以下,本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお,以下では,作業機械として油圧ショベルを例に挙げて説明する。油圧ショベルのフロント作業機はブーム,アーム及び作業具から構成され,作業具としてバケットを備えるものを例示するが,バケット以外のアタッチメントを備えるものでも構わない。また油圧ショベル以外の作業機械であっても構わない。また,同一の構成要素が複数存在する場合,符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが,当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば,3つのポンプ300a,300b,300cが存在するとき,これらをまとめてポンプ300と表記することがある。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの構成図である。図1において、油圧ショベル1は、フロント作業機1Aと車体1Bで構成されている。車体1Bは、下部走行体11と、下部走行体11の上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体12とからなる。フロント作業機1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9及びバケット10)を連結して構成されている。フロント作業機1Aのブーム8の基端は上部旋回体12の前部にブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されている。アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に支持されている。
ブーム8、アーム9、バケット10、上部旋回体12及び下部走行体11はそれぞれブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、旋回油圧モータ4及び図示しない左右の走行モータ3a、3bによりそれぞれ駆動される被駆動部材を構成する。これら被駆動部材8,9,10,12,11への動作指示は、上部旋回体12上の運転室内に搭載された走行右レバー13a、走行左レバー13b、操作右レバー14aおよび操作左レバー14bのオペレータによる操作に応じて出力される。これら走行レバー13及び操作レバー14を総称して,操作装置15とも称する。また,操作右レバー14aは,図2のブーム用操作レバー15a及びバケット用操作レバー15cとして機能し,操作左レバー14bは,図2のアーム用操作レバー15b及び旋回用操作レバー15dとして機能する。
本実施形態の操作装置15は油圧パイロット方式のものであり、各レバーの操作量(例えば、レバーストローク)に応じたパイロット圧(操作圧や操作信号と称することがある)が、各レバーの操作方向に応じた流量制御弁16a〜16d(図2参照)に供給され、これら流量制御弁16a〜16dを駆動する。なお,図2では走行用の操作レバーとそれに対応する流量制御弁の図示は省略している。
原動機(エンジン)49によって駆動される油圧ポンプ2が吐出した圧油が流量制御弁16a、16b、16c、16d(図2参照)を介して旋回油圧モータ4、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7といった油圧アクチュエータに供給される。供給された圧油によってブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7が伸縮することで、ブーム8、アーム9、バケット10がそれぞれ回動し、フロント作業機1Aの先端に位置するバケット10の位置及び姿勢が変化する。また、供給された圧油によって旋回油圧モータ4が回転することで、下部走行体11に対して上部旋回体12が旋回軸を中心に旋回する。さらに、供給された圧油によって走行右油圧モータ3a、走行左油圧モータ3bが回転することで、下部走行体11が走行する。
一方、ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度を測定可能なように、上部旋回体12とブーム8を連結するブームピンにブーム角度センサ21が、ブーム8とアーム9を連結するアームピンにアーム角度センサ22が、アーム9とバケット10を連結するバケットピンにバケット角度センサ23が取付けられている。また、上部旋回体12には基準面(例えば重力方向)に対する上部旋回体12(車体1B)の前後方向及び左右方向の傾斜角を検出する車体傾斜角センサ24が取付けられている。なお,角度センサ21,22,23はそれぞれ基準面(例えば重力方向)に対する角度を出力する角度センサに代替可能である。
また,ブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7には,それぞれのシリンダに生じる圧力を計測可能な,図3に示すブームシリンダ圧力センサ25,アームシリンダ圧力センサ26,バケットシリンダ圧力センサ27が取り付けられている。各圧力センサ25,26,27は,設置された油圧シリンダ5,6,7のボトム側とロッド側の圧力を検出可能なように少なくとも2つの圧力センサで構成されているが,本稿では簡略化して1つのシンボルで表現している。
図2は油圧ショベル1の油圧回路図である。油圧ポンプ2とパイロットポンプ48が原動機49によって駆動される。油圧ポンプ2から供給される圧油は,ブームシリンダ5や旋回モータ4などの油圧アクチュエータを駆動する。パイロットポンプ48から供給される圧油は流量制御弁16を駆動する。
油圧ポンプ2から吐出された圧油は,流量制御弁16a〜16dを経て,それぞれブームシリンダ5,アームシリンダ6,バケットシリンダ7などの油圧アクチュエータに供給される。油圧アクチュエータに供給された圧油は,再び流量制御弁16a〜16dを経て,タンク50に排出される。
パイロットポンプ48はロック弁51に接続している。ロック弁51のロックは,運転室内に搭載されたゲートロックレバー(図示せず)をオペレータが操作することで解除され,これによりロック弁51の下流にパイロットポンプ48からの圧油が流れるようになる。ロック弁51の下流は,ブーム上げ用パイロット圧制御弁52,ブーム下げ用パイロット圧制御弁53,アームクラウド用パイロット圧制御弁54,アームダンプ用パイロット圧制御弁55,バケットクラウド用パイロット圧制御弁56,バケットダンプ用パイロット圧制御弁57,右旋回用パイロット圧制御弁58,左旋回用パイロット圧制御弁59などに接続されている。
ブーム上げ用パイロット圧制御弁52とブーム下げ用パイロット圧制御弁53は,ブーム用操作レバー15aにより操作が可能である。アームクラウド用パイロット圧制御弁54とアームダンプ用パイロット圧制御弁55は,アーム用操作レバー15bにより操作が可能である。バケットクラウド用パイロット圧制御弁56とバケットダンプ用パイロット圧制御弁57は,バケット用操作レバー15cにより操作が可能である。右旋回用パイロット圧制御弁58と左旋回用パイロット圧制御弁59は,旋回用操作レバー15dにより操作が可能である。
ブーム上げ用パイロット圧制御弁52,ブーム下げ用パイロット圧制御弁53,アームクラウド用パイロット圧制御弁54,アームダンプ用パイロット圧制御弁55,バケットクラウド用パイロット圧制御弁56,バケットダンプ用パイロット圧制御弁57,右旋回用パイロット圧制御弁58,左旋回用パイロット圧制御弁59の下流には,オペレータ操作検出装置36としてパイロット圧を検出する圧力センサ(図示しない)がそれぞれ備えられている。この圧力センサにより各操作レバー15a,15b,15c,15dに対するオペレータの操作量を検出できる。本実施形態の具体的なオペレータ操作検出装置36としては,ブーム上げ用パイロット配管529に設けられたブーム上げ用パイロット圧力センサと,ブーム下げ用パイロット配管539に設けられたブーム下げ用パイロット圧力センサと,アームクラウド用パイロット配管549に設けられたアームクラウド用パイロット圧力センサと,アームダンプ用パイロット配管559に設けられたアームダンプ用パイロット圧力センサと,バケットクラウド用パイロット配管569に設けられたバケットクラウド用パイロット圧力センサと,バケットダンプ用パイロット配管579に設けられたバケットダンプ用パイロット圧力センサと,右旋回用パイロット配管589に設けられた右旋回用パイロット圧力センサと,左旋回用パイロット配管599に設けられた左旋回用パイロット圧力センサとが設けられている。
