Cancer Res. 57:4593-4599 (1997) における抗VEGF抗体、Fab-12の評価と同じように)目的のFabの段階希釈物と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、このインキュベーションは、平衡が確実に達成されるよう、より長時間(例えば、約65時間)継続され得る。その後、混合物を、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために捕捉プレートに移す。次いで溶液を除去し、プレートをPBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター (Packard) においてプレートを10分間カウントする。最大結合の20%以下を与える各Fabの濃度を、競合結合アッセイにおいて使用するために選択する。
別の態様によれば、Kdは、BIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000 (BIAcore, Inc., Piscataway, NJ) を用いる測定法が、およそ10反応単位 (response unit: RU) の抗原が固定されたCM5チップを用いて25℃で実施される。一態様において、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ (CM5、BIACORE, Inc.) は、供給元の指示にしたがいN-エチル-N'- (3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミドヒドロクロリド (EDC) およびN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS) を用いて活性化される。抗原は、およそ10反応単位 (RU) のタンパク質の結合を達成するよう、5μl/分の流速で注入される前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8を用いて5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈される。抗原の注入後、未反応基をブロックするために1Mエタノールアミンが注入される。キネティクスの測定のために、25℃、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤含有PBS (PBST) 中のFabの2倍段階希釈物 (0.78nM〜500nM) が注入される。結合速度 (kon) および解離速度 (koff) は、単純な1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、結合および解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数 (Kd) は、koff/kon比として計算される。例えば、Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999) を参照のこと。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによってオン速度が106M-1s-1を超える場合、オン速度は、分光計(例えばストップフロー式分光光度計 (Aviv Instruments) または撹拌キュベットを用いる8000シリーズのSLM-AMINCO(商標)分光光度計 (ThermoSpectronic))において測定される、漸増濃度の抗原の存在下でのPBS、pH7.2中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の25℃での蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、バンドパス16nm)の増加または減少を測定する蛍光消光技術を用いることによって決定され得る。
2.抗体断片
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片は、これらに限定されるものではないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、および scFv断片、ならびに、後述する他の断片を含む。特定の抗体断片についての総説として、Hudson et al. Nat. Med. 9:129-134 (2003) を参照のこと。scFv断片の総説として、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp.269-315 (1994);加えて、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および第5,587,458号を参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含みインビボ (in vivo) における半減期の長くなったFabおよびF(ab')2断片についての論説として、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
ダイアボディは、二価または二重特異的であってよい、抗原結合部位を2つ伴う抗体断片である。例えば、EP404,097号; WO1993/01161; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993) 参照。トリアボディ (triabody) やテトラボディ (tetrabody) も、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003) に記載されている。
シングルドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部分を含む、抗体断片である。特定の態様において、シングルドメイン抗体は、ヒトシングルドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1参照)。
抗体断片は、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、完全抗体のタンパク質分解的消化、組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌 (E. coli) またはファージ)による産生を含む、種々の手法により作ることができる。
3.キメラおよびヒト化抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号;および、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984) に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、親抗体のものからクラスまたはサブクラスが変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片も含む。
特定の態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性およびアフィニティを維持したままでヒトへの免疫原性を減少させるために、ヒト化される。通常、ヒト化抗体は1つまたは複数の可変ドメインを含み、当該可変ドメイン中、HVR(例えばCDR(またはその部分))は非ヒト抗体に由来し、FR(またはその部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体の特異性またはアフィニティを回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)からの対応する残基で置換されている。
ヒト化抗体およびその作製方法は、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)において総説されており、また、例えば、Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); 米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、および第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005)(特異性決定領域 (specificity determining region: SDR) グラフティングを記載);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (リサーフェイシングを記載); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (FRシャッフリングを記載);ならびに、Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) およびKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングのための「ガイドセレクション」アプローチを記載) において、さらに記載されている。
ヒト化に使われ得るヒトフレームワーク領域は、これらに限定されるものではないが:「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993) 参照)を用いて選択されたフレームワーク領域;軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) および Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993) 参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008) 参照);および、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) および Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996) 参照)を含む。
4.ヒト抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野において知られる種々の手法によって製造され得る。ヒト抗体は、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) および Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008) に、概説されている。
ヒト抗体は、抗原チャレンジ(負荷)に応答して完全ヒト抗体またはヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより、調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または、染色体外にもしくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載した米国特許第6,075,181号および第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載した米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許第7,041,870号;ならびに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載した米国特許出願公開第2007/0061900号を、併せて参照のこと。このような動物によって生成された完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づいた方法でも作ることができる。ヒトモノクローナル抗体の製造のための、ヒトミエローマおよびマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は、既に記述されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);およびBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991) 参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体も、Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に述べられている。追加的な方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、および、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載)に記載されたものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) およびVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法を、以下に述べる。
5.ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の1つまたは複数の活性を伴う抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの生成や、所望の結合特性を備える抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングするための、様々な方法が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) において総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);およびLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載されている。
特定のファージディスプレイ法において、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングされ、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) に述べられているようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv (scFv) 断片としてまたはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに、免疫源に対する高アフィニティ抗体を提供する。あるいは、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、免疫化することなしに、広範な非自己および自己抗原への抗体の単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変CDR3領域をコードしかつインビトロ (in vitro) で再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに、米国特許出願公開第2005/0079574号、2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、および第2009/0002360号を含む。
