JP2019115113A - コアの焼鈍方法、コア焼鈍システム、およびステータコア - Google Patents
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Abstract
Description
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図1は、コア焼鈍システムの構成の一例を示す図である。尚、各図において、X軸、Y軸、Z軸は、各図の向きの関係を示すものであり、○の中に●が付されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が付されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
本実施形態では、加熱対象の積層コアとして、図1に示すステータコアSを用いる場合を例に挙げて説明する。
図2は、ステータコアSおよび放射温度計130、140の配置の一例を示す図である。図2(a)は、ステータコアSを、Z軸の正の方向から負の方向に向かって見た様子の一例を示す図である。図2(b)は、図2(a)のI−I断面図である。尚、図2では、表記の都合上、ソレノイドコイル110の図示を省略する。
外周面温度取得部151は、放射温度計130により測定されたステータコアSの外周面の温度を取得する。尚、以下の説明では、放射温度計130により測定されるステータコアSの外周面の温度を必要に応じて、ステータコアSの外周面の温度の測定値と称する。
外周面温度取得部151と内周面温度取得部152は、例えば、同じサンプリング周期で温度を繰り返し取得する。
内周面温度判定部154は、内周面温度取得部152により取得されたステータコアSの内周面の温度が目標焼鈍温度TT以上であるか否かを判定する。
まず、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すことを開始する。これにより、ステータコアSが誘導加熱される。ステータコアSが誘導加熱されているときは、ステータコアSの外周面の温度が最も高くなる。その後、時間の経過と共に、ステータコアSの外周側から内周側に向けて熱伝導が起こり、この熱伝導とステータコアSを貫く磁束とによってステータコアSの内周側の温度が上昇する。尚、ステータコアSの内部の領域には、ステータコアSの外周面に比べて外気に触れる領域(露出している領域)がない。従って、ステータコアSの外周面よりも、その内側の領域の方が、温度が高くなることがあり得る。
ステップS301において、電源制御部155は、交流電源120に対し、ソレノイドコイル110への交流電流の通電を指示する。これにより交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流が流れ、ステータコアSが誘導加熱される。
この判定の結果、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回る場合、処理は、ステップS301に戻る。これにより交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流が再び流れ出し、ステータコアSの誘導加熱が再開される。
一方、ステータコアSの内周面の温度の測定値が取得された場合、処理は、ステップS307に進み、内周面温度判定部154は、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上であるか否かを判定する。この判定の結果、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上でない場合には、ステータコアSの全体が目標焼鈍温度TTになっていないものと判定され、処理は、ステップS302に戻る。一方、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上である場合には、ステータコアSの全体が目標焼鈍温度TTになったと判定され、図3のフローチャートによる処理が終了する。
図4は、ステータコアSの解析対象領域の一例を示す図である。ステータコアSの解析対象領域は、第1の領域と第2の領域とが一体となった領域である。図4において、第1の領域は、ステータコアSの(或る1つの)スロットSLを挟む位置にある2つのティースS2の領域のそれぞれを周方向において2つに等分割して得られる領域のうち、当該スロットSL側に位置する領域である。第2の領域は、ヨークS1の領域のうち、径方向において第1の領域およびスロットSLに繋がる領域である。尚、図4では、2つのティースS2の残りの半分の領域と、当該領域に繋がるヨークS1の領域とを破線で示す。
ステータコアSの高さ:30mm
ステータコアSのティースの数:24
ステータコアSの材質:35A300(厚み0.35mm)
ソレノイドコイル110の巻数:7
ソレノイドコイル110のループの径:内径:80mm、外径:90mm
ソレノイドコイル110の(軸方向)の長さ:40mm
電流:正弦波(実効値:2500A、周波数:1000Hz)
上限温度TH1:800℃
下限温度TH2:730℃
目標焼鈍温度TT:730℃
図7(a)および図7(b)において、温度が最も高い位置は、ステータコアSの解析対象領域の外周面の領域のうち、周方向および軸方向の中央の位置(即ち、外周面側温度比較位置401)であり、その温度は、約738℃であった、一方、温度が最も低い位置は、(内周面側温度比較位置402ではなく)ステータコアSの解析対象領域のティースS2の先端面に対応する位置のうち、軸方向の端の位置であり、その温度は、約725℃であった。このように、ステータコアSの温度差は約13℃になり、ステータコアSに温度分布が生じることを抑制しつつ、ステータコアSの可及的に多くの領域を目標焼鈍温度TT以上で昇温することができることが分かる。
<変形例1>
本実施形態では、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の一方の端面と、放射温度計130の測温位置との、ステータコアSの軸方向の距離L1が、ステータコアSの軸方向の長さLの0.35倍以上、0.65倍以下になる範囲が好ましいとした。しかしながら、発明が解決しようとする課題の欄で説明した悪影響は、ステータコアSの焼鈍時の温度が過剰に高くなることによるものである。
以上のように、ステータコアSの外周面の領域であれば、上限温度TH1未満とする領域を厳密に定める必要はないから、放射温度計130の測温位置は、ステータコアSの外周面の領域であれば、どの位置であってもよい。
以上のように、ステータコアSの内周面の領域であれば、目標焼鈍温度TT以上とする領域を厳密に定める必要はないから、放射温度計140の測温位置は、ステータコアSの内周面の領域であれば、どの領域であってもよい。
