JP2019115257A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】インバータのデッドタイムを補償し、電流波形の歪み改善と電流制御の応答性の向上を図り、音や振動、リップルを抑制した電動パワーステアリング装置を提供する。【解決手段】モータ回転角(電気角)の関数に基づいてインバータのデッドタイム補償値を演算し、デッドタイム補償値をdq軸上の電圧指令値に加算(フィードフォワード)で補償することで、チューニング作業もなく、インバータのデッドタイムを補償し、電流波形の歪み改善と電流制御の応答性の向上を図る。【選択図】図5

Description

本発明は、3相ブラシレスモータの駆動をdq軸回転座標系でベクトル制御すると共に、モータ回転角(電気角)の関数(dq軸角度若しくは3相角度−デッドタイム補償値基準テーブル)に基づいてインバータのデッドタイムを補償して滑らかで、操舵音のないアシスト制御を可能とした電動パワーステアリング装置に関する。
車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)は、アクチュエータとしてのモータの駆動力を、減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(パルス幅変調)制御のDutyの調整で行っている。
電動パワーステアリング装置の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の舵角θを検出する舵角センサ14と、ハンドル1の操舵トルクThを検出するトルクセンサ10とが設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、モータ20に連結されたレゾルバ等の回転センサから舵角(モータ回転角)θを得ることもできる。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
このような電動パワーステアリング装置において、コントロールユニット30は主としてCPU(Central Processing Unit)(MPU(Micro Processor Unit)やMCU(Micro Controller Unit)等を含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと、例えば図2に示されるような構成となっている。
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTh及び車速センサ12からの車速Vsは操舵補助指令値演算部31に入力され、操舵補助指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて操舵補助指令値Iref1を演算する。演算された操舵補助指令値Iref1は加算部32Aで、特性を改善するための補償部34からの補償信号CMと加算され、加算された操舵補助指令値Iref2が電流制限部33で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ電流検出値Imと減算される。
減算部32Bでの減算結果である偏差ΔI(=Irefm−Im)はPI制御部35でPI(比例積分)等の電流制御をされ、電流制御された電圧制御指令値Vrefが変調信号(三角波キャリア)CFと共にPWM制御部36に入力されてDuty指令値を演算され、Duty指令値を演算されたPWM信号でインバータ37を介してモータ20をPWM駆動する。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bに入力されてフィードバックされる。
補償部34は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)を加算部344で慣性補償値342と加算し、その加算結果に更に加算部345で収れん性制御値341を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部32Aに入力し、特性改善を実施する。
近年、電動パワーステアリング装置のアクチュエータは3相ブラシレスモータが主流となっていると共に、電動パワーステアリング装置は車載製品であるため、稼動温度範囲が広く、フェールセーフの観点からモータを駆動するインバータは家電製品を代表とする一般産業用と比較して、デッドタイムを大きく(産業用機器<EPS)する必要がある。一般にスイッチング素子(例えばFET(Field-Effect Transistor))にはOFFの際に遅れ時間があるため、上下アームのスイッチング素子のOFF/ON切り換えを同時に行うと、直流リンクを短絡する状況になり、これを防ぐため、上下アーム両方のスイッチング素子がOFFになる時間(デッドタイム)を設けている。
その結果、電流波形が歪み、電流制御の応答性や操舵感が悪化する。例えばハンドルがオンセンター付近にある状態でゆっくり操舵すると、トルクリップル等による不連続な操舵感などが生じる。また、中・高速操舵時におけるモータの逆起電圧や、巻線間の干渉電圧が電流制御に対して外乱として作用するため、転追性や切り返し操舵時の操舵感を悪化させている。
3相ブラシレスモータのロータの座標軸であるトルクを制御するq軸と、磁界の強さを制御するd軸とを独立に設定し、dq軸が90°の関係にあることから、そのベクトルで各軸に相当する電流(d軸電流指令値及びq軸電流指令値)を制御するベクトル制御方式が知られている。
