本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
(第1の実施の形態)
図1に、本発明の第1の実施の形態における窓を有する偽造防止媒体(1)(以下「偽造防止媒体」という。)の平面図を示す。本発明の偽造防止媒体(1)は、図1に示すように、開口部(11)及び窓(10)を備え、窓(10)を通して奥側が透けて見える効果を備える。第1の実施の形態は、基材(2)と熱可塑性樹脂層(12)によって、窓(10)が形成された形態であり、以下、本発明の第1の実施の形態の偽造防止媒体(1)の詳細な構成について説明する。なお、窓(10)の形状は、図1に示す「円形状」とした例で説明する。
(基材)
本発明において基材(2)は、繊維を有する紙であり、基材(2)を構成する繊維の種類は、特に限定されるものでなく、各種木材を原料とするKP、SP等化学パルプ、GP、TMP、CTMP等機械パルプ、古紙再生パルプ等を使用することができる。また、イネ、アバカ、木綿、ケナフ、みつまた、竹等の非木材も使用することができる。また、後述する偽造防止媒体(1)の作製方法である超音波加工の際に生じる熱によって、溶融しない化学繊維、例えば、レーヨン繊維、ガラス繊維等であってもよい。これらの繊維を単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。なお、紙の材料として一般的に用いられるサイズ剤、紙力増強剤等の薬品、顔料、添料は、必要に応じて配合してもよい。また、紙の色については、赤、青、黄、緑等、特に限定されるものではなく、白色でもよい。また、以上の構成で成る紙の表面に、印刷適性や表面光沢を向上させるための塗工材料が施されたものでもよい。
また、本発明において、基材(2)に紙を用いる場合、紙の厚さ、坪量は特に限定されるものではなく、一般的な範囲で用いることができ、薄紙の例としては、坪量20〜30g/m2、厚さ30〜50μm程度であり、厚紙の例としては、坪量250〜300g/m2、厚さ300〜500μm程度である。なお、偽造防止媒体(1)の取扱性や耐久性の点から坪量80〜100g/m2、厚さ90〜120μm程度の紙を用いることが好ましい。
(窓の構成)
図2は、図1のA−A’線における断面図である。本発明の偽造防止媒体(1)おいて、窓(10)は、基材(2)の一部が貫通して孔が開いた状態の開口部(11)が、基材(2)の表裏に積層された熱可塑性樹脂層(12)によって覆われることで形成される。本発明において窓(10)を形成するための超音波加工の詳細については後述するが、超音波加工によって窓(10)を形成する場合、加工部において、基材(2)を構成する繊維が超音波加工による振動で金型の端に寄せられることで開口部(11)が形成されると同時に、繊維の密度の高い領域(S)が形成される。また、基材(2)の表裏に積層した熱可塑性樹脂層(12)が接着することで、図2に示す構成の窓(10)が形成される。このため、超音波加工によって窓(10)を形成する場合、基材(2)には、繊維を含んで成る紙を用いる。
(熱可塑性樹脂層)
本発明において、熱可塑性樹脂層(12)は、透明又は半透明な熱可塑性樹脂から成る材料によって構成され、熱可塑性樹脂層(12)は窓(10)の奥側が透けて見えれば、着色されていてもよいが、無色透明の方が、奥側を透かして見る際に視認性がよいことから好ましい。
熱可塑性樹脂層(12)の具体的な構成としては、フィルムの形態があり、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等の熱可塑性樹脂から成るフィルムを用いることができる。また、正反射光下で色彩が変化する干渉フィルムでもよい。また、異なる材料のフィルムを積層した多層フィルムでもよい。なお、基材(2)の表裏にフィルムを積層する場合は、同じ材料のフィルムを用いてもよく、異なる材料のフィルムを用いてもよい。
本発明において、熱可塑性樹脂層(12)に用いるフィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、一般的な範囲のフィルムを用いることができ、市販されているフィルムとしては、厚さ5μm〜500μmのものがあり、適宜選択して用いることができる。ただし、偽造防止媒体(1)の取扱性の点から、50μm程度の厚さのフィルムを用いることが好ましい。
また、別の熱可塑性樹脂層(12)の構成としては、前述した熱可塑性樹脂を含む液体状の材料を基材(2)に塗布して形成してもよい。なお、熱可塑性樹脂を含む液体状の材料は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を、芳香族系、環状エーテル系、アミド系等の溶剤に溶解させることで、作製することができる。熱可塑性樹脂を含む液体状の材料を塗布する場合においても、偽造防止媒体(1)の取扱性の点から、50μm程度の厚さとすることが好ましい。
熱可塑性樹脂層(12)としてフィルムを用いる場合には、必要に応じて基材(2)と接着するための接着層を設けてもよく、接着層としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ナイロン系樹脂、ゴム系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の各種合成樹脂を用いることができる。
(超音波加工機、加工工程)
図3は、本発明の偽造防止媒体(1)が備える窓(10)を形成するための超音波加工機(30)の模式図である。超音波加工機(30)は、図3に示すように、ホーン(31)、アンビル(33)及びアンビル(33)を固定する台座(34)によって構成される。ホーン(31)とアンビル(33)は金属製であり、アンビル(33)の上には、開口部(11)、すなわち窓(10)の形状に対応した凸形状の金型(32)が設けられている。なお、超音波加工機(30)は、枚葉紙に加工を行うスタンプ型と、連続紙に加工を行うミシン方式があるが、いずれの加工機を用いてもよい。
図4は、図1に示す円形状の開口部(11)を形成するための金型(32)の構成を示す図であり、図4(a)は、金型(32)の斜視図、図4(b)は、図4(a)のB−B’線における断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、金型(32)は、円形状の窓(10)を形成するために、凸形状で構成された第1の領域(32A)を有して成り、第1の領域(32A)は、図4(a)に示すように開口部(11)の円形状に対応した形状となっている。
図5は、本発明の偽造防止媒体(1)が備える窓(10)を超音波加工によって形成する方法のフロー図であり、図6は、超音波加工機(30)による加工によって、開口部(11)及び窓(10)が形成される状態を模式的に示す図である。以下、図5及び図6を用いて、本発明の偽造防止媒体(1)が備える窓(10)を形成する方法について説明する。
(熱可塑性樹脂層積層工程)
はじめに、図5に示す熱可塑性樹脂層積層工程(S1)において、基材(2)の表裏に熱可塑性樹脂層(12)を積層する。熱可塑性樹脂層(12)は、前述のように、フィルムを積層してもよく、熱可塑性樹脂を含む液体状の材料を塗布して積層してもよい。なお、熱可塑性樹脂層(12)の材質として、超音波加工によって生じる熱の温度(200℃程度)より融点が低いほど、金型(32)の加圧による熱可塑性樹脂層(12)の変形に伴い繊維が移動しやすくなる。このため、融点が200℃より低いポリプロピレン、ポリエチレン等から成る材料を用いると繊維を移動させやすいことから好ましい。
次に、図5に示す超音波加工工程(S2)において、図6(a)に示すように、ホーン(31)とアンビル(33)の間に、熱可塑性樹脂層(12)が積層された基材(2)を配置して、超音波加工を行う。超音波加工工程(S2)では、図4に示す金型(32)を用いて、熱可塑性樹脂層(12)が積層された基材(2)に超音波加工を行うが、金型(32)の高さ、すなわち図4(b)に示す凸形状の第1の領域(32A)の高さ(h)が、基材(2)に開口部(11)を設けるために、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)と基材(2)の厚さの和と同じ構成の金型(32)を用いればよい。なお、金型(32)の高さが、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)と基材(2)の厚さの和より大きくてもよいが、反対側の熱可塑性樹脂層(12)、すなわち図6(a)において、基材(2)の上側に積層される熱可塑性樹脂層(12)が貫通しないように、後述する超音波加工の際の圧力を調整する必要がある。また、金型(32)の高さが、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)と基材(2)の厚さの和より小さくてもよいが、超音波加工によって開口部(11)と窓(10)を形成するために、後述する超音波加工の際の圧力を調整する必要がある。
