以下、実施形態による緩衝器を、自動車等の車両に用いられる車両用緩衝器に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図5は、第1の実施形態を示している。図1において、緩衝器としての車両用緩衝器1は、コンベンショナルダンパであるシリンダ装置(以下、油圧緩衝器2という)と、リニアアクチュエータ(直動型アクチュエータ)である電動アクチュエータ(以下、電磁アクチュエータ21という)と、外殻部品であるコイル格納シェル19とを含んで構成されている。車両用緩衝器1は、懸架ばねであるコイルスプリング(以下、ばね3という)、図示しないアーム、リンク等と共に、サスペンション装置(アクティブサスペンション装置)を構成するものである。サスペンション装置は、車両の相対移動する2部材間である車体と車輪(いずれも図示せず)との間に取付けられ、これら車体と車輪との相対移動(より具体的には、上下方向の相対変位)を許容しつつ車体の振動を抑制するものである。
油圧緩衝器2は、ばね3と並列に車体と車輪(車軸)との間に設けられる。油圧緩衝器2は、車輪の上下動を減衰させることにより、車両(車体)の振動を緩衝するものである。第1の実施形態の油圧緩衝器2は、複筒式の油圧緩衝器として構成されている。即ち、油圧緩衝器2は、シリンダパイプとしての外筒4および内筒6と、ピストンロッド7と、ピストン8と、ロッドガイド11と、ボトムバルブ13と、車体側取付部としてのアッパーマウント18と、車輪側取付部(車軸側取付部)としての取付アイ17とを含んで構成されている。
アウターシェルとも呼ばれる外筒4は、油圧緩衝器2の外殻をなすもので、軸方向(図1の上下方向)に延びる円筒体として形成されている。外筒4は、内筒6の外周側を覆っている。外筒4は、その一端側(図1の下端側)がボトムキャップ5により閉塞された閉塞端となっている。外筒4の他端側(図1の上端側)は、開口端となっている。外筒4の開口端側と内筒6との間には、ロッドガイド11が設けられている。また、外筒4の開口端側でロッドガイド11よりも他端側(上端側)には、ピストンロッド7との間を液密、気密に封止(シール)するシール部材12が設けられている。
さらに、外筒4の開口端には、シール部材12よりも他端側に位置して電磁アクチュエータ21の可動部27(永久磁石33および電極34,34)が取付けられている。即ち、電磁アクチュエータ21の可動部27(永久磁石33および電極34,34)は、シリンダパイプとしての外筒4および内筒6側に固定されており、これらと共に相対変位する。この場合、外筒4の開口端には、可動部27の支持筒28が例えば螺合により取付けられている。そして、支持筒28は、外筒4の開口端の内側に挿入(嵌合)されたスペーサ(筒体)20を介してシール部材12をロッドガイド11に押付けている。即ち、シール部材12は、スペーサ20とロッドガイド11とにより軸方向に挟持されている。
外筒4の内部には、外筒4と同軸に内筒6が設けられている。インナーパイプとも呼ばれる内筒6は、外筒4と共にシリンダパイプを構成している。即ち、内筒6は、外筒4と同様に、軸方向に延びる円筒体として形成されている。内筒6の内部には、ピストンロッド7が挿入されている。内筒6の一端側(下端側)は、ボトムバルブ13に嵌合して取付けられている。内筒6の他端側(上端側)は、ロッドガイド11に嵌合して取付けられている。外筒4内および内筒6内には作動流体としての作動液(図示せず)が封入されている。なお、作動液としてはオイル(作動油)に限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
外筒4と内筒6との間には、リザーバとなる環状のリザーバ室Aが形成されている。リザーバ室A内には、作動液(油液)と共に作動気体となるガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。リザーバ室A内のガスは、ピストンロッド7の縮小時(縮み行程)にピストンロッド7の進入体積分を補償すべく圧縮される。
ピストンロッド7は、一端側(下端側)が内筒6内に挿入され、他端側(上端側)がロッド側油室Bを通って内筒6および外筒4の外部へ延出されている。ピストンロッド7の一端側(下端側)は、ピストン8に連結(固定)されている。一方、ピストンロッド7の他端側(上端側)は、ロッドガイド11を介して内筒6および外筒4の外部に突出すると共に、電磁アクチュエータ21内(即ち、固定部22側のコイル26内、および、可動部27側の永久磁石33および電極34,34内)を通過してアッパーマウント18に接続(固定)されている。
ピストン8は、ピストンロッド7の一端側(下端側)に設けられ、内筒6内に摺動可能に嵌装されている。ピストン8は、内筒6内を一側(下側)となるボトム側油室Cと他側(上側)となるロッド側油室Bとに仕切るものである。この場合、ピストン8には、ボトム側油室Cとロッド側油室Bとを連通可能とする油路8A,8Bが形成されている。
ピストン8の一端面側(下面側)には、伸長側のディスクバルブ9が設けられている。伸長側のディスクバルブ9は、ピストンロッド7が伸長方向に摺動変位するときに油路8Aを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生させる。一方、ピストン8の他端面側(上面側)には、縮小側のディスクバルブ10が設けられている。縮小側のディスクバルブ10は、ピストンロッド7が縮小方向に摺動変位するときに油路8Bを流通する油液に抵抗力を与えて所定の減衰力を発生させる。
ロッドガイド11は、外筒4の開口端側に嵌合されると共に、内筒6の開口端側にも固定して設けられている。これにより、ロッドガイド11は、内筒6の開口端側を外筒4と同軸となるように位置決めしている。ロッドガイド11は、その内周側でピストンロッド7を軸方向に摺動可能に案内(ガイド)するものである。
ピストンシールとも呼ばれるシール部材12は、円環状に形成され、スペーサ20とロッドガイド11との間に取り付けられている。シール部材12は、例えば金属製リングにゴム等の弾性材料を焼き付けることによって形成されている。シール部材12は、その中心にピストンロッド7が挿通されると共に、その内周がピストンロッド7の外周側に摺接している。これにより、シール部材12は、ピストンロッド7との間をシールしている。
ボトムバルブ13は、内筒6の一端側(下端側)に設けられている。ボトムバルブ13は、ボトム側油室Cとリザーバ室Aとを連通・遮断するものである。このために、ボトムバルブ13は、バルブボディ14と、ディスクバルブ15と、逆止弁16とを含んで構成されている。バルブボディ14は、ボトムキャップ5と内筒6との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを仕切るものである。この場合、バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能とする油路14A,14Bが形成されている。
バルブボディ14の一端面側(下面側)には、縮小側のディスクバルブ15が設けられている。縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド7の縮小行程でピストン8が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときのボトム側油室C内の圧力を、油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。
バルブボディ14の他端面側(上面側)には、伸び側の逆止弁16が設けられている。伸び側の逆止弁16は、ピストンロッド7の伸長行程でピストン8が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側油室Cに向けて油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止する。