上記の8つのパイロット圧力センサの下流側にはシャトルブロック46が設置されており,シャトルブロック46からは油圧ポンプ2に取り付けられたレギュレータ47に対して制御信号(パイロット圧)が出力可能に構成されている。シャトルブロック46は,油圧ポンプ2の制御に使用する制御信号の圧力を制御する。レギュレータ47は,操作装置15の操作量に応じて油圧ポンプ2の傾転角を調節することで油圧ポンプ2の吐出流量を変化させている。ブーム上げ用パイロット配管529及びブーム下げ用パイロット配管539の下流にはシャトルブロック46を介してブーム用流量制御弁16aが接続されている。アームクラウド用パイロット配管549及びアームダンプ用パイロット配管559の下流にはシャトルブロック46を介してアーム用流量制御弁16bが接続されている。バケットクラウド用パイロット配管569及びバケットダンプ用パイロット配管579の下流にはシャトルブロック46を介してバケット用流量制御弁16cが接続されている。右旋回用パイロット配管589及び左旋回用パイロット配管599の下流にはシャトルブロック46を介して旋回用流量制御弁16dが接続されている。流量制御弁16a〜16dは,操作装置15から出力されるパイロット圧に応じて動作し,操作装置15の操作量に応じて各油圧アクチュエータ4,5,6,7に供給される作動油の流量を制御できるように構成されている。
油圧ショベル1にはMGを司る制御コントローラ20が搭載されている。制御コントローラ20は,入力インターフェースと,プロセッサである中央処理装置(CPU)と,記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)と,出力インターフェースとを有している(いずれも図示せず)。入力インターフェースは制御コントローラ20に接続される各装置からの信号をCPUが演算可能なように変換する。ROMは,後述するフローチャートに係る処理を含めMGを実行するための制御プログラムと,当該フローチャートの実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり,CPUは,ROMに記憶された制御プログラムに従って入力インターフェース及びROM,RAM94取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インターフェースは,CPUでの演算結果に応じた出力用の信号を作成し,その信号を報知装置に出力することで報知装置を作動できる。なお,本実施形態の制御コントローラ20は,記憶装置としてROM及びRAMという半導体メモリを備えているが,記憶装置であれば特に代替可能であり,例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備えても良い。
図3に,油圧ショベル1に搭載された制御コントローラ(制御装置)20の機能ブロック図を示す。この図に示すように本実施形態の制御コントローラ20は,作業機姿勢検出部28と,作業具速度推定部29と,目標面距離及び作業具角度演算部30と,ガイダンス内容変更部31として機能する。また,制御コントローラには,作業機姿勢検出装置34,目標面設定装置35,オペレータ操作検出装置36,アクチュエータ状態検出装置37,報知装置38と,GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ17が接続されている。
作業機姿勢検出装置34は,ブーム角度センサ21,アーム角度センサ22,バケット角度センサ23,車体傾斜角センサ24,とから構成される。
目標面設定装置35は,油圧ショベル1の掘削作業により形成すべき所定の目標面62に関する情報(各目標面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインターフェースであり,その入力した目標面62に関する情報を記憶することもできる。目標面62は設計面を施工に適した形で抽出・修正したものである。目標面設定装置35は,グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標面の3次元データを格納した外部端末(図示せず)と接続できる。目標面62の位置情報は,油圧ショベル1の掘削作業で形成すべき最終目標形状である設計面の位置情報に基づいて作成される。通常,掘削作業の場合には目標面62は設計面上またはその上方に設定され,盛土作業の場合には設計面上またはその下方に設定される。なお,目標面設定装置35を介した目標面62に関する情報の入力はオペレータが手動で行っても良い。また,目標面62はグローバル座標系上で定義する必要はなく,例えば上部旋回体12に設定された油圧ショベル1のローカル座標系上に定義しても良い。この場合,グローバル座標系における上部旋回体12の位置(車体1Bの位置)を演算するという観点からはGNSSアンテナ17を搭載する必要は無くなる。
GNSSアンテナ17は,上部旋回体12上に取り付けられており,複数(通常は4基以上)の航法衛星からの航法信号を受信してそれを制御コントローラ20に出力している。GNSSアンテナ17によって受信された航法信号の情報は上部旋回体12(車体1B)のグローバル座標における位置情報を算出する際に利用される。なお,GNSSアンテナ17は,1本でも構わないが,2本搭載すると上部旋回体12の姿勢を演算できる。
オペレータ操作検出装置36は,オペレータによる操作装置15の操作によって生じるパイロット圧を取得する既述の8つの圧力センサ(すなわち,ブーム上げ用パイロット圧力センサ,ブーム下げ用パイロット圧力センサ,アームクラウド用パイロット圧力センサ,アームダンプ用パイロット圧力センサ,バケットクラウド用パイロット圧力センサ,バケットダンプ用パイロット圧力センサ,右旋回用パイロット圧力センサ,左旋回用パイロット圧力センサ)で構成される。ブーム上げ用パイロット圧力センサとブーム下げ用パイロット圧力センサの検出値はブーム操作信号として,アームクラウド用パイロット圧力センサとアームダンプ用パイロット圧力センサの検出値はアーム操作信号として,バケットクラウド用パイロット圧力センサとバケットダンプ用パイロット圧力センサの検出値はバケット操作信号として制御コントローラ20内の作業具速度推定部29に出力される。
アクチュエータ状態検出装置37は,油圧アクチュエータ5,6,7の状態を示す物理量を検出するための装置である。本実施形態では,アクチュエータ状態検出装置37は,ブームシリンダ圧力センサ25,アームシリンダ圧力センサ26及びバケットシリンダ圧力センサ27から構成されており,制御コントローラ20は,各圧力センサ25,26,27の出力を元に各油圧アクチュエータ5,6,7の負荷を演算可能になっている。
報知装置38は,少なくともバケット10と目標面62の位置関係をオペレータに報知するための装置であり,本実施形態では,少なくともモニタ等の表示装置39と,スピーカー等の音声出力装置40とから構成される。
作業機姿勢検出部28は,上部旋回体12に設定されたローカル座標系におけるフロント作業機1Aの姿勢情報(ブーム8,アーム9,バケット10の姿勢情報)とバケット10の先端(爪先)の位置情報を演算する部分である。作業機姿勢検出部28は,作業機姿勢検出装置34から入力されるブーム角度信号,アーム角度信号及びバケット角度信号と,制御コントローラ20内の記憶装置に記録されたブーム8,アーム9及びバケット10の寸法情報に基づいて,ローカル座標系におけるフロント作業機1Aの姿勢情報とバケット10の先端(爪先)の座標を演算し,その演算結果を目標面距離及び作業具角度演算部30に出力する。
目標面距離及び作業具演算部30は,目標面62とバケット先端間の距離である目標面距離と,目標面62とバケット10の背面のなす角である作業具角度を演算する部分である。目標面距離及び作業具角度演算部30は,GNSSアンテナ17から入力される航法信号に基づいて上部旋回体12のグローバル座標における位置情報を演算し,作業機姿勢検出装置34から入力される車体1Bのロール角情報とピッチ角情報に基づいて上部旋回体12のグローバル座標における姿勢情報を演算する。そして,目標面距離及び作業具角度演算部30は,上部旋回体12のグローバル座標における位置情報及び姿勢情報を利用して,作業機姿勢検出部28から入力されるローカル座標系におけるフロント作業機1Aの姿勢情報とバケット先端の位置情報をグローバル座標系の値に変換する。このように演算したバケット先端の位置情報と目標面設定装置35から入力される目標面62の位置情報を基に,目標面距離及び作業具角度演算部30は目標面距離を演算する。また,バケット先端の位置情報及び姿勢情報と目標面62の位置情報を基に,目標面距離及び作業具角度演算部30は作業具角度を演算する。
