以下に本発明の実施の形態の緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Dは、二輪車又は三輪車等の鞍乗型車両において前輪を懸架するフロントフォークに利用されている。本実施の形態に係る緩衝器Dを備えたフロントフォークが車両に取り付けられた状態、即ち、取付状態での緩衝器Dの上下が、緩衝器Dの「上」「下」である。
緩衝器Dは、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有するテレスコピック型のチューブ部材1と、チューブ部材1内に収容されてアウターチューブ10とインナーチューブ11との間に介装される緩衝器本体2及び懸架ばね3とを備える。
チューブ部材1は、本実施の形態において、倒立型となっており、アウターチューブ10を上側(車体側)へ、インナーチューブ11を下側(車軸側)へ向けて配置される。つまり、本実施の形態では、アウターチューブ10が車体側チューブ、インナーチューブ11が車軸側チューブとなっており、アウターチューブ10が車体側ブラケット(図示せず)を介して鞍乗型車両の車体に連結され、インナーチューブ11が車軸側ブラケット12を介して鞍乗型車両の前輪の車軸に連結されている。
このように、緩衝器Dは、車体と車軸との間に介装されている。そして、鞍乗型車両が凹凸のある路面を走行する等して前輪が上下に振動すると、インナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りして緩衝器Dが伸縮する。
なお、チューブ部材1が正立型になっていて、アウターチューブ10が車軸側チューブ、インナーチューブ11が車体側チューブとなっていてもよい。また、本実施の形態の緩衝器Dは、フロントフォークに利用されるが、鞍乗型車両の後輪を懸架するリヤクッションユニットに利用されてもよいのは勿論、自動車等の鞍乗型車両以外の車両に利用されていてもよい。このように、緩衝器Dの用途はフロントフォークに限られない。
つづいて、本実施の形態において車体側チューブであるアウターチューブ10の上端開口は、キャップ13で塞がれる。その一方、車軸側チューブであるインナーチューブ11の下端開口は、車軸側ブラケット12で塞がれる。さらに、アウターチューブ10とインナーチューブ11の重複部の間は、オイルシール14及びダストシール15で塞がれる(図2)。このようにして密閉されたチューブ部材1の内側に、緩衝器本体2と懸架ばね3が設けられ、液体と気体が封入されている。
緩衝器本体2は、正立型となっており、ピストンロッド22を上側(車体側)へ、シリンダ20を下側(車軸側)へ向けて配置されている。より詳しくは、緩衝器本体2は、インナーチューブ11内に配置されるシリンダ20と、シリンダ20内に摺動自在に挿入されるピストン21と、下端がピストン21に連結されるとともに上端がシリンダ20外へ突出してキャップ13に連結されるピストンロッド22と、シリンダ20の上端部に固定されてピストンロッド22を摺動自在に支持する環状のロッドガイド23と、シリンダ20の下端部内周に固定されるバルブハウジング24とを備える。
シリンダ20は、車軸側ブラケット12を介してインナーチューブ11に連結されている。また、ピストンロッド22は、キャップ13を介してアウターチューブ10に連結されている。このようにして緩衝器本体2は、アウターチューブ10とインナーチューブ11との間に介装されている。そして、緩衝器Dが伸縮してインナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りすると、ピストンロッド22がシリンダ20に出入りして緩衝器本体2が伸縮し、ピストン21がシリンダ20内を上下(軸方向)に移動する。
その一方、懸架ばね3は、コイルばねであり、シリンダ20外へ突出するピストンロッド22の外周に設けられている。懸架ばね3の上端は、キャップ13で支持されるとともに、懸架ばね3の下端は、ロッドガイド23に設けた筒状のオイルロックケース23cの先端で支持されている。そして、緩衝器Dが収縮してシリンダ20がアウターチューブ10内へ進入すると、懸架ばね3が圧縮されて弾性変形し、変形量に見合った弾性力を発揮する。当該懸架ばね3の弾性力は、アウターチューブ10とインナーチューブ11とを離間させ、緩衝器Dを伸長させる方向へ作用する。本実施の形態では、懸架ばね3で車体を弾性支持するようになっている。
つづいて、緩衝器本体2のシリンダ20内は、ピストン21とバルブハウジング24とでそれぞれ上下に仕切られており、シリンダ20内には、ピストン21で区画される伸側室L1及び圧側室L2と、バルブハウジング24によって圧側室L2と区画される液溜室L3が形成されている。伸側室L1、圧側室L2、及び液溜室L3には、それぞれ作動油が充填されている。なお、緩衝器Dに利用する液体は、作動油に限らず、例えば、水、水溶液等であってもよい。
伸側室L1とは、ピストン21で区画される二つの部屋のうち、緩衝器Dの伸長時にピストン21で圧縮される方の部屋のことであり、本実施の形態のようにシリンダ20を車軸側に設けた緩衝器Dでは、ピストン21の上側に形成される。また、圧側室L2とは、ピストン21で区画されるに二つの部屋のうち、緩衝器Dの収縮時にピストン21で圧縮される方の部屋のことであり、本実施の形態のようにシリンダ20を車軸側に設けた緩衝器Dでは、ピストン21の下側に形成される。
