JP2019130848A - シート、成形体、及び成形体の製造方法 - Google Patents

シート、成形体、及び成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、成形体の屈曲部における皺形成や連続強化繊維の破断を低減する等して、複雑な形状の成形体の製造に好適に使用することができるシート、該シートからなる成形体、及び該成形体の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、高剛性部分と低剛性部分とを有することを特徴とする、シート。【選択図】図5

Description

本発明は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシート、該シートからなる成形体、及び該成形体の製造方法に関する。
近年、各種機械及び自動車等の構造部品、圧力容器、及び管状の構造物等に使用される複合材料成形体の材料として、強化繊維と熱可塑性樹脂繊維が連続して均―に混じり合った複合糸及び複合糸からなる布吊が提案されている。このような布吊として、例えば、非特許文献1には、強化繊維に熱可塑性樹脂を完全含浸させたコンポジットシート「Tepex(登録商標)」が開示されている。また、特許文献1には、ガラス繊維とポリエチレンテレフタレート繊維とからなる混繊織物が開示されている。また、特許文献2には、炭素繊維にポリアミド樹脂を半含浸させた強化繊維基材が開示されている。
特許第2720489号公報 特開2016−203585号公報
"連続繊維熱可塑材料 Tepex(登録商標)(テペックス)"、[online]、サンワトレーディング株式会社、[平成29年7月5日検索]、インターネット<URL:http://www.sunwa−trading.co.jp/product/new−materials−cfrtp/tepex/>
しかしながら、非特許文献1に記載のコンポジットシートは、延伸性に乏しく、金型の凹凸に合わせてシートを変形させる際に強化繊維が破断する場合があるため、複雑な形状を有する成形体の成形に対応できない場合がある。また、リブやボス、箱のコーナ部等の成形体の屈曲部に皺が形成される場合があり、成形体の外観に改良の余地がある。
特許文献1に記載の混繊織物は、嵩張る上に柔軟性が高いため取り扱い難く、また、成形体の底面と側面との間の屈曲部で強化繊維が破断する場合があり、成形体の強度に改良の余地がある。
また、特許文献2に記載の強化繊維基材は、全体がほぼ均一の剛性であり局部的、選択的な折り曲げは困難である。
そこで、本発明は、成形体の屈曲部における皺形成や連続強化繊維の破断を低減する等して、複雑な形状の成形体の製造に好適に使用することができるシート、該シートからなる成形体、及び該成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートに高剛性部分と低剛性部分とを形成することで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記に示すとおりである。
[1]連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、高剛性部分と低剛性部分とを有することを特徴とする、シート。
[2]平面視において、前記高剛性部分の間に挟まれて設けられた前記低剛性部分を有する、[1]に記載のシート。
[3]厚み方向に沿う断面において、前記低剛性部分の幅(w)に対する厚み(h1)の割合(h1/w)が0.05〜1.0であり、前記高剛性部分の厚み(h2)に対する前記低剛性部分の厚み(h1)の割合(h1/h2)が1〜5である、[1]又は[2]に記載のシート。
[4]前記低剛性部分は、前記高剛性部分と比較して、曲げ弾性率が10%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のシート。
[5]前記高剛性部分が、所定の形状の繰り返しパターンを形成する、[1]〜[4]のいずれかに記載のシート。
[6]連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートからなり、複数の平面部と、互いに隣接する前記平面部間に位置する屈曲部とを含み、最大衝撃強度が4.0〜7.0kNであることを特徴とする、成形体。
[7]連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートと、熱可塑性樹脂組成物を含む基材とを含み、前記基材からなる部分の少なくとも一部が、前記シートからなる部分の少なくとも一部と一体化していることを特徴とする、成形体。
[8]平面形成部と屈曲部形成部とを有する金型と、[1]〜[5]のいずれかに記載のシートとを用いる成形体の製造方法であり、前記シートを、前記高剛性部分が前記金型の前記平面形成部に配置され、前記低剛性部分の少なくとも一部が前記金型の前記屈曲部形成部に配置されるように設計し、前記シートを前記金型に設置して加熱プレスすることを特徴とする、成形体の製造方法。
[9]更に、射出注入された熱可塑性樹脂組成物の少なくとも一部と前記低剛性部分の少なくとも一部とが接触するように、前記熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出注入する、[8]に記載の成形体の製造方法。
本発明によれば、成形体の屈曲部における皺形成や連続強化繊維の破断を低減する等して、複雑な形状の成形体の製造に好適に使用することができるシート、該シートからなる成形体、及び該成形体の製造方法を提供することができる。
本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図である。 図1に示す本発明に係るシートの一実施形態のA−A断面図である。 本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図である。 本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図である。 本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図である。 本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図である。 本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<シート>
