JP2019127638A - 係留チェーン用鋼および係留チェーン - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性に優れた係留チェーン用鋼および係留チェーンを提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.06〜0.45%、Si:0.6%以下、Mn:0.3〜2.5%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Cr:0.1%を超えて7.0%以下、Sn:0〜0.5%、Sb:0〜0.5%、Cu:0〜1.0%、Ni:0〜5.0%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%、V:0〜1.0%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、REM:0〜0.01%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、B:0〜0.01%、残部:Feおよび不純物であり、[0.01≦Sn+Sb]および[1−1.31Cr−3.54Sn−3.03Sb≦0.80]を満足する、係留チェーン用鋼および該係留チェーン用鋼を用いた係留チェーン。【選択図】なし

Description

本発明は、係留チェーン用鋼および係留チェーンに関する。
係留チェーンは、海水環境に曝されるため腐食が激しく、長期間使用の際には腐食が問題となる場合がある。ドックでの点検時に係留チェーンの径が計測されるが、元の径に対して12%以上減少している場合には、新たなチェーンに切り替えをしなければならないという基準が船級規則により定められている。
一般的には、船舶の寿命が20年程度であるのに対して、係留チェーンの寿命は15年程度である。このため、現状、船を廃船にするまでに、係留チェーンの交換を1度は行なう必要がある。このような状況から、係留チェーンに用いられる金属材料には、耐食性向上による寿命延長が望まれている。
特開昭61−210153号公報
船舶の係留チェーンは、従来、JIS G 3105(2004)に規定されているSBC300、SBC490、SBC690といった産業用鋼材が用いられている。また、これら鋼材に加え、例えば、希土類等を任意元素として添加することで、材料特性を向上させた鋼材についても用いられる場合がある(特許文献1参照)。
しかしながら、これら鋼材では、上述のように船舶の寿命に対して係留チェーンの耐久年数が短く、所望する耐食性が十分得られていないという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決し、耐食性に優れた係留チェーン用鋼および係留チェーンを提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の係留チェーン用鋼および係留チェーンを要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.45%、
Si:0.6%以下、
Mn:0.3〜2.5%、
P:0.1%以下、
S:0.05%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下、
Cr:0.1%を超えて7.0%以下、
Sn:0〜0.5%、
Sb:0〜0.5%、
Cu:0〜1.0%、
Ni:0〜5.0%、
Mo:0〜1.0%、
W:0〜1.0%、
V:0〜1.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.01%、
Nb:0〜0.1%、
Ti:0〜0.1%、
B:0〜0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)および(ii)を満足する、係留チェーン用鋼。
0.01≦Sn+Sb ・・・(i)
1−1.31Cr−3.54Sn−3.03Sb≦0.80 ・・・(ii)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜5.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
W:0.01〜1.0%、
V:0.01〜1.0%、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%、および
REM:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載の係留チェーン用鋼。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、および
B:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の係留チェーン用鋼。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼を用いた係留チェーン。
(5)表面に防食被覆層を備えた上記(4)に記載の係留チェーン。
本発明によれば、優れた耐食性を有する係留チェーン用鋼および係留チェーンを得ることができる。
本発明者は、係留チェーンに用いられる鋼材の耐久年数が船舶寿命に比べて短く、所望する耐食性を得られない要因について検討を行なった。
鋼材の耐食性能は、その鋼材が使用される腐食環境により大きく変化する。すなわち、特定の腐食環境において耐食性に優れていると評価される鋼材であっても、異なる腐食環境においては耐食性を発揮することができない場合がある。このため、本発明者は、まず係留チェーンの使用環境について調査を行なった。