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片と見なす。
6.多重特異性抗体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する、モノクローナル抗体である。特定の態様において、結合特異性の1つは、TGF-beta3に対するものであり、もう1つは他の任意の抗原(例えば、B細胞表面マーカー)へのものである。特定の態様において、二重特異性抗体は、TGF-beta3の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーを発現する細胞にTGF-beta3を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体としてまたは抗体断片として調製され得る。
多重特異性抗体を作製するための手法は、これらに限定されるものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖ペアの組み換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991) 参照)、およびknob-in-hole技術(例えば、米国特許第5,731,168号参照)を含む。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (WO2009/089004A1);2つ以上の抗体または断片を架橋すること(米国特許第4,676,980号およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照);ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992) 参照);「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性抗体断片を作製すること(Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993) 参照);および、単鎖Fv (scFv) 二量体を用いること(Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994) 参照);および、例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991) に記載されるように三重特異性抗体を調製すること、によって作製してもよい。
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を伴う改変抗体も、本明細書では含まれる(例えば、米国特許出願公開第2006/0025576号A1参照)。
本明細書で抗体または断片は、TGF-beta3と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」または「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
7.抗体変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体も、考慮の内である。例えば、抗体の結合アフィニティおよび/または他の生物学的特性を改善することが、望ましいこともある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入すること、または、ペプチド合成によって、調製されてもよい。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列中への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列中の残基の置換を含む。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を備えることを前提に、欠失、挿入、および置換の任意の組合せが、最終構築物に至るために行われ得る。
a)置換、挿入、および欠失変異体
特定の態様において、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換的変異導入の目的部位は、HVRおよびFRを含む。保存的置換を、表1の「好ましい置換」の見出しの下に示す。より実質的な変更を、表1の「例示的な置換」の見出しの下に提供するとともに、アミノ酸側鎖のクラスに言及しつつ下で詳述する。アミノ酸置換は目的の抗体に導入されてもよく、産物は、例えば、保持/改善された抗原結合性、減少した免疫原性、減少した中和活性、改善した抗原特異性、または改善した血中滞留性などの、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
アミノ酸は、共通の側鎖特性によって群に分けることができる:
(1) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン (Met)、アラニン (Ala)、バリン (Val)、ロイシン (Leu)、イソロイシン (Ile);
(2) 中性の親水性:システイン (Cys)、セリン (Ser)、トレオニン (Thr)、アスパラギン (Asn)、グルタミン (Gln);
(3) 酸性:アスパラギン酸 (Asp)、グルタミン酸 (Glu);
(4) 塩基性:ヒスチジン (His)、リジン (Lys)、アルギニン (Arg);
(5) 鎖配向に影響する残基:グリシン (Gly)、プロリン (Pro);
(6) 芳香族性:トリプトファン (Trp)、チロシン (Tyr)、フェニルアラニン (Phe)。
非保存的置換は、これらのクラスの1つのメンバーを、別のクラスのものに交換することをいう。
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を含む。通常、その結果として生じ、さらなる研究のために選ばれた変異体は、親抗体と比較して特定の生物学的特性における修飾(例えば、改善)(例えば、増加したアフィニティ、減少した免疫原性)を有する、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例示的な置換変異体は、アフィニティ成熟抗体であり、これは、例えばファージディスプレイベースのアフィニティ成熟技術(例えば本明細書に記載されるもの)を用いて適宜作製され得る。簡潔に説明すると、1つまたは複数のHVR残基を変異させ、そして変異抗体をファージ上に提示させ、特定の生物学的活性(例えば、結合アフィニティ)に関してスクリーニングを行う。
改変(例えば、置換)は、例えば抗体のアフィニティを改善するために、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008) を参照のこと)および/または抗原に接触する残基において行われ得、得られた変異VHまたはVLが結合アフィニティに関して試験され得る。二次ライブラリからの構築および再選択によるアフィニティ成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, (2001)) に記載されている。アフィニティ成熟のいくつかの態様において、多様性は、任意の様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指向変異導入)によって成熟のために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリは、所望のアフィニティを有する任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4〜6残基)を無作為化するHVR指向アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異導入またはモデリングを用いて、具体的に特定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3がしばしば標的化される。
特定の態様において、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つまたは複数のHVR内で行われ得る。例えば、結合アフィニティを実質的に減少させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。そのような改変は、例えば、HVRの抗原接触残基の外側であり得る。上記の変異VHおよびVL配列の特定の態様において、各HVRは改変されていないか、わずか1つ、2つ、もしくは3つのアミノ酸置換を含む。
変異導入のために標的化され得る抗体の残基または領域を同定するのに有用な方法は、Cunningham and Wells (1989) Science, 244:1081-1085によって記載される、「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれるものである。この方法において、一残基または一群の標的残基(例えば、荷電残基、例えばアルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、およびグルタミン酸)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンもしくはポリアラニン)で置き換えられ、抗体と抗原の相互作用が影響を受けるかどうかが決定される。この初期置換に対して機能的感受性を示したアミノ酸位置に、さらなる置換が導入され得る。あるいはまたは加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析してもよい。そのような接触残基および近隣の残基を、置換候補として標的化してもよく、または置換候補から除外してもよい。変異体は、それらが所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
アミノ酸配列の挿入は、配列内部への単一または複数のアミノ酸残基の挿入と同様、アミノ末端および/またはカルボキシル末端における1残基から100残基以上を含むポリペプチドの長さの範囲での融合も含む。末端の挿入の例は、N末端にメチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN-またはC-末端に、酵素(例えば、ADEPTのための)または抗体の血漿半減期を増加させるポリペプチドを融合させたものを含む。
b)Fc領域変異体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸修飾を導入して、それによりFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1つまたは複数のアミノ酸ポジションのところでアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
Fc受容体
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体のことをいう。いくつかの態様において、FcRは、天然型ヒトFcRである。いくつかの態様において、FcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIサブクラスの受容体を、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングによる形態を含めて、含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは主としてその細胞質ドメインにおいて相違する類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ (immunoreceptor tyrosine-based activation motif: ITAM) を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン阻害モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif: ITIM)を含む。(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997) を参照のこと。)FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4:25-34 (1994);およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med 126:330-41 (1995)において総説されている。将来同定されるものを含む他のFcRも、本明細書の用語「FcR」に包含される。
用語「Fc受容体」または「FcR」はまた、母体のIgGの胎児への移動(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24:249 (1994))ならびに免疫グロブリンのホメオスタシスの調節を担う、新生児型受容体FcRnを含む。FcRnへの結合を測定する方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al.)を参照のこと)。
インビボでのヒトFcRnへの結合およびヒトFcRn高アフィニティ結合ポリペプチドの血漿半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトされたヒト細胞株においてまたは変異Fc領域を伴うポリペプチドが投与される霊長類において測定され得る。WO2000/42072 (Presta) は、FcRに対する結合が増加したまたは減少した抗体変異体を記載している。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) も参照のこと。
Fc領域含有抗体
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体のことをいう。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムにしたがえば残基447)またはFc領域のC末端グリシン−リジン(残基446-447)は、例えば抗体の精製の間にまたは抗体をコードする核酸の組み換え操作によって除去され得る。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体を含む組成物は、G446-K447を伴う抗体、G446を伴いK447を伴わない抗体、G446-K447が完全に除去された抗体、または上記3つのタイプの抗体の混合物を含み得る。
