以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は例示的なものであり、本発明の開示を限定するものではない。
本発明の1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物は、50〜85重量部のメタクリレート系重合体と、15〜50重量部のスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体と含む。メタクリレート系重合体は、メタクリレート系単量体単位と、アクリレート系単量体単位とを含む。メタクリレート系重合体の重量平均分子量(Mw)は、20,000〜200,000の範囲である。スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、76.5wt%〜90wt%のスチレン系単量体単位と、10wt%〜23.5wt%の無水マレイン酸系単量体単位と、0〜13.5wt%の第2共重合性単量体単位とを含む。スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の分子量分布指数(PDI)の範囲は、1.5〜2.05である。
本発明の別の実施形態において、ポリメタクリレート組成物は、さらに、200ppm〜900ppmの有機リン化合物を含む。
メタクリレート系重合体
メタクリレート系重合体は、主に、メタクリレート系単量体で構成される単量体混合物から合成される。1つの実施形態において、メタクリレート系重合体は、メタクリレート系単量体とアクリレート系単量体を含む混合物から合成され;好ましくは、メタクリレート系重合体は、メタクリレート系単量体、アクリレート系単量体、および第1共重合性単量体を含む混合物から合成される。
メタクリレート系単量体は、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n‐ブチルメタクリレート(n-butyl methacrylate)、アミルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、n‐オクチルメタクリレート(n-octyl methacrylate)、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート(2-ethylhexyl methacrylate)等を含み(ただし、これに限定されない);上述した単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
アクリレート系単量体は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n‐ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート(2-ethylhexyl acrylate)、オクタデシルアクリレート等を含む(ただし、これに限定されない)。上述した単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
第1共重合性単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸(itaconic acid)、シトラコン酸(citraconic acid)、アコニット酸(aconitic acid)等の不飽和カルボン酸系単量体(ただし、これに限定されない);(2)例えば、マレイミド、N‐メチルマレイミド、N‐イソプロピルマレイミド、N‐ブチルマレイミド、N‐ヘキシルマレイミド、N‐オクチルマレイミド、N‐ドデシルマレイミド、N‐シクロヘキシルマレイミド、N‐フェニルマレイミド、N‐2,3‐トイルマレイミド、N‐2,4‐トイルマレイミド、N‐2,3‐エチルフェニルマレイミド、N‐2,4‐エチルフェニルマレイミド、N‐2,3‐ブチルフェニルマレイミド、N‐2,4‐ブチルフェニルマレイミド、N‐2,6‐トイルマレイミド、N‐2,3‐クロロフェニルマレイミド、N‐2,4‐クロロフェニルマレイミド、N‐2,3‐ブロモフェニルマレイミド、N‐2,4‐ブロモフェニルマレイミド等のマレイミド系単量体(ただし、これに限定されない);(3)アクリルアミド(acrylamide)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、α‐メタクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether)、またはグリシジル(メタ)アクリレート(glycidyl (meth)acrylate)等のプロペニル含有化合物単量体(ただし、これに限定されない);(4)ビニルアセテート(vinyl acetate)またはクロロエテン(chloroethene)等のビニル含有化合物単量体(ただし、これに限定されない);および(5)スチレン、2‐クロロスチレン、4‐クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン(vinyl toluene)、α‐メチルスチレン(α-methylstyrene)、p‐tert‐ブチルスチレン、p‐メチルスチレン、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、2,4‐ジメチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系単量体を含む(ただし、これに限定されない)。上述した単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
1つの実施形態において、メタクリレート系重合体は、メタクリレート系単量体単位、アクリレート系単量体単位、および第1共重合性単量体単位を含む。ここで使用する「単量体単位」という単語は、上述したメタクリレート系単量体、アクリレート系単量体、または第1共重合性単量体の重合反応により形成された繰り返し構造を指す。
1つの実施形態において、メタクリレート系重合体は、92wt%〜99wt%のメタクリレート系単量体単位および1wt%〜8wt%のアクリレート系単量体単位を含む。また、メタクリレート系重合体の合計重量に対し、メタクリレート系重合体は、必要に応じて、さらに、0〜7wt%の第1共重合性単量体を含んでもよい。
1つの実施形態において、メタクリレート系重合体の重量平均分子量(Mw)は、20,000〜200,000の範囲であり、例えば、50,000〜150,000または60,000〜140,000の範囲であり;好ましくは、90,000〜130,000の範囲である。
メタクリレート系重合体は、溶液またはバルク(bulk)重合方法を使用して作製することができ、粗大ポリマー(crude polymer)の粘度の増加によって重合反応が制御しにくくなるのを防ぐため、溶媒の存在下で重合反応を行うのが好ましい。メタクリレート系重合体の粘度は、通常、固体含有量で表示され、粗大ポリマーの固体含有量が50wt%よりも少なく、好ましくは、40wt%よりも少なくなるよう、溶媒の量を調整しなければならない。
