以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、実施の形態に係るGM冷凍機10を示す概略図である。
GM冷凍機10は、作動ガス(例えばヘリウムガス)を圧縮する圧縮機12と、作動ガスを断熱膨張により冷却するコールドヘッド14と、を備える。圧縮機12は、圧縮機吐出口12a及び圧縮機吸入口12bを有する。圧縮機吐出口12a及び圧縮機吸入口12bはそれぞれ、GM冷凍機10の高圧源及び低圧源として機能する。コールドヘッド14は膨張機とも呼ばれる。
詳しくは後述するように、圧縮機12は、圧縮機吐出口12aからコールドヘッド14に高圧(PH)の作動ガスを供給する。コールドヘッド14には作動ガスを予冷する蓄冷器15が備えられている。予冷された作動ガスは、コールドヘッド14内での膨張によって更に冷却される。作動ガスは蓄冷器15を通じて圧縮機吸入口12bに回収される。作動ガスは蓄冷器15を通るとき蓄冷器15を冷却する。圧縮機12は、回収した低圧(PL)の作動ガスを圧縮し、再びコールドヘッド14に供給する。
図示されるコールドヘッド14は単段式である。ただし、コールドヘッド14は、多段式であってもよい。
コールドヘッド14は、ガス駆動型である。よって、コールドヘッド14は、ガス圧で駆動されるフリーピストンとしての軸方向可動体16と、気密に構成され軸方向可動体16を収容するコールドヘッドハウジング18と、を備える。コールドヘッドハウジング18は、軸方向可動体16を軸方向に往復動可能に支持する。モータ駆動型のGM冷凍機とは異なり、コールドヘッド14は、軸方向可動体16を駆動するモータおよび連結機構(例えばスコッチヨーク機構)を有しない。
軸方向可動体16は、軸方向(図1において上下方向、矢印Cで示す)に往復動可能なディスプレーサ20と、ディスプレーサ20を軸方向に駆動するようにディスプレーサ20に連結された駆動ピストン22と、を備える。駆動ピストン22は、ディスプレーサ20と同軸にかつ軸方向に離れて配設されている。
コールドヘッドハウジング18は、ディスプレーサ20を収容するディスプレーサシリンダ26と、駆動ピストン22を収容するピストンシリンダ28と、を備える。ピストンシリンダ28は、ディスプレーサシリンダ26と同軸にかつ軸方向に隣接して配設されている。詳細は後述するが、ガス駆動型であるコールドヘッド14の駆動部は、駆動ピストン22とピストンシリンダ28を含んで構成されている。
また軸方向可動体16は、ディスプレーサ20が駆動ピストン22と一体に軸方向に往復動するようディスプレーサ20を駆動ピストン22に剛に連結する連結ロッド24を備える。連結ロッド24もまたディスプレーサ20および駆動ピストン22と同軸にディスプレーサ20から駆動ピストン22へと延びている。
駆動ピストン22は、ディスプレーサ20に比べて小さい寸法を有する。駆動ピストン22の軸方向長さはディスプレーサ20のそれより短く、駆動ピストン22の径もディスプレーサ20のそれより小さい。連結ロッド24の径は駆動ピストン22のそれより小さい。
ピストンシリンダ28の容積はディスプレーサシリンダ26のそれより小さい。ピストンシリンダ28の軸方向長さはディスプレーサシリンダ26のそれより短く、ピストンシリンダ28の径もディスプレーサシリンダ26のそれより小さい。
なお、駆動ピストン22とディスプレーサ20の寸法関係は上述のものに限られず、それと異なっていてもよい。同様に、ピストンシリンダ28とディスプレーサシリンダ26の寸法関係は上述のものに限られず、それと異なっていてもよい。例えば、駆動ピストン22は、連結ロッド24の先端部であってもよく、駆動ピストン22の径は連結ロッド24の径と等しくてもよい。
