JP2019124639A - カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法 - Google Patents

カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法 Download PDF

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朱香 二村
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朱香 二村
弘樹 谷口
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弘樹 谷口
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Kyoichi Saito
恭一 斎藤
優香 松▲崎▼
Yuka Matsuzaki
優香 松▲崎▼
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Abstract

【課題】高い吸着容量及び高い不純物除去性を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法を提供する。【解決手段】カチオン交換基を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法であって、基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上浸漬する浸漬工程と、を有する、カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、強カチオン交換基を有するイオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法に関する。
免疫グロブリン(抗体)は、免疫反応を司る生理活性物質である。近年、医薬品、診断薬あるいは対応する抗原タンパク質の分離精製等の用途において、その利用価値が高まっている。抗体は免疫した動物の血液あるいは抗体産生能を保有する細胞の細胞培養液又は動物の腹水培養液から取得される。ただし、それらの抗体を含有する血液や培養液は、抗体以外のタンパク質、又は細胞培養に用いた原料液に由来する複雑な夾雑成分を包含しているため、それらの不純物成分から抗体タンパクを分離精製する必要があり、バイオテクノロジー産業において抗体タンパクの有効な大量精製技術の確立が望まれている。
液体クロマトグラフィーは、抗体の分離精製に重要である。抗体を分離するためのクロマトグラフィー手法として、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、及び逆相クロマトグラフィー等があり、これらの手法を組み合わせることで抗体が分離精製される。
イオン交換クロマトグラフィーは、吸着材表面のイオン交換基を固定相として移動相中に存在する対イオンを可逆的に吸着することにより分離を行う方法である。吸着材の基材としては、ビーズあるいは平膜及び中空糸等の膜などが採用されており、これらの基材にカチオン交換基又はアニオン交換基を結合したものが吸着材として市販されている。
カチオン交換基を有する吸着材では、低塩濃度の抗体溶液を吸着材に接触させることにより、抗体を吸着させ、移動相の塩濃度を高めることにより、吸着させた抗体を溶出させるバインド&エリュート法による精製が行われ、夾雑物の除去、特に抗体単量体と抗体2量体等の凝集体との分離がしばしば目的とされている。
近年では、抗体医薬の需要の増加から、抗体医薬品の大量生産及び製造コスト低減が指向されている。抗体医薬品の製造工程は、培養工程と精製工程からなっているが、培養技術の急速な進歩に対し精製効率はあまり向上しておらず、精製抗体のコストが高い一因といわれている。精製工程の効率向上が望まれている中で、効率向上のアプローチとして例えば吸着容量の向上、高純度精製、及びフロースルー精製方法の開発が盛んにおこなわれている。
吸着容量の向上により、担体使用量の削減、精製処理時間の短縮などの生産効率の改善が可能となる。またフロースルー様式は、不純物を選択的に吸着材に吸着させる精製方法の様式である。不純物を選択的に吸着するため、担体単位容量当たりのタンパク処理量が向上し、担体使用量の削減が可能となる。また、従来の吸着及び溶出を利用した方法に比べ、緩衝液の節約や工程の簡略化、高流速での抗体精製が可能であり、精製処理時間を短縮することができるため、産業上よく用いられている。
一方、フロースルー様式においては、抗体溶液が一定の流速で基材に接触するため、選択性を高めることが重要であるが、抗体単量体と抗体2量体の分離が困難な傾向にあり、抗体単量体と抗体2量体を分離するためには、カチオン交換基の密度をはじめとする、カチオン交換体の緻密な設計が必要である。
精製能力の高いイオン交換基を有する担体の製造方法として、グラフト重合によりイオン交換基を有するモノマーを導入する手法が広く用いられている。グラフト重合によって基材上に固定されたグラフト鎖に存在するイオン交換基によって、タンパク質の大量精製時にイオン交換担体が吸着対象タンパク質を吸着する。しかしながら、これまでのグラフト重合法は、イオン交換担体の吸着容量の向上において検討の余地があった。
タンパク質の吸着容量の向上及びフロースルー精製のためのタンパク吸着材に関する技術は、例えば特許文献1及び2に開示されている。
特許文献1では、タンパク質吸着能を有するアニオン交換基を含有する高分子鎖を含んだ吸着材に対し、該吸着材を高分子湿潤状態で加熱することにより、吸着性能を高めたタンパク質吸着材の製造方法が開示されているが、カチオン交換担体における詳細な検討はされていない。
フロースルー様式を用いたタンパク精製方法として、例えば特許文献2では、弱カチオン交換基を有するフロースルー精製に適したクロマトグラフィー担体が開示されており、多量の生理活性物質の精製を可能としている。しかし、特許文献2において、該クロマトグラフィー担体の不純物選択性を上げる検討はされておらず、高純度精製の観点において改善の余地がある。
特開2012−552号公報 国際公開第2016/013609号
カチオン交換基を有するイオン交換クロマトグラフィー担体において、タンパク質の吸着量及び不純物除去性能を向上させる方法には検討の余地がある。そこで、本発明では、高い吸着容量及び高い不純物除去性を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、高い吸着性能及び不純物除去性を有するカチオン交換体の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の形態によれば、カチオン交換基を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法であって、基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上浸漬する浸漬工程と、を有する、カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法が提供される。
上記の方法において、アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液であってもよい。
上記の方法の浸漬工程において、アルカリ性水溶液の温度が20℃以上であってもよい。
上記の方法において、放射線グラフト重合法により、基材にグラフト鎖が結合されてもよい。
上記の方法において、カチオン交換基が、スルホン酸基又はカルボキシル基であってもよい。