ピストン21には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側通路21aと圧側通路21bが形成されている。伸側通路21aには、伸側減衰要素である伸側バルブV1が設けられ、当該伸側バルブV1は、伸側室L1から圧側室L2へ向かう作動油の流れに抵抗を与えるとともに、その逆向きの流れを阻止する。その一方、圧側通路21bには、チェックバルブである圧側バルブV2が設けられ、当該圧側バルブV2は、圧側室L2から伸側室L1へ向かう作動油の流れを許容するとともに、その逆向きの流れを阻止する。
また、バルブハウジング24には、圧側室L2と液溜室L3とを連通する吸込通路24aと減衰通路24bが形成されている。吸込通路24aには、チェックバルブである吸込バルブV3が設けられ、当該吸込バルブV3は、液溜室L3から圧側室L2へ向かう作動油の流れを許容するとともに、その逆向きの流れを阻止する。その一方、減衰通路24bには、圧側減衰要素である減衰バルブV4が設けられ、当該減衰バルブV4は、圧側室L2から液溜室L3へ向かう作動油の流れに抵抗を与えるとともに、その逆向きの流れを阻止する。
本実施の形態では、伸側バルブV1、圧側バルブV2、吸込バルブV3、及び減衰バルブV4は、それぞれリーフバルブを有して構成されている(伸側バルブV1、圧側バルブV2については、図2を参照のこと)。しかし、伸側バルブV1、圧側バルブV2、吸込バルブV3、及び減衰バルブV4の構成は、適宜変更できる。
例えば、伸側又は圧側の減衰要素である伸側バルブV1及び減衰バルブV4は、それぞれポペットバルブ、ニードルバルブ等を有して構成されていてもよく、オリフィスに替えてもよく、双方向流れを許容してもよい。また、チェックバルブである圧側バルブV2及び吸込バルブV3は、それぞれポペットバルブ等を有して構成されていてもよい。
つづいて、シリンダ20の外側であってチューブ部材1との間には、リザーバ室Rが形成されている。リザーバ室Rは、シャッタ4で上方室R1と下方室R2とに区画されている。上方室R1には、作動油が貯留されるとともに、その油面上方にエアが封入されてエア室Gが形成されている。その一方、下方室R2には、作動油が充填されている。シリンダ20の下端部には、連通孔20aが形成されており、作動油が当該連通孔20aを介して下方室R2と液溜室L3との間を比較的自由に行き来できるように配慮されている。
シャッタ4は、筒状であってロッドガイド23の外周に摺動自在に装着されている。より詳しくは、図2,3に示すように、シャッタ4は、筒状のガイド部4aと、当該ガイド部4aの下端部から径方向外方へ突出する環状のばね受け部4bとを有する。当該ばね受け部4bには、附勢ばね5が積層されている。
附勢ばね5は、コイルばねであり、その上端がロッドガイド23に設けたオイルロックケース23cの先端部外周から径方向外方へ突出するばね受け部23dで支えられている。このように附勢ばね5は、シャッタ4とロッドガイド23との間に介装されており、圧縮されると弾性変形して変形量に見合った弾性力を発揮する。当該附勢ばね5の弾性力は、シャッタ4をロッドガイド23に対して押し下げる方向へ作用する。
換言すると、シャッタ4は、附勢ばね5により下方、即ち、下方室R2を縮小する方向へ附勢されている。このため、下方室R2がシャッタ4と附勢ばね5により加圧される。下方室R2の圧力は、シリンダ20に形成された連通孔20a(図1)を通じて液溜室L3へ伝播される。また、前述のように、液溜室L3と圧側室L2、圧側室L2と伸側室L1は、それぞれバルブハウジング24又はピストン21に設けた通路により連通される。よって、シャッタ4と附勢ばね5とで下方室R2を加圧すると、シリンダ20内全体が加圧されて緩衝器Dの減衰力発生応答性を良好にできる。
なお、附勢ばね5は、コイルばね以外のばねであってもよいのは勿論、附勢ばね5をゴム等に代えてもよい。つまり、シャッタ4を下方(下方室R2側)へ附勢する弾性部材の構成は適宜変更できる。また、シャッタ4の形状も弾性部材の構成、横孔23eの出口の形状等に応じて適宜変更できる。具体的には、シャッタ4は、必ずしも筒状でなくてもよい。
つづいて、シャッタ4のばね受け部4bの外周部には、周方向に沿って環状溝4cが形成されている。当該環状溝4cによりシャッタ4とインナーチューブ11との間にできる空間に環状のチェックバルブ6が収容される。チェックバルブ6は、インナーチューブ11の内周に摺接する。さらに、チェックバルブ6の軸方向長さは、環状溝4cの軸方向長さよりも短く、チェックバルブ6は、環状溝4c内を上下に移動できる。
チェックバルブ6の内周側には、シャッタ4との間に内周隙間60が形成されている。さらに、チェックバルブ6の下端部には、径方向に沿って切欠き6aが形成されている。また、チェックバルブ6の上端に対向する環状溝4cの上側壁面は、チェックバルブ6が離着座するシート面となっている。
そして、シャッタ4が静止した状態で作動油がシャッタ4の外周を上方室R1から下方室R2へ向けて流れようとする場合、当該作動油によりチェックバルブ6が押し下げられる。すると、チェックバルブ6が環状溝4c内を下方へ移動してチェックバルブ6の上端がシャッタ4のシート面から離れ(離座し)、上方室R1と下方室R2が内周隙間60を介して連通される。このため、上方室R1から下方室R2へ向かう作動油の流れが許容される。
前述のように、チェックバルブ6の下端部には切欠き6aが形成されている。このため、チェックバルブ6の下端が環状溝4cの下側壁面に当接するまで動いても、内周隙間60と下方室R2との連通が遮断されず、上方室R1と下方室R2との連通が維持される。
反対に、作動油がシャッタ4の外周を下方室R2から上方室R1へ向けて流れようとする場合、当該作動油によりチェックバルブ6が押し上げられる。すると、チェックバルブ6が環状溝4c内を上方へ移動してチェックバルブ6の上端がシャッタ4のシート面に着座し、内周隙間60を介した上方室R1と下方室R2との連通が遮断される。
