JP2019120604A - 鉄損測定方法および鉄損測定システム - Google Patents

鉄損測定方法および鉄損測定システム Download PDF

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Abstract

【課題】 PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を正確に測定する。【解決手段】 PWMインバータ303における目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を励磁コイル110に印加することにより、試料Sの磁界強度の最大値を測定し、試料Sの磁界強度の最大値から磁界強度範囲を導出する。その後、試料SとヨークY1、Y2との接触状態を変えずに、PWMインバータ303により前記目標励磁電圧の時間波形を用いてPWM変調を行うことにより生成された励磁電圧を励磁コイル110に印加して試料Sの鉄損を測定する。この際、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入るように励磁電圧の振幅を調整し、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入る状態で試料Sの鉄損を測定する。【選択図】 図3

Description

本発明は、鉄損測定方法および鉄損測定システムに関し、特に、単板磁気試験器を用いて磁性材料の鉄損を測定するために用いて好適なものである。
軟磁性材料の鉄損を測定する方法として単板試験器を用いる方法がある。非特許文献1には、電磁鋼板の鉄損の測定に際し、二次コイルに誘起する電圧の時間波形は、可能な限り正弦波とし、当該電圧の波形率を1.11±0.01以内にすることが記載されている。このとき、電磁鋼板内に励磁される磁束密度は正弦波となる。また、単板試験器を用いて圧縮応力を付加した状態での試料の鉄損を測定することが行われる。特許文献1には、試料の座屈を防止するため、試料の励磁方向を軸として当該試料を湾曲形状とし、当該湾曲形状を保持したまま当該試料をヨークに接触保持することが記載されている。
電磁鋼板等の軟磁性材料は、モータ等の電気機器の鉄心として用いられる。近年、このような電気機器を駆動するための電源としてPWM(Pulse Width Modulation)インバータが用いられることが多くなっている。PWMインバータにより電気機器を駆動すると、高調波を含む励磁電流により鉄心は励磁される。従って、PWMインバータで駆動した場合の軟磁性材料の鉄損を、単板試験器を用いて測定することが望まれる。
一方、特許文献2には、PWMインバータにより試料を励磁する際に、試料における磁束密度の時間波形を正弦波と見なせるように目標励磁電圧を修正し、試料における磁束密度の時間波形を正弦波と見なせる状態で磁束密度および磁界強度を測定し、当該磁束密度および磁界強度に基づいて試料の鉄損を導出することが記載されている。
特許第5527203号公報 特開2016−70811号公報
JIS C 2556(2015)、「単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」 JIS C 2552(2014)、「無方向性電磁鋼帯」
しかしながら、非特許文献1および特許文献1では、試料に励磁される磁束密度の時間波形を正弦波としており、PWMインバータで試料を励磁する場合の測定条件についての記載はない。また、特許文献2には、試料の形状をリング形状とする場合の例が示されており、単板試験器に適用する場合の測定条件についての記載はない。
このように非特許文献1および特許文献1、2には、PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を測定するための測定条件についての開示がない。このため、PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を正確に測定することが容易でないという問題点がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を正確に測定することができるようにすることを目的とする。
本発明の鉄損測定方法は、単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する単板試験器であって、前記試料に磁気的に結合されるヨークと、前記試料および前記ヨークにより形成される閉磁路を取り巻くように巻き回される励磁コイルと、前記閉磁路を取り巻くように巻き回される二次コイルとを有する単板試験器と、目標励磁電圧を変調波としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより励磁電圧を生成するPWMインバータと、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を生成する電源装置と、を用いて前記試料の鉄損を測定する鉄損測定方法であって、前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第1の磁束密度導出工程と、前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第1の磁界強度導出工程と、前記第1の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値であって、前記第1の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が所定の条件を満たす状態のときの前記試料の磁界強度の最大値に基づいて、前記試料の磁界強度の最大値の範囲である磁界強度範囲を導出する磁界強度範囲導出工程と、前記磁界強度範囲導出工程により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第2の磁束密度導出工程と、前記磁界強度範囲導出工程により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第2の磁界強度導出工程と、前記第2の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たす状態のときの前記試料の鉄損であって、前記第2の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出工程により導出された前記磁界強度範囲に入る状態のときの前記試料の鉄損を導出する鉄損導出工程と、を有することを特徴とする。
本発明の鉄損測定システムは、単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する単板試験器であって、前記試料に磁気的に結合されるヨークと、前記試料および前記ヨークにより形成される閉磁路を取り巻くように巻き回される励磁コイルと、前記閉磁路を取り巻くように巻き回される二次コイルとを有する単板試験器と、目標励磁電圧を変調波としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより励磁電圧を生成するPWMインバータと、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を生成する電源装置と、を有する鉄損測定システムであって、前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第1の磁束密度導出手段と、前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第1の磁界強度導出手段と、前記第1の磁界強度導出手段により導出された前記試料の磁界強度の最大値であって、前記第1の磁束密度導出手段により導出された前記試料の磁束密度の最大値が所定の条件を満たす状態のときの前記試料の磁界強度の最大値に基づいて、前記試料の磁界強度の最大値の範囲である磁界強度範囲を導出する磁界強度範囲導出手段と、前記磁界強度範囲導出手段により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第2の磁束密度導出手段と、前記磁界強度範囲導出手段により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第2の磁界強度導出手段と、前記第2の磁束密度導出手段により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たす状態のときの前記試料の鉄損であって、前記第2の磁界強度導出手段により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出手段により導出された前記磁界強度範囲に入る状態のときの前記試料の鉄損を導出する鉄損導出手段と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を正確に測定することができる。
図1は、単板試験器の概略構成の一例を示す斜視図である。 図2は、縦形単ヨークの単板試験器におけるヨーク、コイル群、および試料の配置の一例を示す図である。 図3は、鉄損測定システムの構成の一例を示す図である。 図4は、PWMインバータの動作の一例を説明する図である。 図5は、PWMインバータで励磁した場合に鉄損がばらつくことを説明する図である。 図6は、PWMインバータで励磁した場合に鉄損と磁界強度との相関を説明する図である。 図7は、鉄損測定方法の一例を説明するフローチャートである。 図8は、磁界強度が磁界強度範囲に入る状態でPWMインバータで励磁した場合の試料の鉄損(実施例)を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。尚、各図では、表記および説明の都合上、説明に必要な部分のみを必要に応じて簡略化して示す。また、各図におけるX、Y、Z軸は、各図の向きの関係を示すものである。
(単板試験器の構成)
図1は、単板試験器の概略構成の一例を示す斜視図である。図1(a)は、縦形単ヨークの単板試験器の概略構成を示す図である。図1(b)は、縦形複ヨークの単板試験器の概略構成を示す図である。図1(c)は、横形単ヨークの単板試験器の概略構成を示す図である。図1(d)は、横形複ヨークの単板試験器の概略構成を示す図である。