オペレータの操作装置15の操作による,バケット10の位置合わせ作業の例を図4と図5に示す。ここで,バケット10の位置合わせ作業(位置合わせ動作)とは,アーム9をクラウド動作又はダンプ動作させて行う作業(典型的には掘削作業)の開始位置(「作業開始位置」と称する)にバケット10を移動させる作業(動作)のことであり,位置合わせ作業が完了したのちにアーム動作による各種作業が実施される。図4には,ブーム8を下げて目標面62上の作業開始位置にバケット10を移動させる位置合わせ作業を示し,図5には,バケット10を回動させて目標面62上の作業開始位置にバケット10を移動させる位置合わせ作業を示す。
図4では,オペレータが操作装置15を操作しブーム8を下げ動作させることにより,目標面62上にバケット10の先端を位置合わせする状況を示している。すなわち,バケット10が目標面62の上方にあり目標面62と離れている状態S1から,目標面62上の作業開始位置にバケット10が静止している状態S2へ遷移する一連の作業を示している。
状態S1において,オペレータのブーム8の下げ操作によりバケット10の先端に生じる速度ベクトルをVとし,Vのうち目標面62に平行な成分をVxsrf,垂直な成分をVzsrfとする。また,Vzsrfの符号は,目標面62に対して鉛直上向きの方向を正,目標面62に対して鉛直下向きの方向を負とする。
速度ベクトルVの演算は,作業機姿勢検出装置34とオペレータ操作検出装置36の検出値に基づいて作業具速度推定部29が行っている。具体的には,オペレータによる操作装置15の操作によって生じる各油圧シリンダ5,6,7へのパイロット圧力(操作信号)から,各油圧シリンダ5,6,7の速度を演算し,その各油圧シリンダ速度を作業機1Aの姿勢情報を利用してブーム8,アーム9,バケット10それぞれの角速度に変換し,さらにそれをバケット10の先端の速度ベクトルに変換することで算出する。なお,既述のように,作業機1Aの姿勢情報は,作業機姿勢検出装置34から入力されるブーム8,アーム9及びバケット10の角度信号から演算できる。
図4において,掘削対象である現況地形61は,目標面62の近傍にのみ存在している。この場合,フロント作業機1Aが状態S1から状態S2へ遷移するとき,フロント作業機1Aへの現況地形61による掘削負荷は,目標面62の近傍にバケット10が近づいても増加し難い。そのため,オペレータ操作により生じるバケット先端の速度ベクトルVの目標面62に垂直な成分Vzsrfが負の向きに大きいと,バケット10が目標面62の下方へ侵入する可能性が高くなる。本実施形態では,フロント作業機1Aに掘削負荷が作用しているか否かは,油圧シリンダ5,6,7に生じる圧力であって圧力センサ25,26,27で検出される圧力が所定の閾値以上であるか否かに基づいてガイダンス内容変更部31が判定している。そして,圧力センサ25,26,27の検出圧力が当該所定の閾値以上の場合には,該当する油圧シリンダに掘削負荷が作用していると判定する。
図5においても,前述したことと同様に,バケット10の先端に生じる速度ベクトルVを算出することができ,速度ベクトルの目標面62に垂直な成分Vzsrfが負の向きに大きいほど,バケット10が目標面62の下方へ侵入する可能性が高くなる。
ガイダンス内容変更部31は,速度ベクトルVの垂直成分Vzsrf,目標面距離,油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)5,6,7の圧力,及び目標面62に対するバケット10の角度に基づいて,オペレータ操作によりバケット10が目標面62の下方に侵入する可能性が高いか否かを判定し,当該判定で侵入の可能性が高いと判定した場合に報知装置38に対して警告報知フラグを出力する。
報知装置38はガイダンス内容変更部31から警告報知フラグが入力されると,バケット10と目標面62の位置関係を画像で示しつつライトバー391によってバケット爪先と目標面の距離を示す通常のMG(図7参照)とは異なる報知を実施する。具体的には,図6に示すように,表示装置39は,操作量が過大であることを示すポップアップメッセージ392の表示と,目標面62とバケット爪先の距離を示すライトバー391を明滅させることによって,操作装置15に対する操作量が過大であることをオペレータに報知する。また,音声出力装置40から,音声としても,通常のMGとは異なる音声,例えば周波数の異なる音声を出力することで,操作量が過大であることをオペレータに報知する。このように報知するとオペレータは自身の操作量が過大であるとバケット10が目標面62に到達する前に認識できるので,目標面62へのバケット10の侵入を防ぐことができる。なお,比較のため,警告報知フラグが出力されていないとき,すなわち通常のMG時の表示装置39の表示画面の一例を図7に示す。図7の表示装置39の画面には,バケット10と目標面62の画像が表示される位置関係表示部395と,バケット爪先と目標面62の距離を数値で示す目標面距離表示部393と,バケット10の爪先を基準としたときの目標面62の方向を矢印で示す目標面方向表示部394とが設けられている。
ライトバー391は,目標面62とバケット10の距離に応じて点灯する。図7のライトバー391は縦方向に直列配置された5つの点灯可能なセグメントで構成されており,図中で点灯中の上側の3つのセグメントにはドットを付している。本実施形態では,バケット10の爪先が目標面62から±0.05mの距離に存在する場合には中央のセグメントのみが点灯する。爪先が目標面62から0.05〜0.10mの距離に存在する場合には中央のセグメント及びその上のセグメントの2つが点灯し,爪先が目標面62から0.10mを越える距離に存在する場合には中央のセグメント及びその上の2つのセグメントの3つが点灯する。同様に距離が−0.05〜−0.10mを場合には中央とその下のセグメントの2つが点灯し,距離が−0.10mを越える場合には中央とその下の2つのセグメントの3つが点灯する。図7の例では,目標面62までの距離が+1.00mなので上側の3つのセグメントが点灯している。
図8は本実施形態の制御コントローラ20による制御フローを示す。制御コントローラ20は所定の制御周期で図8のフローを繰り返し実行している。処理が開始されると,まず,ステップS101において,作業具速度推定部29がオペレータ操作検出装置36から入力されるブーム操作信号,アーム操作信号及びバケット操作信号から各油圧シリンダ5,6,7の速度を算出する。
次にステップS102において,作業具速度推定部29は,ブーム8、アーム9及びバケット10(被駆動部材)の寸法情報と姿勢情報(ブーム角度信号,アーム角度信号及びバケット角度信号)を基にステップS101のシリンダ速度を角速度に変換し,それをバケット10の先端の速度ベクトルVに変換する。
次にステップS103において,作業具速度推定部29は,バケット10の先端の速度ベクトルVから,その速度ベクトルVの目標面62に対する水平成分Vxsrfと,垂直成分Vzsrfを算出する。
ステップS104では,ガイダンス内容変更部31は,速度ベクトルVの目標面62に対する垂直成分Vzsrfが所定の閾値より小さいか否かを判定する。垂直成分Vzsrfが目標面62の下方に向かう方向の場合,つまり目標面62より上方にバケット10が存在する場合は,バケット10が目標面62に向かう方向(下方向)が負である。そこで,ステップS104の閾値はゼロとする。閾値をゼロとすると,垂直成分Vzsrfが閾値より小さい場合に,バケット10の速度は目標面62の上方から目標面62に近づく向きの速度であると判定して,ステップS105に進む。
ステップS105では,ガイダンス内容変更部31は,目標面62とバケット10の先端間の距離(目標面距離)を目標面距離及び作業具角度演算部30から入力し,その目標面距離が所定の閾値以下であるか否かを判定する。目標面距離が閾値以下である場合には,バケット先端が目標面62に近づいていると判定してステップS106へ進む。ステップS105における閾値は,バケット爪先が目標面62に近づいたか否かを判定するための値であり,例えば,操作装置15の操作によりバケット10の先端が目標面62の下方に侵入する可能性のある目標面距離の最大値を閾値として選択することができる。