特定の態様において、すべてではないがいくつかのエフェクター機能を備える抗体変異体も、本発明の考慮の内であり、当該エフェクター機能は、抗体を、そのインビボでの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)は不要または有害である場合の適用に望ましい候補とするものである。CDCおよび/またはADCC活性の減少/欠乏を確認するために、インビトロ および/またはインビボ の細胞傷害測定を行うことができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合測定は、抗体がFcγR結合性を欠く(よってADCC活性を欠く蓋然性が高い)一方でFcRn結合能を維持することを確かめるために行われ得る。ADCCを媒介するプライマリ細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方単球はFcγRI、FcγRII、FcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991) の第464頁のTable 3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロ測定法(アッセイ)の非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、 Hellstrom, I. et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059-7063 (1986) 参照)および Hellstrom, I et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:1499-1502 (1985);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361 (1987) 参照)に記載されている。あるいは、非放射性の測定法を用いてもよい(例えば、ACT1(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry (CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);および、CytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assays 法 (Promega, Madison, WI) 参照)。このような測定法に有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞 (peripheral blood mononuclear cell: PBMC) およびナチュラルキラー (natural killer: NK) 細胞を含む。あるいはまたは加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652-656 (1998) に記載されるような動物モデルにおいて、インビボで評価されてもよい。また、抗体がC1qに結合できないこと、よってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合測定を行ってもよい。例えば、WO2006/029879 および WO2005/100402のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。また、補体活性化を評価するために、CDC測定を行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996);Cragg, M.S. et al., Blood 101:1045-1052 (2003);およびCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004) 参照)。さらに、FcRn結合性およびインビボでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野において知られた方法を用いて行い得る(例えばPetkova, S.B. et al., Int'l. Immunol. 18(12):1759-1769 (2006) 参照)。
減少したエフェクター機能を伴う抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329の1つまたは複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸ポジション265、269、270、297、および327の2つ以上の置換を伴うFc変異体を含む。
FcRsへの増加または減少した結合性を伴う特定の抗体変異体が、記述されている。(米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、およびShields et al., J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001) を参照のこと。)
いくつかの態様において、例えば米国特許第6,194,551号、WO99/51642、およびIdusogie et al. J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000) に記載されるように、改変された(つまり、増加したか減少したかのいずれかである)C1q結合性および/または補体依存性細胞傷害 (CDC) をもたらす改変が、Fc領域においてなされる。
増加した半減期、および新生児型Fc受容体(FcRn:母体のIgG類を胎児に移行させる役割を負う(Guyer et al., J. Immunol. 117:587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24:249 (1994)))に対する増加した結合性を伴う抗体が、米国特許出願公開第2005/0014934号A1(Hinton et al.) に記載されている。これらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合性を増加する1つまたは複数の置換をその中に伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434の1つまたは複数のところでの置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うものを含む。
c)抗体誘導体
特定の態様において、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野において知られておりかつ容易に入手可能な追加の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分は、これに限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール (PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ1,3ジオキソラン、ポリ1,3,6,トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれでも)、および、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、および、これらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水に対する安定性のために、製造において有利であるだろう。ポリマーは、いかなる分子量でもよく、枝分かれしていてもしていなくてもよい。抗体に付加されるポリマーの数には幅があってよく、1つ以上のポリマーが付加されるならそれらは同じ分子であってもよいし、異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/またはタイプは、これらに限定されるものではないが、改善されるべき抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下での療法に使用されるか否か、などへの考慮に基づいて、決定することができる。
B.組み換えの方法および構成
例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるとおり、抗体は組み換えの方法や構成を用いて製造することができる。一態様において、本明細書に記載の抗TGF-beta3抗体をコードする、単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/またはVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる態様において、このような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる態様において、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。このような態様の1つでは、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または、(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第一のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第二のベクターを含む(例えば、形質転換されている)。一態様において、宿主細胞は、真核性である(例えば、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞)またはリンパ系の細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞))。一態様において、抗TGF-beta3抗体の発現に好適な条件下で、上述のとおり当該抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、および任意で、当該抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することを含む、抗TGF-beta3抗体を作製する方法が提供される。
抗TGF-beta3抗体の組み換え製造のために、(例えば、上述したものなどの)抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニングおよび/または宿主細胞中での発現のために、1つまたは複数のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて容易に単離および配列決定されるだろう(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることで)。
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞を含む。例えば、抗体は、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合は、細菌で製造してもよい。細菌での抗体断片およびポリペプチドの発現に関して、例えば、米国特許第5,648,237号、第5,789,199号、および第5,840,523号を参照のこと。(加えて、大腸菌における抗体断片の発現について記載したCharlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp.245-254も参照のこと。)発現後、抗体は細菌細胞ペーストから可溶性フラクション中に単離されてもよく、またさらに精製することができる。
原核生物に加え、部分的なまたは完全なヒトのグリコシル化パターンを伴う抗体の産生をもたらす、グリコシル化経路が「ヒト化」されている菌類および酵母の株を含む、糸状菌または酵母などの真核性の微生物は、抗体コードベクターの好適なクローニングまたは発現宿主である。Gerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)および Li et al., Nat. Biotech. 24:210-215 (2006) を参照のこと。
多細胞生物(無脊椎生物および脊椎生物)に由来するものもまた、グリコシル化された抗体の発現のために好適な宿主細胞である。無脊椎生物細胞の例は、植物および昆虫細胞を含む。昆虫細胞との接合、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質転換に用いられる、数多くのバキュロウイルス株が同定されている。
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、および第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するための、PLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照のこと。
脊椎動物細胞もまた宿主として使用できる。例えば、浮遊状態で増殖するように適応された哺乳動物細胞株は、有用であろう。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換されたサル腎CV1株 (COS-7);ヒト胎児性腎株(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59 (1977) などに記載の293または293細胞);仔ハムスター腎細胞 (BHK);マウスセルトリ細胞(Mather, Biol. Reprod. 23:243-251 (1980) などに記載のTM4細胞);サル腎細胞 (CV1);アフリカミドリザル腎細胞 (VERO-76);ヒト子宮頸部癌細胞 (HELA);イヌ腎細胞 (MDCK);Buffalo系ラット肝細胞 (BRL 3A);ヒト肺細胞 (W138);ヒト肝細胞 (Hep G2);マウス乳癌 (MMT 060562);TRI細胞(例えば、Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982) に記載);MRC5細胞;および、FS4細胞などである。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR− CHO細胞 (Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216 (1980)) を含むチャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞;およびY0、NS0、およびSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の総説として、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo, ed., Humana Press, Totowa, NJ), pp. 255-268 (2003) を参照のこと。
C.測定法(アッセイ)
本明細書で提供される抗TGF-beta3抗体は、当該技術分野において知られている種々の測定法によって、同定され、スクリーニングされ、または物理的/化学的特性および/または生物学的活性について明らかにされてもよい。
1.結合測定法およびその他の測定法