図1(a)〜図1(d)に示すように、単板試験器は、ヨークY、Y1、Y2と、コイル群100とを有する。単板の試料SとヨークY、Y1、Y2とは磁気的に結合され、試料SとヨークY、Y1、Y2とにより閉磁路が形成される。試料Sを取り巻くように、コイル群100が配置される。コイル群100の最外周部には、励磁コイル110が配置される。巻線枠Fの中空の領域に試料Sが配置され、コイル群100は巻線枠Fに対して巻き回される。図1(a)〜図1(d)に示す単板試験器は、非特許文献1に記載されている単板試験器である。尚、試料Sは、単板の磁性体からなるものであればよい。例えば、方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板等の軟磁性材料の単板を試料Sとして用いることができる。
後述する本実施形態の鉄損測定システムは、どのような単板試験器にも適用することができるが、本実施形態では、図1(b)に示す縦形複ヨークの単板試験器を例に挙げて説明する。
図2は、縦形単ヨークの単板試験器におけるヨークY1、Y2、コイル群100、および試料Sの配置の一例を示す図である。尚、図2では、巻線枠Fの図示を省略している。図2において、コイル群100は、励磁コイル110と、二次コイル120とを有する。
励磁コイル110は、二次コイル120よりも外周側で、試料S(巻線枠F(前述した閉磁路))を取り巻くように、巻線枠Fの長手方向(X軸方向)に沿って巻き回される。励磁コイル110に励磁電流が流れることにより、試料Sが励磁されると共に、励磁コイル110が取り巻く空隙に磁束が流れる。
二次コイル120は、励磁コイル110よりも内周側で、試料S(巻線枠F(前述した閉磁路))を取り巻くように、巻線枠Fの長手方向(X軸方向)に沿って巻き回される。二次コイル120は、励磁コイル110に励磁電流が流れて試料Sが励磁されることにより誘起される電圧を検出するコイルである。この電圧に基づいて試料Sの磁束密度を導出することができる。二次コイル120は、Bコイルや磁束密度検出コイル等とも称される。
図2では、試料Sの励磁方向(X軸方向)の両端が、ヨークY1、Y2の外周面よりも突出した状態である場合を例に挙げて示す。このようにすれば、圧縮応力を付加した状態で試料Sを励磁させることができる。例えば、試料Sの励磁方向(X軸方向)の両端から、試料Sの励磁方向の中心に向かって荷重を付加することにより、試料Sに圧縮応力を付加することができる(図2に示す白抜き矢印線を参照)。また、試料Sの励磁方向(X軸方向)の両端のうちの一端(例えば、X軸の正の方向側の端部)を固定した状態で、他端(例えば、X軸の負の方向側の端部)から、試料Sの励磁方向の中心(例えば、X軸の正の方向)に向かって荷重を付加することにより、試料Sに圧縮応力を付加することもできる。尚、試料Sに圧縮応力を付加しない場合には、試料Sの励磁方向(X軸方向)の両端を、ヨークY1、Y2の外周面よりも突出させなくてもよい(図1(b)を参照)。尚、試料Sに圧縮応力を付加するための機構(荷重付加装置)は、公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、試料Sに圧縮応力を付加するために特許文献1に記載の技術を用いてもよい。
(鉄損測定システム)
図3は、鉄損測定システムの構成の一例を示す図である。
図3において、鉄損測定システムは、電源装置301と、直流電圧発生装置302と、PWMインバータ303と、スイッチ回路304と、電流計305と、電圧計306と、鉄損測定装置307とを有する。
電源装置301は、鉄損測定装置307からの指示に基づく励磁電圧を生成して出力する。電源装置301は、例えば、任意波形生成器とリニアアンプとを有する。任意波形生成器は、鉄損測定装置307からの指示に基づく時間波形の信号を生成する。リニアアンプは、任意波形生成器で生成された時間波形の信号を鉄損測定値306から指示された大きさ(振幅)になるように増幅する。時間波形の信号の大きさは、例えば、実効値および最大値(波高値)の少なくとも何れか一方により特定される。任意波形生成器およびリニアアンプ自体は公知の技術で実現することができるので、ここでは、これらの詳細な説明を省略する。
直流電圧発生装置302は、直流電圧をPWMインバータ303に出力する。本実施形態では、直流電圧発生装置302は、正の直流電圧と、当該正の直流電圧と絶対値が同じ負の直流電圧とをPWMインバータ303に出力する。
PWMインバータ303は、鉄損測定装置307からの指示に基づく目標励磁電圧を変調波としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより、励磁電圧を生成して出力する。即ち、PWMインバータ303は、目標励磁電圧(変調波)の大きさと搬送波の大きさとの比較の結果に基づいて、直流電圧発生装置302より出力された直流電圧を出力するタイミングを制御することにより、目標励磁電圧(変調波)をパルス幅変調して励磁電圧を生成して出力する。励磁電圧の振幅は、直流電圧発生装置302から出力される直流電圧の大きさを変更することにより変更される。
ここで、図4を参照しながら、PWMインバータ303の動作の一例を説明する。尚、PWMインバータ303としては、公知の種々の方式で駆動するPWMインバータを適用することができ、図4に示す方式で駆動するものに限定されない。
図4において、PWMインバータ303は、正相変調波410の大きさと搬送波420の大きさとを、各時刻において比較する。そして、PWMインバータ303は、正相変調波410の大きさが搬送波420の大きさよりも大きい場合に「1」を出力し、そうでない場合に「0(ゼロ)」を出力することを各時刻において行い、正相ノッチ波440を生成する。
また、PWMインバータ303は、正相変調波410の位相を180[°]ずらして(正相変調波410に(−1)を掛けて)負相変調波430を生成する。PWMインバータ303は、このようにして生成した負相変調波430の大きさと搬送波420の大きさとを、各時刻において比較する。そして、PWMインバータ303は、負相変調波430の大きさが搬送波420の大きさよりも大きい場合に「1」を出力し、そうでない場合に「0(ゼロ)」を出力することを各時刻において行い、負相ノッチ波450を生成する。
尚、図4では、変調波・搬送波の値を相対値で示す。
PWMインバータ303は、正相ノッチ波440から負相ノッチ波450を減算したパルス波において「1」を示す期間に、直流電圧発生装置302より出力された正の直流電圧に基づく電圧を出力する。また、PWMインバータ303は、正相ノッチ波440から負相ノッチ波450を減算したパルス波において「−1」を示す期間に、直流電圧発生装置302より出力された負の直流電圧に基づく電圧を出力する。また、PWMインバータ303は、正相ノッチ波440から負相ノッチ波450を減算したパルス波において「0(ゼロ)」を示す期間には、直流電圧発生装置302より出力された直流電圧に基づく電圧を出力しない。このようにして得られる電圧により構成されるパルス列(パルス波)が励磁電圧460として、PWMインバータ303から出力される。
尚、図4では、励磁電圧460の値を相対値で示す。
スイッチ回路304は、鉄損測定装置307からの指示に基づいて、電源装置301から出力される励磁電圧およびPWMインバータ303から出力される励磁電圧の何れか一方を選択して励磁コイル110に印加するための回路である。図3では、接点304aが閉じると、電源装置301から出力された励磁電圧が励磁コイル110の両端に印加される(PWMインバータ303から励磁電圧が出力されたとしても当該励磁電圧は励磁コイル110の両端に印加されない)。一方、接点304bが閉じると、PWMインバータ303から出力された励磁電圧が励磁コイル110の両端に印加される(電源装置301から励磁電圧が出力されたとしても当該励磁電圧は励磁コイル110の両端に印加されない)。図3では、接点304aが閉じている状態を例に挙げて示している。
電流計305は、励磁コイル110に流れる励磁電流を測定する。
電圧計306は、二次コイル120の両端の電圧(誘起電圧)を測定する。
鉄損測定装置307は、電源装置301およびPWMインバータ303に対して、出力すべき励磁電圧の時間波形および大きさ(振幅)を指示する。また、鉄損測定装置307は、スイッチ回路304に対して、電源装置301から出力される励磁電圧およびPWMインバータ303から出力される励磁電圧の何れを選択する(接点304a、304bの何れを閉じる)のかを指示する。また、鉄損測定装置307は、電流計305で測定された励磁電流と、電圧計306で測定された誘起電圧とを入力し、試料Sの鉄損を測定(導出)して出力する。
(本発明者らが得た知見)
鉄損測定装置307の詳細を説明する前に、本発明者らが得た知見について説明する。
まず、非特許文献2に記載された鋼種35A360を試料Sとし、励磁電源として電源装置301を用いて、非特許文献1に記載された方法で、試料Sに圧縮応力を付加せず、試料Sの磁束密度の時間波形が50[Hz]の正弦波となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下で試料Sの鉄損を測定した。この測定の後、ヨークY1、Y2を試料Sから離して、再びヨークY1、Y2を試料Sに接触させ前述したのと同様に試料Sの鉄損を測定することを2回繰り返した。これら合計3回の測定の結果、試料Sの鉄損は、何れの測定でも3.39[W/kg]になった。以下の説明では、この測定を必要に応じて第1の既存測定と称する。
次に、電源装置301をPWMインバータ303に取り替えて、試料Sに圧縮応力を付加せず、目標励磁電圧の基本周波数が50[Hz]となり、目標励磁電圧の時間波形が正弦波となり、搬送波の周波数(キャリア周波数)が5[kHz]となり、変調率が0.2となり、試料の磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下で前述した第1の既存測定と同一の試料Sの鉄損を測定した。この測定の後、ヨークY1、Y2を試料Sから離して、再びヨークY1、Y2を試料Sに接触させ前述したのと同様に試料Sの鉄損を測定することを2回繰り返した。これら合計3回の測定の結果、試料Sの鉄損は、図5(a)に示すようになった。尚、変調率は、変調波の振幅E0を搬送波の振幅Esで割った値(=E0÷Es)である。以下の説明では、この測定を必要に応じて第2の既存測定と称する。
