JP2019115113A - コアの焼鈍方法、コア焼鈍システム、およびステータコア - Google Patents

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Abstract

【課題】 ステータコアを誘導加熱する際に、ステータコアの温度差が大きくなることを抑制する。【解決手段】 ステータコアSの外周面の測温位置の温度が上限温度TH1を上回ると、ソレノイドコイル110に流れている交流電流を非通電にし、ステータコアSの外周面の測温位置の温度が下限温度TH2を下回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を通電することを、ステータコアSの内周面の測温位置の温度が目標焼鈍温度TT以上になるまで繰り返す。【選択図】 図1

Description

本発明は、コアの焼鈍方法、コア焼鈍システム、およびステータコアに関し、特に、ステータコアを焼鈍するために用いて好適なものである。
電動機や発電機等の回転電機に使用されるコアとして、積層コアがある。積層コアを製造する際には、電磁鋼板等の軟磁性体板(板状の軟磁性体)を、積層コアの平面形状に合わせて打ち抜く。そして、このようにして打ち抜かれた複数の軟磁性体板を、相互に隣り合う軟磁性体板の板面が相互に重なり合うように積み重ね、積み重ねた複数の軟磁性体板を、溶接やカシメ等によって接合する。このように積層コアを製造する際には、軟磁性体板を打ち抜いたり接合したりするため、軟磁性体板内に歪みが付与され、鉄損が増加する。そこで、この歪みを低減するために積層コアを焼鈍することが行われる。そして、このような焼鈍を行うために焼鈍炉を用いると、加熱時間が長時間になることから、特許文献1には、ソレノイドコイルの内側に積層コアを配置し、ソレノイドコイルに交流電流を流して積層コアを所定の温度に誘導加熱し、その後、積層コアを徐冷することが記載されている。
特開2013−153612号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、積層コアの最低温度が焼鈍目標温度(積層コアの焼鈍時の温度の目標値)を超えるように加熱を行う。従って、積層コアの温度差が大きくなる虞がある。本発明者らは、特許文献1に記載の技術を用いてステータコアを誘導加熱すると、ステータコアの最高温度が焼鈍目標温度よりも300℃以上高くなることがあるという知見を得た。そうすると、ステータコアに所期の温度を大幅に上回る領域が生じる。このため、例えば、ステータコアを構成する軟磁性体板の組織や、軟磁性体板の板面に塗布されている絶縁被膜に悪影響を及ぼす虞がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ステータコアを誘導加熱する際に、ステータコアの温度差が大きくなることを抑制することを目的とする。
本発明のコアの焼鈍方法は、ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコアの焼鈍方法であって、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定工程と、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定工程と、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御工程と、を有し、前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とする。
本発明のコア焼鈍システムは、ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコア焼鈍システムであって、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定手段と、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定手段と、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御手段と、を有し、前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とする。
本発明のステータコアは、前記コアの焼鈍方法により焼鈍されたことを特徴とする。
本発明によれば、ステータコアを誘導加熱する際に、ステータコアの温度差が大きくなることを抑制することができる。
図1は、コア焼鈍システムの構成の一例を示す図である。 図2は、ステータコアおよび放射温度計の配置の一例を示す図である。 図3は、制御装置の動作の一例を説明するフローチャートである。 図4は、ステータコアの解析対象領域の一例を示す図である。 図5は、ステータコアの外周面および内周面の温度と時間との関係の第1の例を示す図である。 図6は、ソレノイドコイルに流す電流と時間との関係の第1の例を示す図である。 図7は、解析結果の一例として、ステータコアの解析対象領域の温度分布の一例を示す図である。 図8は、ステータコア、放射温度計、およびインピーダコアの配置の一例を示す図である。 図9は、ステータコアの外周面および内周面の温度と時間との関係の第2の例を示す図である。 図10は、ソレノイドコイルに流す電流と時間との関係の第2の例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
図1は、コア焼鈍システムの構成の一例を示す図である。尚、各図において、X軸、Y軸、Z軸は、各図の向きの関係を示すものであり、○の中に●が付されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が付されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
図1において、コア焼鈍システムは、ソレノイドコイル110と、交流電源120と、放射温度計130、140と、制御装置150と、を有する。
本実施形態では、加熱対象の積層コアとして、図1に示すステータコアSを用いる場合を例に挙げて説明する。