図3は、ベクトル制御方式で3相ブラシレスモータ100を駆動制御する場合の構成例を示しており、操舵トルクTh、車速Vs等に基づいて2軸(dq軸座標系)の操舵補助指令値(Iref2(idref,iqref))が演算され、最大値を制限された2軸のd軸電流指令値id *及びq軸電流指令値iq *はそれぞれ減算部131d及び131qに入力され、減算部131d及び131qで求められた電流偏差Δid *及びΔiq *はそれぞれPI制御部120d及び120qに入力される。PI(Proportional-Intefral)制御部120d及び120qでPI制御された電圧指令値vd及びvqは、それぞれ減算部141d及び加算部141qに入力され、減算部141d及び加算部141qで求められた指令電圧Δvd及びΔvqはdq軸/3相交流変換部150に入力される。dq軸/3相交流変換部150で3相に変換された電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*はPWM制御部160に入力され、演算された3相のDuty指令値(Dutyu,Dutyv,Dutyw)に基づくPWM信号UPWM,VPWM,WPWMにより、図4に示すような上下アームのブリッジ構成で成るインバータ(インバータ印加電圧VR)161を介してモータ100が駆動される。上側アームはスイッチング素子としてのFETQ1,Q3,Q5で構成され、下側アームはFETQ2,Q4,Q6で構成されている。
モータ100の3相モータ電流iu,iv,iwは電流検出器162で検出され、検出された3相モータ電流iu,iv,iwは3相交流/dq軸変換部130に入力され、3相交流/dq軸変換部130で変換された2相のフィードバック電流id及びiqはそれぞれ減算部131d及び131qに減算入力されると共に、d−q非干渉制御部140に入力される。また、モータ100には回転センサ等が取り付けられており、センサ信号を処理する角度検出部110からモータ回転角θ及びモータ回転数(回転速度)ωが出力される。モータ回転角θはdq軸/3相交流換部150及び3相交流/dq軸変換部130に入力され、モータ回転数ωはd−q非干渉制御部140に入力される。d−q非干渉制御部140からの2相の電圧vd1 *及びvq1 *はそれぞれ減算部121d及び加算部121qに入力され、減算部121d及び加算部121qで指令電圧Δvd及びΔvqが算出される。指令電圧Δvd及びΔvqがdq軸/3相交流変換部150に入力され、PWM制御部160及びインバータ161を介してモータ100が駆動される。
このようなベクトル制御方式の電動パワーステアリング装置は、運転者の操舵をアシストする装置であると同時に、モータの音や振動、リップル等はハンドルを介して運転者へ力の感覚として伝達される。インバータを駆動するパワーデバイスは一般的にFETが用いられており、モータへ通電を行うが、3相モータの場合には、図4に示されるように各相毎に上下アームの直列接続されたFETが用いられている。上下アームのFETは交互にON/OFFを繰り返すが、FETは理想スイッチではなく、ゲート信号の指令通りに瞬時にON/OFFせず、ターンオン時間やターンオフ時間を要する。このため、上側アームFETへのON指令と下側アームのOFF指令が同時になされると、上側アームFETと下側アームFETが同時にONになって、上下アームが短絡する問題がある。FETのターンオン時間とターンオフ時間には差があり、同時にFETに指令を出した場合、上側FETにON指令を出してターンオン時間が短い場合(例えば100ns)、直ぐにFETがONになり、下側FETにOFF指令を出してもターンオフ時間が長い場合(例えば400ns)、直ぐにFETがOFFにならず、瞬間的に上側FETがON、下側FETがONになる状態(例えば、400ns−100ns間、ON−ON)が発生することがある。
そこで、上側アームFETと下側アームFETが同時にONすることの無い様に、ゲート駆動回路にデッドタイムという所定時間をおいてON信号を与えることが行われる。このデッドタイムは非線形であるため電流波形は歪み、制御の応答性能が悪化し、音や振動、リップルが発生する。コラム式電動パワーステアリング装置の場合、ハンドルと鋼製のコラム軸で接続されるギアボックスに直結されるモータの配置が、その構造上運転者に極めて近い位置となっているため、モータに起因する音、振動、リップル等には、下流アシスト方式の電動パワーステアリング装置に比べて、特に配慮する必要がある。
インバータのデッドタイムを補償する手法として、従来はデッドタイムが発生するタイミングを検出して補償値を足し込んだり、電流制御におけるdq軸上の外乱オブザーバによってデッドタイムを補償している。
インバータのデッドタイムを補償する電動パワーステアリング装置は、例えば特許第4681453号公報(特許文献1)、特開2015−171251号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1では、モータ、インバータを含む電流制御ループのリファレンスモデル回路に電流指令値を入力して電流指令値を基にモデル電流を作成し、モデル電流を基にインバータのデッドタイムの影響を補償するデッドバンド補償回路を備えている。また、特許文献2では、Duty指令値に対してデッドタイム補償値に基づく補正を行うデッドタイム補償部を備え、電流指令値に基づいてデッドタイム補償値の基礎値である基本補償値を演算する基本補償値演算部と、基本補償値に対してLPF(Low Pass Filter)に対応するフィルタリング処理を施すフィルタ部とを有している。
特許第4681453号公報 特開2015−171251号公報