取付アイ17は、外筒4の一端側の開口を閉塞するボトムキャップ5に固定されている。取付アイ17は、車輪側取付部を構成しており、油圧緩衝器2の外筒4の一端側を車両のばね下部材となる車輪側に取付けるものである。この場合、外筒4の他端側開口には支持筒28を介して電磁アクチュエータ21の永久磁石33が取付けられているため、取付アイ17は、電磁アクチュエータ21の永久磁石33(および電極34,34)を車輪側に取付けるものでもある。即ち、取付アイ17は、油圧緩衝器2のシリンダパイプ(外筒4、内筒6)および電磁アクチュエータ21の永久磁石33(および電極34,34)を車輪側に取付けるものである。
アッパーマウント18は、ピストンロッド7の他端部(上端部)に取り付けられている。アッパーマウント18は、車体側取付部を構成しており、油圧緩衝器2のピストンロッド7の他端側を車両のばね上部材となる車体側に取付けるものである。この場合、アッパーマウント18には電磁アクチュエータ21のコイル26も取り付けられているため、アッパーマウント18は、電磁アクチュエータ21のコイル26を車体側に取付けるものでもある。即ち、アッパーマウント18は、油圧緩衝器2のピストンロッド7および電磁アクチュエータ21のコイル26を車体側に取付けるものである。アッパーマウント18は、段付筒状に形成され、スプリングポストとも呼ばれるばね受け18Aが取付けられている。ばね受け18Aは、コイル格納シェル19のばね受け19Cとの間でばね3を支持している。
コイル格納シェル19は、油圧緩衝器2の外周側、即ち、外筒4の外周側に位置して、外筒4に固定されている。コイル格納シェル19は、シリンダパイプ(外筒4、内筒6)の外周側に設けられるアウタパイプを構成している。コイル格納シェル19は、円筒状の筒部19Aと、この筒部19Aの一端側(下端側)に設けられ全周にわたって径方向内側に突出する内向鍔部19Bとを備えている。筒部19Aの上端側にはばね受け19Cが設けられており、アッパーマウント18のばね受け18Aとの間でばね3を挟持している。
内向鍔部19Bは、外筒4の中間部に固定(固着)されている。これにより、コイル格納シェル19は、油圧緩衝器2のシリンダパイプ(外筒4、内筒6)および電磁アクチュエータ21の永久磁石33(および電極34,34)と共に、車輪側に取付けられている。コイル格納シェル19の筒部19Aの内周面と外筒4の外周面との間には、油圧緩衝器2の縮小(ピストンロッド7の縮み行程)に伴って、電磁アクチュエータ21のコイル26がコイルガイド25およびコイルカバー23と共に入り込む。
上述のように、油圧緩衝器2は、車体側取付部となるアッパーマウント18と、車輪側取付部となる取付アイ17と、減衰機構であるピストン8と、アッパーマウント18と取付アイ17とのうちの一方の取付部となるアッパーマウント18とピストン8とに繋がれたピストンロッド7と、ピストンロッド7の一部とピストン8とが内部に包含されたシリンダパイプとしての外筒4および内筒6とを備えている。そして、シリンダパイプの外周側、即ち、外筒4の外周側には、この外筒4に固定されたアウタパイプとしてのコイル格納シェル19が設けられている。
そして、油圧緩衝器2を含む車両用緩衝器1は、その上部となるアッパーマウント18がばね上側となる車体側に取付けられ、取付アイ17がばね下側となる車輪側(車軸側)に取付けられる。油圧緩衝器2は、車体に加わる上下の振動に伴って伸縮運動を繰り返す。実施形態では、車両用緩衝器1の伸縮運動を能動制御(アクティブ制御)するための出力装置(駆動装置)として、電磁アクチュエータ21が油圧緩衝器2に取付けられている。即ち、実施形態では、車両用緩衝器1の伸縮運動を能動制御するための出力装置として電磁アクチュエータ21を利用している。
電磁アクチュエータ21は、油圧緩衝器2と共に、車体と車輪との間にばね3と並列に設けられている。電磁アクチュエータ21は、車体側に配置される固定部22と、車輪側に配置され固定部22に対して軸方向の相対変位が可能な可動部27とを含んで構成されている。そして、電磁アクチュエータ21は、これら固定部22と可動部27とによりリニアモータ(直動型電動アクチュエータ)を構成している。
この場合、電磁アクチュエータ21は、固定部22のコイル26と可動部27の永久磁石33との間に作用する電磁力(引力、斥力)によって、ピストンロッド7に沿った方向である軸方向の一側(図1中の下側)または他側(図1中の上側)に向けて制御力を発生させる。即ち、電磁アクチュエータ21は、コイル26と、磁石としての永久磁石33と、電極34,34とを含んで構成されている。そして、コイル26等により構成された固定部22は、車体側となるアッパーマウント18に取付けられている。一方、永久磁石33、電極34,34等により構成された可動部27は、車輪側となる外筒4に取付けられている。
次に、電磁アクチュエータ21の固定部22について説明する。固定部22は、油圧緩衝器2のピストンロッド7と共に、車体側となるアッパーマウント18に取付けられている。固定部22は、コイルカバー23、蓋部材24、コイルガイド25、コイル26等を備えている。
コイルカバー23は、電磁アクチュエータ21の固定部22の外殻をなすもので、軸方向(上下方向)に延びる円筒体として形成されている。コイルカバー23は、コイル26の外周側を覆っている。即ち、コイルカバー23の内周側には、コイル26が取付けられている。コイルカバー23は、外部からの粉塵を防ぐ役割を有している。この場合、コイルカバー23は、例えば、透磁性(透磁率)の高い素材を用いることにより、コイル26の磁界の発散の抑制、磁力の強化、磁力漏洩による磁性粉塵の付着の抑制を図ることが好ましい。
コイルカバー23の一端側(下端側)には、コイルガイド25が取付けられている。コイルカバー23の他端側(上端側)は、蓋部材24を介してアッパーマウント18に固定されている。この場合、蓋部材24は、有蓋筒状に形成され、コイルカバー23が外側に嵌合(固定)された筒部24Aと、アッパーマウント18に固定された蓋部24Bとを有している。これにより、コイル26は、コイルカバー23および蓋部材24を介してアッパーマウント18に固定されている。
コイルガイド25は、コイル26よりも一端側(下端側)に位置してコイルカバー23の開口端に嵌合(固定)されている。コイルガイド25は、全体として筒状に形成されており、その内周側には、低摩擦材製の摺動部材25Aが設けられている。摺動部材25Aの内周面(案内面)は、油圧緩衝器2の外筒4の外周面と摺接する。コイルガイド25(摺動部材25A)は、油圧緩衝器2が伸長、縮小するときに、コイル26が外筒4の軸方向に沿って相対変位するように案内(ガイド)する。これにより、コイル26は、外筒4と同心軸上に固定された永久磁石33に対して軸方向に相対変位する。
即ち、コイルガイド25は、電磁アクチュエータ21に発生する電磁力(軸方向力)を滑らかに直線運動に案内するために用いられる。コイルガイド25(摺動部材25A)の内周面、および、これと接触(摺接)する外筒4の外周面は、摩耗を抑制するために滑らかであることが望ましい。また、コイルガイド25(摺動部材25A)の材料としては、ポリプロピレンに代表される摺動性樹脂、油を含浸させた軸受鋼等、幅広い材料を用いることができる。勿論、コイルガイド25を、直動案内軸受により構成してもよい。
コイル26は、コイルカバー23の内周側に設けられている。コイル26は、一本の導線26Aを軸方向に螺旋状に巻回してなる一層の巻線コイルとして構成されている。コイル26は、永久磁石33の外径寸法および油圧緩衝器2の外筒4の外径寸法よりも大きい内径寸法を有している。また、コイル26の軸方向長は、永久磁石33の軸方向長よりも長くなっている。例えば、コイル26の軸方向長をLとし、永久磁石33の軸方向長をMとし、油圧緩衝器2のストローク長(最大伸長時の寸法−最大縮小時の寸法)をNとした場合、下記の数1式の関係に設定することができる。