また、本発明の態様によれば、カチオン交換基を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法であって、基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に1分以上3時間未満浸漬する第1浸漬工程と、第1浸漬工程の後に、グラフト鎖が結合している基材を水溶液に浸漬する第2浸漬工程と、を有し、第2浸漬工程において、5000K・分以上のエネルギーが基材に加えられる、カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法が提供される。
上記の方法において、第2浸漬工程で用いられる水溶液が、第1浸漬工程で用いられるアルカリ性水溶液と同じであってもよい。
上記の方法において、第2浸漬工程で用いる水溶液が、pH6.0以上のアルカリ性水溶液であってもよい。
上記の方法において、第2浸漬工程で用いる水溶液が、純水であってもよい。
上記の方法の第2浸漬工程において、グラフト鎖が結合している基材を水溶液に15分以上浸漬してもよい。
上記の方法において、第2浸漬工程における水溶液の温度が、第1浸漬工程におけるアルカリ性水溶液の温度より高くともよい。
上記の方法の第2浸漬工程において、水溶液の温度が50℃以上であってもよい。
上記の方法の第2浸漬工程において、グラフト鎖が結合している基材を水溶液に10時間以上浸漬してもよい。
上記の方法の第2浸漬工程において、水溶液の温度が20℃以上であってもよい。
上記の方法において、放射線グラフト重合法により、基材にグラフト鎖が結合されてもよい。
上記の方法において、カチオン交換基が、スルホン酸基又はカルボキシル基であってもよい。
本発明によれば、高い吸着容量及び高い不純物除去性を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法が提供される。
実施例に係る浸漬工程及びリゾチーム吸着量を示す表である。 実施例及び比較例に係る第1及び第2浸漬工程並びにリゾチーム吸着量を示す表である。 クロマトチャートの一例である。 図3に示したクロマトチャートの部分拡大図である。 実施例に係る浸漬工程を示す表である。 実施例及び比較例に係る凝集体除去評価試験の条件及び結果を示す表である。 実施例及び比較例に係る第1及び第2浸漬工程を示す表である。 実施例及び比較例に係る凝集体除去評価試験の条件及び結果を示す表である。 実施例及び比較例に係る第1及び第2浸漬工程並びにリゾチーム吸着量を示す表である。 実施例及び比較例に係る第1及び第2浸漬工程並びにリゾチーム吸着量を示す表である。 実施例及び比較例に係るリゾチーム吸着量を示す表である。
以下、本発明の好適な実施の形態(以下において、「実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部材の組み合わせ等を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
実施の形態に係るカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法は、基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上浸漬する浸漬工程と、を有する。
あるいは、実施の形態に係るカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法は、基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に1分以上3時間未満浸漬する第1浸漬工程と、第1浸漬工程の後に、グラフト鎖が結合している基材を水溶液に浸漬する第2浸漬工程と、を有し、第2浸漬工程において、5000K・分以上のエネルギーが基材に加えられる。また第2浸漬工程において5000K・分以上のエネルギーが基材に加えられる場合、第2浸漬工程の実施途中に別の工程を実施してもよい。
カチオン交換基を有するグラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上浸漬する浸漬工程を実施する場合は、その後、グラフト鎖が結合している基材を水溶液に浸漬する第2浸漬工程を実施してもよいし、しなくともよい。
実施の形態に係るカチオンイオン交換クロマトグラフィー担体が備える基材の形状の例としては、特に限定されないが、中空糸膜状、平膜状、不織布状、モノリス、キャピラリー、焼結体、円板及び円筒状等が挙げられる。特に好ましくは、合成の簡便さや処理時の流速の観点から、中空糸膜状、平膜状、及び不織布状等の平膜状である。また、基材の材料の例としては、特に限定を受けないが、ポリオレフィン系重合体や、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、及びセルロース等が挙げられる。その中でも特に放射線グラフト重合を行う場合、放射線照射によるラジカルの安定性の観点から、ポリオレフィン系重合体や、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステルから構成されていることが好ましい。
ポリオレフィン系重合体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン及びフッ化ビニリデンなどのオレフィン単独重合体、該オレフィンの2種以上の共重合体、又は1種もしくは2種以上のオレフィンと、パーハロゲン化オレフィンと、の共重合体などが挙げられる。パーハロゲン化オレフィンとしては、テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度に優れ、かつタンパク質などの夾雑物の高い吸着容量が得られる点で、ポリエチレン又はポリフッ化ビニリデンが好ましい。また、ポリアミドとしては特に限定を受けないが、ナイロン6(ε−カプロラクタムの重縮合体)、ナイロン11(ウンデカンラクタムの重縮合体)、ナイロン12(ラウリルラクタムの重縮合体)、ナイロン66(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共縮重合体)、ナイロン610(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共縮重合体)、ナイロン6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の共縮重合体)、ナイロン9T(ノナンジアミンとテレフタル酸の共縮重合体)、ナイロンM5T(メチルペンタンジアミンとテレフタル酸の共縮重合体)、ナイロン621(カプロラクタムとラウリルラクタムの共縮重合体)、p−フェニレンジアミンとテレフタル酸の共縮重合体、m−フェニレンジアミンとイソフタル酸の共縮重合体等が挙げられる。ポリエステルとしては、特に限定を受けないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。
基材は、例えば複数の細孔を有する。細孔径は、特に限定されないが、基材が中空糸膜状の場合は、例えば5nm以上1000nm以下であり、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは150nm以上、あるいは400nm以上である。また、表面積の観点から、好ましくは900nm以下、より好ましくは800nm以下、さらに好ましくは700nm以下、特に好ましくは650nm以下である。細孔径が5nm以上であると、分離できる抗体タンパク質の分子量が大きくなる傾向にある。また細孔径が1000nm以下であると、当該膜状基材の表面積が大きくなり、不純物の結合容量が大きくなる傾向にある。
また、後述する基材表面にグラフト重合法によってイオン交換基を導入する場合において、グラフト重合に用いる共重合体中の親水性モノマーが占める割合が高い場合やグラフト率が高い場合は、透水性の観点から400nm以上650nm以下の孔径が特に好ましい。
