以下、図面を参照して、X線管制御装置、X線画像診断装置及びX線管制御方法の実施形態について詳細に説明する。なお、X線画像診断装置は、X線管から発生したX線をX線検出器により検出し、検出したX線量に応じた信号に基づいて、画像データを生成する装置である。例えば、X線画像診断装置は、X線診断装置やX線CT(Computed Tomography)装置等である。以下では、一例として、X線管制御装置を含んだX線診断装置について説明する。また、以下では、信号に基づく画像データの一例として、X線画像データについて説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、X線高電圧装置11と、X線管12と、絞り装置13と、フィルタ14と、天板15と、Cアーム16と、X線検出器17と、制御装置18と、メモリ19と、ディスプレイ20と、入力インターフェース21と、処理回路22とを備える。
X線高電圧装置11は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線の発生に用いる高電圧をX線管12に供給する。例えば、X線高電圧装置11は、高電圧を発生する高電圧発生装置を含む。ここで、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。以下では、高電圧発生装置が、インバータ方式である場合を例として説明する。
また、X線高電圧装置11は、X線管12によるX線の発生を制御するX線管制御装置113を含む。X線管制御装置113は、X線管12のフィラメント121に供給する電流(フィラメント電流)を制御することで、X線管12によるX線の発生を制御する。なお、X線管制御装置113については後に詳述する。
X線管12は、熱電子を発生するフィラメント121と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極122とを有する真空管である。X線管12は、X線高電圧装置11から供給される高電圧を用いて、加熱したフィラメント121から陽極122に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生する。例えば、フィラメント121は、タングステン製の金属線である。また、陽極122は、局部加熱による溶解を回避するため、後述する処理回路116による制御の下、回転する。
絞り装置13は、X線管12により発生されたX線の照射範囲を絞り込む。例えば、絞り装置13は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これらの絞り羽根をスライドさせることで、X線を絞り込んで被検体Pに照射させる。ここで、絞り羽根は、鉛などで構成された板状部材であり、X線の照射範囲を調整するためにX線管12のX線照射口付近に設けられる。
フィルタ14は、X線管12から曝射されたX線を調節する。例えば、フィルタ14は、被検体Pに対する被曝線量の低減とX線画像データの画質向上を目的として、その材質や厚みによって透過するX線の線質を変化させ、被検体Pに吸収されやすい軟線成分を低減したり、X線画像データのコントラスト低下を招く高エネルギー成分を低減したりする。また、フィルタ14は、その材質や厚み、位置などによってX線の線量及び照射範囲を変化させ、X線管12から被検体Pへ照射されるX線が予め定められた分布になるようにX線を減衰させる。
天板15は、被検体Pを載せるベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。なお、被検体Pは、X線診断装置1に含まれない。
Cアーム16は、X線管12、絞り装置13及びフィルタ14と、X線検出器17とを、被検体Pを挟んで対向するように保持する。なお、図1では、X線診断装置1がシングルプレーンの場合を例に挙げて説明しているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、バイプレーンの場合であってもよい。
X線検出器17は、例えば、マトリクス状に配列された検出素子を有するX線平面検出器(Flat Panel Detector:FPD)である。X線検出器17は、X線管12から照射されて被検体Pを透過したX線を検出して、検出したX線量に対応した検出信号を処理回路22へと出力する。なお、X線検出器17は、グリッド、シンチレータアレイ及び光センサアレイを有する間接変換型の検出器であってもよいし、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
制御装置18は、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構と、この駆動機構を制御する回路とを含む。制御装置18は、処理回路22による制御の下、絞り装置13やフィルタ14、天板15、Cアーム16等の動作を制御する。例えば、制御装置18は、絞り装置13の絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、制御装置18は、フィルタ14の位置を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の線量の分布を制御する。また、例えば、制御装置18は、Cアーム16を回転・移動させたり、天板15を移動させたりする。
メモリ19は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ19は、例えば、処理回路22によって生成されたX線画像データを受け付けて記憶する。また、メモリ19は、処理回路22によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。
ディスプレイ20は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ20は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、処理回路22によって生成された各種のX線画像データを表示する。例えば、ディスプレイ20は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。
入力インターフェース21は、各種指示や各種設定などを行なうためのトラックボール、スイッチ、ボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース21は、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し処理回路22へと出力する。なお、入力インターフェース21は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、X線診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路22へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース21の例に含まれる。
処理回路22は、X線診断装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路22は、制御機能22a、生成機能22b及び表示制御機能22cを有する。処理回路22は、例えば、プロセッサにより実現される。
例えば、処理回路22は、メモリ19から制御機能22aに相当するプログラムを読み出して実行することにより、制御装置18を制御し、絞り装置13が有する絞り羽根の開度を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の照射範囲を制御する。また、例えば、制御機能22aは、制御装置18を制御し、フィルタ14の位置を調整することで、X線の線量の分布を制御する。また、例えば、制御機能22aは、制御装置18を制御し、Cアーム16の回転及び移動、天板15の移動を調整する。
また、処理回路22は、メモリ19から生成機能22bに相当するプログラムを読み出して実行することにより、X線検出器17によってX線から変換された検出信号を用いてX線画像データを生成し、生成したX線画像データをメモリ19に格納する。また、生成機能22bは、メモリ19が記憶するX線画像データに対して各種画像処理を行う。例えば、生成機能22bは、X線画像データに対して、画像処理フィルタによるノイズ低減処理や、散乱線補正を実行する。
また、処理回路22は、メモリ19から表示制御機能22cに相当するプログラムを読み出して実行することにより、ディスプレイ20において、生成機能22bによる各種画像処理が施されたX線画像データを表示する。また、表示制御機能22cは、ディスプレイ20において、操作者の指示を受け付けるためのGUIを表示する。