超音波加工は、図6(b)に示すように、ホーン(31)が下降し、基材(2)を挟んで超音波加工を行う。超音波加工を行うと、図6(b)の拡大図に示すように、凸形状の第1の領域(32A)に対応した基材(2)、詳細には、凸形状の第1の領域(32A)と接触する熱可塑性樹脂層(12)の上の基材(2)においては、ホーン(31)からの超音波振動と、下降による加圧により、元々、基材(2)を構成していた繊維が、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せられることで、図6(c)に示すように、第1の領域(32A)に応じた開口部(11)が形成されるとともに、開口部(11)の領域において基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)は、接着された状態となり、窓(10)が形成される。なお、図6(c)に示す矢印線は、基材(2)を構成する繊維が開口部(11)の輪郭に向かって寄せられる方向を示している。
前述のように、金型(32)の高さを所定の範囲とすることで、窓(10)を形成することができるが、超音波加工工程(S2)では、必要に応じて、超音波加工機(30)の加工条件を調整して、超音波加工を行ってもよい。具体的な超音波加工機(30)の加工条件とは、超音波振動の振幅と圧力であり、超音波振動の振幅とは、ホーン先端の振れ幅(縦振動)である。また、圧力とは、ホーン(31)と金型(32)が、基材(2)を押圧する圧力のことである。
本出願人が用いた超音波加工機(日本アビオニクス株式会社製 W5080 スタンプ式)によれば、振幅が0.5〜50μmの範囲で調整可能であり、圧力が0.001MPa〜0.4MPaの範囲で調整が可能である。これらの条件の値が大きいほど、基材を構成する繊維が移動しやすいことから、必要に応じて調整すればよい。なお、超音波加工機(日本アビオニクス株式会社製 W5080 スタンプ式)によれば、超音波加工を行う時間の調整も可能であり、必要に応じて調整してもよい。また、上述した調整の範囲は、超音波加工機(日本アビオニクス株式会社製 W5080 スタンプ式)によるものであり、各種の超音波加工機の仕様によって調整の範囲は異なるが、超音波加工によって、窓(10)を形成する原理は同じであることから、適宜調整して加工を行えばよい。これらの超音波加工機の加工条件を、基材(2)と熱可塑性樹脂層(12)の条件に応じて調整することで、基材(2)を構成する繊維を、第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せて、第1の領域(32A)に応じた開口部(11)を形成することができるとともに、開口部(11)の領域において基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)が接着された状態となり、窓(10)を形成することができる。
超音波加工によって形成した窓(10)の構成の特徴としては、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ繊維が寄せられることで、図6(c)に示す開口部(11)の輪郭に沿って繊維の密度が高い領域(S)が形成されることであり、従来技術のようにレーザ加工、切削加工等によって開口部(11)を形成する場合には、開口部(11)に存在していた繊維が打ち抜かれて除去されるだけで、図6(c)に示すような繊維の密度が高い領域(S)が形成されることはない。また、本発明の加工方法とは異なり、紙基材をエンボス加工することで密度が高い領域を形成することもできるが、この場合、本発明のように繊維の移動はないため、紙基材の単位面積当たりにおける繊維の量は同じになる。これに対して、超音波加工によって本発明の窓(10)を形成する場合の繊維の密度が高い領域(S)は、繊維の移動によって周りの基材(2)よりも繊維の量が高く、繊維の密度が高い構成となっている。なお、開口部(11)の輪郭とは、図1に示す模様の場合、「円形状」の円周部分のことである。
また、図6(c)に示す繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)は、超音波加工によって窓(10)を形成する一つの形態によれば、周りの基材(2)の厚さと同じ状態で形成される。前述のように、本発明の加工方法とは異なり、紙基材をエンボス加工することで繊維の密度が高い領域を形成することもできるが、この場合、紙基材の厚さ方向に圧縮されて周りの領域に比べて厚さが薄くなる。一方、本発明の超音波加工によって形成した窓(10)の構成は、図6(c)に示すように、基材(2)を構成する繊維が寄せられることで繊維の密度が高いものの、基材(2)の厚さが薄くならないことも特徴である。
超音波加工によって形成した窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)の効果は、超音波加工により繊維が寄せられた領域(S)が、周りの領域、すなわち超音波加工が施されていない基材(2)と比べて、部分的に繊維密度が高いことで、反射光下の観察では、紙の色が濃く視認され、透過光下の観察では、暗く視認されることによって、窓(10)の認証性を高めることができる。なお、図6(c)に示す超音波加工により繊維が寄せられた領域の範囲(T)を、100μm以上形成すると、窓(10)の輪郭として認証性が高まることから好ましい。
図7は、超音波加工によって形成した窓(10)の別の構成を示す図であり、図6(c)に示す構成に対して、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さよりも厚い状態で形成され、熱可塑性樹脂層(12)もまた、繊維の密度が高い領域(S)に応じて盛り上がった状態で形成される。図7に示すように、熱可塑性樹脂層(12)が、繊維の密度が高い領域(S)によって盛り上がると、開口部(11)の輪郭が盛り上がった状態となることで、立体的にも窓(10)の形状を視認できることから好ましい。なお、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)は、立体的な視覚効果を得るために、基材(2)に対して20μm以上厚いことが好ましく、流通適正を考慮すると50μm以下とするのが好ましい。
なお、図6(c)に示すように、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さと同じ状態で形成されるか又は図7に示すように繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さよりも厚い状態で形成されるかは、超音波加工によって金型(32)が基材(2)を加圧する際に、金型(32)の表面(第1の領域(32A)の凸形状の表面)が、金型(32)と接触する側の熱可塑性樹脂層(12)をどこまで押し上げるかによるもので、図7に示すように、金型(32)と接触する側の熱可塑性樹脂層(12)を基材(2)の表面まで押し上げる場合に、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さよりも厚い状態で形成される。一方、図6(c)に示すように、金型(32)と接触する側の熱可塑性樹脂層(12)が基材(2)の表面まで押し上げられない場合には、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さと同じ状態で形成される。