特許文献1の装置は、q軸電流指令値の大きさによるデッドタイム補償量の計算と3相電流リファレンスモデルとを使用して、補償符号を推定する方式である。補償回路の出力値が、所定の固定値以下ではモデル電流に比例する変化値であり、所定の固定値以上では、固定値とモデル電流に比例する変化値の加算値であり、電流指令から電圧指令へと出力されるが、所定の固定値を出力するヒステリシス特性を決めるためのチューニング作業が必要である。
また、特許文献2の装置は、デッドタイム補償値を決定する際、q軸電流指令値とそれをLPF処理した補償値とでデッドタイム補償を行っており、遅れが生じ、モータへの最終的な電圧指令に対して、デッドタイム補償値を操作するものではないという問題がある。
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、ベクトル制御方式の電動パワーステアリング装置において、チューニング作業もなく、インバータのデッドタイムを補償し、電流波形の歪み改善と電流制御の応答性の向上を図り、音や振動、リップルを抑制した電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいてdq軸の操舵補助指令値を演算し、前記操舵補助指令値からdq軸電圧指令値を演算し、前記dq軸電圧指令値を3相Duty指令値に変換し、PWM制御のインバータにより3相ブラシレスモータを駆動制御し、車両の操舵機構にアシストトルクを付与するベクトル制御方式の電動パワーステアリング装置に関し、本発明の上記目的は、モータ回転角に基づいて3相デッドタイム基準補償値を演算する角度−デッドタイム補償値関数部と、インバータ印加電圧に基づいて電圧感応ゲインを演算するインバータ印加電圧感応ゲイン演算部と、前記操舵補助指令値に応じて補償量可変のための電流指令値感応ゲインを演算する電流指令値感応ゲイン演算部と、前記3相デッドタイム基準補償値に前記電圧感応ゲインを乗算してdq軸に変換して第1のdq軸デッドタイム補償値とし、前記第1のdq軸デッドタイム補償値に前記電流指令値感応ゲインを乗算して第2のdq軸デッドタイム補償値とし、前記dq軸電圧指令値に前記第2のdq軸デッドタイム補償値を加算するデッドタイム補償値出力部と、前記dq軸電圧指令値と前記第2のdq軸デッドタイム補償値の加算結果であるdq軸指令電圧を3相に変換して3次高調波を重畳する空間ベクトル変調部とを具備し、前記空間ベクトル変調部から出力される3相電圧指令値に基づいて前記3相Duty指令値を演算し、前記dq軸上で前記インバータのデッドタイム補償を行うことにより達成される。
本発明の電動パワーステアリング装置によれば、モータ回転角(電気角)の関数に基づいてインバータのデッドタイム補償値を演算し、デッドタイム補償値をdq軸上の電圧指令値に加算(フィードフォワード)で補償している。これにより、チューニング作業もなく、インバータのデッドタイムを補償し、電流波形の歪み改善と電流制御の応答性の向上を図ることができる。また、デッドタイム補償値の大きさ及び方向を操舵補助指令値(iqref)により調整して可変し、過補償にならないようにしている。
モータ回転角(電気角)の関数に基づくデッドタイム補償により制御が滑らかになるので、モータの音や振動、リップルを抑制することができる。また、本発明は、モータ角度と3相電流の位相が合う低速及び中速操舵の領域において補償精度が高く、3相の補償波形が矩形波でない場合においても補償可能である。
一般的な電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。 電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。 ベクトル制御方式の構成例を示すブロック図である。 一般的なインバータの構成例を示す結線図である。 本発明の構成例(第1実施形態)を示すブロック図である。 本発明に係るデッドタイム補償部の構成例を詳細に示すブロック図である。 電流指令値感応ゲイン部の構成例を示すブロック図である。 電流指令値感応ゲイン部内のゲイン部の特性図である。 電流指令値感応ゲイン部の特性例を示す特性図である。 補償符号推定部の動作例を示す波形図である。 インバータ印加電圧感応ゲイン部の構成例を示すブロック図である。 インバータ印加電圧感応ゲイン部の特性例を示す特性図である。 位相調整部の特性例を示す特性図である。 各相角度−デッドタイム補償値関数部の動作例を示す線図である。 空間ベクトル変調部の構成例を示すブロック図である。 空間ベクトル変調部の動作例を示す線図である。 空間ベクトル変調部の動作例を示す線図である。 空間ベクトル変調部の動作例を示すタイミングチャートである。 空間ベクトル変調の効果を示す波形図である。 本発明(第1実施形態)の効果を示す波形図である。 本発明(第1実施形態)の効果を示す波形図である。 本発明の構成例(第2実施形態)を示すブロック図である。 本発明に係るデッドタイム補償部の構成例を詳細に示すブロック図である。 各相角度−デッドタイム補償値関数部の動作例を示す線図である。 dq軸角度−デッドタイム補償値基準テーブルの出力電圧特性を示す特性図である。 本発明(第2実施形態)の効果を示す波形図である。 本発明(第2実施形態)の効果を示す波形図である。 本発明の構成例(第3実施形態)を示すブロック図である。 本発明に係るデッドタイム補償部の構成例を詳細に示すブロック図である。 本発明(第3実施形態)の効果を示す波形図である。 本発明(第3実施形態)の効果を示す波形図である。
本発明は、ECUのインバータのデッドタイムの影響により電流歪みが発生し、トルクリップルの発生や操舵音の悪化などの問題を解消するために、デッドタイム補償値をモータ回転角(電気角)に応じた関数とし、dq軸若しくは空間ベクトル変調後の3相電圧指令値にフィードフォワードで補償するようにしている。モータ回転角(電気角)に応じた関数で予めオフラインでdq軸若しくは3相のデッドタイム補償値を求め、その出力波形を基にdq軸角度(3相角度)−デッドタイム補償値基準テーブルを作成し、dq軸角度(3相角度)−デッドタイム補償値基準テーブルによりdq軸若しくは3相電圧指令値にフィードフォワードでデッドタイム補償するようにしている。