このようにPWMインバータ302を用いて高調波を含む励磁電流で試料Sを励磁すると、試料Sの鉄損は、磁束密度の時間波形が正弦波の励磁電流で試料Sを励磁する前記第1の既存測定の場合の鉄損(=3.39[W/kg])に比べ、2倍以上大きくなる(図5(a)を参照)。また、図5(a)に示すように、PWMインバータ302を用いて高調波を含む励磁電流で試料Sを励磁すると、試料Sの鉄損が大きくばらつくことが分かる。具体的に図5(a)に示す例では、試料Sの鉄損の最大値は8.99[W/kg]になり、最小値は8.28[W/kg]になる。従って、合計3回の前記第2の既存測定における試料Sの鉄損の平均値に対する最大誤差率は3.8[%]である。非特許文献1では、鉄損測定の再現性として、無方向性電磁鋼帯については、2[%]の標準偏差が規定されている。従って、前記第2の既存測定では、非特許文献1で規定されている精度で鉄損測定を再現することができない。
更に本発明者らは、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加した状態で前記第1の既存測定と同じ測定を、前述したようにしてヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて合計3回行った。これら合計3回の測定の結果、試料Sの鉄損は、何れの測定でも4.85[W/kg]になった。以下の説明では、この測定を必要に応じて第3の既存測定と称する。
次に、電源装置301をPWMインバータ303に取り替えて、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加した状態で前記第2の既存測定と同じ測定を、前述したようにしてヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて合計3回行った。これら合計3回の測定の結果、試料Sの鉄損は、図5(b)に示すようになった。以下の説明では、この測定を必要に応じて第4の既存測定と称する。
このように、試料Sに圧縮応力を付加した場合でも、試料Sに圧縮応力を付加しない場合と同様に、PWMインバータ302を用いて高調波を含む励磁電流で試料Sを励磁すると、試料Sの鉄損は、磁束密度の時間波形が正弦波の励磁電流で試料Sを励磁する前記第3の既存測定の場合の鉄損(=4.85[W/kg])に比べ、2倍以上大きくなる(図5(b)を参照)。また、図5(b)に示すように、試料Sに圧縮応力を付加した場合でも、試料Sに圧縮応力を付加しない場合と同様に、PWMインバータ302を用いて高調波を含む励磁電流で試料Sを励磁すると、試料Sの鉄損が大きくばらつくことが分かる。具体的に図5(b)に示す例では、試料Sの鉄損の最大値は11.22[W/kg]になり、最小値は10.25[W/kg]になる。従って、合計3回の前記第2の既存測定における試料Sの鉄損の平均値に対する最大誤差率は4.9[%]である。前記第4の既存測定でも、前記第2の既存測定と同様に、非特許文献1で規定されている精度で鉄損測定を再現することができない。
以上の結果を表1に示す。表1において、波形:正弦波、圧縮応力:0MPaにおける値は、前記第1の既存測定の結果を示し、波形:インバータ、圧縮応力:0MPaにおける値は、前記第2の既存測定の結果を示し、波形:正弦波、圧縮応力:50MPaにおける値は、前記第3の既存測定の結果を示し、波形:インバータ、圧縮応力:50MPaにおける値は、前記第4の既存測定の結果を示す。尚、ここでは、圧縮応力の値は、絶対値で表記する(以降も同様である)。
Figure 2019120604
本発明者らは、以上のように試料Sの鉄損がばらつく要因を検証した。その結果、試料Sの磁界強度(磁界の強さ)も、鉄損と同様にばらつくことを見出した。表2は、その結果を示す。
Figure 2019120604
表2において、波形:正弦波(磁束密度)、圧縮応力:0MPaは、前記第1の既存測定における磁界強度の最大値(波高値)である。波形:正弦波(磁束密度)、圧縮応力:50MPaは、前記第3の既存測定における磁界強度の最大値である。前述したように前記第1の既存測定および前記第3の既存測定では、ヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて、それぞれ3回ずつ測定を行った。その結果、表2に示すように前記第1の既存測定では、何れの測定でも、試料Sの磁界強度の最大値は、5459[A/m]になった。また、前記第3の既存測定では、何れの測定でも、試料Sの磁界強度の最大値は、5473[A/m]になった。
また、表2において、波形:インバータ、圧縮応力:0MPaは、前記第2の既存測定における磁界強度の最大値である。波形:インバータ、圧縮応力:50MPaは、前記第4の既存測定における磁界強度の最大値である。前述したように前記第2の既存測定および前記第4の既存測定では、ヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて、それぞれ3回ずつ測定を行った。その結果、表2に示すように前記第2の既存測定では、試料Sの磁界強度の最大値は、最大で5895[A/m]、最小で5338[A/m]になった。また、前記第4の既存測定では、試料Sの磁界強度の最大値は、最大で5721[A/m]、最小で5177[A/m]になった。
また、表2において、波形:正弦波(一次電圧)、圧縮応力:0MPaは、試料Sに圧縮応力を付加せず、励磁電圧の時間波形が、前記第2の既存測定および前記第4の既存測定における目標励磁電圧の時間波形(50[Hz]の正弦波)となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下での磁界強度の最大値を示す。このような磁界強度の最大値を、前述したようにしてヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて3回得た。その結果、表2に示すように、何れの測定でも、試料Sの磁界強度の最大値は、5328[A/m]になった。
また、波形:正弦波(一次電圧)、圧縮応力:50MPaは、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加し、励磁電圧の時間波形が、前記第2の既存測定および前記第4の既存測定における目標励磁電圧の時間波形(50[Hz]の正弦波)となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下での磁界強度の最大値を示す。このような磁界強度の最大値を、前述したようにしてヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態を変えて3回得た。その結果、表2に示すように、何れの測定でも、試料Sの磁界強度の最大値は、5237[A/m]になった。
表2のように、PWMインバータ303で励磁すると、試料Sの磁界強度も、鉄損と同様にばらつくことが分かる。PWMインバータ303で励磁すると試料Sの鉄損および磁界強度がばらつくのは、励磁電流に高調波が含まれ、試料Sの磁束密度に高調波が含まれると、ヨークY1、Y2と試料Sとの接触状態により、同じ試料Sを用いて同じ励磁条件で測定しても、励磁電流や誘起電圧の測定値がばらつくためであると考えられる。
次に、本発明者らは、以上のようにして得られた試料Sの磁界強度と鉄損との相関関係を調査した。図6は、試料Sの磁界強度の最大値と鉄損の値を示す図である。図6(a)は、前記第2の既存測定(試料Sに圧縮応力を付加しない状態でPWMインバータ303により試料Sを励磁した場合の測定)における3回の測定のそれぞれでの値を示し、図6(b)は、前記第4の既存測定(試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加した状態でPWMインバータ303により試料Sを励磁した場合の測定)における3回の測定のそれぞれでの値を示す。
図6(a)において、前記第2の既存測定においては、試料Sの磁界強度の最大値と鉄損との相関係数は、0.995であり、図6(b)において、前記第4の既存測定においては、試料Sの磁界強度の最大値と鉄損との相関係数は、0.980であった。このように、本発明者らは、試料Sに圧縮応力を付加しているか否かに関わらず、試料Sの磁界強度の最大値と鉄損とは高い相関を示すことを見出した。
また、試料Sの磁束密度の時間波形が50[Hz]の正弦波となるように試料Sを励磁する場合(表1の波形:正弦波の値(前記第1の既存測定および前記第3の既存測定)を参照)、試料Sの磁束密度の時間波形(=正弦波)は、PWMインバータ303により試料Sを励磁した場合の試料Sの磁束密度の時間波形と大きく異なる。これに対し、PWMインバータ303における目標励磁電圧の時間波形を有する励磁電流で試料Sを励磁する場合、試料Sの磁束密度の時間波形は、(試料Sの磁束密度の時間波形が50[Hz]の正弦波となるように試料Sを励磁した場合よりも)PWMインバータ303により試料Sを励磁した場合の試料Sの磁束密度の時間波形に近くなる。
以上のことから、本発明者らは、PWMインバータ303における目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電流で試料Sを励磁した場合の試料Sの磁界強度の最大値と、PWMインバータ303により試料Sを励磁した場合の試料Sの磁界強度の最大値とを、試料Sの磁束密度の最大値が同じになる条件下でそれぞれ測定し、前者の場合の磁束密度の最大値から後者の場合の磁界強度の最大値が大きくずれていなければ、後者の場合の試料Sの鉄損が妥当な測定であると見なすことができることを見出した。
以下に説明する本実施形態の鉄損測定装置307は、以上の知見に基づくものである。
(鉄損測定装置307)