また、基材が平膜状や不織布状の場合、細孔径が大きく強度の低い膜であっても、外部からハウジング等で基材を支持したり、基材同士を積層したりすることで、強度の低い基材を用いることが可能となる。基材が平膜状や不織布状の場合の細孔径の好ましい範囲としては、10nm以上1mm以下であり、タンパク溶液の処理流速の観点から好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、更に好ましくは300nm以上である。また表面積の観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
実施の形態に係るカチオン交換クロマトグラフィー担体は、グラフト重合法により基材に共有結合で固定された共重合体であるグラフト鎖を備える。グラフト鎖は、カチオン交換基を備える。カチオン交換基としては、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸、及びスルホン酸基等が挙げられる。グラフト重合法としては、放射線グラフト重合法や、表面リビングラジカル重合法が挙げられる。好ましくは、製造の簡便性の観点から、放射グラフト重合法を用いる。
放射線グラフト重合法で基材表面に共重合体を固定する場合、基材にラジカルを生成させるためにはいかなる手段も採用しうるが、基材に電離性放射線を照射すると、基材全体に均一なラジカルが生成するため、好適である。電離性放射線の種類としては、γ線、電子線、β線、及び中性子線等が利用できるが、工業規模での実施には電子線又はγ線が好ましい。電離性放射線は、コバルト60、ストロンチウム90、及びセシウム137などの放射性同位体から、又はX線撮影装置、電子線加速器及び紫外線照射装置等から得られる。
電離性放射線の照射線量は、ラジカル発生量に関与し得る。ラジカル発生量は、形成されるグラフト鎖の密度に関与し得る。タンパク質分子のグラフト鎖への吸着形態の観点から、グラフト鎖密度はタンパク質分子が侵入し得る状態であることが好ましい。すなわち、ラジカルの発生量が、タンパク質分子のグラフト鎖への吸着に関与し得る。上記観点より、電離性放射線の照射線量は、1kGy以上1000kGy以下が好ましく、より好ましくは2kGy以上500kGy以下、さらに好ましくは5kGy以上200kGy以下、特に好ましくは10kGy以上30kGy以下である。照射線量が1kGy以上の場合、ラジカルが均一に生成しやすい傾向にある。また、膜状基材の物理的強度の観点から、照射線量が1000kGy以下であるとよい。
電離性放射線の照射によるグラフト重合法には、一般に基材にラジカルを生成した後、次いでラジカルを反応性化合物と接触させる前照射法と、基材を反応性化合物と接触させた状態で基材にラジカルを生成させる同時照射法と、に大別される。実施の形態においては、いかなる方法も適用しうるが、オリゴマーの生成が少ない前照射法が好ましい。ここでいうオリゴマーとは、遊離オリゴマーのことを指す。遊離オリゴマーはグラフト鎖中には取り込まれないため、生成されないことが好ましい。
実施の形態において共重合体の重合時に使用する溶媒は、反応性化合物を均一溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒として、例えば、メタノールやエタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等のアルコール類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトンや2−ブタノン等のケトン類、水、又はそれらの混合物等が挙げられる。
実施の形態に係るカチオン交換基を導入する方法としては特に限定を受けないが、グラフト重合の際に、カチオン交換基を有するモノマーを含む反応溶液を用いる方法や、「カチオン交換基導入前駆体」を有するモノマーを含む反応溶液を用いて共重合した後、カチオン交換基導入前駆体をカチオン交換基に変換する方法等が挙げられる。
カチオン交換基を有するモノマーを含む反応溶液を用いる方法では、カチオン交換基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸化合物、及びメタクリル酸化合物、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドアルキルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、及びスチレンスルホン酸等が挙げられる。アクリル酸化合物としては、2−アクリロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−アクリロイロキシエチルフタル酸等が挙げられる。メタクリル酸化合物としては、2−メタクリロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイロキシエチルフタル酸等が挙げられる。
「カチオン交換基導入前駆体」を有するモノマーを含む反応溶液を用いて共重合した後、カチオン交換基導入前駆体をカチオン交換基に変換する方法において、「カチオン交換基導入前駆体」とは、グラフト鎖にカチオン交換基を付与しうる官能基のことをいい、例えばエポキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。「カチオン交換基導入前駆体を有するモノマー」とは、カチオン交換基を付与しうる官能基を有するモノマーのことをいい、例えば、スチレン及びグリシジルメタクリレート等が挙げられる。また、「カチオン交換基導入前駆体」は「カチオン交換基の前駆体」を含みうる。「カチオン交換基の前駆体」とは、例えばカチオン交換基に保護基が付いたものであり、例えば、フェニルビニルスルホネート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルアクリレート、及びアリルメタクリレート等のモノマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
カチオン交換基がスルホン酸基であり、スルホン酸基導入前駆体を有するモノマーがグリシジルメタクリレートの場合、グリシジルメタクリレートを重合した後、亜硫酸ナトリウムと反応させることにより、グリシジルメタクリレートのエポキシ基の一部又は全部をスルホン酸基に変換することができる。
実施の形態に係るカチオン交換クロマトグラフィー担体における基材へのグラフト鎖の結合率(グラフト率)は、基材の密度により、最適値が異なりうる。基材がポリエチレンの場合は、吸着容量及び立体的な吸着の観点から10%以上が好ましく、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上、50%以上、60%以上、又は70%以上である。また、力学的に安定な強度を確保するという観点から、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下、更に好ましくは120%以下である。グラフト率は下記式(1)によって表される。
g(%)=(w1−w0)/w0×100 (1)
ここで、w0はグラフト鎖が導入される前の基材(例えば、多孔質中空糸)の質量、w1はグラフト鎖が導入された後の基材の質量である。本開示において、グラフト率は、グラフト重合前後の質量変化として定義している。すなわち、本開示においてグラフト率は、グラフト重合後であって官能基変換前に測定しており、官能基変換による質量変化は考慮していない。
基材がポリフッ化ビニリデンの場合は、ポリフッ化ビニリデンはポリエチレンに比べ、密度が高いため、適したグラフト率がポリエチレンの場合と異なる。基材がポリフッ化ビニリデンの場合は、吸着容量の観点から5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上である。また、力学的に安定な強度を確保するという観点から、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。