超音波加工によって形成した窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)を作製する方法の効果は、特許文献2のように、基材(2)を打ち抜いて開口部を形成する工程がなく、超音波加工による一度の加工により、開口部(11)と窓(10)を形成することができることから、簡易に製造できる点である。また、特許文献2のように、切削加工によって開口部を形成することによる廃棄物がないことから、廃棄処理のための設備を設ける必要もない。また、特許文献2の技術において、開口部を複数設ける場合には、基材の強度が弱くなり、破れやすくなることから、フィルムを積層するまでの基材の取扱いに注意する必要があったが、本発明の偽造防止媒体(1)を作製する方法によれば、一度の加工により、開口部(11)と窓(10)を形成することから、基材(2)の取扱性の問題がない。
(開口部の形状)
本発明において、基材(2)に形成される開口部(11)の数、すなわち窓(10)の数は、図1に示すように、一つだけ設けてもよく、図8に示すように、複数設けてもよい。また、本発明の第1の実施の形態において開口部(11)の形状は、「円形状」に限定されるものではなく、図9(a)に示すような「星型」、図9(b)に示すような「数字」、図9(c)に示すような「文字」等であってもよい。また、図9(a)から図9(c)までに示すように、開口部(11)によって図柄を形成する構成とは異なり、図9(d)に示すように、開口部(11)を設けることで残った基材(2)によって、図柄を形成してもよく、図9(d)は、「JAPAN」の文字の背景を開口部(11)とし、残った基材(2)によって、「JAPAN」の文字を形成した例を示している。
続いて、開口部(11)、すなわち窓(10)の形状の変形例について説明する。図10(a)は、開口部(11)の形状の変形例を示す平面図であり、図10(a)に示す開口部(11)は、基材(2)の一部を囲む形状で形成されることが特徴である。以降の説明では、開口部(11)によって囲まれた基材を符号「2’」として説明する。なお、開口部(11)の形状に、特に限定はないが、ここでは、図10に示すように、「ドーナツ形状」で構成され、基材(2)の一部を「円形」で囲む形状とした例について説明する。
図10(b)は、図10(a)のA−A’線における断面図である。図10(a)に示す構成において、窓(10)は、基材(2)の一部が貫通して孔が開いた状態の開口部(11)が、熱可塑性樹脂層(12)によって覆われることで形成される。また、図10(a)の平面図において、開口部(11)によって囲まれる基材(2’)は、図10(b)の断面図では、熱可塑性樹脂層(12)によって囲まれた状態となっている。
図11は、図10に示すドーナツ形状の開口部(11)を形成するための金型(32)の構成を示す図であり、図11(a)は、金型(32)の斜視図、図11(b)は、図11(a)のB−B’線における断面図である。図11(a)及び図11(b)に示すように、金型は、ドーナツ形状の開口部(11)を形成するために、凸形状で構成された第1の領域(32A)と、ドーナツ形状で囲まれた円形の基材(2’)を形成するために、凹形状で構成された第2の領域(32B)から成る。なお、図11(a)に示すように、凸形状の第1の領域(32A)は、開口部(11)のドーナツ形状に対応した形状であり、凹形状の第2の領域(32B)は、開口部(11)によって囲まれる円形に対応した形状である。円形の基材(2’)がドーナツ形状の開口部(11)によって囲まれることから、金型(32)において凹形状の第2の領域(32B)は、凸形状の第1の領域(32A)に囲まれた構成となっている。
また、超音波加工機(30)に用いる金型(32)は、基材(2)に開口部(11)を設けるために、図11(b)に示す凸形状の第1の領域(32A)と凹形状の第2の領域(32B)の高低差が、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)と基材(2)の厚さの和と同じ構成のものを用いればよい。なお、前述のように、凸形状の第1の領域(32A)と凹形状の第2の領域(32B)の高低差が、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)と基材(2)の厚さの和と異なる場合であっても、超音波加工の際の圧力を調整することで、開口部(11)及び窓(10)を形成することもできる。
図12は、図11に示す金型(32)を用いた超音波加工により、開口部(11)及び窓(10)が形成される状態を模式的に示す図である。超音波加工を行うと、図12(a)の拡大図に示すように、凸形状の第1の領域(32A)に対応した基材(2)、詳細には、凸形状の第1の領域(32A)と接触する熱可塑性樹脂層(12)の上の基材(2)においては、ホーン(31)からの超音波振動と、下降による加圧により、元々、基材(2)を構成していた繊維が、第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せられることで、第1の領域(32A)に応じた開口部(11)が形成されるとともに、開口部(11)の領域において基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)は、熱圧着した場合と同じように接着された状態となり、窓(10)が形成される。また、凹形状の第2の領域(32B)に対応した基材(2)、詳細には、凹形状の第2の領域(32B)と接触する熱可塑性樹脂層(12)の上の基材(2)は、超音波加工が行われないことで、そのまま残った状態となり、図12(b)に示すように、開口部(11)によって挟まれた基材(2’)が形成される。また、金型(32)と接触する熱可塑性樹脂層(12)は、図11(b)に示す金型(32)の凹凸に沿って加工されることで、図12(b)に示すような基材(2’)を囲んだ状態に加工される。
なお、凸形状の第1の領域(32A)の外側とは、図12(a)の拡大図に示すように、詳細には、凸形状の第1の領域(32A)の外径に対しては外側であり、内径に対しては内側である。したがって、ドーナツ形状の開口部(11)を形成した場合には、図10(a)に示すように、ドーナツ形状の外径の輪郭部分と、内径の輪郭部分に、繊維の密度の高い領域(S)が形成される。前述のように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)においても、超音波加工により繊維が寄せられた領域の範囲(T)を、100μm以上形成すると、窓(10)の輪郭として認証性が高まることから好ましい。
また、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)においても、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)が、周りの基材(2)の厚さよりも厚いことで、熱可塑性樹脂層(12)が盛り上がると、立体的にも窓(10)の形状を視認できることから好ましい。なお、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)においても、繊維の密度が高い領域(S)の厚さ(H)は、立体的な視覚効果を得るために、基材(2)に対して20μm以上厚いことが好ましく、流通適正を考慮すると50μm以下とするのが好ましい。
以上の説明では、開口部(11)の形状が「ドーナツ形状」で構成され、基材(2)の一部を「円形」で囲む形状とした例について説明したが、開口部(11)によって囲まれる基材(2’)の形状は、「円形状」に限定されるものではなく、図13(a)に示すような「星型」、図13(b)に示すような「数字」、又は他の文字、記号、図形等であってもよい。また、図13(c)に示すように、開口部(11)の外形と、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)を相似形状の関係で形成してもよい。また、図13(d)に示すように、開口部(11)と開口部(11)によって囲まれた基材(2’)によって、一つの文字を構成してもよい。また、図13(e)に示すように、開口部(11)によって囲まれる基材(2’)を二つ設けてもよく、更に多くの基材(2’)を設けてもよい(図示せず)。また、図13(f)に示すように、開口部(11)によって囲まれる基材(2’)(「P」の文字)の内側に、更に開口部を備えていてもよい。
また、図14(a)に示すように、網点印刷物の原理と同様にして、濃淡差のある画像を形成してもよく、この場合、図14(a)の拡大図に示すように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の面積率によって、画像の濃淡を表現することができる。また、図14(b)に示すように、彩紋模様を形成してもよい。