以下に、本実施形態の鉄損測定装置307について説明する。鉄損測定装置307のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。まず、図3に示すように各装置および試料Sをセットする。尚、特に断らない限り、一度セットされた試料Sは動かされないものとする。また、試料Sに圧縮応力を付加する場合には、試料Sがセットされている間、荷重付加装置により所定の時間波形の圧縮応力が試料Sに付加された状態になるようにする。どのような圧縮応力を試料Sに付加するのかは、どのような圧縮応力が試料Sに付加されているときの鉄損を調査したいのかによって決められる。例えば、試料Sが電気機器の鉄心を構成する磁性体板と同種の試料である場合、当該鉄心に付加されることが想定される圧縮応力を試料Sに付加することができる。より具体的に説明すると、例えば、当該鉄心が回転電機(モータや発電機)のステータコアである場合、焼き嵌め等により当該ステータコアに付加されることが想定される圧縮応力を試料Sに付加することができる。
<切り替え部311>
切り替え部311は、電源装置301またはPWMインバータ303の選択を指示する信号を、スイッチ回路304に送信する。例えば、切り替え部311は、鉄損測定装置307が起動した場合または鉄損測定装置307のユーザインタフェースの操作に基づく指示があった場合に、電源装置301の選択を指示する信号をスイッチ回路304に送信する。その後、切り替え部311は、後述する磁界強度範囲導出部317からの信号に基づいて、PWMインバータ303の選択を指示する信号をスイッチ回路304に送信する。スイッチ回路304は、電源装置301の選択を指示する信号を受信すると、接点304aを閉じ、PWMインバータ303の選択を指示する信号を受信すると、接点304bを閉じる。
<波形記憶部312>
波形記憶部312は、例えば、試験者(オペレータ)による鉄損測定装置307のユーザインタフェースの操作に基づいて、PWMインバータ303における目標励磁電圧(変調波)の時間波形と、搬送波の周波数と、変調率とを含む情報を記憶する。PWMインバータ303における目標励磁電圧の時間波形は、例えば、正弦波であるが、正弦波に限定されるものではない。
<第1の励磁指示部313>
第1の励磁指示部313は、切り替え部311により、電源装置301がスイッチ回路304に送信されて、スイッチ回路304における接点304aが閉じられているときに動作する。
第1の励磁指示部313は、波形記憶部312に記憶されている目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を励磁コイル110に印加することを電源装置301に指示する。これにより、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形(例えば正弦波)の励磁電圧が励磁コイル110に印加される。尚、励磁電圧の最大値(波高値)の初期値は、例えば、試験者による鉄損測定装置307のユーザインタフェースの操作に基づいて鉄損測定装置307に予め設定される。
<第1の磁束密度導出部314>
第1の励磁指示部313からの指示に基づいて、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより二次コイル120に電圧が誘起され、この電圧が電圧計306により測定される。第1の磁束密度導出部314は、この電圧計306により測定された電圧に基づいて、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより発生する試料Sの磁束密度を導出する。本実施形態では、以下の(1)式および(2)式に基づいて、時刻tにおける試料Sの磁束密度B(t)[T]を導出する。
V(t)=−N×dφ(t)/dt ・・・(1)
φ(t)=B(t)×S ・・・(2)
ここで、V(t)は、時刻tにおいて二次コイル120に誘起される(電圧計306により測定される)電圧[V]である。Nは、二次コイル120の巻回数[回]である。φ(t)は、時刻tにおいて試料Sを貫く磁束[wb]である。Sは、試料Sの(励磁方向(図2に示す例ではX軸方向)に垂直な方向の)断面積[m2]である。
<第1の磁束密度条件判定部315>
第1の磁束密度条件判定部315は、第1の磁束密度導出部314により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が所定の条件を満たすか否かを判定する(以下の説明では、この所定の条件を必要に応じて磁束密度条件と称する)。本実施形態では、第1の磁束密度条件判定部315は、試料Sの磁束密度B(t)として一周期分の磁束密度B(t)が得られると、当該一周期分の磁束密度B(t)の時間波形に基づいて、試料Sの磁束密度の最大値(波高値)を導出する。そして、第1の磁束密度条件判定部315は、試料Sの磁束密度の最大値が、所定の値になったか否かを判定する。この所定の値は、例えば、試験者による鉄損測定装置307のユーザインタフェースの操作に基づいて予め鉄損測定装置307に設定される。この場合、試料Sの磁束密度の最大値が、所定の値になることが磁束密度条件になる。所定の値は、試料Sの磁束密度がどのようなときの鉄損を調査したいのかによって決められる。例えば、試料Sが電気機器の鉄心を構成する磁性体板と同種の試料である場合、当該鉄心に発生することが想定される磁束密度の最大値を所定の値とすることができる。
第1の磁束密度導出部314により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たさない場合、第1の磁束密度条件判定部315は、第1の磁束密度導出部314により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件からどの程度乖離しているのかを示す信号を第1の励磁指示部313に出力する。具体的に第1の磁束密度条件判定部315は、磁束密度の最大値と所定の値との差を示す信号を第1の励磁指示部313に出力する。第1の励磁指示部313は、この差が小さくなる(好ましくはゼロになる)ように、励磁電圧の振幅を変更し、変更後の振幅の励磁電圧を出力することを電源装置301に出力する。これにより、電源装置301は、変更後の振幅を有する励磁電圧を励磁コイル110に印加する。尚、このとき、励磁電圧の時間波形の形自体は、目標励磁電圧の時間波形から変更されない。
<第1の磁界強度導出部316>
第1の磁界強度導出部316は、第1の磁束密度条件判定部315により、第1の磁束密度導出部314で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たすと判定されると起動する。
第1の励磁指示部313からの指示に基づいて、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧が励磁コイル110に印加されると、励磁コイル110に励磁電流が流れ、この励磁電流が電流計305により測定される。第1の磁界強度導出部316は、この電流計305により測定された励磁電流に基づいて、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより発生する試料Sの磁界強度を導出する。本実施形態では、以下の(3)式に基づいて、時刻tにおける試料Sの磁界強度H(t)[A/m]を導出する。
H(t)=N1×I(t)÷l ・・・(3)
ここで、N1は、励磁コイル110の巻回数[回]である。I(t)は、時刻tにおいて励磁コイル110に流れる(電流計305により測定される)励磁電流[A]である。lは、単板試験器における磁路長[m]である。
<磁界強度範囲導出部317>
磁界強度範囲導出部317は、第1の磁界強度導出部316により導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値に基づいて、磁界強度の最大値の範囲を導出する。以下の説明では、この磁界強度の最大値の範囲を、必要に応じて磁界強度範囲と称する。後述するPWMインバータ303により励磁された試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入っているときの試料Sの鉄損の測定を有効とする。本実施形態では、磁界強度範囲導出部317は、第1の磁界強度導出部316により一周期分の磁界強度H(t)が導出されると、当該一周期分の磁界強度H(t)の時間波形に基づいて、試料Sの磁界強度の最大値(波高値)を導出する。そして、磁界強度範囲導出部317は、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値に基づいて、試料Sの磁界強度の最大値の範囲を磁界強度範囲として導出する。非特許文献1では、磁界強度の測定誤差として±3[%]以内であることが記載されている。そこで、例えば、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値の0.97倍以上1.03倍以下の範囲を磁界強度範囲とすることができる。磁界強度範囲導出部317は、磁界強度範囲を導出すると、スイッチ回路304の切り替えを指示する信号を切り替え部311に送信する。切り替え部311は、この信号に基づいて、PWMインバータ303の選択を指示する信号をスイッチ回路304に送信する。尚、前述した磁界強度範囲を一般的に表すと、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値を中心値とする範囲であって、上限値が、当該試料の磁界強度の最大値を(1+x)倍した値であり、下限値が、当該試料の磁界強度の最大値を(1−x)倍した値である範囲となる。xは、0超1未満の範囲であり、前述した例では、0.03になる。xの値は、非特許文献1以外の規格における磁界強度の測定誤差の許容範囲や、試料Sと同種の磁性体板で構成される鉄心の仕様で定められる鉄損の誤差の許容範囲等に応じて、適宜決定することができる。
<第2の励磁指示部318>
第2の励磁指示部313は、切り替え部311により、PWMインバータ303がスイッチ回路304に送信されて、スイッチ回路304における接点304bが閉じられているときに動作する。