また、グラフト鎖の割合は、カチオン交換クロマトグラフィー担体体積当たりのグラフト鎖の質量(グラフト鎖密度)として表すことも出来る。その場合、吸着容量等の観点から、グラフト鎖密度は、0.03g/mL以上が好ましく、より好ましくは0.04g/mL以上、更に好ましくは0.05g/mL以上、特に好ましくは0.06g/mL以上、0.07g/mL以上、0.08g/mL以上、0.09g/mL以上、0.1g/mL以上、0.11g/mL以上、又は0.12g/mL以上である。力学的に安定な強度の観点からは、グラフト鎖密度は、好ましくは0.25g/mL以下、より好ましくは0.20g/mL以下、更に好ましくは0.18g/mL以下である。本開示において、上記の値は、製造の過程でなく、最終産物として得られたカチオン交換担体のグラフト鎖の量から算出している。グラフト鎖密度は下記式(2)によって表される。
g(g/mL)=(w2−w0)/v1×100 (2)
ここで、w2は最終産物として得られたカチオン交換クロマトグラフィー担体の質量であり、v1は最終産物として得られたカチオン交換クロマトグラフィー担体の体積である。なお、上述したように、式(1)においては、w1は、グラフト重合直後で、その後の官能基変換を行う前の基材の質量である。
実施の形態において、浸漬工程又は第1浸漬工程で用いるアルカリ性水溶液は、pH9.0以上である。第2浸漬工程で用いるアルカリ性水溶液は、pH6.0以上である。本開示において、特に限定がなければ、アルカリ性水溶液とは、pHが6.0より高い水溶液をいう。pHが6.0よりも高い水溶液であれば、アルカリ性水溶液とは、緩衝液も含む。水溶液のpHがカチオン交換基のpKaより高ければカチオン交換基がイオン化するため、pHが6.0から7.0の間でも、水溶液は相対的にアルカリ性であるといえる。
第1浸漬工程で用いるアルカリ性水溶液としては、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、Tris緩衝液及びリン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限られない。
実施の形態において、第2浸漬工程で用いる水溶液はpH6.0以上のアルカリ水溶液であって、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、Tris緩衝溶液及びリン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限られない。第1浸漬工程で用いられるアルカリ水溶液と、第2浸漬工程で用いられる水溶液が異なる場合、第2浸漬工程を実施する前に、基材の洗浄操作を行ってもよいし行わなくてもよい。洗浄を実施する場合の洗浄溶液の例としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、Tris緩衝溶液、リン酸緩衝溶液及び純水が挙げられるが、これらに限られない。
実施の形態において、第2浸漬工程で用いる水溶液は純水でもよい。第2浸漬工程を実施する前に、基材の洗浄操作を行ってもよいし行わなくてもよい。洗浄を実施する場合の洗浄溶液の例としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、Tris緩衝溶液、リン酸緩衝溶液及び純水が挙げられるが、これらに限られない。
実施の形態において、第1浸漬工程で用いられるアルカリ水溶液と、第2浸漬工程で用いられる水溶液が同一でもよい。第1浸漬工程で用いられるアルカリ水溶液と、第2浸漬工程で用いられる水溶液が同一の場合、第2浸漬工程を実施する前に、基材の洗浄操作を、行ってもよいし行わなくてもよい。すなわち、第1浸漬工程で用いられるアルカリ水溶液を変更せず、そのまま第2浸漬工程で用いてもよい。洗浄を実施する場合の洗浄溶液の例としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、Tris緩衝溶液、リン酸緩衝溶液及び純水が挙げられるが、これらに限られない。
pH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上グラフト鎖が結合された基材を浸漬する浸漬工程の実施、あるいは第1浸漬工程及び第2浸漬工程の実施により、製造されるカチオン交換クロマトグラフィー担体の吸着容量及び不純物除去性能が向上する。これは、理論に束縛されるものではないが、以下の理由によると推定される。
カチオン交換クロマトグラフィーにおいては、担体(吸着材)へタンパク質が吸着するのは、タンパク質分子と吸着材の有するイオン交換基との静電的な相互作用によるものである。そのため、担体がタンパク質を吸着するためには、担体が吸着点となり得るイオン交換基を有し、かつイオン交換基が、タンパク質分子が十分に接触可能な基材表面上に形成されたグラフト鎖に存在することが必要と考えられる。基材表面に形成されたグラフト鎖を、以下、「表面グラフト鎖」と称する。ここでいう基材表面とは、移動相と接する界面にあたる部分を指し、基材の細孔表面も含む。
本実施形態において、タンパク質吸着能を有する官能基を含有するグラフト重合鎖は、グラフト結合工程において、多孔性基材内部にも形成されることがある。基材内部に形成されたグラフト鎖を、以下、「内部グラフト鎖」と称する。ここでいう基材内部とは、基材における基材表面以外の結晶部及び非結晶部を指す。
ここで、第1浸漬工程において、グラフト鎖が形成された基材をアルカリ性溶液に浸漬することにより、グラフト鎖中のカチオン交換基が荷電される。グラフト鎖が荷電した状態で第2浸漬工程を実施すると、カチオン交換基同士による静電反発が生じてグラフト鎖が伸長し、内部グラフト鎖が静電反発により膨張する。これにより、基材内部から基材表面に内部グラフト鎖が伸長することで表面グラフト鎖が増え、結果としてタンパク吸着点として作用するカチオン交換基が増大するためと考えられる。また、上記に加えて、内部グラフト鎖の膨張により、基材を構成する高分子が疎になるため、より内部グラフトが外部へ伸長しやすくなり、表面グラフト鎖が増大するとも考えられる。なお、第1浸漬工程においてもカチオン交換基同士による静電反発が始まり得るし、第2浸漬工程においてもグラフト鎖中のカチオン交換基の荷電が生じ得る。
また、pH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上基材を浸漬する浸漬工程を実施すれば、第1浸漬工程と第2浸漬工程を実施した場合と同様の現象がカチオン交換基を有するグラフト鎖に生じているものと考えられる。
グラフト重合法によって製造されたイオン交換担体の不純物、すなわち抗体凝集体への吸着における選択性は、必ずしも理論に束縛されないが、グラフト鎖にカチオン交換基が立体的に配置されることにより、グラフト鎖が吸着対象分子を立体的に吸着することが可能となるためと考えられる。特にグラフト重合法によって製造されたイオン交換担体をフロースルー様式で用いる場合、抗体単量体に比べて分子量の大きい抗体凝集体が、グラフト鎖上のカチオン交換基と多点結合するため、抗体凝集体が選択的に担体に吸着され、抗体単量体を高い純度で得ることが可能となると推測される。
このように、本実施形態によれば、表面グラフト鎖が増加するため、抗体凝集体の吸着容量を向上させることができ、また静電反発によってグラフト鎖同士の自由度が高まり、効率的な多点結合が促進されるものと考えられる。
カチオン交換基を荷電させる観点から、浸漬工程又は第1浸漬工程におけるアルカリ性水溶液のpHは、pH9.0以上、好ましくはpH10.0以上、さらに好ましくはpH11.0、pH12.0以上、あるいはpH13.0以上である。
実施の形態において、浸漬工程の浸漬時間は、担体の形態により溶液の拡散速度に依存するため一概には決められるものではないが、例えば、3時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、あるいは25時間あるいは30時間以上が好ましい。また、基材の強度及びクロマトグラフィーの性能を維持する観点から、浸漬工程の浸漬時間は、72時間以下、56時間以下、48時間以下、あるいは42時間以下、36時間以下が好ましい。