ステップS106では,ガイダンス内容変更部31は,アクチュエータ状態検出装置37から入力されるアクチュエータ5,6,7の圧力の中で操作装置15による操作対象のアクチュエータに係る圧力が所定の閾値以下であるか否かを判定する。本実施形態では,フロント作業機1Aが施工対象(現況地形61)に接触せず,空中を動作している場合(すなわち各油圧シリンダ5,6,7に負荷が作用しない場合)の圧力と同程度の値に当該閾値を設定する。つまり,フロント作業機1Aがある程度の固さを有する施工対象に接触した場合には圧力は閾値を超える。アクチュエータ圧力が閾値以下であると判定された場合,操作装置15の操作では作業機1Aは現況地形61に接触していないと判定してステップS107へ進む。
ステップS107では,ガイダンス内容変更部31は,バケット10の底面と目標面62のなす角度(作業具角度)を目標面距離及び作業具角度演算部30から入力し,その作業具角度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。既述の通り作業具角度は,作業機姿勢検出装置34から取得したフロント作業機1Aの姿勢と車体1Bの傾斜(ロール角・ピッチ角)と,目標面設定装置35から取得した目標面の情報と,制御コントローラ20に記録されたバケット10の寸法情報から算出可能である。作業具角度が閾値未満である場合は,オペレータがバケット10の底面を現況地形61に押し付ける作業(土羽打ち作業)を意図していると考えられる。反対に作業具角度が閾値以上である場合には,オペレータは掘削作業を意図しているとみなしてステップS108へ進む。このようにステップS107の閾値は,オペレータの意図する作業が土羽打ちか掘削かを判定するための値であり,ゼロから45度の間で設定することが好ましく,閾値をゼロに近づけるほど掘削作業と判定されてステップS108に進む可能性が高くなる。
ステップS108では,目標面62の下方にバケット10が侵入する可能性が高いと判定して警告報知フラグを発報して処理を終了し,次の制御周期まで待機する。
一方,ステップS104,ステップS105,ステップS106及びステップS107のいずれかで条件が満たされなかった場合にはステップS109へ進む。ステップS109では,警告報知フラグの発報しないまま処理を終了し,次の制御周期まで待機する。
−動作・効果−
上記のように構成される油圧ショベル1において,図4に示すように操作装置15aを介したブーム下げ操作が行われた場合,目標面距離が閾値以下(図8のステップS105)かつブームシリンダ5の圧力が閾値以下のときには(ステップS106),バケット10が未だ現況地形61に接触していないとみなし,作業具角度に基づいて作業内容の判定を行う(ステップS107)。そして,作業具角度が閾値以上の場合には,位置合わせ作業(すなわち掘削作業)でブーム下げ操作が行われていると判定してブーム下げ操作量が過大である旨のメッセージ392を表示装置に表示する(ステップS108)。これによりオペレータは自身のレバー操作が過大であることを認識でき,操作量を低減することが促されるので,目標面62に下方にバケット10が侵入することを防止できる。一方,作業具角度が閾値より小さい場合には,バケット10の背面と目標面62のなす角が略平行であるとみなして,土羽打ち作業でブーム下げ操作が行われていると判定してブーム下げ操作量が過大である旨のメッセージ392は表示しない(ステップS109)。つまり土羽打ち作業中はブーム下げ操作でバケット10が目標面62に近づいてもメッセージ392が表示されないので,オペレータがメッセージに煩わしさを感じることなく土羽打ち作業に専念できる。
また,図5に示すように操作装置15bを介したバケットクラウド操作によりバケット爪先が目標面に近づいた場合,目標面距離が閾値以下(図8のステップS105)かつブームシリンダ5の圧力が閾値以下のときには(ステップS106),バケット10が未だ現況地形61に接触していないとみなし,作業具角度に基づいて作業内容の判定を行う(ステップS107)。通常,バケットクラウド操作を入力している場合は,バケット10の背面と目標面62のなす角(作業具角度)は閾値以上となるので,制御コントローラ20は,位置合わせ作業(すなわち掘削作業)でバケットクラウド操作が行われていると判定してバケットクラウド操作量が過大である旨のメッセージ392を表示装置39に表示する(ステップS108)。これによりオペレータは自身のレバー操作が過大であることを認識できるので,操作量を低減することで目標面62に下方にバケット10が侵入することが防止できる。
以上のように,表示装置39(報知装置38)を介してオペレータに通達する内容を,アクチュエータ5,7の状態に基づいて変更すると,土羽打ち作業中に不要な警告メッセージ392がオペレータに提供されることが回避できるので,オペレータがメッセージ392に煩わしさを感じることなく土羽打ち作業を実施できる。
そして,報知装置38が報知する内容を,速度ベクトルVの目標面62に対する垂直成分Vzsrf,アクチュエータ圧力,目標面距離,作業具角度に応じて変化させることで,報知装置38が不要な警告を発することなく,かつ目標面62の下方へのバケット侵入可能性が高いときには警告することで,目標面62へのバケットの侵入をより確実に防止することができる。
なお,ステップS104の垂直成分Vzsrfの判定処理とステップS105の目標面距離の判定処理を,1つにまとめて以下のように実施しても良い。図9に示すのは,目標面62に対する速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfを縦軸に,目標面距離を横軸に取ったグラフである。ここで,グラフの第4象限に示すハッチング部分に垂直成分Vzsrfと目標面距離が入った場合に,ステップS106へ進むようにし,そうでない場合にはステップS109に進むようにしても良い。速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfが同じであっても,目標面距離によって目標面62への侵入可能性は変動する。そのため,図9に示すような垂直成分Vzsrfと目標面距離を関連づけたハッチング領域を設定すること,換言すれば目標面距離の低減に応じて垂直成分Vzsrfの閾値が単調に減少するように設定することで,より適切に報知装置38が警告を発報することが可能となる。
また,ブーム8に対するアーム9の角度に応じて,ステップS104の速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfの閾値やステップS105の目標面距離の閾値を変更しても良い。アームシリンダ6を収縮方向に動作させてアーム9が伸びている状態(すなわち旋回半径が大きい状態)の方が,慣性モーメントが大きく,ブーム下げ動作を停止しにくくなる。そのため,アーム9の角度に応じて閾値を変更することが好ましい。具体的には,アームシリンダ6を伸長することでアーム9がクラウド動作されている状態よりも,アームシリンダ6が収縮しアーム9がダンプ動作されている状態の方が,発報が生じやすくなるよう閾値の大きさを大きくすることが好ましい。例えば,図10に示すように,速度ベクトルの垂直成分Vzsrfに関する閾値VzthをVzth’へ,目標面距離に関する閾値DthをDth’へ変更すると,ステップ106へ進む領域が拡大し,より発報を生じやすくすることができる。また第4象限におけるハッチング領域と非ハンチング領域の境界線をハッチング領域の面積が増加する方向(例えば右方向や右上方向)に移動させても良い。
また,ステップS104のステップS105の処理をまとめて,次のように実施しても良い。速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfと目標面距離から,目標面62にバケット10が到達するまでの予測時間を算出し,その予測時間が閾値以下となった場合に,ステップS106へ進むようにしても良い。なお,この場合の予測時間は,例えば,目標面距離を垂直成分で除すれば算出できる。
なお,ステップS107の処理は図8のフローチャートから省略しても良い。
<第2実施形態>
次にアーム9による掘削動作が含まれる場合の実施形態について説明する。なお,第1実施形態と重複する部分の説明は省略する。