ステータコアSは、回転電機(電動機、発電機)のステータに使用されるコアである。ステータコアSは、ヨークS1と、複数のティースS2とを有する(図1では、表記の都合上、1つのティースにのみ符号S2を付している)。ヨークS1は、ステータコアSの周方向(図1のステータコアSの傍らに付した両矢印線の方向)に延在する環状の領域である。ティースS2は、ヨークS1の内周端からステータコアSの軸の方向に向かって、ステータコアSの径方向に延在する領域である。複数のティースS2の形状および大きさは同じである。複数のティースS2は、ステータコアSの周方向において等間隔に配置される。尚、以下の説明では、ステータコアSの周方向、軸方向、径方向を、必要に応じて、それぞれ、周方向、軸方向、径方向と略称する。
ステータコアSは、その平面形状に合わせて打ち抜かれた複数の軟磁性体板を、相互に隣接する軟磁性体板の板面が相互に重なり合うように積み重ね、積み重ねた複数の軟磁性体板を、溶接やカシメ等によって接合することにより構成される。軟磁性体板として、例えば、方向性電磁鋼板や無方向性電磁鋼板等、回転電機のステータコアとして使用される軟磁性体板を使用することができる。
ステータコアSは、ステータコアSの中空部分の領域に、ソレノイドコイル110の軸が通るように、ソレノイドコイル110の内側に配置される。このとき、ステータコアSおよびソレノイドコイル110の軸の方向を略平行にするのが好ましく、ステータコアSおよびソレノイドコイル110の軸の方向を平行にするのがより好ましい。更に、ソレノイドコイル110の軸とステータコアSの軸とを略一致させるのが更に好ましく、一致させるのが最も好ましい。ステータコアSの磁束の分布を対称にすることができるからである。図1では、ソレノイドコイル110の軸とステータコアSの軸とが軸Aで一致している場合を例に挙げて示す。尚、軸Aの方向は、Z軸方向である。
また、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の端部が、ソレノイドコイル110の軸方向(Z軸方向)の端部よりもソレノイドコイル110の軸方向の中央側に位置するように、ステータコアSをソレノイドコイル110の内側に配置するのが好ましく、ステータコアSの軸方向の中央の位置とソレノイドコイル110の軸方向の中央の位置とを一致させるのがより好ましい。磁束密度が高い領域にソレノイドコイル110を置くことができるからである。
交流電源120は、ソレノイドコイル110に交流電流を流す。表皮効果により、ソレノイドコイル110に供給する交流電流の周波数が高いほど、ソレノイドコイル110から発生した磁束によりステータコアSを流れる渦電流の表皮深さは小さくなる。従って、ソレノイドコイル110の表面付近のみに渦電流が流れる。一方、ソレノイドコイル110に供給する交流電流の周波数を低くすれば、ソレノイドコイル110から発生した磁束によりステータコアSに流れる渦電流は、ステータコアSの内部まで流れる。しかしながら、渦電流が流れる領域が広くなるため、所望の電流密度の渦電流を流すためには、交流電源120から発生する交流電力の電力量を大きくする必要がある。そうすると、定格容量の大きな交流電源120が必要になり、交流電源120として特別な交流電源が必要になる。ソレノイドコイル110に供給する交流電流の周波数は、以上の観点から定めることができ、例えば、1[kHz]とすることができる。
放射温度計130は、ステータコアSの外周面(ステータコアSの軸Aを取り巻く2つの面のうち外周側に位置する面)の温度を測定する。放射温度計140は、ステータコアSの内周面(ステータコアSの軸Aを取り巻く2つの面のうち内周側に位置する面)の温度を測定する。
図2は、ステータコアSおよび放射温度計130、140の配置の一例を示す図である。図2(a)は、ステータコアSを、Z軸の正の方向から負の方向に向かって見た様子の一例を示す図である。図2(b)は、図2(a)のI−I断面図である。尚、図2では、表記の都合上、ソレノイドコイル110の図示を省略する。
図1に示す構成で、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すと、ステータコアSにおける磁束密度は、ソレノイドコイル110からの距離が近い領域(即ち、ステータコアSの外周面に近い領域)である程高くなり、ソレノイドコイル110からの距離が遠い領域(即ち、ステータコアSの軸Aに近い領域)である程低くなる。また、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の端部において露出している軟磁性体の板面に近い領域であるほど、放熱され易くなる。
このため、理論的には、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流しているとき、および、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すことを止めた直後においては、以下のような温度分布になる。即ち、ステータSの径方向の温度は、ステータコアSの外周面の温度が最も高く、ティースS2の先端面の温度が最も低くなる。また、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の温度は、ステータコアSの軸方向の中央の温度が最も高く、ステータコアSの軸方向の端部の温度が最も低くなる。
そこで、ステータコアSの温度が過剰に高くならないようにするために、ステータコアSの外周面の領域であって、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の中央の領域の温度を放射温度計130が測定することができるように放射温度計130を配置し、放射温度計130で測定される温度が上限温度TH1を可及的に上回らないようにするのが好ましい。この領域の温度が、最も高いからである。ただし、ステータコアSおよびソレノイドコイル110の形状・大きさ・位置や放射温度計130の大きさ・形状・性能等の要因から、このようにして放射温度計130を配置することができない場合がある。以上のことから、図2(b)において、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の一方の端面と、放射温度計130の測温位置との軸方向(Z軸方向)の距離L1の範囲は、ステータコアSの軸方向の長さLの0.35倍以上、0.65倍以下の範囲にするのが好ましく、この距離L1をステータコアSの軸方向の長さLの0.5倍とするのがより好ましい。尚、放射温度計130の測温位置の適用範囲については、<変形例1>の欄で後述する。