一局面において、本発明の抗体は、例えばELISA、ウエスタンブロット等の公知の方法によって、その抗原結合活性に関して試験される。
別の局面において、TGF-beta3への結合に関して複数種の抗TGF-beta3抗体同志の競合を評価するために、競合アッセイが使用され得る。特定の態様において、互いに競合すると評価された抗体は、いずれも同じエピトープ(例えば、線状または立体構造エピトープ)に結合すると評価することができる。抗体が結合するエピトープをマッピングする、詳細な例示的方法は、Morris (1996) "Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology vol. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供されている。
例示的な競合アッセイにおいて、固定化されたTGF-beta3は、TGF-beta3に結合する第1の標識された抗体およびTGF-beta3への結合に関して第1の抗体と競合する能力に関して試験される第2の未標識の抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清に存在し得る。対照として、固定化されたTGF-beta3が、第1の標識された抗体を含むが第2の未標識の抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のTGF-beta3に対する結合を許容する条件下でのインキュベーションの後、余分な未結合の抗体が除去され、固定化されたTGF-beta3に結合した標識の量が測定される。固定化されたTGF-beta3に結合した標識の量が対照サンプルと比較して試験サンプルにおいて実質的に減少している場合、それは第2の抗体がTGF-beta3への結合に関して第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual ch.14 (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY) を参照のこと。
実質的に減少した
本明細書で用いられる表現「実質的に減少した」または「実質的に異なる」は、2つの数値の間(通常、ある分子に関するものと、参照/比較用分子に関するものの間)の差が、当業者がそれら2つの数値の間の差が該数値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の観点で統計学的に有意であるとみなす程度に、充分に大きいことをいう。
2.機能測定法
一局面において、所定の機能(プロファイル)を有する抗TGF-beta3抗体のそれを同定するための測定法が提供される。当該機能(プロファイル)は、例えば、(1)TGF-beta3に対し非中和であること(Non-Neutralizing);(2)TGF-beta1, 2, 3の中でTGF-beta3に特異的な結合活性を有すること(TGFb3-specific);および任意で(3)Mature体だけでなく、Latent体のTGF-beta3にも結合できること(Latent-Binder)を含んでよい。また、このような機能(プロファイル)をインビボおよび/またはインビトロで有する抗体が、提供される。
特定の態様において、本発明の抗体は、このような機能(プロファイル)について試験される。例示的な試験方法としては、実施例に記載する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
D.薬学的製剤
本明細書に記載の抗TGF-beta3抗体の薬学的製剤は、所望の純度を有する抗体を、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体 (Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)) と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、調製される。薬学的に許容される担体は、概して、用いられる際の用量および濃度ではレシピエントに対して非毒性であり、これらに限定されるものではないが、以下のものを含む:リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む、抗酸化剤;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、ソルビトールなどの、砂糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン類;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはポリエチレングリコール (PEG) などの非イオン系表面活性剤。本明細書の例示的な薬学的に許容される担体は、さらに、可溶性中性活性型ヒアルロニダーゼ糖タンパク質 (sHASEGP)(例えば、rHuPH20 (HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.) などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質)などの間質性薬剤分散剤を含む。特定の例示的sHASEGPおよびその使用方法は(rHuPH20を含む)、米国特許出願公開第2005/0260186号および第2006/0104968号に記載されている。一局面において、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つまたは複数の追加的なグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水溶液抗体製剤は、米国特許第6,171,586号およびWO2006/044908に記載のものを含み、後者の製剤はヒスチジン−アセテート緩衝液を含んでいる。
本明細書の製剤は、治療される特定の適応症のために必要であれば1つより多くの有効成分を含んでもよい。互いに悪影響を与えあわない相補的な活性を伴うものが好ましい。
有効成分は、例えば液滴形成(コアセルベーション)手法によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセル)に取り込まれてもよいし、コロイド状薬剤送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)に取り込まれてもよいし、マクロエマルションに取り込まれてもよい。このような手法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例は、抗体を含んだ固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含み、当該マトリクスは例えばフィルムまたはマイクロカプセルなどの造形品の形態である。
生体内 (in vivo) 投与のために使用される製剤は、通常無菌である。無菌状態は、例えば滅菌ろ過膜を通して濾過することなどにより、容易に達成される。
E.治療的方法および治療用組成物
本明細書で提供される抗TGF-beta3抗体のいずれも、治療的な方法において使用されてよい。
一局面において、医薬品としての使用のための、抗TGF-beta3抗体が提供される。さらなる局面において、自己免疫疾患の治療における使用のための、抗TGF-beta3抗体が提供される。特定の態様において、治療方法における使用のための、抗TGF-beta3抗体が提供される。特定の態様において、本発明は、TGF-beta3を有する個体を治療する方法であって、当該個体に抗TGF-beta3抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗TGF-beta3抗体を提供する。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、本発明は、B細胞活性化の抑制における使用のための抗TGF-beta3抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体においてB細胞活性化を抑制する方法であって、B細胞活性化を抑制するために当該個体に抗TGF-beta3抗体の有効量を投与する工程を含む方法における使用のための、抗TGF-beta3抗体を提供する。上記態様の任意のものによる「個体」は、好適にはヒトである。
さらなる局面において、本発明は医薬品の製造または調製における抗TGF-beta3抗体の使用を提供する。一態様において、医薬品は、自己免疫疾患の治療のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、自己免疫疾患を治療する方法であって、自己免疫疾患を有する個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。このような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。さらなる態様において、医薬品は、B細胞活性化の抑制のためのものである。さらなる態様において、医薬品は、個体においてB細胞活性化を抑制する方法であって、B細胞活性化を抑制するために当該個体に医薬品の有効量を投与する工程を含む方法における使用のためのものである。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
さらなる局面において、本発明は自己免疫疾患を治療する方法を提供する。一態様において、方法は、そのような自己免疫疾患を有する個体に抗TGF-beta3抗体の有効量を投与する工程を含む。そのような態様の1つにおいて、方法は、当該個体に少なくとも1つの(後述するような)追加治療剤の有効量を投与する工程を、さらに含む。上記態様の任意のものによる「個体」は、ヒトであってもよい。
さらなる局面において、本発明は個体においてB細胞活性化を抑制するための方法を提供する。一態様において、方法は、B細胞活性化を抑制するために個体に抗TGF-beta3抗体の有効量を投与する工程を含む。一態様において、「個体」は、ヒトである。
さらなる局面において、本発明は、本明細書で提供される抗TGF-beta3抗体の任意のものを含む、薬学的製剤を提供する(例えば上述の治療的方法の任意のものにおける使用のための)。一態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗TGF-beta3抗体の任意のものと、薬学的に許容される担体とを含む。別の態様において、薬学的製剤は、本明細書で提供される抗TGF-beta3抗体の任意のものと、少なくとも1つの(例えば後述するような)追加治療剤とを含む。
本発明の抗体は、療法において、単独または他の剤との組み合わせのどちらでも使用され得る。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。
上述したような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同じまたは別々の製剤に含まれる)、および個別投与を包含し、個別投与の場合、本発明の抗体の投与が追加治療剤の投与に先立って、と同時に、および/または、続いて、行われ得る。
本発明の抗体(および、任意の追加治療剤)は、非経口投与、肺内投与、および経鼻投与、また局所的処置のために望まれる場合は病巣内投与を含む、任意の好適な手段によって投与され得る。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。投薬は、投与が短期か長期かに一部応じて、例えば、静脈内注射または皮下注射などの注射によるなど、任意の好適な経路によってなされ得る。これらに限定されるものではないが、単回投与または種々の時点にわたる反復投与、ボーラス投与、および、パルス注入を含む、種々の投薬スケジュールが本明細書の考慮の内である。
本発明の抗体は、優良医療規範 (good medical practice) に一致したやり方で、製剤化され、投薬され、また投与される。この観点から考慮されるべきファクターは、治療されているその特定の障害、治療されているその特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、剤を送達する部位、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に公知の他のファクターを含む。抗体は、必ずしもそうでなくてもよいが、任意で、問題の障害を予防するまたは治療するために現に使用されている1つまたは複数の剤とともに、製剤化される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、障害または治療のタイプ、および上で論じた他のファクターに依存する。これらは通常、本明細書で述べたのと同じ用量および投与経路で、または本明細書で述べた用量の約1から99%で、または経験的/臨床的に適切と判断される任意の用量および任意の経路で、使用される。
疾患の予防または治療のために、本発明の抗体の適切な用量(単独で用いられるときまたは1つまたは複数の他の追加治療剤とともに用いられるとき)は、治療される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体が予防的目的で投与されるのか治療的目的で投与されるのか、薬歴、患者の臨床歴および抗体に対する応答、ならびに、主治医の裁量に依存するだろう。抗体は、患者に対して、1回で、または一連の処置にわたって、好適に投与される。疾患のタイプおよび重症度に応じて、例えば、1回または複数回の別々の投与によるにしても連続注入によるにしても、約1μg/kgから15 mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)の抗体が、患者に対する投与のための最初の候補用量とされ得る。1つの典型的な1日用量は、上述したファクターに依存して、約1μg/kgから100mg/kg以上まで、幅があってもよい。数日またはより長くにわたる繰り返しの投与の場合、状況に応じて、治療は通常疾患症状の所望の抑制が起きるまで維持される。抗体の1つの例示的な用量は、約0.05mg/kg から約 10mg/kgの範囲内である。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、もしくは 10mg/kgの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)が、患者に投与されてもよい。このような用量は、断続的に、例えば1週間毎にまたは3週間毎に(例えば、患者が約2から約20、または例えば約6用量の抗体を受けるように)、投与されてもよい。高い初回負荷用量の後に、1回または複数回の低用量が投与されてもよい。この療法の経過は、従来の手法および測定法によって、容易にモニタリングされる。
F.製品