図1に示すX線診断装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ19へ記憶されている。処理回路22は、メモリ19からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路22は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、図1においては、制御機能22a、生成機能22b及び表示制御機能22cの各処理機能が単一の処理回路22によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路22は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路22が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
次に、図2を用いて、X線高電圧装置11について説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線高電圧装置11の一例を示す回路図である。図2に示すように、X線高電圧装置11は、インバータ111と、トランス112と、X線管制御装置113とを備え、X線管12と接続される。
インバータ111は、高電圧発生装置の一例であり、後述する処理回路116による制御の下、高電圧を発生する。例えば、インバータ111は、図示しない交流電源から供給された交流電流を昇圧した後、インバータ111、トランス112の一次コイル、及び、変流器(Current Transformer:CT)114の一次コイルを含む経路に流す。
以下では、インバータ111、トランス112の一次コイル、及び、変流器114の一次コイルを含む経路に流れる交流電流の大きさ(実効値や振幅等)を、電流値A1と記載する。また、トランス112の一次コイルにかかる交流電圧の大きさを、電圧値V1と記載する。
トランス112は、インバータ111から供給される交流電流を降圧した後、トランス112の二次コイル、及び、フィラメント121を含む経路に流す。例えば、トランス112は、インバータ111からの交流電流が入力される一次コイルと、一次コイルよりも巻き数の少ない二次コイルとから成る。これにより、トランス112は、一次コイルと二次コイルとの巻き数比に応じて増大するように変換した交流電流をフィラメント121に供給する。以下では、トランス112の一次側の電流値A1及び電圧値V1に対して、二次側の電流値及び電圧値を、電流値A2及び電圧値V2と記載する。なお、電流値A2は、フィラメント121に供給されるフィラメント電流の大きさである。
X線管制御装置113は、図2に示すように、変流器114と、乗算回路115と、処理回路116とを備える。
変流器114は、インバータ111からの交流電流が入力される一次コイルと、一次コイルよりも巻き数の多い二次コイルとから成る。これにより、変流器114は、一次コイルと二次コイルとの巻き数比に応じて減少するように変換した交流電流を、乗算回路115に供給する。即ち、変流器114は、インバータ111から入力される大電流を、乗算回路115が計測可能な範囲の小電流に変換した上で、乗算回路115に供給する。以下では、変流器114によって変換された小電流の大きさを、電流値A3と記載する。
乗算回路115は、変流器114から供給された電流値A3を計測する。また、乗算回路115は、計測した電流値A3に対して、変流器114における一次コイルと二次コイルとの巻き数比を乗じることにより、電流値A1を算出する。なお、電流値A1が乗算回路115において計測可能な大きさである場合、X線管制御装置113は、変流器114を有しないこととしてもよい。この場合、乗算回路115は、電流値A1を計測する。
また、乗算回路115は、トランス112の一次コイルにかかる電圧値V1を計測する。更に、乗算回路115は、電圧値V1と電流値A1とを乗算することによって、フィラメント121において消費される電力値W1を算出し、算出した電力値W1を処理回路116に出力する。
処理回路116は、取得機能116a及び制御機能116bを有する。処理回路116は、例えば、プロセッサにより実現される。例えば、処理回路116は、メモリ19から取得機能116aに相当するプログラムを読み出して実行することにより、乗算回路115を制御して、電力値W1を取得する。また、例えば、取得機能116aは、取得した電力値W1に基づいて、フィラメント121の温度を表す温度情報を取得する。
また、例えば、処理回路116は、メモリ19から制御機能116bに相当するプログラムを読み出して実行することにより、インバータ111を制御し、X線管12に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線のオン/オフを制御する。また、例えば、制御機能116bは、取得機能116aが取得したX線照射が開始される際のフィラメント121の温度を表す温度情報と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、フィラメント121に供給するフィラメント電流を制御する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の温度を制御し、被検体Pに対して照射されるX線量を制御する。なお、制御機能116bによるフィラメント電流の制御については後に詳述する。
図2に示す回路図においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ19へ記憶されている。処理回路116は、メモリ19からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路116は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、図2においては、取得機能116a及び制御機能116bの各処理機能が単一の処理回路116によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路116は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路116が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ19に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、図1においては、単一のメモリ19が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数のメモリ19を分散して配置して、処理回路22及び処理回路116は、個別のメモリ19から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ19にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
以上、X線診断装置1の構成の一例について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係るX線診断装置1は、以下、詳細に説明する処理回路116による処理によって、フィラメント121に対する負荷を軽減する。以下、第1の実施形態に係るX線診断装置1が行う処理について詳細に説明する。
まず、取得機能116aによる温度情報の取得について説明する。例えば、取得機能116aは、乗算回路115から、電圧値V1及び電力値W1を取得する。次に、取得機能116aは、電圧値V1に対して、トランス112における一次コイルと二次コイルとの巻き数比を乗じることにより、電圧値V2を算出する。そして、取得機能116aは、電圧値V2の二乗を電力値W1により除することで、抵抗値R1を算出する。
別の例を挙げると、取得機能116aは、乗算回路115から、電流値A1及び電力値W1を取得する。次に、取得機能116aは、電流値A1を、トランス112における一次コイルと二次コイルとの巻き数比で除することにより、電流値A2を算出する。そして、取得機能116aは、電力値W1を電流値A2の二乗により除することで、抵抗値R1を算出する。
また、別の例を挙げると、取得機能116aは、乗算回路115から、電圧値V1及び電流値A1を取得する。次に、取得機能116aは、電圧値V1に対して、トランス112における一次コイルと二次コイルとの巻き数比を乗じることにより、電圧値V2を算出する。また、取得機能116aは、電流値A1を、トランス112における一次コイルと二次コイルとの巻き数比で除することにより、電流値A2を算出する。そして、取得機能116aは、電圧値V2を電流値A2により除することで、抵抗値R1を算出する。なお、この場合、X線管制御装置113は、乗算回路115を有しないこととし、取得機能116aが電流値A3及び電圧値V1を計測してもよい。或いは、X線管制御装置113は、変流器114及び乗算回路115を有しないこととし、取得機能116aが電流値A1及び電圧値V1を計測してもよい。
抵抗値R1は、トランス112の二次コイル、及び、フィラメント121を含む経路における電気抵抗の大きさである。ここで、フィラメント121の温度が変化すると、フィラメント121の電気抵抗率が変化し、抵抗値R1の大きさも変化する。例えば、フィラメント121がタングステン製の金属線である場合、フィラメント121を加熱するに従ってフィラメント121の電気抵抗率は増加し、抵抗値R1も増加する。即ち、抵抗値R1は、フィラメント121の温度を表す温度情報の一例である。
