JP2019118981A - 研磨パッド - Google Patents

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Abstract

【課題】凸状に湾曲した面を有する研磨基材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる研磨パッドを提供する。【解決手段】不織布と樹脂とを含む樹脂層1を有し、かつ、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、前記樹脂層1のショアA硬度が、60°以上であり、前記樹脂層1が、下記式(1)で表される条件を満たす、研磨パッド。200(mm)≦h0−h1(1)(ここで、前記h0−h1は、前記樹脂層1を、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h0の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台2に固定し、前記他端の高さh1を測定する曲げ剛性試験に供して得られる。)【選択図】図1

Description

本発明は、研磨パッドに関する。
半導体デバイスの製造においては、半導体ウエハの表面に優れた平坦性を付与するために研磨が行われる。かかる研磨の方法として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)が広く用いられている。CMPでは、研磨パッドと半導体ウエハの被研磨面とを摺動させながら、研磨パッドの表面に必要に応じて砥粒成分と酸化剤、キレート剤、酸性又はアルカリ性等の化学成分を含む研磨液を流下させつつ、研磨を行う。
上述した研磨において、半導体ウエハのエッジ部分を研磨する際、樹脂含浸不織布タイプの研磨パッドが用いられている。より詳細には、円筒ドラムの外周(曲面)に当該研磨パッドを貼付し、円筒ドラムに対して半導体ウエハのエッジ部分を斜めに押し当てて研磨を行う。その際、円筒ドラムと半導体ウエハは共に回転した状態で接触する。このように、半導体ウエハの表面(中央部分)を研磨する場合と異なり、半導体ウエハのエッジ部分を研磨する際は研磨パッドを湾曲させた状態で使用することとなるため、後者の用途においては湾曲状態での研磨パッドの物性を考慮することが求められる。例えば、欠陥を少なく滑らかに研磨する観点からは、上記用途の研磨パッドとして、剛性の低いものが使用される傾向がある。一方、特許文献1には、同用途において、剛性を高めることで研磨後の半導体ウエハのエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できるとの観点から、ショアA硬度を65度以上とした研磨パッドが記載されている。他方、特許文献2には、円筒ドラムから研磨パッドが剥離することを防止する観点から、円筒ドラムに貼付された研磨パッドの上下両端の外周を粘着テープで巻きまわして固定する技術が記載されている。
国際公開第2002/005337号 特開2004−63900号公報
特許文献1に記載の技術において用いられる研磨パッドによれば、縁だれを抑制できる結果、平坦性が向上する傾向にあるが、研磨パッドの剛性が高いことに起因して円筒ドラムから当該研磨パッドが剥離しやすくなる。特に、円筒ドラムに貼り付けた際の研磨パッドの継ぎ目部分において剥離が起きやすい。剥離が起こると使用できなくなるため、実使用時間(ライフ)が短くなる。
更に、単に硬度を上げて剛性を高めるのみでは、円筒ドラムに貼り付ける際に追従性が十分でなく、研磨パッドの折れ曲がりによるエアー溜が発生し研磨パッドの表面に凹凸が発生しやすくなる。このエアー溜は、円筒ドラムからの研磨パッドの剥離の原因にもなる。
また、特許文献2に記載の技術において用いられる研磨パッドによれば、剛性が低いことに起因する縁だれの問題があるだけでなく、研磨パッドの上下両端の外周以外の部分、特に継ぎ目の中央部分においては、剥離が十分に防止されているとは言い難く、継ぎ目の中央部分が浮くと均一な研磨ができなくなる。また、剛性が高い場合は上述のエアー溜りに起因する問題が解決されない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる研磨パッドを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の構成及び物性を有する研磨パッドが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]
不織布と樹脂とを含む樹脂層を有し、かつ、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、
前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、
前記樹脂層が、下記式(1)で表される条件を満たす、研磨パッド。
200(mm)≦h0−h1 (1)
(ここで、前記h0−h1は、前記樹脂層を、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h0の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に固定し、前記他端の高さh1を測定する曲げ剛性試験に供して得られる。)
[2]
凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、
不織布と樹脂とを含む樹脂層と、当該樹脂層を前記研磨用回転部材に貼り付けるための粘着層とを有し、
前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、
前記研磨パッドが、下記式(2)で表される条件を満たす、研磨パッド。
200(mm)≦h2−h3 (2)
(ここで、前記h2−h3は、前記研磨パッドを、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h2の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に前記粘着層を介して固定し、前記他端の高さh3を測定する曲げ剛性試験に供して得られる。)
[3]
前記粘着層が、厚さ0.02〜0.50mmの基材を有する、[2]に記載の研磨パッド。
[4]
前記粘着層が、厚さ0.02〜0.20mmのポリエステル樹脂層からなる基材を有する、[2]に記載の研磨パッド。
[5]
前記粘着層が、厚さ0.02mm〜0.5mmの不織布からなる基材を有する、[2]に記載の研磨パッド。
[6]