本発明の別の局面において、上述の障害の治療、予防、および/または診断に有用な器材を含んだ製品が、提供される。製品は、容器、および当該容器上のラベルまたは当該容器に付属する添付文書を含む。好ましい容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器類は、ガラスやプラスチックなどの、様々な材料から形成されていてよい。容器は組成物を単体で保持してもよいし、症状の治療、予防、および/または診断のために有効な別の組成物と組み合わせて保持してもよく、また、無菌的なアクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって突き通すことのできるストッパーを有する静脈内投与用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの有効成分は、本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は、組成物が選ばれた症状を治療するために使用されるものであることを示す。さらに製品は、(a)第一の容器であって、その中に収められた本発明の抗体を含む組成物を伴う、第一の容器;および、(b)第二の容器であって、その中に収められたさらなる細胞傷害剤またはそれ以外で治療的な剤を含む組成物を伴う、第二の容器を含んでもよい。本発明のこの態様における製品は、さらに、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す、添付文書を含んでもよい。あるいはまたは加えて、製品はさらに、注射用制菌水 (BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液などの、薬学的に許容される緩衝液を含む、第二の(または第三の)容器を含んでもよい。他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジなどの、他の商業的観点またはユーザの立場から望ましい器材をさらに含んでもよい。
実施例1 TGF-beta3の作製
(1)Latent体のマウスTGF-beta3(以下latent mTGF-beta3)の作製
等量のlatent mTGF-beta3の発現ベクターと可溶型ヒトFurinの発現ベクターをExpi293F細胞(Thermo Fisher社)に共に導入し、一過性にlatent mTGF-beta3を発現させた。得られた培養上清をAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加し、当該カラムの洗浄の後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)によりカラムに吸着したタンパクを溶出した。Latent mTGF-beta3を含む画分を限外ろ過膜で濃縮し、これをSuperdex 200 increaseカラム(GE Healthcare社)で分離、回収することで精製latent mTGF-beta3を得た(配列番号:1)。
(2)ビオチン化latent mTGF-beta3の作製
Latent mTGF-beta3の発現ベクターをExpi293F細胞(Thermo Fisher社)に導入し、一過性にlatent mTGF-beta3を発現させた。得られた培養上清をAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加し、当該カラムの後、0.1 mg/mL FLAGペプチド(Sigma社)によりカラムに吸着したタンパクを溶出した。Latent mTGF-beta3を含む画分をMono Qカラム(GE Healthcare社)に添加し、当該カラムの洗浄の後、NaClの濃度勾配により蛋白を溶出した。目的分子を含む画分を限外濾過膜によりD-PBS(-)に溶媒置換した。EZ-Link NHS-PEG4-Biotin, No-Weigh Format(Thermo Fisher社)を用いてlatent mTGF-beta3をビオチン化し、限外ろ過膜で濃縮した後、Superdex 200 increaseカラム(GE Healthcare社)で分離・回収することで精製ビオチン化latent mTGF-beta3を得た。
(3)Mature体のヒト(マウス)TGF-beta3(以下mature h(m)TGF-beta3)の作製
Latent mTGF-beta3の発現ベクターをExpi293F細胞(Thermo Fisher社)に導入し、一過性にlatent mTGF-beta3を発現させた。得られた培養上清をAnti FLAG M2カラム(Sigma社)に添加し、当該カラムの洗浄の後、0.1 M Glycine-HCl, pH2.8によりカラムに吸着した蛋白を溶出した。低いpHを維持することでLatent体からMature体が形成され、mature h(m)TGF-beta3を含む画分を限外ろ過膜で濃縮した後、0.1 M Glycine-HCl, 150 mM NaCl, pH2.5で平衡化されたSuperdex 200pgカラム(GE Healthcare社)に添加し、同液で分離した。Mature h(m)TGF-beta3を含む画分を0.1%トリフルオロ酢酸で平衡化したVydac C4カラム(Vydac社)に添加し、当該カラムの洗浄後、アセトニトリルの濃度勾配によりカラムに結合したタンパクを溶出した。目的分子を含む画分を回収することでmature h(m)TGF-beta3(配列番号:2)を得、乾燥させて-80℃にて保管した。
なお、ヒトTGF-beta3およびマウスTGF-beta3のMature体は完全な相同性を有しているため、同一のものとみなすことができる。
(4)ビオチン化mature h(m)TGF-beta3の作製
乾燥させたmature h(m)TGF-beta3に2 mM 塩酸を添加し、これに1/35容量のイソプロパノールと1/9容量の10x D-PBS(-)を加えた。EZ-Link NHS-PEG4-Biotin, No-Weigh Format(Thermo Fisher社)を用いてmature h(m)TGF-beta3をビオチン化し、これを0.1%トリフルオロ酢酸で平衡化したVydac C4カラム(Vydac社)に添加した。当該カラムの洗浄後、アセトニトリルの濃度勾配によりカラムに吸着したタンパクを溶出した。目的分子を含む画分を回収することでビオチン化mature h(m)TGF-beta3を得、乾燥させて-80℃にて保管した。
実施例2 抗体ライブラリからの抗TGF-beta3抗体の作製
(1)ヒト抗体ナイーブライブラリの作製
ヒトPBMCから作成したポリA RNAや、市販されているヒトポリA RNAなどを鋳型としてPCR法により抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリを増幅した。
作製した抗体重鎖可変領域の遺伝子ライブラリと抗体軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリを組合せ、ファージミドベクターへ挿入し、ヒト抗体配列からなるFabドメインを提示するヒト抗体ファージディスプレイライブラリを構築した。構築方法として、Methods Mol Biol., (2002) 178, 87-100を参考にした。上記ライブラリの構築に際しては、ファージミドのFabとファージpIIIタンパク質をつなぐリンカー部分、および、ヘルパーファージpIIIタンパク遺伝子のN2ドメインとCTドメインの間にトリプシン切断配列が挿入されたファージディスプレイライブラリの配列が使用された。
(2)合成ヒト抗体ライブラリの構築
当業者公知の方法により、10種類の重鎖germline配列, 7種類の軽鎖germline配列を用いた合成ヒト抗体ファージディスプレイライブラリを構築した。用いたGermline配列は、ヒトB細胞レパートリーにおける出現頻度、可変領域ファミリーでの物理化学的性質を指標にし、VH1-2, VH1-69, VH3-23, VH3-66, VH3-72, VH4-59, VH4-61, VH4-b, VH5-51, VH6-1, Vκ1-39, Vκ2-28, Vκ3-20, Vλ1-40, Vλ1-44, Vλ2-14, Vλ3-21を選択した。ヒトB細胞の抗体のレパートリーを模した形で、合成抗体ライブラリの抗原認識部位に多様性を持たせた。
(3)ビーズパンニングによるヒト抗体ナイーブライブラリからのTGF-beta3に結合する抗体断片の取得
構築したファージディスプレイ用ファージミドを保持した大腸菌からファージ産生を行った。ファージ産生を行った大腸菌の培養液に2.5M NaCl/10% PEGを添加することによって、沈殿させたファージの集団をPBSにて希釈することによりファージライブラリ液を得た。次に、ファージライブラリ液にBSAおよびイソプロパノールを添加することによって終濃度4% BSA, 2.5% イソプロパノールとなるよう調製した。パンニング方法としては、一般的な方法である磁気ビーズに固定化した抗原を用いたパンニング方法を参照した(J. Immunol. Methods., (2008) 332 (1-2), 2-9、J. Immunol. Methods., (2001) 247 (1-2),191-203、Biotechnol. Prog., (2002) 18(2) 212-20、Mol. Cell Proteomics, (2003) 2 (2), 61-9)。磁気ビーズとして、NeutrAvidin coated beads(FG beads NeutrAvidin)もしくはStreptavidin coated beads(Dynabeads MyOne Streptavidin T1)を用いた。
具体的には、BSAでブロッキングした磁気ビーズに前述の500 pmolのビオチン化mature h(m)TGF-beta3を加え、さらに調製したファージライブラリ液を加えることによって、当該ファージライブラリ液を室温にて60分間抗原と接触させた。ビーズを1mLの2.5% isopropanol/PBST(2.5% isopropanolを含むPBST)にて3回洗浄した後、1 mLの2.5% isopropanol/PBS(2.5% isopropanolを含むPBS)にてさらに2回洗浄した。その後、ビーズに1mg/mLのトリプシン0.5 mLを加え、室温で15分懸濁した後、即座に磁気スタンドを用いてビーズを分離し、ファージ溶液を回収した。回収したファージ溶液を、対数増殖期(OD600が0.4-0.7)となった10 mLの大腸菌株ER2738に添加した。37℃で1時間緩やかに上記大腸菌の攪拌培養を行うことによって、ファージを大腸菌に感染させた。感染させた大腸菌は、225 mm x 225 mmのプレートへ播種した。次に、播種した大腸菌の培養液からファージを回収することによって、ファージライブラリ液を調製し、2回目のパンニングに利用した。
2回目のパンニングでは、調製したファージライブラリ液に200 pmolのビオチン標識抗原を加え、1回目のパンニングと同様の操作を行うことにより、ファージライブラリ液を調製した。この調製液を利用して、3回目のパンニングを行った。
3回目および4回目のパンニングでは、調製したファージライブラリ液に100 pmolのビオチン標識抗原を加え、1、2回目のパンニングと同様の操作を行い、播種された大腸菌を回収した。
(4)抗体断片から完全長抗体への変換、発現および精製
3回目もしくは4回目のパンニング時に回収した大腸菌から、NucleoBond Xtra Midi Plus (MACHEREY-NAGEL, 740412.50)によってファージミドの抽出を行った。その後、制限酵素処理によって抗体の可変領域部分を切出し、EF1プロモーターとEBNA1の複製開始点であるOriPを保持するベクターに抗体定常領域が導入されているカセットベクターに、ライゲーションを行った。抗体重鎖可変領域をコードするDNAはhuman IgG1(配列番号:10)重鎖定常領域をコードするDNAと再結合させた。抗体軽鎖可変領域をコードするDNAはヒトκ型軽鎖定常領域であるk0MT(配列番号:12)をコードするDNAと再結合させた。ライゲーション産物を用いて、大腸菌DH5α(TOYOBO, DNA-903)を形質転換し、得られたシングルコロニーから動物細胞発現用の完全長抗体プラスミドの抽出を行った。
抗体の発現は以下の方法を用いて行った。ヒト胎児腎細胞由来FreeStyle 293-F株(Thermo Fisher)をFreeStyle 293 Expression Medium培地(Thermo Fisher)に懸濁し、3.2×105細胞/wellの細胞密度で96ウェルディープウェルプレートの各ウェルへ400μLずつ播種した。調製したそれぞれのプラスミドを、リポフェクション法によって細胞に導入した。CO2インキュベーター(37℃、8% CO2)中で5日間培養し、培養上清中に抗体を分泌させた。培養上清中の分泌抗体は、Multi screen HTS GV (Millipore, MSGVN2250)を用いて精製した。
(5)取得した抗TGF-beta3抗体の結合能の確認
調製した抗体培養上清を用い、mature h(m)TGF-beta3への結合能の確認を、Octet RED384 もしくはOctetHTXシステム(Pall Life Sciences)を用いて行った。具体的には、Protein G Biosensor (Pall Life Sciences)に抗体を固相化し、続いてmature h(m)TGF-beta3, mature体のマウスTGF-beta1(以下mature mTGF-beta1。7666-MB/CF, R&D systems ), 及びmature体のマウスTGF-beta2(以下mature mTGF-beta2。7346-B2/CF, R&D systems)をアプライし、バイオセンサーに固相化された抗体と抗原との結合レスポンスを測定した。
その結果mature h(m)TGF-beta3への特異的結合が確認された抗体を多数取得した。
実施例3 ウサギ/マウスからの抗TGF-beta3抗体の作製
抗TGF-beta3抗体を次のように調製し、選択し、アッセイした。
10〜16週齢のNZWウサギおよび7〜18週齢のBALB/cマウスをマウスTGFb3 mature form (15〜30μg/用量/ウサギ)で免疫化した。ウサギは皮内投与にて、マウスは皮下投与にて免疫化を実施した。この用量での免疫化を2ヶ月間にわたって4〜5回繰り返した。最終免疫化の1週間後、脾臓と血液とリンパ節を免疫化動物から採取した。抗原特異的B細胞を標識抗原(マウスTGFb3 mature formまたはマウスTGFb3 latent form)で染色し、セルソーター(FACS aria III、BD)で選別し、細胞1個/ウェルの密度で、細胞25,000個/ウェルのEL4細胞(European Collection of Cell Cultures)および20倍希釈した活性化ウサギT細胞馴化培地と共に96ウェルプレートに播種し、7〜17日間培養して、そのB細胞培養上清中の分泌抗体を使った抗体スクリーニングに供した。EL4細胞は、マイトマイシンC(Sigma、カタログ番号M4287)で2時間処理し、事前に3回洗浄しておいたものを用いた。活性化ウサギT細胞馴化培地は、ウサギ胸腺細胞を、フィトヘマグルチニンM(Roche、カタログ番号11082132001)、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(Sigma、カタログ番号P1585)および2% FBSを含有するRPMI-1640中で培養することにより、調製した。培養後、B細胞培養上清をさらなる分析のために回収し、細胞のペレットを凍結保存した。