ここで、抵抗値R1は、フィラメント121の温度の絶対値を表すものであってもよいし、フィラメント121の温度の変化量を表すものであってもよい。例えば、抵抗値R1がフィラメント121の温度の絶対値を表すものである場合、X線管12の管電流値とフィラメント121の温度との対応関係、及び、フィラメント121の温度と抵抗値R1との対応関係が事前に設定される。また、制御機能116bは、X線照射時の管電流値の設定値を取得する。次に、制御機能116bは、事前設定された対応関係に基づいて、管電流値の設定値に対応するフィラメント121の温度を取得し、取得した温度に対応する抵抗値R1を取得する。そして、制御機能116bは、X線照射時の抵抗値R1が、取得した抵抗値R1となるように、フィラメント電流を制御する。なお、上述した対応関係は、例えば、X線診断装置1の据え付け時やX線管12の交換時において、管電流値を変更しながらフィラメント121の温度及び抵抗値R1を測定することにより、X線管12の個体差を考慮して設定することができる。
また、抵抗値R1がフィラメント121の温度の変化量を表すものである場合、例えば、管電流値と抵抗値R1との対応関係が事前に設定される。ここで、抵抗値R1は、フィラメント121の温度に応じて変化する値であるため、抵抗値R1の変化量はフィラメント121の温度の変化量を表すこととなる。また、制御機能116bは、X線照射時の管電流値の設定値を取得する。次に、制御機能116bは、事前設定された対応関係に基づいて、管電流値の設定値に対応する抵抗値R1を取得する。そして、制御機能116bは、X線照射時の抵抗値R1が、取得した抵抗値R1となるように、フィラメント電流を制御する。なお、上述した対応関係は、例えば、X線診断装置1の据え付け時やX線管12の交換時において、管電流値を変更しながら抵抗値R1を測定することにより、X線管12の個体差を考慮して設定することができる。
なお、フィラメント121の温度を表す温度情報は、抵抗値R1に限定されるものではない。例えば、取得機能116aは、フィラメント121の抵抗に係る情報(電力値W1や電圧値V2、電流値A2)のうち少なくとも2つの組み合わせを、温度情報として取得してもよい。即ち、取得機能116aは、フィラメント121の抵抗に係る情報に基づいて算出する抵抗値R1を温度情報として取得してもよいし、フィラメント121の抵抗に係る情報の組み合わせを温度情報として取得してもよい。
以下では、取得機能116aが、フィラメント121の温度を表す温度情報として、抵抗値R1を取得する場合について説明する。また、以下では、抵抗値R1がフィラメント121の温度の変化量を表すものである場合について説明する。
次に、制御機能116bによるフィラメント電流の制御について説明する。例えば、制御機能116bは、まず、X線照射時の状態の準備の開始時間における抵抗値R1と、X線照射時の状態を示す条件とを取得する。ここで、X線照射時の状態とは、例えば、X線照射時における陽極122の回転数(陽極回転数)や、X線管12の管電圧値及び管電流値、X線診断装置1と接続される装置の状態等である。
一例を挙げると、X線照射時の状態とは、陽極122が、設定された陽極回転数で回転している状態である。また、一例を挙げると、X線照射時の状態とは、設定された値の管電圧がX線管12に供給されている状態である。また、一例を挙げると、X線照射時の状態とは、設定された値の管電流がX線管12内を流れている状態である。また、一例を挙げると、X線照射時の状態とは、X線診断装置1における画像処理装置(図示せず)が、X線診断装置1において生成されたX線画像データを受け付けることが可能になっている状態である。
以下では、X線照射時の状態の例として、陽極回転数、X線管12の管電圧値及び管電流値について説明する。この場合、制御機能116bは、X線照射時の状態を示す条件として、陽極回転数、管電圧値及び管電流値の設定値(X線条件)を取得する。例えば、制御機能116bは、入力インターフェース21を介して、操作者からの入力を受け付けることにより、陽極回転数、管電圧値及び管電流値の設定値を取得する。
また、例えば、制御機能116bは、入力インターフェース21を介して、操作者からの入力を受け付けることにより、管電圧値及び管電流値の設定値を取得する。更に、制御機能116bは、取得した管電流値及び管電圧値に基づいて、陽極回転数の設定値を取得する。一例を挙げると、制御機能116bは、管電流値及び管電圧値が大きいほど、X線照射時の陽極回転数も大きくなるように、陽極回転数を設定する。
更に、制御機能116bは、X線照射時の状態の準備にかかる準備時間を取得する。ここで、X線照射時の状態を示す条件が複数ある場合、制御機能116bは、準備に最も時間がかかる状態の準備時間を取得する。以下では、準備に最も時間がかかる状態が、陽極回転数である場合について説明する。即ち、以下では、制御機能116bが、準備時間として、陽極回転数の準備にかかる時間を取得する場合について説明する。
例えば、制御機能116bは、陽極122の回転が停止した状態から、設定値まで回転を加速させるために要する時間を、準備時間として取得する。一例を挙げると、制御機能116bは、まず、陽極122を回転させる回転磁場を発生させるステータコイルの出力と、陽極122の回転軸周りの慣性モーメントとに基づいて、単位時間当たりに陽極回転数を加速させることができる速度(角加速度)を取得する。そして、制御機能116bは、取得した角加速度により設定値を除することで、準備時間を算出する。ここで、制御機能116bは、陽極122やステータコイルの個体差や、角加速度のばらつき等を考慮して、準備時間を取得してもよい。この場合、制御機能116bは、準備時間を、最短の時間から最長の時間までの数値範囲として取得する。
そして、制御機能116bは、X線照射が開始される際のフィラメント121の温度を表す温度情報と、X線照射時の状態の準備にかかる準備時間とに基づいて、フィラメント121に供給するフィラメント電流を制御する。以下、制御機能116bによるフィラメント電流の制御について、図3を用いて説明する。図3は、第1の実施形態に係るフィラメント電流の制御の一例を示す図である。図3の横軸は、時間に対応する。また、図3の縦軸は、フィラメント電流(電流値A2)及び抵抗値R1に対応する。
図3において、時間T1は、X線照射時の状態の準備の開始時間を示す。例えば、制御機能116bは、時間T1において、陽極回転数の加速を開始する。なお、図3に示す場合、時間T1において、陽極122の回転は停止している。また、抵抗値R11は、準備の開始時間におけるフィラメント121の温度を表す。また、抵抗値R13は、例えば、X線照射時の管電流値に応じて設定される値であり、X線照射時のフィラメント121の目標温度を表す。
なお、時間T1までの期間において、制御機能116bは、フィラメント121に対する予備加熱を行なう。例えば、制御機能116bは、予備加熱を行なう際のフィラメント電流の大きさとして電流値A21の設定を受け付け、電流値A21のフィラメント電流を供給する。また、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A21で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R11において維持するとともに、フィラメント121を、抵抗値R11が表す温度において維持する。予備加熱をしておくことにより、制御機能116bは、目標温度までフィラメント121を加熱するために要する時間を短縮することができる。
なお、予備加熱については行なわないこととしてもよい。即ち、制御機能116bは、時間T1までの期間、フィラメント電流の供給を行なわないこととしてもよい。この場合、時間T1までの期間において、フィラメント121の温度は室温となる。
また、図3において、時間T3は、時間T1から準備時間が経過した時間を示す。即ち、図3は、時間T1において加速が開始された陽極122の回転数が、時間T3において、設定値に到達することを示す。なお、制御機能116bは、準備時間を数値範囲として取得していた場合、例えば、時間T3を、時間T1から最短の準備時間が経過した時間とする。
ここで、制御機能116bは、時間T3までにフィラメント121の加熱を完了するように、フィラメント電流を制御する。即ち、制御機能116bは、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達するようにフィラメント電流を制御することにより、時間T3の後に、フィラメント121過熱のための待ち時間が生じることを回避する。
例えば、まず、制御機能116bは、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさとして、電流値A23を設定する。ここで、制御機能116bは、準備時間(時間T1から時間T3までの時間)が短いほど、より短時間でフィラメント121の加熱を行なうため、電流値A23を大きな値に設定する。また、制御機能116bは、準備の開始時間におけるフィラメント121の温度と、目標温度との差が大きいほど、電流値A23を大きな値に設定する。即ち、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R11と、目標温度を表す抵抗値R13との差が大きいほど、電流値A23を大きな値に設定する。なお、電流値A23は、第2電流値の一例である。