ディスプレーサ20の軸方向往復動は、ディスプレーサシリンダ26によって案内される。通例、ディスプレーサ20およびディスプレーサシリンダ26はそれぞれ軸方向に延在する円筒状の部材であり、ディスプレーサシリンダ26の内径はディスプレーサ20の外径に一致するか又はわずかに大きい。同様に、駆動ピストン22の軸方向往復動は、ピストンシリンダ28によって案内される。通例、駆動ピストン22およびピストンシリンダ28はそれぞれ軸方向に延在する円筒状の部材であり、ピストンシリンダ28の内径は駆動ピストン22の外径に一致するか又はわずかに大きい。
ディスプレーサ20と駆動ピストン22は連結ロッド24によって剛に連結されているので、駆動ピストン22の軸方向ストロークはディスプレーサ20の軸方向ストロークと等しく、両者はストローク全体にわたって一体に移動する。ディスプレーサ20に対する駆動ピストン22の位置は軸方向可動体16の軸方向往復動の間、不変である。
また、コールドヘッドハウジング18は、ディスプレーサシリンダ26をピストンシリンダ28に接続する連結ロッドガイド30を備える。連結ロッドガイド30はディスプレーサシリンダ26およびピストンシリンダ28と同軸にディスプレーサシリンダ26からピストンシリンダ28へと延びている。連結ロッドガイド30には連結ロッド24が貫通している。連結ロッドガイド30は連結ロッド24の軸方向往復動を案内する軸受として構成されている。
ディスプレーサシリンダ26は、連結ロッドガイド30を介してピストンシリンダ28と気密に連結されている。こうして、コールドヘッドハウジング18は、作動ガスの圧力容器として構成されている。なお連結ロッドガイド30は、ディスプレーサシリンダ26またはピストンシリンダ28のいずれかの一部であるとみなされてもよい。
第1シール部32が、連結ロッド24と連結ロッドガイド30の間に設けられている。第1シール部32は、連結ロッド24または連結ロッドガイド30のいずれか一方に装着され、連結ロッド24または連結ロッドガイド30の他方と摺動する。第1シール部32は例えば、スリッパーシールまたはOリングなどのシール部材で構成される。第1シール部32によって、ピストンシリンダ28は、ディスプレーサシリンダ26に対し気密に構成されている。こうして、ピストンシリンダ28はディスプレーサシリンダ26から流体的に隔離されており、ピストンシリンダ28の内圧とディスプレーサシリンダ26の内圧は異なる大きさをとることができる。第1シール部32が設けられているので、ピストンシリンダ28とディスプレーサシリンダ26との直接のガス流通は生じない。
ディスプレーサシリンダ26は、ディスプレーサ20によって膨張室34と室温室36に仕切られている。ディスプレーサ20は、軸方向一端にてディスプレーサシリンダ26との間に膨張室34を形成し、軸方向他端にてディスプレーサシリンダ26との間に室温室36を形成する。室温室36は圧縮室と呼ぶこともできる。膨張室34はディスプレーサ20の下死点LP1側に配置され、室温室36はディスプレーサ20の上死点UP1側に配置されている。また、コールドヘッド14には、膨張室34を外包するようディスプレーサシリンダ26に固着された冷却ステージ38が設けられている。
蓄冷器15はディスプレーサ20に内蔵されている。ディスプレーサ20はその上蓋部に、蓄冷器15を室温室36に連通する入口流路40を有する。また、ディスプレーサ20はその筒部に、蓄冷器15を膨張室34に連通する出口流路42を有する。あるいは、出口流路42は、ディスプレーサ20の下蓋部に設けられていてもよい。加えて、蓄冷器15は、上蓋部に内接する入口リテーナ41と、下蓋部に内接する出口リテーナ43と、を備える。蓄冷材は、たとえば銅製の金網でもよい。リテーナは蓄冷材よりも粗い金網でもよい。
第2シール部44が、ディスプレーサ20とディスプレーサシリンダ26の間に設けられている。第2シール部44は、例えばスリッパーシールであり、ディスプレーサ20の筒部または上蓋部に装着されている。ディスプレーサ20とディスプレーサシリンダ26とのクリアランスが第2シール部44によって封じられているので、室温室36と膨張室34との直接のガス流通(つまり蓄冷器15を迂回するガス流れ)はない。