本実施形態では、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回ると、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開するタイミングは、このような条件が成立した場合に限定されない。例えば、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを中止してから、所定の時間が経過すると、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開してもよい。この場合、ステップS305の処理を、所定の時間が経過したか否かを判定する処理に変更すればよい。
本実施形態では、ソレノイドコイル110に流す交流電流の通電、非通電を行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ソレノイドコイル110に流す交流電流を制御していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ソレノイドコイル110に対し交流電流を非通電とすることに替えて、ソレノイドコイル110に流す交流電流の実効値を(ゼロを上回る範囲で)小さくすることと、ソレノイドコイル110に流す交流電流の周波数を低くすることとの少なくとも何れか一方を行うことができる。また、ソレノイドコイル110に対し交流電流を通電することに替えて、ソレノイドコイル110に流す交流電流の実効値を大きくすることと、ソレノイドコイル110に流す交流電流の周波数を高くすることとの少なくとも何れか一方を行うことができる。
第1、第2の実施形態では、ステータコアSを誘導加熱するための誘導加熱用コイルとしてソレノイドコイル110を例に挙げて説明した。しかしながら、誘導加熱用コイルは、ステータコアSを誘導加熱することができる構成のコイルであれば、ソレノイドコイルに限定されない。例えば、ステータコアSの高さが低い場合には、ステータコアSの軸(Z軸方向)に垂直な平面(X−Y平面)において複数回巻き回されるコイルを誘導加熱用コイルとして用いてもよい。また、ステータコアSの軸に垂直な平面において複数回巻き回した上で、ステータコアSの軸の方向に螺旋状に巻き回したコイルを誘導加熱用コイルとしてもよい。
その他、特許文献1と同様に、チャンバー内でステータコアSの誘導加熱を行ってもよい。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態で説明したようにしてソレノイドコイル110の内側にステータコアSを配置すると、ステータコアSの内周側の領域の磁束密度は、ステータコアSの外周側の領域の磁束密度よりも低くなる。このため、ステータコアSの内周側の領域の温度が高くなるまでに時間を要する場合がある。そこで、本実施形態では、第1の実施形態に対し、ステータコアSのティースS2を加熱する構成を付加する。このように本実施形態は、第1の実施形態に対し、ステータコアSのティースS2を加熱する構成を付加したものである。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
インピーダコア810a〜810xは同じものであり、例えば、棒状の複数のフェライトコアを有する。インピーダコア810a〜810xにより、ソレノイドコイル110に電流が流れることによりステータコアSの中空部分に発生する磁束を、ティースS2に集中させ、ティースS2に発生するうず電流の電流密度を増加させることができる。従って、第1の実施形態に比べ、ティースSにおける昇温速度を速めることができる。よって、ステータコアSの内周面の温度が目標焼鈍温度TT以上になるまでに要する時間を短縮することができる。
第1の実施形態の解析結果で説明したのと同じ条件で、図4に示したステータコアSの解析対象領域の各部の温度を有限要素法により解析した。ただし、本実施形態の手法においては、以下のインピーダコアが、スロットSLの周方向および径方向の中央の位置に、インピーダコアの軸方向の中央とステータコアSの軸方向の中央とが一致するように配置されるものとした。
コアの材質:フェライトコア
コアの大きさ:φ4
コアの数:24(各スロットに1つずつコアを配置)
コアの長さ:40mm
<変形例6>
本実施形態では、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)のそれぞれに、インピーダコア810a〜810xを配置する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)の全てにインピーダコアを配置する必要はない。また、インピーダコアが配置される位置は、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)に限定されない。例えば、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)に加えてまたは代えて、ティースS2の先端面と間隔を有して対向する位置にインピーダコアを配置してもよい。このように、インピーダコアの位置および数は、ステータコアSの大きさ・形状・材質等に応じて定めることができる。
本実施形態では、ステータコアSのティースS2を加熱する構成として、インピーダコアを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ステータコアSのティースS2を加熱する構成は、インピーダコアに限定されない。例えば、インピーダコアに代えてヒータ(輻射熱を発生する加熱装置)を用いてもよい。ただし、誘導加熱以外の方法でステータコアSのティースS2を加熱するのが好ましい。ソレノイドコイル110から発生する磁束と、ステータコアSのティースS2を加熱するためのコイルから発生する磁束が相互作用を起こすことによりソレノイドコイル110の内側の磁束密度が低下すること等を抑制する必要が生じる虞がある。
<変形例8>
その他、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した変形例を適用することができる。
以上説明した本発明の実施形態のうち、制御装置150で実行される処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (16)
- ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコアの焼鈍方法であって、
前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定工程と、
前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定工程と、
前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御工程と、を有し、