そして、図3に示すように、制御機能116bは、時間T1以降、電流値A23のフィラメント電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は抵抗値R11から上昇し、抵抗値R1の変化量に応じてフィラメント121の温度も変化する。
この際、取得機能116aは、変化する抵抗値R1を連続的に取得する。例えば、取得機能116aは、電流値A23でのフィラメント電流の供給が行われている期間中、抵抗値R1を定期的に取得する。なお、取得機能116aは、電流値A23でのフィラメント電流の供給が開始される時間T1において抵抗値R1の連続的な取得を開始してもよいし、時間T1よりも前に抵抗値R1の連続的な取得を開始してもよい。
次に、制御機能116bは、電流値A23のフィラメント電流を供給することによってフィラメントの温度が閾値に到達した場合、電流値A23でのフィラメント電流の供給を終了する。例えば、制御機能116bは、取得機能116aが連続的に取得する抵抗値R1に基づき、抵抗値R1が閾値R12を超えるか否かを連続的に判定する。そして、制御機能116bは、図3に示すように、抵抗値R1が閾値R12を超える時間T2以降、フィラメント電流を電流値A23から減少させる。なお、取得機能116aは、時間T2において、抵抗値R1の連続的な取得を終了してもよい。
時間T2以降、制御機能116bは、電流値A22の電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は、閾値R12から、フィラメント121の目標温度を表す抵抗値R13まで上昇し、フィラメント121の加熱が完了する。更に、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A22で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R13において維持するとともに、フィラメント121を目標温度において維持する。なお、電流値A22は、第1電流値の一例である。
そして、制御機能116bは、入力インターフェース21を介してX線の照射を開始する旨の操作者からの指示を受け付けたことをトリガとして、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。具体的には、制御機能116bは、抵抗値R13が表す目標温度まで加熱したフィラメント121から、設定値において回転する陽極122に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいてX線画像データを生成する。
上述したように、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R11と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、X線照射を行なうための第1電流値(電流値A22)よりも大きい第2電流値(電流値A23)を設定する。また、制御機能116bは、設定した第2電流値のフィラメント電流を、準備時間内にフィラメント121に供給する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の目標温度が高温であったり、準備時間が短かったりする場合であっても、フィラメント121の温度を短時間で上昇させ、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させることができる。なお、準備時間内に第2電流値のフィラメント電流を供給する制御については、プリフラッシュ制御とも記載する。
また、制御機能116bは、第2電流値でのフィラメント電流の供給によって、フィラメント121の温度が閾値R12に到達した場合に、第2電流値でのフィラメント電流の供給を終了する。即ち、制御機能116bは、フィラメント121の温度が閾値R12を超えた時点でプリフラッシュ制御を終了する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121を過分に加熱することを回避し、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
次に、制御機能116bによるフィラメント電流の制御の別の例について、図4を用いて説明する。図4は、第1の実施形態に係るフィラメント電流の制御の一例を示す図である。図4は、図3と比較して、準備時間の長さが異なる場合を示す。
図4の横軸は、時間に対応する。また、図4の縦軸は、フィラメント電流(電流値A2)及び抵抗値R1に対応する。また、図4において、時間T1は、準備の開始時間を示す。なお、図4に示す場合、時間T1において、陽極122の回転は停止している。また、抵抗値R11は、準備の開始時間におけるフィラメント121の温度を表す。また、抵抗値R13は、フィラメント121の目標温度を表す。また、時間T1までの期間において、制御機能116bは、フィラメント121に対する予備加熱を行なう。
また、図4において、時間T5は、時間T1から準備時間が経過した時間を示す。即ち、図4は、時間T1において加速が開始された陽極122の回転数が、時間T5において、設定値に到達することを示す。ここで、図4に示す準備時間(時間T1から時間T5までの期間)は、図3に示した準備時間(時間T1から時間T3までの期間)よりも長いものとなっている。例えば、図4は、図3と比較して、陽極回転数の設定値が大きかったり、単位時間当たりに陽極回転数を加速させることができる角加速度が小さかったりすることによって、準備時間が長い場合を示す。
まず、制御機能116bは、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさとして、電流値A24を設定する。ここで、制御機能116bは、準備時間(時間T1から時間T5までの時間)が短いほど、電流値A24を大きな値に設定する。また、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R11と、目標温度を表す抵抗値R13との差が大きいほど、電流値A24を大きな値に設定する。
ここで、図4に示す準備時間(時間T1から時間T5までの期間)は、図3に示した準備時間(時間T1から時間T3までの期間)よりも長いため、制御機能116bは、電流値A24を、電流値A23と比較して小さな値に設定する。なお、電流値A24は、第2電流値の一例である。
そして、図4に示すように、制御機能116bは、時間T1以降、電流値A24のフィラメント電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は抵抗値R11から上昇し、抵抗値R1の変化量に応じてフィラメント121の温度も変化する。この際、取得機能116aは、変化する抵抗値R1を連続的に取得する。
次に、制御機能116bは、電流値A24のフィラメント電流を供給することによってフィラメントの温度が閾値に到達した場合、電流値A24でのフィラメント電流の供給を終了する。例えば、制御機能116bは、取得機能116aが連続的に取得する抵抗値R1に基づき、抵抗値R1が閾値R12を超えるか否かを連続的に判定する。そして、制御機能116bは、図4に示すように、抵抗値R1が閾値R12を超える時間T4以降、フィラメント電流を電流値A24から減少させる。なお、取得機能116aは、時間T4において、抵抗値R1の連続的な取得を終了してもよい。
時間T4以降、制御機能116bは、電流値A22の電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は、閾値R12から、フィラメント121の目標温度を表す抵抗値R13まで上昇し、フィラメント121の加熱が完了する。更に、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A22で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R13において維持するとともに、フィラメント121を目標温度において維持する。そして、制御機能116bは、操作者からの指示に応じて、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいてX線画像データを生成する。
上述したように、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R11と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、X線照射を行なうための第1電流値(電流値A22)よりも大きい第2電流値(電流値A24)を設定する。また、制御機能116bは、設定した第2電流値のフィラメント電流を、準備時間内にフィラメント121に供給する。これにより、制御機能116bは、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させることができる。
また、制御機能116bは、第2電流値でのフィラメント電流の供給によって、フィラメント121の温度が閾値R12に到達した場合に、第2電流値でのフィラメント電流の供給を終了する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121を過分に加熱することを回避し、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