前記粘着層が、厚さ0.01〜0.20mmの基材レス粘着層である、[2]に記載の研磨パッド。
[7]
前記樹脂層の研磨面とは反対側の面が、溝部を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載の研磨パッド。
[8]
前記溝部において、溝ピッチが2〜200mmであり、かつ、溝幅が0.5〜6.0mmであり、かつ、溝深さが0.01〜1.8mmである、[7]に記載の研磨パッド。
[9]
前記樹脂層の圧縮率が、0.8〜9.0%である、[1]〜[8]のいずれかに記載の研磨パッド。
本発明によれば、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる研磨パッドを提供することができる。
接着層を有しない研磨パッドの曲げ剛性試験の一例を示す説明図である。 接着層を有する研磨パッドの曲げ剛性試験の一例を示す説明図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態のみに限定されない。
[研磨パッド]
本実施形態の第1の態様に係る研磨パッド(以下、単に「第1の研磨パッド」ともいう。)は、不織布と樹脂とを含む樹脂層を有し、かつ、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、前記樹脂層が、下記式(1)で表される条件を満たす。このように構成されているため、第1の研磨パッドは、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる。
200(mm)≦h0−h1 (1)
ここで、前記h0−h1は、前記樹脂層を、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h0の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に固定し、前記他端(最下端)の高さh1を測定する曲げ剛性試験(以下、単に「曲げ剛性試験A」ともいう。)に供して得られる。
本実施形態の第2の態様に係る研磨パッド(以下、単に「第2の研磨パッド」ともいう。)は、当該研磨パッドを前記面に貼り付けるための粘着層をさらに有するものである。すなわち、第2の研磨パッドは、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、不織布と樹脂とを含む樹脂層と、当該樹脂層を前記面に貼り付けるための粘着層とを有し、前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、前記研磨パッドが、下記式(2)で表される条件を満たす。このように構成されているため、第2の研磨パッドも、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる。
200(mm)≦h2−h3 (2)
ここで、前記h2−h3は、前記研磨パッドを、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h2の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に前記粘着層を介して固定し、前記他端(最下端)の高さh3を測定する曲げ剛性試験(以下、単に「曲げ剛性試験B」ともいう。)に供して得られる。
以下、「本実施形態の研磨パッド」と称するときは、第1の研磨パッド及び第2の研磨パッドを包含するものとする。
本実施形態における曲げ剛性試験Aの測定方法について、図1を参照しつつ説明する。まず、本実施形態における樹脂層1、すなわち、後述する接着層を有しないものを、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状に切り出して試料とする。かかる試料の厚さとしては限定されない。次いで、地上h0の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台2に両面テープ等で固定する。このとき、試料の半分(長さ500mm×幅100mm)が台2上に固定されており、残りの半分(長さ500mm×幅100mm)に当たる非固定部は、台2の端部を起点とし、その剛性に応じて他端が下方に垂れるようにして湾曲する。当該非固定部の高さは前記他端(最下端)の高さh1で特定でき、当該高さが一定となった段階でh1を測定する。なお、上記試料を切り出す際に、前記他端に対応する部分を長さ方向に対して垂直に切断した場合、試料の下面側の端部が最下端となる。また、高さh0としては以下に限定されないが、測定便宜上、500〜1000mm程度にすることが好ましい。なお、試料幅が100mmであれば試料長さが1000mm満たない場合でも550mm以上あれば500mmを非固定部とし、残りの長さ部分を固定すれば測定可能である。
第1の研磨パッドは、上述のようにして得られるh0−h1の値が200mm以上となるように構成されている。h0−h1の値が200mm以上であることから、ショアA硬度を60°以上としているにもかかわらず、剥離を十分に防止できる程の剛性(追従性)が確保されているものと評価できる。同様の観点から、h0−h1の値は、200〜450mmであることが好ましく、より好ましくは200〜400mmである。h0−h1の値を上記の範囲に調整するには、例えば、後述の好ましい製造方法を採用すればよい。後述の好ましい製造方法において、例えば、研磨面及び/又は研磨面の反対面に溝加工すること等により、h0−h1の値は大きくなる傾向にある。
次いで、本実施形態における曲げ剛性試験Bの測定方法について、図2を参照しつつ説明する。まず、第2の研磨パッド、すなわち、樹脂層1及び接着層3を有するものを対象とし、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状に切り出して試料とする。かかる試料の厚さとしては以下に限定されない。次いで、地上h2の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台2に固定する。このとき、試料の半分(長さ500mm×幅100mm)が台2上に前記粘着層を介して固定されており、残りの半分(長さ500mm×幅100mm)に当たる非固定部は、台2の端部を起点とし、その剛性に応じて他端が下方に垂れるようにして湾曲する。当該非固定部の高さは前記他端(最下端)の高さh3で特定でき、当該高さが一定となった段階でh3を測定する。なお、上記試料を切り出す際に、前記他端に対応する部分を長さ方向に対して垂直に切断した場合、試料の下面側の端部が最下端となる。また、高さh2としては以下に限定されないが、測定便宜上、500〜1000mm程度にすることが好ましい。なお、試料幅が100mmであれば試料長さが1000mm満たない場合でも550mm以上あれば500mmを非固定部とし、残りの長さ部分を固定すれば測定可能である 。