本実施形態のシートは、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、高剛性部分と低剛性部分とを有することを特徴とする、シートである。
[連続強化繊維]
本実施形態のシートに含まれる連続強化繊維は、通常の繊維強化複合材料として使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、超高強カポリエチレン繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリケトン繊維、金属繊維、セラミックス繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。機械的特性、熱的特性、汎用性の観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましく、経済性の面からは、ガラス繊維が好ましい。
連続強化繊維としてガラス繊維を選択した場合、集束剤を用いてもよく、集束剤としては、シランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤からなることが好ましい。
ガラス繊維及びガラス繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
また、連続強化繊維として炭素繊維を選択した場合も同様に、集束剤を用いてもよく、集東剤としては、潤滑剤及び結束剤からなることが好ましい。
炭素繊維に用いる集束剤の種類については、特に制限はなく公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
その他の連続強化繊維を用いる場合においても、連続強化繊維の特性に応じて、ガラス繊維、炭素繊維に用いることが可能な集束剤の種類、付与量を適宜選択して用いることができ、炭素繊維に用いる集束剤に準じた集束剤の種類、付与量とすることが好ましい。
連続強化繊維の単糸数は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から、30〜15,000本であることが好ましい。
また、連続強化繊維の繊度は、混繊工程における開繊性、及び取扱い性の観点から、1,000〜30,000dtexであることが好ましい。
[熱可塑性樹脂]
本実施形態のシートに含まれる熱可塑性樹脂に特に制限はなく、通常のものを使用することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルフォン;ポリフェニレンサルファイド;熱可塑性ポリエーテルイミド;テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等の熱可塑性フッ素系樹脂、及びこれらを変性させた変性熱可塑性樹脂から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られた連続繊維であることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂の中でも、結晶性樹脂が好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、熱可塑性ポリエーテルイミド、及び熱可塑性フッ素系樹脂が好ましく、機械的物性、汎用性の観点から、ポリオレフィン系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂がより好ましく、熱的物性の観点を加えると、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が更に好ましい。また、繰り返し荷重負荷に対する耐久性の観点から、ポリアミド系樹脂がより更に好ましく、ポリアミド66を好適に用いることができる。
−ポリエステル系樹脂−
ポリエステル系樹脂とは、主鎖に−CO−O−(エステル)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他のポリエステル系樹脂の詳細に関しては、適宜特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
−ポリアミド系樹脂−
ポリアミド系樹脂とは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミドとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
その他の上記のラクタム、ジアミン(単量体)、ジカルボン酸(単量体)の詳細に関しては、適宜特開2015−101794号公報に記載のものを用いることができる。
ポリアミドの具体例としては、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
本実施形態のシートに含まれる連続強化繊維及び熱可塑性樹脂は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とからなる混繊糸、連続強化繊維に熱可塑性樹脂をコーティングしたコーティング糸、又は連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させた含浸糸のいずれの複合糸の形態であってもよい。製織時の連続繊維保護の観点から、コーティング糸もしくはコーティング糸を束ねたトウであることが好ましい。