また、本実施形態では、ステータコアSの温度が可及的に焼鈍目標温度以上になるようにするために、ステータコアSのティースS2の先端面の領域であって、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の端部に可及的に近い領域の温度を放射温度計140が測定することができるように放射温度計140を配置し、放射温度計140で測定される温度が焼鈍目標温度TT(<T1)以上になった時点で焼鈍を終了するのが好ましい。この領域の温度が、最も低いからである。ただし、放射温度計130と同様に、ステータコアSおよびソレノイドコイル110の形状・大きさ・位置や放射温度計140の大きさ・形状・性能等の要因から、このようにして放射温度計140を配置することができない場合がある。以上のことから図2(b)において、ステータコアSの軸方向の一方の端面と、放射温度計140の測温位置との、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の距離L2の範囲は、ステータコアSの軸方向の長さLの0倍以上0.2倍以下の範囲とするのが好ましく、0倍以上0.1倍以下の範囲とするのがより好ましい。尚、放射温度計140の測温位置の適用範囲については、<変形例1>の欄で後述する。
制御装置150は、放射温度計130、140で測定された温度を取得し、交流電源120の動作(ソレノイドコイル110に流れる交流電流)を制御する。制御装置150のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、PLC(Programmable Logic Controller)、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。以下に、本実施形態の制御装置150が有する機能の一例を説明する。
制御装置150は、外周面温度取得部151と、内周面温度取得部152と、外周面温度判定部153と、内周面温度判定部154と、電源制御部155と、を有する。
外周面温度取得部151は、放射温度計130により測定されたステータコアSの外周面の温度を取得する。尚、以下の説明では、放射温度計130により測定されるステータコアSの外周面の温度を必要に応じて、ステータコアSの外周面の温度の測定値と称する。
内周面温度取得部152は、放射温度計140により測定されたステータコアSの内周面(本実施形態では、ティースS2の先端面)の温度を取得する。尚、以下の説明では、放射温度計140により測定されるステータコアSの内周面の温度を必要に応じて、ステータコアSの内周面の温度の測定値と称する。
外周面温度取得部151と内周面温度取得部152は、例えば、同じサンプリング周期で温度を繰り返し取得する。
外周面温度判定部153は、外周面温度取得部151で取得されたステータコアSの外周面の温度が、上限温度TH1を上回るか否かと、下限温度TH2を下回るか否かとを判定する。本実施形態では、下限温度TH2は、目標焼鈍温度TTであるものとする。ただし、下限温度TH2は、上限温度TH1を下回る温度(TH1>TH2)であれば、必ずしも目標焼鈍温度TTである必要はない。
内周面温度判定部154は、内周面温度取得部152により取得されたステータコアSの内周面の温度が目標焼鈍温度TT以上であるか否かを判定する。
電源制御部155は、外周面温度判定部153による判定の結果と、内周面温度判定部154による判定の結果とに基づいて、交流電源120からソレノイドコイル110に流す交流電流を制御する。本実施形態では、交流電源120からソレノイドコイル110に流す交流電流の実効値および周波数は一定であるものとする。電源制御部155は、交流電源120からソレノイドコイル110に対する交流電流の通電・非通電(即ち、ソレノイドコイル110に交流電流を流すか流さないか(ゼロを上回る値にするかゼロにするか))を制御する。
次に、本実施形態によるステータコアSの焼鈍方法の概要の一例を説明する。
まず、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すことを開始する。これにより、ステータコアSが誘導加熱される。ステータコアSが誘導加熱されているときは、ステータコアSの外周面の温度が最も高くなる。その後、時間の経過と共に、ステータコアSの外周側から内周側に向けて熱伝導が起こり、この熱伝導とステータコアSを貫く磁束とによってステータコアSの内周側の温度が上昇する。尚、ステータコアSの内部の領域には、ステータコアSの外周面に比べて外気に触れる領域(露出している領域)がない。従って、ステータコアSの外周面よりも、その内側の領域の方が、温度が高くなることがあり得る。
その後、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回ると、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すことを止める。そうすると、ステータコアSの外周面の温度が低下する。そして、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回ると、交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流を流すことを再開する。
以上のようなソレノイドコイル110に対する交流電流の通電・非通電を、ステータコアSの内周面の温度の測定値が、目標焼鈍温度TT以上になるまで繰り返す。このようにすることによって、ステータコアSが過剰に加熱されることを抑制しつつ、ステータコアSの可及的に多くの領域(好ましくは全ての領域)を目標焼鈍温度TT以上に焼鈍することができる。
図3は、本実施形態の制御装置150の動作の一例を説明するフローチャートである。尚、ステータコアSは、図3のフローチャートの開始の前に、ソレノイドコイル110の内側に配置され、固定されているものとする。
ステップS301において、電源制御部155は、交流電源120に対し、ソレノイドコイル110への交流電流の通電を指示する。これにより交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流が流れ、ステータコアSが誘導加熱される。
次に、ステップS302において、外周面温度判定部153は、外周面温度取得部151により、ステータコアSの外周面の温度の測定値が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、外周面温度取得部151により、ステータコアSの外周面の温度の測定値が取得されていない場合、処理は、ステップS303〜S305を省略し、後述するステップS306に進む。一方、ステップS302の判定の結果、外周面温度取得部151により、ステータコアSの外周面の温度の測定値が取得された場合、処理は、ステップS303に進み、外周面温度判定部153は、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回るか否かを判定する。