また、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)に、抄き入れ加工によって、白透かし、黒透かし又はそれらを組み合わせた透かしを形成してもよい。また、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)に、印刷により模様を形成してもよい。
(効果)
開口部(11)、すなわち窓(10)の形状の変形例の構成を備えた偽造防止媒体(1)は、窓(10)を認証することで、真偽判別が可能であることに加えて、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)又はそれによる模様を認証することでも、真偽判別を行うことができる。また、窓(10)の形状の変形例の構成を備えた偽造防止媒体(1)においても、超音波加工による一つの工程により、開口部(11)と窓(10)の作製ができることから、製造性に優れる。
また、開口部(11)、すなわち窓(10)の形状の変形例の構成を備えた偽造防止媒体(1)は、開口部(11)、すなわち窓(10)によって囲まれた基材(2’)を備えることから、偽造をより困難にする効果がある。これは、基材(2)から切り取った基材(2’)を窓(10)に囲まれた位置に配置する際に精度を要するためであり、基材(2’)の形状が複雑であるほど、例えば、図14(a)及び図14(b)に示すように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)を複数設け、かつ、基材(2’)の配置に高度な精度を要する構成とすることで偽造の困難性を向上させることができる。
また、以上に説明した偽造防止媒体(1)において、熱可塑性樹脂層(12)が積層された部分と基材(2)に凹凸差が生じる(図2及び図7)が、積層形態や流通時の耐久性を考慮して、熱可塑性樹脂層(12)の表面が、図15(a)に示すように基材(2)の表面と同じ構成か又は図15(b)に示すように、基材(2)の表面より低い位置に積層する構成でもよい。この場合、熱可塑性樹脂層(12)の厚さに応じて、基材(2)にあらかじめ凹部を形成した後、熱可塑性樹脂層(12)を積層すればよい。なお、凹部を形成する手段としては、レーザ加工によって基材(2)を切削する方法や、後述する抄き入れ加工を用いることができる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、第1の実施の形態で説明した偽造防止媒体(1)において、窓(10)の視認性を向上させるための輪郭要素(21)が形成された輪郭部(20)を備える。その他の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。第2の実施の形態においても、開口部(11)の形状は、前述のように特に限定はないが、一例として、開口部(11)の形状は「円形」とした構成について説明する。
(輪郭部)
図16は、第2の実施の形態の偽造防止媒体(1)において、窓(10)が形成された領域を拡大して示す図である。本発明において輪郭部(20)は、開口部(11)、すなわち窓(10)の輪郭の少なくとも一部に沿って形成され、輪郭部(20)には、輪郭要素(21)が形成されて成る。図16では、開口部(11)の形状である「円形」の輪郭の全体に沿って、直線状の画線で構成された輪郭要素(21)が形成された状態を示している。
図17は、第2の実施の形態の偽造防止媒体(1)において、輪郭部(20)に形成される輪郭要素(21)の他の構成を示す図であり、図17(a)は、破線状の画線で構成された輪郭要素(21)が形成された例であり、図17(b)は、点線状の画線で構成された輪郭要素(21)が形成された例であり、図17(c)は、波線状の画線で構成された輪郭要素(21)が形成された例である。図17(a)から図17(c)に示すように、窓(10)の輪郭に沿って輪郭部(20)が形成されていれば、本発明の輪郭部(20)を構成する画線に限定はない。
図18は、図16に示す輪郭部(20)とは異なる構成を示す図であり、輪郭部(20)の一部の拡大図である。図18(a)に示す輪郭部(20)は、点状の輪郭要素(21)が複数形成されて成る例であり、図18(b)に示す輪郭部(20)は、画線状の輪郭要素(21)が複数形成されて成る例である。これを印刷技術に置き換えて説明すると、図16に示す輪郭要素(21)は、基材(2)をインキによって完全に塗り潰した状態、いわゆる、ベタ印刷されている状態であり、図18(a)及び図18(b)は、同じ領域内に細かな網点又は画線を複数配置して、同じ模様を表現した構成である。したがって、図18(a)及び図18(b)に示すように、複数の輪郭要素(21)によって、輪郭部(20)を形成した場合においても、図16に示す輪郭部(20)と同じように視認できることから、図18(a)及び図18(b)に示す構成を輪郭部(20)として形成してもよい。
第2の実施の形態において、輪郭要素(21)の形態は3とおりあり、それぞれの詳細な構成について順に説明する。
(印刷による輪郭部)
一つ目の輪郭部(20)の構成は、印刷材料によって形成された輪郭要素(21)から成る形態である。その構成を示す図として、図19は、基材(2)と異なる色のインキで印刷された輪郭要素(21)が基材(2)の上に形成され、その上を熱可塑性樹脂層(12)が覆っている状態を示している。この場合、印刷するインキの色によって、窓(10)の輪郭部(20)が強調されて、視認性が向上する効果が得られる。なお、図19は、基材(2)の一方の面に輪郭要素(21)が施されているが、基材(2)の他方の面に形成してもよく(図示せず)、基材(2)の両面に形成してもよい。
輪郭要素(21)の印刷に用いるインキについては、特に限定はなく、プロセスインキ、特色インキ、光学的変化インキ及び蛍光インキ等を用いることができる。また、透過光下で透かし効果のある透かしインキや、金属顔料を含んで光を遮断する効果のある光遮断性のインキを用いてもよい。
また、輪郭要素(21)は、単色で形成することなく、輪郭部(20)において、部分的に色が異なってもよい。その具体例として、図20(a)及び図20(b)に示すように、2色で部分的に異なる色で形成してもよく、図20(a)及び図20(b)の符号(21a)と符号(21b)は、異なる色のインキによって形成された輪郭要素の例を示している。また、図20(c)に示すように、印刷網点の面積率を部分的に異ならせてグラデーションを構成してもよく、更に3色以上のインキを印刷してもよく(図示せず)、これらの構成を組み合わせてもよい。これらの構成は、印刷技術によって、簡易に製造することができる。前述した特許文献3のように、OVDによって輪郭部を形成する場合、OVDによる光学的変化がない状態では、灰色の色彩しか表現することができないが、本発明の図20に示す構成によれば、輪郭部(20)の中で多彩な色を表現することで窓(10)の認証性を向上させることができる。
(印刷による輪郭部の加工方法)
図19に示す積層順で、印刷によって基材(2)の上に輪郭要素(21)を形成する場合には、超音波加工を行う前に、輪郭要素(21)を形成する必要がある。なお、開口部(11)の加工に許容を持たせるために、輪郭部(20)より内側の領域にも印刷しておいてもよい。これは、超音波加工を行う際に、基材(2)を構成する繊維の移動と同時に、金型(32)の外側に寄せられるためである。
輪郭要素(21)を印刷する手段としては、オフセット、フレキソ、グラビア、スクリーン、凹版印刷及びインクジェット印刷機等を用いることができ、特に、グラビア、スクリーン、凹版印刷及びインクジェット印刷によって、インキの膜厚を高くできる印刷方式によれば、輪郭部(20)の表現が色の差で強調できるだけでなく、立体的にも強調されて視認できることから、窓(10)の認証性を高めるためにより好ましい形態である。この場合のインキ膜厚としては、20μm以上であることが好ましい。また、流通適正を考慮すると50μm以下とすることが好ましい。このように、インキの盛りがある輪郭要素(21)を形成する場合には、基材(2)と同じ色のインキを用いた場合でも輪郭部(20)が立体的に強調されて視認できることから、当該構成を本発明の輪郭要素(21)として形成してもよい。
図19に示す偽造防止媒体(1)において、印刷によって形成される輪郭要素(21)は、基材(2)の上に形成された例であるが、本発明において、印刷により形成する輪郭要素(21)は、図21に示すように、熱可塑性樹脂層(12)の上に形成してもよい。なお、基材(2)の表裏の熱可塑性樹脂層(12)の上に、印刷により形成する輪郭要素(21)を形成してもよい(図示せず)。