上記混繊糸の製造方法は、特に制限されず、公知の混繊方法を利用することができる。例えば、静電気力や流体噴霧による圧力、ローラー等に押し付ける圧力等による外力によって開繊した後、連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維を開繊したままの状態で合糸・引き揃える開繊合糸法、又は流体交絡(インターレース)法が挙げられる。なかでも、連続強化繊維の損傷が抑制でき、開繊性に優れ、かつ均一に混合可能な流体交絡法が好ましい。流体交絡(インターレース)法としては、空気、窒素ガス及び水蒸気等の流体による渦流乱流帯域を糸軸とほぼ平行に2個又はそれ以上作り、この帯域に繊維を導いてループや捲縮を生じない程度の張力下で非嵩高性の糸条とする方法や、連続強化繊維のみ開繊した後、又は連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とを共に開繊した後に流体交絡させる方法(開繊後流体交絡法)等が挙げられる。特に、熱可塑性樹脂繊維に単独で熱加工を含む工程で仮撚加工を施した後、同一の装置で連続して、流体交絡法で混繊することが好ましい。
その他、混繊法の詳細については、適宜特開2015−101794号公報に記載の方法を用いることができる。
連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維との混繊比率は、特に限定されないが、連続強化繊維の体積分率(Vf)で15〜90%の範囲が好ましい。所望の強度、剛性に合わせ適宜設定できる。
また、上記コーティング糸及び含浸糸の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を利用することができる。コーティング及び含浸は、連続強化繊維の製造時に行ってもよく、連続強化繊維を製造した後に別工程で行ってもよい。
[その他の添加剤]
本実施形態のシートには、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。本実施形態のシートは、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、耐候剤、金属不活性剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等を配合することができる。
<<高剛性部分>>
本実施形態のシートが有する高剛性部分とは、シート上で剛性が比較的高い部分であり、連続強化繊維としてガラス繊維を選択した場合、曲げ弾性率が10,000〜30,000MPaであることが好ましい。高剛性部分の曲げ弾性率は、材料の部品適用性の観点から、より好ましくは15,000〜30,000MPa、更に好ましくは18,000〜30,000MPaである。
本実施形態のシートの高剛性部分は、屈曲性が低いため、成形体の平面を構成することが望ましい。そのため、平面形成部と屈曲部形成部とを有する金型用いて成形体を製造する際に、シートの高剛性部分が金型の平面形成部に配置されるようにシートを設計することが好ましい。
図1に、本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図を示す。図1のシート1は、箱形状を有する成形体用のシートであり、高剛性部分2が成形体の底面及び側面を構成する部分となるように設計されている。屈曲性の低い高剛性部分2を、金型の平面形成部に配置することで、成形体の平面における連続強化繊維の配向が成形体の製造時に変形するのを低減することが可能となる。
また、本実施形態のシートの高剛性部分は、所定の形状の繰り返しパターンを形成していてもよい。
上記高剛性部分の繰り返しパターンの一例を示す図として、図4に、本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図を示す。図4に示されるように、三角形の形状を有する高剛性部分2が、シート1上に規則的に繰り返し配置されていてもよい。
本実施形態のシートの高剛性部分の厚み(h2)は、平均の値をいう。厚み(h2)は、所望される必要強度、剛性等、成形体の製品設計に依存するが、例えば、0.3〜5mmの範囲とすることができ、好ましくは1.0〜3.0mmである。例えば、高剛性部分及び低剛性部分を形成する前のシート(以下、「シート素材」ともいう。)の厚みが4〜5mmであるとき、加熱プレスして得られる高剛性部分の厚み(h2)は、1.2〜1.75mmとなる。
本実施形態のシートの高剛性部分は、後述の高剛性部分及び低剛性部分の形成方法により、シートに含まれる熱可塑性樹脂を溶融固化又は半溶融固化させることにより作製することができる。
<<低剛性部分>>
本実施形態のシートが有する低剛性部分とは、連続強化繊維としてガラス繊維を選択した場合、シート上で剛性が比較的低い部分であり、賦形性及び材料取扱いの観点から、曲げ弾性率が2,000MPa以下であることが好ましく、より好ましくは1600MPa以下、更に好ましくは1000MPa以下である。また、低剛性部分の曲げ弾性率は、高剛性部分の曲げ弾性率の10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、更に好ましくは5%以下である。
本実施形態のシートの低剛性部分は、屈曲性が高いため、成形体の平面と平面との間の屈曲部やリブの根本の屈曲部等を構成することが望ましい。そのため、平面形成部と屈曲部形成部とを有する金型用いて成形体を製造する際に、金型の屈曲部形成部に配置されるように設計することが好ましい。
例えば、図1に示す箱形状を有する成形体用のシート1は、低剛性部分3が成形体の底面と側面との間の屈曲部を構成する部分となるように設計されている。屈曲性の高い低剛性部分3を、成形体の製造時に金型の屈曲部形成部に配置することで、成形体の屈曲部における皺形成及び連続強化繊維の破断を低減することが可能となる。
また、別の例として、図3に、本発明に係るシートの一実施形態を示す概略平面図を示す。図3も図1と同様に箱形状を有する成形体用のシートであるが、成形体の四隅が内側に折り込まれた状態となる点で、図1のシートから形成される箱形状の成形体とは形状が異なる。図3のシートによる成形体は、四隅を形成する際に、高剛性部分2a及び2bを重ね合わせるが、この高剛性部分2a及び2bの周囲に低剛性部分3a、3b、及び3cを設けることで、四隅の折り込まれた部分における皺形成及び連続強化繊維の破断を低減することが可能となる。