係留チェーンは港湾沖で船舶の係留に使用されるため、その全長は数百mに及ぶ場合もある。そして、係留チェーンは、船舶の航行時にデッキ上に引き上げられ、その一部はデッキ上に据え置かれた状態となるが、その他の大部分はチェーンロッカーと呼ばれる格納庫に保管された状態となる。
船舶のデッキ上は、屋外であることから、大気環境下で風雨に曝され、かつ海水飛沫が頻繁にかかる環境である。このような環境においては、係留チェーンの表面は、海水飛沫により濡れ、その後、乾燥するという過程を頻繁に繰り返す。その結果、腐食が激しく進行する。
一方、チェーンロッカー内は、その値に変動はあるものの、相対湿度が50%RH程度を下回ることがない環境である。デッキ上における相対湿度が概ね25RH%程度であることからも分かるように、チェーンロッカー内は、比較的湿度が高い環境であるといえる。ここで、相対湿度が30RH%程度以上であれば、海水中に含まれる塩化マグネシウム等の塩化物が大気中の水分を取り込む、いわゆる潮解と呼ばれる現象が生じると考えられる。
このため、係留チェーンに付着した塩化マグネシウム等が大気中の水分を取り込むことで、その表面では、わずかに湿った状態が維持され、常時、薄い水膜(以下の説明において、「薄膜水」ともいう。)が形成される。また、表面に形成した薄膜水内では、海水中に含まれる塩化物が濃化する。このように、塩化物が濃化した環境において鋼材が腐食すると、腐食により鉄が溶出した箇所で、鉄イオンの加水分解反応が生じる。その結果、鋼材表面のpHが低下し、腐食がさらに進行する。
したがって、係留チェーンはデッキ上で据え置かれていても、チェーンロッカーに保管されていても、厳しい腐食環境で使用されていることが明らかになった。このため、係留チェーンには船舶のデッキ上およびチェーンロッカー内の両方の環境に対応しうる耐食性が必要である。
そこで、本発明者はデッキ上の環境とチェーンロッカー内の環境とを再現し、耐食性の評価を行なう必要があると考察した。そして、上記腐食試験方法により、鋼材の耐食性を評価することで、係留チェーン用鋼として好適な本発明鋼を得るに至った。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.06〜0.45%
Cは、強度を確保するために必要な元素である。係留チェーンとしての強度を確保するために、C含有量は0.06%以上とする。しかしながら、C含有量が0.45%を超えると、母材および溶接熱影響部の靭性が著しく低下する。このため、C含有量は、0.45%以下とする。C含有量は0.07%以上であるのが好ましく、0.08%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.42%以下であるのが好ましく、0.40%以下であるのがより好ましい。
Si:0.6%以下
Siは、脱酸のために必要な元素であるが、0.6%を超えて含有させると溶接熱影響部の靭性が低下する。このため、Si含有量は0.6%以下とする。なお、靭性の観点からSi含有量はより低いほうが望ましい。この場合、Si含有量は0.55%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、Si含有量を過度に低減すると、脱酸の効果が十分に得られなくなるため、Si含有量は0.01%以上であるのが好ましい。
Mn:0.3〜2.5%
Mnは、強度を確保するために必要な元素である。強度を確保するために、Mn含有量は0.3%以上とする。しかしながら、Mnを、2.5%を超えて含有させると、靭性が著しく低下する。このため、Mn含有量は2.5%以下とする。Mn含有量は0.35%以上であるのが好ましく、0.4%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は2.4%以下であるのが好ましく、2.3%以下であるのがより好ましい。
P:0.1%以下
Pは不純物として粒界に偏析し、靭性を低下させる元素である。そして、P含有量が0.1%を超えると靭性が著しく低下する。このため、P含有量は0.1%以下とする。P含有量は少なければ少ないほど好ましい。P含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。
S:0.05%以下
Sは不純物として鋼中に存在し、MnSを形成する。このMnSは腐食の起点となり、耐食性を低下させる。このため、S含有量は0.05%以下とする。S含有量は少なければ少ないほど好ましい。S含有量は0.045%以下であるのが好ましく、0.04%以下であるのがより好ましい。
Al:0.1%以下
Alは脱酸剤として必要な元素であり、含有させることで脱酸効果が得られる。また、AlはNと結合し、AlNを形成することで、結晶粒を微細化させる。しかしながら、Alを、0.1%を超えて含有させると靭性の低下を招く。このため、Al含有量は0.1%以下とする。なお、Al含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.06%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を安定して得るために、Al含有量は0.005%以上であるのが好ましい。
N:0.01%以下
Nは、Alと結合しAlNを形成することにより結晶粒を微細化させる効果がある。しかしながら、N含有量が0.01%を超えると靭性が低下する。このため、N含有量は0.01%以下とする。N含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、N含有量は0.001%以上であるのが好ましい。
Cr:0.1%を超えて7.0%以下