dq軸若しくは3相指令部の操舵補助指令値により適切なデッドタイム補償量の調整と、補償方向の推定ができると共に、インバータ印加電圧により適切なデッドタイム補償量に調整する。また、実時間上でモータ回転角によるデッドタイム補償値を演算し、モータ回転角に応じたデッドタイム補償値を、dq軸若しくは3相電圧指令値上で補償することを可能としている。
低速・中速操舵領域において、従来の3相型デッドタイム補償では、特定の相電流の振幅で補償ずれを引き起こしたり、特定の回転数で補償ずれを引き起こしたりする問題(操舵音悪化、操舵フィーリング悪化)が発生していた。従来の3相型デッドタイム補償ではタイミング調整するには、回転数と相電流の振幅の大きさを考慮する必要があり、両方を考慮した最適な調整は困難であった。また、従来の3相型デッドタイム補償では、3相の補償波形が矩形波でない場合、正確に補償できない問題があった。このような問題を解決するために、低速・中速操舵状態に効果の大きい本発明を提案するものである。
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図5は本発明(第1実施形態)の全体構成を図3に対応させて示しており、dq軸上のデッドタイム補償値vd *及びvq *を演算するデッドタイム補償部200が設けられている。デッドタイム補償部200には、図2の操舵補助指令値Iref2に相当するq軸の操舵補助指令値iqrefが入力されると共に、モータ回転角θ及びモータ回転数ωが入力されている。また、インバータ161に印加されているインバータ印加電圧VRが、デッドタイム補償部200に入力されている。インバータ161には、PWM制御部160内のPWM制御回路(図示せず)からPWM信号(UPWM、VPWM、WPWM)が入力されている。
操舵補助指令値idref及びiqrefの最大値を制限されたd軸電流指令値id *及びq軸電流指令値iq *は、それぞれ減算部131d及び131qに入力され、減算部131d及び131qでフィードバック電流id及びiqとの電流偏差Δid *及びΔi *が演算される。演算された電流偏差Δid *はPI制御部120dに入力され、演算された電流偏差Δi *はPI制御部120qに入力される。PI制御されたd軸電圧指令値vd及びq軸電圧指令値vqはそれぞれ加算部121d及び121qに入力され、後述するデッドタイム補償部200からのデッドタイム補償値vd *及びvq *を加算されて補償され、それぞれ補償された電圧値が減算部141d及び加算部141qに入力される。減算部141dにはd−q非干渉制御部140からの電圧vd1 *が入力され、その差である電圧指令値vd **が得られ、加算部141qにはd−q非干渉制御部140からの電圧vq1 *が入力され、その加算結果で電圧指令値vq **が得られる。デッドタイムを補償された電圧指令値vd **及びvq **は、dq軸の2相からU相,V相,W相の3相に変換し、3次高調波を重畳する空間ベクトル変調部300に入力される。空間ベクトル変調部300でベクトル変調された3相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*はPWM制御部160に入力され、モータ100は前述と同様にPWM制御部160及びインバータ161を介して駆動制御される。
次に、デッドタイム補償部200について説明する。
デッドタイム補償部200は、電流制御遅れモデル201、補償符号推定部202、乗算部203、204d及び204q、加算部221、位相調整部210、インバータ印加電圧感応ゲイン部220、角度−デッドタイム補償値関数部230U、230V及び230W、乗算部231U、231V及び231W、3相交流/dq軸変換部240、電流指令値感応ゲイン部250で構成されている。
なお、乗算部231U、231V及び231Wと3相交流/dq軸変換部240とでデッドタイム補償値出力部を構成している。また、電流制御遅れモデル201、補償符号推定部202、電流指令値感応ゲイン部250、乗算部203で電流指令値感応ゲイン演算部を構成している。
デッドタイム補償部200の詳細構成は図6であり、以下では図6を参照して説明する。
q軸操舵補助指令値iqrefは、電流制御遅れモデル201に入力される。dq軸の電流指令値id *及びiq *が実電流に反映されるまでに、ECUのノイズフィルタ等により遅れが生じる。このため、直接電流指令値iq *から符号を判定しようとすると、タイミングずれが生じる場合がある。この問題を解決するため、本発明では、電流制御全体の遅れを1次のフィルタモデルとして近似し、位相差を改善する。本実施形態の電流制御遅れモデル201は、Tをフィルタ時定数として、下記数1の1次フィルタとしている。電流制御遅れモデル201は、2次以上のフィルタをモデルとした構成でもよい。
Figure 2019115257

電流制御遅れモデル201から出力される電流指令値Icmは、電流指令値感応ゲイン部250及び補償符号推定部202に入力される。低電流領域においてデッドタイム補償量が過補償になる場合があり、電流指令値感応ゲイン部250は、電流指令値Icm(操舵補助指令値iqref)の大きさにより補償量を下げるゲインを算出する機能を持っている。また、電流指令値Icm(操舵補助指令値iqref)からのノイズなどで、補償量を下げるゲインが振動しないように、加重平均フィルタを使用してノイズの低減処理を行っている。