図4に示すように、コイル26を構成する導線26A、即ち、螺旋状に巻かれた導線26Aは、導電材26A1を絶縁材26A2で覆うことにより構成されている。このように、導線26Aは、絶縁材26A2に覆われているため、隣り合う導線26A同士が導通することはない。ただし、コイル26の内周面においては、絶縁材26A2による絶縁被膜を除去し、導電材26A1を剥き出しにしている。コイル26への通電は、通電した電極34(の突起部34B)が剥き出しの導電材26A1に接触することにより行うことができる。
ここで、コイル26を、一層の巻線コイルで構成した場合、製造が容易であるが、所望の磁力を得るには高い電流が必要になる。即ち、コイル26に印加する電圧も高く設定しなければならず、これに比例して発生する電気抵抗による消耗も大きくなる。これに対して、電気抵抗の低減には、導線26Aの断面積を大きく取る方策が有効である。このため、例えば、直径寸法の大きい大径の導線を用いることにより、導線の断面積を大きくすることが考えられる。しかし、この場合は、コイルの軸方向寸法も大きくなり、結果として、軸方向長さ当たりのコイルの巻線密度が低下するおそれがある。これは、コイルの発生する磁力の低下に繋がる可能性がある。
そこで、第1の実施形態では、図4に示すように、コイル26は、通電材として扁平導線材料からなる扁平導線26Aが用いられており、この通電材(導線26A)の導電層である導電材26A1は、絶縁素材である絶縁材26A2で覆われている。そして、通電材(導線26A)同士、即ち、絶縁材26A2同士は、接着または固着されている。即ち、第1の実施形態では、扁平導線26Aを螺旋状に巻くことによりコイル26を構成している。これにより、軸方向長さ当たりの巻線密度を保ちながら、径方向面積を拡大することで、電気抵抗を低減することができる。また、この場合、隣り合う扁平導線26A同士が平面で接触するため、接着強度が高まり、コイル26の形状維持が容易になる。
扁平導線26Aの接着または固着は、例えば、扁平導線26Aの絶縁層外面を感熱作用のある固形接着剤材料で被膜し、これをコイル巻きした後に熱することにより行うことができる。なお、導線の接着または固着は、上記に限らず、例えば、導線の周囲に樹脂材料を成形することにより行ってもよい。また、液状または半液状の接着剤を用いてコイルカバー23等の外殻部品に導線を接着または固着してもよい。
次に、電磁アクチュエータ21の可動部27について説明する。可動部27は、車輪側となる外筒4の上端側に取付けられている。即ち、可動部27は、油圧緩衝器2の外筒4および内筒6と共に、車輪側に取付けられる。可動部27は、支持筒28、ヨーク32、永久磁石33、一対の電極34,34等を備えている。
支持筒28は、外筒4の上端側の開口に固定されている。支持筒28の内側には、ピストンロッド7が挿通されている。即ち、支持筒28は、外筒4と共に、ピストンロッド7に対して軸方向の相対変位が可能になっている。支持筒28は、外筒4の上端側に例えば螺合により取付けられた取付部28Aと、永久磁石33および電極34,34を支持する支持筒部28Bとを含んで構成されている。支持筒部28Bの外周側には、ヨーク32を介して永久磁石33が取付けられている。
また、支持筒部28Bには、永久磁石33の軸方向の一側(下側)と他側(上側)とに位置してそれぞれ電極34,34が取付けられている。電極34,34は、支持筒部28Bに嵌合された例えば絶縁材製の電極支持体29を介して支持筒28に取付けられている。また、支持筒部28Bの先端側(上端側)には、ナット30が螺合している。支持筒部28Bの外周側に配置されたヨーク32、永久磁石33、電極34,34、電極支持体29は、ワッシャ31,31を介してナット30と支持筒28の取付部28Aとの間に挟持されている。
ヨーク32は、円筒状に形成され、支持筒28(支持筒部28B)の外周側に嵌合されている。ヨーク32の外周側には、永久磁石33が嵌合されている。ヨーク32は、永久磁石33から発せられる磁界の発散を防ぎ、磁力を強化するものである。この場合、ヨーク32は、透磁性(透磁率)が高い材料により形成することが好ましい。
磁石としての永久磁石33は、ヨーク32を介して支持筒28(支持筒部28B)に取付けられている。永久磁石33は、磁界(磁場)を生じさせる。永久磁石33とコイル26との間には、コイル26の磁極に応じて引力または斥力が発生する。即ち、永久磁石33は、コイル26に対向して配置されている。実施形態では、円筒状の永久磁石33を用いている。この場合、図3に示すように、永久磁石33は、内周側がS極、外周側がN極の磁極を持つものとしている。なお、内周側がN極、外周側がS極の永久磁石を用いてもよい。コイル26への通電に伴って、コイル26に磁極が発生すると、コイル26と永久磁石33との間には、引用または斥力が発生する。
一対の電極34,34は、コイル26の内周面と接触することで、コイル26を通電させる。電極34,34は、例えば、電磁アクチュエータ21(の制御力)を制御する制御装置(サスペンション制御装置)を介して車両の電源(バッテリ)に接続されている。これにより、固定部22側のコイル26には、可動部27側の電極34,34を通じて電力が供給される。車体側の制御装置と可動部27(電極34,34)との間は、可動部27の相対変位を許容しつつ可動部27に電力を供給できるように電気的に接続する。
図3に示すように、電極34,34は、コイル26の内周面に対して、軸方向に離間した2個所位置で接触している。即ち、上下の2個所でコイル26の内周面に電極34,34が接触することで、螺旋状に巻かれたコイル26の導線26Aの一部範囲に通電させることができる。即ち、2個の電極34,34は、コイル26のうち電極34,34の間に挟まれた部位に通電させることができる。なお、コイル26は、導線26Aが剥き出しとなっている内周面を除いては絶縁材26A2で覆われているため、電極34,34で挟まれた経路以外の導通回路は生じない。
ここで、車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)の伸長、縮小に伴って、電極34とコイル26とは相対運動する。このとき、電極34とコイル26との相対運動に拘わらず、電極34とコイル26との接触を確実なものとするためには、電極34の一部が常にコイル26に押付けられる構造が好ましい。そこで、実施形態では、電極34は、板金の薄板部材によって形成され、一部が部材の弾性変形によるばねの性質を持つ構造としている。即ち、図5に示すように、電極34は、変形可能なばねの性質を持った突起部34Bを有している。そして、突起部34Bは、2個所以上の複数個所に設けられている。即ち、第1の実施形態では、電極34は、円環状に形成されたリング部34Aと、このリング部34Aの外周側に設けられ径方向外側に向けて突出する複数個(16個)の突起部34Bとを備えている。複数の突起部34Bは、リング部34Aの全周にわたってそれぞれ等間隔に離間して設けられている。突起部34Bは、リング部34Aの外周側から軸方向の一側(または他側)に向けて折り曲げられている。これと共に、突起部34Bの途中は、径方向の内側に向けて折り曲げられている(折り返されている)。この突起部34Bの途中の折り曲げられた部分が、コイル26の内周面に接触する接触部となっている。
突起34Bを自由状態としたときに、突起部34Bの接触部を結ぶ仮想円の外径寸法は、コイル26の内径寸法よりも大きい。これにより、電極34をコイル26内に配置したときに、突起部34Bには、突起部34Bの途中に設けられた接触部をコイル26の内周面に押付ける方向の弾性力が付与される。なお、図示は省略するが、突起部を全体として連続したリング状に形成することにより、突起部を電極の全周に設けるようにしてもよい。また、突起部は、例えば、コイルばねや弾性力のある樹脂を用いて、ばねの性質を与えるようにしてもよい。