ディスプレーサ20が軸方向に動くとき、膨張室34および室温室36は相補的に容積を増減させる。すなわち、ディスプレーサ20が下動するとき、膨張室34は狭くなり室温室36は広くなる。逆も同様である。
作動ガスは、室温室36から入口流路40を通じて蓄冷器15に流入する。より正確には、作動ガスは、入口流路40から入口リテーナ41を通って蓄冷器15に流入する。作動ガスは、蓄冷器15から出口リテーナ43および出口流路42を経由して膨張室34に流入する。作動ガスが膨張室34から室温室36に戻るときは逆の経路を通る。つまり、作動ガスは、膨張室34から、出口流路42、蓄冷器15、および入口流路40を通って室温室36に戻る。蓄冷器15を迂回してクリアランスを流れようとする作動ガスは第2シール部44によって遮断される。
ピストンシリンダ28は、駆動ピストン22を駆動するよう圧力が制御される駆動室46を備える。駆動室46は、ピストンシリンダ28の内部空間にあたる。駆動室46は、駆動ピストン22によって、上部区画46aと下部区画46bに分けられている。駆動ピストン22は、軸方向一端にてピストンシリンダ28との間に上部区画46aを形成し、軸方向他端にてピストンシリンダ28との間に下部区画46bを形成する。駆動ピストン22が軸方向に動くとき、上部区画46aおよび下部区画46bは相補的に容積を増減させる。連結ロッド24は、駆動ピストン22の下面から下部区画46bを通って連結ロッドガイド30へと延びている。さらに、連結ロッド24は、室温室36を通ってディスプレーサ20の上蓋部まで延びている。
駆動ピストン22とピストンシリンダ28とのクリアランスである第3シール部50が、駆動ピストン22とピストンシリンダ28の間に設けられている。第3シール部50は、上部区画46aと下部区画46bのガス流通に対し流路抵抗として作用する。なお第3シール部50は、このクリアランスを封じるよう駆動ピストン22の側面に装着されたスリッパーシールなどのシール部材を有してもよい。その場合、駆動室46の下部区画46bは、第1シール部32および第3シール部50によって密封されることになる。
駆動ピストン22が下動するとき下部区画46bは狭くなる。このとき下部区画46bのガスは圧縮され、圧力が高まる。下部区画46bの圧力は駆動ピストン22の下面に上向きに作用する。よって、下部区画46bは、駆動ピストン22の下動に抗するガスばね力を発生させる。下部区画46bは、ガスばね室と呼ぶこともできる。逆に、駆動ピストン22が上動するとき下部区画46bは広がる。下部区画46bの圧力は下がり、駆動ピストン22に作用するガスばね力も小さくなる。
コールドヘッド14は、使用される現場で図示の向きに設置される。すなわち、ディスプレーサシリンダ26が鉛直方向下方に、ピストンシリンダ28が鉛直方向上方に、それぞれ配置されるようにして、コールドヘッド14は縦向きに設置される。このように、冷却ステージ38を鉛直方向下方に向ける姿勢で設置されるときGM冷凍機10は冷凍能力が最も高くなる。ただし、GM冷凍機10の配置はこれに限定されない。逆に、コールドヘッド14は冷却ステージ38を鉛直方向上方に向ける姿勢で設置されてもよい。あるいは、コールドヘッド14は、横向きまたはその他の向きに設置されてもよい。
作動ガス圧力により駆動ピストン22に作用する駆動力は、駆動ピストン22が下動するとき駆動ピストン22に下向きに働く。軸方向可動体16の自重による重力も下向きに働くから、コールドヘッド14が冷却ステージ38を鉛直方向下方に向ける姿勢で設置される場合、下動時の駆動力が重力と同じ向きとなる。反対に、上動時の駆動力は重力と逆向きとなる。ガスばね室(すなわち駆動室46の下部区画46b)から駆動ピストン22に作用するガスばね力は、軸方向可動体16の上動と下動とで挙動に差異が生じることを緩和または防止するのに役立つ。