以上に説明した、第2の実施の形態において、印刷により輪郭要素(21)を形成する場合、印刷工程を要するものの、開口部(11)及び窓(10)の加工自体は、第1の実施の形態と同じ一つの工程で行うことができることから、製造性に優れる。
(透過性が異なる輪郭部)
二つ目の輪郭部(20)の構成は、基材(2)の厚さによって、透過性が変化する、いわゆる、透かしの原理を利用した形態である。その構成を示す図として、図22(a)は、輪郭部(20)の周囲の基材(2)よりも部分的に厚さを薄くすることで、透過光下で明るく視認される白透かしの効果がある輪郭要素(21)が形成された状態を示している。この場合、透過光下で観察する際に、輪郭部(20)が明るく強調されて、窓(10)の視認性が向上する効果が得られる。また、図22(b)は、輪郭部(20)の周囲の基材(2)よりも部分的に厚さを厚くすることで、透過光下で暗く視認される黒透かしの効果がある輪郭要素(21)が形成された状態を示している。この場合、透過光下で観察する際に、輪郭部(20)が暗く強調されて、窓(10)の視認性が向上する効果が得られる。なお、図22(a)に示すように、輪郭部(20)の周囲の基材(2)よりも部分的に厚さを薄くする場合及び図22(b)に示すように、輪郭部(20)の周囲の基材(2)よりも部分的に厚さを厚くする場合において、厚さの差を20μm以上設けることで立体的にも強調されて視認できることから好ましく、偽造防止媒体(1)の流通適正を考慮すると50μm以下とすることが好ましい。
なお、基材(2)が紙の場合において、坪量や顔料、染料及び添料の配合により、紙自体に透過性がない場合であっても、基材(2)の厚さを薄くすることで、透過性の差が生じれば、それを輪郭要素(21)としてもよい。また、透過性のある紙であれば、部分的に透過性が異なる輪郭要素(21)を形成する基材(2)として用いることができる。
(透過性が異なる輪郭部の加工方法)
輪郭要素(21)を形成する方法としては、紙から成る基材(2)を対象として、公知の抄き入れ加工技術とされている、円網、ダンディロール、プレスロールによって形成することができ、この場合、超音波加工を行う前に、あらかじめ基材(2)を作製する製紙工程で加工して、輪郭要素(21)を形成する必要がある。また、超音波加工を行う前に、レーザ加工により、基材(2)の一部を除去して厚みを異ならせて透過性が異なる輪郭要素(21)を形成してもよい。また、超音波加工を行う前に、エンボス加工により、基材(2)の一部を薄くして、透過性が異なる輪郭要素(21)を形成してもよい。なお、抄き入れ加工を施す際には、輪郭部(20)の範囲のみ抄き入れ加工してもよく、開口部(11)の加工に許容を持たせるために、輪郭部(20)より内側の領域にも加工しておくとよい。
基材(2)の厚さを部分的に異ならせて形成する輪郭要素(21)は、白透かしと黒透かしのみの効果を備えた構成のみに限定されず、輪郭部(20)において、基材(2)の厚さが部分的に異なってもよい。その具体例として、図23(a)に示すように、白透かしと黒透かしの両方の効果を備えた輪郭部(20)を形成してもよく、図23(a)では、円形状の窓(10)に対して、上側の輪郭に白透かしの効果を備えた輪郭要素(21A)と、下側の輪郭に黒透かしの効果を備えた輪郭要素(21B)が形成されて成る輪郭部(20)の例を示している。また、図23(b)では、円形状の窓(10)を中心に、白透かしの効果を備えた輪郭要素(21A)と黒透かしの効果を備えた輪郭要素(21B)が、順に形成されて成る輪郭部(20)の例を示している。また、図23(c)では、白透かしから黒透かしまで基材(2)の厚さを連続的に異ならせた輪郭要素(21)を形成することで、濃淡が連続的に変化して視認される輪郭部(20)の例を示している。抄き入れ加工によって形成する輪郭要素(21)の例は、図23に示す例に限定されるものではなく、図23に示す構成を組み合わせてもよく、抄き入れにより加工できる模様、例えば、破線、点線、波線、彩紋等、特に限定されるものではない。前述した特許文献3のように、OVDによって輪郭部を形成する場合、透過光下で観察すると、OVDによって光が遮断されることで暗く視認されるのみであるが、本発明の図23に示す構成によれば、輪郭部(20)の中で多彩な濃淡を表現することで窓(10)の認証性を向上させることができる。
以上に説明した、第2の実施の形態において、抄き入れ加工により輪郭要素(21)を形成する場合、抄き入れ加工の工程を要するものの、開口部(11)及び窓(10)の加工自体は、第1の実施の形態と同じ一つの工程で行うことができることから、製造性に優れる。
(箔による輪郭部)
三つ目の輪郭部(20)の構成は、引用文献3と同様に、金属箔によって輪郭要素(21)を構成する形態である。その構成を示す図として、図24(a)は、金属箔(P)が基材(2)の上に形成され、その上を、熱可塑性樹脂層(12)が覆っている状態を示している。前述のように、輪郭要素(21)は、開口部(11)の輪郭に沿って形成されることから、金属箔(P)は、開口部(11)の輪郭に沿って、開口部(11)を囲む形状で構成される。
金属箔(P)は、金、銀、アルミ等の金属材料から成る構成があり、この場合、開口部(11)の形状に応じて金属箔(P)を打ち抜いて、基材(2)の上に接着層(図示せず)を介して積層すればよい。なお、図24(a)に示す構成の偽造防止媒体(1)は、金属箔(P)と熱可塑性樹脂層(12)を、超音波加工によって開口部(11)を形成する前に、基材(2)に積層し、超音波加工を行うことで窓(10)を作製する。また、図24(b)に示すように、熱可塑性樹脂層(12)の上に、接着層(図示せず)を介して金属箔(P)を積層してもよく、この場合、超音波加工を行ってから、金属箔(P)を積層してもよく、基材(2)に熱可塑性樹脂層(12)と金属箔(P)を積層してから超音波加工を行ってもよい。
また、金属箔(P)によって輪郭要素(21)を形成する別の例として、金属箔(P)とフィルムが一体となり、金属箔(P)に回折格子が施されたOVDを用いてもよい。この場合、OVDには、本発明における熱可塑性樹脂層(12)の構成であるフィルムを支持基材とし、フィルムに金属材料による層を、エンボス層を介して蒸着したものを用い、開口部(11)の輪郭に応じてディメタライズ処理して輪郭要素(21)を形成し、それを基材(2)に合わせて積層して超音波加工を行うことで、本発明の窓(10)を形成することができる。以上のように、金属箔(P)によって輪郭要素(21)を形成した場合、反射光下で光沢や色が変化する光学的変化や、OVDによる視覚的効果により、窓(10)の認証性を高めることができる。
図24は、基材(2)の一方の面のみに、金属箔(P)を備えた例であるが、基材(2)の両面に、金属箔(P)を積層して輪郭要素(21)を形成してもよい(図示せず)。
以上に説明した、第2の実施の形態において、金属箔(P)により輪郭要素(21)を形成する場合、金属箔(P)を要するものの、開口部(11)及び窓(10)の加工自体は、第1の実施の形態と同じ一つの工程で行うことができることから、製造性に優れる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態は、第1の実施の形態で説明した偽造防止媒体(1)において、基材(2)と熱可塑性樹脂層(12)の間に、金属箔(P)を積層した状態で、超音波加工によって窓(10)を形成した偽造防止媒体(1)である。図27は、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の一例を示す平面図であり、図28は、図27のA−A’線における断面図である。
図28の断面図に示すように、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)において、窓(10)の輪郭に沿った領域には、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成される。これは、超音波加工による振動で、基材(2)を構成する繊維とともに金属箔(P)が金型の端に寄せられるためであり、窓(10)の輪郭に沿った領域は、金属箔(P)を構成している金属材料の量が多くなり、金属箔(P)の一部が盛り上がった状態となる。