さらに、コイル26に用いられる導線26Aは、導電層である導電材26A1同士の間に絶縁層となる絶縁材26A2が挟まれるため、電極34とコイル26とがいずれの位置関係にあっても、電極34(の少なくとも一部)がコイル26の導電材26A1に常に接触するようにする必要がある。この点、電極34の外周上に複数の突起部34Bを設けているため、一部の突起部34B(の接触部)がコイル26の絶縁材26A2との接触位置にあっても、他のいずれかの突起部34B(の接触部)が導電材26A1と接触することにより、コイル26への通電を確実に行うことができる。
なお、電極34の突起部34Bは、少なくとも2個所に設ければよいが、外部からの偶発的な衝撃または振動等の外乱を受けることを考慮すると、電極34の周方向にわたって複数個(3個以上)設けることが好ましい。また、突起部を円環状に形成する(即ち、全周にわたる突起部を設ける)ことも好ましい。これにより、より確実な通電を可能とすることができる。また、図5に示した電極34の形状は複雑ながらも、板金加工(プレス加工)による成形が可能である。即ち、電極34は、ブレスによる打ち抜き、折り曲げ、深絞り、エッチング、または、これらの組み合わせにより、容易かつ安価に製造することが可能である。
いずれにしても、上述のように、電磁アクチュエータ21は、一方の取付部側となるアッパーマウント18側に固定されるコイル26と、このコイル26の内周側にこのコイル26と対向して設けられ、シリンダパイプ側(外筒4、内筒6側)に固定される永久磁石33、および、この永久磁石33の一側と他側に設けられ、コイル26と接触する少なくとも2つの電極34,34とを有している。そして、電磁アクチュエータ21と油圧緩衝器2とを含んで構成される車両用緩衝器1は、「永久磁石33を有するシリンダパイプ側部材(即ち、外筒4,内筒6、取付アイ17、コイル格納シェル19)」と「コイル26を有する一方の取付部側部材(即ち、ピストンロッド7、アッパーマウント18)」とが、軸方向に相対変位する。
次に、電磁アクチュエータ21の動作原理について、図3を参照しつつ説明する。
コイル26に接触する2個所の電極34,34間に電圧を印加すると、コイル26の一部範囲(即ち、電極34,34に挟まれた範囲)の限られた導通回路に導通させることができる。コイル26は、一本の導線26Aを軸方向に螺旋状に巻回することにより構成されているため、通電に伴って電流または電圧に応じた強さの磁界が発生する。ここで、図3では、説明を簡素にするために、コイル26の上部側に発生する磁極をN極とし、コイル26の下部側に発生する磁極をS極とする。
図3に示すように、コイル26への通電に基づいてコイル26に磁界が発生すると、コイル26の上部側では、コイル26のN極と永久磁石33のN極との間で斥力が発生する。コイル26の下部側では、コイル26のS極と永久磁石33のN極との間で引力が発生する。これにより、油圧緩衝器2の外筒4に固定された永久磁石33から見て、コイル26の上部側および下部側の両者で、コイル26を上方へ引き上げる軸方向の力が、電磁アクチュエータ21の力(電磁力)として出力される。
この軸方向の力の大きさは、コイル26の磁界と永久磁石33の磁極の間に作用する引力・斥力に比例して増加し、さらに、コイル26の磁界は、通電する電流の大きさに比例して増加する。従って、コイル26に通電する電流または印加電圧を適宜制御することにより、所望の軸方向の力を電磁アクチュエータ21から出力させることができる。
実施形態では、このようにして発生する軸方向の力(電磁力)を電磁アクチュエータ21から出力される制御荷重として用いる。この軸方向の力は、コイル26に供給する電流または印加電圧に応じて調整可能であるから、電磁アクチュエータ21の出力荷重を制御することは容易である。そして、電磁アクチュエータ21の出力荷重によって油圧緩衝器2の伸長運動、伸縮運動を促進または抑制することができる。これにより、油圧緩衝器2を含む車両用緩衝器1に加わる振動の程度を能動的かつ効果的に制御することが可能となる。
なお、コイル26の通電範囲は2個所の電極34,34の位置に応じて決まるものであるが、これらの電極34,34の間の距離は一定であり、電磁アクチュエータ21のストローク位置に依拠しない。即ち、電極34,34の間の距離は、電磁アクチュエータ21のストローク位置に拘わらず常に一定である。このため、実施形態では、一般のソレノイド型アクチュエータに見られるようなストローク端部の出力低下、一般のリニアモータ型アクチュエータに見られるようなコギング等の出力変動が生じにくい。これにより、長尺にわたる相対運動が可能な構成でありながら、その出力荷重が電磁アクチュエータ21の相対位置に応じて変動することを抑制できる。このため、簡単な制御手段によって出力荷重を制御することができる。勿論、永久磁石33とコイル26との位置関係を検出するための位置検出センサといった部品(位置検出手段)も必要としない。
また、ここでは、説明の便宜上、コイル26に発生する磁極および永久磁石33の形状等を一義的に示したが、所望の電磁作用を満たすことができるのであれば、その形式はこれに限らない。例えば、コイル26に通電する電流の正負を変えれば、コイル26の磁極を逆転させることが可能である。永久磁石33についても、形状および形式は前記のもの(例えば、円筒形状に一体形成されたもの)に限らず、例えば、複数の瓦状磁石を張り合わせることにより円筒形状に形成してもよい。また、使用する磁石材料においても、希土類金属を磁化した永久磁石33に限らず、例えば、電磁石を用いてもよい。
次に、電磁アクチュエータ21の制御荷重について説明する。
上述したように、油圧緩衝器2は、シリンダオイルまたはダンパオイルとも呼ばれる作動油を内部に充填している。このため、油圧緩衝器2には、作動油の漏れを防ぐために、ピストンシールとも呼ばれるシール部材12が設けられている。シール部材12は、ピストンロッド7との摺接による摩擦に基づいて、電磁アクチュエータ21の制御力を妨げる抵抗力を生む。これに対して、電磁アクチュエータ21は、その消費電力を低減させるためには、より小型であることが望ましい。
ここで、シール部材12とピストンロッド7との摩擦は、具体的には20N程度である。このため、電磁アクチュエータ21は、小型であっても、少なくとも20Nの荷重能力のあるものを用いることで、電磁アクチュエータ21による能動制御を行うことができる。そこで、実施形態では、コイル26と永久磁石33との間には、少なくとも20Nの制御荷重(軸方向の力)が能動的に出力可能となっている。なお、電磁アクチュエータ21の出力範囲または体格寸法は、上記に限るものではなく、例えば、より出力能力の高い大型の電磁アクチュエータを用いてもよい。この場合には、より効果的に能動制御を行うことができる。
また、従来の電動アクチュエータを利用した緩衝器は、動力源となるモータ等から所望の力を得るために、油圧機構やねじ機構といった間接部材が組込まれているものが多い。しかし、このような構成の場合、間接部材の駆動に伴う摩擦、減衰、慣性が、所望の制御信号に対する機構の応答遅れの原因となる可能性がある。このため、従来の技術によれば、車体に加わる路面振動に対して、迅速かつ適切な制御を行うことができない可能性がある。
これに対して、実施形態では、制御力を与える電磁アクチュエータ21から車体側取付部(アッパーマウント18)または車輪側取付部(取付アイ17)に至るまでの荷重伝達の経路が全て剛な部材で繋がれている。このため、実施形態の車両用緩衝器1は、電磁アクチュエータ21から出力される制御力の応答性を遅らせる要素を含まない。さらに、動力源である電磁アクチュエータ21そのものも、制御信号に対して良好な応答性を示す。このため、制御信号の発生から制御力の発現までの遅れを0.1秒以内に抑えることが可能である。これと共に、繰り返し制御力を高周波で与えることも可能であり、周波数にして10Hz以上の範囲にわたる車体振動を低減することもできる。即ち、実施形態では、コイル26と永久磁石33との間に出力される制御荷重(軸方向の力)は、0.1秒以下の応答速度、または、10Hz以上の周波数にて出力が可能となっている。これにより、良好な応答速度をもって振動を抑制することができる。