また、高剛性部分2a及び2bの重ね合わせを更に容易にするため、成形体の成形前に、低剛性部分3aを裁断線4に沿って予め裁断してもよい。
上記のように、本実施形態のシートの低剛性部分は、成形体の平面と平面との間の屈曲部を構成することが望ましいため、シートの平面視において、成形体の平面を構成する高剛性部分の間に挟まれて設けられることが好ましい。
例えば、成形体として容器内部が直方体形状となるような容器を製造する場合、底面に相当する高剛性部分は、側面に相当する高剛性部分との間に、該高剛性部分を取り囲む(囲繞する)ように、低剛性部分を有することが好ましい。
また、例えば、フランジ部と連続溝とを有する成形体を製造する場合、連続溝に相当する高剛性部分を挟むように設けられる低剛性部分は、シートの一辺から該一辺に対向する辺まで、シート幅にわたって設けられていてよい。
更に、本実施形態のシートについて、図2に、図1に示す本発明に係るシートの一実施形態のA−A断面図を示す。本実施形態のシートの低剛性部分は、図2に示すシートの厚み方向に沿う断面において、低剛性部分の幅(w)に対する厚み(h1)の割合(h1/w)が、0.05〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5、更に好ましくは0.2〜0.4である。低剛性部分の幅(w)に対する厚み(h1)の割合(h1/w)が、0.05〜1.0であると、容易に折り曲げることができる。なお、低剛性部分の厚み(h1)、幅(w)は、それぞれ平均の値をいう。
また、高剛性部分の厚み(h2)に対する低剛性部分の厚み(h1)の割合(h1/h2)は、1〜5であることが好ましく、より好ましくは1.5〜4.5、更に好ましくは2〜4である。高剛性部分の厚み(h2)に対する低剛性部分の厚み(h1)の割合(h1/h2)が1〜5であると、容易に折り曲げすることができる。
なお本開示で、シートの高剛性部分の厚み(h2)、低剛性部分の厚み(h1)、及び低剛性部分の幅(w)は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態のシートの低剛性部分は、シートに含まれる熱可塑性樹脂を未溶融の状態のままとするか、又は後述の高剛性部分及び低剛性部分の形成方法により半溶融固化させることにより作製することができる。
<シートの製造方法>
本実施形態のシートの製造方法は、特に限定されず、用途、目的に応じて選定した適切なシートを製造する公知の方法を用いることができる。
[シート素材の製造方法]
連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維とからなる複合糸を製織することにより、高剛性部分及び低剛性部分を形成する前のシートを製造する場合は、例えば、シャトル織機、レピア織機、エアジェット織機、ウォータージェット織機等の製織機を用いることができ、少なくとも一部に連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる複合糸を含んでいればよい。好ましくは、複合糸を含む繊維を配列させた経糸に、緯糸を打ち込むことによって得てもよい。
また、複合糸を製編することによりシート素材を製造する場合は、例えば、丸編み機、横編み機、トリコット編み機、ラッシェル編み機等の編み機を用いることができ、少なくとも一部に連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる複合糸を含む繊維を編成することによって得てもよい。
また、シート素材を複合糸の不織布として製造する場合は、例えば、少なくとも一部に連続強化繊維と熱可塑性樹脂からなる複合糸を含む繊維をウェブと呼ばれるシート状の繊維集合体とした後、ニードルパンチ機、ステッチボンド機、柱状流機等の物理作用やエンボスロール等による熟作用や接着剤によって繊維同士を結合させることによって、得てもよい。
その他のシート素材の製造方法については、適宜特開2015−101794号公報に記載の方法を用いることができる。
[高剛性部分及び低剛性部分の形成方法]
次に、上記で得られたシート素材に、加熱ニップロール装置等により、高剛性部分及び低剛性部分を作製する。加熱ニップロール装置を用いる場合、先ず、シート素材を予熱ロール上で熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度以下(熱可塑性樹脂がポリアミド66(PA66)の場合は200〜250℃)で予備加熱し、その後、予熱ロールに続いて配置された、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度以上(PA66の場合は280〜320℃)の加熱パターン付きニップロールを通過させ、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度以下(PA66の場合は150〜200℃)に冷却する。この加熱パターン付きニップロールのパターンにより、熱可塑性樹脂が溶融固化又は半溶融固化した状態の高剛性部分と、熱可塑性樹脂が未溶融又は半溶融固化した状態の低剛性部分とが形成され、本実施形態のシートが得られる。
ロール径(ロール接触距離、抱き角)及びライン速度は、上記各工程での必要な加熱、冷却時間によって適宜決定することができるロール径を大きくし、かつ抱き角も大きくすると、接触時間が伸び、ライン速度を上げることができる。加熱時間は、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度以上で10秒以上が好ましく、ライン速度を考慮すると、より好ましくは30秒から1分である。
本実施形態のシートは、高剛性部分の形成前又は形成後に、成形体の形状に合わせて予めシートの一部を裁断してもよい。