この判定の結果、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回る場合、処理は、ステップS304に進み、電源制御部155は、交流電源120に対し、ソレノイドコイル110に流れている交流電流の非通電を指示する。これにより交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流が流れなくなり、ステータSが誘導加熱されなくなる。そして、処理は、後述するステップS306に進む。
一方、ステップS303の判定の結果、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回らない場合、処理は、ステップS305に進み、外周面温度判定部153は、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回るか否かを判定する。前述したように本実施形態では、下限温度TH2は、目標焼鈍温度TTである。
この判定の結果、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回る場合、処理は、ステップS301に戻る。これにより交流電源120からソレノイドコイル110に交流電流が再び流れ出し、ステータコアSの誘導加熱が再開される。
一方、ステップS305の判定の結果、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回らない場合、処理は、ステップS306に進み、内周面温度判定部154は、ステータコアSの内周面の温度の測定値が取得されたか否かを判定する。この判定の結果、ステータコアSの内周面の温度の測定値が取得されていない場合、処理は、ステップS302に戻る。
一方、ステータコアSの内周面の温度の測定値が取得された場合、処理は、ステップS307に進み、内周面温度判定部154は、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上であるか否かを判定する。この判定の結果、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上でない場合には、ステータコアSの全体が目標焼鈍温度TTになっていないものと判定され、処理は、ステップS302に戻る。一方、ステータコアSの内周面の温度の測定値が目標焼鈍温度TT以上である場合には、ステータコアSの全体が目標焼鈍温度TTになったと判定され、図3のフローチャートによる処理が終了する。
次に、ステータコアSの温度の解析結果の一例について説明する。
図4は、ステータコアSの解析対象領域の一例を示す図である。ステータコアSの解析対象領域は、第1の領域と第2の領域とが一体となった領域である。図4において、第1の領域は、ステータコアSの(或る1つの)スロットSLを挟む位置にある2つのティースS2の領域のそれぞれを周方向において2つに等分割して得られる領域のうち、当該スロットSL側に位置する領域である。第2の領域は、ヨークS1の領域のうち、径方向において第1の領域およびスロットSLに繋がる領域である。尚、図4では、2つのティースS2の残りの半分の領域と、当該領域に繋がるヨークS1の領域とを破線で示す。
ここでは、以下のステータコアSを、以下のソレノイドコイル110の内側に、それらの軸と、軸方向の中央の位置とが一致するように配置して、以下の条件の交流電流をソレノイドコイル110に流した場合のステータコアSの解析対象領域の各部の温度を有限要素法により解析した。尚、ステータコアSの解析対象領域の、ステータコアSの周方向(図4(a)の両矢印線の方向)における端面は、断熱面であるとして解析を行った。
ステータコアSの外径:130mm
ステータコアSの高さ:30mm
ステータコアSのティースの数:24
ステータコアSの材質:35A300(厚み0.35mm)
ソレノイドコイル110の巻数:7
ソレノイドコイル110のループの径:内径:80mm、外径:90mm
ソレノイドコイル110の(軸方向)の長さ:40mm
電流:正弦波(実効値:2500A、周波数:1000Hz)
上限温度TH1:800℃
下限温度TH2:730℃
目標焼鈍温度TT:730℃
上限温度TH1および下限温度TH2と比較する温度は、図4に示したステータコアSの解析対象領域の外周面の位置のうち、周方向および軸方向の中央の位置401の温度とした。以下の説明では、この位置401を、必要に応じて、外周面側温度比較位置401と称する。目標焼鈍温度TTと比較する温度は、ステータコアSのティースS2の先端面に対応する位置のうち、周方向および軸方向の中央の位置402の温度とした。以下の説明では、この位置402を、必要に応じて、内周面側温度比較位置402と称する。
図5は、ステータコアSの外周面および内周面の温度と時間との関係を示す図である。図5において、実線のグラフAは、外周面側温度比較位置401の温度と時間との関係を示すグラフであり、破線のグラフBは、内周面側温度比較位置402の温度と時間との関係を示すグラフであることを示す。図6は、ソレノイドコイル110に流れる交流電流と時間との関係を示す図である。図7は、解析結果の一例として、ステータコアSの解析対象領域の温度分布の一例を示す図である。ここでは、図5および図6に示すように、外周面側温度比較位置401の温度が800[℃]を上回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を流すことを中止し、外周面側温度比較位置401の温度が730[℃]を下回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を流すことを、内周面側温度比較位置402の温度が730[℃]になるまで繰り返した。図7は、この結果、内周面側温度比較位置402の温度が初めて730[℃]以上になった時点でのステータコアSの解析対象領域の温度分布を示す。
尚、前述したように、ステータコアSの解析対象領域の周方向(図7(a)および図7(b)に示す両矢印線の方向)の端面は断熱面としている。従って、図7(a)および図7(b)において、当該端面の領域の温度の分布は、境界条件に依存するものであり、実際の温度を反映するものではない。