Crは、鋼材のコスト上昇を抑えつつ強度を高める作用を有する。また、Crは海水飛沫または降雨などによる濡れ環境において、鋼の溶出を著しく抑制する効果を有する。このため、Cr含有量は0.1%超とする。しかしながら、Cr含有量が7.0%を超えると靭性が著しく低下するとともに溶接性も低下する。このため、Cr含有量は7.0%以下とする。Cr含有量は0.2%以上であるのが好ましく、0.3%以上であるのがより好ましい。また、Cr含有量は6.5%以下であるのが好ましく、6.0%以下であるのがより好ましい。
Sn:0〜0.5%
Sb:0〜0.5%
0.01≦Sn+Sb ・・・(i)
SnおよびSbは、薄膜水の形成により塩化物が濃化し腐食界面のpHが低下する環境で、イオンとして溶出し、インヒビター作用により鋼の溶解反応を著しく抑制する。このため、SnおよびSbの合計含有量は0.01%以上とする。
しかしながら、Sn含有量が0.5%を超えるか、Sb含有量が0.5%を超えると靭性が著しく低下する。このため、SnおよびSbの含有量は、それぞれ0.5%以下とする。SnおよびSbの含有量は、それぞれ0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。また、Sn含有量は0.4%以下であるのが好ましい。さらに、Sb含有量は0.4%以下であるのが好ましく、0.3%以下であるのがより好ましい。
本発明に係る係留チェーン用鋼は、上記成分に加え、Cu、Ni、Mo、W、V、Ca、Mg、REMから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Cu:0〜1.0%
Cuは、鋼の溶出を抑制し、耐食性を向上させる効果を有する。また、腐食により生成した腐食生成物の保護性が高いため、長期にわたり高い耐食性を保持する効果も有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が1.0%を超えると効果が飽和するばかりでなく靭性が低下する。このため、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.6%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Ni:0〜5.0%
Niは薄膜水形成環境での鋼の溶出を著しく抑制し耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が5.0%を超えると効果が飽和するばかりでなく、鋼材のコストが上昇する。このため、Ni含有量は5.0%以下とする。Ni含有量は4.5%以下であるのが好ましく、4.0%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ni含有量は0.01%以上とするのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.1%以上であるのがさらに好ましい。
Mo:0〜1.0%
Moは、強度を高める作用を有する。また、Moは腐食環境において溶出したMoがモリブデン酸イオンを形成し、インヒビター作用により鋼の溶出を抑制する作用を有する。この結果、Moは耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。
しかしながら、Mo含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が著しく低下する。このため、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mo含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
W:0〜1.0%
WもMoと同様の作用を有する。腐食環境において溶出したWがタングステン酸イオンを形成することで、鋼の溶出を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、W含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、W含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
V:0〜1.0%
Vは腐食環境において溶出したVがバナジン酸イオンを形成することにより鋼の溶出を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。
しかしながら、V含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、V含有量は1.0%以下とする。V含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Ca:0〜0.01%
Caは、イオンとして溶出し、pHの低下が生じた腐食界面においてpHを上昇させる。この結果、腐食が抑制されるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ca含有量が0.01%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、Ca含有量は0.01%以下とする。Ca含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
Mg:0〜0.01%
Mgは、Caと同様、腐食界面のpHを上昇させることで腐食を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が0.01%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性も低下する。このため、Mg含有量は0.01%以下とする。Mg含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
REM:0〜0.01%