溶媒の沸点が重合したい主体単量体の沸点と類似する場合、溶媒と単量体の混合物は、比較的狭い沸点範囲を有し、それにより、再生混合物中の汚染物質を混合する確率を下げるため、再生単量体と溶媒混合物の中間留分(intermediate fractionation)のステップを省略することができる。例えば、メタクリレート系単量体の沸点に近い沸点を有する溶媒を選択することができ、40℃〜225℃の沸点を有する溶媒が好ましく、60℃〜150℃の沸点を有する溶媒がより好ましい。上述した溶媒の具体例は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、p‐キシレン、o‐キシレン、m‐キシレン、エチルベンゼン、シクロロヘキサン、シクロロデカン、イソオクタン、または様々な低沸点炭化水素または芳香族炭化水素溶媒を含む(ただし、本発明はこれに限定されない)。上述した溶媒は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
メタクリレート系重合体の重合反応は、ラジカル開始剤によって開始される。ラジカル開始剤は、特に限定されないが、具体例として、(1)例えば、2,2’‐アゾビス‐(イソブチロニトリル)(2,2'-azobis-(isobutyronitrile)、略称はAIBN)、2,2’‐アゾビス‐(2‐メチルブチロニトリル)(2,2'-azobis-(2-methylbutyronitrile)、略称はAMBN)、2,2’‐アゾビス‐(2,4‐ジメチルバレロニトリル)(2,2'-azobis-(2,4-dimethylvaleronitrile) 、略称はADVN)等のアゾ化合物;(2)例えば、ジラウロイルペルオキシド(dilauroyl peroxide)、デカノイルペルオキシド(decanoyl peroxide)、ジベンゾイルペルオキシド(dibenzoyl peroxide、略称はBPO)等のジアシルペルオキシド(diacyl peroxide)化合物;(3)例えば、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ‐(t‐ブチルペルオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di-(t-butylperoxy) hexane)、ジクミルペルオキシ(dicumyl peroxide)、1,3‐ビス‐(t‐ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(1,3-bis-(t-butyl peroxy isopropyl)benzene)等のジアルキルペルオキシド(dialkyl peroxide)化合物;(4)例えば、t‐ブチルペルオキシピバレート(t‐butylperoxypivalate)、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(2‐エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(2-ethyl hexanoylperoxy) hexane)等のペルオキシエステル(peroxyester);(5)例えば、tert‐アミルペルオキシ2‐エチルヘキシルカーボネート(tert-amylperoxy 2-ethylhexyl carbonate)、tert‐ブチルペルオキシ2‐エチルヘキシルカーボネート(tert-butylperoxy 2-ethylhexyl carbonate)等のペルオキシカーボネート(peroxycarbonate)化合物;(6)例えば、ジミリステルペルオキシジカーボネート(dimyristyl peroxydicarbonate)、ジ(4‐tert‐ブチルシクロヘキシルペルオキシジカーボネート(di(4-tert-butylcyclohexyl peroxydicarbonate))等のペルオキシジカーボネート(peroxydicarbonate)化合物;(7)例えば、1,1‐ジ(tert‐ブチルペルオキシ‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン(1,1-di(tert-butylperoxy)-3,3,5-trimethylcyclohexane)、2,2‐ジ(4,4‐ジ(tert‐ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン(2,2-di(4,4-di(tert-butylperoxy) cyclohexyl)propane)等のペルオキシケタール(peroxyketal)化合物;(8)例えば、t‐ブチルヒドロペルオキシド(t-butyl hydroperoxide)、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド(isopropylcumyl hydroperoxide)等のヒドロペルオキシド(hydroperoxide)化合物;および(9)その他の2,3‐ジメチル‐2,3‐ジフェニル‐ブタン(2,3-dimethyl-2,3-diphenyl-butane)、過硫酸カリウム(potassium persulfate)、過硫酸ナトリウム(sodium persulfate)、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)等が挙げられる(ただし、本発明はこれに限定されない)。1つの実施形態において、ラジカル開始剤は、2,2’‐アゾビス‐(イソブチロニトリル)である。供給した単量体混合物の合計量100重量部に対し、ラジカル開始剤の量は、0.01〜1重量部であってもよく、例えば、0.03〜0.5重量部または0.07〜0.1重量部である。
メタクリレート系重合体の重合反応は、常温で行うことができるが、反応システムを加熱して、重合速度を速めることができる。反応温度は、通常、約5℃〜200℃であり、例えば、20℃〜130℃または30℃〜100℃である。重合プロセスの間、必要に応じて連鎖移動剤(chain transfer agent)を追加して、分子の重量を制御しやすくしてもよい;連鎖移動剤は、例えば、n‐ドデシルメルカプタン(n-dodecyl mercaptan、略称はNDM)、ステアリルメルカプタン(stearyl mercaptan)、t‐ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan、略称はTDM)、n‐プロピルメルカプタン(n-propyl mercaptan)、n‐オクチルメルカプタン(n-octyl mercaptan)、t‐オクチルメルカプタン(t-octyl mercaptan)、t‐ノニルメルカプタン(t-nonyl mercaptan)、テルピノレン(terpinolene)等であるが、本発明はこれに限定されない。
スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体(SMA)
スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、スチレン系単量体(SM)、無水マレイン酸系単量体(MAh)、および第2共重合性単量体の共重合によって得られた任意の重合体であり、例えば、直鎖または分岐のランダム共重合体、直鎖または分岐のブロック共重合体、またはその混合物である。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、スチレン系単量体、無水マレイン酸系単量体、および第2共重合性単量体を重合することによって形成される。
上述した無水マレイン酸系単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができる。無水マレイン酸系単量体は、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸等であるが、本発明はこれに限定されない。1つの実施形態において、無水マレイン酸系単量体は、無水マレイン酸である。
スチレン系単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができ、スチレン系単量体は、例えば、(1)2‐クロロスチレン、4‐クロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン;(2)ビニルトルエン、α‐メチルスチレン、p‐tert‐ブチルスチレン、p‐メチルスチレン、o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、2,4‐ジメチルスチレン、エチルスチレン等のアルキル置換スチレン等であるが、本発明はこれに限定されない。1つの実施形態において、スチレン系単量体は、スチレンおよびハロゲン置換スチレン、およびアルキル置換スチレンからなる群より選択される少なくとも1つである。1つの実施形態において、スチレン系単量体は、スチレンおよびα‐メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1つである。
第2共重合性単量体は、単独で、または組み合わせて使用することができ、第2共重合性単量体は、例えば、前記メタクリレート系重合体に用いた前記メタクリレート系単量体および前記アクリレート系単量体からなる群の1つから選択されるため(ただし、本発明はこれに限定されない)、ここでは詳しい説明を省略する。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、スチレン系単量体単位、無水マレイン酸系単量体単位、および第2共重合性単量体単位を含む。ここで使用する「単量体単位」という用語は、上述したスチレン系単量体、無水マレイン酸系単量体、または第2共重合性単量体の重合反応によって形成される繰り返し構造を指す。そのため、スチレン系単量体単位は、上述したスチレン系単量体に由来し、無水マレイン酸系単量体単位は、上述した無水マレイン酸系単量体に由来し、第2共重合性単量体単位は、上述した第2共重合性単量体に由来する。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、76.5wt%〜90wt%のスチレン系単量体単位、10wt%〜23.5wt%の無水マレイン酸系単量体単位、および0〜13.5wt%の第2共重合性単量体単位を含む。
別の実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体中のスチレン系単量体単位の含有量は、76.5wt%〜90wt%、例えば、76.8wt%〜85wt%または76.8wt%〜84.1wt%である。スチレン系単量体単位の含有量が76.5wt%よりも高い時、このようなスチレン系単量体単位の含有量のスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を有するポリメタクリレート組成物は、好ましい透過率(T%)、ヘーズ(HAZE)、および黄化指数(YI)を有し;スチレン系単量体単位の含有量が90wt%よりも低い時、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体中の無水マレイン酸系単量体単位の含有量は、10wt%よりも高い。そのため、このようなスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を含有するポリメタクリレート組成物は、好ましい耐熱性(ガラス転移温度、Tg)を有することができる。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体中のスチレン系単量体単位の含有量は、76.8wt%〜83wt%であり、無水マレイン酸系単量体単位の含有量は、17wt%〜23.2wt%である。上記の比率を有するスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を有するポリメタクリレート組成物は、高い耐熱性を必要とする光学装置に応用可能である。1つの実施形態において、上記の比率を有するスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、1.5〜2.05の範囲の分子量分布指数(PDI)を有するため、好ましい透過率(T%)、ヘーズ(HAZE)、および黄化指数(YI)を維持するという前提で、さらに、高い耐熱性能を有することができる。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体中のスチレン系単量体単位対無水マレイン酸系単量体単位の重量%の比率は、3〜9.2の間であり、例えば、3.2〜8の間または3.2〜7の間である。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、60,000〜100,000の間であり、例えば、65,000〜95,000の間または65,000〜90,000の間である。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の数平均分子量(Mn)は、30,000〜55,000の間であり、例えば、35,000〜50,000の間または37,000〜48,000の間である。
1つの実施形態において、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の分子量分布指数(PDI)は、1.5〜2.05であり、例えば、1.7〜2.0または1.7〜1.9である。スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の分子量分布指数(PDI)が2.05よりも大きい場合、これを含むポリメタクリレート組成物は、光学特性(低ヘーズおよび低黄化指数)が低下する。
スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の重合方法は、特に限定されず、ラジカル開始剤を使用するラジカル重合であってもよい。懸濁重合(suspension polymerization)または乳化重合(emulsion polymerization)の処理を使用する場合、十分な透明性が得られないことがある。使用するラジカル開始剤は、例えば、上述したメタクリレート系重合体に用いたラジカル開始剤から選択されるため(ただし、本発明はこれに限定されない)、ここでは詳しい説明を省略する。
単量体の合計100重量部に対し、前記ラジカル開始剤の量は、好ましくは、0.001〜5重量部である。少量の溶媒を重合に使用してもよい。溶媒は、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素であるが、本発明はこれに限定されない。また、4‐メチル‐2,4‐ジフェニルペンタ‐1‐エン(4-methyl-2,4-diphenylpent-1-ene)、t‐ドデシルメルカプタン(t-dodecylmercaptan)、n‐ドデシルメルカプタン等の周知の分子量調節剤(molecular weight modifier)を重合中に追加してもよい。重合温度は、好ましくは、80℃〜170℃であり、より好ましくは100℃〜160℃である。
有機リン化合物
1つの実施形態において、有機リン化合物を提供して、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体が高温プロセスにおいて無水マレイン酸の開環(ring opening)を行い、ポリメタクリレート組成物の成分を変化させることにより、組成物の耐熱性(Tg低下)、熱安定性(Td低下)、および光学特性(ヘーズおよび黄化指数)に影響を与えるのを防ぐ。
有機リン化合物は、ホスファイト基を有する芳香族化合物である。有機リン化合物は、例えば、トリス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4-di-t-butylphenyl)phosphite)、ビス[2,4‐ジ(1,1‐ジメチルエチル)‐6‐メチルフェニル]エチルホスファイト(bis[2,4-di(1,1-dimethylethyl)-6-methylphenyl]ethyl phosphite)、テトラ(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェノール)‐4,4’‐ビフェニルジホスファイト(tetra (2,4-di-t-butylphenol)-4,4'-biphenyldiphosphite)、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-di-t-butylphenyl) pentaerythritol diphosphite)、ビス(2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェニル)ペンタエリスリトール‐ジホスファイト(bis(2,6-di-t-butyl-4-methylphenyl) pentaerythritol-diphosphite)、ビス(2,4‐ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4-dicumylphenyl)pentaerythritol diphosphite)、ジ‐t‐ブチルm‐トリルホスファイトエステル(di-t-butyl m-tolyl phosphite ester)等であり(ただし、本発明はこれに限定されない)、上述した化合物は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
1つの実施形態において、有機リン化合物は、好ましくは、ペンタエリスリトールジホスファイト基を含む複素環芳香族ホスファイト化合物であり、例えば、下記の式(1)で表される構造を含む。
(1)
上記の式において、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜10の直鎖アルキル基、炭素数1〜10の分岐アルキル基、炭素数1〜10の環状アルキル基、またはその組み合わせを示し;例えば、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、メチル、またはtert‐ブチルを示す。有機リン化合物の具体例は、例えば、ビス(2,4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6‐ジ‐t‐ブチル‐4‐メチルフェニル)ペンタエリスリトール‐ジホスファイト、またはビス(2,4‐ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物中の有機リン化合物の含有量は、200ppm〜900ppmであり、例えば、250ppm〜800ppmまたは300ppm〜800ppmである。有機リン化合物の含有量が200ppm〜900ppm内にある時、有機リン化合物を含有するポリメタクリレート組成物は、高いTg(優れた耐熱性)、高いTd(優れた熱安定性)、および好ましい光学性能(低黄化指数および低ヘーズ)を有することができる。メタクリレート系重合体とスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の合計量は、100重量部である。
さらに、本発明の効果を大きく損なわない範囲内で、様々な目的に応じて添加剤を混合してもよい。これらの添加剤の種類は、樹脂組成物またはゴム組成物に通常使用されるものであれば、特に限定されず;例えば、添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、スリップ剤(slip agent)、加工助剤、充填剤、補強剤、着色剤、帯電防止剤、または他の添加剤を含み、添加剤は、重合反応中、重合反応後、または押出し(extrusion)および混練(mulling)中の添加のみに限定されない。重合体の合計量が100重量部の時、つまり、メタクリレート系重合体とスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の合計量が100重量部の時に、添加剤の含有量を測定する。
酸化防止剤