第2の研磨パッドは、上述のようにして得られるh2−h3の値が200mm以上となるように構成されている。h2−h3の値が200mm以上であることから、ショアA硬度を60°以上としているにもかかわらず、剥離を十分に防止できる程の剛性(追従性)が確保されているものと評価できる。すなわち、h2−h3の値が200mm以上であることにより、ショアA硬度が60°以上であるとの特徴と相俟って、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うに際して、前記面から剥離し難いだけでなく、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制できる。同様の観点から、h2−h3の値は、200〜450mmであることが好ましく、より好ましくは200〜400mmである。h2−h3の値を上記の範囲に調整するには、例えば、後述の好ましい製造方法を採用すればよい。後述の好ましい製造方法において、例えば、研磨面及び/又は研磨面の反対面をエンボス加工すること等により、h2−h3の値は大きくなる傾向にある。
本実施形態の研磨パッドのショアA硬度は、被研磨物(以下、単に「ワーク」ともいう。)との良好な追従性を確保しつつ研磨パッドの変形を防止し、研磨後の被研磨物のエッジ部分に生じうる縁だれを抑制する観点から、60°以上であり、好ましくは60〜95°であり、より好ましくは60〜75°である。ショアA硬度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。ショアA硬度は、例えば、後述の好ましい製造方法において、樹脂モジュラスの高い樹脂を使用する、発泡の大きさを小さくする等で圧縮しにくくすることにより、高くなる傾向にある。
本実施形態の研磨パッドの圧縮率は、ワークとの良好な密着性を確保する観点及び研磨パッドの変形防止の観点から、0.8〜9.0%であると好ましく、2〜7%であるとより好ましい。圧縮率は後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
圧縮率は、例えば、後述の好ましい製造方法において、例えば、樹脂付着量を減少させたり、硬度の低い樹脂を用いることで、高くなる傾向にある。
本実施形態の研磨パッドの圧縮弾性率は、ワークとの良好な密着性を確保する観点及び研磨パッドの変形防止の観点から、60〜95%であると好ましく、70〜85%であるとより好ましい。圧縮弾性率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
圧縮弾性率は、例えば、後述の好ましい製造方法において、樹脂の種類や不織布の目付け等を調整することにより、高くすることができる。
本実施形態の研磨パッドの密度は、研磨パッドの永久歪みを抑制する観点及びワークとの接触面積の増大による作用点の圧力低下を抑制する観点から、0.3〜0.6であると好ましく、0.35〜0.50であるとより好ましい。密度は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の研磨パッドにおける不織布は、樹脂層を構成するものであり、特に限定されず、種々公知のものを採用できる。上記不織布の例としては、ポリアミド系及びポリエステル系等の不織布を挙げることができる。また、不織布を得る際に繊維を交絡させる方法としても特に限定されず、例えば、ニードルパンチであってもよく、水流交絡であってもよい。不織布は上述した中から1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本実施形態の研磨パッドにおける不織布の厚さは、特に限定されないが、研磨パッド厚さの観点から、1〜8mmであることが好ましい。
本実施形態の研磨パッドにおける不織布を構成する繊維の繊度は、特に限定されないが、研磨時のスクラッチ発生減少の観点から、1.5〜7dであると好ましい。本実施形態における不織布は、繊度の異なる繊維で構成されていてもよく、種々の繊維の配合比によって研磨パッドの剛性を調整することもできる。例えば、不織布を、2dの繊維5〜95質量%及び3dの繊維5〜95質量%で構成することも好ましい。また、樹脂をより均一に含浸させる観点から、捲縮糸を使用することもでき、例えば、不織布を、2dの繊維5〜45質量%、3dの繊維10〜90質量%及び2dの捲縮糸5〜45質量%で構成してもよい。
本実施形態の研磨パッドにおける不織布の目付けは、特に限定されないが、研磨パッド密度や不織布と樹脂の比率の観点から、200〜1000g/m2であると好ましい。
本実施形態の研磨パッドにおける樹脂は、上述した不織布と共に樹脂層を構成するものであり、特に限定されず、従来公知のものであってもよい。
本実施形態における樹脂は、いわゆる湿式含浸により不織布に含浸できるものが好ましい。このような樹脂(以下、単に「湿式樹脂」ともいう。)は特に限定されず、種々公知のものを適用できる。その具体例としては、以下に限定されないが、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系、アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系及びポリスチレン系が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリウレタン樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。