このように、チェックバルブ6は、その内周側に形成される内周隙間60を開閉し、内周隙間60を上方室R1から下方室R2へ向かう作動油の流れを許容するとともに、その逆向きの流れを阻止する。
なお、本実施の形態では、内周隙間60と下方室R2との連通を維持するため、チェックバルブ6に切欠き6aを設けているが、当該切欠き6aを横孔等に変更してもよい。さらに、シャッタ4側に切欠きを形成し、当該切欠きで内周隙間60と下方室R2との連通を維持するとしてもよい。また、チェックバルブ6は、必ずしも環状でなくてもよく、チェックバルブ6の形状は適宜変更できる。
つづいて、ロッドガイド23は、環状の本体部23aと、本体部23aの下端部外周から下方へ突出してシリンダ20の外周に螺合する筒状の連結部23bと、本体部23aの上端部外周から上方へ突出する筒状のオイルロックケース23cと、オイルロックケース23cの先端部外周から径方向外方へ突出するばね受け部23dとを有する。
ロッドガイド23における本体部23aの内周には、ブッシュ25、及びシール26が軸方向に並べて装着されている。ブッシュ25とシール26は、それぞれ環状であり、ピストンロッド22の外周に摺接する。ロッドガイド23は、ブッシュ25を介してピストンロッド22を摺動自在に軸支する。その一方、シール26は、ピストンロッド22の外周をシールしてシリンダ20内の作動油がリザーバ室Rへ漏れるのを防ぐ。
また、ロッドガイド23における本体部23aの下端部内周には、環状の伸切ばね突当部材27が装着されている。伸切ばね突当部材27は、その外周部をシリンダ20とロッドガイド23とで挟まれて固定されている。さらに、伸切ばね突当部材27の内径はピストンロッド22の外径よりも大きく、伸切ばね突当部材27がピストンロッド22の円滑な摺動の妨げとならないよう配慮されている。そして、緩衝器Dの最伸長時には、ピストンロッド22の外周に設けた伸切ばね8が伸切ばね突当部材27に押し当てられて圧縮された状態となる(図2)。
なお、本実施の形態において、シール26の半径方向の切断面は、略逆U字状であるが、シール26の形状は適宜変更できる。また、ピストンロッド22のロッドガイド23に対する円滑な摺動が可能であれば、ブッシュ25を廃してもよい。さらに、伸切ばね突当部材27を廃し、伸切ばね8をロッドガイド23に直接突き当てるようにしてもよい。
つづいて、ロッドガイド23の本体部23aには、ロッドガイド23の径方向に沿って延び、伸側室L1とリザーバ室Rとを連通する横孔23eが形成されている。当該横孔23eにおける伸側室L1側(ロッドガイド23の内周側)の開口を入口、リザーバ室R側(ロッドガイド23の外周側)の開口を出口とすると、横孔23eの入口は、シール26の直下に形成される。
シール26の直下とは、シール26の下側にシール26と隣接する部分のことであり、シール26の下端に接する部分が該当するのは勿論、シール26の下端との間にわずかな隙間がある場合も含む。つまり、シール26の直下に横孔23eの入口が位置した状態とは、シール26の下端が横孔23eの入口の縁に接した状態、及び、シール26の下端と横孔23eの入口の縁との間にわずかな隙間がある状態を含む。
このように、シール26の直下に横孔23eの入口を形成すると、シリンダ20内に生じたエアをリザーバ室Rへ排出し易い。より詳しくは、撹拌、温度変化等の影響でシリンダ20内の作動油中に溶けていたエアが気体となると、当該気体となったエアは、シリンダ20内を上方へ移動してシリンダ20内の上端部に溜まる。シリンダ20を車軸側に設けた緩衝器D、即ち、正立型の緩衝器本体2において、シール26は、シリンダ20の上端を塞ぐ部材であって、その直下にはエアが溜まり易い。よって、シリンダ20を車軸側に設けた緩衝器Dにおいてシール26の直下に横孔23eの開口を形成すると、当該横孔23eを通じてシリンダ20内のエアをリザーバ室Rへ排出し易くなる。
なお、横孔23eの入口(伸側室L1側の開口)は、シール26の真下、即ち、軸方向視でシール26と重なる部分に形成されていなくてもよく、径方向視でシール26の直下に形成されていれば、気泡のシリンダ20外への排出を容易にできる。例えば、横孔23eの入口(図2中右端)がシール26の外周端(図2中右端)よりも外周側(図2中左側)にずれた位置にあってもよい。
また、本実施の形態では、ロッドガイド23に径方向に沿って形成される横孔23eがエアをシリンダ20外へ排出するための排出通路である。よって、排出通路を容易に形成できるが、排出通路の構成は適宜変更できる。例えば、排出通路が上下に傾きをもって形成されていても、鉤状に折れ曲がった形状となっていてもよい。これらの場合には、排出通路の出口を入口よりも高い位置に設けると、エアをシリンダ20外へ排出し易い。また、排出通路は、例えば、ロッドガイド23から伸切ばね突当部材27にかけて形成される等、複数部材に亘って形成されていてもよい。
つづいて、横孔23eの出口(リザーバ室R側の開口)は、シャッタ4で開閉される。ロッドガイド23における横孔23eの出口よりも下側には、ストッパ7が装着されており、シャッタ4がロッドガイド23に対して下方へ移動してストッパ7に当接すると、それ以上シャッタ4が下方へ移動するのを防止する(図2)。このように、シャッタ4がストッパ7に当接した位置をシャッタ4の下側所定位置とする。
本実施の形態では、シャッタ4が下側所定位置にある場合、シャッタ4の上端が横孔23eの出口の縁より下側に位置して当該出口を開放するようになっており、この場合には、伸側室L1と上方室R1が横孔23eを介して連通される。さらに、シャッタ4は、横孔23eの出口の上方へも移動でき、シャッタ4の下端が横孔23eの出口の縁より上側へ移動して当該出口を開放する場合には、伸側室L1と下方室R2が横孔23eを介して連通される(図2中二点鎖線、及び図3)。