電流指令値感応ゲイン部250は図7に示すような構成であり、電流指令値Icmは絶対値部251で絶対値とされる。絶対値は入力制限部252で最大値を制限され、最大値を制限された絶対値の電流指令値がスケール変換部253を経て加重平均フィルタ254に入力される。加重平均フィルタ254でノイズを低減された電流指令値Iamは減算部255に加算入力され、減算部255で所定のオフセットOSを減算する。オフセットOSを減算する理由は、微小電流指令値によるチャタリング防止のためであり、オフセットOS以下の入力値を最小のゲインに固定する。オフセットOSは一定値である。減算部255でオフセットOSを減算された電流指令値Iasはゲイン部256に入力され、図8に示すようなゲイン特性に従って電流指令値感応ゲインGcを出力する。
電流指令値感応ゲイン部250から出力される電流指令値感応ゲインGcは、入力される電流指令値Icmに対して例えば図9に示すような特性である。即ち、所定電流Icm1まで一定ゲインGcc1であり、所定電流Icm1から所定電流Icm2(>Icm1)まで線形(若しくは非線形)に増加し、所定電流Icm2以上で一定ゲインGcc2を保持する特性である。なお、所定電流Icm1は0であっても良い。
補償符号推定部202は入力される電流指令値Icmに対して、図10(A)及び(B)に示すヒステリシス特性で正(+1)又は負(−1)の補償符号SNを出力する。電流指令値Icmがゼロクロスするポイントを基準として補償符号SNを推定するが、チャタリング抑制のためにヒステリシス特性となっている。推定された補償符号SNは乗算部203に入力される。なお、ヒステリシス特性の正負閾値は適宜変更可能である。
単純に相電流指令値モデルの電流符号からデッドタイム補償値の符号を決めた場合、低負荷においてチャタリングが発生する。オンセンターで軽く左右にハンドルを切った時に、トルクリップルが発生する。この問題を改善するために符号判定にヒステリシスを設け、設定した電流値を超えて符号が変化した場合以外、現在の符号を保持してチャタリングを抑制する。
電流指令値感応ゲイン部250からの電流指令値感応ゲインGcは乗算部203に入力され、乗算部203は補償符号SNを乗算した電流指令値感応ゲインGcs(=Gc×SN)を出力する。電流指令値感応ゲインGcsは、乗算部204d及び204qに入力される。
また、最適なデッドタイム補償量はインバータ印加電圧VRに応じて変化するので、本発明ではインバータ印加電圧VRに応じた電圧感応ゲインGvを演算し、デッドタイム補償量を可変するようにしている。インバータ印加電圧VRを入力して電圧感応ゲインGvを出力するインバータ印加電圧感応ゲイン部220は図11に示す構成であり、インバータ印加電圧VRは入力制限部221で正負最大値を制限され、最大値を制限されたインバータ印加電圧VRはインバータ印加電圧/デッドタイム補償ゲイン変換テーブル222に入力される。インバータ印加電圧/デッドタイム補償ゲイン変換テーブル222の特性は、例えば図12に示すようになっている。変曲点のインバータ印加電圧9.0V及び15.0Vと、電圧感応ゲイン“0.7”及び“1.2”は一例であり、適宜変更可能である。演算された電圧感応ゲインGvは、乗算部231U,231V,231Wに入力される。
更に、モータ回転数ωによりデッドタイム補償のタイミングを早めたり、遅くしたい場合、モータ回転数ωに応じて調整角度を算出する機能のために位相調整部210を有している。位相調整部210は、進角制御の場合は図13に示すような特性であり、算出された位相調整角Δθは加算部221に入力され、検出されたモータ回転角θと加算される。加算部221の加算結果であるモータ回転角θ(=θ+Δθ)は、角度−デッドタイム補償値関数部230U,230V,230Wに入力されると共に、3相交流/dq軸変換部240に入力される。
モータ電気角を検出してDuty指令値を演算してから、実際にPWM信号に反映されるまで数十〜百[μs]の時間遅れがある。この間、モータが回転しているので、演算時のモータ電気角と反映時のモータ電気角とで位相ずれが発生する。この位相ずれを補償するため、モータ回転数ωに応じて進角を行い、位相を調整している。
角度−デッドタイム補償値関数部230U,230V,230Wは図14に詳細を示すように、位相調整されたモータ回転角θに対して、電気角0〜359[deg]の範囲で120[deg]ずつ位相のずれた矩形波の各相デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtを出力する。デッドタイム補償値角度関数部230U,230V,230Wは、3相で必要とされるデッドタイム補償値を角度による関数とし、ECUの実時間上で計算し、3相のデッドタイム基準補償値Udt, Vdt, Wdtを出力する。デッドタイム基準補償値の角度関数は、ECUのデッドタイムの特性により異なる。
デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtはそれぞれ乗算部231U,231V,231Wに入力され、電圧感応ゲインGvと乗算される。電圧感応ゲインGvを乗算された3相のデッドタイム補償値Udtc (=Gv・Udt),Vdtc(=Gv・Vdt),Wdtc(=Gv・Wdt)は3相交流/dq軸変換部240に入力される。3相交流/dq軸変換部240は、モータ回転角θに同期して、3相のデッドタイム補償値Udtc,Vdtc,Wdtcを2相のdq軸のデッドタイム補償値vda *及びvqa *に変換する。デッドタイム補償値vda *及びvqq *はそれぞれ乗算部204d及び204qに入力され、電流指令値感応ゲインGcsと乗算される。乗算部204d及び204qにおける乗算結果がデッドタイム補償値vd *及びvq *であり、デッドタイム補償値vd *及びvq *はそれぞれ加算部121d及び121qで電圧指令値vd及びvqと加算され、電圧指令値vd **及びvq **として空間ベクトル変調部300に入力される。