実施の形態において、浸漬工程におけるアルカリ性水溶液の温度は、例えば、20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上である。
実施の形態において、第1浸漬工程の浸漬時間は、担体の形態により溶液の拡散速度に依存するため一概には決められるものではないが、例えば、1分以上、5分以上、10分以上、15分以上、30分以上、1時間以上、あるいは2時間以上が好ましい。また、製造の効率の観点から、第1浸漬工程の浸漬時間は、3時間以下が好ましい。
実施の形態において、第1浸漬工程におけるアルカリ性水溶液の温度は、例えば、20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上である。
実施の形態において、第2浸漬工程の浸漬時間は、内部グラフト鎖の静電反発が生じた状態を維持することにより、表面グラフト鎖を増大させるという観点から、例えば15分以上、30分以上、1時間以上、2時間以上、5時間以上、10時間以上、15時間以上、20時間以上、あるいは25時間あるいは30時間以上が好ましい。
実施の形態において、第2浸漬工程における水溶液の温度は、20℃以上、より好ましくは25℃以上、さらに好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上、40℃以上、45℃以上、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上である。
実施の形態において、第2浸漬工程においては、担体に加わるエネルギー量、すなわち浸漬時間及び水溶液の温度が相乗的に影響し得る。したがって、第2浸漬工程における水溶液の温度が高ければ浸漬時間は短くてもよく、第2浸漬工程における水溶液の温度が低ければ浸漬時間は長くなる傾向にある。第2浸漬工程における水溶液の絶対温度と浸漬時間の積は、5000K・分以上、6000K・分以上、7000K・分以上、8000K・分以上、9000K・分以上、10000K・分以上、11000K・分以上、12000K・分以上が好ましい。また、基材の強度及びクロマトグラフィーの性能を維持する観点から、エネルギーは、1500000K・分以下、1400000K・分以下、1300000K・分以下、1200000K・分以下、1100000K・分以下、1000000K・分以下、900000K・分以下、800000K・分以下が好ましい。
以下に、実施の形態を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは実施の形態を何ら限定するものではない。
[製造例1]
製造例1では、放射線グラフト重合法によって中空糸状のカチオン交換膜を作製した。
1)カチオン交換膜の作製
2−ヒドロキシエチルメタクリレート5.10g、グリシジルメタクリレート0.69gをメタノール115mLに溶解させ、30分間窒素バブリングしたものを反応液として用いた。外径3.0mm、内径2.0mm、平均孔径0.25μmのポリエチレン多孔質中空糸3.03g(15cm、15本)を密閉容器に入れて、容器内の空気を窒素で置換した。その後、容器の外側からドライアイスで冷却しながら、γ線25kGyを照射し、ラジカルを発生させた。得られたラジカルを有するポリエチレン多孔質中空糸をガラス容器に移し、200Pa以下に減圧することにより、反応管内の酸素を除いた。これに40℃に調整した上記反応液を、55mL導入し、16時間静置した。その後、中空糸をメタノールで洗浄し、真空乾燥機中で真空乾燥させ、5.36g、グラフト率77%の中空糸膜を得た。
放射線グラフト重合法によりグラフト鎖を導入した中空糸を、亜硫酸ナトリウムと、イソプロピルアルコールの混合水溶液(亜硫酸ナトリウム/イソプロピルアルコール/純水=10/15/75wt%)160gに投入し、80℃で20時間反応を行い、グラフト鎖中のエポキシ基をスルホン酸基に変換した。反応後、純水で洗浄した。その後、この中空糸を0.5mol/L硫酸中に投入し、80℃で2時間反応を行うことで、グラフト鎖中に残存していたエポキシ基をジオール基に変換した。水及びメタノールで洗浄した後真空乾燥させ、5.48gの、カチオン交換膜を得た。
この中空糸1本(0.365g)をエタノールにより湿潤させ、水に置換した後、水を入れたメスシリンダーに投入して体積の増加分により体積を測定したところ、1.2mLであった。基材膜の質量が0.202gであることから、グラフト鎖の質量は0.163g、密度は0.136g/mLであった。水を除去した後、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を10mL加えた。1時間放置した後、水酸化ナトリウム水溶液を取り出し、純水10mLを加えた。更に1時間放置した後、純水を回収することにより、膜内に残った水酸化ナトリウムを回収した。回収した水酸化ナトリウム溶液を統合し、0.1mol/L塩酸により滴定をおこなったところ、8.78mLを要した。ブランク(イオン交換基を有しない中空糸)の滴定では9.98mLであったことから、水酸化ナトリウムと反応した、カチオン交換膜が有するスルホン酸基の量は120μmol(0.000120mol)であった。これを測定した体積で除して算出されたスルホン酸基の密度は100mmol/Lであった。得られたカチオン交換膜をカチオン交換膜1とした。
スルホン酸基を有するモノマー単位の質量は、スルホン酸基の量から求めることができる。スルホン酸基に変換後のグリシジルメタクリレートの分子量は224.23であることから、スルホン酸基を有するモノマー単位の質量は、0.0269gであった。また、中空糸1本あたりのグラフト鎖の質量は、反応前後の多孔質中空糸の質量から、0.163gであった。したがって、中性モノマー単位の質量は、中空糸1本あたりのグラフト鎖の質量と、スルホン酸基を有するモノマー単位の質量と、から、0.1361gであった。ここから計算すると、スルホン酸基を有するモノマー単位の質量は、中性モノマー単位の質量の1/5.87であった。
[実施例1]
実施例1では製造例1で得られたカチオン交換膜1を用いた。カチオン交換膜1を親水化するためにメタノールによりカチオン交換膜1を細孔内まで湿潤させた後、メタノールを純水に置換してメタノールを除去した。次に、図1に示すとおり、浸漬工程としてカチオン交換膜をpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃にて18時間5分間浸漬させた。なお、実施例において水溶液のpHは、pHメーター(型番HM−25R、東亜ディーケーケー株式会社製)にて測定を行った。
その後、以下の手順に従って、浸漬工程を経たカチオン交換膜のリゾチームの吸着量を測定した。カチオン交換膜0.1gを、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した。平衡化後のカチオン交換体を、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に溶かした濃度1g/Lのリゾチーム溶液(Sigma−Aldrich製、L6876−10G)に25℃、100rpmで浸漬振とうし、カチオン交換膜にリゾチームを吸着させた。リゾチームの吸着量は、リゾチーム溶液への浸漬後96時間経過時に測定した。吸着操作前及び96時間吸着操作後のリゾチーム溶液の濃度を吸光度より測定し、リゾチーム溶液で減少したリゾチームの量をカチオン交換膜への吸着量とした。吸着操作におけるリゾチーム溶液とカチオン交換体の比率(mL/g)は1000mL/gとした。カチオン交換体1g当たりの吸着したリゾチーム量を図1に示す。pH6.0の溶液中ではリゾチームは正に帯電しているため、リゾチームの吸着量が多いほど、カチオン交換膜のカチオン交換基が有効に機能していることを示している。
[実施例2]
実施例2では製造例1で得られたカチオン交換膜1を用いた。浸漬工程としてカチオン交換膜1をpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃にて3時間浸漬させた以外は、実施例1と同様に実施し、浸漬工程を経たカチオン交換膜のリゾチームの吸着量を測定した。結果を図1に示す。