上記した湿式樹脂の他、いわゆる乾式含浸により不織布に含浸できる樹脂も使用できる。このような樹脂(以下、単に「乾式樹脂」ともいう。)は特に限定されず、種々公知のものを適用できる。乾式樹脂は、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤であるアミン化合物及び/又は多価アルコール化合物と、それらを溶解可能な溶媒とを含む溶液を用い、乾式法によって得ることができる。ここで、ウレタンプレポリマーとしては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとプレンツカテコールとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、及びイソシアヌル酸とヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物が挙げられる。また、硬化剤のうち、アミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4−メチル−2,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン、2−メチル−4,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[3−(イソプロピルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(1−メチルプロピルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(1−メチルペンチルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(3,5−ジアミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6−ジアミノ−4−メチルフェノール、トリメチルエチレンビス−4−アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド−di−p−アミノベンゾネートが挙げられる。多価アルコール化合物としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン及びトリメチロールメタンが挙げられる。これらのウレタンプレポリマー及び硬化剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤が挙げられる。
本実施形態の研磨パッドにおいて、好ましいショアA硬度を確保する観点から、不織布及び樹脂の合計に対して、不織布の含有量が30〜70質量%であり、かつ、樹脂の含有量が70〜30質量%であることが好ましい。同様の観点から、不織布の含有量が45〜65質量%であり、かつ、樹脂の含有量が35〜55質量%であることがより好ましい。
本実施形態の研磨パッドにおける樹脂の100%モジュラスは、好ましいショアA硬度を確保する観点から、5MPa〜60MPaであると好ましく、20MPa〜55MPaであるとより好ましい。樹脂の100%モジュラスは、その樹脂からなるシートを100%伸ばしたとき、すなわち元の長さの2倍に伸ばしたとき、に掛かる荷重を単位面積で割った値である。
本実施形態の研磨パッドにおける樹脂層は、上述の不織布及び樹脂の他、本実施形態の所望の効果を阻害しない範囲において、通常の研磨パッドに含まれ得る各種添加剤を含んでもよい。そのような添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、カーボンブラック等の顔料、親水性活性剤及び疎水性活性剤が挙げられる。
本実施形態の研磨パッドにおける樹脂層は、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材への追従性を向上させる観点から、当該樹脂層の研磨面とは反対側の面が、複数の溝から構成される溝部を含むことが好ましい。上記と同様の観点から、前記溝部において、溝ピッチが2〜200mmであり、かつ、溝幅が0.5〜6.0mmであり、かつ、溝深さが0.01〜1.8mmであることがより好ましく、溝ピッチが2〜10mmであり、かつ、溝幅が0.5〜2mmであり、かつ、溝深さが0.05〜0.5mmであることがさらに好ましい。なお、溝部を設けることで、研磨パッドの曲げ剛性は低下する傾向にあり、かかる観点から、研磨パッドの研磨面側に溝部を形成することもできる。一方、研磨後の縁だれを抑制しつつ、エアー溜りを防止ないし解消する観点から、研磨パッドの研磨面側に溝部を形成する態様は、樹脂層の研磨面とは反対側の面に当該溝部を形成する態様に劣る傾向にある。
本実施形態において、第2の研磨パッドは、粘着層を有するものであり、また、第1の研磨パッドも粘着層をさらに有することができる。本実施形態の研磨パッドにおける粘着層は、樹脂層を研磨用回転部材の凸状に湾曲した面に貼り付けるために配されるものであり、種々公知のものを適用することができる。
本実施形態の研磨パッドにおける研磨用回転部材側の粘着層の剥離強度は、剥離防止と研磨パッド交換時の作業性の両立の観点から、0.2〜1.2kg/cmであることが好ましく、0.4〜1.0kg/cmであることがより好ましい。上記剥離強度は、日本工業規格(JIS Z0237)に準拠し、例えばA&D社製のテンシロンを用いてSUS(ステンレス)に対する180°剥離強度を測定することで得られる。
本実施形態の研磨パッドにおける粘着層は、剥離強度と粘着層自体の寸法安定性の観点から、粘着性成分及び基材から構成されることが好ましく、適切な剛性を確保する観点から、厚さ0.02〜0.50mmの基材を有することが好ましい。粘着性成分としては、種々公知のものを適宜選択して使用することができ以下に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。両面テープとする場合、同一の粘着剤を両面に用いてもよく、一方の面と他方の面で異なる粘着剤を用いてもよい。基材としては、以下に限定されないが、ポリエステル樹脂及び不織布等が挙げられる。ポリエステル樹脂の組成としては、特に限定されず、種々公知のものを適宜選択して使用することができる。基材としての不織布も、特に限定されず、前述した樹脂層に含まれる不織布と同様のものを適宜選択して使用することができる。
本実施形態の研磨パッドにおける粘着層は、厚さ0.02〜0.20mmのポリエステル樹脂層からなる基材を有することが好ましい。ポリエステル樹脂層からなる基材を用いる場合において、当該基材の厚さを0.02〜0.20mmとする場合、適切な剛性が確保される傾向にある。
本実施形態の研磨パッドにおける粘着層は、厚さ0.02〜0.50mmの不織布からなる基材を有することが好ましく、厚さ0.05〜0.40mm不織布からなる基材を有することがより好ましい。不織布からなる基材を用いる場合において、当該基材の厚さを0.02〜0.50mmとする場合、適切な剛性が確保される傾向にある。
本実施形態の研磨パッドにおける粘着層は基材レスであってもよい。その場合、厚さ0.01〜0.20mmの基材レス粘着層であることが好ましい。基材レス粘着層は、基材を有しない粘着層であり、主として粘着性物質で構成される。基材レス粘着層とする場合、粘着層を配することによる過度な剛性の上昇が抑制され、適切な剛性が確保される傾向にある。