酸化防止剤は、有機リン化合物以外の添加物である。1つの実施形態において、酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3‐(3,5‐ジ‐トリス‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート](pentaerythritol tetrakis[3-(3,5-di-tris-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、オクタデシル‐3‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート(octadecyl-3-(3,5-di-tertiary-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、オクタデシルβ‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート(octadecyl β-(3,5-di-t-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、トリエチレングリコールビス(3‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル) プロピオネート(triethylene glycol bis(3-tert-butyl-4-hydroxy-5-methylphenyl)propionate)、3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシ桂皮酸(3,5-di-t-butyl-4-hydroxycinnamic acid)、3,9‐ビス(1,1‐ジメチル‐2‐ヒドロキシエチル)‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(3,9-bis(1,1-dimethyl-2-hydroxyethyl)-2,4,8,10-tetraoxaspiro[5,5]undecane)、3,9‐ビス(2‐(3‐(3‐トリス‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ)‐1,1‐ジメチルエチル)‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン(3,9-bis(2-(3-(3-tris-butyl-4-hydroxy-5-methylphenyl) propionyloxy) -1,1-dimethylethyl)-2,4,8,10-tetraoxaspiro(5,5)undecane)等であり(ただし、本発明はこれに限定されない)、上述した酸化防止剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
1つの実施形態において、酸化防止剤は、好ましくは、2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデシル基を含有するフェノール化合物であり、例えば、下記の式(2)で表される構造を含む。
(2)
上記の式において、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数6〜12のアルキル基、炭素数6〜12のエーテル基、炭素数6〜12のエステル基、またはその組み合わせを示し;R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1〜10の直鎖、分岐、または環状アルキル基を示す。酸化防止剤の具体例は、例えば、3,9‐ビス(2‐(3‐(3‐トリス‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ)‐1,1‐ジメチルエチル)‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
ポリメタクリレート組成物中の酸化防止剤の含有量は、500ppm〜2,000ppmであり、例えば、700ppm〜1,700ppmまたは850ppm〜1,600ppmである。1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物が酸化防止剤および有機リン化合物を含み、酸化防止剤と有機リン化合物の含有量の比率が1.1〜10の範囲内、例えば、1.2〜8.5または1.5〜8の範囲内にある場合、ポリメタクリレート組成物は、高いTg(優れた耐熱性)および高いTd(優れた熱安定性)を有し、低ヘーズの比較的優れた光学性能を示す。1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物は、500ppm〜2,000ppmの酸化防止剤および200ppm〜900ppmの有機リン化合物を含む。
熱安定剤
1つの実施形態において、一般的な熱安定剤を本発明において使用することができる。別の実施形態において、本発明は、下記の式(3)で表される熱安定剤を使用することができる。
(3)
上記の式において、R5およびR8は、それぞれ独立して、水素またはメチル基、およびR6およびR7は、それぞれ独立して、炭素数1〜9の直鎖、分岐、または環状アルキル基を示す。R6は、例えば、第3級ブチルまたは第3級アミルから選択され;R7は、例えば、第3級ブチル、第3級アミル、または第3級オクチルから選択される。
ポリメタクリレート組成物中の熱安定剤の含有量は、500ppm〜2,000ppmである。熱安定剤の含有量がこの範囲内にある時、熱安定性と加工性のバランスを保ち、生産コストを制御することができる。1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物中の熱安定剤の含有量は、700ppm〜1,800ppmであり、別の実施形態において、ポリメタクリレート組成物中の熱安定剤の含有量は、900ppm〜1,600ppmである。
紫外線吸収剤
1つの実施形態において、紫外線(ultraviolet, UV)吸収剤を本発明に使用することができる。1つの実施形態において、紫外線吸収剤の引火点(flash point)は、処理温度よりも高い。例えば、紫外線吸収剤の引火点は、光学装置を形成する高温プロセスにおいて紫外線吸収剤が沈殿するのを防ぐため、240℃またはそれより高い。沈殿物は、通常、深刻な金型汚染を引き起こす。
紫外線吸収剤は、例えば、2‐(4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐5‐(オクチルオキシ)フェニル(2-(4,6-bis-(2,4-dimethylphenyl)-1,3,5-triazin-2-yl)-5-(octyloxy)phenol)、2,2’‐メチレンビス[6‐(ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐tert‐オクチルフェノール](2,2'-methylenebis[6-(benzotriazol-2-yl)-4-tert-octylphenol])、2‐(4,6‐ジフェニル‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル)‐5‐[(ヘキシル)オキシ]‐フェノール(2-(4,6-diphenyl-1,3,5-triazin-2-yl)-5-[(hexyl)oxy]-phenol)、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン(2,2',4,4'-tetrahydroxybenzophenone)、3‐[(2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリロイル)オキシ]‐2,2‐ビス{[(2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロピル2‐シアノ‐3,3‐ジフェニルアクリレート)(3-[(2-Cyano-3,3-diphenylacryloyl)oxy]-2,2-bis{[(2-cyano-3,3-diphenylacryloyl)oxy]methyl}propyl2-cyano-3,3-diphenylacrylate)(uvinul 