図11に示すように,操作装置15を介したオペレータのアームクラウド操作によりアーム9を図中の矢印で示す掘削方向に回動させて直線状の目標面62を成形する場合,ブーム8と複合した動作が必要となる。具体的には,アーム9のクラウド動作によって生じるバケット10の先端の目標面62に対する速度ベクトルの垂直成分を打ち消すような,ブーム8の上げ動作もしくは下げ動作が必要となる。具体的には,アーム9によって負の向き(目標面62に対して鉛直下向き)の速度ベクトルの垂直成分が生じる場合はブーム8の上げ動作によりそれを打ち消し,反対に正の向き(目標面62に対して鉛直上向き)の速度ベクトルの垂直成分が生じる場合はブーム8の下げ動作によりそれを打ち消す必要がある。
アーム9の掘削動作において,ブーム8の上げ動作が不足することにより目標面62への侵入可能姿勢が高いと判断されるときの表示例を図12に,ブーム8の下げ動作が過大になることにより目標面62への侵入可能性が高いと判断されるときの表示例を図13に示す。これにより,オペレータに操作が過大であること,または不足していることを通達し,目標面62へのバケット10の侵入を軽減することができる。
図14は第2実施形態の制御コントローラ20による制御フローを示す。制御コントローラ20は所定の制御周期で図14のフローを繰り返し実行している。処理が開始されると,図8のフローと同様に作業具速度推定部29が各油圧シリンダ5,6,7の速度の算出処理(ステップS101)と,バケット先端の速度ベクトルVの算出処理(ステップS102)と,速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfの算出処理(ステップS103)を実行する。
次にステップS211において,作業具速度推定部29は,ブーム8及びアーム9の寸法情報および姿勢情報(ブーム角度信号及びアーム角度信号)と,ステップS101のアームシリンダ6の速度に基づいてアーム9の動作によって生じる速度ベクトルVaを算出し,その速度ベクトルVaの目標面62に対する垂直成分Vazsrfを算出する。
ステップS201において,ガイダンス内容変更部31は,アーム操作信号に基づいてアーム9がオペレータにより掘削操作されているか(すなわち,クラウド操作されているか)を判定する。ここでアーム9が掘削操作されていると判定された場合にはステップS202へ進む。
ステップS202において,ガイダンス内容変更部31は,バケット先端(バケット爪先)の速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfが閾値以下であるか否かを判定する。ここで垂直成分Vzsrfが閾値以下であると判定された場合にはステップS203へ進み,そうでない場合にはステップS209に進む。なお,ステップS202の垂直成分Vzsrfに係る閾値は,図8のステップS104に係る閾値と同じにしても良いし,異ならせても良い。
ステップS203では,ガイダンス内容変更部31は,目標面距離が閾値以下であるか否かを判定する。ここで目標面距離が閾値以下であると判定された場合にはステップS204へ進み,そうでない場合にはステップS209に進む。なお,ステップS203の目標面距離に係る閾値は,図8のステップS105に係る閾値と同じにしても良いし,異ならせても良い。
ステップS204では,ガイダンス内容変更部31は,アクチュエータ圧力が閾値以下であるか否かを判定する。閾値以下である場合にはステップS205へ進み,そうでない場合にはステップS209に進む。なお,ステップステップS204のアクチュエータ圧力に係る閾値は,図8のステップS106に係る閾値と同じにしても良いし,異ならせても良い。
ステップS205では,ガイダンス内容変更部31は,バケット10の底面と目標面のなす角度(作業具角度)が閾値以上であるかを判定する。閾値未満である場合は,アーム9の操作によりバケット10の底面で押し付け作業をしていると考えられる。角度が閾値以上である場合,ステップS206へ進み,そうでない場合にはステップS209に進む。なお,ステップステップS205の作業具角度に係る閾値は,図8のステップS107に係る閾値と同じにしても良いし,異ならせても良い。
ステップS206では,ガイダンス内容変更部31は,ステップS211で演算した,アーム9の動作によって生じるバケット10の目標面62に対する速度ベクトルVaの垂直成分Vazsrfが負であるか否かを判定する。負である場合にはステップS207へ進み,そうでない場合(垂直成分Vazsrfがゼロまたは正の場合)にはステップS208に進む。
ステップS207では,ガイダンス内容変更部31は,ブーム8の上げ操作の不足,またはアーム9の掘削操作の過大が原因で目標面62への侵入可能性が大きいと判定し,その旨を報知する警告報知フラグ(ブーム上げ不足警告報知フラグ)を発報する。ブーム上げ不足警告報知フラグが入力された際の表示装置39の画面表示例を図12に示す。図12ではブーム上げ不足警告報知フラグによりブーム上げが不足又はアームクラウドが過大であることを示すメッセージ392Aが表示される。このメッセージ392Aによりブーム上げ操作が不足であること又はアームクラウド操作が過大であることをオペレータに通達でき,それを認識したオペレータの操作変更により目標面62へのバケット10の侵入を防止できる。なお,図12の例ではメッセージ392Aによりブーム上げ不足とアームクラウド過大の双方をオペレータに報知しているが,いずれか一方を報知しても良い。
ステップS206でアーム9の動作によって生じる垂直方向速度が負ではないと判定された場合,ステップS208へ進む。
ステップS208では,ガイダンス内容変更部31は,ブーム8の下げ動作が過大であり,目標面62への侵入可能性が大きいと判定し,その旨を報知する警告報知フラグ(ブーム下げ過大警告報知フラグ)を発報する。ブーム下げ過大警告報知フラグが入力された際の表示装置39の画面表示例を図13に示す。図13ではブーム下げ過大警告報知フラグによりブーム下げが過大であることを示すメッセージ392Bが表示される。このメッセージ392Bによりブーム8の下げ動作が過大になることをオペレータに通達でき,それを認識したオペレータの操作変更(ブーム下げ操作の低減)により目標面62へのバケット10の侵入を防止できる。
ステップS202,ステップS203,ステップS204,ステップS205のいずれかで条件を満たさなかった場合,ステップS209へ進む。ステップS209では,アーム9の掘削操作による警告報知フラグの発報を実施しない。
ステップS201で条件を満たさなかった場合(すなわち,アーム9が掘削操作されていない場合)にはステップS210へ進む。ステップS210に進んだ場合の処理を図15に示す。
図15では,ガイダンス内容変更部31は,ステップS300,ステップS301,ステップS302,ステップS303,ステップS304,ステップS305の処理を実施する。これらの処理は図8に示したステップS104,ステップS105,ステップS106,ステップS107,ステップS108,ステップS109の処理とそれぞれ同じ処理であるため説明は省略する。
上記のように本実施形態では,操作装置15を介したアーム操作の有無に応じて報知装置(表示装置39)による報知内容(MGの内容)を変更することとした。より具体的には,アーム動作によって生じる垂直速度成分Vazsrfの方向によって,オペレータへの報知内容を変更することで,ブーム8とアーム9の複合操作が必要な状況においてオペレータはより適切な操作が可能になる。例えば,ステップS207の状況では,オペレータはブーム上げ操作が不足していることを認識でき,ブーム上げ操作の操作量を増加することで目標面62に沿った掘削が可能になる。
ところで,図14に示すフローと図15に示すフローとで所定の閾値を利用した同様の判定処理を行っているステップがあるが,それらのステップの閾値は異ならせても良く,また,図14のフローよりも図15のフローの方が各ステップでの判定結果がYESとなり易いように(すなわち警告報知フラグが発報され易いように)閾値を設定することが好ましい。例えばステップS203とS301では目標面距離と閾値を比較しているが,その閾値はステップS203では100mm,ステップS301では1,000mmとしても良い。このようにすることで,アーム9による掘削作業時には図14に従って掘削力を確保し,アーム操作の無い位置合わせ作業時には図15に従って目標面62への侵入を確実に防止することになり,それぞれの作業に適した報知を実施することが可能となる。
<第3実施形態>