本実施形態の研磨パッドの厚さは、特に限定されないが、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の表面性状が研磨に及ぼし得る影響を十分に低減する観点及び適度な剛性を確保する観点から、1〜4mmであると好ましい。厚さは、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して測定される。具体的には、研磨パッドを10cm×10cm角に切り抜いて得た試料片3枚を用意し、各試料片毎に、厚さ測定器の所定位置にセットした後、480g/cm2の荷重をかけた加圧面を試料片の表面に載せ、5秒経過後に厚さを測定する。1枚の試料片につき、5箇所の厚さを測定し相加平均を算出し、さらに3枚の試料片の相加平均を求める。
本実施形態の研磨パッドは、前述した基材とは別体のクッション層を具備してもよいし、樹脂層及び粘着層をそれぞれ複数有する構造とすることもできる。このように、本実施形態の研磨パッドは、一層の樹脂層及び一層の粘着層で構成される態様に限定されず、三層以上とする上で樹脂層及び粘着層以外の層を含むこともできるが、いずれの場合であっても、研磨パッドとしての使用時(すなわち研磨用回転部材への貼り付け時点)において式(1)又は(2)で表される条件を満たすことが必要である。なお、上記クッション層としては、特に限定されないが、不織布、合成ゴム、ポリエチレンフォーム及びポリウレタンフォーム等の層とすることができる。
[研磨パッドの製造方法]
次に、本実施形態の研磨パッドの製造方法について説明する。本実施形態の研磨パッドの製造方法は、いわゆる湿式樹脂含浸及び乾式樹脂含浸のいずれか1つ以上の含浸方法を用いて、結果としてシート状の不織布に樹脂を含浸して研磨パッドを得ることができる方法であれば、特に限定されない。以下に、その製造方法の一例として、樹脂としてポリウレタン樹脂を用いた場合を説明する。
まず、ポリウレタン樹脂と、ポリウレタン樹脂を溶解可能であって、後述の凝固液に混和する溶媒と、必要に応じて研磨パッドに配合するその他の添加剤とを混合し、更に必要に応じて減圧下で脱泡して樹脂溶液を準備する。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、イソプロピルアルコール(IPA)及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。不織布の全体に亘って樹脂を含浸する観点、及び、樹脂の含浸量をある程度確保する観点から、樹脂溶液について、B型回転粘度計を用いて20℃で測定した粘度が2000cp以下であると好ましく、100cp〜1500cpであるとより好ましく、400cp〜1000cpであるとより好ましい。そのような粘度の数値範囲にある樹脂溶液を得る観点から、例えば、ポリウレタン樹脂を、樹脂溶液の全体量に対して5〜25質量%の範囲、より好ましくは8〜15質量%の範囲で溶媒に溶解させてもよい。樹脂溶液の粘性は、用いる樹脂の種類及び分子量にも依存するため、これらを総合的に考慮し、樹脂の選定、濃度設定等を行うことが重要である。
次に、樹脂溶液にシート状の不織布を浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落とすことで所望の樹脂溶液付着量に調整し、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させる。次いで、樹脂溶液を含浸した不織布を、樹脂に対する貧溶媒、例えば水、を主成分とする凝固液中に浸漬することにより、ポリウレタン樹脂を凝固再生させる。凝固液には、樹脂の再生速度を調整するために、樹脂溶液中の溶媒以外の極性溶媒等の有機溶媒を添加してもよい。また、凝固液の温度は、樹脂を凝固できる温度であれば特に限定されず、例えば、15〜60℃であってもよい。その後、必要に応じて、樹脂を含浸した不織布内に残存する溶媒を従来知られている洗浄液を用いて除去し、さらに、マングルローラを用いたり乾燥したりすることにより洗浄液を除去してもよい。
こうして湿式含浸により得られた、シート状の不織布にポリウレタン樹脂を含浸したものを、本実施形態の研磨パッドの一例としてもよく、さらに、乾式含浸により、ポリウレタン樹脂を含浸したものを研磨パッドの一例としてもよい。
乾式含浸を行う場合、まず、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤であるアミン化合物及び/又は多価アルコール化合物と、それらを溶解可能な溶媒とを含む溶液を準備する。ウレタンプレポリマーとしては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、2,4−トリレンジイソシアネートとプレンツカテコールとの付加物、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、及びイソシアヌル酸とヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物が挙げられる。また、硬化剤のうち、アミン化合物としては、例えば、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4−メチル−2,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン、2−メチル−4,6−ビス(メチルチオ)−1,3−ベンゼンジアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[3−(イソプロピルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(1−メチルプロピルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(1−メチルペンチルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(3,5−ジアミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6−ジアミノ−4−メチルフェノール、トリメチルエチレンビス−4−アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド−di−p−アミノベンゾネートが挙げられる。多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3−メチル−4,3−ペンタンジオール、3−メチル−4,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールメタンが挙げられる。これらのウレタンプレポリマー及び硬化剤は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