3030)、2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐6‐ドデシル‐4‐メチルフェノール(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-6-dodecyl-4-methylphenol)、2‐(2’‐ヒドロキシ‐3’,5’‐ジペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール(2-(2'-hydroxy-3',5'-dipentylphenyl)benzotriazole)等を含み(ただし、これに限定されない)、上述した紫外線吸収剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
ポリメタクリレート組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、10,000ppm〜50,000ppmであり、例えば、15,000ppm〜40,000ppmまたは20,000ppm〜35,000ppmである。紫外線吸収剤の含有量がこの範囲内にある時、紫外線吸収剤と組成物を均一に混合することができるため、後続の熱間加工(hot working)により紫外線吸収剤が沈殿して金型汚染を起こさないようにすることができ、組成物は、優れた紫外光安定性を有することができる。1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物が紫外線吸収剤および有機リン化合物を含み、紫外線吸収剤と有機リン化合物の含有量の比率が10〜300の範囲内、例えば、15〜200または20〜180の範囲内にある場合、ポリメタクリレート組成物は、高いTg(優れた耐熱性)および高いTd(優れた熱安定性)性能を有することができ、低黄化指数の比較的優れた光学性能を示す。1つの実施形態において、ポリメタクリレート組成物は、10,000ppm〜50,000ppmの紫外線吸収剤および200ppm〜900ppmの有機リン化合物を含む。
スリップ剤
スリップ剤は、例えば、カルシウムステアレート(calcium stearate)、マグネシウムステアレート、リチウムステアレート等の金属セッケン(metal soap); エチレンジステアリルアミン(ethylene distearylamine)、メチレンジステアリルアミン、デシルパルミテート(decyl palmitate)、ブチルステアレート、パルミテートステアレート(palmitate stearate)、ポリプロピオネートトリステアレート(polypropionate tristearate)、n‐ドコサン酸(n-docosanoic acid)、硬い脂肪酸(hard fatty acid)、ステアリルアルコール(stearyl alcohol)等の化合物;ポリエチレンワックス(polyethylene wax)、オクタデカン酸ワックス(octadecanoic acid wax)、カルナバワックス(Carnuba wax)、石油ワックス(petroleum wax)等を含み(ただし、これに限定されない)、上述したスリップ剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
ポリメタクリレート組成物中のスリップ剤の含有量は、300ppm〜50,000ppmである。
加工助剤
加工助剤は、例えば、500,000以上の重量平均分子量(Mw)を有するコア‐シェル(core-shell)アクリレートを含むため(ただし、これに限定されない)、押出成形性(extrusion moldability)、熱成形性(thermoformability)等を向上させることができる。
帯電防止剤
帯電防止剤は、例えば、第3級アミン化合物または第4級アンモニウム塩化合物等の低分子量化合物;または3‐クロロ‐3‐1,2‐エポキシプロパン重合体(3-chloro-1,2-epoxypropane polymer)等のポリアミンポリエーテルを含み(ただし、これに限定されない)、上述した帯電防止剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
充填剤
充填剤は、例えば、炭酸カルシウム、ボーキサイト(bauxite)、雲母(mica)等を含み(ただし、これに限定されない)、上述した充填剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
補強剤
補強剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、各種ウィスカー(whisker)等を含み(ただし、これに限定されない)、上述した補強剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
着色剤
着色剤は、例えば、酸化チタン、酸化鉄、黒鉛(graphite)、フタロシアニン色素(phthalocyanine dye)等を含み(ただし、これに限定されない)、上述した着色剤は、単独で、または組み合わせて使用することができる。
本発明のポリメタクリレート組成物の使用は、特に限定されず、射出成形、圧縮成形、押出成形、吹込み成形(blow molding)、熱成形、真空成形、中空成形(hollow molding)等の様々な成形プロセス;および上述した成形プロセスによって作られたプレート、フィルム成形物等の様々な最終製品等に応用することができる。ポリメタクリレート組成物は、高流動性、高熱安定性等の必要に応じて形成することができる。
ポリメタクリレート組成物は、ブラベンダー・プラストメーター(Brabender plastometer)、バンブリミキサー(Banbury mixer)、混ねつ機(kneading-mixer)、ローラー、単軸または2軸押出機等の一般的な混合混練機(mixing muller)によって得ることができる。通常、押出機で混合および混練した後、押出成形物を冷却して、粒状にする。ポリメタクリレート組成物は、通常、160℃〜280℃で混練され、好ましくは、180℃〜250℃で混和される。さらに、各成分を混合および混和する順番は、特に限定されない。
本発明の別の実施形態に係る光学装置は、上述したポリメタクリレート組成物によって形成され、低ヘーズおよび低黄化指数の優れた光学特性を有する。1つの実施形態において、光学装置は、光学プレート、光学シート、光学フィルム等の平面構造を有する光学材料であってもよい。1つの実施形態において、平面構造を有する光学材料の作製方法は、ここでは特に限定されず、押出機でポリメタクリレート組成物を溶融した後、プレート状、シート状、またはフィルム状の未延伸光学プレート、光学シート、または光学フィルムに押し出すことができる。別の実施形態において、幅出機(tenter)を使用し、そのガラス転移温度よりも高い温度で、未延伸光学プレート、光学シート、または光学フィルムを横延伸または2軸延伸させてもよい。