図7(a)および図7(b)において、温度が最も高い位置は、ステータコアSの解析対象領域の外周面の領域のうち、周方向および軸方向の中央の位置(即ち、外周面側温度比較位置401)であり、その温度は、約738℃であった、一方、温度が最も低い位置は、(内周面側温度比較位置402ではなく)ステータコアSの解析対象領域のティースS2の先端面に対応する位置のうち、軸方向の端の位置であり、その温度は、約725℃であった。このように、ステータコアSの温度差は約13℃になり、ステータコアSに温度分布が生じることを抑制しつつ、ステータコアSの可及的に多くの領域を目標焼鈍温度TT以上で昇温することができることが分かる。
以上のように本実施形態では、ステータコアSの外周面の測温位置の温度が上限温度TH1を上回ると、ソレノイドコイル110に流れている交流電流を非通電にし、ステータコアSの外周面の測温位置の温度が下限温度TH2を下回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を通電することを、ステータコアSの内周面の測温位置の温度が目標焼鈍温度TT以上になるまで繰り返す。従って、ソレノイドコイル110によりステータコアSを誘導加熱する際に、ステータコアの温度差が大きくなることを抑制することができる。
次に、変形例について説明する。
<変形例1>
本実施形態では、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の一方の端面と、放射温度計130の測温位置との、ステータコアSの軸方向の距離L1が、ステータコアSの軸方向の長さLの0.35倍以上、0.65倍以下になる範囲が好ましいとした。しかしながら、発明が解決しようとする課題の欄で説明した悪影響は、ステータコアSの焼鈍時の温度が過剰に高くなることによるものである。
図7(a)および図7(b)に示す例では、ステータコアSの温度差は約13℃である。この温度差は、本実施形態で説明したようにしてステータコアSの外周面の温度を測定し、その測定の結果に基づいてソレノイドコイル110に流す交流電流の通電・非通電を行っていれば、測温位置によって大きく変わることはない。従って、ステータコアSの最も温度が高くなる領域以外の領域を放射温度計130の測温位置としても、ステータコアSの最も温度が高くなる領域の温度が、過剰に高くなることはない。
また、ステータコアSの最も温度が高くなる領域以外の領域の温度を放射温度計130の測温位置としても、ステータコアSの外周面の領域のうち温度が最も高くなる領域の温度が所望の温度を上回らないように、放射温度計130で測定された温度と比較する上限温度TH1を調整することができる。
以上のように、ステータコアSの外周面の領域であれば、上限温度TH1未満とする領域を厳密に定める必要はないから、放射温度計130の測温位置は、ステータコアSの外周面の領域であれば、どの位置であってもよい。
また、以上のことは、放射温度計140についても同じである。即ち、本実施形態では、ステータコアSの軸方向(Z軸方向)の一方の端面と、放射温度計140の測温位置との、ステータコアSの軸方向の距離L1が、ステータコアSの軸方向の長さLの0倍以上、0.2倍以下になる範囲が好ましいとした。しかしながら、ステータコアSの温度差は、ステータコアSの内周面の測温位置によって大きく変わることはない。従って、ステータコアSの最も温度が低くなる領域以外の領域を放射温度計140の測温位置としても、ステータコアSの最も温度が低くなる領域の温度が、所望の温度よりも過剰に低くなることはない。
例えば、図7(a)および図7(b)に示した例では、放射温度計140の測温位置は、内周面側温度比較位置402であり、ステータコアSの最も温度が低くなる領域ではない。そして、図7(a)および図7(b)に示した例では、最低温度が725℃であり、730℃に近い温度になった。このように、ステータコアSの内周面の領域のうち、ステータコアSの最も温度が低くなる領域以外の領域の温度を放射温度計140の測温領域としても、ステータコアSの最も温度が低くなる領域の温度が、所望の温度よりも過剰に低くなることはない。
また、ステータコアSの最も温度が低くなる領域以外の領域の温度を放射温度計140の測温位置としても、ステータコアSの内周面の領域のうち温度が最も低くなる領域の温度が所望の温度以上になるように、放射温度計140で測定された温度と比較する目標焼鈍温度TTを調整することもできる。
以上のように、ステータコアSの内周面の領域であれば、目標焼鈍温度TT以上とする領域を厳密に定める必要はないから、放射温度計140の測温位置は、ステータコアSの内周面の領域であれば、どの領域であってもよい。
また、本実施形態では、放射温度計130、140が1つである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、放射温度計130、140の数は、1つに限定されない。例えば、ステータコアSの周方向において、複数の放射温度計130を配置し、当該複数の放射温度計130で測定された温度の代表値(平均値や中央値等)を、ステータコアSの外周面の温度としてもよい。また、ステータコアSの軸方向において、複数の放射温度計130を配置し、当該複数の放射温度計130で測定された温度の代表値(平均値や中央値等)を、ステータコアSの外周面の温度としてもよい。更に、ステータコアSの軸方向と周方向とのそれぞれの方向において、複数の放射温度計130を配置し、当該複数の放射温度計130で測定された温度の代表値(平均値や中央値等)を、ステータコアSの外周面の温度としてもよい。このようにして複数の放射温度計を配置してもよいことは、放射温度計140についても同じである。
また、ステータコアSの周方向において、放射温度計130、140を1つずつ配置して、ステータコアSの外周面、内周面の周方向における複数の位置での温度を測定してもよい。例えば、ソレノイドコイル110に交流電流を流しているときに、ステータコアSを、その軸Aを回転軸として回転させる。このようにしてステータコアSが一回転する間の複数のタイミングで放射温度計130、140により、ステータコアSの外周面、内周面の温度を測定する。そして、放射温度計130、140で測定された温度の代表値(平均値や中央値等)を、ステータコアSの外周面、内周面の温度とする。このようにすれば、ステータコアSの周方向において、複数の放射温度計130、140を配置する必要はなくなる。一方、ステータコアSの軸方向においては、複数の放射温度計130、140を配置してもよい。
また、放射温度計130、140を用いれば、ステータコアSの外周面、内周面の温度を非接触で測定することができる。しかしながら、ステータコアSの外周面、内周面の温度を測定することができれば、必ずしも放射温度計を用いる必要はない。例えば、熱電対を用いてもよい。