また、制御機能116bは、図4に示すように準備時間が長い場合、第2電流値を小さな値に設定する。即ち、制御機能116bは、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流を最低限の大きさとして、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるようにフィラメント電流を制御する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の加熱を緩やかに行なって、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。また、制御機能116bは、フィラメント121の温度が過分に早く目標温度に到達することを回避して、消費エネルギーを低減することができる。
次に、制御機能116bによるフィラメント電流の制御の別の例について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係るフィラメント電流の制御の一例を示す図である。図5は、図3及び図4と比較して、準備時間の長さが異なる場合を示す。
図5の横軸は、時間に対応する。また、図5の縦軸は、フィラメント電流(電流値A2)及び抵抗値R1に対応する。また、図5において、時間T1は、準備の開始時間を示す。なお、図5に示す場合、時間T1において、陽極122の回転は停止している。また、抵抗値R11は、準備の開始時間におけるフィラメント121の温度を表す。また、抵抗値R13は、フィラメント121の目標温度を表す。また、時間T1までの期間において、制御機能116bは、フィラメント121に対する予備加熱を行なう。
また、図5において、時間T6は、時間T1から準備時間が経過した時間を示す。即ち、図5は、時間T1において加速が開始された陽極122の回転数が、時間T6において、設定値に到達することを示す。ここで、図5に示す準備時間(時間T1から時間T6までの期間)は、図4に示した準備時間(時間T1から時間T5までの期間)よりも更に長いものとなっている。
制御機能116bは、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさを設定する。例えば、制御機能116bは、まず、時間T1以降にプリフラッシュ制御を行なうか否かを判定する。
一例を挙げると、制御機能116bは、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさを、準備時間(時間T1から時間T6までの時間)が短いほど大きくなるように、かつ、準備の開始時間における抵抗値R11と目標温度を表す抵抗値R13との差が大きいほど大きくなるように算出する。そして、制御機能116bは、算出したフィラメント電流の大きさが、X線照射を行なうための電流値A22よりも大きい場合、プリフラッシュ制御を行なうと判定する。この場合、制御機能116bは、算出したフィラメント電流の大きさを、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさ(第2電流値)として設定する。
一方で、算出したフィラメント電流の大きさが、X線照射を行なうための電流値A22よりも小さい場合、制御機能116bは、プリフラッシュ制御を行なわないと判定する。即ち、制御機能116bは、プリフラッシュ制御を行なわなくとも、準備時間内に、フィラメント121の温度を目標温度に到達させることができる場合においては、プリフラッシュ制御を行なわないと判定する。なお、図5においては、プリフラッシュ制御を行なわないと判定された場合について説明する。
例えば、図5においては、準備時間(時間T1から時間T6までの期間)が十分に長いことから、制御機能116bは、プリフラッシュ制御を行なわないと判定する。そして、制御機能116bは、時間T1以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさとして、電流値A22を設定する。
そして、制御機能116bは、図5に示すように、時間T1以降、電流値A22のフィラメント電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は抵抗値R11から抵抗値R13まで上昇し、時間T6までにフィラメント121の加熱が完了する。更に、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A22で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R13において維持するとともに、フィラメント121を目標温度において維持する。そして、制御機能116bは、操作者からの指示に応じて、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいてX線画像データを生成する。
上述したように、制御機能116bは、準備時間が長い場合や目標温度が低い場合においては、プリフラッシュ制御を行なうことなく、フィラメント121を緩やかに加熱し、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させる。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の加熱を緩やかに行なって、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。また、制御機能116bは、フィラメント121の温度が過分に早く目標温度に到達することを回避して、消費エネルギーを低減することができる。
図3、図4及び図5を用いて説明したように、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R11と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、フィラメント電流の制御モードを切り替える。このような制御モードの切り替えは、例えば、X線照射時の状態を示す条件と、制御モードとの対応関係を定めたマトリクスに基づいて行うことができる。このようなマトリクスは、例えば、準備の開始時間における抵抗値R11ごとに存在し、メモリ19に格納されている。
以下、図6を用いて、X線照射時の状態を示す条件と制御モードとの対応関係を定めたマトリクスの一例について説明する。図6のマトリクスにおいては、X線照射時の状態を示す条件のうち、管電圧値及び管電流値の設定値と、制御モードとの対応関係が事前に設定される。なお、図6は、第1の実施形態に係る制御モードについて説明するための図である。
図6において、横軸は管電圧値に対応し、縦軸は管電流値に対応する。ここで、図6に示す管電圧値の大きさは、「kV1<kV2<kV3<kV4」である。また、図6に示す管電流値の大きさは、「mA1<mA2<mA3<mA4<mA5」である。
また、図6に示すマトリクスのうち、C1で示す条件「(kV1,mA1)、(kV2,mA1)、(kV3,mA1)及び(kV4,mA1)」と、C2で示す条件「(kV1,mA2)、(kV1,mA3)、(kV1,mA4)、(kV1,mA5)、(kV2,mA2)、(kV3,mA2)、及び(kV4,mA2)」とについては、低速回転領域とも記載する。低速回転領域の管電圧値及び管電流値については、陽極122での発熱が小さいため、陽極回転数は低速に設定される。
また、図6に示すマトリクスのうち、C3で示す条件「(kV2,mA3)、(kV2,mA4)、(kV3,mA3)及び(kV3,mA4)」と、C4で示す条件「(kV2,mA5)、(kV3,mA5)、(kV4,mA3)、(kV4,mA4)及び(kV4,mA5)」とについては、高速回転領域とも記載する。高速回転領域の管電圧値及び管電流値については、陽極122での発熱が大きいため、陽極回転数は高速に設定される。
例えば、管電圧値及び管電流値の設定値がC1で示す条件に該当する場合は、低速回転領域であって陽極回転数の設定値が小さく、準備時間は短い。しかしながら、C1で示す条件に該当する場合は、管電流値は小さく、フィラメント121の目標温度が低いため、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流は小さな値で十分と考えられる。従って、C1で示す条件に該当する場合、制御機能116bは、図4に示したように、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるようにフィラメント電流を制御する。
また、例えば、管電圧値及び管電流値の設定値がC2で示す条件に該当する場合は、低速回転領域であって陽極回転数の設定値が小さく、準備時間は短い。更に、C2で示す条件に該当する場合は、管電流値が比較的大きく、フィラメント121の目標温度が高いため、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流は大きな値が必要と考えられる。従って、C2で示す条件に該当する場合、制御機能116bは、図3に示したようにフィラメント電流を制御して、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させる。