このように、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)は、窓(10)の輪郭に沿って、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成され、図27では、「円形状」の窓(10)の輪郭に沿って形成された状態を示している。なお、超音波加工によって形成された繊維の密度が高い領域(S)と金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が重なる範囲は、用いる基材(2)、金属箔(P)及び超音波加工条件により異なるが、同じであってもよく、異なってもよく、一部が重なる構成でもよい。
第3の実施の形態においても、第2の実施の形態で説明した箔(P)によって輪郭要素(21)を形成する場合と同様に、窓(10)の輪郭に沿って箔(P)が配置された状態となるが、第3の実施の形態は、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成される点が異なる。
また、第2の実施の形態において輪郭要素(21)を構成する金属箔(P)は、図16及び図17に示すように、窓(10)の形状に沿って配置されるだけであるが、第3の実施の形態の金属箔(P)の形状は、窓(10)の形状に関係なく設けることができる。その具体例として、図27に示す金属箔(P)は、窓(10)の形状が「円形状」であることに対し、箔(P)を「正方形」とした例である。また、図29(a)は、窓(10)の形状が「円形状」であることに対し、金属箔(P)は「三角形」とした例である。また、図29(b)は、窓(10)の形状が「円形状」であることに対し、金属箔(P)を「六角形」とした例である。また、図29(c)は、窓の形状が「円形状」であることに対して、金属箔(P)を「長方形」とし、図29(c)に示す基材(2)の短辺方向に渡って設けた例である。本発明の第3の実施の形態において、金属箔(P)の形状は、図29に示す形状に限定されず、他の図形、文字、記号等であってもよい。
また、第3の実施の形態において、金属箔(P)は、複数の窓(10)の輪郭に沿って配置されてもよい。その一例として、図30(a)は、「円形状」の窓に「正方形」の金属箔(P)が配置された部分と、「円形状」の窓に「三角形」の金属箔(P)が配置された部分を設けた例である。また、図30(b)は、一つの金属箔(P)が二つの窓(10)の輪郭に沿って配置された例である。
第3の実施の形態においても、金属箔(P)に回折格子を施したOVDを用いてもよい。この場合、OVDには、本発明における熱可塑性樹脂層(12)の構成であるフィルムを支持基材とし、フィルムに金属材料による層を、エンボス層を介して蒸着したものを用いればよい。
図27から図30に示す偽造防止媒体(1)は、金属箔(P)と熱可塑性樹脂層(12)の形状が同じで、金属層(P)が熱可塑性樹脂層(12)によって覆われた構成となっているが、金属層(P)と熱可塑性樹脂層(12)の形状は異なってもよい。具体的には、金属層(P)が熱可塑性樹脂層(12)によって覆われていない領域があってもよいし、熱可塑性樹脂層(12)が、金属層(P)から、基材(2)の上に跨って覆う構成でもよい。
(窓の形成方法)
続いて、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)が備える窓(10)を形成する方法について説明する。なお、第1の実施の形態で説明した窓(10)を形成する方法を基にして説明する。
第3の実施の形態の窓(10)を形成する場合、熱可塑性樹脂層積層工程(S1)は、図31に示すように、基材(2)の一方の面に、金属箔(P)を積層し、それらを挟むように熱可塑性樹脂層(12)を積層する。熱可塑性樹脂層(12)は、前述のように、フィルムを積層してもよいし、熱可塑性樹脂を含む液体状の材料を塗布して積層してもよい。また、OVDのように、金属箔(P)と熱可塑性樹脂層(12)が、あらかじめ一体化されていれば、そのまま基材(2)の上に積層してもよい。
超音波加工工程(S2)は、ホーン(31)とアンビル(33)の間に、熱可塑性樹脂層(12)が積層された基材(2)を配置して、超音波加工を行う。この際、図4に示す金型の高さ(h)は、基材(2)に開口部(11)を設けるために、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)、基材(2)及び金属箔(P)の厚さの和と同じ構成の金型(32)を用いればよい。なお、金型(32)の高さが、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)、基材(2)及び金属箔(P)の厚さの和より大きくてもよいが、基材(2)の上側に積層される熱可塑性樹脂層(12)が貫通しないように、超音波加工の際の圧力を調整する必要がある。また、金型(32)の高さが、金型(32)が接触する側の熱可塑性樹脂層(12)、基材(2)及び金属箔(P)の厚さの和より小さくてもよいが、超音波加工によって開口部(11)と窓(10)を形成するために、超音波加工の際の圧力を調整する必要がある。
超音波加工工程(S2)において、図32(a)に示すように、ホーン(31)が下降して超音波加工が行われると、前述のように基材(2)を構成していた繊維が、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せられることで、繊維の密度の高い領域(S)が形成される。また、図32(b)に示すように、更に加圧すると金属箔(P)もまた、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せられることで、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)と第1の領域(32A)に応じた開口部(11)が形成されるとともに、開口部(11)の領域において基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)は、接着された状態となり、窓(10)が形成される。なお、超音波加工工程(S2)において、図32に示す基材(2)、金属箔(P)及び熱可塑性樹脂層(12)の積層順とは反対に、凸形状の金型(32)と接触する側に金属箔(P)を配置した状態で超音波加工してもよい。
以上のようにして形成された第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)は、金属箔(P)のうち、窓(10)に沿って形成された金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)によって、窓(10)の視認性が向上する効果が得られる。また、金属箔(P)による光学的変化やOVDによる視覚的効果により、窓(10)の認証性を高めることができる。また、本発明とは異なる方法によって、図27に示す窓(10)の形状に対応した金属箔(P)を設ける場合には、窓(10)の領域に対応して金属箔(P)を打ち抜いた部分を、窓(10)の領域と位置合せして積層する必要があるが、本発明の第3の実施の形態の窓(10)の形成方法によれば、超音波加工による一度の加工により、開口部(11)と窓(10)を形成することができる。また、特許文献3のように、窓(10)に対応した領域の金属箔(P)を剥離するディメタライズ処理を行う必要がなく、窓(10)に隣接したOVDを簡易に製造することができる。
第3の実施の形態について、基材(2)の一方の面に金属箔(P)を積層した構成について説明したが、図33(a)に示すように、基材(2)の両面に金属箔(P)を積層し、それらを挟むように熱可塑性樹脂層(12)を積層してもよい。図33(a)に示す基材(2)を超音波加工した場合、図33(b)に示すように、窓(10)の輪郭に沿った基材(2)の表裏に、金属箔(P)が積層された偽造防止媒体(1)を形成することができる。なお、図33(a)に示す基材(2)を超音波加工した場合、図33(b)に示すように、基材(2)の側面に金属箔(P)を構成する金属材料が配置された状態となる。これは、金型(32)と接する側の金属箔(P)が、超音波加工によって加圧されることで、折れ曲がるためである。また、超音波加工による振動で、図33(b)に示す上側の金属箔(P)において、窓(10)の輪郭に沿った領域に、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成される。