<変形例2>
本実施形態では、ステータコアSの外周面の温度の測定値が下限温度TH2を下回ると、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開するタイミングは、このような条件が成立した場合に限定されない。例えば、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを中止してから、所定の時間が経過すると、交流電源120からソレノイドコイル110に電流を流すことを再開してもよい。この場合、ステップS305の処理を、所定の時間が経過したか否かを判定する処理に変更すればよい。
<変形例3>
本実施形態では、ソレノイドコイル110に流す交流電流の通電、非通電を行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ソレノイドコイル110に流す交流電流を制御していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ソレノイドコイル110に対し交流電流を非通電とすることに替えて、ソレノイドコイル110に流す交流電流の実効値を(ゼロを上回る範囲で)小さくすることと、ソレノイドコイル110に流す交流電流の周波数を低くすることとの少なくとも何れか一方を行うことができる。また、ソレノイドコイル110に対し交流電流を通電することに替えて、ソレノイドコイル110に流す交流電流の実効値を大きくすることと、ソレノイドコイル110に流す交流電流の周波数を高くすることとの少なくとも何れか一方を行うことができる。
また、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回るときの当該温度の昇温速度(単位時間当たりの温度の増加量)に応じて、ソレノイドコイル110に流れている交流電流を非通電にすることと、ソレノイドコイル110に流す交流電流を(ゼロを上回る範囲で)調整する(前述した実効値、周波数の変更を行う)こととの何れか一方を選択してもよい。例えば、ステータコアSの外周面の温度の測定値が上限温度TH1を上回るときの当該温度の昇温速度が閾値を上回る場合には、ソレノイドコイル110に流れている交流電流を非通電にし、そうでない場合には、ソレノイドコイル110に流す交流電流を、ゼロを上回る範囲で調整することを行う。
<変形例4>
第1、第2の実施形態では、ステータコアSを誘導加熱するための誘導加熱用コイルとしてソレノイドコイル110を例に挙げて説明した。しかしながら、誘導加熱用コイルは、ステータコアSを誘導加熱することができる構成のコイルであれば、ソレノイドコイルに限定されない。例えば、ステータコアSの高さが低い場合には、ステータコアSの軸(Z軸方向)に垂直な平面(X−Y平面)において複数回巻き回されるコイルを誘導加熱用コイルとして用いてもよい。また、ステータコアSの軸に垂直な平面において複数回巻き回した上で、ステータコアSの軸の方向に螺旋状に巻き回したコイルを誘導加熱用コイルとしてもよい。
<変形例5>
その他、特許文献1と同様に、チャンバー内でステータコアSの誘導加熱を行ってもよい。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態で説明したようにしてソレノイドコイル110の内側にステータコアSを配置すると、ステータコアSの内周側の領域の磁束密度は、ステータコアSの外周側の領域の磁束密度よりも低くなる。このため、ステータコアSの内周側の領域の温度が高くなるまでに時間を要する場合がある。そこで、本実施形態では、第1の実施形態に対し、ステータコアSのティースS2を加熱する構成を付加する。このように本実施形態は、第1の実施形態に対し、ステータコアSのティースS2を加熱する構成を付加したものである。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図8は、ステータコアS、放射温度計130、140、およびインピーダコア810a〜810xの配置の一例を示す図である。図8(a)は、ステータコアSを、Z軸の正の方向から負の方向に向かって見た様子の一例を示す図である。図8(b)は、図8(a)のI−I断面図である。尚、図8は、図2に対応する図であり、図8では、表記の都合上、ソレノイドコイル110の図示を省略している。尚、ソレノイドコイル110の内側におけるステータコアSの配置は、第1の実施形態と同じである。また、図8(b)において、X軸、Y軸は、X−Y−Z軸の原点から、それぞれ(紙面に向かって見た場合に)右斜め45°の方向、左斜め45°の方向に延びる軸であり、紙面の奥側から手前側に向かう方向が正の方向の軸である。
図8(a)および図8(b)に示すように、本実施形態では、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)のそれぞれに、軸方向(Z軸方向)に延設されるインピーダコア810a〜810xが配置される。
インピーダコア810a〜810xは同じものであり、例えば、棒状の複数のフェライトコアを有する。インピーダコア810a〜810xにより、ソレノイドコイル110に電流が流れることによりステータコアSの中空部分に発生する磁束を、ティースS2に集中させ、ティースS2に発生するうず電流の電流密度を増加させることができる。従って、第1の実施形態に比べ、ティースSにおける昇温速度を速めることができる。よって、ステータコアSの内周面の温度が目標焼鈍温度TT以上になるまでに要する時間を短縮することができる。
尚、ティースS2のより多くの領域に磁束を集中させるために、図8(a)および図8(b)に示すように、インピーダコア810a〜810xの軸方向(Z軸方向)の端部が、ステータコアSの外側になるように、インピーダコア810a〜810xを配置するのが好ましい。また、インピーダコア810a〜810xの軸方向(Z軸方向)の端部の位置と、ステータコアSの軸方向の端部と軸方向の位置とを同じにしてもよい。
次に、第1の実施形態および本実施形態の手法でステータコアSの誘導加熱を行った場合のステータコアSの温度の解析結果の一例について説明する。
第1の実施形態の解析結果で説明したのと同じ条件で、図4に示したステータコアSの解析対象領域の各部の温度を有限要素法により解析した。ただし、本実施形態の手法においては、以下のインピーダコアが、スロットSLの周方向および径方向の中央の位置に、インピーダコアの軸方向の中央とステータコアSの軸方向の中央とが一致するように配置されるものとした。