上記粘度の数値範囲にある樹脂溶液を得る観点から、例えば、溶液は、ウレタンプレポリマーを、溶液の全体量に対して20〜50質量%の範囲、より好ましくは30〜40質量%の範囲で含んでもよく、多価アルコール化合物を、溶液の全体量に対して5〜15質量%の範囲、より好ましくは8〜13質量%の範囲で含んでもよい。この溶液におけるウレタンプレポリマーと多価アルコール化合物との配合比は、特に限定されないが、脆性及び耐熱性の観点から、R値(水酸基に対するイソシアネート基の当量比)が0.7〜1.0となるような配合比であると好ましく、R値が0.8〜0.9となるような配合比であるとより好ましい。
次に、上記溶液に前駆体シートを浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて溶液を絞り落とすことで所望の溶液付着量に調整し、前駆体シートに溶液を略均一に含浸させる。次いで、溶液を含浸させた前駆体シートを乾燥機内で乾燥させる。これにより、ウレタンプレポリマーが硬化剤により更に重合して、前駆体シートにポリウレタン樹脂を含浸した研磨パッドが得られる。乾燥温度としては、例えば、100℃〜140℃であってもよい。
こうして得られた研磨パッドは、その後、必要に応じて、円形等の所望の形状、寸法に裁断されてもよく、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を施されてもよい。
なお、研磨パッドの剛性は、ショアA硬度の増加に伴って上昇する傾向にあるため、上記のようにしてショアA硬度の高い研磨パッドを得た場合において、式(1)で表される条件を満たさないものが得られることもある。このような場合、剛性を低下させる処理を行うことで本実施形態の研磨パッドが得られる。剛性を低下させる処理としては、以下に限定されないが、例えば、切削加工やエンボス加工等による溝加工が挙げられる。切削加工の具体例としては、ドリル刃や円板刃を樹脂層の表面に対して平行に相対的に回転させながら、所望の溝パターンになるように移動させ、溝部を形成することができる。溝方向(複数の溝の配列方向)の少なくとも一つは凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の回転方向と異なる方向(回転方向に対して45〜135度)とすることが好ましい。エンボス加工の場合、エンボスパターンに合わせた凸部を有する金型を加熱しておく。次いで、加熱した金型を台上に載置した研磨パッド(樹脂層)の表面に当接し押圧する。これにより、樹脂層の研磨面とは反対側の面にエンボス加工部を形成することができる。なお、エンボス加工では、通常、マトリックス樹脂の融点をTm(℃)、ガラス転移温度をTg(℃)としたときに、エンボス金型を温度(Tm±50)℃ないし(Tg+50〜Tg+200)℃の近傍まで加熱し、一定圧力で一定時間プレスすることで、研磨面に凹凸を付与する。好ましくは、エンボス金型を100〜180℃の温度に加熱し、2.0〜10.0MPaの圧力で60〜300秒間プレスする。こうして、本実施形態の研磨パッドが得られる。
なお、前記溝部はエアー抜き手段としても有用であり、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材に貼付する際のエアー溜の発生防止やエアー溜の解消に効果がある。
第2の研磨パッドを製造する場合、上記のようにして得られた研磨パッド(樹脂層)の研磨面とは反対側の面に、常法により接着層を形成する。
本実施形態の研磨パッドは、研磨パッドに含まれる接着層により、又は、研磨パッドとは別体の接着剤等により、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けられる。凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材としては、特に限定されず、半導体ウエハのエッジ部分の研磨に用いられる種々公知のものを適宜使用することができる。例えば、当該研磨用回転部材は円筒形状とすることができ、そのサイズに関しては特に限定されない。本実施形態の研磨パッドは、その適度な剛性ゆえに種々公知の研磨用回転部材に好ましく貼り付けることができる。
[研磨パッドの用途]
本実施形態の研磨パッドは、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、半導体用シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板、サファイヤや窒化ガリウムを始めとする難削材等のエッジ部分の研磨に特に好適に用いられる。
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
[不織布]
実施例及び比較例において、以下の2種類の不織布を用いた。
(不織布A)
3d×51mmのポリエチレンテレフタレートの繊維64重量部と2d×51mmのポリエチレンテレフタレート繊維36重量部とを混合して開繊し、カードでフリースを形成し、積層後、ニードルパンチで交絡し、密度0.175g/cm3、厚み6.0mmの不織布を形成させた。
(不織布B)
3d×51mmのポリエチレンテレフタレートの繊維を用いて開繊以降は不織布Aと同様の方法により、密度0.175g/cm3、厚み6.0mmの不織布を形成させた。
[使用原料]
実施例及び比較例において、以下の湿式樹脂及び含浸樹脂溶媒を用いた。
(湿式樹脂)
MP299:エーテル系ウレタン樹脂(DIC社製、商品名「クリスボンMP−299」、100%モジュラス47.5MPa)
C8966:エステル系ウレタン樹脂(DIC社製、商品名「クリスボン8966」、100%モジュラス24MPa)
C8867:エステル系ウレタン樹脂(DIC社製、商品名「クリスボン8867」、100%モジュラス12MPa)
(溶媒)
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
IPA:イソプロピルアルコール
(実施例1)
まず、12.3質量部のMP299、41.0質量部のC8966、23.0質量部のIPA及び23.7質量部のDMFを含む樹脂溶液を調製した。また、表1に示す不織布Aを準備した。次に、上記樹脂溶液にその不織布を浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落として、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させた。次いで、室温の水からなる凝固液中に浸漬することにより、エステル系ポリウレタン樹脂を凝固再生させて樹脂シートを得た。その後、樹脂シートを凝固浴から取り出し、洗浄、乾燥させ、溶媒であるDMFを除去した。その後、樹脂シートを乾燥させつつ巻き取った。その後、樹脂シートの両面をバフによる研削で厚さを調整し、得られた厚さ3.1mmの樹脂シートを研磨パッドとした。