また、ロッドガイド23における横孔23eの出口よりも上側の外周が縮径されており、ロッドガイド23の外周に周方向に沿う環状の溝23fが形成されている。当該溝23fの軸方向長さは、シャッタ4の軸方向長さよりも長い。このため、シャッタ4が横孔23eの出口の上方へ移動する場合であって、シャッタ4の下端が溝23fの下端よりも上側に位置する場合には、シャッタ4の内周とロッドガイド23の外周との間に隙間ができるとともに、当該隙間を介して上方室R1と下方室R2が連通される(図2中二点鎖線)。
このように、緩衝器Dでは、シャッタ4が所定位置(以下、上側所定位置という)よりも上側へ移動した場合に、上方室R1と下方室R2が連通されるようになっている。当該連通路を圧抜通路40とすると、本実施の形態では、圧抜通路40がロッドガイド23の外周に形成された溝23fにより、シャッタ4の内周側に形成される。
なお、圧抜通路40の構成は、この限りではない。例えば、本実施の形態では、圧抜通路40を形成するための溝23fが環状となっている。しかし、当該溝23fをロッドガイド23の軸方向に沿って直線状に形成してもよい。さらに、圧抜通路40がシャッタ4又はロッドガイド23の内部を通るとしてもよい。
つづいて、ロッドガイド23の本体部23aから上方へ延びるオイルロックケース23cは、上方室R1における作動油中に浸漬した状態で設けられている。そして、緩衝器Dの最収縮時にピストンロッド22の外周に設けたオイルロックピース9がオイルロックケース23c内へ侵入する(図3)。
本実施の形態において、オイルロックピース9は、環状に形成されており、ピストンロッド22の外周に若干の上下動を許容された状態で装着されている。また、オイルロックピース9の内周側には、内周通路90が形成されており、オイルロックピース9がオイルロックケース23cに出入りすると内周通路90を開閉し、当該内周通路90を介してオイルロックケース23c内外を連通したり遮断したりする。
具体的には、オイルロックピース9がオイルロックケース23c内へ侵入する場合、オイルロックピース9がピストンロッド22に対して上方へ移動して内周通路90の上端開口を閉じる。このため、オイルロックピース9の侵入時には、内周通路90を介したオイルロックケース23c内外の連通が遮断される(図3)。
反対に、オイルロックピース9がオイルロックケース23cから退出する場合、オイルロックピース9がピストンロッド22に対して下方へ移動して内周通路90の上側開口が開く。内周通路90の下側開口は、オイルロックピース9の下端部に設けた切欠き9aによって開いた状態に維持される。このため、オイルロックピース9の退出時には、内周通路90を介してオイルロックケース23cの内側と外側が連通される。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作動について説明する。
緩衝器Dの伸長時には、ピストンロッド22がシリンダ20から退出し、ピストン21がシリンダ20内を上方へ移動して伸側室L1を圧縮する。すると、伸側室L1の作動油が伸側バルブV1を押し開き、伸側通路21aを通って圧側室L2へ移動する。当該作動油の流れに対しては、伸側バルブV1によって抵抗が付与されるので、伸側室L1の圧力が上昇して緩衝器Dが伸長作動を妨げるメインの伸側減衰力を発揮する。
また、緩衝器Dの伸長時には、吸込バルブV3が開き、シリンダ20から退出したピストンロッド体積分の作動油が液溜室L3から圧側室L2へ供給され、その分の作動油が連通孔20aを通じてリザーバ室Rの下方室R2から液溜室L3へ供給される。
反対に、緩衝器Dの収縮時には、ピストンロッド22がシリンダ20内へ進入し、ピストン21がシリンダ20内を下方へ移動して圧側室L2を圧縮する。すると、圧側バルブV2が開き、圧側室L2の作動油が圧側通路21bを通って伸側室L1へ移動する。
また、緩衝器Dの収縮時には、圧側室L2の作動油が減衰バルブV4を押し開き、シリンダ20内に進入したピストンロッド体積分の作動油が圧側室L2から液溜室L3へ排出される。すると、その分の作動油が連通孔20aを通って液溜室L3からリザーバ室Rの下方室R2へ排出される。
緩衝器Dの収縮時において、圧側室L2から液溜室L3へ向かう作動油の流れに対しては、減衰バルブV4によって抵抗が付与される。また、前述のように、圧側バルブV2はチェックバルブであるので、緩衝器Dの収縮時において、伸側室L1の圧力と圧側室L2の圧力が略等しくなる。このため、緩衝器Dの収縮時には、シリンダ20内の圧力が上昇して緩衝器Dが収縮作動を妨げるメインの圧側減衰力を発揮する。
このように、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、緩衝器Dが伸縮すると緩衝器本体2が伸縮してメインの伸側及び圧側の減衰力を発揮する。また、シリンダ20に出入りするピストンロッド体積分をリザーバ室Rで補償する。そして、当該リザーバ室Rにおいて、シリンダ20内に連通する下方室R2をシャッタ4と附勢ばね5とで加圧してシリンダ20内を加圧しているので、油柱剛性を高めて減衰力の発生応答性を良好にできる。
また、緩衝器Dの最伸長時には、伸切ばね8が伸切ばね突当部材27に押し当てられて圧縮されるようになっており、当該伸切ばね8で緩衝器Dの最伸長時の衝撃を緩和する。その一方、緩衝器Dの最収縮時には、オイルロックピース9がオイルロックケース23c内に嵌入し、オイルロックケース23c内に閉じ込められた作動油の油圧で緩衝器Dの収縮作動を停止させる。