このように第1実施形態では、デッドタイム補償値をモータ回転角(電気角)に応じた3相の関数とし、3相/dq軸変換することにより、dq軸上の電圧指令値にフィードフォワードで補償する構成となっている。デッドタイムの補償符号についてはdq軸の操舵補助指令値を使用し、操舵補助指令値iqrefの大きさやインバータ印加電圧VRの大きさによって、補償量が最適な大きさになるように可変となっている。
次に、空間ベクトル変調について説明する。
空間ベクトル変調部300は図15に示すように、dq軸空間の2相電圧(vd **、vq **)を3相電圧(Vua,Vva,Vwa)に変換し、3相電圧(Vua,Vva,Vwa)に3次高調波を重畳する機能を有していれば良く、例えば本出願人による特開2017−70066、特願2015−239898等で提案している空間ベクトル変調の手法を用いても良い。
即ち、空間ベクトル変調は、dq軸空間の電圧指令値vd **及びvq **、モータ回転角θ及びセクター番号n(#1〜#6)に基づいて、以下に示すような座標変換を行い、ブリッジ構成のインバータのFET(上側アームQ1、Q3、Q5、下側アームQ2、Q4、Q6)のON/OFFを制御する、セクター#1〜#6に対応したスイッチングパターンS1〜S6をモータに供給することによって、モータの回転を制御する機能を有する。座標変換については、空間ベクトル変調において、電圧指令値vd **及びvq **は、数2に基づいて、α−β座標系における電圧ベクトルVα及びVβに座標変換が行われる。この座標変換に用いる座標軸及びモータ回転角θの関係については、図16に示す。
Figure 2019115257

そして、d−q座標系における目標電圧ベクトルとα−β座標系における目標電圧ベクトルとの間には、数3のような関係が存在し、目標電圧ベクトルVの絶対値は保存される。
Figure 2019115257

空間ベクトル制御におけるスイッチングパターンでは、インバータの出力電圧をFET(Q1〜Q6)のスイッチングパターンS1〜S6に応じて、図17の空間ベクトル図に示す8種類の離散的な基準電圧ベクトルV0〜V7(π/3[rad]ずつ位相の異なる非零電圧ベクトルV1〜V6と零電圧ベクトルV0,V7)で定義する。そして、それら基準出力電圧ベクトルV0〜V7の選択とその発生時間を制御するようにしている。また、隣接する基準出力電圧ベクトルによって挟まれた6つの領域を用いて、空間ベクトルを6つのセクター#1〜#6に分割することができ、目標電圧ベクトルVは、セクター#1〜#6のいずれか1つに属し、セクター番号を割り当てることができる。Vα及びVβの合成ベクトルである目標電圧ベクトルVが、α−β空間において正6角形に区切られた図17に示されたようなセクター内のいずれに存在するかは、目標電圧ベクトルVのα−β座標系における回転角γに基づいて求めることができる。また、回転角γはモータの回転角θとd−q座標系における電圧指令値vd **及びvq **の関係から得られる位相δの和として、γ=θ+δで決定される。
図18は、空間ベクトル制御におけるインバータのスイッチングパターンS1、S3,S5によるディジタル制御で、インバータから目標電圧ベクトルVを出力させるために、FETに対するON/OFF信号S1〜S6(スイッチングパターン)におけるスイッチングパルス幅とそのタイミングを決定する基本的なタイミングチャートを示す。空間ベクトル変調は、規定されたサンプリング期間Ts毎に演算などをサンプリング期間Ts内で行い、その演算結果を次のサンプリング期間Tsにて、スイッチングパターンS1〜S6における各スイッチングパルス幅とそのタイミングに変換して出力する。
空間ベクトル変調は、目標電圧ベクトルVに基づいて求められたセクター番号に応じたスイッチングパターンS1〜S6を生成する。図18には、セクター番号#1(n=1)の場合における、インバータのFETのスイッチングパターンS1〜S6の一例が示されている。信号S1、S3及びS5は、上側アームに対応するFETQ1、Q3、Q5のゲート信号を示している。横軸は時間を示しており、Tsはスイッチング周期に対応し、8期間に分割され、T0/4、T1/2、T2/2、T0/4、T0/4、T2/2、T1/2及びT0/4で構成される期間である。また、期間T1及びT2は、それぞれセクター番号n及び回転角γに依存する時間である。
空間ベクトル変調がない場合、本発明のデッドタイム補償をdq軸上に適用し、デッドタイム補償値のみdq軸/3相変換したデッドタイム補償値波形(U相波形)は、図19の破線のような3次成分が除去された波形となってしまう。V相及びW相についても同様である。dq軸/3相変換の代わりに空間ベクトル変調を適用することにより、3相信号に3次高調波を重畳させることが可能となり、3相変換によって欠損してしまう3次成分を補うことができ、図19の実線のような理想的なデッドタイム補償波形を生成することが可能となる。
図20及び図21は本発明の効果を示すシミュレーション結果であり、図20はデッドタイムの補償がない場合のU相電流、d軸電流及びq軸電流を示している。本実施形態のデッドタイム補償を適用することにより、低中速操舵でのステアリング操舵状態において、図21のように相電流及びdq軸電流の波形歪みの改善(dq軸電流波形にリップルが少なく、正弦波に近い相電流波形)が確認でき、操舵時のトルクリップルの改善と操舵音の改善がみられた。