なお、実施形態では、車両用緩衝器1は、サスペンションコイルであるばね3と一体化(ユニット化)したストラット形式の緩衝器としている。しかし、緩衝器の形式は、これに限るものではない。例えば、ばね3は、車両用緩衝器1に必ずしも付帯する必要はなく、車両用緩衝器1の外部に別途設けてもよい。また、ばね要素なしの単体の緩衝器(例えば、ばね3を省略したサスペンション装置)として構成してもよい。この場合も、同様の能動制御の効果を得ることができる。
いずれにしても、実施形態の車両用緩衝器1は、従来利用されてきた大型のアクチュエータ(例えば、回転型モータ、直動型モータ)、運動変換機構(例えば、ボールネジ、ラックピニオン)、または、油圧要素(例えば、油圧アクチュエータ、油圧回路)を備えた緩衝器に代わるものである。即ち、実施形態の車両用緩衝器1は、長尺範囲にわたって伸縮可能な電磁アクチュエータ21を用いて直接的にピストン8に制御力を与える構造としている。これに加えて、電磁アクチュエータ21の構造を工夫することにより、簡素かつ位置フィードバックを必要としない動力構成としている。この場合、実施形態では、電磁アクチュエータ21は、利用する磁石(永久磁石33)が少なくとも一つあればよく、かつ、ストローク位置を把握するためのセンサ(位置検出センサ)を必要としない。このため、従来技術と比較して、低コストの部品構成が可能となっている。さらに、コイル26に用いる導線断面積を広く取る工夫を施している。このため、通電に伴う電気抵抗を低減することができ、コイル26の発熱およびこれに伴う消費電力の増大を抑制することができる。
このように、実施形態の車両用緩衝器1は、下記の(A)−(F)の少なくとも何れかの利点を有している。
(A)簡易かつ安価で小型の車両用緩衝器1(アクティブサスペンション装置)を提供することができる。これにより、車両用緩衝器1の搭載スペースの低減を図ることができる。
(B)電磁アクチュエータ21のストローク位置による出力荷重の変化を極微小の範囲に収めることができる。しかも、位置センサといった構成部品も位置フィードバック制御も必要としない。これにより、コストの低減を図ることができる。
(C)電磁アクチュエータ21を小型に構成できるため、車両用緩衝器1全体としても、従来のサスペンション構造またはダンパ(ショックアブゾーバ)構造と同等のサイズに収めることができる。
(D)車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)の伸縮運動に伴う振動または衝撃が、電磁アクチュエータ21本体に直接的に加わらないようにできる。これにより、電磁アクチュエータ21の損傷防止のための保護部材が必要なくなり、この面からも、簡素な構成とすることが可能となる。
(E)電磁アクチュエータ21のコイル26の電気抵抗を少なくできるため、消費電力を低減できる。このため、車両の燃料消費を抑制することができ、省エネルギ化を図ることができる。また、コイル26の導線26Aの発熱が少なくなるため、温度上昇に伴う電気抵抗の増大を抑制できる。これにより、この面からも、消費電力の抑制を図ることができる。
(F)車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)の伸縮運動の制御に当たって、電磁アクチュエータ21の動力を直接的に制御力として利用可能である。このため、動力を制御荷重に変換するための中間部材が必要なくなる。即ち、制御力を減衰させる中間部材が必要なくなり、良好な応答速度で制御が可能になる。これにより、高周波域にまで至る車両の路面入力振動に対しても、良好な振動抑制効果を得ることができる。
第1の実施形態による車両用緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
車両用緩衝器1は、例えば、アッパーマウント18が自動車の車体側に取付けられると共に、取付アイ17が車輪側(車軸側)に取付けられる。自動車の走行時の振動に伴って、油圧緩衝器2のピストンロッド7が外筒4および内筒6に対して軸方向に伸長、縮小すると、ピストン8のディスクバルブ9,10によって伸長側、縮小側の減衰力が発生し、車両の上,下方向の振動を減衰するように緩衝することができる。また、これと共に、電磁アクチュエータ21のコイル26には、サスペンション制御装置から電極34,34を介して電力が供給される。これにより、コイル26には、供給される電流または電圧に応じた強さの磁界が発生し、コイル26と永久磁石33との間の引力と斥力とに基づく制御力が電磁アクチュエータ21から出力される。このとき、電磁アクチュエータ21から能動的に制御力を出力することにより、車両の乗り心地や操縦安定性を向上させることができる。
このような第1の実施形態によれば、簡易かつ安価で小型の車両用緩衝器1を提供することができる。即ち、コイル26の軸方向長が永久磁石33の軸方向長よりも長いため、これらコイル26と永久磁石33とにより構成される電磁アクチュエータ21を小型に構成できる。これにより、車両用緩衝器1が大型化することを抑制できる。また、車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)のストローク位置による電磁アクチュエータ21の出力荷重の変化を抑制することもできる。さらに、位置センサによる位置フィードバック制御を必要としないため、簡素に構成することができる。また、車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)の伸縮運動に伴う振動または衝撃が、電磁アクチュエータ21に直接加わることも抑制できる。これにより、電磁アクチュエータ21の損傷防止のための保護部材が必要なくなり、この面からも簡素に構成することができる。また、車両用緩衝器1(油圧緩衝器2)の伸縮運動を制御するときに電磁アクチュエータ21の動力を直接制御力として利用することができる。即ち、制御力を減衰させる中間部材を必要としないため、応答速度を向上することができる。これにより、高周波域にまで至る車両の路面入力に基づく振動に対しても、この振動を抑制する制御力を出力させることができ、振動抑制効果を向上することができる。
第1の実施形態によれば、コイル26の通電材として扁平導線材料の導線、即ち、扁平導線26Aを用いているため、通電材(導線26A)の軸方向の巻線密度を高くしつつ径方向の断面積を大きくすることができる。即ち、「通電材(導線26A)の断面積の確保」と「コイル26の軸方向の巻線密度の確保」とを両立することができる。これにより、コイル26の電気抵抗を低減でき、かつ、磁力を増大できる。即ち、電磁アクチュエータ21に用いるコイル26の電気抵抗を低減することができ、消費電力を低減することができる。これに加えて、コイル26の発熱を低減することができ、温度上昇に伴って電気抵抗が増大することを抑制できる。このため、この面からも、消費電力を低減することができ、車両の燃料消費を抑制することができる。しかも、扁平導線26A同士を平面で接着または固着することで、コイル26の形状維持を容易に行うことができる(コイル26の形状が崩れることを抑制できる)。
第1の実施形態によれば、電極34の突起部34Bがコイル26と接触した状態で、電極34とコイル26とが相対変位(相対運動)する。このとき、突起部34Bはコイル26に対して弾性的に当接する(突起部34Bがコイル26に対して押付けられる)ため、電極34とコイル26との相対変位に拘わらず、電極34(突起部34B)とコイル26とを安定して接触させることができる。しかも、突起部34Bを複数個所(または電極の全周に設ける)ため、常に何れかの突起部34B(または突起部の一部)をコイル26の導電層(導電材26A1)に接触させることができる。これにより、電極34とコイル26との通電を確実に行うことができる。