また、本実施の形態では緩衝器Dが伸縮する場合、基本的に、シャッタ4が横孔23eの出口を塞ぎつつロッドガイド23に対して上下に移動する。
より詳しくは、緩衝器Dの伸長時にシリンダ20から退出したピストンロッド体積分の作動油がリザーバ室Rの下方室R2から液溜室L3へ移動すると、附勢ばね5の附勢力によりシャッタ4が押し下げられて、横孔23eの出口を塞ぎつつロッドガイド23に対して下方へ移動する。
反対に、緩衝器Dの収縮時にシリンダ20内へ進入したピストンロッド体積分の作動油が液溜室L3からリザーバ室Rの下方室R2へ移動すると、附勢ばね5の附勢力に抗してシャッタ4が押し上げられて、横孔23eの出口を塞ぎつつロッドガイド23に対して上方へ移動する。
そして、シャッタ4がロッドガイド23に対して下方へ移動する場合には、シャッタ4がインナーチューブ11の内周に摺接するチェックバルブ6を押し下げつつ移動する。このため、シャッタ4がロッドガイド23に対して下方へ移動する場合には、チェックバルブ6の上端がシャッタ4に着座して、内周隙間60の上端開口を塞ぐ。
反対に、シャッタ4がロッドガイド23に対して上方へ移動する場合には、シャッタ4及びチェックバルブ6が下方室R2の圧力によって押し上げられる。このため、シャッタ4がロッドガイド23に対して上方へ移動する場合にも、チェックバルブ6の上端がシャッタ4に着座して、チェックバルブ6の内周隙間60の上端開口を塞いだ状態に維持される。
以上、シャッタ4の基本的な動作についてまとめると、シャッタ4は、緩衝器Dが伸縮するのに伴い附勢ばね5の附勢力と下方室R2内の圧力を受けて、横孔23eの出口を塞ぎつつ上下に移動する。そして、このようにシャッタ4が上下に移動する場合には、チェックバルブ6がその内周隙間60の上端開口を塞いだ状態に維持されて、内周隙間60を介した上方室R1と下方室R2との連通が遮断されている。
しかし、後に詳述するように、シャッタ4の動作範囲は、シリンダ20内の圧力変化により上下にシフトする。このため、シャッタ4の横孔23eに対する移動量が大きくなる緩衝器Dの最伸長時、最収縮時、又はこれらの付近で、シャッタ4が横孔23eの出口を開放することがある。以下、これらの場合について、詳細に説明する。
シリンダ20内の作動油の温度が高くなって体積が増加したり、撹拌により作動油中に溶けていたエアが気体となってシリンダ20内に溜まったりすると、作動時におけるシリンダ20内の圧力が全体的に高くなる。すると、シャッタ4の動作範囲が上側へシフトして、シャッタ4がロッドガイド23における高い位置を上下に動く。
このように、シリンダ20内の圧力が高い状態で緩衝器Dが収縮し、最収縮、又は最収縮に近い状態になると、シャッタ4が横孔23eの出口(リザーバ室R側の開口)の上側へ移動して、当該出口を開く(図3)。すると、横孔23eを介して伸側室L1とリザーバ室Rの下方室R2が連通される。
前述のように、緩衝器Dの収縮時には、圧側室L2から液溜室L3を介して下方室R2へ向かう作動油の流れに減衰バルブV4で抵抗を与えるとともに、圧側バルブV2(チェックバルブ)が開いて伸側室L1と圧側室L2が連通される。このため、緩衝器Dの収縮時において、伸側室L1の圧力は下方室R2の圧力よりも高くなる。よって、シャッタ4が横孔23eの出口を開いて伸側室L1と下方室R2とを連通すると、作動油が横孔23eを伸側室L1から下方室R2へ向けて流れるとともに、当該流れによって伸側室L1に溜まったエアが下方室R2へ排出される。
さらに、緩衝器Dの最収縮時、又はその付近では、オイルロックピース9がオイルロックケース23c内へ挿入される(図3)。緩衝器Dが収縮してオイルロックピース9がオイルロックケース23c内へ侵入する場合、オイルロックピース9がその内周通路90を閉じて、オイルロックケース23c内の圧力を上昇させる。
本実施の形態では、シール26が伸側室L1の作動油がシリンダ20外へ漏れ出るのを防止するが、オイルロックケース23c内の圧力が高まるとオイルロックケース23c内の作動油が伸側室L1へ押し込まれるようになっている。このため、オイルロックピース9の侵入時に伸側室L1と下方室R2が横孔23eを介して連通された状態では、オイルロックピース9の侵入によりオイルロックケース23c内の作動油がシリンダ20内へ押し込まれ、横孔23eを通って下方室R2へ移動する。すると、当該作動油の流れによっても伸側室L1から下方室R2へエアを排出できる。
その一方、緩衝器Dの作動方向が収縮から伸長へ切り換わり、オイルロックピース9がオイルロックケース23cから退出する場合には、オイルロックピース9が内周通路90を開くので、上方室R1の作動油が内周通路90を通じてオイルロックケース23c内へ供給される。よって、オイルロックピース9がオイルロックケース23cから速やかに退出できる。
さらに、後述するように、緩衝器Dの伸長時にも伸側室L1の圧力は下方室R2の圧力よりも高くなる。よって、伸側室L1と下方室R2が横孔23eを介して連通された状態で、緩衝器Dの作動方向が収縮から伸長へ切り換わった場合にも、シャッタ4が横孔23eの出口を閉じるまでの間は、伸側室L1から下方室R2へエアを排出できる。
なお、緩衝器Dの伸長時において、伸側室L1と下方室R2が連通された状態では、伸側室L1の圧力が下方室R2へ逃げるので、メインの伸側減衰力が小さくなる。そこで、オイルロックピース9の切欠き9aを小さくする等して、上方室R1からオイルロックケース23c内へ向かう作動油の流れを絞ると、緩衝器Dの伸長作動を妨げる二次的な減衰力が発生し、緩衝器D全体としての伸側減衰力が不足するのを防止できる。