また、例えば、管電圧値及び管電流値の設定値がC3で示す条件に該当する場合は、高速回転領域であって陽極回転数の設定値が大きく、準備時間は長い。更に、C3で示す条件に該当する場合は、管電流値が比較的小さく、フィラメント121の目標温度が低いため、プリフラッシュ制御は不要なものと考えられる。従って、C3で示す条件に該当する場合、制御機能116bは、図5に示したようにフィラメント電流を制御して、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させる。
また、例えば、管電圧値及び管電流値の設定値がC4で示す条件に該当する場合は、管電流値が大きく、フィラメント121の目標温度が高いため、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流は大きな値が必要と考えられる。しかしながら、C4で示す条件に該当する場合は、高速回転領域であって陽極回転数の設定値が大きく、準備時間は長いため、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流は小さな値で十分と考えられる。従って、C4で示す条件に該当する場合、制御機能116bは、図4に示したように、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるようにフィラメント電流を制御する。
図3、図4及び図5においては、準備の開始時間が、フィラメント121が予備加熱されており、かつ、陽極122の回転が停止している時間T1である場合について説明した。即ち、図3、図4及び図5においては、準備の開始時間が、待機モードのX線診断装置1について撮影又は透視の準備を開始する時間であるものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、準備の開始時間は、連続的に撮影又は透視を行なう場合に、先の撮影又は透視を完了した状態のX線診断装置1について、次の撮影又は透視の準備を開始する時間であってもよい。
なお、撮影とは、撮影画像を収集する処理をいう。ここで、撮影画像は、X線管12から照射されたX線をX線検出器17によって検出することで収集されるX線画像データであり、例えば、画像診断に用いられる。即ち、医師等のユーザは、撮影画像を参照することで、被検体Pにおける病変部を発見したり、病変部に対する治療計画を検討したりする。従って、撮影画像は、通常、高線量のX線を用いた高画質のX線画像データとして収集される。
一方で、透視とは、透視画像を収集する処理をいう。ここで、透視画像は、X線管12から照射されたX線をX線検出器17によって検出することで収集されるX線画像データであり、例えば、被検体Pのリアルタイムでの観察などに用いられる。透視画像は、撮影画像と比較して低画質で十分な場合が多いため、通常、撮影画像を収集する際に用いるX線よりも低線量のX線を用いて収集される。
以下、撮影の後に透視を連続的に行なう場合のフィラメント電流の制御について、図7を用いて説明する。図7は、第1の実施形態に係るフィラメント電流の制御の一例を示す図である。図7の横軸は、時間に対応する。また、図7の縦軸は、フィラメント電流(電流値A2)及び抵抗値R1に対応する。また、図7において、抵抗値R14は、例えば、撮影時の管電流値に応じて設定される値であり、撮影のためのX線照射時のフィラメント121の温度を表す。
図7において、時間T7までの期間は、撮影期間を示す。即ち、時間T7までの期間中、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A25で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R14において維持するとともに、フィラメント121を、抵抗値R14が表す温度において維持する。また、時間T7までの期間中、制御機能116bは、操作者からの指示に応じて、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいて撮影画像を生成する。
また、図3において、時間T7は、撮影が終了する時点であって、透視のためのX線照射時の状態の準備の開始時間を示す。例えば、制御機能116bは、時間T7において、撮影における設定値から透視における設定値に向けて、陽極回転数の加速又は減速を開始する。なお、通常は、透視より撮影の方が高線量で行われるため、陽極回転数についても、透視における設定値より撮影における設定値の方が大きい。この場合、制御機能116bは、時間T7において、撮影における設定値から透視における設定値に向けて、陽極回転数の減速を開始する。ここで、制御機能116bは、陽極122の回転を制動することにより陽極回転数を減速させてもよいし、陽極122を回転させるステータコイルの出力を低下又は停止することで陽極回転数を減速させてもよい。
また、図7において、時間T9は、時間T7から準備時間が経過した時間を示す。即ち、図7は、時間T7において減速が開始された陽極122の回転数が、時間T9において、透視における設定値に到達することを示す。また、図7において、抵抗値R15は、例えば、透視時の管電流値に応じて設定される値であり、透視のためのX線照射時のフィラメント121の目標温度を表す。ここで、通常は、透視より撮影の方が高線量で行われるため、抵抗値R15が表すフィラメント121の目標温度は、抵抗値R14が表すフィラメント121の温度よりも低温に設定される。
図7において、制御機能116bは、時間T9までにフィラメント121の冷却を完了するように、フィラメント電流を制御する。即ち、制御機能116bは、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達するようにフィラメント電流を制御することにより、時間T9の後に、フィラメント121を冷却又は加熱するための待ち時間が生じることを回避する。ここで、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A25から減少させ、又はフィラメント電流の供給を停止することで、フィラメント121を冷却する。
例えば、まず、制御機能116bは、時間T7以降にフィラメント121に供給するフィラメント電流の大きさとして、電流値A27を設定する。ここで、制御機能116bは、準備時間(時間T7から時間T9までの期間)が短いほど、より短時間でフィラメント121を冷却するため、電流値A27を小さな値に設定する。また、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R14と、目標温度を表す抵抗値R15との差が大きいほど、電流値A27を小さな値に設定する。なお、制御機能116bは、電流値A27を「0」に設定してもよい。また、電流値A27は、第4電流値の一例である。
そして、図7に示すように、制御機能116bは、時間T7以降、電流値A27のフィラメント電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は抵抗値R14から低下し、抵抗値R1の変化量に応じてフィラメント121の温度も変化する。この際、取得機能116aは、変化する抵抗値R1を連続的に取得する。
次に、制御機能116bは、電流値A27のフィラメント電流を供給することによってフィラメントの温度が閾値に到達した場合、電流値A24でのフィラメント電流の供給を終了する。例えば、制御機能116bは、取得機能116aが連続的に取得する抵抗値R1に基づき、抵抗値R1が閾値R16を下回るか否かを連続的に判定する。そして、制御機能116bは、図4に示すように、抵抗値R1が閾値R16を下回る時間T8以降、フィラメント電流を電流値A27から増加させる。なお、取得機能116aは、時間T8において、抵抗値R1の連続的な取得を終了してもよい。
時間T8以降、制御機能116bは、電流値A26の電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は、閾値R16から、フィラメント121の目標温度を表す抵抗値R15まで上昇し、フィラメント121の加熱が完了する。更に、制御機能116bは、フィラメント電流の大きさを電流値A26で維持することにより、抵抗値R1を抵抗値R15において維持するとともに、フィラメント121を目標温度において維持する。なお、電流値A26は、第3電流値の一例である。
そして、制御機能116bは、入力インターフェース21を介して、X線の照射を開始する旨の操作者からの指示を受け付けたことをトリガとして、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。具体的には、制御機能116bは、抵抗値R15が表す温度において維持するフィラメント121から、設定値において回転する陽極122に向けて熱電子を照射することにより、X線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいて透視画像を生成する。