ELISA測定法を用いて、B細胞培養上清中の抗体の特異性を試験した。Mature mTGF-beta3、mature mTGF-beta1、mature mTGF-beta2は384ウェルHigh Bind Microplate (Corning、カタログ番号3700)上にPBS中8〜16nMにて室温で1時間コーティングした後に、D-PBS(-)にて1%に希釈したBSA(SIGMA、カタログ番号A7030)の溶液でブロッキングした。
Latent mTGF-beta3は、まずNHS-PEG4-ビオチン(PIERCE、カタログ番号21329)で標識した。384ウェルHigh Bind Microplateにストレプトアビジン(GeneScript、カタログ番号Z02043)をPBS中50nMにて室温で1時間コーティングした後に1% BSAでブロッキングしたELISAプレートを用意し、上述のBiotin化標識したマウスLatent mTGF-beta3をPBS中8nMにて添加し、1時間インキュベートして洗浄した。
B細胞培養上清をELISAプレートに添加し、1時間インキュベートして洗浄した。結合の検出は、ウサギB細胞培養上清はマウス抗ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(SouthernBiotech、カタログ番号4090-05)を用いて、マウスB細胞培養上清はヤギ抗マウスIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma、 カタログ番号A2554)に続いてABTS ELISA HRP Substrate(KPL、カタログ番号50-66-06)を添加することによる発色反応で検出した。
OctetHTXシステム(Pall Life Sciences)を使用して、抗原をプレートに固相しない様式での抗体抗原反応を評価した。ウサギB細胞培養上清中に分泌された抗体はProtein Aバイオセンサー(Pall Life Sciences)上に結合させ、マウスB細胞培養上清中に分泌された抗体はAnti-Mouse IgG Fc Capture (AMC)バイオセンサー(Pall Life Sciences)上に結合させた後に、100nMのマウスTGFb3 mature form溶液中に浸漬させて、抗体と抗原との結合反応を評価した。
ウサギ由来のB細胞を3960種、マウス由来のB細胞を10560種、合計14520種のB細胞の中から、ELISAまたはOctetHTXによる結合評価においてmature h(m)TGF-beta3に結合するものを選択して、ウサギ由来をTTA0001〜0188、マウス由来をTTB0001〜0188と命名した。
選択された細胞株のRNAを、ZR-96 Quick-RNAキット(ZYMO RESEARCH、カタログ番号R1053)を用いて凍結保存細胞ペレットから精製した。選択された細胞株中の抗体重鎖可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、human IgG1重鎖定常領域(配列番号:10)をコードするDNAと再結合させた。抗体軽鎖可変領域をコードするDNAを逆転写PCRにより増幅し、ウサギ由来の抗体軽鎖可変領域の場合は改変型のヒトκ型軽鎖定常領域であるk0MTC(配列番号:11)をコードするDNAと、マウス由来の抗体軽鎖可変領域の場合はヒトκ型軽鎖定常領域であるk0MT(配列番号:12)をコードするDNAと再結合させた。
これとは別に、実験における対照サンプルとして用いる目的で、既知のpan-TGFb抗体であるGC1008の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列(WO 2014/164709 A2に記載されているSEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO:2)をコードする遺伝子を合成した。重鎖可変領域(VH)をコードするDNAを、human IgG1重鎖定常領域をコードするDNA(配列番号:13)にインフレームで融合させ、かつ軽鎖可変領域(VL)をコードするDNAを、k0MTの軽鎖定常領域をコードするDNA(配列番号:14)にインフレームで融合させた。融合したコード配列の各々を発現ベクターにクローニングした。抗体をFreeStyle(商標)293-F細胞(Invitrogen)において発現させ、培養上清から精製して、前述と同様にTGF-betaファミリー分子間の結合特異性評価、Latent TGF-beta3への結合性評価、および機能的活性を評価した。
以上、実施例2、3で作製した抗TGF-beta3抗体の配列(Kabat Numberingで表示した配列番号:100〜配列番号:867)を表2にまとめる。
実施例4 取得した抗TGF-beta3抗体の中和活性の評価
実施例2、3で取得した抗TGF-beta3抗体、抗KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)抗体(IC17-hIgG1)、pan-TGFb中和抗体(GC1008-hIgG1)、およびmature h(m)TGF-beta3リコンビナントタンパクおよびHEK-Blue_TGFb細胞(hkb-tgfb, InvivoGen)を用いて中和活性能を評価した。mature h(m)TGF-beta3の生理活性の評価方法については、Smadシグナルの入力を分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)の活性を評価することで検証した。
HEK-Blue_TGFb細胞のGrowth medium(DMEM: D5796; Sigma, 10% FBS: SFBS-C; Bovogen, 2mM L-Glutamine: 25030-081; Invitrogen, 1×Penicilin-Streptomicin: 15140-122; Invitrogen, 100μg Normocin: ant-nr-1; InvivoGen, 30μg/mL Blasticidin: ant-bl-1; InvivoGen, 200μg/mL HygroGold: ant-hg-1; InvivoGen, 100μg/mL Zeocin: 46-0072; Invitrogen)およびTest medium(DMEM: D5796; Sigma, 0.1%w/w BSA: A9576; Sigma, 2mM L-Glutamine: 25030-081; Invitrogen, 1×Penicilin-Streptomicin: 15140-122; Invitrogen, 100μg Normocin: ant-nr-1; InvivoGen)はInvivoGenの条件にしたがって調製した。
各種抗体は最終濃度が2000ng/mLから3.2ng/mLまで段階希釈となるように、また4mM HClで100μg /mLに溶解したmature h(m)TGF-beta3リコンビナントタンパクを用いて最終濃度0.32ng/mLとなるようにflat-bottom 96-well plateに分注し、HEK-Blue_TGFb細胞懸濁液を各2×105 cells/wellとなるように添加し、37℃のCO2インキュベーターにて一晩(20hrs)培養した。翌日、20μLの細胞培養上清に対して80μLのQUANTI-Blue (rep-qb1, InvivoGen) 発色基質を添加し、37℃、CO2インキュベーターで1時間反応後、VersaMaxスペクトロメーター(Molecular devices)にてOD620nmで分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)活性を測定した。
最終濃度0.32ng/mLのmature h(m)TGF-beta3リコンビナントタンパクの生理活性が2000ng/mLのGC1008-hIgG1にて完全に抑制されるOD値を100%抑制、GC1008-hIgG1が不含のときのOD値を0%抑制と定義することによって、各種抗体のTGF-beta3の生理活性の抑制効果を評価した。
その結果、中和活性を若干でも保有する抗体が確認される中で、抗TGFbeta3抗体の濃度が2000ng/mLの存在下においても、全くTGF-beta3の生理活性を抑制しない抗体の存在が確認された。その結果を表3に示す。
尚、本中和活性評価系において、抗KLH抗体であるIC17-hIgG1の2000ng/mLにおいて10〜20%程度の抑制効率が確認されることから、本中和活性評価系において、少なくとも抗TGF-beta3抗体の濃度が2000ng/mLの存在下におけるTGF-beta3の生理活性の抑制効率で20%以内の抗体は本発明における非中和抗体であるものと評価した。実験は全てN=4で実施した。市販抗体のうち、TGF-beta3への結合が確認できているIgGタイプのモノクローナル抗体(R&D systems #44922、R&D systems #20724、Santa Cruz #sc-166833)の結果を表の最後にレファレンスとして示す。
表3の結果は、非中和抗体の取得が成功していることを示している。
実施例5 抗TGF-beta3抗体の各種TGF-betaに対する結合特異性の評価
次に、抗TGF-beta3抗体のTGF-beta1-3に対する結合特異性を評価した。
相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラスの境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化を縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムからセンサーチップ表面に捕捉したリガンドに対するアナライトの結合量(アナライトを相互作用させた前後でのセンサーグラム上でのレスポンスの変化量)が求められる。ただし、結合量はリガンドの量にも依存するため、比較する際にはリガンドの量を本質的に同じ量にしたとみなせる条件下で比較する必要がある。
実施例2、3で取得した抗体の各種TGF-betaに対する結合活性測定は、Biacore T200 (GE Healthcare, Control Software Version 2.0)を用いてHBS-EP+をランニング緩衝液として25℃で行った。なおHBS-EP+ は、HBS-EP+ x10 (GE Healthcare)をMilli-Q Advantage(Merck)より採取した超純水で10倍希釈して作製した。TGF-betaの非特異結合を低減するためにSensor chip CM4(GE Healthcare)の前処理として、チップ表面にあるカルボキシル基をNHSおよびEDC(GE Healthcare, Amine Coupling kit, type 2付属品)で活性化してEthanolamine-HCl(同付属品)でブロッキングした。その後、アミンカップリング法によりMabselect SuRe Protein A(GE Healthcare)をSensor chip CM4に固定化した。Mabselect SuRe Protein Aに500 Resonance Units (RU)キャプチャー(capture/捕捉)されるように濃度を調整した各抗体を添加した後に、HBS-EP+で50 nMに希釈したmature hTGF-beta1(100-21C, Peprotech。)、mature hTGF-beta2 (100-35B, Peprotech。)、mature h(m)TGF-beta3、mature mTGF-beta1 (7666-MB/CF, R&D systems)、mature mTGF-beta2(7346-B2/CF, R&D systems)、 latent mTGF-beta3、を結合させた。結合は流速60 μl/minで1分間行った後に1分間解離させた。結合終了5秒前のレスポンスをTGF-betaの結合値とした。Sensor chip CM4は25 mM NaOHを用いて再生し、繰り返し使用した。
本測定結果は、まずBiacore T200 Evaluation Software Version 2.0 (GE Healthcare) を用いて、ブランクとしてbufferのレスポンスを差し引きした後に、captureした抗体量で、TGF-beta結合値を割り、1 RUの抗体あたりのTGF-beta結合値を算出した。なお、その値が0.01 未満の場合には、結合がなかったものとみなし、値を0とした。次に、mature h(m)TGF-beta3に対する結合の値で、各TGF-betaに対する結合の値を割り、算出された値に100を掛け、mature h(m)TGF-beta3に対する結合を100%としたときの相対的な結合量を計算した。この解析結果のまとめを表4に示した。
表4の中で、mature h(m)TGF-beta3 100%に対し、mature hTGF-beta1, 2/ mature mTGF-beta1, 2への結合が10%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満の抗体はTGF-beta3へ特異的に結合する抗体であると評価した。この結果、作製した抗TGF-beta3抗体の中には、TGF-beta3へ特異的に結合する抗体が多数確認された。
更に、mature h(m)TGF-beta3 100%に対し、latent mTGF-beta3への結合が10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは100%以上の抗体はTGF-beta3のmature体とlatent体の両方に結合する抗体であると評価し、このような抗体も多数確認された。
以上の実施例4,5の結果から、表2に記載した抗体のうち、少なくともNo.1, 5, 7-12, 15, 17, 20, 21, 27, 28, 30, 31, 39, 40, 42-44, 47, 48, 59, 63, 65, 70の抗体がTGF-beta3へ特異的に結合する非中和抗体であることを確認した。
尚、実施例4、5の評価では、TGF-beta3に特異的に結合し、かつ強い中和活性を示す抗体も確認された。
TGF-beta3は前立腺癌などの癌細胞株において発現していることが報告されており、癌細胞の運動能を亢進させることで転移や浸潤などの癌の増悪に関与していると考えられている。(Clinical & Experimental Metastasis, January 2013, Volume 30, Issue 1, pp 13-23)
またTGF-beta3は臨床の浸潤性乳がん患者の腫瘍組織においても高頻度で発現していることが知られ、TGF―beta3の腫瘍組織における発現レベルや血中濃度は、乳がん患者の全生存期間と逆相関を示すと報告されている。(Anticancer Res. 2000 Nov-Dec;20(6B):4413-8.)