REMは、CaおよびMgと同様、腐食界面のpHを上昇させることで腐食を抑制する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REM含有量が0.01%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性も低下する。このため、REM含有量は0.01%以下とする。REM含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。
一方、上記効果を得るためには、REM含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
ここで、本発明において、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
また、本発明に係る係留チェーン用鋼には、上記成分のほかに、さらにNb、Ti、Bから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Nb:0〜0.1%
Nbは、強度を高める作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が0.1%を超えると靭性が低下する。このため、Nb含有量は0.1%以下とする。Nb含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.003%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
Ti:0〜0.1%
Tiは、Nと結合してTiNを形成することにより溶接熱影響部の靭性を向上させる。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.1%を超えると効果が飽和する。このため、Ti含有量は0.1%以下とする。Ti含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましく、0.01%以上であるのがさらに好ましい。
B:0〜0.01%
Bは、強度を高める作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.01%を超えると靭性が低下する。このため、B含有量は0.01%以下とする。B含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
本発明の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
上述のように、本発明では、デッキ上での使用に対する耐食性を担保するため、Cr含有量を適切に制御する必要がある。また、チェーンロッカー内での使用に対する耐食性を担保するため、SnおよびSbの含有量を適切に制御する必要がある。このため、本発明の成分系は、これら元素の相互作用も鑑み、下記式(ii)を満足する必要がある。
1−1.31Cr−3.54Sn−3.03Sb≦0.80・・・(ii)
上記の式(ii)は本発明の鋼の耐食性能を表すものであり、式(ii)満足する場合、係留チェーン用鋼として十分な耐食性を確保できる。一方、式(ii)を満足しない場合は耐食性が十分でなく、係留チェーンとして長期の使用が困難である。なお、式(ii)の左辺値は0.5以下であるのが好ましく、0以下であるのがより好ましい。
但し、上記式(ii)中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
なお、本発明では、鋼を係留チェーンの形状に成形した後、表面に防食被覆(皮膜)を施してもよい。すなわち、係留チェーンの表面に防食被覆層が形成することになる。防食被覆層としては、その種類は限定されず、一般的なものを用いればよい。具体的には、Znめっき、Alめっき、Zn−Alめっき等に例示される防食めっき皮膜、Zn溶射、Al溶射等に例示される金属溶射皮膜、ビニルブチラール系、エポキシ系、ウレタン系、フタル酸系、ふっ素系、油性塗料、瀝青質系等に例示される一般の防食塗装皮膜等が挙げられる。
2.製造方法
上記の化学組成を有する鋼塊を連続鋳造法により製造する。鋼塊は、造塊法によりインゴットにしてもよい(JIS G 0203(2009)参照。)。続いて、得られた鋼塊を800〜1250℃の範囲で均熱、熱間圧延(熱間棒鋼圧延)を施し、棒鋼とする。本発明では棒鋼の径は特に限定されないが、例えば、50〜120mmの範囲とする。また、熱間圧延のうちの仕上げ圧延は、800℃以上で行なう。続いて、得られた棒鋼を室温まで、空冷または放冷により冷却する。
なお、本発明では、上記の冷却後、熱処理を行なってもよい。さらに、熱処理後、ショットブラスト等の表面処理を施してもよい。そして、上記のようにして製造した棒鋼を素材として、600〜1100℃で加熱後に曲げ加工し、フラッシュバット溶接にて接合し接合部のバリ取りを行い、リンクを製造する。この工程を繰り返し、所定の長さのチェーンとする。なお、必要に応じスタッドを溶接により取り付けることができる。その後、焼入れ、焼戻しを行う。焼入れ処理の温度は800〜1100℃、時間は10分以上とし、その後水冷により冷却する。焼戻し処理の温度は450〜750℃、時間は10分以上とし、その後水冷により冷却する。これらの工程によって所望の形状を有する係留用チェーンを製造する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製後、連続鋳造して得た鋼塊を分塊圧延して鋼片とした。次いで、その鋼片を熱間圧延(熱間棒鋼圧延)に供した。熱間圧延においては、鋼片の均熱温度を1250℃とし、素材を直径25mmまで1050℃以上で圧延し、室温まで空冷した。