第2の励磁指示部318は、波形記憶部312に記憶されている目標励磁電圧の時間波形、搬送波の周波数、および変調率をPWMインバータ303に出力する。これにより、PWMインバータ303は、目標励磁電圧の時間波形を変調波の時間波形として、当該変調波、搬送波、および変調率に基づいてPWM変調を行って励磁電圧を生成し、生成した励磁電圧を励磁コイル110に印加する。
<第2の磁束密度導出部319>
第2の励磁指示部318からの指示に基づいて、PWMインバータ303から励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより二次コイル120に電圧が誘起され、この電圧が電圧計306により測定される。第2の磁束密度導出部319は、この電圧計306により測定された電圧に基づいて、PWMインバータ303から励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより発生する試料Sの磁束密度を導出する。本実施形態では、第2の磁束密度導出部319も第1の磁束密度導出部314と同様に、前述した(1)式および(2)式に基づいて、時刻tにおける試料Sの磁束密度B(t)を導出する。
<第2の磁束密度条件判定部320>
第2の磁束密度条件判定部320は、第2の磁束密度導出部319により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が、前述した第1の磁束密度条件判定部315で用いた磁束密度条件と同じ磁束密度条件を満たすか否かを判定する。前述した例では、第2の磁束密度条件判定部320は、試料Sの磁束密度の最大値が、所定の値になったか否かを判定する(所定の値として、第1の磁束密度条件判定部315で使用したものと同じ値を用いる)。
<第2の磁界強度導出部321>
第2の励磁指示部318からの指示に基づいて、PWMインバータ303から励磁電圧が励磁コイル110に印加されると、励磁コイル110に励磁電流が流れ、この励磁電流が電流計305により測定される。第2の磁界強度導出部321は、この電流計305により測定された励磁電流に基づいて、PWMインバータ303から励磁電圧が励磁コイル110に印加されて試料Sが励磁されることにより発生する試料Sの磁界強度を導出する。本実施形態では、第2の磁界強度導出部321も第1の磁界強度導出部316と同様に、前述した(3)式に基づいて、時刻tにおける試料Sの磁界強度H(t)を導出する。
<磁界強度判定部322>
磁界強度判定部322は、第2の磁界強度導出部321により導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲導出部317により導出された磁界強度範囲に入るか否かを判定する。前述した例では、試料Sの磁界強度の最大値の範囲を磁界強度範囲とする。この場合、磁界強度判定部322は、第2の磁界強度導出部321により一周期分の磁界強度H(t)が導出されると、当該一周期分の磁界強度H(t)の時間波形に基づいて、試料Sの磁界強度の最大値(波高値)を導出する。そして、磁界強度判定部322は、第2の磁界強度導出部321により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値が、磁界強度範囲(第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値の0.97倍以上1.03倍以下の範囲)であるか否かを判定する。
<測定終了判定部323>
測定終了判定部323は、第2の磁束密度条件判定部320により、第2の磁束密度導出部319により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たすと判定されたという第1の条件と、第2の磁界強度導出部321により導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲導出部317により導出された磁界強度範囲に入ると判定されたという第2の条件が成立しているか否かを判定する。第1の条件と第2の条件の少なくとも何れか一方を満たさない場合、測定終了判定部323は、第2の励磁指示部318に、励磁電圧の振幅を変更することを指示する。
測定終了判定部323は、前述した第1の条件を満たさない場合、第2の磁束密度導出部319により導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件からどの程度乖離しているのかを示す信号を第2の励磁指示部318に出力する。具体的に測定終了判定部323は、磁束密度の最大値と所定の値との差を示す信号を第2の励磁指示部318に出力する。第2の励磁指示部318は、この差が小さくなる(好ましくはゼロになる)ように励磁電圧の振幅を変更し、変更後の振幅の励磁電圧を出力することを直流電圧発生装置302に指示する。これにより、直流電圧発生装置302は、振幅の変更値に応じて直流電圧の大きさを変更し、PWMインバータ303は、変更後の振幅の励磁電圧を励磁コイル110に印加する。尚、このとき、目標励磁電圧の時間波形は変更されない。
また、測定終了判定部323は、前述した第2の条件を満たさない場合、第2の磁界強度導出部321により導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲からどの程度乖離しているのかを示す信号を第2の励磁指示部318に出力する。具体的に測定終了判定部323は、磁界強度の最大値と、磁界強度範囲の上下限値のうち当該磁界硬度の最大値の値に近い方の値との差を示す信号を第2の励磁指示部318に出力する。第2の励磁指示部318は、この差が小さくなる(好ましくはゼロになる)ように励磁電圧の振幅を変更し、変更後の振幅の励磁電圧を出力することを直流電圧発生装置302に指示する。これにより、直流電圧発生装置302は、振幅の変更値に応じて直流電圧の大きさを変更し、PWMインバータ303は、変更後の振幅の励磁電圧を励磁コイル110に印加する。尚、このとき、目標励磁電圧の時間波形は変更されない。
測定終了判定部323は、以上のような第1の条件および第2の条件を満たすか否かの判定と、励磁電圧の振幅の変更の指示とを行った結果、第1の条件および第2の条件の双方を満たすと判定すると、第1の条件および第2の条件の双方を満たしたときに第2の磁束密度導出部319および第2の磁界強度導出部321により導出された試料Sの一周期分の磁束密度B(t)および磁界強度H(t)を示す信号を鉄損出力部324に出力する。
一方、測定終了判定部323は、以上のような第1の条件および第2の条件を満たすか否かの判定と、励磁電圧の振幅の変更の指示を繰り返した結果、測定終了条件を満たす場合には、そのことを示す信号を出力部325に出力する。測定終了判定部323は、例えば、第2の磁束密度導出部319により導出された試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たす方向に励磁電圧の振幅を変更できなくなった場合、第2の磁界強度導出部321により導出された試料Sの磁界強度H(t)が磁界強度範囲に近づく方向に励磁電圧の振幅を変更できなくなった場合、または前述した繰り返しの回数が所定の回数になった場合に、測定終了条件を満たすと判定することができる。
<鉄損導出部324>
鉄損導出部324は、測定終了判定部323により出力された試料Sの一周期分の磁束密度B(t)および磁界強度H(t)に基づいて、試料Sの鉄損を導出し、試料Sの鉄損を示す情報を出力部325に出力する。本実施形態では、鉄損導出部324は、測定終了判定部323により出力された試料Sの一周期分の磁束密度B(t)および磁界強度H(t)から、B−H曲線(ヒステリシス曲線)を作成する。尚、このようにして作成されるB−H曲線(ヒステリシス曲線)には、ヒステリシス損だけでなく渦電流損による寄与分も反映される。そこで、鉄損導出部324は、B−H曲線の面積を、測定試料Sの鉄損として導出する。尚、鉄損導出部324は、B−H曲線を作成する際に、磁束密度B(t)と磁界強度H(t)との組みとして、同じ時刻tにおける値の組を抽出する。
<出力部325>
出力部325は、測定終了判定部323から、測定終了条件を満たすことを示す信号が出力されると、試料Sの鉄損を正しく測定することができないことを示す情報を出力する。この情報の出力により、試験者は、単板試験器にセットした試料Sの鉄損を正しく測定できないことを知ることができる。そこで、試験者は、例えば、単板試験器にセットされている試料Sを当該単板試験器にセットし直し、試料SとヨークY1、Y2との接触状態を変更することができる。そして、試験者は、鉄損測定装置307を再度動作させ、鉄損測定装置307は、前述したようにして試料Sの鉄損を測定し直す。
一方、出力部325は、鉄損導出部324から、試料Sの鉄損を示す情報が出力されると、当該試料Sの鉄損を示す情報を出力する。この情報により、試験者は、試料Sの鉄損を知ることができる。
尚、出力部325による情報の出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および鉄損測定装置307の外部または内部の記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
(フローチャート)
次に、図7のフローチャートを参照しながら、鉄損測定装置307を用いた鉄損測定方法の一例を説明する。尚、図7のフローチャートが開始される前に試料Sは単板試験器にセットされているものとする。
ステップS701において、切り替え部311は、電源装置301の選択を指示する信号をスイッチ回路304に送信する。これにより、スイッチ回路304は、接点304aを閉じる。
次に、ステップS702において、第1の励磁指示部313は、波形記憶部312に記憶されている目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を励磁コイル110に印加することを電源装置301に指示する。これにより、目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧が励磁コイル110に印加され、励磁コイル110に励磁電流が流れる。また、二次コイル120に電圧が誘起される。