なお、図20及び図21では、代表してU相電流のみを示している。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図22は本発明(第2実施形態)の全体構成を図5に対応させて示しており、dq軸上のデッドタイム補償値vd *及びvq *を演算するデッドタイム補償部200Aが設けられており、デッドタイム補償部200Aの詳細構成は図23であり、以下では図23を参照して説明する。
デッドタイム補償部200Aには、第1実施形態と同様な構成及び動作を行う電流制御遅れモデル201、補償符号推定部202、位相補償部210、インバータ印加電圧感応テーブル220、加算部221、乗算部203、204d及び204qが設けられている。そして、第2実施形態では、加算部221からのモータ回転角モータ回転角θを入力して、d軸のデッドタイム基準補償値vdaを出力するd軸角度−デッドタイム補償値基準テーブル260dと、q軸のデッドタイム基準補償値vqaを出力するq軸角度−デッドタイム補償値基準テーブル260qとが設けられている。デッドタイム基準補償値vda及びvqaはそれぞれ乗算部205d及び205qに入力され、インバータ印加電圧感応ゲイン部220からの電圧感応ゲインGvと乗算され、電圧感応ゲインGvと乗算されたデッドタイム補償値vdb及びvqbが、それぞれ乗算部204d及び204qに入力されている。乗算部204d及び204qには電流指令値感応ゲインGcsが入力されており、デッドタイム補償値vdb及びvqbに電流指令値感応ゲインGcsを乗算した結果であるデッドタイム補償値vd *及びvq *が出力される。
dq軸角度−デッドタイム補償値基準テーブル260d及び260qは図24に詳細を示すように、オフライン上で、3相で必要とされる角度の関数であるデッドタイム補償値を計算し、dq軸上のデッドタイム補償値に変換する。即ち、第1実施形態で説明したように、3相角度−デッドタイム補償値関数部230U,230V,230Wで、位相調整されたモータ回転角θに対して、電気角0〜359[deg]の範囲で120[deg]ずつ位相のずれた矩形波の各相デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtを出力する。デッドタイム補償値角度関数部230U,230V,230Wは、3相で必要とされるデッドタイム補償値を角度による関数としてオフラインで計算し、デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtを出力する。デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtの角度関数は、ECUのデッドタイムの特性により異なる。
デッドタイム基準補償値Udt,Vdt,Wdtは3相交流/dq軸変換部261に入力され、図24に示されるような出力波形のdq軸デッドタイム補償値DT、DTに変換される。図24のdq軸出力波形を元に、角度(θ)入力による角度−デッドタイム補償値基準テーブル260d及び260qを生成する。デッドタイム補償値基準テーブル260dは図25(A)に示すように、モータ回転角θに対して鋸歯波状の出力電圧特性(d軸デッドタイム基準補償値)を有し、デッドタイム補償値基準テーブル260qは図25(B)に示すように、オフセット電圧を上乗せした波状波形の出力電圧特性(q軸デッドタイム基準補償値)を有している。
角度−デッドタイム補償値基準テーブル260d及び260qからのデッドタイム基準補償値vda及びvqaはそれぞれ乗算部205d及び205qに入力され、電圧感応ゲインGvと乗算される。電圧感応ゲインGvを乗算されたdq軸のデッドタイム補償値vda *及びvqa *はそれぞれ乗算部204d及び204qに入力され、電流指令値感応ゲインGcsと乗算される。乗算部204d及び204qからのデッドタイム補償値vd *及びvq *がそれぞれ加算部121d及び121qで電圧指令値vd及びvqと加算され、電圧指令値vd **及びvq **として空間ベクトル変調部300に入力される。
このように本発明では、デッドタイム補償値をモータ回転角(電気角)に応じた関数の角度−デッドタイム補償値基準テーブルにより算出し、デッドタイム補償値をdq軸上の電圧指令値に直接フィードフォワードで補償する構成となっている。デッドタイムの補償符号については操舵補助指令値(iqref)を使用し、操舵補助指令値の大きさやインバータ印加電圧の大きさによって、補償量が最適な大きさになるように可変となっている。
図26及び図27は、第2実施形態の効果をU相について示す実車を模擬した台上試験装置による結果であり、図26はデッドタイムの補償がない場合のU相電流、d軸電流及びq軸電流を示している。本発明のデッドタイム補償を提供することにより、低中速操舵でのステアリング操舵状態において、図27のように相電流及びdq軸電流の波形歪みの改善(dq軸電流波形にリップルが少なく、正弦波に近い相電流波形)が確認でき、操舵時のトルクリップルの改善と操舵音の改善がみられた。
次に、本発明の第3実施形態を、図5に対応させて図28に示す。デッドタイム補償部200Bの詳細は図29に示される。第3実施形態では、デッドタイム補償部200Bが3相のデッドタイム補償値Vum,Vvm,Vwmを演算し、デッドタイム補償値Vum,Vvm,Vwmを空間ベクトル変調部300からの3相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *に加算してデッドタイム補償するようにしている。