続いて、得られた棒鋼に熱処理を実施した。熱処理では、900℃、15分の焼入れ処理、および水冷を行ない、その後638℃、20分の焼戻し処理、および水冷を行なった。前述の熱処理後、直径20mm×100mmの試験片を採取し、試験片の表面にショットブラストを施した。
その後、試験片を下記に記載の腐食試験に供した。腐食試験においては、チェーンロッカー内における腐食環境を模擬した腐食試験1と、デッキ上における腐食環境を模擬した腐食試験2とを実施した。なお、腐食試験1は、特願2017−240413に記載された方法に準拠した試験とし、腐食試験2では、後述する乾燥湿潤工程における湿度を、腐食試験1と異なるものとした。
具体的には、腐食試験では、海水浸漬工程と乾燥湿潤工程とからなる処理を1サイクルとして、8サイクル(約8週間)実施した。海水浸漬工程では、試験片を1週間(7日)に1度、35℃の人工海水に15分浸漬させた。試験に用いた人工海水の組成は、NaCl:2.45%、MgCl:1.11%、NaSO:0.41%、CaCl:0.15%、KCl:0.07%、NaHCO:0.02%、KBr:0.01%であった。なお、上記の人工海水の組成の%は、質量%を示している。
続いて、乾燥湿潤工程では、湿度の低い状態である乾燥工程と湿度の高い状態である湿潤工程との二つの工程を実施した。腐食試験1では、チェーンロッカー内の環境を模擬するため、乾燥湿潤工程を以下のような条件で実施した。具体的には、乾燥工程では温度が60℃、相対湿度が65%RHの環境で4時間保持し、湿潤工程では、温度が60℃、相対湿度が90%RHの環境で4時間保持した。
一方、腐食試験2では、デッキ上での環境を模擬するため、乾燥湿潤工程を以下のような条件で実施した。具体的には、乾燥工程では温度が60℃、相対湿度が25%RHの環境で4時間保持し、湿潤工程では温度が60℃、相対湿度が100%RHの環境で4時間保持した。
腐食試験1および2の両方で、海水浸漬工程の後、次の海水浸漬工程に至るまでの間、乾燥工程と湿潤工程とを行なう処理を繰り返した。この場合、乾燥工程と湿潤工程とを行なう工程を1回とすると、1日の間で上記処理が3回行なわれることとなる。
上記の腐食試験の後、ノギスで試験片の径の減少量を測定した。試験片の測定は、上端および下端から30mmの位置と、中央部すなわち上端から50mmの位置で測定を行なった。加えて、上述の位置それぞれにおいて、その位置から直交する位置の径の大きさについても同様に測定を行なった。つまり、一つの試料において6箇所の位置で径の大きさを測定し、その平均値から腐食試験後に径の大きさを算出した。続いて、元の径の大きさと腐食試験後の径の大きさとの差を径の減少量(mm)とした。なお、本発明においては、腐食試験1および2において、径の減少量が0.9mm以下である場合に、係留チェーンとして十分な耐食性を有すると判断した。
上記の試験結果を表1に示す。
Figure 2019127638
表1に示すように、試験No.1〜20は、本発明で規定する組成および式(i)を満足し、かつ式(ii)を満足するため、耐食性が良好であった。一方、試験No.21〜23は、組成または式(ii)を満足しないため、耐食性が劣る結果となった。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.45%、
    Si:0.6%以下、
    Mn:0.3〜2.5%、
    P:0.1%以下、
    S:0.05%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下、
    Cr:0.1%を超えて7.0%以下、
    Sn:0〜0.5%、
    Sb:0〜0.5%、
    Cu:0〜1.0%、
    Ni:0〜5.0%、
    Mo:0〜1.0%、
    W:0〜1.0%、
    V:0〜1.0%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、
    REM:0〜0.01%、
    Nb:0〜0.1%、
    Ti:0〜0.1%、
    B:0〜0.01%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記式(i)および(ii)を満足する、係留チェーン用鋼。
    0.01≦Sn+Sb ・・・(i)
    1−1.31Cr−3.54Sn−3.03Sb≦0.80 ・・・(ii)
    但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.01〜1.0%、
    Ni:0.01〜5.0%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    W:0.01〜1.0%、
    V:0.01〜1.0%、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.01%、および
    REM:0.0001〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載の係留チェーン用鋼。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.001〜0.1%、
    Ti:0.001〜0.1%、および
    B:0.0001〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1または2に記載の係留チェーン用鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼を用いた係留チェーン。
  5. 表面に防食被覆層を備えた請求項4に記載の係留チェーン。
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