また、前述のように、シリンダ20内の圧力が高い状態で緩衝器Dが収縮し、最収縮、又は最収縮に近い状態になる場合であって、シャッタ4の下端が溝23fの上端よりも上側に位置するまでシャッタ4が上昇した場合には(図2中二点鎖線)、シャッタ4の内周側に形成される圧抜通路40を介して上方室R1と下方室R2が連通される。すると、下方室R2の作動油が圧抜通路40を通じて上方室R1へ流出し、シリンダ20内の圧力が上方室R1へ逃げるので、シリンダ20内の圧力が過大にならない。また、このように圧抜通路40を通じてシリンダ20内の圧力を上方室R1へ逃がすリリーフ時には、下方室R2内のエアが上方室R1へ排出される。
なお、圧抜通路40により上方室R1と下方室R2が連通された状態では、緩衝器Dが収縮しても下方室R2の作動油が上方室R1へ流出するので、シャッタ4がそれ以上上方へ移動しなくなる。とはいえ、シャッタ4は、附勢ばね5で下方室R2側へ附勢されているので、緩衝器Dの作動方向が収縮から伸長へ切り換わるとすぐに、附勢ばね5によってシャッタ4が押し下げられて、圧抜通路40の連通を速やかに遮断する。
つづいて、シリンダ20内の作動油の温度が低くなって体積が減少したり、エアが作動油中に溶けたりすると、作動時におけるシリンダ20内の圧力が全体的に低くなる。すると、シャッタ4の動作範囲が下側へシフトして、シャッタ4がロッドガイド23における低い位置を上下に動く。
このように、シリンダ20内の圧力が低い状態で緩衝器Dが伸長し、最伸長、又は最伸長に近い状態なると、シャッタ4が横孔23eの出口(リザーバ室R側の開口)の下側へ移動して、当該出口を開く(図2)。すると、横孔23eを介して伸側室L1とリザーバ室Rの上方室R1が連通される。
前述のように、緩衝器Dの伸長時には、伸側室L1から圧側室L2へ向かう作動油の流れに伸側バルブV1で抵抗を与えるとともに、吸込バルブV3(チェックバルブ)が開いて圧側室L2と下方室R2が連通される。下方室R2の圧力は、附勢ばね5とシャッタ4で加圧される分、上方室R1の圧力よりも高いので、伸側室L1の圧力は上方室R1の圧力よりも高くなる。よって、シャッタ4が横孔23eの出口を開いて伸側室L1と上方室R1とを連通すると、作動油が横孔23eを伸側室L1から上方室R1へ向けて流れるとともに、当該流れによって伸側室L1に溜まったエアが上方室R1へ排出される。
なお、緩衝器Dの伸長時において、伸側室L1と上方室R1が連通された状態では、伸側室L1の圧力が上方室R1へ逃げるので、メインの伸側減衰力が小さくなる。しかし、緩衝器Dの最伸長時、及び、最伸長時付近では、伸切ばね8が圧縮されて、緩衝器Dを収縮方向へ附勢する。つまり、伸切ばね8が緩衝器Dの伸長作動を妨げる力を発揮するので、当該伸切ばね8の力でメインの伸側減衰力を補い、緩衝器D全体としての伸側減衰力が不足するのを防止できる。
また、前述のように、シリンダ20内の圧力が低い状態で緩衝器Dが伸長し、最伸長、又は最伸長に近い状態になる場合であって、シャッタ4がストッパ7に当接するまでシャッタ4が下降した場合には(図2)、シャッタ4がそれ以上下方へ移動しなくなる。このように、本実施の形態では、シャッタ4の下限位置をストッパ7で決める。その一方、圧抜通路40の連通を許容する位置によってシャッタ4の上限位置が決まるのは先に述べた通りであり、本実施の形態では、これらでシャッタ4の動作範囲を制限し、シャッタ4の動作を保障している。
また、シャッタ4の下方への移動がストッパ7で阻止された状態で緩衝器Dが伸長した場合には、下方室R2の圧力が低下して、チェックバルブ6が環状溝4c内を下方へ移動する。すると、チェックバルブ6の上端がシャッタ4から離れ、上方室R1の作動油がチェックバルブ6の内周側の内周隙間60を通って下方室R2へ移動する。よって、シャッタ4の下限位置(下側の所定位置)をストッパ7で決めてシャッタ4の動作保障をするようにしても、緩衝器Dの伸長時に下方室R2で作動油が不足するのを防止できる。
さらに、本実施の形態では、シャッタ4がストッパ7に当接した状態では、シャッタ4の上端が横孔23eの出口の直下に位置する。このため、緩衝器Dの作動方向が伸長から収縮へ切り換わるとすぐに、シャッタ4で横孔23eの出口を塞ぎ、伸側室L1と上方室R1との連通を速やかに遮断する。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Dの作用効果について説明する。
本実施の形態において、緩衝器Dは、チューブ部材1と、チューブ部材1内に設けた緩衝器本体2とを備え、チューブ部材1と緩衝器本体2との間にリザーバ室Rが形成されている。そして、チューブ部材1は、アウターチューブ(車体側チューブ)10と、インナーチューブ(車軸側チューブ)11とを有してテレスコピック型となっている。また、緩衝器本体2は、インナーチューブ11に連結されるシリンダ20と、シリンダ20内に摺動自在に挿入されてシリンダ20内を伸側室L1と圧側室L2に区画するピストン21と、下端(一端)がピストン21に連結されるとともに上端(他端)がシリンダ20外へ突出してアウターチューブ10に連結されるピストンロッド22とを有し、圧側室L2がリザーバ室Rに連通されている。
さらに、本実施の形態に係る緩衝器Dは、リザーバ室Rと伸側室L1とを連通する横孔(排出通路)23eと、リザーバ室Rを上方室R1と下方室R2とに区画するとともに横孔23eの出口(リザーバ室R側開口)を開閉するシャッタ4と、シャッタ4が横孔23eの出口よりも上側の上側所定位置より上方へ移動した場合に上方室R1と下方室R2とを連通する圧抜通路40と、シャッタ4を下方(下方室R2側)へ附勢する附勢ばね(弾性部材)5とを備える。