本実施形態は第1実施形態の変形例である。本実施形態のガイダンス内容変更部31は,操作装置15を介したブーム8の操作が有るとき,バケット10の爪先の移動軌跡(後述の「軌跡D」)と目標面62の交点(後述の「到達地点」)を算出し,その交点におけるバケット爪先の速度ベクトルVtgtを予測演算し,その交点における速度ベクトルVtgtにおける目標面62と垂直な成分Vztgtに応じて第1実施形態のステップS104とステップS105の少なくとも一方の閾値を変更することで報知装置38による報知内容を変更することを特徴としている。
ブーム8の下げ動作による位置合わせ作業において,アーム9とバケット10の角度に変化がない場合(すなわちアーム9とバケット10に対する操作が無くブーム8の下げ操作のみの場合),バケット10の先端が描く軌跡D(図16参照)と目標面62の交点,つまり位置合わせ作業の目標面62上における到達地点(以下「到達地点」と称することがある)をバケット10が目標面62や現況地形61に到達する前に算出できる。具体的には,例えば,以下のように算出できる。アーム9とバケット10の角度に変化がない場合,ブーム8の下げ動作時のバケット10の先端は,ブーム8の基端部(回動中心)を中心とし,ブーム基端部−バケット先端間距離を半径とする円弧を描くように移動する。そのため,この円弧と目標面62の交点が到達地点となる。
また,到達地点におけるバケット爪先の速度ベクトルVtgt(図16参照)の目標面62に対する垂直成分Vztgt(図16参照)もステップS103の垂直成分Vzsrfと同様に算出可能である。そして垂直成分Vztgtの方向及び大きさに応じて,ステップS105の目標面距離に関する閾値やステップS104の垂直成分Vzsrfに関する閾値を変更することでオペレータへの不要なメッセージ392の表示を防ぐことができ,MGの使い勝手を向上させることができる。
図16にはバケット10の可動範囲と目標面62を示し,ハッチングを施した領域で示したハッチング部Eがバケット10の可動範囲である。また,円弧Dが,図16に示したアーム9とバケット10の姿勢での,バケット10の先端の軌跡を示している。図16に示すような位置に目標面62が存在する場合,速度ベクトルVtgtと目標面62のなす角は比較的小さく,その垂直成分Vztgtの大きさが比較的小さくなる。そのため,ブーム8の下げ動作が速い場合であっても,目標面62へのバケット侵入量は比較的小さくなる。この場合,ステップS104やステップS105の閾値は警告がより報知され難い方向へ変更することが妥当と考えられる。例えば,第1実施形態における図8のステップS105にある目標面距離に関する閾値は,垂直成分Vztgtの方向と大きさに応じて図17に示すグラフのように変更できる。
図17のグラフは,横軸に速度ベクトルVtgtの到達地点での垂直成分Vztgt,縦軸に目標面距離の閾値(距離閾値)をとったものである。到達地点での速度ベクトルの垂直成分Vztgtが負の場合にはその大きさの増加に応じて距離閾値も増加するように設定している。このように距離閾値を設定すると負の垂直成分Vztgtの大きさが大きい場合は距離閾値が大きくなるため,結果として第1実施形態よりも早めに警告報知フラグが発報されるようになる。一方,負の垂直成分Vztgtの大きさが小さい場合は距離閾値が小さくなるため,結果として第1実施形態よりもバケット10が目標面62により近づいた状況で警告報知フラグが発報されるようになる。また,到達地点における速度ベクトルVgtgの垂直成分Vztgtが零となる場合や,垂直成分Vztgtが正で目標面62より上方にバケット10が存在する場合には,図17に示すように距離閾値も零とし,常に警告報知フラグが発報されないようにしても良い。さらに,バケット10の先端が描く軌跡(円弧)Dと目標面62の交点が存在しない場合には常に警告報知フラグが発報されないようにしても良い。
<第4実施形態>
本実施形態は,図18に示したガイダンス内容変更部31を備えている点で先の各実施形態と異なる。なお,先の実施形態と同じ部分については説明を適宜省略する。本実施形態のガイダンス内容変更部31は,表示モード決定部31aと,バケット表示位置決定部31bと,目標面表示位置決定部31cを備えている。
表示モード決定部31aは,バケット10と目標面62の位置関係を表示する画面の表示モードとして,拡大モード(図20,21参照)と全体モード(図22参照)のいずれを選択するかをブーム8の動作によって生じる速度ベクトルVb,アーム9の動作によって生じる速度ベクトルVa,目標面距離,及びアクチュエータ5,6,7の圧力に応じて決定し,その結果を表示モード指令として表示装置39に出力する部分である。表示装置39上の拡大モードの画面(第1画面)には図20,21に示すようにバケット10と目標面62が表示される。また,全体モードの画面(第2画面)には図22に示すように拡大モードの画面(第1画面)よりも広範囲が含まれ少なくとも油圧ショベル1の全体と目標面62が表示される。表示モード決定部31aには,表示装置39に現在表示されている表示モードを示す信号(表示モード信号)が表示装置39から入力されており,目標面距離及び作業具角度演算部30からは目標面距離が,アクチュエータ状態検出装置37からは各シリンダ5,6,7の圧力が,作業具速度推定部からは速度ベクトルVb,Vaが入力されている。
バケット表示位置決定部31bは,速度ベクトルV,目標面距離,及びアクチュエータ5,6,7の圧力に応じて,表示装置39の画面上でバケット10の画像が表示される位置を変更・決定し,その結果をバケット表示指令として表示装置39に出力する部分である。バケット表示位置決定部31bには,作業機姿勢検出部28からバケット爪先の位置とバケット10の姿勢が入力されており,オペレータ操作検出装置36からブーム8,アーム9,バケット10に対する操作信号が,アクチュエータ状態検出装置37からは各シリンダ5,6,7の圧力が,作業具速度推定部からはバケット10の爪先の速度ベクトルV(推定作業具速度)が入力されている。
目標面表示位置決定部31cは,バケット表示位置決定部31bから入力されるバケット表示指令と目標面設定装置35から入力される目標面情報に基づいて,表示装置39の画面上に目標面62の画像(線分)を表示する位置を決定し,その結果を目標面表示指令として表示装置39に出力する部分である。
表示装置39は,表示モード決定部31aから入力される表示モード指令に基づいてバケット10と目標面62の位置関係を示す画面の表示モードを制御する。そして,バケット表示位置決定部31bから入力されるバケット表示指令に基づいて当該画面におけるバケット10の表示位置を制御するとともに,目標面表示位置決定部31cから入力される目標面表示指令に基づいて当該画面における目標面62の表示位置を制御する。
掘削作業の現場においては,バケット周辺の目標面62の形状だけでなく,これからバケット10を移動させる方向にある目標面62の形状を前もって把握したい場合がある。一方で,バケット10により現在の地形を目標形状に成形する場合には,目標面62を詳細に把握したい場合がある。このような場合,表示装置39の表示画面において目標面62とバケット10の位置関係を変化させたり,その画面におけるバケット10と目標面62の表示倍率を変えたりすることが有効である。
図19は,本実施形態のガイダンス内容変更部31が実行する処理のフローチャートである。まず,ステップS400において,表示モード決定部31aは目標面距離が閾値以下であるかどうか判定する。目標面距離が閾値以下と判定された場合,ステップS401へ進む。
ステップS401では,表示モード決定部31aは表示モード信号に基づいて現在の表示が拡大モードであるかどうかを判定する。現在の表示モードが拡大モードであると判定された場合はステップS403へ進む。一方,拡大モードではないと判定された場合はステップS402へ進む。
ステップS402では,表示モード決定部31aは表示モードを拡大モードに変更する表示モード指令を表示装置39に出力する。
ステップS403では,バケット表示位置決定部31bは,オペレータ操作検出装置36から入力される操作信号に基づいて,オペレータによる作業機1Aの操作を対象としたレバー操作があるかを判定する。レバー操作があると判定された場合,ステップS404へ進む。