前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、
前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、
前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とするコアの焼鈍方法。 - 前記制御工程では、少なくとも、前記誘導加熱用コイルに対する交流電流の通電、非通電を制御することを特徴とする請求項1に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記制御工程では、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が第1の閾値を上回ると、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、その後に所定の条件が成立した場合に、前記誘導加熱用コイルに対する交流電流の通電を再開することと、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になった場合に、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、を少なくとも実行することを特徴とする請求項2に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記制御工程では、少なくとも、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記制御工程では、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が第1の閾値を上回ると、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を低減させることと、その後に所定の条件が成立した場合に、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を増加させることと、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になった場合に、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、を少なくとも実行することを特徴とする請求項4に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記所定の条件は、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回ること、または、所定の時間が経過することであることを特徴とする請求項3または5に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記所定の条件は、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回ることであり、
前記第2の閾値と、前記目標温度は同じ温度であることを特徴とする請求項6に記載のコアの焼鈍方法。 - 前記ステータコアの内周面の測温位置での温度は、前記ティースの先端面の測温位置での温度を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記ティースを加熱する加熱工程を更に有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記加熱工程では、誘導加熱以外の方法で前記ティースを加熱することを特徴とする請求項9に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記加熱工程では、インピーダコアまたはヒータを用いて前記ティースを加熱することを特徴とする請求項10に記載のコアの焼鈍方法。
- 前記第1の測定工程では、前記ステータコアの外周面の複数の測温位置における温度を測定し、
前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の複数の測温位置での温度の代表値に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。 - 前記第2の測定工程では、前記ステータコアの内周面の複数の測温位置における温度を測定し、
前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の複数の測温位置での温度の代表値が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。 - 前記第1の測定工程では、前記ステータコアが、その軸を回転軸として回転されているときの複数のタイミングで、前記ステータコアの外周面の温度を測定し、
前記第2の測定工程では、前記ステータコアが、その軸を回転軸として回転されているときの複数のタイミングで、前記ステータコアの内周面の温度を測定し、
前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の複数のタイミングにおける温度の代表値が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の複数のタイミングにおける温度の代表値に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。 - ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコア焼鈍システムであって、
前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定手段と、
前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定手段と、
前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御手段と、を有し、
前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、
前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、
前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とするコア焼鈍システム。 - 請求項1〜14の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法により焼鈍されたことを特徴とするステータコア。
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