このように、TGF-beta3が癌の増悪や予後不良と関係する機能を有していると考えられることから、本発明において得られたTGF-beta3に特異的に結合する中和抗体が、癌治療に適用できることが期待される。
実施例6 抗TGF-beta3抗体の競合評価
実施例2,3で作製した抗TGF-beta3抗体をさらなる解析のために選択した。選択された抗体をOctetHTXシステムを用いたin-tandem法に依るエピトープ・ビニング実験に供することで、様々な結合特性を有する抗体がTGF-beta3タンパク質の同一のエピトープまたは重複するエピトープに結合するかを評価した。
選択された抗体はTGF-beta3特異的結合性、Latent TGF-beta3に対する結合性、中和活性の3つの項目を以下の基準により分類しGroup1-7とした(表5)。

中和活性:
A:実施例4における抗体濃度2000ng/mLでのTGF-beta3の抑制効率が20%以内
B:A以外
特異性:
A:実施例5におけるmature h(m)TGF-beta3 100%比でのmature hTGF-beta1, 2/mature mTGF-beta1, 2結合が10%未満
B:A以外
Latent結合性:
A:実施例5におけるmature h(m)TGF-beta3 100%比でのlatent mTGF-beta3への結合が10%以上
B:A以外

Group1:中和活性(A),特異性(A),Latent結合性(A)
Group2:中和活性(B),特異性(A),Latent結合性(A)
Group3:中和活性(A),特異性(B),Latent結合性(A)
Group4:中和活性(A),特異性(A),Latent結合性(B)
Group5:中和活性(B),特異性(A),Latent結合性(B)
Group6:中和活性(A),特異性(B),Latent結合性(B)
Group7:中和活性(B),特異性(B),Latent結合性(B)
エピトープの解析は、標的抗原タンパク質由来の重複ペプチドアレイを用いたエピトープ・マッピングがよく用いられるが、高次立体構造を形成する標的抗原タンパク質のエピトープ解析には有効ではない場合がある。
TGF-beta3単量体は分子量約12.5kDaの小さなタンパク質でありながら、単量体分子内に3箇所、単量体分子間に1箇所のジスルフィド結合を有する高次立体構造を形成することから、エピトープ競合を指標にしたエピトープ解析方法であるエピトープ・ビニングを実施した。
TGF-beta3タンパク質はホモ二量体を形成するが、一般的にこのような標的に対してはsandwich ELISA法などの手法は有効ではないため、OctetHTXシステムを用いたin tandem法(http://www.fortebio.com/interactions/Autumn_2010/page2.html)を採用した。Streptavidinバイオセンサー(Pall Life Sciences)上にビオチン標識したmature TGF-beta3を2μg/mLにて5分間結合させた後に、第一抗体(飽和抗体/Saturating Ab/1stAb)の結合を飽和させた(表5に記すように抗体の種類に依り15または50μg/mLの抗体濃度にて6分間)。第一抗体の結合が飽和しているバイオセンサーに、続いて第二抗体(競合抗体/Competing Ab/2ndAb)を反応させて(第一抗体と同様に、抗体の種類に依り15または50μg/mLの抗体濃度にて6分間)結合反応が確認されるかを評価することで、抗体間のエピトープの競合を評価した。全ての抗TGF-beta3抗体は、第一抗体と第二抗体の両方として使用し、網羅的に対にした。(図1)
第一抗体としてTGF-beta3には結合しないアイソタイプコントロール抗体であり、KLHに対する抗体であるIC17-hIgG1を用いた場合の、評価対象である第二抗体の結合レスポンス値(第二抗体の本来の結合レスポンス値/Original response by 2nd Ab)を100%と定義し、各抗TGFb3抗体を第一抗体に用いたときの第二抗体の結合レスポンス値(第二抗体による追加の結合レスポンス値/Acquired response by 2nd Ab)の割合を算出し、これをエピトープ競合の判断基準とした。一部の解離速度の速い抗体を第一抗体に用いた場合には、第一抗体の解離に伴う第二抗体への置き換わりが発生するため、結合反応開始から30秒後の結合レスポンス値の割合で評価した。(図2,3)
ただし、結合反応開始から30秒後の結合レスポンス値の割合で評価しても、第一抗体の解離に伴う第二抗体への置き換わりの影響を完全に抑えることはできないため、20%以下の結合レスポンス値の割合はエピトープの競合があるものと判断した。また、エピトープの競合がなかったとしても第一抗体の存在下では第二抗体の結合速度や結合量が多少は影響を受ける可能性を考慮し、60%以上の結合レスポンス値の割合はエピトープの競合がないものと判断した。各抗体間の組み合わせから得られた結合レスポンス値の割合を、ヒートマップ形式にて図4に示した。20%以下は白色で示し、60%以上は黒色で示し、20%から60%の間はその数値の大きさに準じた色付けを行った。
図4から分かるように、望ましい結合特性を持つ抗体群、即ちTGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体であるGroup1(中和活性(A),特異性(A),Latent結合性(A))に属する抗体はいずれもTGF-beta3への結合において互いに競合しており、更にGroup4(中和活性(A),特異性(A),Latent結合性(B))に属する抗体もまたいずれもTGF-beta3への結合において互いに競合している。
これらの結果から、本発明で作製したTGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体は、TGF-beta3への結合において互いに競合することを確認した。更に、これらの抗体はTGF-beta3の共通した、あるいは類似した近傍のエピトープを認識すると考えられる。
また、これらのTGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体のエピトープ競合パターンは、中和活性を有している抗体群やTGF-beta3特異的結合性に劣る抗体群とは異なるパターンを示している。このような一連の結果を考慮すると、本発明で作製した抗体群は、 Group1およびGroup4に分類された望ましい結合特性を持つTGF-beta3抗体に特徴的なエピトープを広くカバーしていると考えられる。
実施例7 Mature h(m)TGF-beta3と抗TGF-beta3特異的非中和抗体のimmuno-complex (IC)によるヒトB細胞増殖抑制効果
実施例2、3で取得し、実施例4,5で非中和であること、TGF-beta3特異的であることを確認した抗TGF-beta3抗体(以下、「抗TGF-beta3特異的非中和抗体」)について、生体内においてTGF-beta3抗原と結合した時にB細胞の増殖を抑制する効果を保持しているかどうかを確認するために、AllCells, LLCより購入したヒトPBMC(PB005F, Lot. A4811, AllCells)を用いて検討した。
Human B cell isolation kit II (130-091-151, Miltenyi Biotec)によってB細胞 (negative fraction)を分画した後、Medium (RPMI/10%FBS/55μM 2-ME)で2回洗浄を行い10,000 cells/wellとなるようにround-bottom 96-well plateに分注した。
最終濃度が0.32ng/mLのMature TGF-beta3と2000, 400, 80, 16, 3.2, 0.64, 0.128 ng/mLの抗TGF-beta3特異的非中和抗体となるように調製し、室温で1時間反応させることでimmuno-complex (IC)を形成させ、1×104個のB細胞と混合した。さらに細胞増殖の刺激として最終濃度5 μg/mL のanti-human IgM (109-006-129, Jackson ImmunoResearch)、1 μg/mL のanti-CD40 (AF632, R&D Systems)、33 ng/mL のrecombinant human IL-21 (200-21, Peprotech)を混合して加えた。3日間37℃のCO2インキュベーターにて培養後、Cell titer glo(G7572, Promega)を用いて増殖した生細胞量の測定を行うことで、mature h(m)TGF-beta3と抗TGF-beta3特異的非中和抗体のICによるヒトB細胞増殖抑制効果を検証した。標準品として、抗KLH抗体 (IC17-hIgG1)と抗pan-TGFbeta中和抗体(GC1008-hIgG1)を用いて同じタイミングで刺激を開始した。
結果として、mature h(m)TGF-beta3によるB細胞増殖抑制効果と同様に、mature h(m)TGF-beta3と抗TGF-beta3特異的非中和抗体のICによるヒトB細胞増殖抑制効果が確認された。一方で、mature h(m)TGFbeta3とGC1008-hIgG1のIC添加条件においてB細胞増殖抑制効果は確認されず、B細胞増殖刺激単独と変わらない細胞の増殖が確認された。以上の結果は、血中半減期の非常に短いことが知られているTGF-beta3と抗TGF-beta3特異的非中和抗体とのIC形成によって、そのヒトB細胞増殖抑制の生理活性が保持されることを示している。(図5)
実施例8 BALB/c nu/nuマウスへのCD4+CD25-T細胞移入モデルにおける抗dsDNA抗体産生抑制効果
全身性エリスマトーデス(SLE)を含む自己免疫疾患の代表的な症状の一つとして、血清抗核抗体価の上昇が挙げられる。SLEのモデル動物としてMRL-Faslpr/lpr(MRL/lpr)マウスやNZB/W F1マウスなどがありいずれも血清抗核抗体価の上昇を伴うモデルであるが、発症・病態の進展までに数か月から1年近くの長期間の時間がかかることが知られている。本試験においては、BALB/c nu/nuマウスにBALB/cのCD4+CD25-T細胞を移入することによって、1ヶ月以内にIgGタイプの抗核抗体価が上昇するモデルを用いることで、抗TGF−beta3抗体のin vivo薬効を検討した。
日本SLCより購入した8週齢・メスのBALB/c マウスをイソフルラン麻酔下全採血による安楽死処置を行い、脾臓を採取してACK lysing buffer(A10492-01, Gibco)にて溶血処理を行い、CD4+ T Cell アイソレーションキット, マウス(130-104-454, Miltenyi Biotec)を用いてCD4陽性細胞を回収した後に、CD25 マイクロビーズキット, マウス(130-091-072, Miltenyi Biotec)を用いてCD4+CD25-細胞を回収することにより、BALB/cマウス脾細胞由来CD4+CD25-T細胞を調製した。
日本SLCより購入した8週齢・メスのBALB/c nu/nuマウスに対して、1匹あたり2×106 cellsのBALB/cマウス脾細胞由来CD4+CD25-T細胞の腹腔内投与を行った。細胞移入の直前に抗TGFbeta3抗体 10 mg/kgの尾静脈内投与を実施し、その後週1回の頻度で計4回尾静脈内投与を実施した。キャピジェクトEDTA-2Na採血を抗体の初回投与前(Pre)、および投与後Day12, Day20, Day28で行い、mouse anti-dsDNA IgG ELISA(レビス抗dsDNA-マウスELISA kit: AKRDD-061, Shibayagi)、抗Smith抗体(Mouse anti-Smith antibody ELISA Kit: MBS705621, MyBioSource)を用いて各種血漿中の抗体価を測定した。
Day28における血漿中の抗dsDNA抗体価は、IC17-hIgG1投与群で131.3 Units/mLであったのに対し、本発明の抗TGF-beta3特異的非中和抗体であるTTA0003抗体・TTA0035抗体・TTB0019抗体・TTB0043抗体・F3NKB2-3_062抗体の抗TGFbeta3抗体投与群においてそれぞれ78.5 Units/mL・48.3 Units/mL・40.2 Units/mL・88.3 Units/mL・43.8 Units/mLと抑制傾向があることが確認された。(図6A)
さらにまた、Day28における血漿中の抗Smith抗体価を測定したところ、IC17-hIgG1投与群で266.4 ng/mLであったのに対し、TTA0003抗体・TTA0035抗体・TTB0019抗体・TTB0043抗体・TTB0048抗体・F3NKB2-3_062抗体の抗TGFbeta3抗体投与群において、それぞれ140.2 ng/mL・180.3 ng/mL・132.5 ng/mL・177.2 ng/mL・159.2 ng/mL・115.5 ng/mLと抗dsDNA抗体価の抑制傾向と同様に抗Smith抗体価においても抑制効果があることが確認された。(図6B)
これらの結果は、抗TGF-beta3特異的非中和抗体の投与によって生体内で産生されるTGF-beta3の血中濃度が上昇することでIgG産生を伴う自己免疫疾患のモデルマウスにおける自己抗体産生を抑制する効果を発揮した結果であると考えられ、抗TGF-beta3特異的非中和抗体の自己免疫疾患の治療剤としての応用可能性を示唆している。(図6)

Claims (12)

  1. TGF-beta3に特異的に結合する非中和抗体。