第1の実施形態によれば、コイル26と永久磁石33との間で少なくとも20Nの制御荷重(軸方向の力)が能動的に出力されるため、コイル26と永久磁石33とにより構成される電磁アクチュエータ21から必要な制御力を出力することができる。即ち、シリンダパイプである外筒4とピストンロッド7との間には、外筒4および内筒6内のシリンダオイル(作動液)が外部に漏れないようにシール部材12が設けられている。そして、シール部材12とピストンロッド7と間には、これらの摩擦に基づいて、電磁アクチュエータ21の制御力に対する抵抗力が発生する。この抵抗力は、20N程度であるため、電磁アクチュエータ21から少なくとも20Nの制御荷重を出力できるようにすることにより、電磁アクチュエータ21により能動制御を行うことができる。
第1の実施形態によれば、コイル26と永久磁石33との間に出力される制御荷重は、0.1秒以下の応答速度、または、10Hz以上の周波数にて出力が可能であるため、良好な応答速度をもって振動抑制の制御を行うことができる。これにより、例えば、ばね下共振周波数を含む高周波域にまで至る路面入力振動に対しても、振動抑制効果を得ることができる。
次に、図6および図7は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、コイルの通電材が中心部から外周方向に向かって螺旋状に巻かれた構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態では、コイル41の導線41Aは、径方向に向かって複数列に跨って設けられている。即ち、第2の実施形態では、コイル41の巻線密度をより高めるために、図6に示す数順に複数列の導線41Aを径方向に螺旋状に巻回している。この場合、例えば、絶縁材に被膜された導線を巻き重ねることによりコイルを構成することができる。また、例えば、導通材を螺旋状に成形した一層の配線ユニットを、軸方向に複数個を積み重ねることで構成することもできる。第2の実施形態では、例えば、図7に示すように、2つの配線ユニット42,43を交互に積み重ねることにより、コイル41を構成している。
即ち、図7に示す配線ユニット42,43を軸方向に積み重ねることにより、螺旋状のコイルと同様の電気回路を構成することができる。この場合、コイル41の通電時には、螺旋状のコイルと同等の電磁効果を得ることができる。このような図7に示す配線ユニット42,43は、例えば、絶縁材を基材として、この基材の表裏に導電材料をプリントすることにより、容易に製造可能である。いずれにしても、第2の実施形態では、図6に示すように、コイル41は、通電材となる導線41Aが中心部から外周方向に向かって螺旋状に設けられた複数の電気回路層41A1,41A1を有しており、これら複数の電気回路層41A1,41A1は、軸方向に積層されている。より具体的には、図7に示す配線ユニット42,43を軸方向に積み重ねることにより、コイル41を構成している。
第2の実施形態は、上述の如きコイル41を用いて永久磁石33(図3等参照)との間に斥力、引力を発生させるもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、導線41Aを径方向に螺旋状に巻回してなる複数の電気回路層41A1,41A1を軸方向に積層することによりコイル41を構成している。このため、コイル41の巻線密度をより高めることができる。これにより、コイル41の磁力の増大を図ることができる。
次に、図8は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、油圧緩衝器を単筒式のものとし、シリンダパイプ、アウタパイプ、磁石および電極が車体側に取付けられ、ピストンロッドおよびコイルが車輪側(車軸側)に取付けられ、さらに、コイルの外周側に磁石および電極が配置される構成としたことにある。なお、第3の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
車両用緩衝器1は、コンベンショナルダンパである油圧緩衝器51と、リニアアクチュエータ(直動型アクチュエータ)である電磁アクチュエータ59と、外殻部品であるコイル格納シェル58とを含んで構成されている。第3の実施形態の油圧緩衝器51は、単筒式の油圧緩衝器として構成されている。即ち、油圧緩衝器51は、シリンダパイプとしての外筒52と、ピストンロッド7と、ピストン8と、ロッドガイド11と、フリーピストン57と、車体側取付部としてのアッパーマウント18と、車輪側取付部(車軸側取付部)としての取付アイ17とを含んで構成されている。
外筒52は、油圧緩衝器51の外殻をなすもので、軸方向(図8の上下方向)に延びる円筒体として形成されている。外筒52は、その一端側(図8の下端側)が開口端となっており、この開口端には、ロッドガイド11が取付けられている。また、外筒52の開口端側でロッドガイド11よりも一端側(上端側)には、ピストンロッド7との間を液密、気密に封止(シール)するシール部材12が設けられている。この場合、外筒52の開口端には、円筒状の支持筒53が取付けられており、この支持筒53の内側に、シール部材12、および、このシール部材12をロッドガイド11に向けて押付ける円筒状の抑え筒54が取付けられている。抑え筒54は、例えば、支持筒53の内側に螺合により取付けられている。一方、外筒52の他端側(図1の上端側)は、蓋部材55により閉塞された閉塞端となっている。蓋部材55は、アッパーマウント18に固定されている。
ピストンロッド7は、一端側(下端側)がロッド側油室Bを通って外筒52の外部へ延出しており、他端側(上端側)が外筒52内に挿入されている。ピストンロッド7の一端側(下端側)は、ロッドガイド11を介して外筒52の外部に突出すると共に、電磁アクチュエータ59内(即ち、可動部65側のコイル68内)を通過して取付アイ17に接続(固定)されている。この場合、ピストンロッド7の一端側(下端側)は、コイル68と共に、ブラケット56を介して取付アイ17に接続されている。一方、ピストンロッド7の他端側(上端側)は、ピストン8に連結(固定)されている。
フリーピストン57は、ピストン8と蓋部材55との間に位置して外筒52内に摺動可能に挿嵌されている。フリーピストン57は、外筒52との間で加圧ガスが封入されたガス室Dを画成している。フリーピストン57は、ピストンロッド7が外筒52内に進入、退出するのを許すもので、このときのピストンロッド7の進入体積に応じて軸方向に変位するものである。
取付アイ17は、ピストンロッド7の一端部(下端部)にブラケット56を介して取り付けられている。取付アイ17は、車輪側取付部を構成しており、油圧緩衝器51のピストンロッド7の一端側を車両のばね下部材となる車輪側に取付けるものである。この場合、取付アイ17には、ブラケット56等を介して電磁アクチュエータ59のコイル68も取り付けられているため、取付アイ17は、電磁アクチュエータ59のコイル68を車輪側に取付けるものでもある。即ち、取付アイ17は、油圧緩衝器51のピストンロッド7および電磁アクチュエータ59のコイル68を車輪側に取付けるものである。
アッパーマウント18には、外筒52の他端側(上端側)の開口を閉塞する蓋部材55が固定されている。アッパーマウント18は、車体側取付部を構成しており、油圧緩衝器51の外筒52の他端側を車両のばね上部材となる車体側に取付けるものである。この場合、アッパーマウント18は、コイル格納シェル58を介して電磁アクチュエータ59の永久磁石63(および電極64,64)も取り付けられているため、アッパーマウント18は、電磁アクチュエータ59の永久磁石63(および電極64,64)を車体側に取付けるものでもある。即ち、アッパーマウント18は、油圧緩衝器51の外筒52および電磁アクチュエータ59の永久磁石63(および電極64,64)を車体側に取付けるものである。アッパーマウント18は、段付筒状に形成され、外筒52の外周側で、かつ、コイル格納シェル58の内側は、ばね受け18Aとなっている。ばね受け18Aは、電磁アクチュエータ59の可動部65側に設けられたばね受け69との間でばね3を支持している。