さらに、GM冷凍機10は、圧縮機12をコールドヘッド14に接続する作動ガス回路52を備える。作動ガス回路52は、ピストンシリンダ28(すなわち駆動室46)とディスプレーサシリンダ26(すなわち膨張室34及び/または室温室36)との間に圧力差を生成するよう構成されている。この圧力差によって軸方向可動体16が軸方向に動く。ピストンシリンダ28に対しディスプレーサシリンダ26の圧力が低ければ、駆動ピストン22が下動し、それに伴ってディスプレーサ20も下動する。逆に、ピストンシリンダ28に対しディスプレーサシリンダ26の圧力が高ければ、駆動ピストン22が上動し、それに伴ってディスプレーサ20も上動する。
作動ガス回路52は、バルブ部54を備える。バルブ部54は、コールドヘッドハウジング18の中に配設され、圧縮機12と配管で接続されていてもよい。バルブ部54は、コールドヘッドハウジング18の外に配設され、圧縮機12およびコールドヘッド14それぞれと配管で接続されていてもよい。
バルブ部54は、膨張室圧力切替バルブ(以下、主圧力切替バルブともいう)60と駆動室圧力切替バルブ(以下、副圧力切替バルブともいう)62を備える。主圧力切替バルブ60は、主吸気開閉バルブV1と主排気開閉バルブV2とを有する。副圧力切替バルブ62は、副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4とを有する。
作動ガス回路52は、圧縮機12をバルブ部54に接続する高圧ライン13aおよび低圧ライン13bを備える。高圧ライン13aは、圧縮機吐出口12aから延び、途中で分岐し、主吸気開閉バルブV1と副吸気開閉バルブV3に接続されている。低圧ライン13bは、圧縮機吸入口12bから延び、途中で分岐し、主排気開閉バルブV2と副排気開閉バルブV4に接続されている。
また、作動ガス回路52は、コールドヘッド14をバルブ部54に接続する主連通路64および副連通路66を備える。主連通路64は、ディスプレーサシリンダ26を主圧力切替バルブ60に接続する。主連通路64は、室温室36から延び、途中で分岐して、主吸気開閉バルブV1と主排気開閉バルブV2に接続されている。副連通路66は、駆動室46を副圧力切替バルブ62に接続する。副連通路66は、駆動室46の上部区画46aから延び、途中で分岐して、副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4に接続されている。
主圧力切替バルブ60は、圧縮機吐出口12aまたは圧縮機吸入口12bをディスプレーサシリンダ26の室温室36に選択的に連通するよう構成されている。主圧力切替バルブ60においては、主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2がそれぞれ排他的に開放される。すなわち、主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2が同時に開くことは禁止されている。なお主吸気開閉バルブV1および主排気開閉バルブV2が一時的にともに閉じられてもよい。
主吸気開閉バルブV1が開いているとき主排気開閉バルブV2は閉じられる。圧縮機吐出口12aから高圧ライン13aおよび主連通路64を通じてディスプレーサシリンダ26に作動ガスが流れる。上述のように作動ガスは室温室36から蓄冷器15を通じて膨張室34に流れる。こうして、高圧PHの作動ガスが圧縮機12から膨張室34に供給され、膨張室34は昇圧される。逆に主吸気開閉バルブV1が閉じているときは、圧縮機12から膨張室34への作動ガスの供給は停止される。
一方、主排気開閉バルブV2が開いているとき主吸気開閉バルブV1は閉じられる。まず高圧PHの作動ガスが膨張室34で膨張し減圧される。膨張室34から蓄冷器15を通じて室温室36に作動ガスが流れる。ディスプレーサシリンダ26から主連通路64および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが流れる。こうして、低圧PLの作動ガスがコールドヘッド14から圧縮機12に回収される。主排気開閉バルブV2が閉じているときは、膨張室34から圧縮機12への作動ガスの回収は停止される。