[実施例3]
実施例3では製造例1で得られたカチオン交換膜1を用いた。浸漬工程としてカチオン交換膜1をpH9.0の100mmol/L Tris−HCl水溶液に20℃にて18時間5分浸漬させた以外は、実施例1と同様に実施し、浸漬工程を経たカチオン交換膜のリゾチームの吸着量を測定した。結果を図1に示す。
[実施例4]
実施例4では製造例1で得られたカチオン交換膜1を用いた。メタノールによりカチオン交換膜1を細孔内まで湿潤させた後、メタノールを純水に置換した。次に、図2に示すとおり、第1浸漬工程としてカチオン交換膜1をpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃にて5分間浸漬させた後、第2浸漬工程としてカチオン交換膜を80℃、pH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬させた以外は実施例1と同様の操作を行い、第1及び第2の浸漬工程を経たカチオン交換膜のリゾチーム吸着量を測定した。結果を図2に示す。
[実施例5]
実施例5では、図2に示すとおり、第1浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で30分間浸漬させ、第2浸漬工程として80℃の純水に2時間浸漬させた以外は実施例4と同様の操作を行い、リゾチーム吸着量を測定した。結果を図2に示す。
[比較例1]
比較例1では、図2に示すとおり、浸漬工程、第1浸漬工程及び第2浸漬工程のいずれも実施しなかったカチオン交換膜1を用いてリゾチームの吸着量を測定した。ゾチーム吸着量の測定方法は実施例1と同様に実施した。結果を図2に示す。リゾチーム吸着量は、実施例1から5と比較して少なかった。
[比較例2]
比較例2では、図2に示すとおり、第1浸漬工程でpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で5分間浸漬させ、第2浸漬工程は実施しなかったカチオン交換膜を用いて、実施例1と同様にリゾチーム吸着量を測定した。結果を図2に示す。リゾチーム吸着量は、実施例1から5と比較して少なかった。
[比較例3]
比較例3では、図2に示すとおり、第1浸漬工程を実施せず、第2浸漬工程で80℃の純水に2時間浸漬させたカチオン交換膜を用いて、実施例1と同様にリゾチーム吸着量を測定した。結果を図2に示す。リゾチーム吸着量は、実施例1から5と比較して少なかった。
[実施例6]
製造例1で用いたカチオン交換膜1をモジュール化したものをカチオン交換体として用い、下記の手順にて凝集体除去性能評価を実施した。
(細胞培養液の調製)
抗体タンパク質として、CHO細胞CRL12445から発現させたヒトモノクローナル抗体(以降、CRL12445抗体)を含む培養液上澄みを用意した。CRL12445抗体生産細胞を含む培養液を、ろ過膜(旭化成メディカル社製、商品名 BioOptimal(登録商標) MF−SL)を用いてろ過し、不純物と抗体を含む抗体溶液(培養上澄)を取得した。
(アフィニティーカラムによる抗体タンパク質の精製)
リン酸緩衝液(20mmol/Lリン酸ナトリウム+150mmol/L NaCl(pH8.0))で平衡化したプロテインAカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス製、MabSelect Sureを充填したカラム)に、抗体溶液を添加し、プロテインAに抗体タンパク質を吸着させた。次に、カラムにリン酸緩衝液(20mmol/Lのリン酸ナトリウム+150mmol/L NaCl(pH8.0))を通液して洗浄した後、カラムに溶出緩衝液(100mmol/Lクエン酸ナトリウム(pH3.6))を通液して、プロテインAカラムから抗体タンパク質を溶出させて、不純物がある程度低減された抗体溶液を回収した。
(凝集体の調製)
得られた抗体溶液の一部に塩酸を加え、pH2.5に調整し、一時間放置した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和し、多量の抗体凝集体を含む抗体溶液を調製した。
(凝集体を含む抗体溶液の調製)
プロテインAカラムから得られた抗体溶液を15mmol/酢酸緩衝液(pH6.0)にバッファー交換した溶液と、多量の凝集体を含む抗体溶液を15mmol/L酢酸緩衝液(pH6.0)にバッファー交換した溶液を任意の割合で混合し、凝集体を含む抗体溶液を調製した。
(凝集体量の測定)
得られた抗体溶液を下記の条件により、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)装置を用いて測定した。
カラム;ACQUITY YPLC BEH200 SEC1.7μm(Waters社製)
カラム温度:30℃
システム:ACQUITY UPLC H CLASS(waters社製)
移動相:0.1mol/Lリン酸水素二ナトリウム+0.2mol/L L(+)−アルギニン水溶液(塩酸でpH6.7に調整)
その結果、図3に例示するクロマトチャートが得られ、図3の一部を拡大したものが図4である。図4の(1)及び(2)のピークは抗体の凝集体を表しており、(3)で現れるピークは抗体の単量体を表している。以下の実施例及び比較例において、最初に現れる凝集体のピークを凝集体(1)、2番目に現れる凝集体のピークを凝集体(2)という。
(カチオン交換体の浸漬工程)
カチオン交換体を、メタノールにより細孔内まで湿潤させた後、メタノールを純水に置換した。続いて、図5に示すように、浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で18時間5分、カチオン交換体を浸漬させた。その後、以下の手順に従って、浸漬工程を経たカチオン交換体の凝集体除去性能の評価を実施した。
(凝集体除去評価)
上記カチオン交換体に、図6に示すように、抗体タンパク質の凝集体成分(不純物)と単量体成分(目的の生理活性物質)を含む抗体溶液を接触させた。加えた量は50mL(約5.3mg/mLの濃度)であり、流速は1.5mL/分であった。抗体溶液を流した後、流速1.5mL/分で、15mmol/L酢酸緩衝液(pH6.0)10mLを用いてカチオン交換体を洗浄した。フロースルー工程と洗浄工程で60mLの溶液を回収した。回収した溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)で分析したところ、凝集体成分の含有量は減少していた。結果を図6に示す。
[実施例7]
実施例7では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で5分、第2浸漬工程としてpH14.0、80℃の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に2時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。
[実施例8]
実施例8では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH10.0の100mmol/L Tris−HCl水溶液に20℃で5分、第2浸漬工程としてpH10.0、80℃の100mmol/L Tris−HCl水溶液に2時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。
[実施例9]
実施例9では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH9.0の100mmol/L Tris−HCl水溶液に20℃で5分、第2浸漬工程としてpH9.0、80℃の100mmol/L Tris−HCl水溶液に2時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。