(実施例2)
樹脂シートの研磨面とは反対側の面に、不織布基材(厚さ:0.1mm)を有する粘着層(不織布基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.03mm)からなる両面テープを配したこと以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(実施例3)
樹脂シートの研磨面とは反対側の面にエンボス加工を施し、表面に溝ピッチ4mm、溝幅1mm、溝深さを0.1mmとした断面矩形状で溝方向が回転方向及び回転方向に対し90度の格子パターンの溝を有するエンボス加工部を設けたこと以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
(実施例4)
樹脂シートのエンボス加工部を設けた面に、PET基材(厚さ:0.023mm)を有する接着層(PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)の両面テープを配したこと以外は、実施例3と同様にして研磨パッドを得た。
(実施例5)
樹脂シートのエンボス加工部を設けた面に、不織布基材(厚さ:0.1mm)を有する粘着層(不織布基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.03mm)の両面テープを配したこと以外は、実施例3と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例1)
まず、18.3質量部のC8867及び33.0質量部のDMFを含む樹脂溶液を調製した。また、表1に示す不織布Bを準備した。次に、上記樹脂溶液にその不織布を浸漬した後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて樹脂溶液を絞り落として、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させた。次いで、室温の水からなる凝固液中に浸漬することにより、エステル系ポリウレタン樹脂を凝固再生させて樹脂シートを得た。その後、樹脂シートを凝固浴から取り出し、洗浄、乾燥させ、溶媒であるDMFを除去した。その後、樹脂シートを乾燥させつつ巻き取った。その後、樹脂シートの両面をバフによる研削で厚さを調整し、厚さ3.04mmの樹脂シートを得た。この樹脂シートの研磨面とは逆側の面にPET基材(厚さ:0.023mm)を有する接着層(PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)の両面テープを配し研磨パッドとした。
(比較例2)
PET基材を有する接着層の代わりに、不織布基材(厚さ:0.1mm)を有する粘着層(不織布基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.03mm)の両面テープを配したこと以外は、比較例1と同様にして研磨パッドを得た。
(比較例3)
樹脂シートの研磨面とは逆側の面にPET基材(厚さ:0.023mm)を有する接着層(PET基材の表面及び裏面における粘着性成分厚みは共に0.04mm)の両面テープを配したこと以外は、実施例1と同様にして研磨パッドを得た。
なお、上記実施例2、4、5及び比較例1〜3では研磨用回転部材側の剥離強度が0.8±0.1kg/cmの両面テープを用いて作成した。ここでの剥離強度は、日本工業規格(JIS Z0237)に準拠し、A&D社製のテンシロンを用いてSUS(ステンレス)に対する180°剥離強度として測定した。
[物性評価]
上述のようにして得られた各実施例及び比較例の研磨パッドについて、下記のとおりに物性を測定し、品質を評価した。それらの結果を表1に併せて示す。
(厚さ)
日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、次のとおりに研磨パッドの厚さを測定した。まず、研磨パッドを10cm×10cm角に切り抜いて得た試料片3枚を用意し、各試料片毎に、厚さ測定器の所定位置にセットした。その後、480g/cm2の荷重をかけた加圧面を試料片の表面に載せ、5秒経過後に厚さを測定した。その際、1枚の試料片につき、5箇所の厚さを測定し、相加平均を算出し、さらに3枚の試料片の相加平均を求めて研磨パッドの厚さとした。
(密度)
日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、次のとおりに研磨パッドの密度を測定した。すなわち、厚さの測定で用いたものと同様の試料片を用意し、その質量を自動天秤で測定後、下記式により密度を算出し、3枚の試料片の相加平均を求めて研磨パッドの密度とした。
密度(g/cm3)=質量(g)/(10(cm)×10(cm)×試料片の厚さ(cm))
(圧縮率)
日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、次のとおりに研磨パッドの圧縮率を測定した。すなわち、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用い、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終圧力の下で5分間放置後の厚さt1を測定した。これらから、圧縮率を下記式により算出した。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とした。
圧縮率(%)=(t0−t1)/t0×100
(圧縮弾性率)
日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、次のとおりに研磨パッドの圧縮弾性率を測定した。すなわち、ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用い、無荷重状態から初荷重を30秒間かけた後の厚さt0を測定し、次に、厚さt0の状態から最終荷重を30秒間かけた後の厚さt1を測定した。次に、厚さt1の状態から全ての荷重を除き、5分間放置(無荷重状態とした)後、再び初荷重を30秒間かけた後の厚さt0’を測定した。これらから、圧縮弾性率を下記式により算出した。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とした。