当該構成によれば、緩衝器Dが伸縮すると、シリンダ20内に出入りするピストンロッド体積分の作動油がシリンダ20内外を行き来して、シリンダ20外に設けたシャッタ4が上下に移動する。さらに、シリンダ20内の伸側室L1がシリンダ20外のリザーバ室Rと横孔(排出通路)23eを介して連通されており、当該横孔23eの出口(リザーバ室R側開口)をシャッタ4で開閉できる。このため、シャッタ4が横孔23eの出口を開くと、当該横孔23eを通じて伸側室L1内に溜まったエアをリザーバ室Rへ排出できる。
さらに、上記構成によれば、シャッタ4が附勢ばね5で下方(下方室R2側)へ附勢されており、リザーバ室Rにおいてシリンダ20内に連通される下方室R2を加圧する。このため、本実施の形態の緩衝器Dによれば、シャッタ4と附勢ばね5とでシリンダ20内を加圧して、緩衝器Dの減衰力発生応答性を良好にできる。
また、上記構成によれば、シリンダ20内の圧力が上昇してシャッタ4が上側所定位置より上側へ上昇すると、圧抜通路40を介して上方室R1と下方室R2が連通される。これにより、下方室R2の作動油が圧抜通路40を通じて上方室R1へ流出する。つまり、圧抜通路40の連通が許容されるまでシャッタ4が上昇すると、シリンダ20内の圧力を上方室R1へ逃がせるので、シリンダ20内の圧力が過大になるのを防止できる。
このように、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、エアの伸側室L1からシリンダ20外への排出と、シリンダ20内の加圧と、シリンダ20内の圧力過大の防止を可能にできる。加えて、これらを可能にするためのシャッタ4及び附勢ばね5をシリンダ20外に設けているので、緩衝器Dのストローク長を確保しつつ、シリンダ20の軸方向長さを短くして緩衝器Dの軸方向長さを短くできる。よって、例えば、緩衝器Dがオフロードバイクに利用される場合など、緩衝器Dのストローク長を長くとりたい場合に、ストローク長を確保し易い。
さらに、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、従来の緩衝器のように、エアを排出するのにピストンロッドに小径部等を形成する必要がなく、ピストンロッド径を細くしても強度不足となり難い。よって、本実施の形態に係る緩衝器Dの構造は、ピストンロッドの細い緩衝器にも適用できる。
また、本実施の形態に係る緩衝器Dは、ストッパ7とチェックバルブ6とを備える。そして、ストッパ7は、シャッタ4が横孔(排出通路)23aの出口(リザーバ室R側開口)よりも下側の下側所定位置まで移動した場合に、シャッタ4がそれ以上下方(下方室R2側)へ移動するのを阻止する。その一方、チェックバルブ6は、シャッタ4の下方(下方室R2側)への移動がストッパ7で阻止された状態で、上方室R1から下方室R2へ向かう作動油(液体)の流れを許容する。
当該構成によれば、シャッタ4の動作範囲を制限し、シャッタ4の動作保障ができる。また、シャッタ4の下方への移動がストッパ7で阻止された状態で緩衝器Dが伸長し、下方室R2からシリンダ20内へ作動油が移動したとしても、チェックバルブ6が開いて上方室R1から下方室R2へ作動油が供給される。このため、下方室R2で作動油が不足するのを防止できる。
さらに、本実施の形態では、チェックバルブ6が環状に形成されていて、シャッタ4の外周に形成した環状溝4c内に上下動可能に挿入されるとともに、インナーチューブ11の内周に摺接する。また、チェックバルブ6とシャッタ4との間に内周隙間60が形成されており、チェックバルブ6の上端をシャッタ4に離着座させて、内周隙間60を介した上方室R1と下方室R2との連通を遮断したり許容したりする。
このため、シャッタ4の下方への移動がストッパ7で阻止された状態で、緩衝器Dが伸長する場合にのみチェックバルブ6を開き、内周隙間60を上方室R1から下方室R2へ向かう作動油の流れを許容できる。しかし、チェックバルブ6の構成は、適宜変更できる。
例えば、チェックバルブ6は、環が完全に閉じられた形状(平面視でO型)に限らず、環の一部に切れ目の入った形状(平面視でC型)であってもよい。さらに、チェックバルブ6は、環状以外の形状でもよく、シャッタ4以外に取り付けるとしてもよい。また、ストッパ7の形状、取付方法、及び位置も、シャッタ4の所望の動作範囲に応じて変更できるのは勿論、シャッタ4の動作保障が可能であれば、ストッパ7及びチェックバルブ6を省略してもよい。
また、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、横孔(排出通路)23eがロッドガイド23に形成され、シャッタ4が筒状に形成されてロッドガイド23の外周に摺動自在に装着され、附勢ばね5がシャッタ4とロッドガイド23との間に介装され、圧抜通路40がシャッタ4とロッドガイド23との間を通る。このため、ロッドガイド23部分のみの交換で、エアの伸側室L1からシリンダ20外への排出と、シリンダ20内の作動油の加圧と、シリンダ20内の圧力過大の防止を実現できる。
さらに、本実施の形態では、ロッドガイド23の内周に、ピストンロッド22の外周に摺接する環状のシール26が設けられており、横孔(排出通路)23eの入口(伸側室L1側開口)が径方向視でシール26の直下に位置する。シール26の直下は、シリンダ20内における上端部に位置し、エアの溜まり易い部分である。このため、上記構成によれば、シリンダ20内のエアをシリンダ外へ排出し易い。
しかし、横孔23e、シャッタ4、附勢ばね5、及び圧抜通路40を設ける位置及び形状は適宜変更できる。例えば、横孔23eをシリンダ20に形成してシャッタ4をシリンダ20に装着したり、圧抜通路40をインナーチューブ(車軸側チューブ)11とシャッタ4との間に介装したりしてもよい。そして、このような変更は、チェックバルブ6とストッパ7の形状、位置、及び有無によらず可能である。