上述したように、撮影の後に透視を連続的に行なう場合、制御機能116bは、準備の開始時間における抵抗値R14と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、透視のためのX線照射を行なうための第3電流値(電流値A26)よりも小さい第4電流値(電流値A27)を設定する。また、制御機能116bは、設定した第4電流値のフィラメント電流を、準備時間内にフィラメント121に供給する。これにより、制御機能116bは、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させることができる。また、制御機能116bは、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるようにフィラメント電流を制御する。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の冷却及び加熱を緩やかに行なって、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
次に、X線診断装置1による処理の手順の一例を、図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図8においては、一例として、撮影の後に透視を連続的に行なう場合の処理の手順について説明する。
ステップS103及びステップS110は、取得機能116aに対応するステップである。ステップS101、ステップS102、ステップS104、ステップS105、ステップS106、ステップS107、ステップS108、ステップS109、ステップS111、ステップS112、ステップS113、ステップS114及びステップS115は、制御機能116bに対応するステップである。
まず、処理回路116は、撮影スイッチが押下されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、撮影スイッチが押下されない場合(ステップS101否定)、処理回路116は待機状態となる。
一方で、撮影スイッチが押下された場合(ステップS101肯定)、処理回路116は、プリフラッシュを行なうか否かを判定する(ステップS102)。例えば、処理回路116は、撮影スイッチが押下された時点を準備の開始時間とし、準備の開始時間における抵抗値R1が表すフィラメント121の温度と、撮影時のフィラメント121の目標温度と、準備時間の長さとに基づいて、プリフラッシュ制御を行なうか否かを判定する。
プリフラッシュ制御を行なうと判定した場合(ステップS102肯定)、処理回路116は、フィラメント121の温度を表す温度情報を取得し(ステップS103)、取得した温度情報が閾値以上か否かを判定する(ステップS104)。例えば、処理回路116は、抵抗値R1を取得し、抵抗値R1が閾値R12以上か否かを判定する。ここで、温度情報が閾値以上でないと判定した場合(ステップS104否定)、処理回路116は、第2電流値の電流をフィラメント121に供給し(ステップS105)、再度ステップS104に移行する。
プリフラッシュ制御を行なわないと判定した場合(ステップS102否定)、又は、温度情報が閾値以上と判定した場合(ステップS104肯定)、処理回路116は、第1電流値の電流をフィラメント121に供給する(ステップS106)。これにより、フィラメント121の温度は目標温度まで上昇し、フィラメント121の加熱が完了する。また、処理回路116は、フィラメント121の加熱が完了した後、陽極回転数の準備を完了する(ステップS107)。
そして、処理回路116は、撮影を実行する(ステップS108)。例えば、処理回路116は、操作者からの指示に応じて、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、処理回路22における生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいて撮影画像を生成する。
次に、処理回路116は、透視スイッチが押下されたか否かを判定する(ステップS109)。ここで、透視スイッチが押下されない場合(ステップS109否定)、処理回路116は待機状態となる。
一方で、透視スイッチが押下された場合(ステップS109肯定)、処理回路116は、フィラメント121の温度を表す温度情報を取得し(ステップS110)、取得した温度情報が閾値以下か否かを判定する(ステップS111)。例えば、処理回路116は、抵抗値R1を取得し、抵抗値R1が閾値R16以下か否かを判定する。ここで、温度情報が閾値以下でないと判定した場合(ステップS111否定)、処理回路116は、第4電流値の電流をフィラメント121に供給し(ステップS112)、再度ステップS111に移行する。
温度情報が閾値以下と判定した場合(ステップS111肯定)、処理回路116は、第3電流値の電流をフィラメント121に供給する(ステップS113)。これにより、フィラメント121の温度は目標温度まで上昇し、フィラメント121の加熱が完了する。また、処理回路116は、フィラメント121の加熱が完了した後、陽極回転数の準備を完了する(ステップS114)。
そして、処理回路116は、透視を実行する(ステップS115)。例えば、処理回路116は、操作者からの指示に応じて、X線管12に高電圧を供給してX線を発生させる。この際、X線検出器17は、X線管12から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。また、処理回路22における生成機能22bは、X線検出器17から出力された信号に基づいて透視画像を生成する。そして、処理回路116は、処理を終了する。
上述したように、取得機能116aは、フィラメント121の温度を表す温度情報を取得する。また、制御機能116bは、X線照射が開始される際の温度情報と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、フィラメント121に供給する電流を制御する。従って、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。即ち、X線診断装置1は、X線照射時の状態を示す条件に基づいてフィラメント121に供給する電流を制御することで、フィラメント121を加熱又は冷却するための待ち時間が生じないようにしつつも、温度情報に基づいてフィラメント121に供給する電流を制御することで、フィラメント121を過分に加熱することを回避する。
更に、X線診断装置1は、X線照射時の状態を示す条件に基づいてフィラメント121に供給する電流を制御することで、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流を最低限の大きさ(電流値A24等)とする。これにより、X線診断装置1は、プリフラッシュ制御中のフィラメント121の温度が過分に高温とならないようにしてフィラメント121の蒸発を抑え、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
或いは、X線診断装置1は、図5に示したように、必要でない場合にはプリフラッシュ制御を行なわないようにフィラメント電流を制御する。これにより、X線診断装置1は、プリフラッシュ制御によるフィラメント121の蒸発を抑え、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
更に、X線診断装置1は、フィラメント121に対する負荷を軽減することで、フィラメント121の寿命を延長し、フィラメント121に起因するX線管12の故障の発生頻度を低減することができる。ひいては、X線診断装置1は、X線管12が使用不能となることによる検査の中断や、X線管12の交換費用(ランニングコスト)を抑制することができる。
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、準備時間(時間T1から時間T3までの時間等)が短いほど大きな電流値でプリフラッシュ制御を行ない、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達するようにフィラメント電流を制御する場合について説明した。これに対して、第2の実施形態では、フィラメント電流に上限値を設けて、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達するか否かを上限値に基づいて判別し、判別結果に応じてフィラメント電流を制御する場合について説明する。
第2の実施形態に係るX線診断装置1は、図1及び図2に示したX線診断装置1と同様の構成を有し、制御機能116bによる処理の一部が相違する。また、第2の実施形態に係るX線診断装置1は、図9に示すように、判別機能116cを更に有する点で相異する。ここで、図9は、第2の実施形態に係るX線高電圧装置11の一例を示す回路図である。以下、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、図1及び図2と同一の符号を付し、説明を省略する。