[実施例10]
実施例10では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で30分、第2浸漬工程として80℃の純水に2時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。
[比較例4]
比較例4では、図7に示すように、第1浸漬工程、第2浸漬工程を未実施であること以外は、実施例6と同様の操作を行い、カチオン交換体の凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。凝集体除去性能は、実施例6から10と比較して低かった。
[比較例5]
比較例5では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で5分、カチオン交換体を浸漬させ、第2浸漬工程は未実施であること以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。凝集体除去性能は、実施例6から10と比較して低かった。
[比較例6]
比較例6では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH8.0の100mmol/L Tris−HCl水溶液に20℃で30分、第2浸漬工程として純水に20℃で18時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。凝集体除去性能は、実施例6から10と比較して低かった。
[比較例7]
比較例7では、図7に示すように、第1浸漬工程としてpH8.0の100mmol/L Tris−HCl水溶液に20℃で30分、第2浸漬工程として80℃の純水に2時間、カチオン交換体を浸漬させた以外は、実施例6と同様の操作を行い、凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図6に示す。凝集体除去性能は、実施例6から10と比較して低かった。
[製造例2]
製造例2では以下に説明するカチオン交換体を作成した。2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.08g、ブチルメタクリレート1.54g、メタクリル酸0.57gを50容量%t−ブチルアルコール水溶液240mLに溶解させ、30分間窒素バブリングしたものを反応液として用いた。外径3.0mm、内径2.0mm、平均孔径0.25μmのポリエチレン多孔質中空糸3.00g(15cm、15本)を密閉容器に入れて、容器内の空気を窒素で置換した。その後、容器の外側からドライアイスで冷却しながら、γ線25kGyを照射し、ラジカルを発生させた。得られたラジカルを有するポリエチレン多孔質中空糸をガラス容器に移し、200Pa以下に減圧することにより、反応管内の酸素を除いた。これに40℃に調整した上記反応液を、140mL導入し、16時間静置した。その後、中空糸をメタノールで洗浄し、真空乾燥機中で真空乾燥させ、5.31g、グラフト率77%のカチオン交換膜を得た。製造例1と同様にし、カチオン交換基密度を求めたところ、175mmol/Lであった。これをモジュール化(膜体積0.25mL)し、カチオン交換体とした。また、カチオン交換基モノマー及び中性モノマーの質量割合は、それぞれ、0.103及び0.897であった。
[実施例11]
実施例11では、製造例2で得られたカチオン交換体を下記の手順で浸漬処理し、浸漬処理されたカチオン交換体の凝集体除去性能評価を実施した。
(細胞培養液の調製)
抗体タンパク質として、AE6F4抗体(ヒトモノクローナル抗体)を含む培養液上澄みを用意した。AE6F4産生細胞は、九州大学大学院農学研究院、片倉喜範准教授よりご提供頂いた。AE6F4抗体産生細胞の培養は、文献(日本生物工学会講演要旨集、1994年、65巻、65ページ)を参考に培養した。AE6F4抗体産生細胞を含む培養液を、ろ過膜(旭化成メディカル社製、商品名 BioOptimal(登録商標) MF−SL)を用いてろ過し、不純物と抗体を含む抗体溶液(培養上澄)を取得した。
(アフィニティーカラムによる抗体タンパク質の精製)
リン酸緩衝液(20mmol/Lリン酸ナトリウム+150mmol/L NaCl(pH8.0))で平衡化したプロテインAカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス製、MabSelect Sureを充填したカラム)に、抗体溶液を添加し、プロテインAに抗体タンパク質を吸着させた。次に、カラムにリン酸緩衝液(20mmol/Lのリン酸ナトリウム+150mmol/L NaCl(pH8.0))を通液して洗浄した後、カラムに溶出緩衝液(100mmol/Lクエン酸ナトリウム(pH3.6))を通液して、プロテインAカラムから抗体タンパク質を溶出させて、不純物がある程度低減された抗体溶液を回収した。
(凝集体の調製)
得られた抗体溶液の一部に塩酸を加え、pH3.0に調整し、一時間放置した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和し、多量の抗体凝集体を含む抗体溶液を調製した。
(凝集体を含む抗体溶液の調製)
プロテインAカラムから得られた抗体溶液を15mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)にバッファー交換した溶液と、多量の凝集体を含む抗体溶液を15mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)にバッファー交換した溶液を任意の割合で混合し、凝集体を含む抗体溶液を調製した。
(凝集体量の測定)
得られた抗体溶液を下記の条件により、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)装置を用いて測定した。
カラム;ACQUITY YPLC BEH200 SEC1.7μm(Waters社製)
カラム温度:30℃
システム:ACQUITY UPLC H CLASS(waters社製)
移動相:0.1mol/Lリン酸水素二ナトリウム+0.2mol/L L(+)−アルギニン水溶液(塩酸でpH6.7に調整)
(カチオン交換体の浸漬工程)
カチオン交換体を、メタノールにより細孔内まで湿潤させた後、メタノールを純水に置換し、続いて図8に示すように、浸漬工程としてpH14.0の1mol/L水酸化ナトリウム水溶液に20℃で18時間5分浸漬させたカチオン交換体を用い、以下の手順に従って凝集体除去性能の評価を実施した。
(凝集体除去評価)
カチオン交換体に、図9に示すように抗体タンパク質の凝集体成分(不純物)と単量体成分(目的の生理活性物質)を含む抗体溶液を接触させた。加えた量は40mL(約5.0mg/mLの濃度)であり、流速は1.5mL/分であった。抗体溶液を流した後、流速1.5mL/分で、15mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)10mLを用いてカチオン交換体を洗浄した。フロースルー工程と洗浄工程で50mLの溶液を回収した。回収した溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC:Size Exclusion Chromatography)で分析したところ、凝集体成分の含有量は減少していた。結果を図9に示す。
[比較例8]
比較例8では、図8に示すように、浸漬工程、第1浸漬工程及び第2浸漬工程のいずれも実施せず、それ以外は、実施例11と同様の操作を行い、カチオン交換体の凝集体除去性能の評価を実施した。結果を図9に示す。凝集体除去率は、実施例11より低かった。
[製造例3]
製造例3では、6−ナイロン繊維にアクリル酸をグラフト重合し、繊維状のカチオン交換体を作成した。
直径25μmのナイロン繊維基材1gを、溶液導入口を取り付けた密閉容器に入れ、密閉容器内の空気を窒素で置換した。その後、ドライアイスで冷却しながら、100kGyの電子線をナイロン繊維基材に照射し、ラジカルを発生させた。