なお、ロッドガイド23のみの変更で、エアの伸側室L1からシリンダ20外への排出と、シリンダ20内の作動油の加圧と、シリンダ20内の圧力過大の防止を実現し、シャッタ4の動作保障を可能にする上では、本実施の形態のように、チェックバルブ6をシャッタ4に取り付け、ストッパ7をロッドガイド23に取り付けるのが好ましい。
また、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、シリンダ20外へ突出するピストンロッド22の外周に環状のオイルロックピース9が設けられ、ロッドガイド23にオイルロックピース9の侵入を許容する筒状のオイルロックケース23cが設けられている。
このため、オイルロックピース9のオイルロックケース23c内への侵入時に、シャッタ4が上がって横孔23eの出口を開いていれば、オイルロックケース23c内の作動油をシリンダ20内へ押し込み、当該作動油の流れによってもシリンダ20内のエアをリザーバ室Rへ排出できる。よって、伸側室L1が拡大する緩衝器Dの収縮時であっても、シリンダ20内のエアをリザーバ室Rへ排出し易い。
しかし、オイルロックピース9及びオイルロックケース23cを廃するとしてもよい。そして、このような変更は、横孔23e、シャッタ4、附勢ばね5、圧抜通路40、チェックバルブ6、及びストッパ7を設ける位置及び形状、並びに、チェックバルブ6とストッパ7の有無によらず可能である。
さらに、本実施の形態に係る緩衝器Dでは、圧側室L2から伸側室L1へ向かう作動油(液体)の流れを許容する圧側バルブV2がチェックバルブである。このため、伸側室L1が拡大する緩衝器Dの収縮時であっても、伸側室L1の圧力が圧側室L2の圧力と略等しくなって、シリンダ20内全体の圧力が高くなる。よって、緩衝器Dの収縮時にシャッタ4が横孔23eの開口を開いて伸側室L1と下方室R2が連通された場合に、作動油が横孔23eを逆流してリザーバ室Rから伸側室L1へ流入するのを防止できる。
しかし、減衰バルブV4の設定等により横孔23eの逆流を防止できれば、圧側バルブV2を圧側減衰要素にして、圧側室L2から伸側室L1へ向かう作動油の流れに抵抗を与えるようにしてもよい。さらに、シャッタ4が伸長時にのみ排出通路の出口を開く場合等には、バルブハウジング24自体を省略してもよい。そして、これらの変更は、横孔23e、シャッタ4、附勢ばね5、圧抜通路40、チェックバルブ6、及びストッパ7を設ける位置及び形状、チェックバルブ6とストッパ7の有無、並びにオイルロックピース9とオイルロックケース23cの有無によらず可能である。
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、車体を弾性支持する懸架ばね3とは別に附勢ばね(弾性部材)5を設け、当該附勢ばね5でシャッタ4を下方(下方室R2側)へ附勢する。当該構成によればチューニング要素が増えるので、ユーザが自分の好みに合った乗り心地やフィーリングを得られる。
しかし、図4に示す第一の変形例に係る緩衝器D1のように、車体を弾性支持する懸架ばね3でシャッタ4Aを下方室R2側へ附勢してもよい。この場合、懸架ばね3が緩衝器Dにおける附勢ばね5としての機能を兼ねるので、緩衝器D1の部品数を減らしてコストを低減できる。
また、図4に示す第一の変形例に係る緩衝器D1においても、横孔(排出通路)23eがロッドガイド23に形成され、シャッタ4Aが筒状に形成されてロッドガイド23の外周に摺動自在に装着され、圧抜通路がシャッタ4Aとロッドガイド23との間を通る。このため、ロッドガイド23部分のみの交換で、エアの伸側室L1からシリンダ20外への排出と、シリンダ20内の作動油の加圧と、シリンダ20内の圧力過大の防止を実現できる。つまり、このような効果を得る上では、シャッタを下方へ支持する弾性部材が必ずしもシャッタとロッドガイドとの間に介装されていなくてもよい。
また、図5に示す第二の変形例に係る緩衝器D2のように、シリンダ20Aにおけるピストン21の摺接部よりも上側をシャッタ4が動くようにしてもよい。この場合には、シリンダ20Aにおけるピストン21の摺接部の内径を大きくできる。
より詳しくは、第二の変形例に係る緩衝器D2のシリンダ20Aは、内周にピストン21が摺接するシリンダ本体28と、シリンダ本体28の上端部に連結されるロッドガイド取付部29とを有して構成されている。ロッドガイド取付部29には、シリンダ本体28から上方へ突出し、外径がシリンダ本体28の外径よりも小さい小径部29aが設けられている。そして、当該小径部29aにロッドガイド23を取り付け、当該ロッドガイド23の外周にシャッタ4が装着されている。
一般的に、緩衝器の最伸長時に伸切ばねの外周側にできる空間はデッドスペースとなっており、シリンダにおいて、ピストンが摺接する部分よりも上側の内径は、伸切ばねの挿入を許容できる限り小さくできる。
そこで、第二の変形例に係る緩衝器D2のように、シリンダ20Aにおけるピストン21の摺接部(シリンダ本体28)よりも上側を小径部29aにして、その外周側をシャッタ4の収容スペースとして利用すると、シリンダ20Aにおけるピストン21の摺接部(シリンダ本体28)の外径を大きくできる。よって、第二の変形例に係る緩衝器D2の構造は、ピストン径の大きい緩衝器にも適応し易い。
さらに、第二の変形例に係る緩衝器D2によれば、シリンダ本体(ピストン21の摺接部)28の内径を大きくできるので、例えば、懸架ばね3をエアばねに替えて、緩衝器の最伸長時におけるエアばねの弾性力を相殺する弾性力を発揮するバランスばねを設ける場合にも、バランスばねを収容するスペースをシリンダ20A内に確保し易い。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。