まず、判別機能116cは、フィラメント121に供給される電流の上限値を取得する。かかる上限値は、予め設定された固定値であってもよいし、入力インターフェース21を介して操作者からの入力を受け付けることにより設定するものであってもよい。以下では、判別機能116cが、フィラメント121に供給される電流の上限値として、図10に示す上限値A28を取得する場合について説明する。なお、図10は、第2の実施形態に係るフィラメント電流の制御の一例を示す図である。
図10の横軸は、時間に対応する。また、図10の縦軸は、フィラメント電流(電流値A2)及び抵抗値R1に対応する。また、図10において、時間T1は、準備の開始時間を示す。なお、図10に示す場合、時間T1において、陽極122の回転は停止している。また、時間T1までの期間において、制御機能116bは、フィラメント121に対する予備加熱を行なう。
次に、判別機能116cは、上限値に基づいて、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達するか否かを判別する。例えば、判別機能116cは、図10に示すように、準備の開始時間である時間T1に上限値A28のフィラメント電流の供給を開始し、抵抗値R1が閾値R12を超える時間T11以降に電流値A22の電流をフィラメント121に供給した場合において、フィラメント121の温度が目標温度に到達する時間T12を算出する。
そして、判別機能116cは、算出した時間T12が、時間T1から準備時間が経過する時間よりも早い場合には、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達すると判別する。一方で、判別機能116cは、算出した時間T12が、時間T1から準備時間が経過する時間よりも遅い場合には、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達しないと判別する。
準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達すると判別された場合、制御機能116bは、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるように、フィラメント121に供給する電流を制御する。即ち、制御機能116bは、プリフラッシュ制御におけるフィラメント電流を最低限の大きさとして、準備時間の終了時点でフィラメント121の温度が目標温度となるようにフィラメント電流を制御する。或いは、制御機能116bは、プリフラッシュ制御を行なうことなく、準備時間内にフィラメント121の温度を目標温度に到達させる。これにより、制御機能116bは、フィラメント121の加熱を緩やかに行なって、フィラメント121に対する負荷を軽減することができる。
一方で、準備時間内にフィラメント121の温度が目標温度に到達しないと判別された場合、制御機能116bは、準備時間内に、上限値A28の電流をフィラメント121に供給する。例えば、制御機能116bは、図10に示すように、時間T1以降、上限値A28の電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は抵抗値R11から上昇して、時間T11において閾値R12に到達する。次に制御機能116bは、時間T11以降、電流値A22の電流をフィラメント121に供給する。これにより、抵抗値R1は閾値R12から、フィラメント121の目標温度を表す抵抗値R13まで上昇して、時間T12までにフィラメント121の加熱が完了する。この場合、時間T1から準備時間が経過する時間は時間T12よりも早い時点であり、陽極回転数の準備が完了した後、フィラメント121加熱のための待ち時間が生じるものの、制御機能116bは、待ち時間を最低限の長さに抑えることができる。
(第3の実施形態)
さて、これまで第1〜第2の実施形態について説明したが、上述した第1〜第2の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した実施形態では、制御機能116bが、X線照射時の状態の準備にかかる準備時間を取得し、取得した準備時間に基づいて、フィラメント121に供給する電流を制御する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
例えば、取得機能116aは、準備の開始時間における抵抗値R11と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、準備の開始時間以降、フィラメント121に供給する電流値を取得する。例えば、制御機能116bは、まず、準備の開始時間における抵抗値R11に応じて図6に示したマトリクスを取得する。次に、制御機能116bは、X線照射時の状態を示す条件と取得したマトリクスとを比較することで、該当する条件に応じた制御モードを選択する。この際、各制御モードには、プリフラッシュ制御を行なうか否か、及び、プリフラッシュ制御を行なう場合の第2電流値の大きさを示す情報が対応付けられる。
例えば、図6のC1で示す条件には、プリフラッシュ制御を行なう旨の情報と、第2電流値として、図4の電流値A24とが対応付けられる。また、例えば、図6のC2で示す条件には、プリフラッシュ制御を行なう旨の情報と、第2電流値として、図3の電流値A23とが対応付けられる。また、例えば、図6のC3で示す条件には、プリフラッシュ制御を行なわない旨の情報が対応付けられる。また、例えば、図6のC4で示す条件には、プリフラッシュ制御を行なう旨の情報と、第2電流値として、図4の電流値A24とが対応付けられる。これにより、制御機能116bは、準備の開始時間以降、フィラメント121に供給する電流値を取得する。
そして、制御機能116bは、準備の開始時間以降、取得した電流値でフィラメント121に電流を供給する。ここで、プリフラッシュ制御を行なわない制御モードである場合、制御機能116bは、準備の開始時間以降、第1電流値のフィラメント電流を供給する。これにより、フィラメント121の温度は、図5に示したように、準備時間内に目標温度まで加熱される。
一方で、プリフラッシュ制御を行なう制御モードである場合、制御機能116bは、第2電流値のフィラメント電流を供給しつつ、フィラメント121の温度を表す温度情報を取得する。そして、制御機能116bは、第2電流値のフィラメント電流の供給によって、フィラメント121の温度が閾値に到達した場合に、第2電流値でのフィラメント電流の供給を終了し、第1電流値でのフィラメント電流の供給を開始する。これにより、フィラメント121の温度は、図3又は図4に示したように、準備時間内に目標温度まで加熱される。
なお、図6に示したマトリクスは、X線の照射を行なうごとに補正されてもよい。例えば、制御機能116bは、まず、マトリクスにおいて該当する条件に対応付いた情報に基づいて、フィラメント121に供給する電流を制御して、フィラメント121を目標温度まで加熱する。その後、制御機能116bは、フィラメント121の温度が目標温度に到達するまでにかかった時間と、X線照射時の状態の準備にかかった時間とに応じて、該当した条件に対応付いた情報を補正する。例えば、制御機能116bは、フィラメント121の温度が目標温度に到達するまでにかかった時間が、X線照射時の状態の準備にかかった時間よりも長かった場合、該当した条件に対応付いた第2電流値を、より大きな値に補正する。
また、上述した実施形態では、X線画像診断装置の一例として、X線診断装置1について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上述したX線管制御方法は、X線管制御装置を含んだX線CT装置が行なうこととしてもよい。この場合、X線CT装置におけるX線管制御装置は、X線管のフィラメントの温度を表す温度情報を取得して、X線照射が開始される際の温度情報と、X線照射時の状態を示す条件とに基づいて、フィラメントに供給する電流を制御する。これにより、X線CT装置は、フィラメントに対する負荷を軽減しつつ、フィラメントの加熱を完了する。
次に、X線CT装置は、X線管とX線検出器とを被検体の周りで回転させながら、X線高電圧装置からX線管に高電圧を供給させて、X線を発生させる。この際、X線検出器は、X線管から照射されたX線を検出し、検出したX線量に応じた信号を出力する。次に、X線CT装置におけるDAS(Data Acquisition System)は、X線検出器から出力された信号を収集して、X線CT装置の処理回路に出力する。そして、X線CT装置の処理回路が有する画像生成機能は、X線検出器から出力された信号に基づいてX線CT画像データを再構成する。なお、X線CT画像データは、信号に基づく画像データの一例である。
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
また、上述した実施形態で説明したX線管制御方法は、予め用意されたX線管制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このX線管制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このX線管制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、フィラメントに対する負荷を軽減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。