副圧力切替バルブ62は、圧縮機吐出口12aまたは圧縮機吸入口12bをピストンシリンダ28の駆動室46に選択的に連通するよう構成されている。副圧力切替バルブ62は、副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4がそれぞれ排他的に開放されるよう構成されている。すなわち、副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4が同時に開くことは禁止されている。なお副吸気開閉バルブV3および副排気開閉バルブV4が一時的にともに閉じられてもよい。
副吸気開閉バルブV3が開いているとき副排気開閉バルブV4は閉じられる。圧縮機吐出口12aから高圧ライン13aおよび副連通路66を通じてピストンシリンダ28に作動ガスが流れる。こうして、高圧PHの作動ガスが圧縮機12から駆動室46に供給され、駆動室46は昇圧される。副吸気開閉バルブV3が閉じているときは、圧縮機12から駆動室46への作動ガスの供給は停止される。
一方、副排気開閉バルブV4が開いているとき副吸気開閉バルブV3は閉じられる。駆動室46から副連通路66および低圧ライン13bを通じて圧縮機吸入口12bに作動ガスが回収され、駆動室46は低圧PLに降圧される。副排気開閉バルブV4が閉じているときは、駆動室46から圧縮機12への作動ガスの回収は停止される。
このようにして、主圧力切替バルブ60は、高圧PHと低圧PLの周期的な圧力変動を膨張室34に生成する。また、副圧力切替バルブ62は、駆動室46に高圧PHと低圧PLの周期的な圧力変動を生成する。
副圧力切替バルブ62は、駆動ピストン22がディスプレーサ20の軸方向往復動を駆動するように駆動室46の圧力を制御するように構成されている。典型的には、駆動室46での圧力変動は、膨張室34での圧力変動と同じ周期でほぼ逆の位相で生成される。膨張室34が高圧PHのとき駆動室46は低圧PLとなり、駆動ピストン22はディスプレーサ20を上動させることができる。膨張室34が低圧PLのとき駆動室46は高圧PHとなり、駆動ピストン22はディスプレーサ20を下動させることができる。
バルブ部54は、ロータリーバルブの形式をとってもよい。この場合、一群のバルブ(V1〜V4)がバルブ部54に組み込まれており、同期して駆動される。バルブ部54は、バルブ本体(またはバルブステータ)に対するバルブディスク(またはバルブロータ)の回転摺動によってバルブ(V1〜V4)が適正に切り替わるよう構成されている。一群のバルブ(V1〜V4)は、GM冷凍機10の運転中に同一周期で切り替えられ、それにより4つの開閉バルブ(V1〜V4)は周期的に開閉状態を変化させる。4つの開閉バルブ(V1〜V4)はそれぞれ異なる位相で開閉される。
GM冷凍機10は、バルブ部54を回転させるようバルブ部54に連結された回転駆動源56を備えてもよい。回転駆動源56はバルブ部54と機械的に連結される。回転駆動源56は例えばモータである。ただし、回転駆動源56は、軸方向可動体16には機械的に接続されていない。また、GM冷凍機10は、バルブ部54を制御する制御部58を備えてもよい。制御部58は、回転駆動源56を制御してもよい。
ある実施形態においては、一群のバルブ(V1〜V4)は、複数の個別に制御可能なバルブの形式をとってもよい。各バルブ(V1〜V4)は、電磁開閉弁であってもよい。この場合、回転駆動源56が設けられるのではなく、各バルブ(V1〜V4)は、制御部58に電気的に接続される。制御部58は、各バルブ(V1〜V4)の開閉を制御してもよい。
また、GM冷凍機10は、副圧力切替バルブ62と並列に駆動室に接続された中間圧力源100を備える。中間圧力源100は、駆動室46との間に相互に作動ガスが流れることのできるように駆動室46に接続されている。中間圧力源100は、分岐点68にて副連通路66から分岐している。分岐点68は、副連通路66上で副圧力切替バルブ62と駆動室46の中間に位置する。代案として、中間圧力源100は、副連通路66を介することなく、駆動室46に接続されていてもよい。