次に、ステップS703において、第1の磁束密度導出部314は、二次コイル120に誘起された電圧(電圧計306により測定された電圧)に基づいて、試料Sの磁束密度B(t)を導出する((1)式および(2)式を参照)。本実施形態では、第1の磁束密度導出部314は、試料Sの磁束密度B(t)として一周期分の磁束密度を導出する。
次に、ステップS704において、第1の磁束密度条件判定部315は、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たすか否かを判定する。
この判定の結果、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たさない場合、処理は、ステップS705に進む。そして、ステップS705において、第1の磁束密度条件判定部315は、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たす方向に励磁電圧の振幅を変更する。そして、処理は、ステップS702に戻り、第1の励磁指示部313は、変更後の振幅の励磁電圧を励磁コイル110に印加することを電源装置301に指示する。そして、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たすまで、ステップS702〜S705の処理が繰り返される。
尚、通常は、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たさないことはないが、例えば、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たす方向に変更できない場合、または、ステップS702〜S705の処理の繰り返しの回数が所定の回数になった場合には、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たさないものとして、処理が後述するステップS713に進むようにしてもよい。
ステップS704の判定の結果、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たすと、処理は、ステップS706に進む。そして、ステップS706において、第1の磁界強度導出部316は、ステップS703で導出された試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たした後に電流計305により測定された励磁電流に基づいて、試料Sの磁界強度H(t)を導出する((3)式を参照)。
次に、ステップS707において、磁界強度範囲導出部317は、ステップS706で導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値に基づいて、磁界強度範囲を導出する。
次に、ステップS708において、切り替え指示部311は、PWMインバータ303の選択を指示する信号を、スイッチ回路304に送信する。これにより、スイッチ回路304は、接点304bを閉じる。
次に、ステップS709において、第2の励磁指示部318は、波形記憶部312に記憶されている目標励磁電圧の時間波形、搬送波の周波数、および変調率をPWMインバータ303に出力する。これにより、目標励磁電圧の時間波形に基づいてPWM変調されて生成された励磁電圧が励磁コイル110に印加され、励磁コイル110に励磁電流が流れる。また、二次コイル120に電圧が誘起される。
次に、ステップS710において、第2の磁束密度導出部319は、二次コイル120に誘起された電圧(電圧計306により測定された電圧)に基づいて、試料Sの磁束密度B(t)を導出する((1)式および(2)式を参照)。
次に、ステップS711において、第2の磁束密度条件判定部320は、ステップS710で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たすか否かを判定する。尚、ステップS704で使用する所定の値(磁束密度条件)とステップS711で使用する磁束密度条件は同じである。
この判定の結果、ステップS710で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たす場合、処理は、ステップS712に進む。そして、ステップS712において、第2の磁界強度導出部321は、ステップS710で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たした後に電流計305により測定された励磁電流に基づいて、試料Sの磁界強度H(t)を導出する((3)式を参照)。
次に、ステップS713において、磁界強度判定部322は、ステップS712で導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値がステップS707で導出された磁界強度範囲に入るか否かを判定する。この判定の結果、ステップS712で導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値がステップS707で導出された磁界強度範囲に入る場合、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たし、且つ、試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲に入る状態である。この場合、処理は、ステップS714に進み、鉄損導出部324は、磁束密度条件を満たす試料Sの一周期分の磁束密度B(t)、および、磁界強度範囲に入る試料Sの一周期分の磁界強度H(t)であって、同じ時刻tにおける磁束密度B(t)および磁界強度H(t)に基づいて、試料Sの鉄損を導出する。
次に、ステップS715において、出力部325は、試料Sの鉄損を示す情報を出力する。そして、図7のフローチャートによる処理が終了する。
ステップS711において、ステップS710で導出された試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たさないと判定された場合と、ステップS713において、ステップS712で導出された試料Sの磁界強度H(t)の最大値がステップS707で導出された磁界強度範囲に入らないと判定された場合、処理は、ステップS716に進む。そして、ステップS716において、測定終了判定部323は、測定終了条件を満たすか否かを判定する。測定終了判定部323は、例えば、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たす方向に励磁電圧の振幅を変更できない場合、試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲に近づく方向に励磁電圧の振幅を変更できない場合、または、ステップS711の判定の回数が所定の回数になった場合に、測定終了条件を満たすと判定し、そうでない場合に、測定終了条件を満たさないと判定する。
この測定終了条件を満たす場合、処理は、ステップS717に進む。そして、ステップS717において、出力部325は、試料Sの鉄損を正しく測定することができないことを示す情報を出力し、図7のフローチャートによる処理が終了する。
一方、測定終了条件を満たさない場合、処理は、ステップS718に進む。そして、ステップS718において、第2の励磁指示部318は、励磁電圧の振幅を変更する。試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たしていない場合、第2の励磁指示部318は、試料Sの磁束密度B(t)が磁束密度条件を満たす方向に励磁電圧の振幅を変更する。試料Sの磁界強度H(t)が磁界強度範囲に入らない場合、第2の励磁指示部318は、試料Sの磁界強度H(t)が磁界強度範囲に近づく方向に励磁電圧の振幅を変更する。
そして、処理は、ステップS709に戻り、第2の励磁指示部318は、変更後の振幅の励磁電圧を出力することを直流電圧発生装置302に指示する。これにより、PWMインバータ303から出力される励磁電圧の振幅が変更される。そして、ステップS710で導出される試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たし、且つ、ステップS712で導出される試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲に入るまで、ステップS709〜S713、S716、S718の処理が繰り返される。
そして、この繰り返し処理の中で、試料Sの磁束密度B(t)の最大値が磁束密度条件を満たし、且つ、試料Sの磁界強度H(t)の最大値が磁界強度範囲に入ると、前述したように処理はステップS714に進み、試料Sの鉄損が導出される。一方、この繰り返し処理の中で、測定終了条件を満たすと、前述したように処理はステップS717に進み、試料Sの鉄損を正しく測定することができないことを示す情報が出力される。
(実施例)
次に、実施例を説明する。
前述したように、試料S(鋼種35A360)に圧縮応力を付加せず、励磁電圧の時間波形が、目標励磁電圧の時間波形(50[Hz]の正弦波)となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下での磁界強度の最大値は、5328[A/m]である(表2の波形:正弦波(一次電圧)、圧縮応力:0MPaの値を参照)。本実施例では、磁界強度の測定誤差が非特許文献1に記載のものと同程度(±3[%])であるとし、磁界強度範囲を5168[A/m]〜5488[A/m](5328×0.97〜5328×1.03)とする。
そして、試料Sに圧縮応力を付加せず、目標励磁電圧の時間波形を50[Hz]の正弦波とし、搬送波の周波数を5[kHz]とし、変調率を0.2とし、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件で、PWMインバータ303を動作させ、試料Sの磁界強度が磁界強度範囲(5168[A/m]〜5488[A/m])に入るように励磁電圧を制御し、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲内であるときの試料Sの鉄損を測定した。この測定の後、ヨークY1、Y2を試料Sから離して、再びヨークY1、Y2を試料Sに接触させ前述したのと同様に試料Sの鉄損を測定することを2回繰り返した。これら合計3回の測定の結果を図8(a)に示す。