例えば、図1のシートは、箱形状の成形体に合わせて、図3に示すような長方形のシートの角部を裁断(図3の低剛性部分3b及び3c等を裁断)した例である。また、図3のシートは、四隅が内側に折り込まれた状態の箱形状をなす成形体のためのシートであり、高剛性部分2a及び2bを容易に重ね合わせることができるように、低剛性部分3aを裁断線4に沿って予め裁断してもよい。
シートを所望の形状に裁断する方法としては、ウォータージェットカッター、レーザーカッター、プロッタカッター、超音波カッター、超鋼刃プレスカッター、熱刃プレスカッター等があるが、経済性、生産性、性能面から熱刃プレスカッターが好ましい。熱刃プレスカッターの刃の温度は、シートの素材により適宜設定されるが、熱可塑性樹脂の融点又はガラス転移温度以上、好ましくは融点+30℃以上又はガラス転移温度+30℃以上、更に好ましくは融点+70℃以上又はガラス転移温度+70℃以上である。
シートのサイズは、所望される成形体のサイズに依存して種々のサイズとすることができるが、幅は、少なくとも連続強化繊維1本を含むことが可能な幅以上であることが望ましい。
<成形体>
本実施形態の成形体は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートからなり、複数の平面部と、互いに隣接する前記平面部間に位置する屈曲部とを含むことを特徴とする、成形体である。
[シート]
本実施形態の成形体を構成するシートは、上述の高剛性部分及び低剛性部分を有するシートを圧縮成形してなるものとしてよい。
[成形体の曲げ弾性率]
本実施形態の成形体の曲げ弾性率は、17000〜22000MPaであることが好ましく、より好ましくは18000〜22000MPaであり、更に好ましくは18000〜21000MPaである。
なお本開示で、成形体の曲げ弾性率は、ISO178に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[成形体の最大衝撃強度及び最大衝撃点エネルギー]
本実施形態の成形体の最大衝撃強度は、続強化繊維としてガラス繊維を選択した場合、3.0〜7.0kNであることが好ましく、より好ましくは4.0〜6.0kNであり、更に好ましくは、5.0〜6.0kNである。3.0〜6.5kNであると、成形品を衝撃吸収部材として取り扱う事ができる。
また、本実施形態の成形体の最大衝撃点エネルギーは、10.0〜17.0Jであることが好ましく、より好ましくは12.0〜17.0Jであり、更に好ましくは、14.0〜17.0Jである。10.0〜17.0Jであると、成形品を衝撃吸収部材として取り扱う事ができる。
なお本開示で、成形体の最大衝撃強度及び最大衝撃点エネルギーは、JIS K7211−1;2006に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
[成形体の屈曲部における皺形成]
本実施形態の成形体は、良好な外観の観点から、屈曲部における皺が、成形体の全表面積の20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、屈曲部における皺の深さが2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
なお本開示で、成形体の屈曲部における皺は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態の成形体の別の態様は、連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートと、熱可塑性樹脂組成物を含む基材とを含み、前記基材からなる部分の少なくとも一部が、前記シートからなる部分の少なくとも一部と一体化していることを特徴とする、成形体である。
[基材]
本実施形態の成形体に含まれる基材は、熱可塑性樹脂組成物を含む。
[熱可塑性樹脂組成物]
本実施形態の基材に含まれる熱可塑性樹脂組成物は、一般の射出成形に使用される熱可塑性樹脂組成物であれば特に制限なく用いることができる。
熱可塑性樹脂組成物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン等の1種又は2種以上を混合した組成物を用いることができる。
また、これらの熱可塑性樹脂組成物には、各種充填剤が配合されていてもよい。
各種充填剤としては、連続強化繊維と同種の材料の不連続強化材料である短繊維、長繊維材料を用いてもよい。
不連続強化材料としてガラス短繊維、長繊維を用いる場合には、連続強化繊維と同様に集束剤を用いてもよく、集束剤としてはシランカップリング剤、潤滑剤、及び結束剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤、潤滑剤、結束剤の種類に関しては、前述の連続強化繊維の集束剤と同様のものが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料としては、本実施形態のシートと熱可塑性樹脂組成物との接合強度の観点から、シートに含まれる熱可塑性樹脂と類似のものが好ましく、同種類のものがより好ましい。
具体的には、シートに含まれる熱可塑性樹脂にポリアミド66繊維を用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物の樹脂材料は、ポリアミド66であることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、シートに添加可能な上述の添加剤と同様のものを用いることができる。
<成形体の製造方法>
本実施形態の成形体の製造方法は、平面形成部と屈曲部形成部とを有する金型と、上述のシートとを用いる成形体の製造方法であり、前記シートを、前記高剛性部分が前記金型の前記平面形成部に配置され、前記低剛性部分の少なくとも一部が前記金型の前記屈曲部形成部に配置されるように設計し、前記シートを前記金型に設置して加熱プレスすることを特徴とする、成形体の製造方法である。
図5に、本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図を示す。本実施形態の成形体の製造方法では、上述の本実施形態のシートを、例えば図5に示すように、高剛性部分2が金型5の平面形成部5aに配置され、低剛性部分3が金型5の屈曲部形成部5bに配置されるように、シート1を金型5に設置する。