このようにして、中間圧力源100は、副連通路66を介して(または副連通路66を介さずに)駆動室46に連通している。中間圧力源100は、ディスプレーサシリンダ26、すなわち膨張室34および室温室36、および主連通路64には連通していない。また、中間圧力源100は、副圧力切替バルブ62を介して高圧ライン13aおよび低圧ライン13bに接続されるにすぎず、高圧ライン13aおよび低圧ライン13bにも直接連通していない。
中間圧力源100は、駆動室46の吸気終了の時点、すなわち副吸気開閉バルブV3の閉鎖時点において、中間圧力源100の圧力が駆動室46の圧力を下回るように構成されている。また、中間圧力源100は、駆動室46の排気終了の時点、すなわち副排気開閉バルブV4の閉鎖時点において、中間圧力源100の圧力が駆動室46の圧力を上回るように構成されている。
より具体的には、中間圧力源100は、駆動室46での高圧PHと低圧PLの周期的な圧力変動の間、高圧PHと低圧PLとの中間圧を有する。中間圧力源100は、駆動室46での周期的な圧力変動の間、高圧PHと低圧PLとの中間圧を維持するように構成されている。
よって、中間圧力源100は、圧縮機12とは別に設けられた補助的なガス貯留槽として、副吸気開閉バルブV3の閉鎖の直後に駆動室46から作動ガスを予備的に回収することができる。また、中間圧力源100は、補助的なガス貯留槽として、副排気開閉バルブV4の閉鎖の直後に駆動室46に作動ガスを予備的に供給することができる。
一例として、中間圧力源100は、副圧力切替バルブ62と並列に駆動室46に接続された流路抵抗部材102と、流路抵抗部材102を介して駆動室46に接続されたバッファ容積104と、を備える。流路抵抗部材102は、バッファ容積104と分岐点68の間に接続されている。
流路抵抗部材102は、駆動室46での周期的な圧力変動に対しバッファ容積104の圧力(以下、バッファ圧ともいう)の変動を遅らせる働きをもつ要素であり、例えばオリフィスである。流路抵抗部材102は、駆動室46が高圧PHのときバッファ容積104の圧力がそれより低くなり、駆動室46が低圧PLのときバッファ容積104の圧力がそれより高くなるように、駆動室46とバッファ容積104との間に圧力差を形成するように設計されている。流路抵抗部材102は、流量制御バルブまたはそのほか流路抵抗を与える任意の部材であってもよい。
バッファ容積104は、高圧PHと低圧PLとの間の中間圧の作動ガスを貯留するよう構成されている。バッファ容積104は、例えばバッファタンクとして構成されている。バッファ容積104の形状は任意である。中間圧は例えば、高圧PHと低圧PLの平均圧PMであってもよい。このようにすれば、高圧PHと低圧PLのそれぞれと、より大きい差圧を生成することができる。中間圧は、高圧PHと低圧PLとの間の任意の圧力であってもよい。
副吸気開閉バルブV3が開いているとき、駆動室46だけでなくバッファ容積104にも高圧PHの作動ガスが流入する。しかし、流路抵抗部材102が設けられているので、バッファ容積104の圧力増加の程度は駆動室46に比べて小さくなる。よって、副吸気開閉バルブV3が閉じられたとき、バッファ容積104の圧力は、駆動室46の圧力を下回る。また、副排気開閉バルブV4が開いているとき、駆動室46からだけでなくバッファ容積104からも作動ガスが流出するが、流路抵抗部材102により、バッファ容積104の圧力減少の程度は駆動室46に比べて小さくなる。よって、副排気開閉バルブV4が閉じられたとき、バッファ容積104の圧力は、駆動室46の圧力を上回る。このようにして、直列接続された流路抵抗部材102とバッファ容積104との組み合わせは、駆動室46の中間圧力源100として機能する。
バッファ容積104は、駆動室46に比べて容積が十分に大きく、そのため、バッファ圧は、GM冷凍機10の運転中に理想的には一定に維持される(中間圧、例えば高圧PHと低圧PLの平均圧PMに維持される)。実際にはバッファ容積104の容積は有限であり、バッファ容積104の圧力は、駆動室46の圧力と副圧力切替バルブ62の開閉状態に応じていくらか変動するが、それでも概ね一定に維持される(平均圧PMを含む中間圧ゾーンに維持される)。