上記の密閉容器とは別の40℃の水浴中に設置した容器中において、0.5mol/Lのアクリル酸水溶液に窒素を30分間バブリングし、脱酸素を行い、反応溶液を調製した。その後、ナイロン繊維の入った密閉容器の溶液導入口から反応溶液を100mL導入し、40℃で30分間浸漬し、放射線グラフト重合を行い、グラフト率80%の繊維状のカチオン交換体を得た。
[実施例12]
製造例3で得られたカチオン交換体を、図10に示すように20℃でpH13.7の0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)に30分間浸漬した後、20℃で純水に10分浸漬し、その後、80℃で2時間加熱した。
得られたカチオン交換体0.1gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した。平衡化後のカチオン交換体を、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に溶かした濃度4g/Lのリゾチーム溶液に25℃、100rpmで浸漬振とうし、リゾチーム(Sigma−Aldrich製、L6876−10G)を吸着させた。リゾチームの吸着は96時間以内に平衡に達したため、96時間経過時で測定値を求めた。吸着操作におけるリゾチーム溶液とカチオン交換体の比率(mL/g)は600mg/mLとした。カチオン交換体1g当たりの吸着したリゾチーム量を図10に示す。
[比較例9]
比較例9では、製造例3で得られたカチオン交換体を、図10に示すように第1浸漬工程及び第2浸漬工程を経ずに、実施例12と同様に、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した後、リゾチームを吸着させた。結果を図10に示す。リゾチーム吸着量は、実施例12より低かった。
[比較例10]
比較例10では、製造例3で得られたカチオン交換体を、図10に示すように第1浸漬工程を経ずに、純水中、80℃で2時間加熱した。得られたカチオン交換体に、実施例12と同様に0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した後、リゾチームを吸着させた。結果を図10に示す。リゾチーム吸着量は、実施例12より低かった。
[実施例13]
実施例13では、実施例12と同様に、製造例3で得られたカチオン交換体を、図10に示すように20℃でpH13.7の0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)に30分間浸漬した後、20℃で純水に10分浸漬し、その後、80℃で2時間加熱した。得られたカチオン交換体0.1gを0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した。平衡化後のカチオン交換体を、50mmol/L、100mmol/L、150mmol/L、200mmol/L、及び250mmol/Lのリン酸緩衝液(pH6.0)のそれぞれに溶かした濃度4g/Lのリゾチーム溶液に25℃、100rpmで浸漬振とうし、リゾチーム(Sigma−Aldrich製、L6876−10G)を吸着させた。リゾチームの吸着は96時間以内に平衡に達したため、96時間経過時で測定値を求めた。吸着操作におけるリゾチーム溶液とカチオン交換体の比率(mL/g)は600mg/mLとした。カチオン交換体1g当たりの吸着したリゾチーム量を図11に示す。
[比較例11]
比較例11では、製造例3で得られたカチオン交換体を、図10に示すように第1浸漬工程及び第2浸漬工程を経ずに、実施例13と同様に、0.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)に浸漬振とうして平衡化した後、リゾチームを吸着させた。結果を図9に示す。リゾチーム吸着量における緩衝液濃度の影響は実施例13より大きく、緩衝液濃度が高いほど吸着量は減少した。

Claims (16)

  1. カチオン交換基を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法であって、
    基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、
    カチオン交換基を有する前記グラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に3時間以上浸漬する浸漬工程と、
    を有する、カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法。
  2. 前記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記浸漬工程において、前記アルカリ性水溶液の温度が20℃以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 放射線グラフト重合法により、前記基材に前記グラフト鎖が結合される、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記カチオン交換基が、スルホン酸基又はカルボキシル基である、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. カチオン交換基を有するカチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法であって、
    基材にグラフト鎖を結合させるグラフト結合工程と、
    カチオン交換基を有する前記グラフト鎖が結合している基材をpH9.0以上のアルカリ性水溶液に1分以上3時間未満浸漬する第1浸漬工程と、
    前記第1浸漬工程の後に、前記グラフト鎖が結合している基材を水溶液に浸漬する第2浸漬工程と、
    を有し、
    前記第2浸漬工程において、5000K・分以上のエネルギーが前記基材に加えられる、
    カチオン交換クロマトグラフィー担体の製造方法。
  7. 前記第2浸漬工程で用いられる水溶液が、前記第1浸漬工程で用いられるアルカリ性水溶液と同じである、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記第2浸漬工程で用いる水溶液が、pH6.0以上のアルカリ性水溶液である、請求項6に記載の製造方法。
  9. 前記第2浸漬工程で用いる水溶液が、純水である、請求項6に記載の製造方法。
  10. 前記第2浸漬工程において、前記グラフト鎖が結合している基材を前記水溶液に15分以上浸漬する、請求項6から9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記第2浸漬工程における前記水溶液の温度が、前記第1浸漬工程における前記アルカリ性水溶液の温度より高い、請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記第2浸漬工程において、前記水溶液の温度が50℃以上である、請求項10又は11に記載の製造方法。
  13. 前記第2浸漬工程において、前記グラフト鎖が結合している基材を前記水溶液に10時間以上浸漬する、請求項6から9のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記第2浸漬工程において、前記水溶液の温度が20℃以上である、請求項13に記載の製造方法。
  15. 放射線グラフト重合法により、前記基材に前記グラフト鎖が結合される、請求項6から14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記カチオン交換基が、スルホン酸基又はカルボキシル基である、請求項6から15のいずれか1項に記載の製造方法。
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