図8(a)に示す点線は、磁界強度範囲の下限値(=5168[A/m])および上限値(=5488[A/m])である。図8(a)に示す例では、試料Sの鉄損の測定値は、8.09[W/kg]〜8.18[W/kg]である。従って、試料Sの鉄損の測定値の平均値に対する誤差は0.5[%]であり、非特許文献1に規定されている2[%]の標準偏差以内である。
また、前述したように、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加し、励磁電圧の時間波形が、目標励磁電圧の時間波形(50[Hz]の正弦波)となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件下での磁界強度の最大値は、5237[A/m]である(表2の波形:正弦波(一次電圧)、圧縮応力:50MPaの値を参照)。前述したように本実施例では、磁界強度の測定誤差が非特許文献1に記載のものと同程度(±3[%])であるとする。従って、磁界強度範囲を5080[A/m]〜5394[A/m](5237×0.97〜5237×1.03)とする。
そして、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加し、目標励磁電圧の時間波形を50[Hz]の正弦波とし、搬送波の周波数を5[kHz]とし、変調率を0.2とし、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件で、PWMインバータ303を動作させ、試料Sの磁界強度が磁界強度範囲(5080[A/m]〜5394[A/m])に入るように励磁電圧を制御し、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲内であるときの試料Sの鉄損を測定した。この測定の後、ヨークY1、Y2を試料Sから離して、再びヨークY1、Y2を試料Sに接触させ前述したのと同様に試料Sの鉄損を測定することを2回繰り返した。これら合計3回の測定の結果を図8(b)に示す。
図8(b)に示す点線は、磁界強度範囲の下限値(=5080[A/m])および上限値(=5394[A/m])である。図8(b)に示す例では、試料Sの鉄損の測定値は、10.43[W/kg]〜10.68[W/kg]である。従って、試料Sの鉄損の測定値の平均値に対する誤差は1.2[%]であり、非特許文献1に規定されている2[%]の標準偏差以内である。
以上のように試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲内の状態で試料Sの鉄損を測定することで、試料Sに圧縮応力を付加するか否かに関わらず、試料Sの鉄損のばらつきを抑制することができ、試料Sの鉄損を高精度に測定することができる。
尚、励磁電源として電源装置301を用いて、試料Sに圧縮応力を付加せず、試料Sの磁束密度の時間波形が50[Hz]の正弦波となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件(前記第1の既存測定)下で、非特許文献1に記載された方法により測定される磁界強度の最大値は5459[A/m]である((表2の波形:正弦波(磁束密度)、圧縮応力:0MPaの値を参照))。この磁界強度の最大値から、本実施例で説明したのと同様の方法で磁界強度範囲を定めると、磁界強度範囲は、5295[A/m]〜5623[A/m](5459×0.97〜5459×1.03)になる。図6(a)に示す結果に対し、この磁界強度範囲(5295[A/m]〜5623[A/m])を適用しても、何れの測定における試料Sの磁界強度の最大値も、この磁界強度範囲に入り、本実施形態で説明した方法で磁界強度範囲を設定した場合と同じ結果になる。
一方、励磁電源として電源装置301を用いて、試料Sに50[MPa]の圧縮応力を付加し、試料Sの磁束密度の時間波形が50[Hz]の正弦波となり、試料Sの磁束密度の最大値が1.7[T]となる条件(前記第3の既存測定)下で、非特許文献1に記載された方法により測定される磁界強度の最大値は5473[A/m]である((表2の波形:正弦波(磁束密度)、圧縮応力:50MPaの値を参照))。この磁界強度の最大値から、本実施例で説明したのと同様の方法で磁界強度範囲を定めると、磁界強度範囲は、5309[A/m]〜5637[A/m](5473×0.97〜5473×1.03)になる。図6(b)に示す結果に対し、この磁界強度範囲(5309[A/m]〜5637[A/m])を適用すると、1回目および2回目の測定における試料Sの磁界強度の最大値は、この磁界強度範囲から外れる。一般に、単板試験器においては、試料SとヨークY1、Y2、Yとの接触状態が適切でない場合、試料Sの鉄損は大きくなる。しかしながら、1回目および2回目の測定における試料Sの鉄損は、3回目の測定における試料Sの鉄損よりも小さいのにも関わらず、磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入らないため異常値として判定されてしまう。従って、この磁界強度範囲(5309[A/m]〜5637[A/m])は、妥当な磁界強度範囲とは言えない。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、PWMインバータ303における目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を励磁コイル110に印加することにより、試料Sの磁界強度の最大値を測定し、試料Sの磁界強度の最大値から磁界強度範囲を導出する。その後、試料SとヨークY1、Y2との接触状態を変えずに、PWMインバータ303により前記目標励磁電圧の時間波形を用いてPWM変調を行うことにより生成された励磁電圧を励磁コイル110に印加して試料Sの鉄損を測定する。この際、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入るように励磁電圧の振幅を調整し、試料Sの磁界強度の最大値が磁界強度範囲に入る状態で試料Sの鉄損を測定する。従って、試料Sの鉄損が正しく測定することができているかどうかを判断することができ、PWMインバータおよび単板試験器を用いて試料の鉄損を正確に測定することができる。
(変形例)
本実施形態では、電源装置301およびPWMインバータ303の切り替え、電源装置301、直流電圧発生装置302、およびPWMインバータ303への動作指示、磁束密度の導出、磁界強度の導出、磁束密度条件を満たすか否かの判定、磁界強度範囲の導出、磁界強度が磁界強度範囲に入っているか否かの判定、測定終了条件を満たすか否かの判定、および鉄損の導出を、鉄損測定装置307が自動的に行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらの少なくとも1つを、試験者が行ってもよい。
また、本実施形態では、スイッチ回路304を用いて電源装置301とPWMインバータ303とを切り替える場合を例に挙げて説明した。しかしながら、このようにせずに、例えば、スイッチ回路304を用いずに、励磁コイル110に接続する電源(電源装置301とPWMインバータ303)を取り替えるようにしてもよい。例えば、励磁コイル110に接続する電源を電源装置301からPWMインバータ303に変更する場合、励磁コイル110から電源装置301を取り外して、PWMインバータ303を励磁コイル110に接続する。
また、本実施形態では、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値を中心値とする範囲を、磁界強度範囲を例に挙げて説明した。しかしながら、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値に基づいて、磁界強度範囲を導出していれば、このようにして磁界強度範囲を導出しなくてもよい。例えば、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値を上限値とする範囲を磁界強度範囲としてもよい。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
(請求項との関係)
以下に、請求項の記載と実施形態の記載との関係の一例を説明する。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、(変形例)の項等で説明した通りである。
<請求項1>
第1の磁束密度導出工程は、例えば、ステップS702、S703を用いることにより実現される。
第1の磁界強度導出工程は、例えば、ステップS706を用いることにより実現される。
磁界強度範囲導出工程は、例えば、ステップS707を用いることにより実現される。
第2の磁束密度導出工程は、例えば、ステップS710を用いることにより実現される。
第2の磁界強度導出工程は、例えば、ステップS712を用いることにより実現される。
鉄損導出工程は、例えば、ステップS714を用いることにより実現される。
<請求項2>
第1の振幅調整工程は、例えば、ステップS702、S705を用いることにより実現される。
第2の振幅調整工程は、例えば、ステップS709、S718を用いることにより実現される。
<請求項3>
請求項3は、例えば、ステップS717の処理の後、例えば、単板試験器にセットされている試料Sを当該単板試験器にセットし直して、試料SとヨークY1、Y2との接触状態を変更すること、または、単板試験器にセットされている試料Sと同じ大きさ、形状、種類の別の試料Sを当該単板試験器にセットすることが行われた後、図7のフローチャートによる処理が再度実行されることにより実現される。
<請求項4>
請求項4は、例えば、図7のフローチャート(ステップS701〜S718)の処理が(1回)行われている間、試料SとヨークY1、Y2との接触状態が変更されない(試料Sが動かされない)ことにより実現される。
<請求項6>