次に、金型を型締めし、金型のキャビティ温度を上昇させる。金型の温度は、シートに含まれる熱可塑性樹脂の融点以上又はガラス転移温度以上に設定し、常に一定温度に温調しておく。
型締め圧力としては、特に限定はされないが、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上である。また、ガス抜き等をするために一端型締めをし、圧縮成形した後に一端金型の型締め圧力を解除してもよい。
次に、キャビティ温度を融点又はガラス転移温度以下に降下させて成形体を冷却固化させた後、金型を開放し、成形体を取り出す。
なお、金型の凹部のテーパー角度θは、1〜20°とすることが好ましい。
シートは、目的とする成形体の肉厚によって、金型内に設置する枚数を調整することができる。成形体の部分的に厚みの異なる部分についても、金型内に設置するシートの枚数を部分的に増減させることで調整することができる。即ち、肉厚の厚い部分には、薄い部分に比べて多くの枚数のシートを設置することで厚みを調整することができる。また、成形体の肉厚の変化は、同じシート枚数であっても、圧縮成形の圧力により熱可塑性樹脂の溶融物が流動することで調整することも可能である。
金型に設置するシートは、同種類のものを重ねてもよいが、得られる成形体の目標とする強度に応じて異なる種類のシートを重ねて金型内に設置してもよい。例えば、連続ガラス繊維と熱可塑性樹脂からなるシートと連続カーボン繊維と熱可塑性樹脂からなるシートを重ねてもよい。更に、必要に応じて熱可塑性樹脂フィルムや不連続繊維充填熱可塑性樹脂フィルム等を重ねることも可能である。
[ハイブリッド成形]
本実施形態の成形体の製造方法は、更に、射出注入された熱可塑性樹脂組成物の少なくとも一部と低剛性部分の少なくとも一部とが接触するように、熱可塑性樹脂組成物を金型内に射出注入してもよい。即ち、本実施形態のシートを用いて、圧縮成形と射出成形を組み合わせたハイブリッド成形を行うことができる。
上記ハイブリッド成形の一例を説明する図として、図6に、本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図を示す。ハイブリッド成形の一例として、図6に示すように、成形体の表裏層をシートで構成し、中間層を熱可塑性樹脂組成物で構成する成形体が挙げられる。本実施形態のシート10を、高剛性部分20が金型50の平面形成部50aに配置され、低剛性部分30が金型50の屈曲部形成部50bに配置されるように、金型50に設置する。また、本実施形態のシート11を、低剛性部分31が金型50の凹部分の真下に位置するように、金型51に設置する。
次に、金型50及び51を閉鎖し、シート10とシート11との間に熱可塑性樹脂組成物を射出充填する。
熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、シートに含まれる熱可塑性樹脂の融点+10℃以上又はガラス転移温度+10℃以上であることが好ましく、より好ましくは融点+20℃以上又はガラス転移温度+20℃以上であり、更に好ましくは融点+30℃以上又はガラス転移温度+30℃以上である。また、熱可塑性樹脂組成物を射出充填する時の金型温度は、シートに含まれる熱可塑性樹脂の融点+50℃以下又はガラス転移温度+50℃以下であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物を射出充填するタイミングは、シートを金型内に設置して金型を閉じてから30秒以内であることが好ましい。
本実施形態における成形体の製造方法においては、圧縮成形を行う際のシートに負荷されるプレス圧力と、熱可塑性樹脂組成物を射出する際に負荷する射出圧力又は射出保圧力が同等であることが好ましい。ここで、プレス圧力の方が射出圧力又は射出保圧力よりも大きい場合、シートに含まれる熱可塑性樹脂が溶融時に流出してしまい、強化繊維が含まれない部分が存在し、その部分が脆弱となる傾向にある。一方、射出圧力又は射出保圧力の方がプレス圧力よりも大きい場合、射出圧力又は射出保圧力に負けてシートが押され、シートに含まれる強化繊維配向が崩れてしまう傾向にある。
なお、圧力が同等とは、必ずしも同一である必要はなく、±10MPa、好ましくは±5MPaの圧力差がある場合も含まれる。なお、ここで射出保圧力とは射出成形時の保持圧力のことである。
最後に、キャビティ温度を200〜150℃(又は、ガラス転移温度より50℃以上低い温度)に降下させて成形体を冷却固化させた後、金型を開放し、成形体を取り出す。
シートの低剛性部分は、未溶融状態又は半溶融状態であるため、空隙を多く含む。そのため、図6に示すように、金型50の凹部分に射出注入された熱可塑性樹脂組成物とシートの低剛性部分30及び31とが接触するようにシート10及び11を配置することにより、熱可塑性樹脂組成物とシートとが接合する際に、熱可塑性樹脂組成物が低剛性部分の空隙部分に入り込み、接合面積が増えてアンカー効果も強くなり、接合強度が向上する。
上記ハイブリッド成形の別の例を説明する図として、図7に、本発明に係るシートの、金型に対する配置の一例を示す、シートの厚み方向概略断面図を示す。図7に示すように、本実施形態のシート10を、高剛性部分20が金型50の平面形成部50aに配置され、低剛性部分30が金型50の屈曲部形成部50bに配置されるように、金型50に設置する。同様にして、シート10’を金型50に設置する。更に、シート11を、低剛性部分31が金型50の凹部分の真下に位置するように、金型51に設置する。
この場合、金型50の凹部分から形成される成形体のリブは、熱可塑性樹脂組成物のみからなる。しかしながら、金型50の凹部分に射出注入された熱可塑性樹脂組成物とシートの低剛性部分30、30’、及び31とが接合するため、上述のように、熱可塑性樹脂組成物が低剛性部分の空隙部分に入り込み、優れた接合強度が得られるため、強度の高いリブを有する成形体が得られる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<材料>