ステップS404では,バケット表示位置決定部31bは,3つの油圧シリンダ(アクチュエータ)5,6,7に生じる圧力の全てがシリンダごとに設定された閾値以下であるかを判定する。全てのシリンダ5,6,7の圧力がそれぞれの閾値以下であると判定された場合,ステップS405でバケット10の先端の速度ベクトルV(図8のステップS102の速度Vと同じ)を作業具速度推定部29から入力する。そして,次のステップS406では,バケット10の表示位置を基準位置(後述)から変更することを決定し,変更後のバケット表示位置をステップS405の速度ベクトルVに基づいて決定する。このステップS406の処理については後述する。
ステップS403でレバー操作がないと判定された場合,またはステップS404で3つのアクチュエータ5,6,7の圧力の少なくとも1つが閾値を超えると判定された場合には,ステップS407へ進む。ステップS407では,バケット表示位置決定部31bはバケット10の表示位置の変更に関する処理を実施しない。すなわち,この場合のバケット10の表示位置は基準位置となる。
また,ステップS400において目標面距離が閾値より大きいと判定された場合にはステップS408へ進む。ステップS408では,表示モード決定部31aは表示モード信号に基づいて現在の表示モードが拡大モードであるか否かを判定する。ここで現在の表示モードが拡大モードであると判定された場合にはステップS409へ進み,表示モードを全体モードに変更する表示モード指令を表示装置39に出力する。反対に現在の表示モードが拡大モードではないと判定された場合(すなわち全体モードである場合)にはステップS410へ進み,全体モードを維持する表示モード指令を表示装置39に出力する。
図20にステップS407に進んだ場合(バケット表示位置を基準位置から変更しない場合)の拡大モードの表示の例を,図21にステップS406へ進んだ場合(バケット表示位置を基準位置から変更した場合)の拡大モードの表示の例を,それぞれ示す。図20および図21に示される点Aから点Iは,実際の画面上には表示されない,説明用の点である。また,図21に示される矢印Jは,実際の画面上には表示されない,説明用の矢印である。
図20は,拡大モードの画面であって,かつバケット表示位置の変更がない場合である。バケット表示位置に変更がない場合には,バケット表示位置決定部31bは,表示部の中央に位置する基準点Eに爪先位置が合致するようにバケット10を表示し,そのバケット10の位置を基準として目標面表示位置決定部31cは目標面62を表示する。
ステップS406の処理について説明する。図21は,拡大モードであって,かつバケット表示位置が変更される場合である。図19のステップS405において入力した速度ベクトルVが図21中の矢印Jの向きである場合,バケット表示位置決定部31bは,基準点Eを始点として矢印Jにマイナスを乗じたベクトルの方向に在る点,すなわち図21においては点Bに,バケット先端位置が合致するようにバケット10を表示し,そのバケット10の位置を基準として目標面表示位置決定部31cは目標面62を表示する。このようにバケット10の表示位置を変更することで,バケット10が向かう方向に存在する目標面62をより広くオペレータに提示することが可能となる。図20,21の例では点A〜点Iの9点をバケット表示位置としているが,必ずしもこの点すべてをバケット表示位置として用いる必要はない。例えば,基準点Eに対して上下左右方向に存在する点B,点H,点D,点Fの4点を基準点Eとともにバケット表示位置として利用する形式でもよい。
このようにガイダンス内容変更部31を構成することで,レバー操作があり,かつ3つのアクチュエータ5,6,7の圧力が全て閾値以下である場合にはステップS406に進むため,バケット10が向かう方向に位置する目標面62の形状がより広く表示される。また,いずれかのアクチュエータ5,6,7の圧力が閾値より大きい場合にはステップS407に進むため,レバー操作があってもバケット表示位置が基準点Eに維持される。そのため,例えば,ステップS404の各アクチュエータ5,6,7の圧力の閾値を各アクチュエータ5,6,7のリリーフ圧に設定した場合にレバー操作をしてもバケット10の表示位置が基準点Eから変更されないときには,オペレータはアクチュエータ5,6,7のいずれかの圧力がリリーフ圧に達していることを直感的に把握できる。
なお,上記の例ではステップS404の判定で3つの油圧シリンダ5,6,7の圧力と閾値を比較したが,これに代えて,特定の油圧シリンダ(例えば,アームシリンダ6)の圧力とそれに対応する閾値(例えば,リリーフ圧)を比較しても良い。このようにステップS404で圧力を判定する予め油圧シリンダを決めておくと,レバー操作をしてもバケット10の表示位置が基準点Eから変更しない場合には,オペレータはその油圧シリンダがリリーフ圧(閾値)に到達したことを把握できる。
図22に全体モードの表示の例を示す。全体モードにおいては,ショベル全体と目標面62の位置がわかるように表示される。このように表示することで,オペレータはショベル1と目標面62の位置関係を容易に把握することができる。
−変形例1−
図19のフローではステップS400で目標面距離が1つの閾値より大きいか小さいかに応じて表示モードを切り替えたが,異なる閾値を2つ設定しておき,拡大モードに切り替わる場合の閾値を,全体モードに切り替わる場合の閾値よりも小さくしても良い。具体的には,目標面距離に関する閾値として,第1閾値と,第1閾値より小さい第2閾値を設定し,図23に示すフローチャートの処理を実施する。ガイダンス内容変更部31(制御コントローラ20)は図23のフローを所定の制御周期で繰り返し実行する。
まずステップS500において,表示モード決定部31aは,表示モード信号に基づいて現在の表示が全体モードであるか否かを判定する。現在の表示モードが全体モードであると判定された場合にはステップS501へ進む。
ステップS501では,表示モード決定部31aは,目標面距離が第2閾値以下であるか否かを判定する。第2閾値以下であると判定された場合にはステップS502へ進み,表示モード指令を出力して表示モードを拡大モードに変更する。ステップS501で目標面距離が第2閾値以下ではないと判定された場合(すなわち目標面距離が第2閾値より大きい場合)にはステップS503へ進み,表示モード決定部31aは全体モードを維持する。
一方,ステップS500で現在の表示モードが全体モードではないと判定された場合にはステップS504へ進み,表示モード決定部31aは目標面距離が第1閾値以上であるか否かを判定する。第1閾値以上であると判定された場合にはステップS505へ進み,表示モード指令を出力して表示モードを拡大モードに変更する。ステップS504で目標面距離が第1閾値以上ではないと判定された場合(すなわち目標面距離が第1閾値より大きい場合)にはステップS506へ進み,表示モード決定部31aは拡大モードを維持する。
ステップS502あるいはステップS506へ進んだ場合(すなわち表示モードが拡大モードの場合)は,図19に示すフローチャートのステップS403の処理へ進む。一方、ステップS503あるいはステップS505へ進んだ場合(すなわち表示モードが全体モードの場合)は処理を終了し,次の制御周期まで待機する。
図23に示すフローチャートによれば,目標面距離が第2閾値以下になったときに全体モードから拡大モードへの変更が行われ,目標面距離が第1閾値以上になったときに拡大モードから全体モードへの変更が行われることになる。これにより拡大モードと全体モードの頻繁な切り替わりが生じることを防止でき,オペレータへ与える煩わしさを低減できる。
−変形例2−
図19のステップS403でレバー操作有りと判定された場合には,図19のステップS404に代えて図24に示すフローチャートを開始するようにしても良い。
図24のフローを開始すると,バケット表示位置決定部31bはステップS600においてオペレータ操作によるバケット爪先の速度ベクトルVを入力する。次のステップS601では,バケット表示位置決定部31bは,速度ベクトルVに応じた表示ベクトルVdを算出する。表示ベクトルVdは速度ベクトルVにマイナスを乗じた基準点Eを始点とするベクトルである。
ステップS602では,バケット表示位置決定部31bは,アクチュエータ状態検出装置37からアームシリンダ6の圧力(アクチュエータ圧力)を入力する。ステップS603では,バケット表示位置決定部31bは,ステップS601で算出した表示ベクトルVdに対して,ステップS602で取得したアクチュエータ圧力に応じた1以下の係数を乗じる。図25にアクチュエータ圧力と係数の相関図を示す。この図のテーブルではアクチュエータ圧力の増加に応じて単調減少するように係数が設定されている。より具体的には,アクチュエータ圧力が所定値P1より低い場合には係数として1が出力され,同圧力が所定値P1以上かつリリーフ圧より低い場合には同圧力の増加とともに0に向かって単調に減少する値が係数として出力され,同圧力がリリーフ圧以上の場合においては0が係数として出力される。つまり,アクチュエータ圧力がP1より低い場合には係数が1なので表示ベクトルVdは速度ベクトルVの大きさに即したベクトルとなり,アクチュエータ圧力がP1以上の場合には圧力の増加とともに表示ベクトルVdの大きさは小さくなる。