1つの実施形態において、光学装置は、例えば、シート形状の本体を含む平面構造を有する光学プレートであり、本体は、平面を含む。本体は、長方形を有し、上述したポリメタクリレート組成物で作られる。
別の実施形態において、光学装置は、例えば、マイクロ構造を有する光学プレートである。図1(a)を参照すると、マイクロ構造を有する光学プレート10を示す。光学プレート10は、本体12を含み、本体12は、表面122を有し、表面122に複数の第1マイクロ構造132が配置される。図1(a)に示すように、本実施形態の各第1マイクロ構造132は、凹状ピット(concave pit)構造であるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、各第1マイクロ構造132は、バンプ(bump)構造または他の形状を有する構造であってもよい。
図1(b)を参照すると、光学装置のさらに別の実施形態を示し、図1(a)の第1マイクロ構造132の他に、表面122に向かい合う表面124または表面122に垂直な側面126等の他の表面に、さらに複数の第2マイクロ構造134が配置され、第2マイクロ構造134は、例えば、マイクロレンズであり、表面124に配置される。本実施形態において、各第2マイクロ構造134は、半円形状であるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、各第2マイクロ構造134は、プリズム(prism)または隅柱(corner pillar)等の適切な突出構造であってもよい。また、光学装置は、第2マイクロ構造134を単独で有する光学プレートであってもよい。
いくつかの実施形態において、光学装置を様々な表示装置に応用することができる。表示装置は、例えば、テレビ(TVまたはTV受信機とも称す)(図2(a)に示す)、デジタルカメラ(図2(b)に示す)、デジタルビデオカメラ(図2(c)に示す)、デジタルフォトフレーム(図2(d)に示す)、携帯電話(図2(e)に示す)、ノート型パソコン、モバイルコンピュータ、コンピュータに使用するモニター、携帯型ゲーム機、携帯型情報端末、音響再生装置、ゲーム機、および車のディスプレイであってもよい。
いくつかの実験例を参照しながら、本発明のポリメタクリレート組成物についてさらに詳しく説明する。下記の実験例を説明するが、材料、使用量および割合、処理内容、処理手順等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。したがって、本発明は、以下に説明する実験例により限定的に解釈されるものではない。
<実施例および比較例に使用した原料>
1.PMMA:メタクリレート系重合体
1.1.PMMAの作製
まず、95重量部のメチルメタクリレート、5重量部のメチルアクリレート、0.4重量部のn‐ドデシルメルカプタン、0.08重量部の2,2’‐アゾビス‐(イソブチロニトリル)、および66重量部のトルエンを混合し、反応タンクに連続して供給して、連続溶液重合反応を行う。上述した反応タンクは、熱媒循環(heat medium oil circulation)を有する挟層であり、反応温度は100℃で維持され、圧力は600torrであった。反応タンク内の成分を全体的に撹拌して、均一に混合し、得られた重合体溶液を265℃に加熱した。その後、脱揮発装置(devolatilizer)を使用して、重合体溶液を減圧の下で脱揮した後、押出機でストリップ(strip)状に作製した。ストリップを冷却して粒状にし、ポリメチルメタクリレートプラスチックグラニュール(plastic granule)を取得した。ポリメチルメタクリレートプラスチックグラニュールは、97wt%のメチルメタクリレート単量体単位および3wt%のメチルアクリレート単量体単位を含み、ポリメチルメタクリレートプラスチックグラニュールの重量平均分子量(Mw)は、100,000であり、メルトフローレート(melt flow rate, MVR)は、(230°C*3.8kg)=1.9であった。
2.SMA:スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体
2.1.SMA1の作製
40Lの撹拌反応器中に、7,440gの無水マレイン酸を窒素で10分間浄化(purge)してから添加し、温度を130℃に上げた後、30分間恒温にした。そして、温度を130℃に維持し、22,560gのスチレンおよび12gの2,2’‐アゾビス‐(イソブチロニトリル)を含む混合溶液を1時間以内に連続して添加し、供給が終わった後に温度を110℃まで下げた。反応を恒温で4時間行い、まず、未反応の無水マレイン酸をアセトンで洗浄した後、未反応のスチレンを80℃の真空オーブン内で除去し、分厚いスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体(bulky styrene-maleic anhydride copolymer)を取得した。
2.2.SMA2の作製
作製方法は、SMA1の作製方法と同じであるが、無水マレイン酸の添加量を6,825gに調整し、スチレンの添加量を32,175gに調整した。
2.3.SMA3の作製
作製方法は、SMA1の作製方法と同じであるが、無水マレイン酸の添加量を7,707gに調整し、スチレンの添加量を28,993gに調整した。
2.4.SMA4の作製
40Lの撹拌反応器中に、7,840gの無水マレイン酸を窒素で10分間浄化してから添加し、温度を150℃に上げた後、30分間恒温にした。そして、温度を150℃に維持し、24,160gのスチレンおよび4gの2,2’‐アゾビス‐(イソブチロニトリル)を含む混合溶液を1時間以内に連続して添加し、供給が終わった後に温度を130℃まで下げた。反応を恒温で6時間行い、まず、未反応の無水マレイン酸をアセトンで洗浄した後、未反応のスチレンを80℃の真空オーブン内で除去し、分厚いスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を取得した。
SMA1〜SMA4のスチレン系単量体単位(SM)の重量%、無水マレイン酸系単量体単位(MAh)の重量%、スチレン系単量体単位の重量%対無水マレイン酸系単量体単位の重量%の比率(SM/MAh)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布指数(PDI)(Q)を表1に示す。
3.有機リン化合物:ビス(2,6‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐メチルフェニル)ペンタエリスリトール‐ジホスファイト。
4.熱安定剤:式(1)で表される熱安定剤(R1は、メチル、R2およびR3は、いずれも第3級アミル、R4は、水素)。
5.酸化防止剤:3,9‐ビス(2‐(3‐(3‐トリス‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)プロピオニルオキシ)‐1,1‐ジメチルエチル)‐2,4,8,10‐テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン。