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
[シート]
・シートS:ガラス繊維複合熱可塑性樹脂(GFRTP)[ボンドラミネーツ社製、商品名:Tepex(登録商標)dynalite 101、厚み:3mm]
−連続強化繊維−
・ガラス繊維(GF)(繊度:685dtex、単糸数:400本)
−熱可塑性樹脂−
・ポリアミド66繊維(PA66)(商品名:レオナ(登録商標)470/144BAU、旭化成せんい(株)製、繊度:470dtex、単糸数:144本、融点:265℃)
[[集束剤]]
・集束剤A:以下の組成(固形分換算)を有する。
・シランカップリング剤:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%(商品名:KBE−903、信越化学工業(株)製)
・潤滑剤:ワックス0.1質量%(商品名:カルナウバワックス、(株)加藤洋行製)
・結束剤:アクリル酸/マレイン酸共重合体塩5質量%(商品名:アクアリックTL、日本触媒(株)製)
[樹脂組成物]
・樹脂組成物(GF+PA66):短繊維ガラス繊維33%含有のポリアミド66樹脂(商品名:レオナ(登録商標)14G33、旭化成(株)製)
<測定及び評価方法>
実施例及び比較例において使用した測定及び評価方法は、以下の通りである。
(1)シートの高剛性部分の厚み(h2)、低剛性部分の厚み(h1)、及び低剛性部分の幅(w)
シートの高剛性部分の厚み(h2)、低剛性部分の厚み(h1)、及び低剛性部分の幅(w)を、以下の条件にて測定した。
・試験環境:23℃、湿度50%
・試験片形状:ダンベル型ISO527−1Aの形状であり、厚み2mmtの試験片
・使用機器:万能試験機5582(インストロン社製)
シートの高剛性部分の厚み(h2)、低剛性部分の厚み(h1)、及び低剛性部分の幅(w)は、それぞれ3箇所の測定値を平均して求めた。
(2)シート及び成形体の曲げ弾性率
シートの高剛性部分及び低剛性部分、並びに成形体の屈曲部及び平面部の曲げ弾性率(MPa)は、ISO178に準拠して、以下の条件にて測定した。
・試験環境:23℃50RH%
・成形体:肉厚3mm、長さ100mmの短冊状
・試験速度:1mm/min
・スパン間:32mm
・使用機器:インストロン50kN(インストロン社製)
各部分の曲げ弾性率は、5箇所の測定値を平均して求めた。
(3)成形体の最大衝撃強度及び最大衝撃点エネルギー
成形体の最大衝撃強度(kN)及び最大衝撃点エネルギー(J)は、JIS K7211−1;2006に準拠して、以下の条件にて測定した。
・試験環境:23℃
・高速衝撃試験機:島津HYDRO SHOT HITS−P10(島津製作所製)
・試験片形状:60mm角平板、肉厚2mm
・試験速度:4.4mm/s
(4)成形体の屈曲部における皺
成形体の外観について、屈曲部における皺の有無により評価した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
○:成形体の屈曲部において、皺が成形体の全表面積の5%以下であり、かつ深さが1mm以下である。
△:成形体の屈曲部において、皺が成形体の全表面積の5%以下であり、かつ深さが1mm超2mm以下である、又は、皺が成形体の全表面積の5%超20%以下であり、かつ深さが2mm以下である。
×:成形体の屈曲部において、皺が成形体の全表面積の20%超である、又は深さが2mm超である。
[実施例1]
集束剤Aを1.0質量%付着させたガラス繊維2束とポリアミド66繊維2束とを合糸し、引き揃えた後、流体交絡ノズルに実質的に垂直に供給し、下記条件で流体交絡させて、複合糸(ガラス繊維のVf:50%)を得た。
・流体交絡ノズル:京セラ KC−AJI−L(1.5mm径、推進型)
・空気圧:2kg/cm2
・加工速度:3m/分
得られた複合糸を経糸及び緯糸として用い、経糸密度が6本/5mm、緯糸密度が6本/5mm、厚み1mmの織物(シート素材)を製織した。製織時に毛羽やフィブリル状物の発生はなく、織機にも糸くずや毛玉の付着は観察されず製織性は良好であった。
次に、上記織物(シート素材)から、図3を展開図とする四隅が内側に折り込まれた箱形状(縦200mm、横100mm、高さ30mm)の成形体用のシートを得るため、上記織物(シート素材)を図3に示す形状に裁断した。
続いて、上記の裁断した織物(シート素材)を10枚重ね(厚み10mm)、加熱ニップロール装置(製品名:加熱式圧延機IMC−1918型、井元製作所社製、ライン速度:38m/min)を用い、予熱ロール(250℃)にてシートを加熱し、加熱パターン付きニップロール(280℃)を通過させた後、150℃まで冷却して冷却固化することにより、シート(高剛性部分の厚み:3.5mm)を得た。なお、成形体の成形時における高剛性部分2a及び2bの重ね合わせを容易にするため、低剛性部分3aを裁断線4に沿って予め裁断した(図3参照)。
次に、150℃に加熱した上記箱形状の成形体用の金型(凹部側面のテーパー角度θは10°)を開き、上記のシートを、シートの高剛性部分が金型の平面形成部(成形体の底面及び側面を形成する部分)に配置され、低剛性部分が金型の屈曲部形成部(成形体の底面と側面との間の屈曲部を形成する部分)に配置されるように、シートを金型に設置した。成形機(製品名:S100V−8A、東芝機械製、最大型締め力300トン)を用いて、型締め力25MPaで型締めした。
金型を型締めした状態で金型表面温度を320℃まで加熱して3分間保持し、シートに含まれるポリアミド樹脂を金型内で溶融させた。
次に、型締め力を下げ、金型を150℃まで冷却して冷却固化を行い、金型を開放した。金型を離型後、直ちに成形体を取り出し、成形体(厚み:3mm)を得た。
実施例1の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
[実施例2]