図33(a)に示す積層状態の基材(2)に、超音波加工により窓(10)を形成する場合、図33(b)に示すように、基材(2)の側面に金属箔(P)が配置されることも一つの特徴であり、本発明と異なる方法、例えば、窓(10)の領域に対応して打ち抜いた金属箔(P)を基材に積層する場合は、図33(b)に示すような、基材(2)の側面に金属箔(P)が配置されることはない。
続いて、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の窓(10)の変形例について説明する。
図34は、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の一つ目の変形例を示す図であり、図10に示す偽造防止媒体(1)において、更に基材(2)と熱可塑性樹脂層(12)の間に金属箔(P)を積層した構成の偽造防止媒体(1)であり、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の上にも、金属箔(P)が積層された構成である。前述のように、図11に示す金型(32)を用いて超音波加工した場合には、凹形状の第2の領域(32B)と接触する熱可塑性樹脂層(12)の上の基材(2’)は、超音波加工が行われないことで、そのまま残った状態となる。このため、第3の実施の形態の窓(10)の形成方法により、図11に示す金型(32)を用いて超音波加工を行うと、基材(2’)と熱可塑性樹脂層(12)の間の金属箔(P)もそのまま残ることで、図34に示す構成の窓(10)を形成することができる。なお、超音波加工によって、ドーナツ形状の開口部(11)の内径の輪郭部分に繊維の密度の高い領域(S)が形成されるのと同様に、ドーナツ形状の内径の輪郭部分に、金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成される。
第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の一つ目の変形例は、図13及び図14に示す示すような開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の上にも、同様にして、金属箔(P)を積層することができる。当該構成は、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の配置に精度を要することに加えて、更に金属箔(P)の配置に高度な精度を要することから、偽造の困難性を向上させることができる。
また、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の一つ目の変形例は、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の上のみに金属箔(P)を積層した構成とすることもできる。例えば、図34に示す構成の窓(10)の場合、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)から開口部(11)の一部に領域に渡った領域に金属箔(P)を積層して超音波加工を行えばよい。
第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)の二つ目の変形例について、図35を用いて説明する。二つ目の変形例は、図35に示すように、窓(10)の一部に隣接した領域の基材(2)と熱可塑性樹脂層(12)の間に金属箔(P)を積層した構成である。
この場合、図36に示すように、窓(10)の一部に隣接した領域と窓(10)に相当する領域の基材(2)の上に、金属箔(P)を積層した状態で超音波加工を行う。なお、図36に示す破線は、超音波加工によって窓(10)を形成する領域を示している。
図36に示す金属箔(P)が積層された基材(2)を、図37(a)及び(b)に示すように超音波加工を行うと、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に沿って、基材(2)を構成する繊維と金属箔(P)が外側へ寄せられることで、繊維の密度の高い領域(S)と金属箔(P)を構成する金属材料の量が多い領域(SP)が形成される。また、基材(2)と金属箔(P)が貫通して開口部(11)が形成され、基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)は、接着された状態となり、図37(c)に示す窓(10)が形成される。なお、図37は、金属箔(P)が積層された基材(2)に超音波加工が行われている状態を模式的に示す図であり、基材(2)を構成する繊維及び金属箔(P)を構成する金属材料が、凸形状の第1の領域(32A)の輪郭に向かって移動する方向を矢印線で示している。
二つ目の変形例においても、図38に示すように、開口部によって囲まれた基材(2’)の上にも、金属箔(P)を積層してもよい。図38に示す窓(10)は、図36に示す金属箔(P)が積層された基材(2)に、図11に示す金型(32)を用いて超音波加工することで形成することができる。このとき、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)の一部に、金属箔(P)が、そのまま残って積層される。
また、二つ目の変形例において、金型の形状により、図39(a)に示すように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)において、金属箔(P)が積層された部分と、金属箔(P)が積層されない部分を別々に設けることもできる。また、図39(b)に示すように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)に金属箔(P)が積層される部分のみ設けることもできる。また、図39(c)に示すように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)に金属箔(P)が積層されない部分のみ設けることもできる。いずれの構成も、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)に超音波加工が行われないように、金型(32)に凹形状の第2の領域(32)を設ければよい。
また、二つ目の変形例において、窓(10)の輪郭に隣接する基材(2)の上に金属箔(P)が積層されない領域、例えば、図35に示す窓(10)の右側に、第2の実施の形態で説明した輪郭要素(21)を設けてもよい。
また、第3の実施の形態において、以上に説明した窓(10)を組み合わせて形成した偽造防止媒体(1)としてもよい。例えば、図40(a)に示すように、図27に示す「円形状」の窓(10)に加えて、二つ目の変形例の窓(10)を設けてもよい。また、図40(b)に示すように、一つ目の変形例の窓(10)と、二つ目の変形例の窓(10)を設けてもよい。
以下、前述の発明を実施するための形態に従って、具体的に作製した偽造防止媒体(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1は、第1の実施の形態の偽造防止媒体(1)であり、基材(2)の表裏にフィルムを積層して超音波加工を行って窓(10)を形成した例である。以下、実施例1の偽造防止媒体(1)の詳細について説明する。
はじめに、熱可塑性樹脂層積層工程(S1)として、基材(2)に厚さ100μm、坪量80g/m2の茶色の紙を用い、基材(2)の表裏へ、熱可塑性樹脂層(12)として、厚さ55μmのPPフィルム(パイレン 東洋紡株式会社)を貼付した。
超音波加工機(日本アビオニクス株式会社製 W5080 スタンプ式)(30)に用いる金型(32)は、アルミ合金製(JIS A 7075)であり、金型(32)の高さ(h)が、500μmのものを用いた。また、金型(32)の凸形状の第1の領域(32A)のデザインは、図4(a)に示すとおりであり、直径10mmの円形とした。そして、超音波加工工程(S2)として、加工条件を圧力0.3MPa、加工時間0.3秒、振幅40μmとして超音波加工を行って、図1に示す円形の窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)を作製した。