請求項6は、例えば、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値の0.97倍以上1.03倍以下の範囲を磁界強度範囲とすることにより実現される。この場合、磁界強度範囲の中心値は、第1の磁界強度導出部316により導出された一周期分の磁界強度H(t)から導出した磁界強度の最大値になる。
<請求項8>
第1の磁束密度導出手段は、例えば、第1の磁束密度導出部314を用いることにより実現される。
第1の磁界強度導出手段は、例えば、第1の磁界強度導出部316を用いることにより実現される。
磁界強度範囲導出手段は、例えば、第1の磁束密度条件判定部315および磁界強度範囲導出部317を用いることにより実現される。
第2の磁束密度導出手段は、例えば、第2の磁束密度導出部319を用いることにより実現される。
第2の磁界強度導出手段は、例えば、第2の磁界強度導出部321を用いることにより実現される。
鉄損導出手段は、例えば、第2の磁束密度条件判定部320、磁界強度判定部322、測定終了判定部323、および鉄損導出部324を用いることにより実現される。
100:コイル群、110:励磁コイル、120:二次コイル、301:電源装置、302:直流電圧発生装置、303:PWMインバータ、304:スイッチ回路、305:電流計、306:電圧計、307:鉄損測定装置、311:切り替え部、312:波形記憶部、313:第1の励磁指示部、314:第1の磁束密度導出部、315:、第1の磁束密度条件判定部、316:第1の磁界強度導出部、317:磁界強度範囲導出部、318:第2の励磁指示部、319:第2の磁束密度導出部、320:第2の磁束密度条件判定部、321:第2の磁界強度導出部、322:磁界強度判定部、323:測定終了判定部、324:鉄損導出部、325:出力部、S:試料、F:巻線枠、Y1、Y2、Y:ヨーク

Claims (8)

  1. 単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する単板試験器であって、前記試料に磁気的に結合されるヨークと、前記試料および前記ヨークにより形成される閉磁路を取り巻くように巻き回される励磁コイルと、前記閉磁路を取り巻くように巻き回される二次コイルとを有する単板試験器と、
    目標励磁電圧を変調波としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより励磁電圧を生成するPWMインバータと、
    前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を生成する電源装置と、
    を用いて前記試料の鉄損を測定する鉄損測定方法であって、
    前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第1の磁束密度導出工程と、
    前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第1の磁界強度導出工程と、
    前記第1の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値であって、前記第1の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が所定の条件を満たす状態のときの前記試料の磁界強度の最大値に基づいて、前記試料の磁界強度の最大値の範囲である磁界強度範囲を導出する磁界強度範囲導出工程と、
    前記磁界強度範囲導出工程により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第2の磁束密度導出工程と、
    前記磁界強度範囲導出工程により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第2の磁界強度導出工程と、
    前記第2の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たす状態のときの前記試料の鉄損であって、前記第2の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出工程により導出された前記磁界強度範囲に入る状態のときの前記試料の鉄損を導出する鉄損導出工程と、
    を有することを特徴とする鉄損測定方法。
  2. 前記第1の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たさない場合に、前記電源装置により出力される励磁電圧の振幅であって、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧の振幅を調整する第1の振幅調整工程と、
    前記第2の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たさない場合と、前記第2の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出工程により導出された前記磁界強度範囲に入らない場合との少なくとも何れか一方が成立する場合に、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成される励磁電圧の振幅を調整する第2の振幅調整工程と、
    を更に有することを特徴とする請求項1に記載の鉄損測定方法。
  3. 前記第2の振幅調整工程により前記励磁電圧の振幅が調整されても、第2の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たすことと、前記第2の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出工程により導出された前記磁界強度範囲に入ることとの双方を満たさない場合に、前記試料と前記ヨークとの接触状態を変更し、前記ヨークとの接触状態が変更された前記試料に対して、前記第1の磁束密度導出工程、前記第1の磁界強度導出工程、前記第1の振幅調整工程、前記磁界強度範囲導出工程、前記第2の磁束密度導出工程、前記第2の磁界強度導出工程、前記第2の振幅調整工程、および前記鉄損導出工程が再度実行されることを特徴とする請求項2に記載の鉄損測定方法。
  4. 前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁するときと、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁するときとで、前記試料と前記ヨークとの接触状態が変わらないことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
  5. 前記試料は、圧縮応力が付加された状態の試料であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
  6. 前記磁界強度範囲導出工程は、前記第1の磁界強度導出工程により導出された前記試料の磁界強度の最大値であって、前記第1の磁束密度導出工程により導出された前記試料の磁束密度の最大値が所定の条件を満たす状態のときの前記試料の磁界強度の最大値を中心値とする範囲を前記磁界強度範囲として導出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
  7. 前記第1の磁束密度導出工程および前記第2の磁束密度導出工程では、前記二次コイルに誘起される電圧に基づいて、前記試料の磁束密度の最大値を導出し、
    前記第1の磁界強度導出工程および前記第2の磁界強度導出工程では、前記励磁コイルに流れる励磁電流に基づいて、前記試料の磁界強度の最大値を導出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の鉄損測定方法。
  8. 単板の磁性体からなる試料の磁気特性を測定する単板試験器であって、前記試料に磁気的に結合されるヨークと、前記試料および前記ヨークにより形成される閉磁路を取り巻くように巻き回される励磁コイルと、前記閉磁路を取り巻くように巻き回される二次コイルとを有する単板試験器と、
    目標励磁電圧を変調波としてPWM(Pulse Width Modulation)制御を行うことにより励磁電圧を生成するPWMインバータと、
    前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を生成する電源装置と、
    を有する鉄損測定システムであって、
    前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第1の磁束密度導出手段と、
    前記電源装置により、前記目標励磁電圧の時間波形と同じ時間波形の励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第1の磁界強度導出手段と、
    前記第1の磁界強度導出手段により導出された前記試料の磁界強度の最大値であって、前記第1の磁束密度導出手段により導出された前記試料の磁束密度の最大値が所定の条件を満たす状態のときの前記試料の磁界強度の最大値に基づいて、前記試料の磁界強度の最大値の範囲である磁界強度範囲を導出する磁界強度範囲導出手段と、
    前記磁界強度範囲導出手段により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁束密度の最大値を導出する第2の磁束密度導出手段と、
    前記磁界強度範囲導出手段により前記磁界強度範囲が導出された後、前記PWMインバータにより、前記目標励磁電圧を変調波として前記PWM制御が行われることにより生成された励磁電圧を前記励磁コイルに印加して前記試料を励磁したときの前記試料の磁界強度の最大値を導出する第2の磁界強度導出手段と、
    前記第2の磁束密度導出手段により導出された前記試料の磁束密度の最大値が前記所定の条件を満たす状態のときの前記試料の鉄損であって、前記第2の磁界強度導出手段により導出された前記試料の磁界強度の最大値が、前記磁界強度範囲導出手段により導出された前記磁界強度範囲に入る状態のときの前記試料の鉄損を導出する鉄損導出手段と、
    を有することを特徴とする鉄損測定システム。
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