実施例2は、実施例1と同じシート素材を用い、シートの形状及び金型を図5に示す形状に変更したこと以外は実施例1と同様にして、シート及び成形体(厚み:3mm、断面での凹部のサイズ:広幅30mm、狭幅23mm、高さ40mm、フランジ:幅50mm×100mm)を作製した。金型の凹部側面のテーパー角度θは5°とした。
実施例2の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
[実施例3]
実施例3は、実施例1と同じシート素材を用い、図6のシート10及び11に示す形状のシートを作製し、下記の手順に従ってハイブリッド成形体を製造した。
150℃に加熱した図6の金型50及び51に示す形状の金型を開き、上記シートを金型内に図6に示すように設置した後、型締め力10MPaで型締めし、賦型した。
前記型締め後、金型の温度を250℃まで昇温した状態で、樹脂組成物を、シリンダー設定温度295℃、射出圧力30MPa、射出速度40mm/secで射出充填し、射出保圧力15MPaをかけた。射出成形工程が終了後、金型の温度をシートに含まれる熱可塑性樹脂の融点以上である320℃まで昇温後、3分間保持することにより、圧縮成形を行った。
次いで、金型を150℃に冷却し、冷却固化を行った。金型を開放し、離型後、直ちに成形体を取り出し、断面での広幅5mm、狭幅3.3mm、高さ10mmのリブを有する成形体を得た。金型の凹部側面のテーパー角度θは5°とした。
実施例3の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同じシート素材を、高剛性部分及び低剛性部分を作製せずにそのままシートとして用いた。シートを10枚重ね(厚み10mm)、平板状の成形体用の金型を用いて実施例1と同じ条件で圧縮成形し、縦200mm、横100mm、厚み3mmの平板状の成形体を得た。
比較例1の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
[比較例2]
比較例2は、実施例1と同じシート素材を、高剛性部分及び低剛性部分を作製せずにそのままシートとして用いた。シートを10枚重ね(厚み10mm)、箱形状の成形体用の金型を用いて実施例1と同じ条件で圧縮成形し、縦150mm、横150mm、深さ50mm、厚み3mmの箱形状の成形体を得た。金型の凹部側面のテーパー角度θは5°とした。
比較例2の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
[比較例3]
比較例3は、上記のシートSを用いて箱形状の成形体を作製した。
シートSを予め300℃に加熱して1分間保持した後、150℃に加熱した比較例2と同じ形状の金型に設置した。成形機(製品名:S100V−8A、東芝機械製、最大型締め力300トン)を用いて、型締め力25MPaで型締めした。
次に、型締め力を下げ、金型を80℃まで冷却して冷却固化を行い、金型を開放した。金型を離型後、直ちに成形体を取り出し、成形体を得た。
比較例3の原料組成、シート及び成形体の各物性を表1に示す。
Figure 2019130848
本発明のシートによれば、各種機械や自動車等の構造部品等、複雑な形状を有し、高レベルでの機械的物性が要求される成形体を成形することができる。
1、10、10’、11:シート
2、2a、2b、20:シートの高剛性部分
3、3a、3b、3c、30、30’、31:シートの低剛性部分
4:裁断線
5、50、51:金型
5a、50a:金型の平面形成部
5b、50b:金型の屈曲部形成部
h1:シートの低剛性部分の厚み
h2:シートの高剛性部分の厚み
w:シートの低剛性部分の幅
θ:金型のテーパー角度

Claims (9)

  1. 連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含み、高剛性部分と低剛性部分とを有することを特徴とする、シート。
  2. 平面視において、前記高剛性部分の間に挟まれて設けられた前記低剛性部分を有する、請求項1に記載のシート。
  3. 厚み方向に沿う断面において、前記低剛性部分の幅(w)に対する厚み(h1)の割合(h1/w)が0.05〜1.0であり、前記高剛性部分の厚み(h2)に対する前記低剛性部分の厚み(h1)の割合(h1/h2)が1〜5である、請求項1又は2に記載のシート。
  4. 前記低剛性部分は、前記高剛性部分と比較して、曲げ弾性率が10%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシート。
  5. 前記高剛性部分が、所定の形状の繰り返しパターンを形成する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシート。
  6. 連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートからなり、
    複数の平面部と、互いに隣接する前記平面部間に位置する屈曲部とを含み、最大衝撃強度が4.0〜7.0kNであることを特徴とする、成形体。
  7. 連続強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むシートと、熱可塑性樹脂組成物を含む基材とを含み、前記基材からなる部分の少なくとも一部が、前記シートからなる部分の少なくとも一部と一体化していることを特徴とする、成形体。
  8. 平面形成部と屈曲部形成部とを有する金型と、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシートとを用いる成形体の製造方法であり、前記シートを、前記高剛性部分が前記金型の前記平面形成部に配置され、前記低剛性部分の少なくとも一部が前記金型の前記屈曲部形成部に配置されるように設計し、前記シートを前記金型に設置して加熱プレスすることを特徴とする、成形体の製造方法。
  9. 更に、射出注入された熱可塑性樹脂組成物の少なくとも一部と前記低剛性部分の少なくとも一部とが接触するように、前記熱可塑性樹脂組成物を前記金型内に射出注入する、請求項8に記載の成形体の製造方法。
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