コイル格納シェル58は、油圧緩衝器51の外周側、即ち、外筒52の外周側に位置して、外筒52に固定されている。即ち、コイル格納シェル58の他端側(上端側)は、アッパーマウント18、蓋部材55を介して外筒52に固定されている。コイル格納シェル58は、シリンダパイプ(外筒52)の外周側に設けられるアウタパイプを構成している。コイル格納シェル58は、円筒状に形成され、一端側(下端側)に電磁アクチュエータ59の永久磁石63(および電極64,64)が固定されている。これにより、コイル格納シェル58は、油圧緩衝器51のシリンダパイプ(外筒52)および電磁アクチュエータ59の永久磁石63(および電極64,64)と共に、車体側に取付けられている。
第3の実施形態では、油圧緩衝器51は、車体側取付部となるアッパーマウント18と、車輪側取付部となる取付アイ17と、減衰機構であるピストン8と、アッパーマウント18と取付アイ17とのうちの一方の取付部となる取付アイ17とピストン8とに繋がれたピストンロッド7と、ピストンロッド7の一部とピストン8とが内部に包含されたシリンダパイプとしての外筒52とを備えている。そして、シリンダパイプの外周側、即ち、外筒52の外周側には、この外筒52に固定されたアウタパイプとしてのコイル格納シェル58が設けられている。
電磁アクチュエータ59は、油圧緩衝器51と共に、車体と車輪との間にばね3と並列に設けられている。電磁アクチュエータ59は、車体側に配置される固定部60と、車輪側に配置される可動部65とを含んで構成されている。この場合、永久磁石63、電極64,64等により構成された固定部60には、車体側となるアッパーマウント18が取付けられている。一方、コイル68等により構成された可動部65には、車輪側となる取付アイ17が取付けられている。
電磁アクチュエータ59の固定部60は、油圧緩衝器51の外筒52と共に、車体側となるアッパーマウント18に取付けられている。この場合、固定部60は、コイル格納シェル58を介してアッパーマウント18に取付けられている。固定部60は、ヨーク61、永久磁石63、一対の電極64,64等を備えている。
ヨーク61は、円筒状に形成され、コイル格納シェル58の内周側に嵌合されている。ヨーク61の内周側には、永久磁石63が嵌合されている。即ち、コイル格納シェル58の内周側には、ヨーク61を介して永久磁石63が取付けられている。また、コイル格納シェル58の内周側には、永久磁石63の軸方向の一側(下側)と他側(上側)とに位置してそれぞれ電極64,64が取付けられている。電極64,64は、コイル格納シェル58内に嵌合された例えば絶縁材製の電極支持体62を介してコイル格納シェル58内に取付けられている。ヨーク61、永久磁石63、電極64,64、電極支持体62は、コイル格納シェル58内の一端側にコイル格納シェル58に対する変位を不能に固定されている。
磁石としての永久磁石63は、ヨーク61を介してコイル格納シェル58内に取付けられている。永久磁石63は、円筒状に形成され、その内周面がコイル68の外周面と対面している。一対の電極64,64は、コイル68の外周面と接触することで、コイル68を通電させる。電極64,64は、コイル68の外周面に対して、軸方向に離間した2個所位置で接触している。第3の実施形態では、電極64は、円環状に形成されたリング部64Aと、このリング部64Aの内周側に位置して径方向内側に向けて突出する複数個の突起部64Bとを備えている。突起部64Bは、リング部64Aの内周側から軸方向の一側(または他側)に向けて折り曲げられている。これと共に、突起部64Bの途中は、径方向の外側に向けて折り曲げられている(折り返されている)。この突起部64Bの途中の折り曲げられた部分が、コイル68の外周面に接触する接触部となっている。
電磁アクチュエータ59の可動部65は、油圧緩衝器51のピストンロッド7と共にブラケット56を介して車輪側となるに取付アイ17に取付けられている。可動部65は、コイルカバー66、底部材67、コイルガイド25、コイル68等を備えている。
コイルカバー66は、軸方向(上下方向)に延びる円筒体として形成されている。コイルカバー66の外周側には、コイル68が取付けられている。コイルカバー66の一端側(下端側)には、底部材67およびブラケット56を介して取付アイ17が取付けられている。この場合、底部材67は、有底筒状に形成され、コイルカバー66が内側に嵌合(固定)された筒部67Aと、ブラケット56が固定された底部67Bとを有している。これにより、コイル68は、コイルカバー66、底部材67およびブラケット56を介して車輪側の取付アイ17に固定されている。
一方、コイルカバー66の他端側(上端側)には、コイルガイド25が取付けられている。コイルガイド25は、コイル68よりも他端側に位置してコイルカバー66の開口端に嵌合(固定)されている。コイルガイド25の内周側には、低摩擦材製の摺動部材25Aが設けられている。摺動部材25Aの内周面(案内面)は、油圧緩衝器51の外筒52の外周面と摺接する。
コイル68は、コイルカバー66の外周側に設けられている。コイル68は、一本の導線68Aを螺旋状に巻回してなる一層の巻線コイルとして構成されている。コイル68は、永久磁石63の内径寸法より小さい外径寸法を有し、かつ、油圧緩衝器51の外筒52の外径寸法よりも大きい内径寸法を有している。コイル68の軸方向長は、永久磁石63の軸方向長よりも長くなっている。コイル68を構成する導線68A、即ち、螺旋状に巻かれた導線68Aは、導電材を絶縁材で覆うことにより構成されている。そして、コイル68の外周面においては、絶縁材による絶縁被膜を除去し、導電材を剥き出しにしている。コイル68への通電は、通電した電極64(の突起部64B)が剥き出しの導電材に接触することにより行うことができる。
第3の実施形態では、電磁アクチュエータ59は、一方の取付部側となる取付アイ17側に固定されるコイル68と、このコイル68の外周側にこのコイル68と対向して設けられ、シリンダパイプ側(外筒52側)に(コイル格納シェル58を介して)固定される永久磁石63、および、この永久磁石63の一側と他側に設けられ、コイル68と接触する少なくとも2つの電極64,64とを有している。そして、電磁アクチュエータ59と油圧緩衝器51とを含んで構成される車両用緩衝器1は、「永久磁石63を有するシリンダパイプ側部材(即ち、外筒52、アッパーマウント18、コイル格納シェル58)」と「コイル68を有する一方の取付部側部材(即ち、ピストンロッド7、取付アイ17)」とが、軸方向に相対変位する。
第3の実施形態は、上述の如き油圧緩衝器51と電磁アクチュエータ59とにより車両用緩衝器1を構成したもので、その基本的作用については、第1の実施形態によるものと格別差異はない。即ち、第3の実施形態も、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、電磁アクチュエータ59を簡易な構成とすることができ、かつ、電磁アクチュエータ59から制御力を出力することができる。
この場合、第3の実施形態では、車体側取付部(アッパーマウント18)にシリンダパイプとなる外筒52を接続し、車輪側取付部(取付アイ17)にピストンロッド7を接続し、油圧緩衝器51として、倒立型で単筒式のシリンダ装置を用いている。このような第3の実施形態および前述の第1の実施形態から明らかなように、シリンダ装置の接続方向、上下の姿勢、単筒式であるか複筒式であるか等は、必要に応じて適宜変更が可能である。また、第3の実施形態では、電磁アクチュエータ59は、内周側となるコイル68の外周側に永久磁石63、ヨーク61、電極64,64を配置した構成となっている。このような配置であっても、前述の第1の実施形態と同様に、必要な磁界および電磁力を発生させることができる。即ち、電磁アクチュエータの構成部品の配置についても、必要に応じて適宜変更が可能である。