コアの材質:フェライトコア
コアの大きさ:φ4
コアの数:24(各スロットに1つずつコアを配置)
コアの長さ:40mm
第1の実施形態の解析結果で説明したのと同様に、上限温度TH1および下限温度TH2と比較する温度は、図4に示した外周面側温度比較位置401とした。また、目標焼鈍温度TTと比較する温度は、図4に示した内周面側温度比較位置402とした。
図9は、ステータコアSの外周面および内周面の温度と時間との関係を示す図である。図9において、太線のグラフAは、第1の実施形態の手法(インピーダコアを配置していない場合)における外周面側温度比較位置401の温度と時間との関係を示すグラフを示し、図5に示す実線のグラフAと同じである。破線のグラフBは、第1の実施形態の手法(インピーダコアを配置していない場合)における内周面側温度比較位置402の温度と時間との関係の一例を示す図であり、図5に示す破線のグラフBと同じである。一点鎖線のグラフCは、本実施形態の手法(インピーダコアを配置した場合)における外周面側温度比較位置401の温度と時間との関係を示すグラフを示す。細線のグラフDは、本実施形態の手法(インピーダコアを配置した場合)における内周面側温度比較位置402の温度と時間との関係の一例を示す図である。
インピーダコアの有無以外については、第1の実施形態の手法と、第2の実施形態の手法とで異なるところはない。図10は、ソレノイドコイル110に流れる交流電流と時間との関係を示す図である。図9および図10に示すように、ステータコアSの外周面の温度が800℃を上回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を流すことを中止し、ステータコアSの外周面の温度が730℃を下回ると、ソレノイドコイル110に交流電流を流すことを、内周面側温度比較位置402の温度が730[℃]になるまで繰り返した(図10を参照)。
図9(a)に示すグラフのスケールでは、外周面側温度比較位置401の温度と時間との関係を示すグラフA、Cも、内周面側温度比較位置402の温度と時間との関係を示すグラフB、Dも殆ど重なる(このことは図10でも同様である)。しかしながら、図9(b)に示すように、図9(a)の155秒〜160秒付近を拡大すると、インピーダコア810a〜810xを用いることにより、第1の実施形態のようにスロットSLに何も配置しない場合に比べ、内周面側温度比較位置402における温度が目標焼鈍温度TT(=730[℃])になるまでの時間を3秒程度短縮することができることが分かる(図9(b)のΔtで示す部分を参照)。
以上のように本実施形態では、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)のそれぞれに、軸方向(Z軸方向)に延設されるインピーダコア810a〜810xを配置する。従って、第1の実施形態で説明した効果に加え、ステータコアSの内周面の温度が目標焼鈍温度TT以上になるまでに要する時間を短縮することができる。また、ソレノイドコイル110とインピーダコア810a〜810xとの間にステータコアSが配置される。従って、ソレノイドコイル110により、主にステータコアSの外周側を加熱し、インピーダコア810a〜810xにより、主にステータコアSの内周側を加熱することになる。よって、ステータコアSの加熱中の径方向の温度分布を対称に近づけることができる。これにより、ステータコアSの温度差をより低減することができる。
次に、変形例について説明する。
<変形例6>
本実施形態では、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)のそれぞれに、インピーダコア810a〜810xを配置する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)の全てにインピーダコアを配置する必要はない。また、インピーダコアが配置される位置は、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)に限定されない。例えば、ステータコアSのスロット(ティースS2の間)に加えてまたは代えて、ティースS2の先端面と間隔を有して対向する位置にインピーダコアを配置してもよい。このように、インピーダコアの位置および数は、ステータコアSの大きさ・形状・材質等に応じて定めることができる。
<変形例7>
本実施形態では、ステータコアSのティースS2を加熱する構成として、インピーダコアを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、ステータコアSのティースS2を加熱する構成は、インピーダコアに限定されない。例えば、インピーダコアに代えてヒータ(輻射熱を発生する加熱装置)を用いてもよい。ただし、誘導加熱以外の方法でステータコアSのティースS2を加熱するのが好ましい。ソレノイドコイル110から発生する磁束と、ステータコアSのティースS2を加熱するためのコイルから発生する磁束が相互作用を起こすことによりソレノイドコイル110の内側の磁束密度が低下すること等を抑制する必要が生じる虞がある。
<変形例8>
その他、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した変形例を適用することができる。
(その他の実施形態)
以上説明した本発明の実施形態のうち、制御装置150で実行される処理は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
110:ソレノイドコイル、120:交流電源、130、140:放射温度計、150:制御装置、151:外周面温度取得部、152:内周面温度取得部、153:外周面温度判定部、154:内周面温度判定部、155:電源制御部、810a〜810x:インピーダコア

Claims (16)

  1. ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコアの焼鈍方法であって、
    前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定工程と、
    前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定工程と、
    前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御工程と、を有し、