第3実施形態では、乗算部271U,271V,271Wで成る補償値調整部270が設けられており、乗算部231U,231V,231Wからのデッドタイム補償値Udtc,Vdtc,Wdtcは乗算部231U,231V,231Wに入力されて電流指令値感応ゲインGcsと乗算される。電流指令値感応ゲインGcsとの乗算結果がデッドタイム補償値Vum,Vvm,Vwmとして出力され、空間ベクトル変調後の3相の電圧指令値Vu *,Vv *,Vw *とそれぞれ加算部310U,310V,310Wで加算される。加算結果である電圧指令値Vuc *,Vvc *,Vwc *がPWM制御部160に入力される。
このように本発明では、デッドタイム補償値をモータ回転角(電気角)に応じた3相の関数とし、直接3相の電圧指令値にフィードフォワードで補償する構成となっている。デッドタイムの補償符号についてはdq軸の操舵補助指令値を使用し、操舵補助指令値の大きさやインバータ印加電圧の大きさによって、補償量が最適な大きさになるように可変となっている。
図30及び図31は本発明の効果をU相について示すシミュレーション結果であり、図30はデッドタイムの補償がない場合のU相電流、d軸電流及びq軸電流を示している。本発明のデッドタイム補償を適用することにより、低中速操舵でのステアリング操舵状態において、図31のように相電流及びdq軸電流の波形歪みの改善(dq軸電流波形にリップルが少なく、正弦波に近い相電流波形)が確認でき、操舵時のトルクリップルの改善と操舵音の改善がみられた。
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10 トルクセンサ
12 車速センサ
13 バッテリ
20、100 モータ
30 コントロールユニット(ECU)
31 操舵補助指令値演算部
35、203、204 PI制御部
36、160 PWM制御部
37,161 インバータ
110 角度検出部
130 3相交流/dq軸変換部
140 d−q非干渉制御部
200,200A,200B デッドタイム補償部
201 電流制御遅れモデル
202 補償符号推定部
210 位相調整部
220 インバータ印加電圧感応ゲイン部
230U、230V、230W 角度−デッドタイム補償値関数部
240 3相交流/dq軸変換部
250 電流指令値感応ゲイン部
270 補償値調整部
300 空間ベクトル変調部
301 2相/3相変換部
302 3次高調波重畳部

Claims (5)

  1. 少なくとも操舵トルクに基づいてdq軸の操舵補助指令値を演算し、前記操舵補助指令値からdq軸電圧指令値を演算し、前記dq軸電圧指令値を3相Duty指令値に変換し、PWM制御のインバータにより3相ブラシレスモータを駆動制御し、車両の操舵機構にアシストトルクを付与するベクトル制御方式の電動パワーステアリング装置において、
    モータ回転角に基づいて3相デッドタイム基準補償値を演算する角度−デッドタイム補償値関数部と、
    インバータ印加電圧に基づいて電圧感応ゲインを演算するインバータ印加電圧感応ゲイン演算部と、
    前記操舵補助指令値に応じて補償量可変のための電流指令値感応ゲインを演算する電流指令値感応ゲイン演算部と、
    前記3相デッドタイム基準補償値に前記電圧感応ゲインを乗算してdq軸に変換して第1のdq軸デッドタイム補償値とし、前記第1のdq軸デッドタイム補償値に前記電流指令値感応ゲインを乗算して第2のdq軸デッドタイム補償値とし、前記dq軸電圧指令値に前記第2のdq軸デッドタイム補償値を加算するデッドタイム補償値出力部と、
    前記dq軸電圧指令値と前記第2のdq軸デッドタイム補償値の加算結果であるdq軸指令電圧を3相に変換して3次高調波を重畳する空間ベクトル変調部と、
    を具備し、
    前記空間ベクトル変調部から出力される3相電圧指令値に基づいて前記3相Duty指令値を演算し、前記dq軸上で前記インバータのデッドタイム補償を行うようになっていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記電流指令値感応ゲイン演算部が、
    前記操舵補助指令値を入力して電流の遅れを補償する電流制御遅れモデルと、
    前記電流制御遅れモデルの出力の符号を推定する補償符号推定部と、
    前記電流制御遅れモデルの出力に基づいて感応ゲインを出力する電流指令値感応ゲイン部と、
    前記感応ゲインに前記符号を乗算する第1の乗算部とで構成されている請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記デッドタイム補償値出力部が、
    前記3相デッドタイム基準補償値に前記電圧感応ゲインを乗算する第2の乗算部と、
    前記第2の乗算部の3相出力を前記第1のdq軸デッドタイム補償値に変換する3相交流/dq軸変換部と、
    前記第1のdq軸デッドタイム補償値に前記電流指令値感応ゲインを乗算して前記第2のdq軸デッドタイム補償値を出力する第3の乗算部と、
    で構成されている請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記モータ回転角がモータ回転数に基づいて位相調整されている請求項1乃至3のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記空間ベクトル変調部が、
    前記dq軸指令電圧を3相に変換する2相/3相変換部と、
    前記2相/3相変換部から出力される3相電圧に前記3次高調波を重畳して前記3相電圧指令値を出力する3次高調波重畳部と、
    で構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の電動パワーステアリング装置。
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