ステップS604では,バケット表示位置決定部31bは,ステップS603で取得した表示ベクトルVdの終点をバケット表示位置として決定し,その位置に対応するバケット表示指令を表示装置39に出力する。すなわち本変形例の表示ベクトルVdは基準点Eからのバケット表示位置の移動量を示す。例えば,図21に示すように,速度ベクトルVに即したステップS601における表示ベクトルVdの終点が図21に示す点Bである場合,ステップS603における表示ベクトルVdの終点は基準点Eと点Bを結ぶ線分上のいずれかの点となり,その終点にバケット10の爪先が表示される。例えば,アクチュエータ圧力がリリーフ圧とP1の中間値の場合には係数が0.5となるため,表示ベクトルVdの大きさはアクチュエータ圧力がP1より低い場合の半分となり,基準点Eと点Bの中間にバケット10の爪先が表示される。このようにアクチュエータ圧力の大小に応じてバケット表示位置を変更することで,オペレータは該当するアクチュエータ(アームシリンダ6)の負荷の大小を直感的に把握できる。
なお,上記の説明では,ステップS603の係数をアームシリンダ6の圧力に基づいて算出したが,他の油圧シリンダ5,7の圧力に基づいて係数を決定しても良いし,複数の油圧シリンダ5,6,7の圧力から係数を決定しても良い。
−変形例3−
図19のフローではステップS400で目標面距離が閾値より大きいか小さいかに応じて表示モードを切り替えたが,ブーム8またはアーム9の動作により生じる速度ベクトルVb,Vaにおける目標面62に対する垂直成分Vbzsrf,Vazsrfの方向に応じて表示モードを切り替えても良い。その場合のフローチャートを図26に示す。ガイダンス内容変更部31(制御コントローラ20)は図26のフローを所定の制御周期で繰り返し実行する。
まずステップS700において,表示モード決定部31aは,表示モード信号に基づいて現在の表示モードが全体モードであるかを判定する。現在の表示モードが全体モードである場合にはステップS701へ進む。
ステップS701では,表示モード決定部31aは,目標面距離が閾値以下であるかを判定する。閾値はバケット爪先が目標面62に近づいたか否かを判定するための値であり,目標面距離が閾値以下である場合にはステップS702へ進む。
ステップS702では,表示モード決定部31aは,ブーム8またはアーム9の操作によって生じる速度ベクトルVb,Vaの垂直成分Vbzsrf,Vazsrfが目標面62へ近づく方向であるかを判定する。ブーム8の動作によって生じる速度ベクトルVbは,ブーム8の寸法情報および姿勢情報(ブーム角度信号)とブームシリンダ5の速度に基づいて作業具速度推定部29が算出する。作業具速度推定部29は速度ベクトルVbの目標面62に対する垂直成分Vbzsrfも算出する。また,アーム9の動作によって生じる速度ベクトルVaも,ブーム8及びアーム9の寸法情報および姿勢情報(ブーム角度信号及びアーム角度信号)とアームシリンダ6の速度に基づいて作業具速度推定部29が算出する。作業具速度推定部29は速度ベクトルVaの目標面62に対する垂直成分Vazsrfも算出する。ステップS702で垂直成分Vbzsrf,Vazsrfが目標面62に近づく方向(すなわち負の方向)であると判定された場合にはステップS703へ進む。
ステップS703では,表示モード決定部31aは,アクチュエータ(油圧シリンダ)5,6,7の圧力が全て閾値以下であるか否かを判定する。閾値は図19のステップS404と同じ値に設定できる。アクチュエータ圧力が全て閾値以下であると判定された場合にはステップS704へ進み,表示モードを拡大モードへ変更する表示モード指令を表示装置39に出力する。
一方,ステップS701で目標面距離が閾値以下ではないと判定された場合と,ステップS702で垂直成分Vbzsrf,Vazsrfが目標面62に近づく方向ではないと判定された場合と,ステップS703においてアクチュエータ圧力のいずれかが閾値より大きいと判定された場合にはステップS705へ進み,表示モード決定部31aは,表示モードを全体モードに維持する。
ところで,ステップS700で現在の表示モードが全体モードではないと判定された場合にはステップS706へ進む。ステップS706では,表示モード決定部31aは,目標面距離が閾値以上であるかを判定する。閾値はステップS701と同じ値に設定しても良いし,ステップS701の値より大きい値に設定しても良い。目標面距離が閾値以上である場合にはステップS707へ進む。
ステップS707では,表示モード決定部31aは,表示モードを全体モードへ変更する。ステップS706で目標面距離が閾値より小さいと判定された場合にはステップS708へ進み,表示モード決定部31aは,表示モードを拡大モードに維持する。
このように表示を切り替えると,オペレータの作業意図に即した表示モードの変更が可能となる。例えば,ステップS704へ進む場合は,オペレータが目標面62へバケット10を近づけようとしているときであり,また目標面62より上方に掘削抵抗となる土砂が無いような状況,すなわち仕上げ作業を開始する状況となる。このような場合には全体モードから拡大モードに変更することでバケット爪先と目標面62の位置関係が詳細に把握できる表示にすることが作業上好ましい。一方,ステップS703を経由してステップS705へ進む場合は,オペレータが目標面62へバケット10を近づけようとしているが,目標面上方に掘削抵抗となる土砂があり十分に近づけないような状態である。このようなときは仕上げ作業のように細かい作業を行わないため,ショベル全体と目標面62の位置関係が把握できる方がよい。また,ステップS707へ進む場合はバケット10と目標面62の距離が遠いため,拡大モードから全体モードへ遷移した方が良い状況であり,ステップS709へ進む場合はバケット10と目標面62の距離が近いため,拡大モードを維持した方が良い状況である。
なお,ステップS702の垂直成分の方向の判定は,速度ベクトルVの垂直成分Vzsrfの方向を利用して行っても良い。
また,図19のステップS403等におけるレバー操作の有無の判定は,パイロット圧(操作信号)が閾値以上であるかどうかを用いても良いし,操作装置15にポタンショメータやエンコーダなどを取り付けてレバーの操作量を直接検出することで判定しても良い。
<その他>
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の各実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものや置換したものも含まれる。
図8のステップS107では,操作対象のアクチュエータ5,6,7の圧力と閾値を比較したが,操作対象となっていないアクチュエータ5,6,7の圧力と閾値を比較して判定を行ってもよい。また,閾値はアクチュエータ5,6,7ごとに異ならせても良い。
上記の各実施形態では,油圧シリンダ(アクチュエータ)5,6,7の状態として負荷を選択し,その負荷を検出するために油圧シリンダ5,6,7の圧力を検出したが,油圧ポンプ2の吐出圧を検出し,その検出値から油圧シリンダ5,6,7の大凡の負荷の傾向を把握してその結果をMGに反映しても良い。
上記の各実施形態の説明では、制御線や情報線は、当該実施形態の説明に必要であると解されるものを示したが、必ずしも製品に係る全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
上記の制御コントローラ20に係る各構成や当該各構成の機能及び実行処理等は、それらの一部又は全部をハードウェア(例えば各機能を実行するロジックを集積回路で設計する等)で実現しても良い。また、上記のコントローラ20に係る構成は、演算処理装置(例えばCPU)によって読み出し・実行されることでコントローラ20の構成に係る各機能が実現されるプログラム(ソフトウェア)としてもよい。当該プログラムに係る情報は、例えば、半導体メモリ(フラッシュメモリ、SSD等)、磁気記憶装置(ハードディスクドライブ等)及び記録媒体(磁気ディスク、光ディスク等)等に記憶することができる。