6.紫外線吸収剤:2,2’‐メチレンビス[6‐(ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐tert‐オクチルフェノール]。引火点は420.5℃±35.7℃。
[評価項目]
透過率(T%):実施例1〜12および比較例1〜2のポリメタクリレート組成物を直径が5.5cmおよび厚さが3mmのディスク試験片にした後、ヘーズメーター(Haze Meter NDH 2000N)で測定した(単位:%)。市販の光学フィルムの要求に基づくと、通常、90%よりも高い透過率を有するのが望ましい。
ヘーズ(HAZE):実施例1〜12および比較例1〜2のポリメタクリレート組成物を直径が5.5cmおよび厚さが3mmのディスク試験片にした後、ヘーズメーター(Haze Meter NDH 2000N)で測定した(単位:%)。市販の光学フィルムの要求に基づくと、通常、1.5よりも小さいヘーズを有するのが望ましい。
黄化指数(YI):実施例1〜12および比較例1〜2のポリメタクリレート組成物を直径が5.5cmおよび厚さが3mmのディスク試験片にした後、日本電色工業株式会社社製のコンピューター分光光度計SA‐2000で測定した。
ガラス転移温度(Tg):実施例1〜12および比較例1〜2のポリメタクリレート組成物を示差走査熱量計(differential scanning calorimetry, DSC)で測定した(単位:℃)。
熱劣化温度(5%重量減少温度、Td):実施例10〜12の5mgのポリメタクリレート組成物をそれぞれサンプルとして使用した。サンプルを熱重量分析計(thermogravimetric analyzer, TGA)に置いた後、次の条件で分析した:窒素雰囲気の下で、温度を20℃/分の加熱速度で100℃〜600℃まで上げ、5%重量減少の温度を測定した。
実施例1〜9
実施例1〜9は、表2に記載した各比率に基づいて成分を混合した後、240℃の押出機で混合および押出造粒(extrusion granulating)することによって作製されたポリメタクリレート組成物である。ヘーズ(HAZE)、黄化指数(YI)、透過率(T%)、およびガラス転移温度(Tg)の検出結果も表2に記録している。
比較例1〜2
比較例1〜2は、実施例1〜9と同じ方法で表2に記載した各成分比率に基づいて作製されたポリメタクリレート組成物である。ヘーズ(HAZE)、黄化指数(YI)、透過率(T%)、およびガラス転移温度(Tg)の検出結果も表2に記録している。
表2において、MMA%、MA%、SM%、およびMAh%は、それぞれポリメタクリレート組成物中のメチルメタクリレート単量体単位(MMA)、メタクリレート単量体単位(MA)、スチレン系単量体単位(SM)、および無水マレイン酸系単量体単位(MAh)の各割合である。
実施例1〜9および比較例1〜2の結果からわかるように、ポリメタクリレート組成物が50〜85重量部のメタクリレート系重合体および15〜50重量部のスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を含み、同時にスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体が76.5%〜90%のスチレン系単量体単位および10%〜23.5%の無水マレイン酸系単量体単位を含み、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の分子量分布指数(PDI)の範囲が1.5〜2.05である時、ポリメタクリレート組成物は、透過率、ヘーズ、および黄化指数の面で好ましい性能を有する。比較例1におけるポリメタクリレート組成物のスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体は、スチレン系単量体単位の含有量が比較的少なく、実施例1〜9よりもヘーズおよび黄化指数の面で良くない性能を有し;スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を含まない比較例2は、透過率、ヘーズ、および黄化指数の面で好ましい性能を有するが、耐熱性(ガラス転移温度、Tg)が実施例1〜9よりもずっと低い。そのため、ポリメタクリレート組成物が50〜85重量部のメタクリレート系重合体および15〜50重量部のスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体を含み、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体中のスチレン系単量体単位および無水マレイン酸系単量体単位の含有量がそれぞれ76.5%〜90%および10%〜23.5%に制御され、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体の分子量分布指数(PDI)の範囲が1.5〜2.05である時、ポリメタクリレート組成物は、いずれも好ましい耐熱性(高ガラス転移温度)および光学特性(高透過率、低ヘーズ、および低黄化指数)を有する。
実施例10〜12
実施例10〜12は、表3に記載した各比率に基づいてPMMAとSMA1を混合してから、熱安定剤、酸化防止剤、有機リン化合物、および紫外線吸収剤で混合し、その後、240℃の押出機で押出造粒することによって作製されたポリメタクリレート組成物である。メタクリレート系重合体(PMMA)とスチレン系‐無水マレイン酸系共重合体(SMA1)の合計量は、100重量部である。表3に記載した熱安定剤、酸化防止剤、有機リン化合物、および紫外線吸収剤の量は、高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography, HPLC)を使用して実施例10〜12のポリメタクリレート組成物から測定した実際の含有量の結果である。ヘーズ(HAZE)、黄化指数(YI)、透過率(T%)、ガラス転移温度(Tg)、および熱劣化温度(Td)の検出結果も表3に記録している。
実施例10〜12の結果からわかるように、200ppm〜900ppmの有機リン化合物を有する実施例11および12は、比較的優れた耐熱性(比較的高いTg)および比較的優れた熱安定性(比較的高いTd)を維持することができる。つまり、有機リン化合物の存在により、組成物の熱劣化温度を上げることができる。そのため、スチレン系‐無水マレイン酸系共重合体(SMA)は開封されにくいため、高い耐熱性を維持することができる。また、200ppm〜900ppmの有機リン化合物および10,000ppm〜50,000ppmの紫外線吸収剤を含む実施例11および12は、優れた黄化指数(YI)を有する。
また、表3に示すように、200ppm〜900ppmの有機リン化合物および500ppm〜2,000ppmの酸化防止剤を含む実施例11および12は、有機リン化合物および酸化防止剤の作用の下で、比較的優れたヘーズ性能および高い透過率を有する。