圧縮弾性率(%)=100×(t0’−t1)/(t0−t1
(ショアA硬度)
日本工業規格(JIS K 7311)に準拠して、次のとおりに、研磨パッドのショアA硬度を測定した。すなわち、厚さ4.5mm以上の試験片(10cm×10cm)の表面にバネを介して押針(測定子)を押し付け、30秒後の押針の押し込み深さをA型硬度計により測定した。なお、研磨パッドが4.5mm未満の厚さである場合は、厚さが4.5mm以上になるまで研磨パッドを重ね、試験片とした。これを3回行って相加平均から研磨パッドのショアA硬度を求めた。
(曲げ剛性試験)
接着層を有しない研磨パッドについては曲げ剛性試験A(図1参照)を、接着層を有する研磨パッドについては曲げ剛性試験B(図2参照)を、それぞれ下記のとおり行い、研磨パッドの剛性を評価した。
<曲げ剛性試験A>
接着層を有しない研磨パッド、すなわち樹脂層1を対象とし、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状に切り出して試料を作成した。かかる試料の厚さは3mmとした。次いで、地上h0の高さ(=815mm)で当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分全体を水平な台2にテープで固定した。すなわち、試料の半分(長さ500mm×幅100mm)を台2上に固定した。試料の残りの半分(長さ500mm×幅100mm)に当たる非固定部は、台2の端部を起点とし、その剛性に応じて他端が下方に垂れるようにして湾曲した。当該非固定部の高さh1が一定となった段階(10秒経過後)でh1を測定した。得られた高さh0及びh1より、h0−h1を算出して曲げ剛性試験の値とした。
<曲げ剛性試験B>
樹脂層1と接着層3を有する研磨パッドを対象とし、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状に切り出して試料を作成した。かかる試料の厚さは3mmとした。次いで、地上h2の高さ(=815mm)で当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台2に接着層3を介して固定した。すなわち、試料の半分(長さ500mm×幅100mm)を台2上に固定した。試料の残りの半分(長さ500mm×幅100mm)に当たる非固定部は、台2の端部を起点とし、その剛性に応じて他端が下方に垂れるようにして湾曲した。当該非固定部の高さh3が一定となった段階(10秒経過後)でh3を測定した。得られた高さh2及びh3より、h2−h3を算出して曲げ剛性試験の値とした。
(剥離評価)
ドラム(サイズ:直径300mm及び幅200mm、材質:SUS304)の外周に、幅100mm、長さはドラムの外周長さに合わせて裁断した、実施例2,4,5及び比較例1〜3の研磨パッドを貼付し、10分間放置した後、継ぎ目の剥離状態を目視確認し下記の基準に基づいて評価した。
◎:剥離が全く見られない。
×:剥離が少しでも見られる。
(研磨評価)
実施例2と比較例2の研磨パッドを夫々研磨用回転部材である研磨ドラムに貼付し、シリコンウエハのエッジを同一の条件下で研磨した。研磨を行った後、光学計測機器(ZYGO社製「NewView」)を用いてエッジ部分を観察したところ、実施例2は比較例2よりも縁ダレが抑制されていることを確認できた。
本発明の研磨パッドは、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、半導体用シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板、サファイヤや窒化ガリウムを始めとする難削材等のエッジ部分の研磨に特に好適に用いられる。したがって、かかる用途に産業上の利用可能性がある。
1…樹脂層、2…台、3…接着層。

Claims (9)

  1. 不織布と樹脂とを含む樹脂層を有し、かつ、凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、
    前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、
    前記樹脂層が、下記式(1)で表される条件を満たす、研磨パッド。
    200(mm)≦h0−h1 (1)
    (ここで、前記h0−h1は、前記樹脂層を、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h0の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に固定し、前記他端の高さh1を測定する曲げ剛性試験に供して得られる。)
  2. 凸状に湾曲した面を有する研磨用回転部材の前記面に貼り付けて研磨を行うための研磨パッドであって、
    不織布と樹脂とを含む樹脂層と、当該樹脂層を前記研磨用回転部材に貼り付けるための粘着層とを有し、
    前記樹脂層のショアA硬度が、60°以上であり、
    前記研磨パッドが、下記式(2)で表される条件を満たす、研磨パッド。
    200(mm)≦h2−h3 (2)
    (ここで、前記h2−h3は、前記研磨パッドを、長さ方向に一端と他端とを有する長さ1000mm×幅100mmの帯状の試料とし、地上h2の高さで当該試料の前記一端から長さ500mm×幅100mmの面積に相当する部分を水平な台に前記粘着層を介して固定し、前記他端の高さh3を測定する曲げ剛性試験に供して得られる。)
  3. 前記粘着層が、厚さ0.02〜0.50mmの基材を有する、請求項2に記載の研磨パッド。
  4. 前記粘着層が、厚さ0.02〜0.20mmのポリエステル樹脂層からなる基材を有する、請求項2に記載の研磨パッド。
  5. 前記粘着層が、厚さ0.02mm〜0.5mmの不織布からなる基材を有する、請求項2に記載の研磨パッド。
  6. 前記粘着層が、厚さ0.01〜0.20mmの基材レス粘着層である、請求項2に記載の研磨パッド。
  7. 前記樹脂層の研磨面とは反対側の面が、溝部を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の研磨パッド。
  8. 前記溝部において、溝ピッチが2〜200mmであり、かつ、溝幅が0.5〜6.0mmであり、かつ、溝深さが0.01〜1.8mmである、請求項7に記載の研磨パッド。
  9. 前記樹脂層の圧縮率が、0.8〜9.0%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の研磨パッド。
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