バッファ容積104は、一例として、駆動室46の2倍以上の容積を有してもよい。このようにすれば、バッファ容積104の圧力変動を低減することができる。副吸気開閉バルブV3の開放に伴うバッファ容積104の過剰な昇圧、及び、副排気開閉バルブV4の開放に伴う過剰な降圧を避けることができる。また、GM冷凍機10の大型化を抑制するために、バッファ容積104は、駆動室46の10倍以下の容積を有してもよい。このような観点から、バッファ容積104は、駆動室46の例えば3倍から7倍の容積、例えば約5倍の容積を有してもよい。
バッファ容積104は、コールドヘッドハウジング18に設置されていてもよい。あるいは、バッファ容積104は、コールドヘッドハウジング18から離れて設置されていてもよい。
図2は、図1に示すGM冷凍機10のバルブタイミングと圧力変動を例示する図である。図2の上部には、各バルブ(V1〜V4)のバルブタイミングをGM冷凍機10の冷凍サイクルの一周期にわたって示し、図2の下部には、コールドヘッド14における圧力変動を示す。GM冷凍機10の冷凍サイクルの一周期は、第1期間T1、第2期間T2、第3期間T3、および第4期間T4の4つの期間に区分けされる。第2期間T2は第1期間T1に後続し、第3期間T3は第2期間T2に後続し、第4期間T4は第3期間T3に後続し、冷凍サイクルの次の一周期の第1期間T1が第4期間T4に後続する。第1期間T1から第4期間T4における膨張室34、駆動室46、およびバッファ容積104の圧力が示されている。バルブタイミングの図示において実線はバルブが開いていることを示し、破線はバルブが閉じていることを示す。
ディスプレーサ20が下死点LP1またはその近傍の位置にあるとき、GM冷凍機10の吸気工程が開始される。図示される第1期間T1と第2期間T2が、GM冷凍機10の吸気工程にあたる。主吸気開閉バルブV1は開かれ、主排気開閉バルブV2は閉じている。膨張室34は、高圧PHとなる。
膨張室34への吸気と同時に駆動室46の排気が行われる。第1期間T1においては副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4がともに閉じている。直前の第4期間T4で駆動室46は高圧PHに昇圧されているので、第1期間T1の開始時点で駆動室46の圧力(PH)はバッファ容積104の圧力(PM)より高い。そのため駆動室46からバッファ容積104へと作動ガスが排出される。第1期間T1において駆動室46はバッファ容積104の圧力へと降圧される。GM冷凍機10の吸気工程の途中で第1期間T1から第2期間T2に移行する。副吸気開閉バルブV3は閉じたままであるが、副排気開閉バルブV4が開かれる。そのため第2期間T2においては駆動室46から圧縮機12へと作動ガスが排出され、駆動室46は低圧PLへと降圧される。
上述のように流路抵抗部材102がバッファ容積104と副排気開閉バルブV4との間に設けられているので、バッファ容積104の圧力は、概ね一定に維持される。第2期間T2においてバッファ容積104の圧力減少は、駆動室46に比べて抑制される。
したがって、吸気工程において駆動ピストン22には駆動室46と膨張室34との差圧による駆動力が上向きに作用する。第1期間T1には差圧PH−PMに比例する駆動力が駆動ピストン22に作用し、第2期間T2には差圧PH−PLに比例する駆動力が駆動ピストン22に作用する。よって、ディスプレーサ20は駆動ピストン22とともに、下死点LP1から上死点UP1に向けて動く。こうして、膨張室34の容積が増加されるとともに高圧ガスで満たされる。