    前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、
    前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、
    前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とするコアの焼鈍方法。
  2. 前記制御工程では、少なくとも、前記誘導加熱用コイルに対する交流電流の通電、非通電を制御することを特徴とする請求項1に記載のコアの焼鈍方法。
  3. 前記制御工程では、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が第1の閾値を上回ると、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、その後に所定の条件が成立した場合に、前記誘導加熱用コイルに対する交流電流の通電を再開することと、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になった場合に、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、を少なくとも実行することを特徴とする請求項2に記載のコアの焼鈍方法。
  4. 前記制御工程では、少なくとも、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のコアの焼鈍方法。
  5. 前記制御工程では、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が第1の閾値を上回ると、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を低減させることと、その後に所定の条件が成立した場合に、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流の実効値および周波数の少なくとも何れか一方を増加させることと、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になった場合に、前記誘導加熱用コイルに流れている交流電流を非通電にすることと、を少なくとも実行することを特徴とする請求項4に記載のコアの焼鈍方法。
  6. 前記所定の条件は、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回ること、または、所定の時間が経過することであることを特徴とする請求項3または5に記載のコアの焼鈍方法。
  7. 前記所定の条件は、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値を下回ることであり、
    前記第2の閾値と、前記目標温度は同じ温度であることを特徴とする請求項6に記載のコアの焼鈍方法。
  8. 前記ステータコアの内周面の測温位置での温度は、前記ティースの先端面の測温位置での温度を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
  9. 前記ティースを加熱する加熱工程を更に有することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
  10. 前記加熱工程では、誘導加熱以外の方法で前記ティースを加熱することを特徴とする請求項9に記載のコアの焼鈍方法。
  11. 前記加熱工程では、インピーダコアまたはヒータを用いて前記ティースを加熱することを特徴とする請求項10に記載のコアの焼鈍方法。
  12. 前記第1の測定工程では、前記ステータコアの外周面の複数の測温位置における温度を測定し、
    前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の複数の測温位置での温度の代表値に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
  13. 前記第2の測定工程では、前記ステータコアの内周面の複数の測温位置における温度を測定し、
    前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の複数の測温位置での温度の代表値が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
  14. 前記第1の測定工程では、前記ステータコアが、その軸を回転軸として回転されているときの複数のタイミングで、前記ステータコアの外周面の温度を測定し、
    前記第2の測定工程では、前記ステータコアが、その軸を回転軸として回転されているときの複数のタイミングで、前記ステータコアの内周面の温度を測定し、
    前記制御工程では、前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の複数のタイミングにおける温度の代表値が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の複数のタイミングにおける温度の代表値に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法。
  15. ステータコアを誘導加熱用コイルの内側に配置して誘導加熱することにより焼鈍するコア焼鈍システムであって、
    前記ステータコアの外周面の測温位置での温度を測定する第1の測定手段と、
    前記ステータコアの内周面の測温位置での温度を測定する第2の測定手段と、
    前記誘導加熱用コイルに交流電流を流すことを開始した後、前記ステータコアの内周面の測温位置での温度が目標温度以上になるまで、前記ステータコアの外周面の測温位置での温度に基づいて、前記誘導加熱用コイルに流す交流電流を制御する制御手段と、を有し、
    前記ステータコアは、ヨークと、複数のティースとを有し、
    前記ヨークは、前記ステータコアの周方向に延在する領域であり、
    前記複数のティースは、前記ステータコアの周方向において間隔を有して配置される領域であって、それぞれが前記ヨークの内周端から前記ステータコアの軸の方向に向かって前記ステータコアの径方向に延在する領域であることを特徴とするコア焼鈍システム。
  16. 請求項1〜14の何れか1項に記載のコアの焼鈍方法により焼鈍されたことを特徴とするステータコア。
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