なお、第1の実施形態では、シリンダパイプとなる油圧緩衝器2の外筒4側に電磁アクチュエータ21の可動部27となる永久磁石33および電極34,34を設けると共に、油圧緩衝器2のピストンロッド7側に電磁アクチュエータ21の固定部22となるコイル26を設け、コイル26の内周側に永久磁石33および電極34,34を配置した構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、シリンダパイプとなる油圧緩衝器の外筒側(または、外筒に固定されたアウタパイプとしてのコイル格納シェルの内周側または外周側)に電磁アクチュエータのコイルを設けると共に、油圧緩衝器のピストンロッド側に電磁アクチュエータの永久磁石および電極を設け、コイルの内周側または外周側に永久磁石および電極を配置する構成としてもよい。
第2の実施形態では、油圧緩衝器51のピストンロッド7側に電磁アクチュエータ59の可動部65となるコイル68を設けると共に、シリンダパイプとなる油圧緩衝器51の外筒52側(より具体的には、外筒52に固定されたアウタパイプとしてのコイル格納シェル58の内周側)に電磁アクチュエータ59の固定部60となる永久磁石63および電極64,64を設け、コイル68の外周側に永久磁石63および電極64,64を配置した構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧緩衝器のピストンロッド側に電磁アクチュエータの永久磁石および電極を設けると共に、シリンダパイプとなる油圧緩衝器の外筒側(または、外筒に固定されたアウタパイプとしてのコイル格納シェルの内周側または外周側)に電磁アクチュエータのコイルを設け、コイルの内周側または外周側に永久磁石および電極を配置する構成としてもよい。
第1の実施形態および第2の実施形態では、車両用緩衝器1と懸架ばね3とがユニット化された構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、懸架ばねを省略してもよい。
第1の実施形態および第2の実施形態では、車両用緩衝器1が装着される車両として自動車を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、鉄道車両等、自動車以外の車両に緩衝器を装着してもよい。
さらに、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく緩衝器として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
(1).第1の態様としては、車体側取付部と、車輪側取付部と、減衰機構であるピストンと、前記車体側取付部と車輪側取付部とのうちの一方の取付部と前記ピストンとに繋がれたピストンロッドと、前記ピストンロッドの一部と前記ピストンとが内部に包含されたシリンダパイプとによって構成され、前記シリンダパイプの外周側であって、前記シリンダパイプに固定されたアウタパイプと、前記一方の取付部側に固定されるコイルと、前記コイルの内周側または外周側に前記コイルと対向して設けられ、前記シリンダパイプ側に固定される磁石および前記磁石の一側と他側に設けられ、前記コイルと接触する少なくとも2つの電極と、を有し、前記磁石を有する前記シリンダパイプ側部材と前記コイルを有する前記一方の取付部側部材とが軸方向に相対変位する緩衝器であって、前記コイルの軸方向長は、前記磁石の軸方向長よりも長くなっている。
この第1の態様によれば、簡易かつ安価で小型の緩衝器を提供することができる。即ち、コイルの軸方向長が磁石の軸方向長よりも長いため、これらコイルと磁石とにより構成されるアクチュエータを小型に構成できる。これにより、緩衝器が大型化することを抑制できる。また、緩衝器のストローク位置によるアクチュエータの出力荷重の変化を抑制することもできる。さらに、位置センサによる位置フィードバック制御を必要としないため、簡素に構成することができる。また、緩衝器の伸縮運動に伴う振動または衝撃が、アクチュエータに直接加わることも抑制できる。これにより、アクチュエータの損傷防止のための保護部材が必要なくなり、この面からも簡素に構成することができる。また、緩衝器の伸縮運動を制御するときにアクチュエータの動力を直接制御力として利用することができる。即ち、制御力を減衰させる中間部材を必要としないため、応答速度を向上することができる。これにより、高周波域にまで至る車両の路面入力に基づく振動に対しても、この振動を抑制する制御力を出力させることができ、振動抑制効果を向上することができる。
(2).第2の態様としては、第1の態様において、前記コイルは、通電材として扁平導線材料が用いられており、前記通電材の導電層は、絶縁素材で覆われており、前記通電材同士は、接着または固着されている。
この第2の態様によれば、コイルの通電材として扁平導線材料を用いているため、通電材の軸方向の巻線密度を高くしつつ径方向の断面積を大きくすることができる。即ち、「通電材の断面積の確保」と「コイルの軸方向の巻線密度の確保」とを両立することができる。これにより、コイルの電気抵抗を低減でき、かつ、磁力を増大できる。即ち、アクチュエータに用いるコイルの電気抵抗を低減することができ、消費電力を低減することができる。これに加えて、コイルの発熱を低減することができ、温度上昇に伴って電気抵抗が増大することを抑制できる。このため、この面からも、消費電力を低減することができ、車両の燃料消費を抑制することができる。しかも、扁平導線同士を平面で接着または固着することで、コイルの形状維持を容易に行うことができる(コイルの形状が崩れることを抑制できる)。
(3).第3の態様としては、第1の態様において、前記コイルは、通電材が中心部から外周方向に向かって螺旋状に設けられた複数の電気回路層を有しており、前記各電気回路層は、軸方向に積層されている。
この第3の態様によれば、螺旋状の電気回路層が軸方向に積層されているため、コイルの巻線密度を高めることができる。これにより、コイルの磁力の増大を図ることができる。
(4).第4の態様としては、第1の態様において、前記電極は、変形可能なばねの性質を持った突起部を有しており、前記突起部は、2個所以上の複数個所または前記電極の全周に設けられている。
この第4の態様によれば、電極の突起部がコイルと接触した状態で、電極とコイルとが相対変位(相対運動)する。このとき、突起部はコイルに対して弾性的に当接する(突起部がコイルに対して押付けられる)ため、電極とコイルとの相対変位に拘わらず、電極(突起部)とコイルとを安定して接触させることができる。しかも、突起部を複数個所または電極の全周に設けるため、常に何れかの突起部または突起部の一部をコイルの導電層に接触させることができる。これにより、電極とコイルとの通電を確実に行うことができる。
(5).第5の態様としては、第1の態様において、前記コイルと前記磁石との間には、少なくとも20Nの制御荷重を能動的に出力可能である。
この第5の態様によれば、コイルと磁石との間で少なくとも20Nの制御荷重が能動的に出力されるため、コイルと磁石とにより構成されるアクチュエータから必要な制御力を出力することができる。即ち、シリンダパイプとピストンロッドとの間には、シリンダパイプ内のシリンダオイル(作動液)が外部に漏れないようにシール部材(ピストンシール)が設けられている。そして、シール部材とピストンロッドと間には、これらの摩擦に基づいて、アクチュエータの制御力に対する抵抗力が発生する。この抵抗力は、20N程度であるため、アクチュエータから少なくとも20Nの制御荷重を出力できるようにすることにより、アクチュエータにより能動制御を行うことができる。
(6).第6の態様としては、第1の態様において、前記コイルと前記磁石との間に出力される制御荷重は、0.1秒以下の応答速度、または、10Hz以上の周波数にて出力が可能である。
この第6の態様によれば、良好な応答速度をもって振動抑制の制御を行うことができる。このため、例えば、ばね下共振周波数を含む高周波域にまで至る路面入力振動に対しても、振動抑制効果を得ることができる。