ディスプレーサ20が上死点UP1またはその近傍の位置にあるとき、GM冷凍機10の排気工程が開始される。図示される第3期間T3と第4期間T4が、GM冷凍機10の排気工程にあたる。主排気開閉バルブV2は開かれ、主吸気開閉バルブV1は閉じている。高圧ガスは膨張室34で膨張し冷却される。膨張したガスは、蓄冷器15を冷却しながら室温室36を経て圧縮機12に回収される。膨張室34は、低圧PLとなる。
膨張室34からの排気と同時に駆動室46への吸気が行われる。第3期間T3においては副吸気開閉バルブV3と副排気開閉バルブV4がともに閉じている。第3期間T3の開始時点で駆動室46の圧力(PL)はバッファ容積104の圧力(PM)より低い。そのためバッファ容積104から駆動室46へと作動ガスが供給される。第3期間T3において駆動室46はバッファ容積104の圧力へと昇圧される。GM冷凍機10の排気工程の途中で第3期間T3から第4期間T4に移行する。副排気開閉バルブV4は閉じたままであるが、副吸気開閉バルブV3が開かれる。そのため第4期間T4においては圧縮機12から駆動室46へと作動ガスが供給され、駆動室46は高圧PLへと昇圧される。
上述のように流路抵抗部材102がバッファ容積104と副吸気開閉バルブV3との間に設けられているので、バッファ容積104の圧力は、概ね一定に維持される。第4期間T4においてバッファ容積104の圧力増加は、駆動室46に比べて抑制される。
したがって、排気工程において駆動ピストン22には駆動室46と膨張室34との差圧による駆動力が下向きに作用する。第3期間T3には差圧PM−PLに比例する駆動力が駆動ピストン22に作用し、第4期間T4には差圧PH−PLに比例する駆動力が駆動ピストン22に作用する。よって、ディスプレーサ20は駆動ピストン22とともに、上死点UP1から下死点LP1に向けて動く。こうして、膨張室34の容積が減少されるとともに低圧ガスは排出される。
GM冷凍機10はこのような冷凍サイクル(すなわちGMサイクル)を繰り返すことで、冷却ステージ38を冷却する。それにより、GM冷凍機10は、冷却ステージ38に熱的に結合された超伝導装置またはその他の被冷却物(図示せず)を冷却することができる。
図において同時に描かれているバルブタイミングは、厳密に同時である必要はなく、いくらかずれていてもよい。例えば、主吸気開閉バルブV1の閉鎖と副排気開閉バルブV4の閉鎖が同時であることは必須ではない。また、主排気開閉バルブV2の閉鎖と副吸気開閉バルブV3の閉鎖が同時であることは必須ではない。
実施の形態に係るGM冷凍機10では、中間圧力源100が、副圧力切替バルブ62と並列に駆動室46に接続され、駆動室46での周期的な圧力変動の間、高圧PHと低圧PLとの中間圧を有する。中間圧力源100を補助的なガス源として利用できるので、圧縮機12から駆動室46へ供給する仕事が低減され、圧縮機12の負荷を低減することができる。これにより圧縮機効率が高まり、ガス駆動型GM冷凍機のシステム全体の効率が向上する。
流路抵抗部材102は副圧力切替バルブ62と並列に前記駆動室に接続され、バッファ容積104は流路抵抗部材102を介して駆動室46に接続されている。このような構成により、圧縮機12からの作動ガス供給により駆動室46へと投入された仕事の一部をバッファ容積104に回収し、回収された仕事を次回の冷凍サイクルで再利用することが可能となる。
典型的なガス駆動型GM冷凍機では通例、主吸気開閉バルブV1の開放の間ずっと副排気開閉バルブV4も開いている。また、主排気開閉バルブV2の開放の間ずっと副吸気開閉バルブV3も開いている。
これに対して、実施の形態に係るGM冷凍機10では、上述のようにバッファ容積104と流路抵抗部材102が設けられているので、副排気開閉バルブV4を開くタイミングを主吸気開閉バルブV1の開放から遅らせ、かつ副排気開閉バルブV4の開放時間を主吸気開閉バルブV1に比べて短くすることができる。また、副吸気開閉バルブV3を開くタイミングを主排気開閉バルブV2の開放から遅らせ、かつ副吸気開閉バルブV3の開放時間を主排気開閉バルブV2に比べて短くすることができる。
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。