図25は、偽造防止媒体(1)の窓(10)が形成された領域の断面図である。図25に示すように、基材(2)自体は、繊維同士の間に空隙が見られるが、窓(10)の輪郭部分では、超音波加工により、繊維が寄せられることで空隙が少ない状態であり、部分的に密度が高い状態となっていた。超音波加工により形成された窓(10)の輪郭に沿って繊維が寄せられた領域の範囲(T)は、700μmであり、繊維の密度が高い領域の厚さ(H)は、300μmで周囲の基材(2)よりも厚い状態であった。
実施例1の偽造防止媒体(1)を透過光下で観察すると、PPフィルムが透明な窓(10)として視認される中、窓(10)の輪郭に沿って繊維の密度が高まったことで、黒透かしのような外観となり、窓(10)の視認性が高まることが確認できた。また、反射光下においては、周囲の基材(2)よりも厚いことで、立体的にも窓(10)の形状を視認できる効果が得られた。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の偽造防止媒体(1)に対して、熱可塑性樹脂層(12)の構成が異なる例であり、多干渉フィルムを用いた例である。詳細には、基材(2)の一方の面に、厚さ30μmの多干渉フィルムを積層し、他方の面に厚さ55μmのPPフィルム(パイレン 東洋紡株式会社)を積層した。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
以上の積層状態で、実施例1と同じ加工条件による超音波加工を行い、窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)を作製した。なお、窓(10)において干渉フィルムは、超音波加工により、干渉構造がなくなることで干渉効果が生じない構成となった。実施例2の偽造防止媒体(1)を透過光下で観察すると、実施例1と同様に、輪郭部によって窓(10)の視認性が向上することが確認できた。さらに、反射光下で観察すると、窓(10)は、単に透明で見える中、その周りは、干渉効果が確認されて、より窓(10)の視認性が向上することが確認できた。
(実施例3)
実施例3は、窓(10)の形状の変形例として、図13(a)に示す開口部(11)によって囲まれた基材(2’)を備えた偽造防止媒体(1)の例である。なお、基材(2)及び熱可塑性樹脂層(12)の構成については、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
超音波加工に用いる金型(32)は、凸形状の第1の領域(32A)は、図13(a)に示す「星型」に対応した形状であり、凸形状の第1の領域(32A)と凹形状の第2の領域(32B)の高低差が、200μmのものを用いた。そして、超音波加工工程(S2)として、加工条件を圧力0.3MPa、加工時間0.3秒、振幅25μmとして超音波加工を行って、図13(a)に示す形状の窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)を作製した。実施例3のように、開口部(11)によって囲まれた基材(2’)を形成する場合においても、超音波加工機を用いた一度の加工により、容易に窓(10)を形成することができた。
(実施例4)
実施例4の偽造防止媒体(1)は、第2の実施の形態の偽造防止媒体(1)であり、輪郭部(20)を構成する輪郭要素(21)を印刷により形成した例である。なお、窓(10)の図柄は、実施例1と同じ「円形状」とした例であり、基材(2)及び熱可塑性樹脂層(12)の構成については、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
図26(a)は、実施例4の偽造防止媒体(1)を作製するに当たり、基材(2)に輪郭要素(21)を形成するために印刷する領域を示す平面図であり、図26(b)は、その断面図である。はじめに、輪郭要素(21)を形成するため、基材(2)に赤色のプロセスオフセットインキ(DaiCure アビリオ プロセス 紅N)を用いて、図26(a)において縦線で示す輪郭部(20)及び横線で示す開口部(11)に相当する領域(直径15mmの円形)にベタ印刷した。このとき、図26(b)に示すように、輪郭要素(21)を形成するための印刷は、開口部(11)を設ける前に行った。なお、印刷加工は、基材(2)が貫通していない状態で行ったため、開口部(11)が形成される領域は、図26(b)においては、破線で示している。また、熱可塑性樹脂層(12)もまた、印刷加工する段階では、基材(2)に積層されていないことから、図26(a)においては、一点鎖線で示している。
図26(c)は、熱可塑性樹脂層積層工程(S1)により、基材(2)の表裏へ、熱可塑性樹脂層(12)を積層した際の平面図であり、図26(d)は、その断面図である。図26(d)に示すように、基材(2)の一方の面のベタ印刷した領域を覆うように、熱可塑性樹脂層(12)として、PPフィルム(パイレン 東洋紡株式会社)を積層し、他方の面にもPPフィルム(パイレン 東洋紡株式会社)を積層した。
図26(e)は、超音波加工工程(S2)により、熱可塑性樹脂層(12)が積層された領域に、超音波加工した偽造防止媒体(1)の平面図であり、図26(f)は、その断面図である。なお、超音波加工は、実施例1と同じ金型(32)を用いて、実施例1と同じ条件で行った。超音波加工を行うと、凸形状の第1の領域(32A)に対応した基材(2)及びその上の印刷層が、第1の領域(32A)の輪郭に沿って外側へ寄せられることで、図26(e)及び図26(f)に示す開口部(11)が形成されるとともに、開口部(11)の領域において基材(2)の表裏に積層されていた熱可塑性樹脂層(12)は、接着された状態となり窓(10)が形成された。また、ベタ印刷した領域のうち、超音波加工が行われずに残った領域によって、図26(e)及び図26(f)に示す窓(10)の輪郭に沿った輪郭要素(21)が形成された。
実施例4の偽造防止媒体(1)は、反射光下で観察すると、窓(10)の輪郭に沿って赤色の輪郭部(20)が視認できることで、窓(10)の認証性を向上させることができた。また、図26(d)に示す基材(2)の上に、ベタ印刷層と熱可塑性樹脂層(12)を積層した状態から、超音波加工機を用いた加工により、輪郭部(20)を有する窓(10)を容易に形成することができた。
(実施例5)
実施例5の偽造防止媒体(1)は、第3の実施の形態の偽造防止媒体(1)であり、基材(2)の一方の面に、金属箔(P)と熱可塑性樹脂層(12)が一体となったOVDを積層した例である。なお、開口部(11)、すなわち窓(10)の形状は、図34に示す「ドーナツ形状」とした。
熱可塑性樹脂積層工程(S1)として、基材(2)に厚さ100μm、坪量80g/m2の茶色の紙を用い、熱可塑性樹脂層(12)として、基材(2)の一方の面に、積層フィルムと金属箔(P)が一体となったOVDを積層し、基材(2)の他方の面に、厚さ55μmのPPフィルム(パイレン 東洋紡株式会社)を貼付した。
超音波加工工程(S2)において、超音波加工に用いた金型(32)は、アルミ合金製(JIS A 7075)を用いた。金型(32)のデザインは、図34に示す開口部(11)の形状に対応したものを用いた。そして、超音波加工機(日本アビオニクス株式会社製 W5080 スタンプ式)を用いて、加工条件を圧力0.3MPa、加工時間0.3秒、振幅30μmとして超音波加工を行って、実施例5の偽造防止媒体(1)を作製した。超音波加工により、繊維が輪郭に沿って外側へ寄せられる際、基材(2)上の金属箔(P)の一部も同時に寄せられることで、開口部(11)をOVDが囲む構成の窓(10)を容易に作製できた。
(実施例6)
実施例6は、実施例1の偽造防止媒体(1)に対して、熱可塑性樹脂層(12)の構成が異なる例であり、液体状の熱可塑性樹脂を塗布して形成した例である。詳細には、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート粉末(ユピゼータFPC−0330 三菱ガス化学株式会社)を用い、キシレン(和光純薬工業株式会社)に溶解した液体を基材(2)表裏に塗布して、ドラフト内で自然乾燥させることで、熱可塑性樹脂層(12)を形成した。なお、熱可塑性樹脂層(12)の厚さは30μmであった。
以上の積層状態で、実施例1と同じ加工条件による超音波加工を行い、窓(10)を備えた偽造防止媒体(1)を作製した。実施例3の偽造防止媒体(1)を透過光下で観察すると、実施例1と同様に、輪郭部によって、窓(10)の視認性が向上することが確認できた。また、反射光下においては、周囲の基材(2)よりも厚いことで、立体的にも窓(10)の形状を視認できる効果が得られた。