  2. 請求項1に記載の抗体であって、以下(1)から(29)のいずれかに記載の抗体:
    (1)配列番号:101に記載のCDR1、配列番号:102に記載のCDR2、配列番号:103に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:105に記載のCDR1、配列番号:106に記載のCDR2、配列番号:107に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (2)配列番号:141に記載のCDR1、配列番号:142に記載のCDR2、配列番号:143に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:145に記載のCDR1、配列番号:146に記載のCDR2、配列番号:147に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (3)配列番号:161に記載のCDR1、配列番号:162に記載のCDR2、配列番号:163に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:165に記載のCDR1、配列番号:166に記載のCDR2、配列番号:167に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (4)配列番号:171に記載のCDR1、配列番号:172に記載のCDR2、配列番号:173に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:175に記載のCDR1、配列番号:176に記載のCDR2、配列番号:177に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (5)配列番号:181に記載のCDR1、配列番号:182に記載のCDR2、配列番号:183に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:185に記載のCDR1、配列番号:186に記載のCDR2、配列番号:187に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (6)配列番号:191に記載のCDR1、配列番号:192に記載のCDR2、配列番号:193に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:195に記載のCDR1、配列番号:196に記載のCDR2、配列番号:197に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (7)配列番号:201に記載のCDR1、配列番号:202に記載のCDR2、配列番号:203に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:205に記載のCDR1、配列番号:206に記載のCDR2、配列番号:207に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (8)配列番号:211に記載のCDR1、配列番号:212に記載のCDR2、配列番号:213に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:215に記載のCDR1、配列番号:216に記載のCDR2、配列番号:217に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (9)配列番号:241に記載のCDR1、配列番号:242に記載のCDR2、配列番号:243に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:245に記載のCDR1、配列番号:246に記載のCDR2、配列番号:247に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (10)配列番号:261に記載のCDR1、配列番号:262に記載のCDR2、配列番号:263に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:265に記載のCDR1、配列番号:266に記載のCDR2、配列番号:267に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (11)配列番号:291に記載のCDR1、配列番号:292に記載のCDR2、配列番号:293に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:295に記載のCDR1、配列番号:296に記載のCDR2、配列番号:297に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (12)配列番号:301に記載のCDR1、配列番号:302に記載のCDR2、配列番号:303に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:305に記載のCDR1、配列番号:306に記載のCDR2、配列番号:307に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (13)配列番号:361に記載のCDR1、配列番号:362に記載のCDR2、配列番号:363に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:365に記載のCDR1、配列番号:366に記載のCDR2、配列番号:367に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (14)配列番号:371に記載のCDR1、配列番号:372に記載のCDR2、配列番号:373に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:375に記載のCDR1、配列番号:376に記載のCDR2、配列番号:377に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (15)配列番号:391に記載のCDR1、配列番号:392に記載のCDR2、配列番号:393に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:395に記載のCDR1、配列番号:396に記載のCDR2、配列番号:397に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (16)配列番号:401に記載のCDR1、配列番号:402に記載のCDR2、配列番号:403に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:405に記載のCDR1、配列番号:406に記載のCDR2、配列番号:407に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (17)配列番号:481に記載のCDR1、配列番号:482に記載のCDR2、配列番号:483に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:485に記載のCDR1、配列番号:486に記載のCDR2、配列番号:487に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (18)配列番号:491に記載のCDR1、配列番号:492に記載のCDR2、配列番号:493に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:495に記載のCDR1、配列番号:496に記載のCDR2、配列番号:497に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (19)配列番号:511に記載のCDR1、配列番号:512に記載のCDR2、配列番号:513に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:515に記載のCDR1、配列番号:516に記載のCDR2、配列番号:517に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (20)配列番号:521に記載のCDR1、配列番号:522に記載のCDR2、配列番号:523に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:525に記載のCDR1、配列番号:526に記載のCDR2、配列番号:527に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (21)配列番号:531に記載のCDR1、配列番号:532に記載のCDR2、配列番号:533に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:535に記載のCDR1、配列番号:536に記載のCDR2、配列番号:537に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (22)配列番号:561に記載のCDR1、配列番号:562に記載のCDR2、配列番号:563に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:565に記載のCDR1、配列番号:566に記載のCDR2、配列番号:567に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (23)配列番号:571に記載のCDR1、配列番号:572に記載のCDR2、配列番号:573に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:575に記載のCDR1、配列番号:576に記載のCDR2、配列番号:577に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (24)配列番号:681に記載のCDR1、配列番号:682に記載のCDR2、配列番号:683に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:685に記載のCDR1、配列番号:686に記載のCDR2、配列番号:687に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (25)配列番号:721に記載のCDR1、配列番号:722に記載のCDR2、配列番号:723に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:725に記載のCDR1、配列番号:726に記載のCDR2、配列番号:727に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (26)配列番号:741に記載のCDR1、配列番号:742に記載のCDR2、配列番号:743に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:745に記載のCDR1、配列番号:746に記載のCDR2、配列番号:747に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (27)配列番号:791に記載のCDR1、配列番号:792に記載のCDR2、配列番号:793に記載のCDR3を有する重鎖可変領域、および配列番号:795に記載のCDR1、配列番号:796に記載のCDR2、配列番号:797に記載のCDR3を有する軽鎖可変領域を含む抗体
    (28)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体とTGF-beta3への結合において競合する抗体
    (29)上記(1)〜(27)のいずれかに記載の抗体が結合するTGF-beta3のエピトープと同じエピトープに結合する抗体
  3. TGF-beta3のLatent体および/またはMature体に結合する請求項1または2に記載の抗体。
  4. TGF-beta3の生理活性の抑制が20%以下である請求項1−3のいずれかに記載の抗体。
  5. TGF-beta3への結合値に対するTGF-beta1およびTGF-beta2への結合値が10%未満である請求項1−4のいずれかに記載の抗体。
  6. モノクローナル抗体である、請求項1−5のいずれかに記載の抗体。
  7. ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項1−6のいずれかに記載の抗体。
  8. B細胞を認識する可変領域を更に含む二重特異性抗体である請求項1−7のいずれかに記載の抗体。
  9. 前記可変領域はCD19、CD20、CD40、CD22、IL21R、BAFF-R、BCMA、TACI、CD27、又はCD138に含まれるいずれか1つを認識する請求項8に記載の抗体。
  10. 請求項1−9のいずれかに記載の抗体を含むB細胞活性化の抑制剤。
  11. 請求項1−9のいずれかに記載の抗体を含む自己免疫疾患の治療剤。
  12. 前記自己免疫疾患は全身性エリテマトーデス、天疱瘡、多発性硬化症、視神経脊髄炎、ANCA関連血管炎、関節リウマチ、移植臓器拒絶、シェーグレン症候群、若年性皮膚筋炎、重症筋無力症、又はバセドウ病、橋本病等の自己免疫性甲状腺疾患のいずれかである請求項11に記載の治療剤。
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